以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
<1. 実施形態>
<塗工システム10の構成>
図1は、実施形態の塗工システム10の構成を示す概略側面図である。図2は、実施形態の担持量測定部50を示す概略斜視図である。図3は、実施形態の担持量測定部50を示す概略正面図である。図4は、実施形態の塗工システム10に係るバス配線を示す図である。図1以降の各図には、塗工システム10の各構成要素の位置関係などを理解容易にするために、XYZ直交座標系を付している。また、以下の説明では、矢印の先端が向く方を+(プラス)方向とし、その逆方向を−(マイナス)方向とする。ただし、この直交座標系は、各構成要素の位置関係などを限定するものではない。
塗工システム10は、例えば固体高分子形燃料電池(PEFC)を製造するための装置であって、具体的には、シート状の電解質膜である基材90の表面に白金などの金属触媒を塗工して、触媒層付電解質膜(CCM)を製造するものである。
なお、塗工システムは、CCMの触媒層にガス拡散層(GDL)が形成した膜電極接合体(MEA)を製造するように構成されていてもよい。担持量測定部50は、CCMに形成された触媒層の触媒担持量計測に好適であるが、MEAの触媒層の触媒担持量計測に適用してもよい。
塗工システム10は、基材90を搬送する搬送部20、塗工部30、乾燥部40、担持量測定部50および制御部60を備える。後述するように、搬送部20の供給用ローラ220、巻取用ローラ222、エンコーダ226、支持ローラ240,242およびローラ駆動部28、担持量測定部50および制御部60は、担持量測定装置を構成する。
<搬送部20>
搬送部20は、供給用ローラ220、巻取用ローラ222および一対の支持ローラ240,242、搬送用ローラ260,262,264を備える。また、搬送部20は、巻取用ローラ222を回転させるローラ駆動部28を備える。これらのローラ各々は、Y軸方向に延びる円筒状に形成されている。
供給用ローラ220および巻取用ローラ222は、シート状の基材90を巻回して保持可能に形成されている。供給用ローラ220は、ここでは金属触媒が未塗工の基材90を巻回状態で保持する。供給用ローラ220から引き出された基材90は、ローラ駆動部28によって能動的に回転する巻取用ローラ222に巻き取られる。搬送用ローラ260,262,264および一対の支持ローラ240,242は、供給用ローラ220および巻取用ローラ222に掛け渡された基材90の中間部分を支持するように配されている。
巻取用ローラ222には、エンコーダ226が設けられている。エンコーダ226は、巻取用ローラ222の回転量を検出することによって、基材90の移動距離を検出する。すなわち、エンコーダ226は、発振器52および検出器54に対する、基材90のX軸方向(第2方向)への相対的な移動距離を検出する移動距離検出器である。供給用ローラ220および巻取用ローラ222によって搬送される基材90の搬送速度は、任意に設定し得るが、例えば、25mm/sec以下とするとよい。
搬送用ローラ260,262,264は、供給用ローラ220から塗工部30までの間に配されており、基材90に適度な引張を与えつつ搬送する。特に、搬送用ローラ264は、塗工部30にて、基材90の金属触媒が塗布される面とは反対側の面に接触して支持する位置に配されている。
一対の支持ローラ240,242は、乾燥部40よりも下流側に配されており、基材90を支持するとともに、基材90を引張して基材90からしわを除く位置にそれぞれ設けられている。一対の支持ローラ240,242の間の中間位置に、担持量測定部50が設けられており、その中間位置を通過する基材90に発振器52からの電磁波が照射される。
図1および図2に示すように、基材90の搬送方向が、支持ローラ242において+X方向から+Z側に曲げられている。これによって、担持量測定部50を通過する基材90の部分は、適度に引張される。したがって、発振器52から出力される電磁波を、しわの発生が抑制された基材90の部分に照射できるため、触媒担持量を精度良く特定できる。なお、支持ローラ240においても基材90の搬送方向が変化するように支持ローラ240を配してもよい。これによって、担持量測定部50を通過する基材90の部分において、しわの発生をさらに抑制できる。
また、支持ローラ240,242の直径は、特に限定されないが、しわの発生を抑制するため、1mm以下にするとよい。また、支持ローラ240,242間の距離は、特に限定されないが、しわの発生を抑制するため、10mm以下にするとよい。
<塗工部30>
塗工部30は、スリットノズル32および塗工液供給部34を備える。スリットノズル32の下端部には、基材90の幅方向(Y軸方向)に沿って延びるスリット状に形成された吐出口が形成されている。塗工液供給部34は、金属触媒の塗工液を貯留するタンク340、そのタンク340から塗工液をスリットノズル32に供給するポンプ342、吐出口からの塗工液の吐出の開始および停止を実行する電磁弁344を備える。この電磁弁344の動作は制御部60によって制御される。
スリットノズル32の吐出口が形成された下端部は、搬送用ローラ264に近接する位置に配されている。スリットノズル32の吐出口から塗工液が吐出されることによって、搬送用ローラ264に支持された基材90に塗工液が塗布される。
本例では、スリットノズル32の吐出口は、基材90の幅方向の長さよりも短くなっている。このため、基材90のうち、幅方向の両端から所定の距離だけ隔てた内側の領域に塗工液が塗布される。その結果、図2に示すように、基材90の両端部を除く内側の部分に金属触媒が塗工された塗工領域900が形成される。そして、基材90の両端部に金属触媒が塗工されていない端部非塗工領域902が形成される。
また、本例では、スリットノズル32からは、間欠的に塗工液が吐出される。詳細には、エンコーダ226によって基材90が規定の距離分だけ移動したことが検出される都度、塗工液の吐出の開始あるいは停止が交互に行われる。これによって、図2に示すように、塗工領域900が間欠的に形成される。すなわち、X軸方向において隣接する塗工領域900,900の間に、金属触媒が塗工されていない中間非塗工領域904が形成される。中間非塗工領域904は、Y軸方向に延びる領域である。
<乾燥部40>
乾燥部40は、基材90が進入する進入口および基材90が退出する退出口が両端に形成された筐体を有する。乾燥部40は、その筐体の内部にて、基材90の片面に塗布された塗工液の膜の乾燥処理を行う。一例として、乾燥部40は、基材90に向けて熱風を供給することによってその基材90を加熱し、これによって、塗工液に含まれる水分などの溶媒を蒸発させる。
<担持量測定部50>
担持量測定部50は、乾燥部40の下流側に設けられており、基材90に形成された触媒層における、金属触媒の担持量(触媒担持量)を測定する。担持量測定部50は、発振器52と、検出器54とを備える。
発振器52は、−Z方向に向けてY軸方向(第1方向)に広がる扇状の電磁波を出力する。この電磁波は、例えば、0.03から10THzのテラヘルツ波である。発振器52から出力された扇状の電磁波は、シリンドリカルレンズ520によって集光され、一対の支持ローラ240,242の間の中間位置にある基材90の部分に照射される。発振器52から出力される電磁波は、ここでは連続波とされるが、パルス波であってもよい。
検出器54は、Y軸方向(第1方向)に配列された複数(例えば256個)の検出素子540を備えている。複数の検出素子540の各々は、発振器52から出力された電磁波の強度を検出する。図示を省略するが、複数の検出素子540を保護するため、複数の検出素子540を筐体の内部に収容するとよい。
検出素子540は、ショットキーバリアダイオード、プラズモニックディテクタ(米国特許8,159,667号、米国特許8,772,890号)、非線形光学結晶などの公知の検出器で構成され得る。検出素子540は、検出面に入射する電磁波(テラヘルツ波)の強度を電気信号に変換する。検出素子540各々が出力する電気信号は、制御部60に取り込まれる。なお、検出素子540として、光伝導スイッチ(光伝導アンテナ)を備えていてもよい。
図4に示すように、複数の検出素子540は、一対の検出素子540a,540a、一対の検出素子540b,540bおよび複数の検出素子540cを含む。
一対の検出素子540a,540aは、Y軸方向の両端に配されている。一対の検出素子540a,540aは、Z軸方向から見て、基材90よりもY軸方向外側に配されている。一対の検出素子540a,540aは、基材90よりもY軸方向外側を通過する電磁波(基材外通過電磁波)を検出する位置に配されている。
一対の検出素子540b,540bは、一対の検出素子540a,540aの内側に隣接する位置にそれぞれ配されている。一対の検出素子540b,540bは、基材90の幅方向両側の端部非塗工領域902,902各々を透過する電磁波(端部透過電磁波)を検出する位置に配されている。
複数の検出素子540cは、検出素子540b,540bの間に配列されている。検出素子540c各々は、塗工領域900の各部分を透過した電磁波(触媒層透過電磁波)を検出する。複数の検出素子540cは、例えば、Y軸方向において基材90を0.1mm〜10mmの間隔で透過する電磁波各々を検出可能な間隔で配列するとよい。これによって、Y軸方向について0.1mm〜10mmの分解能で触媒担持量を測定できる。この分解能は、現行の打ち抜き重量測定法(触媒層92が形成された基材90の部分を打ち抜いてその打ち抜き部分の重量を計測し、担持量を特定する測定方法)と同等以上の分解能である。
垂直方向移動部56は、発振器52を基材90に接近または接離する接離方向(Z軸方向)に移動させる。垂直方向移動部56は、基材90の+Y側および−Y側に配され、Z軸方向に延びる一対のリニアガイド部560,560を備える。発振器52および検出器54各々は、Y軸方向に延びる棒状に形成された支持部材562,564にそれぞれ固定されている。垂直方向移動部56は、一対のリニアガイド部560,560に接続された支持部材562,564を一体的にZ軸方向に移動させることによって、発振器52および検出器54が一体的にZ軸方向に移動させる。垂直方向移動部56の動作は、制御部60の移動制御部605によって制御される。
なお、垂直方向移動部56が、発振器52および垂直方向移動部56を一体に移動させることは必須ではない。すなわち、垂直方向移動部56は、発振器52および検出器54各々を独立に移動させるように構成され得る。この場合、垂直方向移動部56が支持部材562,564を同一方向に同一量だけ移動させるように制御されてもよい。
一対のカメラ57,57は、+X方向に搬送される基材90に形成された触媒層92の+Y側の端部92Eおよび−Y側の端部92E各々を撮影する。一対のカメラ57,57は、基材90の+Z側に配されており、一対のY軸方向に間隔をあけて支持部材562に固定されている。一対のカメラ57,57によって撮影された画像は、制御部60に送信される。一対のカメラ57,57の撮影範囲は、発振器52が電磁波を照射する基材90上の位置よりも搬送方向上流側(−X側)である。
幅方向移動部58は、発振器52および検出器54をY軸方向(基材90の幅方向)に移動させる機構である。ここでは、幅方向移動部58は、垂直方向移動部56に接続されており、垂直方向移動部56とともに発振器52および検出器54をY軸方向に一体的に移動させる。幅方向移動部58は、リニアモータ機構またはボールネジ機構などの駆動機構により構成され得る。幅方向移動部58の動作は、移動制御部605によって制御される。
<制御部60>
制御部60は、塗工システム10全体の動作を制御する。制御部60のハードウェアとしての構成は、一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部60は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMを備える。制御部60は、制御用アプリケーションまたは各種データを記憶する記憶部62に接続されている。
図4に示すホワイトノイズ取得部602、リファレンス取得部603、担持量特定部604、および、通知部606は、制御部60のCPUがアプリケーションに従って動作することによってソフトウェア的に実現される機能モジュールである。なお、これらの機能モジュールは、専用回路などのハードウェア構成によって構成されていてもよい。
ホワイトノイズ取得部602は、発振器52から出力されるテラヘルツ波が入射しない状態で検出素子540各々から出力される電気信号のホワイトノイズ信号(定常雑音)を取得する。ホワイトノイズ取得部602は、取得したホワイトノイズ信号を、検出素子540各々から出力される信号を補正するためのホワイトノイズ値620として、記憶部62に格納する。
リファレンス取得部603は、基材90が存在しない状態で、発振器52から出力される電磁波を、検出素子540各々で測定される電界強度を取得する。リファレンス取得部603は、取得された電界強度を、検出素子540各々から出力される信号を補正するためのリファレンス値621として、記憶部62に格納する。
なお、発振器52および検出器54を、Y軸方向に移動させるY軸方向移動部を設けてもよい。この場合、基材90が支持ローラ240,242に支持された状態であっても、発振器52および検出器54をY軸方向にずらすことによって、リファレンス値621を取得できる。
担持量特定部604は、基材90に塗工された金属触媒の触媒担持量を特定する。担持量特定部604は、位置特定部6040、補正部6041および透過率取得部6042を備える。
位置特定部6040は、複数の検出素子540各々に入射する電磁波が透過した基材90上の位置(透過位置)を特定する。図3に示すように、検出素子540c各々に入射する電磁波が透過した基材90上の透過位置各々を特定する。透過位置各々は、発振器52、基材90、検出素子540各々の位置関係(発振器52、基材90、および検出素子540各々のXYZ直交座標系における座標位置)、および、エンコーダ226の出力から特定される基材90の移動距離に基づいて特定される。
例えば、図3に示すように、発振器52および検出器54の中心が一致しているものとする。そして、中心からL(j)の位置にある特定の検出素子540に着目する。この検出素子540に入射する電磁波が透過する基材90上の透過位置をLP1として、Y軸方向における中心からLP1までの距離をL(i)とおく。また、Z軸方向における発振器52から基材90までの距離をHM1、Z軸方向における基材90から検出器54までの距離をRとおく。すると、距離L(i)は、以下の式で表される。
L(i)=L(j)×HM1÷(HM1+R)・・・(1)
式(1)に基づき、検出器54の検出素子540各々に入射する電磁波が透過した、基材90における幅方向(Y軸方向)の位置が特定される。
また、位置特定部6040は、エンコーダ226の出力に基づき、検出素子540各々に入射した電磁波が透過した、基材90における長さ方向(X軸方向)の位置を特定する。具体的には、位置特定部6040は、特定の検出素子540にて電磁波を検出した時点での、基材90の移動距離(検出器54に対する相対的な移動距離)をエンコーダ226の出力に基づいて特定する。これによって、その電磁波が透過した、基材90における長さ方向の位置が特定される。
以上のように、位置特定部6040が基材90における電磁波各々の透過した幅方向の位置および長さ方向の位置を特定することによって、電磁波各々についての基材90上の透過位置が特定される。
補正部6041は、所定の補正処理を実行することによって、検出素子540が検出した電磁波強度から、外部的原因によって生じた誤差成分を取り除く。
例えば、補正部6041は、一対の検出素子540aが検出する基材外通過電磁波の強度に基づき、検出素子540c各々が検出する触媒層透過電磁波の強度を補正してもよい。基材外通過電磁波は、基材90または基材90に形成された触媒層92以外の環境的変化(湿度変化、温度変化など)の情報を含む。基材外通過電磁波の強度変化に基づいて、触媒層透過電磁波の電界強度を補正することによって、環境的要因によって生じた誤差成分を除去し得る。特に、テラヘルツ波は水分に吸収されやすいという性質を持つため、環境的要因の誤差成分を除去することは、触媒担持量を正確に特定する上で、極めて有効である。
基材外通過電磁波の電界強度に基づいて触媒層透過電磁波を補正する場合、例えば、あるタイミングにて検出素子540cが検出した触媒層透過電磁波の電界強度を、同タイミングにて検出素子540aが検出した基材外通過電磁波の電界強度で標準化するとよい。または、基材外通過電磁波の電界強度が、所定の基準値から所定の閾値を超えて増加または減少した場合、その増減値に応じた値を、触媒層透過電磁波の電界強度に適宜減算または加算してもよい。
また、補正部6041は、一対の検出素子540bが検出する端部透過電磁波に基づいて、検出素子540c各々が検出した触媒層透過電磁波の電界強度を補正してもよい。端部透過電磁波は、触媒層92が形成されていない基材90の部分を透過した電磁波である。このため、この端部透過電磁波の強度に基づいて、触媒層透過電磁波を補正することによって、基材90本体を透過することによって生じた誤差成分を補正し得る。
端部透過電磁波の電界強度に基づいて補正する場合、例えば、端部透過電磁波の電界強度が、所定の基準値から所定の閾値を超えて増加または減少した場合に、その増減値に応じた値を、触媒層透過電磁波の電界強度に適宜減算または加算するとよい。
また、補正部6041は、中間非塗工領域904を透過した非触媒層透過電磁波の強度に基づいて、検出素子540c各々が検出した触媒層透過電磁波の電界強度を補正してもよい。非触媒層透過電磁波も、端部透過電磁波と同様に、基材90のうち触媒層が形成されてない部分を透過した電磁波である。この非触媒層透過電磁波の強度に基づいて、触媒層透過電磁波を補正することによって、基材90の透過によって生じた誤差成分を補正できる。
端部触媒層透過電磁波は、触媒層透過電磁波を検出する複数の検出素子540cに隣接する一対の検出素子540bによって検出され得る。一対の検出素子540bと複数の検出素子540cとは、位置が異なるため、電磁波の受光エネルギーが相違するほか、検出感度に個体差があり得る。これに対して、非触媒層透過電磁波は、触媒層透過電磁波を検出する検出素子540c各々自身によって検出される。したがって、検出素子540cごとに、それぞれが検出した非触媒層透過電磁波の電界強度に基づいて、補正処理を行うことができる。したがって、受光エネルギーの相違あるいは検出感度の個体差に関わらず、触媒層透過電磁波の電界強度に含まれる誤差成分を好適に補正できる。
図2に示すように、中間非塗工領域904が所定の間隔で間欠的に形成される場合、非触媒層透過電磁波の電界強度も、基材90の長手方向に隣接する中間非塗工領域904,904の間隔に合わせて検出される。このため、上記補正処理を行う場合には、直前に検出された直近の中間非塗工領域904を透過した非触媒層透過電磁波の電界強度に基づいて、各触媒層透過電磁波を補正するとよい。各触媒層92に近い位置の中間非塗工領域904を透過した電磁波の電界強度で触媒層透過電磁波を補正できるため、誤差成分を好適に除去できる。
<回折成分の補正>
さらに、補正部6041は、触媒層92の両側の端部92E,92Eにて電磁波が回折することにより発生する回折電磁波(以下、回折電磁波とも称する。)の電界強度(以下、回折成分とも称する。)を除去する補正を行う。ここで、電磁波の回折現象について説明する。
<電磁波の回折について>
図5は、電磁波の回折現象を説明するための図である。図5に示すように、発振器52から扇状に放射された電磁波のうち、触媒層92のY軸方向(基材90の幅方向)両側の端部92E(塗工領域900の端部)では、電磁波の回折現象が起こり得る。端部92Eで回折した電磁波(以下、「回折電磁波」とも称する。)は、障害物である触媒層92の背後に回り込んで伝わる。すると、端部92Eの−Z方向の直下にある検出素子540およびその周辺のいくつかの検出素子540は、触媒層92を透過した透過電磁波(触媒層透過電磁波)の強度のほか、回折電磁波の強度とを検出し得る。この場合、回折電磁波の影響を受けるために、触媒層92における金属触媒の担持量を精度良く測定することが困難となり得る。
一般的に、回折現象は、波長が長いほど顕著に起こる。そして、回折位置から離れる程、回折光が広がる。検出素子540各々が検出する回折電磁波の強度は、式(2)で表される。
式(2)において、「u(x',y')」は各検出素子540における強度分布(振幅分布)であり、「x'」「y'」は各検出素子540上におけるX軸方向、Y軸方向各々の位置である。「f(x,y)」は開口関数であり、「x」「y」はX軸方向、Y軸方向各々回折位置である端部92EのX軸方向およびY軸方向各々の位置である。また、「A」は振幅、「i」は虚数単位、「k」は波数(伝播定数)、「R」はZ軸方向における端部92Eから検出器54までの距離(図5参照)、「λ」は電磁波の波長である。
本例では、複数の検出素子540は、Y軸方向に沿って一列に並べられている。そして、これらのX軸方向の位置は発振器52から出力される扇状の電磁波とほぼ一致する。このため、各検出素子540に入射する回折電磁波の強度は、式(2)のうちY軸方向の成分のみを表した式(3)に簡略化される。
式(2)または式(3)が示すように、検出素子540各々が検出する回折電磁波の強度は、回折位置(触媒層92の端部92E)から遠いほど小さくなり、回折位置に近いほど大きくなる。式(3)に基づいて、各検出素子540に入射する回折電磁波の回折成分を算出することが可能である。
なお、式(2)または式(3)で求められる回折電磁波の強度を、直接補正に用いてもよいが、本実施形態では、回折電磁波の強度を求めるため、予め回折成分補正情報623が取得される。補正部6041は、この回折成分補正情報623に基づき、検出素子540各々が検出した電磁波の強度から回折成分を除去する補正を行う。次に、回折成分補正情報623の取得方法について、図6を参照しつつ説明する。
<回折成分補正情報623の取得方法>
図6は、回折成分補正情報623の取得方法について説明するための図である。回折成分補正情報623を取得する場合、ここでは、基材90における触媒層92が形成されていない部分を利用するとよい。この基材90は、触媒層92形成前のものとされるが、触媒層92が形成されたものを用いてもよい。後者の場合には、触媒層92が形成されていない部分(例えば、中間非塗工領域904)を利用し得る。
基材90は、基材90が支持ローラ240,242に掛け渡されることによって、発振器52と検出器54との間に配される。このとき、発振器52と基材90との間のZ軸方向の距離が所定の基準距離HM1となるように、垂直方向移動部56が発振器52および検出器54がZ軸方向に位置付けされる。
まず、発振器52および検出器54がこのように位置付けされた状態で、発振器52から出力される電磁波の強度が、検出器54の検出素子540各々によって測定される。このときに検出される強度は、基材90のみを透過する電磁波の強度(リファレンス強度)である。
続いて、基材90の上面に金属薄膜920が設置される。金属薄膜920は、発振器52から出力される電磁波(テラヘルツ波)を透過させない材料で形成されている。また、金属薄膜920のY軸方向の幅寸法は、基材90に形成される触媒層92の設計上の幅寸法(基準幅LM1)と一致させている。この状態で発振器52から金属薄膜920に向けて電磁波を照射することによって、−Y側および+Y側の端部920E,920Eにて回折電磁波を発生させる。−Y側で発生した回折電磁波の強度は、−Y側の端部920Eに近い検出素子540各々によって検出され、+Y側で発生した回折電磁波の強度は、+Y側の端部920Eに近い検出素子540各々によって検出される。
金属薄膜920は発振器52から出力される電磁波を透過させないため、端部920E,920EよりもY軸方向内側にある幾つかの検出素子540では、回折電磁波のみの電界強度が検出され得る。また、端部920EよりもY軸方向外側にある検出素子540が検出する電界強度は、金属薄膜920の外側を通過した電磁波の電界強度とともに回折電磁波の電界強度を含み得る。このため、上記リファレンス強度を差し引くことによって、回折電磁波のみの電磁波強度を算出し得る。
両側の端部920E,920Eの距離が近い場合、Y軸方向中央付近にある検出素子540が、−Y側で発生した回折電磁波強度と、+Y側で発生した回折電磁波強度との双方を検出し得る。この場合、−Y側と+Y側との各々で発生する回折電磁波強度を切り分けが困難である。
この場合、例えば、LM1よりも充分に幅広の金属薄膜920を用意し、一方の端部920Eを−Y側の基準位置LS1に配置して、他方の端部920Eを基準位置LS2よりも+Y側に配置させるとよい。この状態で、基準位置LS1にて回折電磁波を発生させることにより、−Y側だけで発生する回折電磁波を検出器54によって検出することができる。また、これと同様に、その金属薄膜920の一方の端部920Eを+Y側の基準位置LS2に配置し、他方の端部920Eを基準位置LS1よりも−Y側に配置させて、回折電磁波の測定を行うとよい。これらの手順で回折電磁波強度を測定することによって、−Y側の基準位置LS1において発生する回折電磁波の強度、および、+Y側の基準位置LS2にておいて発生する回折電磁波の強度を切り分けて測定し得る。
以上の処理により、基準位置LS1,LS2各々で発生する回折電磁波の強度が検出素子540各々によって検出される。各検出素子540によって検出された回折電磁波強度が、回折成分補正情報623として記憶部62に保存される。ここでは、回折成分補正情報623は、各検出素子540の位置(すなわち、検出器54上のY軸方向の位置)と、各検出素子540が検出した電界強度とが1対1で対応づけされたテーブルデータ情報とされ得る。ただし、回折成分補正情報623は、測定値に基づいて、Y軸方向の位置と電界強度の関係を示す1次式または多項式の近似式の情報としてもよい。
回折成分補正情報623が示す回折電磁波強度は、実際に基材90に形成された触媒層92の端部92E,92Eにおいて発生する回折電磁波強度とし得る。回折成分補正情報623は、実際に検出素子540各々が検出した電磁波強度から、回折成分補正情報623が示す回折成分を差し引く。これによって、回折電磁波強度が除かれた電磁波強度を取得し得る。詳しくは、検出素子540cが検出した電磁波強度から回折成分を差し引くことによって、触媒層透過電磁波を適切に取得し得る。また、検出素子540a,540bが検出した電磁波強度から、回折電磁波強度を差し引くことによって、基材外通過電磁波および端部領域透過電磁波をそれぞれ適切に取得し得る。
図4に戻って、制御部60の構成について説明する。移動制御部605は、垂直方向移動部56の動作を制御する。具体的に、移動制御部605は、搬送される基材90に形成された触媒層92の+Y側および−Y側の端部位置各々の、基準位置からのずれ量に基づき、発振器52および検出器54をZ軸方向に移動させる。触媒層92の+Y側および−Y側の、Y軸方向の位置(端部位置)は、一対のカメラ57,57が撮影した画像を端部位置特定部6050が処理することによって特定される。
一対のカメラ57,57は、発振器52が電磁波を照射する基材90上におけるX軸方向の位置よりも搬送方向上流側(−X側)の地点を撮影するように各撮影視野が設定されている。このため、端部位置特定部6050は、基材90上における電磁波が照射される前の端部92Eの位置を特定する。
塗工部30が形成する触媒層92のY軸方向は、基材90のY軸方向の中央に、基準幅LM1で触媒層92を形成する。しかしながら、塗工部30の塗工誤差によって、触媒層92の幅寸法は変化し得る。触媒層92の幅寸法が変化すると、発振器52に対する触媒層92の端部92Eの位置がY軸方向に変動することとなる。また、発振器52に対する端部92Eの位置は、搬送部20の搬送誤差によっても、Y軸方向に変動し得る。このように、端部92EのY軸方向の位置が変動すると、端部92Eに対する電磁波の入射角が変わることにより、回折電磁波の回折強度が変動し得る。すると、回折電磁波の電界強度を精度良く特定することが困難となり得る。
そこで、本実施形態では、端部位置特定部6050によって特定された端部92Eの位置に基づき、この端部92Eに対する電磁波の入射角を修正するように、発振器52および検出器54のZ軸方向の位置付けを実行する。この詳細について、図7〜図9を参照しつつ説明する。
図7は、搬送中の基材90に形成された触媒層92の両側の端部92E,92Eを示す概略平面図である。図8および図9は、搬送中の基材90を示す概略正面図である。なお、図8および図9においては、基材90の図示を省略し、触媒層92を図示している。
図7および図8に示す触媒層92は、破線で示す規定の基準幅LM1よりも大きい幅寸法LM2となっている。具体的には、−Y側の端部92Eの位置LE1が基準位置LS1から−Y方向にΔLだけずれており、+Y側の端部92Eの位置LE2が基準位置LS2から+Y方向にΔLだけずれている。
ここで、触媒層92の両側の端部92E,92Eを透過する電磁波を、端部電磁波TE1,TE2とする。また、触媒層92が基準幅LM1であって、発振器52から基材90までの距離が基準距離HM1のとき、図8中破線で示す端部電磁波TE1,TE2の基材90に対する入射角(端部電磁波TE1と、基材90に垂直なZ軸とがなす角度)をαとする。以下では、この入射角αを、基準入射角αとも称する。また、触媒層92の幅寸法がLM2になったときの端部電磁波TE1,TE2の入射角をβとする。すると、触媒層92の幅寸法が基準幅LM1よりも大きくなることによって、端部電磁波TE1,TE2各々がY軸方向外側に広がるため、入射角βは基準入射角αよりも大きい値となる。
このように端部電磁波TE1,TE2の入射角が変動すると、端部92E,92Eにて発生して検出器54に検出される回折電磁波の電界強度が変動し得る。そこで、本実施形態では、移動制御部605は、触媒層92の端部92E,92Eのずれ量に応じて、垂直方向移動部56を制御することによって、発振器52および検出器54をZ軸方向に移動させる。より詳細には、移動制御部605は、端部電磁波TE1,TE2の入射角を一定値(ここでは基準入射角α)に近づけるように、垂直方向移動部56を制御する。
図6で説明したように、回折成分補正情報623を取得する際、金属薄膜920の端部920E,920Eが基準位置LS1,LS2に一致するように、その幅寸法が基準幅LM1とされている。また、発振器52と基材90との間の距離は、基準距離HM1とされている。このため、端部920E,920Eを通る電磁波TE11,TE12の入射角は、基準入射角αに一致している。したがって、触媒層92における担持量の測定を行う際に、端部電磁波TE1,TE2の入射角を基準入射角αに近づけることによって、各検出素子540に入射する回折電磁波の強度を、回折成分補正情報623を取得したときの回折電磁波の強度に近づけることができる。これにより、回折成分補正情報623を適用して電磁波強度の補正を精度良く行うことができる。
図9に示すように、発振器52と検出器54間の距離をHD、検出器54における触媒層透過電磁波の入射範囲の幅寸法(入射位置LY1,LY1間の幅寸法。ここでは、複数の検出素子540cの幅)をLDとする。また、触媒層92の幅寸法をLM、発振器52と基材90との間の距離をHMとする。すると、移動制御部605は、HD、LD、LMおよびHMが、次の式(4)を満たすように発振器52および検出器54を移動させるとよい。
HM=HD×LM/LD・・・(4)
式(4)において、HDおよびLDは、ここでは、予め定められた定数である。式(4)によると、触媒層92の幅寸法LMが基準幅LM1のときは、距離HM(=基準距離HM1)はHD×LM1/LDとなる。また、触媒層92の幅寸法LMがLM2のときは、距離HM(=HM2)は(HD×LM2/LD)となる。距離HM2と距離HM1の差をΔH(=HM2−HM1)とおくと、ΔHは次の式(5)で表される。
ΔH=HD×(LM2−LM1)/LD=HD×2ΔL/LD・・・(5)
触媒層92の幅寸法がLM2となった場合には、この式(5)から求められるΔHだけ、発振器52および検出器54を移動させることにより、端部電磁波TE1,TE2の入射角を基準入射角αとすることができる。
なお、図7〜図9に示す例は触媒層92の両側の端部92E,92Eが外側に同一のΔLだけずれた場合であるが、両側の端部92E,92Eのずれ量が異なる場合もあり得る。例えば、−Y側の端部92Eが外側にΔL1、+Y側の端部92Eが外側にΔL2ずれることも想定される。この場合、2つのずれ量ΔL1,ΔL2のうちどちらか一方のずれ量を2倍して基準幅LM1に加算した値を式(4)のLMに代入し、距離HMを求めてもよい。例えばΔL1を選択した場合には、―Y側の端部92Eを通る端部電磁波TE1の入射角を基準入射角αとすることができる。ΔL2を選択した場合には、+Y側の端部電磁波TE2の入射角を基準入射角αとすることができる。
また、両側のずれ量ΔL1,ΔL2が異なる場合に、実際の幅寸法(=LM1+ΔL1+ΔL2)を式(4)のLMに代入して、距離HMを求めてもよい。この場合、端部電磁波TE1,TE2の双方の入射角は、基準入射角αとはならない、基準入射角αに接近した値とし得る。
本実施形態では、幅方向移動部58により発振器52および検出器54をY軸方向に移動させることが可能とされている。そこで、両側のずれ量ΔL1,ΔL2が異なる場合には、発振器52および検出器54のY軸方向の中心を、触媒層92のY軸方向中央に位置付けしてもよい。これによって、触媒層92の両側のずれ量ΔL1,ΔL2が異なる場合でも、両側の端部電磁波TE1,TE2の入射角を基準入射角αとすることができる。
また、触媒層92の幅寸法がLM1より大きいLM2になると、端部電磁波TE1,TE2が入射する検出器54上の入射位置LY1,LY2が、外側に変位する。図8に示すように、本例では、触媒層92の幅寸法がLM1の場合、入射位置LY1,LY2は、複数の検出素子540cのうち最も+Y側、および、最も−Y側の検出素子540c上であるが、触媒層92の幅寸法がLM2の場合、入射位置LY1,LY2は、+Y側および−Y側の検出素子540b上となる。
このように、触媒層92の端部92E,92Eが外側にずれると、検出器54における触媒層92を透過した触媒層透過電磁波の入射範囲が、所定の基準入射範囲SR1よりも広がることとなる。本例の場合、触媒層透過電磁波は、複数の検出素子540cによって検出されるべきであるところ、その入射範囲が基準入射範囲SR1よりも広がることによって、隣接する検出素子540b,540bにも入射することとなる。この場合、端部領域透過電磁および基材外通過電磁波の強度を適切に検出することが困難となり得る。また、仮に、検出器54が、検出素子540a,540bを含まず、複数の検出素子540cのみで構成されている場合には、触媒層透過電磁波の入射範囲が基準入射範囲SR1よりも広がると、全ての触媒層透過電磁波を検出することが困難となり得る。
これに対して、本実施形態では、図9に示すように、端部電磁波TE1,TE2入射角が入射角αに近づけられる。このため、触媒層92の幅が基準幅LM1よりも大きくなった場合にも、図9に示すように、触媒層92を透過する触媒層透過電磁波の入射範囲を基準入射範囲SR1に近づけることもできる。
図7〜図9に示す例は、両側の端部92E,92Eの位置LE1,LE2が、基準位置LS1,LS2から外側にずれた場合であるが、位置LE1,LE2が基準位置LS1,LS2よりも内側にずれる場合もあり得る。この場合、触媒層92の幅寸法(基準幅LM1よりも小さい値)を式(4)に代入すると、距離HMは、基準距離HM1よりも小さくなる。すなわち、発振器52および検出器54を基準位置よりも−Z側に移動させるとよい。
移動制御部605が、垂直方向移動部56または幅方向移動部58を制御して、発振器52および検出器54をZ軸方向またはY軸方向に移動させた場合には、その移動方向および移動量を含む移動情報が担持量特定部604の位置特定部6040に与えられる。位置特定部6040は、この移動情報を含めて透過位置を特定することにより、発振器52および検出器54を基材90に対して相対的に移動させた場合でも、基材90における透過位置を適切に特定し得る。
<回折成分補正情報623の位置情報の修正処理>
図10は、回折成分補正情報623が示す位置情報の修正処理を説明するための概略正面図である。上述したように、補正部6041は、回折成分補正情報623を適用することにより、各検出素子540が検出した電界強度から回折電磁波強度の成分を除去する。ここで、回折成分補正情報623は、図6において説明したように、基準位置LS1(または基準位置LS2)で回折電磁波を発生した場合における、検出器54上のY軸方向の位置y’とその回折電磁波の電界強度との対応関係を示す情報である。触媒層92の端部92E,92EがY軸方向にずれた場合には、回折位置がずれることによって、回折電磁波の検出器54に対する入射位置もずれることとなる。すると、検出器54上におけるY軸方向の位置y’と回折電磁波の電界強度との対応関係が、回折成分補正情報623が示す対応関係についてY軸方向に位置ずれしたものとなる。そこで、補正部6041は、端部92E,92Eの基準位置LS1,LS2からの位置ずれに合わせて、回折成分補正情報623が示す対応関係における位置情報をシフト修正する位置修正処理を行う。
例えば、図10に示すように、触媒層92の−X側の端部92Eの位置が、基準位置LS1から位置LE1に−Y側へΔLだけずれると、回折位置が−Y側にΔLだけシフトする。このため、補正部6041は、回折成分補正情報623が示すY軸方向の位置を−Y側へΔLだけシフトさせて、そのシフト後のY軸方向の位置に対応する電界強度(回折電磁波強度)を、各検出素子540が検出した電界強度から差し引く。これによって、補正部6041は、回折成分補正情報623の位置情報を端部92E,92Eの位置ずれに応じて適正に修正し得るため、回折電磁波強度を除去する補正を適正に行い得る。
<回折成分補正情報623の強度情報の修正処理>
本実施形態では、図9において説明したように、触媒層92の両側の端部92E,92Eのずれに応じて、垂直方向移動部56が発振器52および検出器54をZ軸方向に移動させる。図9,図10に示す例では、発振器52および検出器54が基材90に対してΔHだけ上昇することにより、端部92E,92Eが検出器54にΔHだけ接近することとなる。この場合、検出器54においてされる回折電磁波強度は、式(3)に示すRを(R−ΔH)に置換した値となる。具体的には、全データに対して強度がR/(R−ΔH)だけ強くなり、Y軸方向の位置y’における強度が((R−ΔH)2+(y−y’)2)1/2/(R2+(y−y’)2)1/2だけ変化する。そこで、補正部6041が、回折成分補正情報623について、Y軸方向の位置y’毎に、これら2つの算出補正を行うようにしてもよい。
図4に戻って、透過率取得部6042は、触媒層透過電磁波の透過率を取得する。透過率取得部6042は、検出素子540c各々が検出した触媒層透過電磁波の電界強度またはその補正値から、ホワイトノイズ値620を減じた上で、その値を検出素子540c各々に対応するリファレンス値621で除する。これによって、透過率取得部6042は、検出素子540c各々で検出された触媒層透過電磁波の透過率を取得する。
担持量特定部604は、透過率取得部6042が取得した透過率と、記憶部62に格納された対応情報622とに基づいて、触媒担持量を特定する。対応情報622は、触媒層を透過する電磁波の透過率と触媒担持量の対応関係を示す情報である。電磁波、特にテラヘルツ波は、金属触媒に照射されると、金属触媒の密度に応じてその一部が吸収または反射されるため、電磁波の透過率と触媒担持量との間には高い相関を有する。このため、電磁波の透過率と、対応情報622とに基づいて、塗工領域900の透過位置各々における触媒担持量を精密に算出できる。
対応情報622は、事前に触媒担持量が既知である触媒層が形成された試料(基準試料)を用いて取得するとよい。詳細には、担持量測定部50において、基準試料の触媒層における電磁波の透過率が測定されることによって、透過率と担持量との対応関係が取得され得る。このとき、触媒担持量が異なる幾つかの基準試料を用いることによって、対応情報622を取得するとよい。対応情報622は、透過率と触媒担持量とを1対1で対応づけされたテーブルデータとしてもよいし、透過率と触媒担持量の関係を示す1次式または多項式の関係式を示す検量線データとしてもよい。
担持量特定部604は、特定した触媒担持量を、位置特定部6040が特定した基材90上の透過位置に対応づけし、触媒担持量データ624として記憶部62に保存する。
なお、担持量特定部604の測定頻度(検出素子540各々から電磁波強度を取り込む単位時間あたりの回数)は、特に限定されないが、1Hz以上とするとよい。例えば、検出素子540各々が検出する電磁波強度を、0.5秒ごとに1回取得するとした場合、基材90の搬送速度が10mm/secであれば、5mmごとに電磁波強度を取得できる。0.1mm〜10mmの測定間隔で電磁波強度を取得することによって、X軸方向について0.1mm〜10mmの分解能で触媒担持量を測定できる。この分解能は、現行の打ち抜き重量測定法と同等以上の分解能である。
通知部606は、触媒担持量データ624に基づいて、基材90における触媒担持量に関するデータを外部に出力する。例えば、通知部606は、触媒担持量データ624に基づいて、基材90における触媒担持量の分布を示す、触媒担持量分布画像を表示部64に表示する。触媒担持量分布画像は、各透過位置における触媒担持量の大きさを色または模様などで表現した二次元画像、もしくは、各透過位置における触媒担持量の大きさを三次元グラフで表現した三次元画像としてもよい。
また、通知部606は、触媒担持量が規定の上限値を超える透過位置、および、触媒担持量が規定の下限値を超えない透過位置がある場合に、外部に通知する。上限値および下限値は、触媒担持量の正常な範囲を示す値である。上限値および下限値は、オペレータが、入力デバイスで構成される操作入力部66を介して、制御部60に入力できるようにするとよい。上限値および下限値は、それぞれ上限値データ626および下限値データ628として記憶部62に格納される。
通知部606は、触媒担持量が上限値を超える透過位置、または、下限値を超えない透過位置が存在することを、外部に通知することによって、触媒担持量が正常値の範囲外にあることを、オペレータなどが容易に認識できる。このとき、その透過位置を触媒担持量分布画像上において所定の方法で表示することによって、オペレータがその位置を容易に特定できる。なお、通知部606は、触媒担持量の異常の有無を、例えばランプの点灯などによって外部に通知してもよい。
<塗工システム10の動作>
図11は、実施形態の塗工システム10の動作の流れを示すフロー図である。図11に示す各工程は、特に断らない限り、制御部60が塗工システム10の各要素の動作を制御することによって行われるものとする。
まず、ホワイトノイズ値620およびリファレンス値621の取得が行われる(ステップS10)。このステップS10は、基材90が一対の支持ローラ240,242上に支持されていない状態、すなわち、発振器52と複数の検出素子540との間に基材90が存在しない状態で行われる。
なお、ホワイトノイズ値の取得については、一対の支持ローラ240,242に基材90が支持された状態で行われてもよい。
続いて、ステップS11およびステップS12において、回折成分補正情報623の取得処理が行われる。詳細には、供給用ローラ220から引き出された基材90の端部が、巻取用ローラ222に取付けられる。そして、供給用ローラ220から巻取用ローラ222に至るまでの基材90の部分は、一対の支持ローラ240,242を含む各ローラに掛け渡される。そして、リファレンス強度の取得が行われる。すなわち、担持量測定部50において、発振器52から出力された電磁波が、触媒層92が形成されていない基材90のみの部分に照射される。そして、基材90のみの部分を透過した電磁波の強度(リファレンス強度)が、検出器54によって検出される(ステップS11)。
続いて、ステップS12において、金属薄膜920が基材90上に設置された状態で、電磁波測定が行われる。詳細には、図6において説明したように、金属薄膜920の両側の端部が基準位置LS1,LS2に配された状態で、発振器52からの電磁波が基材90に照射することによって回折電磁波を発生させ、その電界強度が検出器54により検出される。これらステップS11,S12により、回折成分補正情報623が取得される。
続いて、触媒層形成処理が開始される(ステップS13)。詳細には、ローラ駆動部28が巻取用ローラ222を回転させることによって、基材90のロールtoロールの搬送が開始される。
また、基材90の搬送が開始されると、塗工部30のスリットノズル32から基材90の表面に白金などの金属触媒を含む塗工液が塗布される。金属触媒が塗工された部分は、乾燥部40にて乾燥処理を受けることによって、触媒層92が形成される。なお、図2に示すように、触媒層92が間欠的に形成されるため、基材90には、長手方向において、触媒層92に対応する塗工領域900と、中間非塗工領域904とが交互に形成される。
また、ステップS13の触媒層形成処理が開始されると、担持量測定部50により、触媒層92における金属触媒の担持量を測定する担持量測定処理が行われる。担持量測定処理の流れについては、後述する。
続いて、触媒層形成処理を終了するかどうかが判定される(ステップS14)。この判定処理は、例えば、エンコーダ226によって検出される基材90の移動量が所定の閾値を超えたか否かに基づいて判定される。
ステップS14において、触媒形成処理を終了すると判定された場合(YESの場合)、停止処理が行われる(ステップS15)。詳細には、塗工部30のスリットノズル32からの塗工液の吐出が停止された後、乾燥部40における乾燥処理が停止される。そして、ローラ駆動部28による巻取用ローラ222の回転が停止されることによって、基材90の搬送が停止される。
なお、乾燥部40の乾燥処理は、基材90における塗工液が塗布された部分の後端部(搬送方向上流側の末端部)が乾燥部40を通過した後に停止されるとよい。また、ステップS15の停止処理においては、上記塗工液の後端部まで後述する担持量測定処理が行われるとよい。
続いて、触媒担持量の測定結果の通知処理が行われる(ステップS16)。測定結果の通知方法は、特に限定されるものではないが、例えば、触媒層92における触媒担持量の分布二次元画像または三次元画像として表現された画像を表示部64に表示することが考えられる。このような画像の表示は、例えばオペレータが操作入力部66を操作して、特定の領域を指定することによって、制御部60がその領域における担持量分布を示す画像を表示部64に表示するとよい。以上が、塗工システム10の全体動作説明である。
図12は、実施形態の担持量測定処理を示すフロー図である。この担持量測定処理は、図11に示すステップS13の触媒層形成処理の際に実行される。
触媒形成処理においては、上述したように、搬送中の基材90に対する塗工液の塗布と乾燥処理とによって、基材90の表面に触媒層92が形成される。担持量測定処理では、まず、担持量測定部50を通過する触媒層92両側の端部92E,92EのY軸方向の位置(端部位置)が特定される(ステップS20)。詳細には、一対のカメラ57,57が、触媒層92の端部92E,92E各々を撮影して取得し、それによって取得される画像を端部位置特定部6050が処理する。これによって、触媒層92における端部92E,92EのY軸方向の位置各々が特定される。
続いて、発振器52および検出器54の位置付け処理が行われる(ステップS21)。詳細には、ステップS20において特定された触媒層92の両側の端部92E,92Eの位置に応じて、移動制御部605が垂直方向移動部56を制御することにより、発振器52および検出器54をZ軸方向に位置付けする。より詳細には、図9において説明したように、移動制御部605は、触媒層92の端部92E,92Eを通過する端部電磁波TE1,TE2の入射角を基準入射角αに近づけるように、発振器52および検出器54を位置付けする。なお、ステップS21の位置付け処理は、ステップS20において端部位置が特定された部分が、発振器52から出力される電磁波が照射される位置に到達する直前のタイミングで実行される。
続いて、電磁波測定が行われる(ステップS22)。詳細には、発振器52から扇状に電磁波が基材90に向けて出力され、その基材90を透過した電磁波を検出器54の複数の検出素子540が検出する。ここでは、塗工領域900(触媒層92)を透過した触媒層透過電磁波は、複数の検出素子540cによって検出される。また、端部非塗工領域902を透過した端部透過電磁波は、一対の検出素子540bによって検出される。さらに、基材90の外側を通過した基材外通過電磁波は、一対の検出素子540aによって検出される。検出器54は、検出素子540各々が検出した電磁波強度を電気信号に変換し、その電気信号を制御部60に入力する。
続いて、回折成分補正情報623の修正処理が行われる(ステップS23)。詳細には、図10において説明したように、補正部6041が、−Y側の端部92Eの位置の基準位置LS1からのずれ量、および、+Y側の端部92Eの位置の基準位置LS2からのずれ量に応じて、回折成分補正情報623が示すY軸方向の位置をシフトさせる。
ステップS23の修正処理においては、回折成分補正情報623が示す回折電磁波の強度を修正する処理が行われてもよい。詳細には、図9,10において説明したように、垂直方向移動部56が発振器52および垂直方向移動部56をZ軸方向に移動させることによって、触媒層92の端部92E,92Eから検出器54までの距離Rが変動する。補正部6041は、この距離Rの変動量に応じて、回折電磁波の強度修正を行う。
続いて、検出素子540各々に入射した電磁波が透過した基材90上の透過位置を特定する透過位置特定処理が行われる(ステップS24)。詳細には、図3において説明したように、発振器52、基材90、検出器54の位置関係に基づき、透過位置が特定される。このとき、ステップS21の位置付け処理によって、発振器52と基材90との間の距離が基準距離HM1から変更されている場合には、その変更量も考慮して、透過位置が特定される。
続いて、電磁波強度の補正処理が行われる(ステップS25)。詳細には、補正部6041が、ステップS22にて取得された電磁波強度を補正する。例えば、補正部6041は、ステップS23において修正された回折成分補正情報623を適用して、検出器54の各検出素子540が検出した電磁波強度から、回折電磁波強度を除去する補正を行う。
また、ステップS25の補正処理において、補正部6041は、検出素子540cが検出した触媒層透過電磁波の電界強度を、検出素子540aが検出した基材外通過電磁波の電界強度で補正してもよい。上述したように、基材外通過電磁波は、基材90または基材90に形成された触媒層92以外の環境的変化(湿度変化、温度変化など)の情報を含むため、本補正により、環境的要因によって生じた誤差成分を除去し得る。
また、ステップS25の補正処理において、補正部6041は、検出素子540cが検出した触媒層透過電磁波の電界強度を、検出素子540bが検出した端部透過電磁波の電界強度で補正してもよい。上述したように、端部透過電磁波は、触媒層92が形成されていない基材90本体の情報を含むため、本補正により、基材90を透過することによって生じる誤差成分を補正し得る。
続いて、透過率の取得処理が行われる(ステップS26)。詳細には、透過率取得部6042は、ステップS25の補正処理によって取得された、触媒層透過電磁波の電界強度の補正値からホワイトノイズ値620を減じ、さらに得られた値をリファレンス値621で除する。これによって、透過率取得部6042は、検出素子540各々で検出された触媒層透過電磁波から、透過率を取得する。
続いて、担持量の特定処理が行われる(ステップS27)。詳細には、担持量特定部604が、ステップS20において取得された透過率と、記憶部62に格納された対応情報622とに基づいて、担持量が特定される。担持量特定部604によって特定された担持量は、ステップS18において特定された透過位置の情報に対応付けされて、記憶部62に触媒担持量データ624として保存される。
続いて、触媒担持量の異常に関する判定処理が行われる(ステップS28)。詳細には、通知部606は、触媒担持量データ624を参照して、担持量特定部604によって特定された担持量を取得する。そして、通知部606は、その担持量と、既定の上限値データ626あるいは既定の下限値データ628とを比較する。担持量が、上限値を超えるあるいは下限値を下回る場合、異常ありと判定される。担持量が、上限値以下かつ下限値以上である場合、異常なしと判定される。
ステップS28において、異常ありと判定された場合(YESの場合)、通知部606が外部に異常を通知する(ステップS29)。具体的にはランプの点灯、あるいは、表示部64における異常箇所を示す画像の表示などが行われる。このとき、異常ありとされた透過位置に関する情報も通知されるとよい。ステップS28において、異常なしと判定された場合(NOの場合)、ステップS29がスキップされる。
ステップS28において異常なしと判定された場合(NOの場合)、あるいは、ステップS29の異常通知処理の後、担持量測定処理を終了するかどうかが判定される(ステップS30)。この判定処理は、例えば、エンコーダ226によって検出される基材90の移動量が所定の閾値を超えたか否かに基づいて判定される。
ステップS30において、担持量測定処理を継続すると判定された場合(NOの場合)、ステップS20に戻って、以降の動作が再び実行される。ステップS30において、担持量測定処理を終了すると判定された場合(YESの場合)、塗工システム10は担持量測定処理を終了する。
<効果>
以上のように、担持量測定部50は、基材90に形成された金属触媒の触媒層92における担持量を特定する際に、検出素子540各々が検出した電界強度から、触媒層92の幅方向両側の端部92E,92Eで発生する回折電磁波の電界強度を除去する補正処理を行う。これにより、触媒層92を透過する電磁波の透過率を適正に算出し得るため、触媒層92における各部分における金属触媒の担持量測定を精度良く行い得る。
また、触媒層92の端部92E,92EのY軸方向の位置を特定することによって、回折電磁波が発生する位置が特定される。そして、回折電磁波が発生する位置に応じて、回折成分補正情報623を修正して補正が行われるため、触媒層92における各部分の担持量を精度良く特定し得る。
さらに、移動制御部605が、端部92E,92EのY軸方向の位置に応じて、端部92E,92Eを通過する端部電磁波TE1,TE2の入射角を基準入射角αに近づけるように、発振器52および検出器54を基材90にしてZ軸方向に位置付けする。この位置付け処理によって、端部92E,92Eに対する端部電磁波TE1,TE2の入射角の変動による、回折電磁波の強度の変動を低減し得る。このため、検出素子540が検出した電界強度から、回折電磁波の強度を除去する補正を好適に行うことができる。
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、垂直方向移動部56は、発振器52および検出器54をZ軸方向に移動させるように構成されている。しかしながら、垂直方向移動部56、基材90をZ軸方向に移動させるように構成されていてもよい。この場合、垂直方向移動部56を、例えば一対の支持ローラ240,242をZ軸方向に移動させるようにするとよい。また、一対の支持ローラ240,242の内側に、基材90の+Z側主面および−Z側主面に当接する当接部材を設けてもよい。垂直方向移動部56がその当接部材をZ軸方向に移動させることによって、基材90における発振器52および検出器54間を通過する部分をZ軸方向に移動させることができる。
また、上記実施形態では、担持量測定部50は、ロールtoロールで搬送される基材90に触媒層92を形成する塗工システム10に組込まれている。しかしながら、担持量測定部50は、塗工システム10に組込まれることは必須ではない。例えば、予め触媒層92が形成された基材90をロールtoロールで搬送する搬送装置にも、担持量測定部50を組み合わせ得る。
また、担持量測定部50は、ロールtoロールで搬送される連続シート状の基材90における担持量を測定している。しかしながら、担持量測定部50は、所定長さのシート状に形成された基材における担持量測定にも適用し得る。
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。