JP6826428B2 - 構造材の補修・補強方法および補修・補強構造 - Google Patents
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Description
この補強工法は、鋼製、コンクリート製といった剛性のある構造物に、剛性のある補強材を重ねて接着固定する構造物補強工法である。
したがって、上述した従来の補強工法では、不陸(歪、変形等を含む)が大きくなると、接着剤を不陸吸収材に含浸させて不陸を吸収しても、接着層が厚くなるため所望の接着強度(補強効果)を得ることができない虞がある。
すなわちまず、ボルト接合継手を用意し、当該ボルト接合継手によって左右一対の試験体を接合した。
ボルト接合継手100は、図6(b),(c)に示すように、上下一対の長方形板状の当て板101,101と、当該当て板101,101に設けられた2つの孔に挿通するボルト102,103およびナット(図示略)によって構成されている。
また、当て板101には、ボルト102,103を挿通するための挿通孔101a,101bが設けられている。
試験体は2種類用意し、一方の試験体1Sは図6(a)に示すように、上下の表面が平坦で損傷等が無い略長方形板状のものであり、他方の試験体2Sは矩形の板材200と、この板材200の端面から突出した小径の複数の丸鋼201とを備えている。丸鋼201はその軸方向を試験体2Sの長辺方向(引張方向)に向けて互いに当接して並設されている。また、試験体1Sにはボルト102を挿通するための挿通孔102aが設けられている。また、試験体2Sでは、並設方向中央部の丸鋼201a(201),201a(201)は他の丸鋼201より短くなっており、これによって、ボルト103を挿通可能となっている。
丸鋼201と当て板101は接触面積が著しく小さくなる線接触となると同時に、当て板101が滑る方向にはほとんど機械的な抵抗がない状況を実現している。
そして、それぞれの試験体1S,2Sについて、
(1)ボルト102,103のみで試験体どうしを当て板101,101によって摩擦接合した場合、
(2)ボルト102,103および従来接着剤(アミン系の接着剤)を用いて当て板101,101によって摩擦接合した場合、
(3)ボルト102,103および繊維強化ペーストを用いて当て板101,101によって摩擦接合した場合について、それぞれ引張試験を行った。
なお、(2)および(3)の場合において、接着層の厚さは等しくしている。
また、P1の曲線は試験体1Sでボルトのみを使用したもの、P2の曲線は試験体1Sでボルトおよび従来接着剤を使用したもの、P3の曲線は試験体1Sでボルトおよび繊維強化ペーストを使用したものについて、それぞれ荷重と変位(試験体間の間隔)との関係を示している。
一方、試験体2Sの引張強度については、繊維強化ペーストを使用したもの(115kN)>従来接着剤(99kN)>ボルト接合のみと(89kN)なった。
想定通り、試験体2Sでは、R3の曲線がR2およびR3の曲線に比べ立ち上がり急であり、かつ荷重値も高いことが分かる。つまり、試験体2Sでの引張試験では、繊維強化ペーストが従来の接着剤より剛性および強度の点で優れているため、繊維強化ペーストを通じて応力伝達が従来接着剤によるものよりスムーズに行われるとともに引張強度が高いことが分かる。
以上により、従来の接着剤とボルトを用いた接合は大きな耐力(剛性および強度)を持つが、接合面の密着性が確保されない場合、接着剤の破壊が生じ、十分な耐力を得ることができず、一方、繊維強化ペーストとボルトを用いた接合は、従来よりも大きな耐力(高剛性、高強度)を得ることができるという知見を得た。
前記対象部分を含んで前記構造材の少なくとも一部に繊維強化ペーストを塗布する塗布工程と、
塗布した前記繊維強化ペーストに重ねるようにして補強板を前記構造材に設置する補強板設置工程と、
設置された前記補強板を加圧部材によって前記構造材に向けて加圧する加圧工程とを備えることを特徴とする。
前記対象部分を含んで前記構造材の少なくとも一部に塗布された繊維強化ペーストと、
前記繊維強化ペーストに重ねるようにして前記構造材に設置された補強板と、
前記補強板を前記構造材に向けて加圧する加圧部材とを備えることを特徴とする。
また、繊維強化ペーストを通して補強板に応力伝達がスムーズに行われるため、構造材に前記対象部分としての部分的な欠損が生じた場合であっても、構造材を十分に補強できる。
前記板状部材の両面のうち、少なくとも一方の表面に前記対象部分があり、
前記塗布工程では、前記対象部分を含んで前記板状部材の表面の少なくとも一部に繊維強化ペーストを塗布し、
前記補強板設置工程では、塗布した前記繊維強化ペーストに重ねるようにして、前記補強板を前記板状部材に設置し、
前記加圧工程では、前記補強板を前記加圧部材によって前記板状部材に向けて加圧することが好ましい。
積重ね方向に隣り合う前記補強板の間に前記繊維強化ペーストが介在するように、積重ねられる側の補強板に前記繊維強化ペーストを塗布するペースト塗布工程とを備え、
前記積み重ね工程では、前記板状部材に近い側の補強板ほど他の補強板より前記板状部材の長さ方向に突出するようにして、前記補強板を積み重ね、
前記加圧工程では、積み重ねられた前記補強板の端部にそれぞれ加圧部材を設け、当該加圧部材によってそれぞれの前記補強板を前記板状部材に向けて加圧してもよい。
つまり、繊維強化ペーストの代わりに従来接着剤を使用した場合、対象部分を強固に補強するためには、接着層をできる限り薄くする必要があるが、繊維強化ペーストを使用することによって、当該繊維強化ペーストによる接着層を従来接着剤によるものに比して厚くしても、その剛性および強度が従来接着剤より高いので、補強板が薄くなり、多段にして使用した場合でも、補強板間の接着層の厚さを管理する必要なく、対象部分をより強固に補強できる。
また、板状部材に近い側の補強板ほど他の補強板より板状部材の長さ方向に突出するようにして、補強板を積み重ね、積み重ねられた補強板の端部にそれぞれ加圧部材を設け、当該加圧部材によってそれぞれの補強板を板状部材に向けて加圧するので、それぞれの補強板を容易かつ確実に加圧できる。そして、このように本来は厚い一枚ものの補強板を用いた場合、現場で重い補強板を施工することに困難が生じるのに対して、薄い補強板に分けて施工できれば、施工が容易となる。例えばこのような継ぎ手が特に有効な腐食損傷を受けた既設構造の補修補強作業においては、クレーンの使用が困難な場合もあるため、施工単重の低減は非常に有用である。
さらに、前記加圧部材が万力である場合に、前記万力に発生する応力を計測し、計測した応力に応じて万力による加圧力を調整することが好ましい。
この場合、例えば、前記万力において補強板を加圧する一対の押圧部を相互に連結する本体部に発生する応力を計測し、計測した応力に応じて万力による加圧力を調整してもよい。
すなわち、加圧部材が万力である場合、当該万力に歪ゲージ等を取り付けておくことによって発生応力をモニタリングできるとともに、リラクセーションや繊維強化ペーストの収縮が発生した場合に、万力を増し締めすることによって、加圧力の管理を行うことができる。また、ボルト・ナットと異なり、補強板や板状部材にボルト挿通孔を形成しなくてもよいので、ボルト挿通孔を形成する労力を省くことができ、さらにボルト挿通孔に起因する接着面の面積減少や、断面欠損が生じることもない。接着面の面積の増加は、接合部としての耐力の増加をもたらす。
また、加圧部材がボルト・ナットである場合、万力より小型であるので、狭い部分でも使用することができ、また、万力の適用が困難なH形鋼のウエブの補修・補強の場合などにも容易に使用できる。
さらに、前記加圧部材が万力である場合に、前記万力において補強板を加圧する一対の押圧部を相互に連結する本体部に発生する応力を計測し、計測した応力に応じて万力による加圧力を調整可能とすることにより、万力に作用する応力を定期的あるいは常時監視することができる。そのため、例えば経時的に補強部材への加圧力が不足する状態となった場合には万力による加圧力を増加させる等、構造材の必要な補修または補強状態を安定的に維持することができる。
このような構成によれば、例えばI形鋼やH形鋼等のウエブを補修または補強する際等に、万力が届かない場合があるが、この場合にボルトを使うことで補修または補強の適用範囲を拡大できるとともに、トータルコストの低減を図ることができる。
このような構成によれば、事後的に万力に代えて、ボルト・ナットを使用した後、取り外した万力を使いまわすことができる。また、万力に比してボルト・ナットを使用した方が締め付け力(加圧力)の絶対量が増加するとともに安定化する。
前記樹脂組成物は、前記フィラーとして繊維状フィラーおよび非球状粒子フィラーの両方を含有し、粘度が25℃で5〜2000Pa・sであるとともに、常温硬化型の熱硬化性樹脂100重量部に対して繊維状フィラーと非球状粒子フィラーとを下式(1)
非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量=1〜10 ・・・(1)
の配合比で合計20〜150重量部含有し、非球状粒子フィラーの平均粒子径が1〜80μmであることが望ましい。
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態に係る構造材の補修・補強構造の一例を示すもので、(a)は側断面図、(b)は横断面図である。
本実施の形態は、本発明に係る構造材の補修・補強方法を、例えばH形鋼のフランジ部等の鋼製の板状部材の接合部の補強方法に適用した場合の実施の形態である。したがって、本実施の形態では、構造材は鋼製の板状部材であり、補修または補強が必要とされる対象部分は板状部材の接合部である。
補強板4は例えば鋼板で形成されたスプライスプレートである、この補強板4の幅は板状部材1の幅とほぼ等しいか若干小さくなっている。
まず、板状部材1,1に、めっきや塗装等の表面処理が施されている場合、次の塗布工程の前段階で接合部2の周囲において、板状部材1,1の表面から表面処理(層)を除去する(除去工程)。
表面処理を除去する場合、例えばショットブラストまたはディスクグラインダー等を用いることで、板状部材1,1の接合部2の周囲における板状部材1,1の表面に下地処理をして、板状部材1,1の表面処理として設けられためっきまたは塗装を除去する。これによって、板状部材1,1の表面を露出させる。この露出範囲以外の部分は表面処理が除去されていない範囲、つまりめっきまたは塗装で被覆された範囲となる。
繊維強化ペースト3を塗布する場合、当該繊維強化ペースト3によって形成される接着層の厚さが1〜30mm程度となるように、塗布量を調整するが、接着層の厚さは1mm未満でもよい。基本的には接着層が薄いほど接着強度は強くなるが、この繊維強化ペースト3によって形成される接着層は1〜30mm程度でも十分な剛性と強度(機械的特性)を確保することができる。
各補強板4,4および板状部材1には、加圧部材5の一部を構成する後述のボルト5aを挿通するボルト挿通孔14,11がそれぞれ形成されているので、補強板4のボルト挿通孔14と板状部材1のボルト挿通孔11とを同軸に合わせるようにして、補強板4を板状部材1の表面に設置する。
加圧部材5は、本実施の形態では、ボルト5aとナット5bとを備えている。そして、ボルト5aを、一方の補強板4、板状部材1、他方の補強板4の各ボルト挿通孔14,11,14を通して、これらの一方の補強板4から板状部材1、他方の補強板4を貫通するように挿通したうえで、当該ボルト5aの先端部にナット5bを螺合して締め付ける。
なお、板状部材1がH形鋼のフランジである場合、例えば、ボルト5aはウエブを挟んでフランジの両側にそれぞれ1列ずつ所定間隔で配置すればよい。
繊維強化ペースト3は、硬化前の常温において粘度が25℃で5〜2000Pa・sである。繊維強化ペースト3は、好ましくは粘度が25℃で50〜2000Pa・sの状態である。繊維強化ペースト3の粘度が前記範囲であることで、この樹脂組成物は、塗工時に塗布した樹脂組成物が適度に形状を変えることができると同時に型が崩れるまでに一定の時間を要するため、成形が容易になる。なお、繊維強化ペースト3は、この趣旨を逸脱しない範囲で、25℃の粘度が2000Pa・sよりも高粘度で、流動性を有さず粘度が測定できないものでもよい。また、繊維強化ペースト3は、硬化前に増粘することにより、粘度が25℃で5〜2000Pa・sとなってもよい。
繊維強化ペースト3に係る常温硬化型の熱硬化性樹脂には、常温硬化が可能な熱硬化性樹脂が用いられる。この熱硬化性樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。この熱硬化性樹脂は、塗布面の接着性および硬化物の強度等の条件を満たすのであれば特に制限はないが、構造材の表面との接着性および硬化物の強度の観点から、エポキシ樹脂が好適に用いられる。
繊維強化ペースト3に係る繊維状フィラーは、炭素繊維、ガラス繊維、ロックウールファイバー等の無機繊維、ポリマーから構成される有機繊維を用いることができ、これらの混合物も用いることができる。炭素繊維およびガラス繊維、またはこれらの混合物は、製造時のハンドリングの面でより好ましい。また、繊維強化ペースト3に係る繊維状フィラーとしてさらに好ましくは、引張弾性率の発現性上、3mm以上の長さを有し、1本あたりの繊維直径が30μm未満の炭素繊維、ガラス繊維のチョップドストランド繊維を用いることができる。なお、繊維強化ペースト3に係る繊維状フィラーを限定するものではないが、この繊維状フィラーは、マトリックス材料との親和性を向上させるため、例えば、エポキシ系樹脂サイジング等によるサイジング処理やシランカップリング剤等による表面処理が施されたものが好ましい。
繊維強化ペースト3に係る非球状粒子フィラーは、ピッチコークス粉砕品、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛粉砕物、ワラストナイト、破砕シリカ粉、樹脂系微粒子等を用いることができ、これらの混合物も用いることができる。繊維強化ペースト3に係る非球状粒子フィラーとしては、ピッチコークス粉砕品、タルク、マイカ等の非球状フィラーはその粒子形状が鱗片状であることから、繊維強化ペースト3に必要となる引張弾性率を発現しやすいために好ましい。繊維強化ペースト3に係る非球状粒子フィラーは、さらに好ましくは、鱗片状を有し、それ自身の弾性率も高く、かつ炭素系元素で構成される樹脂組成物との相溶性に優れるピッチコークス粉砕品である。特に、石炭系タールを原料とする針状結晶性を有するピッチコークス粉砕品は、粉砕粒子の強度や弾性率が高く、かつその組成のほとんどが炭素であるため、他の無機系フィラーの場合と異なり相溶化剤等を用いなくとも強度や弾性率の発現を得ることができ、また粉砕時に容易に鱗片状になることから、繊維強化ペースト3に係る非球状粒子フィラーとして最も好ましい非球状粒子フィラーである。
繊維強化ペースト3は、常温硬化型の熱硬化性樹脂100重量部に対して、繊維状フィラーと非球状粒子フィラーとを合計20〜150重量部含有し、好ましくは40〜120重量部の配合比で配合される。常温で硬化する熱硬化性樹脂100重量部に対して、繊維状フィラーおよび非球状粒子フィラーの配合量が20重量部よりも少なくなると、補強効果を得るための引張弾性率が得られず、逆に、配合量が150重量部よりも多くなると、樹脂組成物内に発生する空隙が多くなるため、繊維強化ペースト3自身の強度の低下が生じてしまう。
例えば、繊維強化ペースト3は、主剤樹脂ワニスまたは硬化剤へ繊維状および粒子状フィラーを事前に混合した混合物を準備し、塗工作業直前にその混合物に必要量の主剤樹脂ワニスまたは硬化剤を添加混合して用いることが好ましい。
なお、その際、事前に準備する混合物は、主剤、繊維状フィラーおよび粒子状フィラーを混合したものでもよく、主剤に何れか一方のフィラーを混合し、かつ用いる硬化剤に他方のフィラーを混合したものを準備する方法でもよい。施工時の簡便性を考えれば、主剤樹脂ワニス、繊維状フィラーおよび粒子状フィラーを混合した混合ワニスを準備し、塗工作業直前に硬化剤を混合する方法が好ましい。
繊維強化ペースト3の塗工方法は、粘度が25℃で5〜2000Pa・sである材料を塗布することができる方法であれば特に制限はなく、一般に用いられている方法を用いることができる。繊維強化ペースト3は、前記板状部材1の接合部2の近傍に、欠損部がある場合、欠損部を覆うように塗布されて硬化することにより、き裂進展抑制効果を発揮する。塗布する厚さは、塗工が可能であり、硬化後に十分な強度が保たれる限りにおいて特に制限がない。繊維強化ペースト3は、欠損部に1mm以上、30mm程度以下、好ましくは10mm〜20mm程度の厚さで塗布することによりき裂進展抑制効果が高いものとなる。硬化方法は、常温硬化が可能であるが、必要に応じて、加熱等の一般的に用いられる方法を用いることができる。なお、繊維強化ペースト3の塗布に際しては、密着性を向上させるためにプライマーを使用してもよい。このプライマーの種類は、補強する構造材の材質や繊維強化ペースト3の樹脂種に応じて適宜選択されるが、例えば、エポキシ樹脂系や、シランカップリング剤系のプライマーが好ましく挙げられる。
また、繊維強化ペースト3を通して補強板4に応力伝達がスムーズに行われるため、板状部材1に部分的な欠損が生じた場合であっても、構造材を十分に補強できる。
例えば、図1(c)に示すように、板状部材1やその他の構造材の少なくとも一部に、経年変化や風雨などによる局所的な腐食による板厚の減少(減肉)や欠損部が生じていた場合(減肉部や欠損部をまとめて腐食部1dとする。)、この腐食部1dを補修または補強が必要とされる対象部分として、繊維強化ペースト3、補強板4および加圧部材5を使用して補修または補強すればよい。
この場合、板状部材の両表面のうち、一方の表面に腐食部1dが生じている場合、この一方の表面を、繊維強化ペースト3、補強板4および加圧部材5を使用して補修または補強すればよい。つまり、板状部材の一方の表面に繊維強化ペースト3を塗布するとともに、この繊維強化ペースト3に重ねるようにして補強板4を設けて、加圧部材5によって加圧する一方、板状部材の他方の表面には補強板4を設けなくてもよい。
図2は第2の実施の形態に係る構造材の補修・補強構造の一例を示すもので、(a)は側断面図、(b)は横断面図である。
本実施の形態が上述した第1の実施の形態と異なる点は、加圧部材5としてボルト5a、ナット5bに代えて万力50を使用した点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と共通構成部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
より具体的には、本体部51の一方の端部に設けられた円筒状の筒部52の孔に形成された雌ねじに螺合されたボルト部53と、ボルト部53の一方の端部に設けられた押圧部54bと、本体部51の他方の端部に設けられた押圧部54aとを備えている。また、ボルト部53の他方の端部にはレバー55がボルト部53を貫通するようにして設けられている。
さらに、本実施の形態においては、万力50の本体部51に発生する応力を計測し、計測した応力に応じて万力による加圧力を調整することが可能となっている。すなわち、本体部51には、歪ゲージ56が取り付けられ、この歪ゲージは図示しない歪測定器に接続可能となっている。これにより、本体部51に発生する応力(本実施の形態の場合は実際には歪)を定期的あるいは常時計測し、加圧力の監視を行うことができる。そのため、例えば補強板4,4への加圧力の経時的な変化によって加圧力が不足する(あるいは過大になった)状態となった場合等、計測した応力によって万力50による加圧力を増加・減少させて加圧力の調整が可能となるため、構造材(板状部材1)の必要な補修または補強状態を安定的に維持することができる。
すなわち、万力50の一方の押圧部54aを一方(上方)の補強板4に当接するとともに、他方の押圧部54bを他方(下方)の補強板4に当接したうえで、レバー55を把持してボルト部53を締め付ける方向に回転させることで、押圧部54a,54bによって補強板4,4を板状部材1に向けて垂直に加圧することで、当該補強板4,4を所定の圧力で挟み付ける。
なお、万力50は、上述したボルト5a、ナット5bを設けた位置と同じ位置に同じ個数だけ設ける。また、ボルト5a、ナット5bの場合と同様に、仮締めを行った後、本締めを行う。本締めを行う場合、繊維強化ペースト3によって形成される個々の接着層の厚さが30mmを超えないように注意する。
また、万力50に取り付けられた歪ゲージ56を所定期間ごとあるいは常時、図示しない歪測定器に接続することで、万力50の発生応力をモニタリングできるとともに、例えばリラクセーションや繊維強化ペースト3の収縮が発生した場合などに、万力50を増し締めする等、加圧力の管理を行うことができる。
図3は第3実施の形態に係る構造材の補修・補強方法の一例を示す工程図である。
本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に万力50を用いて、板状部材1,1の接合部2を補強しているが、補強板4上にさらに、次の補強板4を2枚積み重ねている(積重ね工程)。以下に本実施の形態の補強方法について説明する。
次に、表面が露出した板状部材1,1に、接合部2を含んで板状部材1,1の両面の一部にそれぞれ繊維強化ペースト3を塗布する(ペースト塗布工程)。
繊維強化ペースト3を塗布する場合、当該繊維強化ペースト3によって形成される接着層の厚さが1〜30mm程度となるように、塗布量を調整するが、接着層の厚さは1mm未満でもよい。基本的には接着層が薄いほど接着強度は強くなるが、この繊維強化ペースト3によって形成される接着層は1〜30mm程度でも十分な剛性と強度(機械的強度)を確保することができる。
次に、設置された補強板4a,4aを上述した万力50を用いて板状部材1に向けて加圧する(加圧工程)。万力50は補強板4a,4aの長さ方向(図3において左右方向)の両端部にそれぞれ設けて、補強板4a,4aを加圧する。この加圧工程では、補強板4a,4aが、板状部材1から脱落しない程度の圧力で補強板4a,4aを加圧する、つまり補強板4a,4aを仮締めする。
なお、図3(a)〜(d)において、万力50についてはその押圧部54a,54bのみを記載し、その他の部材(ボルト部53、レバー55等)は記載を省略している。
すなわち、補強板4a上にさらに、次の補強板4b,4cを積み重ね、積重ね方向に隣り合う補強板4a,4b(4b,4c)の間に繊維強化ペースト3が介在するように、積重ねられる側の補強板4a,4bに繊維強化ペースト3を塗布し、積み重ねられた補強板4b,4cを別の万力50によって板状部材1に向けて加圧するので、補強板4a〜4cを薄くしながら、接合部2をより強固に補強できる。
つまり、繊維強化ペースト3の代わりに従来接着剤を使用した場合、接合部2を強固に補強するためには、接着層をできる限り薄くするとともに、補強板を厚くする必要があるが、繊維強化ペースト3を使用することによって、当該繊維強化ペースト3による接着層を従来接着剤によるものに比して厚くしても、その剛性および強度が従来接着剤より高いので、補強板4a〜4cを薄くしながら、接合部2をより強固に補強できる。
また、板状部材1に近い側の補強板ほど他の補強板より板状部材1の長さ方向に突出するようにして、補強板4a〜4cを積み重ね、積み重ねられた補強板4a〜4cの端部にそれぞれ万力50を設け、当該万力50によって補強板4a〜4cを板状部材1に向けて加圧するので、それぞれの補強板4a〜4cを容易かつ確実に加圧できる。
また、上述した第1〜第3実施の形態では、本発明を板状部材1,1の接合部2を補強する場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、板状部材以外の構造材の少なくとも一部に、経年変化や風雨などによる局所的な腐食による板厚の減少(減肉)や欠損部が生じていた場合、この減肉部や欠損部を補修または補強が必要とされる対象部分として、繊維強化ペースト3、補強板4および加圧部材5,50を使用して補修または補強すればよい。また、構造材は鋼材に限ることなく、その他の金属、硬質の樹脂、コンクリート等やこれらの複合材で形成されたものであってもよい。さらに、補修および補強が必要とされる部分は平面に限らず曲面であってもよい。
図4は第4実施の形態に係る構造材の補修・補強方法を説明するための図である。本実施の形態は、本発明に係る構造材の補修・補強方法を、I形鋼のウエブに疲労き裂が生じた場合に、当該疲労き裂を補修する補修方法として適用した例である。したがって、本実施の形態では、構造材はI形鋼のウエブであり、補修または補強が必要とされる対象部分はウエブに生じている疲労き裂である。
本実施の形態では、図4(a)に示すように、I形鋼のウエブ1Aの下端部には、ガセット等の水平板61が溶接等によって接合されており、この水平板61とウエブ1Aの接合部の端部において、ウエブ1Aに疲労き裂K1がほぼ上下に延在するようにして生じている。
まず、ウエブ1Aに、めっきや塗装等の表面処理が施されている場合、疲労き裂K1の周囲において、ウエブ1Aの表面から表面処理(層)を除去(除去工程)することによって、ウエブ1Aの表面を露出させる。
次に、表面が露出したウエブ1Aに、疲労き裂K1の両端部を含んでウエブ1Aの表面の一部に繊維強化ペーストを塗布する(ペースト塗布工程)。この場合、繊維強化ペーストは疲労き裂K1に塗り込んでもよいし、塗り込まなくてもよい。
次に、塗布した繊維強化ペーストに重ねるようにして1枚目の補強板41aをウエブ1Aの表面に疲労き裂K1の端部を跨ぐようにして設置する(補強板設置工程)。この補強板41aおよび補強板41b〜41dは、第2の実施の形態で使用した補強板4より薄いものとなっている。
同様にして、補強板41b上に、順次補強板41c、補強板41dを積み重ねていくとともに、積重ね方向に隣り合う補強板41b,41c、41c,41dの間に繊維強化ペーストが介在するように、積み重ねられる側の補強板41b,41cに繊維強化ペーストを塗布する。また、ボルト5a、ナット5bを用いて補強板41b,41bを仮締めする。
なお、本実施の形態では、疲労き裂K1が生じている側のウエブ1Aの表面に補強板41a〜41dを積み重ねたが、ウエブ1Aの他方の表面にも同様にして補強板41a〜41dを積み重ねてもよい。
図5は第5実施の形態に係る構造材の補修・補強方法を説明するための図である。本実施の形態は、本発明に係る構造材の補修・補強方法を、I形鋼のフランジに疲労き裂が生じた場合に、当該疲労き裂を補修する補修方法として適用した例である。したがって、本実施の形態では、構造材はI形鋼のフランジであり、補修または補強が必要とされる対象部分はフランジに生じている疲労き裂である。
本実施の形態では、図5(c)に示すように、I形鋼のフランジ1Bの長手方向に沿う縁部には、ガセット等の水平板62が溶接等によって接合されており、この水平板62とフランジ1Bの接合部の端部において、フランジ1Bに疲労き裂K2がフランジ1Bの長辺とほぼ直角に延在するようにして生じている。
なお、補強板42a〜42dは、第4の実施の形態における補強板41a〜41dより長くなっている。
また、疲労き裂K2は、フランジ1Bをその厚さ方向に貫通している。このため、フランジ1Bの上下両面にそれぞれ疲労き裂K2が現出している。
すなわちまず、フランジ1Bに、めっきや塗装等の表面処理が施されている場合、疲労き裂K2の周囲において、フランジ1Bの表面から表面処理(層)を除去(除去工程)することによって、フランジ1Bの表面を露出させる。
次に、表面が露出したフランジ1Bに、疲労き裂K2のほぼ全体を含んでフランジ1Bの表面の一部に繊維強化ペーストを塗布する(ペースト塗布工程)。この場合、繊維強化ペーストは疲労き裂K2に塗り込んでもよいし、塗り込まなくてもよい。
次に、塗布した繊維強化ペーストに重ねるようにして1枚目の補強板42aをフランジ1Bの両面にそれぞれ疲労き裂K2を跨ぐようにして設置する(補強板設置工程)。この補強板42aおよび補強板42b〜42dは、第2の実施の形態で使用した補強板4より薄いものとなっている。
次に、設置された補強板42b,42bを万力50を用いて挟み付けてフランジ1Bに向けて加圧する(加圧工程)。万力50は補強板41bの長さ方向の両端部にそれぞれ設けて、補強板42bを加圧する。この加圧工程でも、補強板42bが、フランジ1Bから脱落しない程度の圧力で補強板42bを加圧する、つまり補強板42bを仮締めする。
同様にして、補強板42b,42b上に、順次補強板42c,42c、補強板42d,42dを積み重ねていくとともに、積重ね方向に隣り合う補強板42b,42c、42c,42dの間に繊維強化ペーストが介在するように、積み重ねられる側の補強板42b,42cに繊維強化ペーストを塗布する。また、万力50を用いて補強板42c,42cお補強板42d,42dを仮締めする。
なお、本実施の形態では、積み重ねられた補強板42a〜42dをフランジ1Bを挟み込むようにして配置したが、疲労き裂K2の発生状況等に応じて、フランジ1Bの一方の面に補強板42a〜42dを積み重ねてもよい。
このように、ボルト5a・ナット5bと万力50とを併用することによって、例えばI形鋼やH形鋼等のウエブを補修または補強する際等に、万力が届かない場合があるが、この場合にボルトを使うことで補修または補強の適用範囲を拡大できるとともに、トータルコストの低減を図ることができる。
このようにすれば、事後的に万力50に代えて、ボルト5a・ナット5bを使用した後、取り外した万力を使いまわすことができる。また、万力50に比してボルト5a・ナット5bを使用した方が締め付け力(加圧力)の絶対量が増加するとともに安定化する。
1A ウエブ(構造材)
1B フランジ(構造材)
2 接合部(対象部分)
3 繊維強化ペースト
4 補強板
4a〜4c 補強板
5 加圧部材
5a ボルト(加圧部材)
5b ナット(加圧部材)
50 万力(加圧部材)
41a〜41d 補強板
42a〜42d 補強板
K1,K2 疲労き裂(対象部分)
Claims (12)
- 構造材の補修または補強が必要とされる対象部分を補修または補強するための構造材の補修・補強方法であって、
前記対象部分を含んで前記構造材の少なくとも一部に繊維強化ペーストを塗布する塗布工程と、
塗布した前記繊維強化ペーストに重ねるようにして補強板を前記構造材に設置する補強板設置工程と、
設置された前記補強板を加圧部材によって前記構造材に向けて加圧する加圧工程とを備え、
前記繊維強化ペーストは、常温硬化型の熱硬化性樹脂および繊維状フィラーを含有する樹脂組成物であることを特徴とする構造材の補修・補強方法。 - 構造材に表面処理が施されている場合、前記塗布工程の前に、前記対象部分の周囲において、前記構造材から前記表面処理を除去する除去工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の構造材の補修・補強方法。
- 前記対象部分がき裂である場合、前記塗布工程の前に、前記き裂の端部に、き裂進展を抑制するストップホールを設けることを特徴とする請求項1または2に記載の構造材の補修・補強方法。
- 前記構造材が鋼製の板状部材であり、
前記板状部材の両面のうち、少なくとも一方の表面に前記対象部分があり、
前記塗布工程では、前記対象部分を含んで前記板状部材の表面の少なくとも一部に繊維強化ペーストを塗布し、
前記補強板設置工程では、塗布した前記繊維強化ペーストに重ねるようにして、前記補強板を前記板状部材に設置し、
前記加圧工程では、前記補強板を前記加圧部材によって前記板状部材に向けて加圧することを特徴とする請求項1または2に記載の構造材の補修・補強方法。 - 前記補強板上にさらに、次の補強板を1枚以上積み重ねる積重ね工程と、
積重ね方向に隣り合う前記補強板の間に前記繊維強化ペーストが介在するように、積重ねられる側の前記補強板に前記繊維強化ペーストを塗布するペースト塗布工程とを備え、
前記積み重ね工程では、前記板状部材に近い側の前記補強板ほど他の前記補強板より前記板状部材の長さ方向に突出するようにして、前記補強板を積み重ね、
前記加圧工程では、積み重ねられた前記補強板の端部にそれぞれ加圧部材を設け、当該加圧部材によってそれぞれの前記補強板を前記板状部材に向けて加圧することを特徴とする請求項4に記載の構造材の補修・補強方法。 - 前記加圧工程では、積み重ねられた複数の前記補強板のうち、前記板状部材に近い側の前記補強板から順に前記加圧部材によって、前記補強板を仮締めした後に、前記板状部材から遠い側の前記補強板から順に前記加圧部材によって、前記補強板を本締めすることを特徴とする請求項5に記載の構造材の補修・補強方法。
- 前記加圧部材が、万力またはボルト・ナットであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の構造材の補修・補強方法。
- 前記加圧部材として、万力およびボルト・ナットを併用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の構造材の補修・補強方法。
- 前記加圧部材として万力を使用した後、事後的に当該万力に代えて、ボルト・ナットを使用することを特徴とする請求項7または8に記載の構造材の補修・補強方法。
- 前記加圧部材が万力である場合に、前記万力に発生する応力を計測し、計測した応力に応じて万力による加圧力を調整することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の構造材の補修・補強方法。
- 前記繊維強化ペーストは、常温硬化型の熱硬化性樹脂およびフィラーを含有する樹脂組成物であり、
前記樹脂組成物は、前記フィラーとして繊維状フィラーおよび非球状粒子フィラーの両方を含有し、粘度が25℃で5〜2000Pa・sであるとともに、常温硬化型の熱硬化性樹脂100重量部に対して繊維状フィラーと非球状粒子フィラーとを下式(1)
非球状粒子フィラーの配合量/繊維状フィラーの配合量=1〜10 ・・・(1)
の配合比で合計20〜150重量部含有し、非球状粒子フィラーの平均粒子径が1〜80μmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の構造材の補修・補強方法。 - 構造材の補修または補強が必要とされる対象部分を補修または補強するための構造材の補修・補強構造であって、
前記対象部分を含んで前記構造材の少なくとも一部に塗布された繊維強化ペーストと、
前記繊維強化ペーストに重ねるようにして前記構造材に設置された補強板と、
前記補強板を前記構造材に向けて加圧する加圧部材とを備え、
前記繊維強化ペーストは、常温硬化型の熱硬化性樹脂および繊維状フィラーを含有する樹脂組成物であることを特徴とする構造材の補修・補強構造。
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