本発明の懸濁重合用分散安定剤に用いられるビニルアルコール系共重合体は、その側鎖にアリル基を有し、ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位の合計に対するアリル基のモル比が特定の範囲にあり、かつ水溶性である。
本発明に用いられるビニルアルコール系共重合体は側鎖にアリル基を有するため、懸濁重合用分散安定剤として使用した場合、当該ビニルアルコール系共重合体のアリル基と生長ラジカルとの化学結合により得られたグラフトポリマーが分散質/分散剤界面に効率的に吸着されるために、少ない使用量でもビニル化合物の重合が安定し粗大粒子の生成が抑えられる。
このとき、ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位の合計に対するアリル基のモル比が、0.01/100〜5/100であることが重要である。上記モル比が0.01/100未満の場合、ビニル化合物の重合安定性が低下し、得られる重合体粒子が粗大化する。上記モル比は、0.1/100以上であることが好ましい。一方、上記モル比が5/100を超えると、得られる塩化ビニル重合体粒子の間でビニルアルコール系共重合体による橋架け構造の形成が起きやすくなり、スケールの付着または粗大粒子が増加する。また、ビニルアルコール系共重合体が水に不溶になるおそれもある。上記モル比は1/100以下であることが好ましい。
本明細書において、ビニルアルコール系共重合体が水溶性であるとは、90℃において、ビニルアルコール系共重合体が完全に溶解した4質量%の水溶液が得られることをいう。
アリル基の導入量は、ビニルアルコール系共重合体の重水又は重ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒中での1H−NMRスペクトル、またはけん化前のビニルエステル系共重合体の重クロロホルム溶媒中での1H−NMRスペクトルから測定する。
本発明に用いられるビニルアルコール系共重合体のけん化度は60〜99.9モル%であることが好ましい。けん化度が60モル%未満では、ビニルアルコール系共重合体が水に不溶となる場合がある。けん化度は65モル%以上であることがより好ましい。一方、けん化度が99.9モル%を超えると、工業的製造が難しいだけでなく、ビニルアルコール系共重合体水溶液の粘度安定性が悪くなり、取り扱いが困難な場合がある。けん化度は98モル%以下であることがより好ましい。
上記けん化度は、JIS−K6726(1994)に記載されているけん化度の測定方法により測定した値とする。このとき、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びアリル基を有する単量体単位以外の単位については、仮に含まれているとしても少量であるので、通常無視することができる。
本発明に用いられるビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度は100〜8000であることが好ましい。粘度平均重合度が100未満の場合、工業的生産が難しくなるおそれがある。また、そのようなビニルアルコール系共重合体を懸濁重合用の分散安定剤として使用してビニル化合物の重合を行った場合に、重合安定性が低下する場合がある。粘度平均重合度は200以上であることがより好ましい。一方、粘度平均重合度が8000を超えると、工業的生産が難しいだけでなく、ビニルアルコール系共重合体水溶液の粘度が非常に高くなり取り扱いが困難な場合がある。粘度平均重合度は5000以下であることがより好ましい。
上記粘度平均重合度は、JIS−K6726(1994)に準じて測定される。具体的には、ビニルアルコール系共重合体を再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:L/g)から、以下の式により算出できる。
粘度平均重合度=([η]×10000/8.29)(1/0.62)
本発明に用いられるビニルアルコール系共重合体のサイズ排除クロマトグラフィーから求める重量平均分子量Mwと数平均分量Mnの比(Mw/Mn)は2〜5であることが好ましい。比(Mw/Mn)が2未満では工業的生産が難しくなるおそれがある。また、比(Mw/Mn)が5を越える場合、ビニル化合物の重合安定性が低下するおそれがある。
本発明におけるビニルアルコール系共重合体の製造方法は特に限定されるものではないが、その好適な製造方法としては、以下の方法A、方法B及び方法Cが挙げられる。
方法A:酢酸ビニルとアリル基を有する多官能単量体とを共重合させてビニルエステル系共重合体を得てから、該ビニルエステル系共重合体をけん化してビニルアルコール系共重合体を得る方法。
方法B:酢酸ビニルと求電子基を有する単量体とを共重合させてビニルエステル系共重合体を得てから、該ビニルエステル系共重合体にアリル基を有する求核剤を反応させた後にけん化してビニルアルコール系共重合体を得る方法。
方法C:アリル基を有する求電子剤とビニルアルコール系重合体とを反応させてビニルアルコール系共重合体を得る方法。
まず、方法Aについて説明する。方法Aにおいて、酢酸ビニルとの共重合に使用されるアリル基を有する多官能単量体は分子内にアリル基を複数有するビニル系モノマーであり、特に限定されない。しかしながら、過剰な架橋反応が進行することによってビニルアルコール系共重合体の水溶性を阻害することがなく、しかも必要量のアリル基を導入できるものでなければならない。酢酸ビニルに対する多官能単量体の配合割合、重合温度、単量体濃度、重合率、重合度など、様々な要因を考慮しながら、適切な反応性を有する多官能単量体を選択する必要がある。過剰な架橋反応を抑制する観点からは、単量体中に含まれるアリル基は2つであることが好ましい。
上記多官能単量体としては、グリセリンジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテルなどのジアリルエーテル化合物、グリセリントリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルなどのトリアリルエーテル化合物、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテルなどのテトラアリルエーテル化合物のようなアリルエーテル基を有する単量体;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリルなどのカルボン酸ジアリルのようなアリルエステル基を有する単量体;イソシアヌル酸トリアリル;1,3−ジアリル尿素;リン酸トリアリル、ジアリルジスルフィドなどが例示される。これらの中でも、アリルエーテル基を有する単量体は重合度や二重結合量の制御が容易であり、より好適に用いられる。
方法Aにおいて、酢酸ビニルに対する上記多官能単量体の配合量は特に限定されず、得られるビニルアルコール系共重合体において、ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位の合計に対するアリル基のモル比が、0.01/100〜5/100となるようにすればよい。多官能性単量体の反応性や反応条件なども考慮して適当に設定される。
重合の方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法が挙げられる。また、重合は、無溶媒またはアルコール系溶媒の存在下で行うことができる。その中でも、無溶媒の塊状重合法およびアルコール系溶媒を用いた溶液重合法が好適に採用される。アルコール系溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどを単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。重合の方式は特に限定されず、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合のいずれでもよい。
酢酸ビニルと多官能単量体とを重合する際の温度(共重合温度)は特に限定されないが、0〜200℃であることが好ましく、30〜140℃であることがより好ましい。当該温度が0℃より低い場合、十分な重合速度が得られないことがある。当該温度が200℃より高い場合、酢酸ビニルや多官能単量体の分解が懸念される。
温度の制御方法は特に限定されない。当該制御方法としては、例えば、重合により生成する熱と、重合容器表面からの放熱とのバランスをとる方法が挙げられる。また、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法も挙げられる。安全性の面からは、後者の方法が好ましい。
重合開始剤は、重合方法に応じて、公知の開始剤(例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤など)から選択すればよい。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。過酸化物系開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネートなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。これらの開始剤に、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを組み合わせて開始剤としてもよい。レドックス系開始剤としては、例えば、上記過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせた開始剤が挙げられる。共重合を高温で行った場合に、酢酸ビニルの分解に起因する着色が見られることがある。その場合、着色の防止を目的として、酒石酸のような酸化防止剤を、酢酸ビニルに対して1〜100ppm程度、重合系に添加することはなんら差し支えない。
重合に際して、本発明の主旨が損なわれない範囲で、酢酸ビニルと多官能単量体以外の他の単量体を共重合してもよい。当該他の単量体としては例えば、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類;(メタ)アクリル酸およびその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体などの(メタ)アクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。このような他の単量体の共重合量は、通常5モル%以下である。
酢酸ビニルの重合率が20〜90%であることが好ましい。重合率が20%未満であると単位時間当たりに製造できるビニルエステル系共重合体の量が減少することによる生産効率の低下のおそれがあるとともに、酢酸ビニルを回収するためのコストが増加するおそれがある。生産効率とコストの観点から、重合率は30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。一方、重合率が90%を超えると、架橋反応が過剰に進行して、得られるビニルアルコール系共重合体の水溶性が低下するおそれがある。架橋反応の抑制の観点から、重合率は80%以下であることが好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。
酢酸ビニルの重合に際して、得られる共重合体の重合度を調節することなどを目的として、本発明の主旨が損なわれない範囲で、連鎖移動剤の存在下で行ってもよい。連鎖移動剤としては、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;2−ヒドロキシエタンチオールなどのメルカプタン類;トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。なかでもアルデヒド類およびケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数、ならびに目的とするビニルアルコール系共重合体の重合度に応じて決定すればよいが、一般に酢酸ビニルに対して0.1〜10質量%程度が望ましい。
けん化方法としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒やp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いた、加アルコール分解反応または加水分解反応が挙げられる。この反応に使用しうる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトンメチルエチルケトンなどのケトン類:ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、メタノールまたはメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒としてけん化することが簡便であり好ましい。けん化反応の条件は使用するビニルエステル系重合体の構造や目的とするビニルアルコール系重合体けん化度によって適宜調整されるが、通常、けん化は、触媒のモル数/ビニルエステル系重合体中のビニルエステル単位のモル数=0.001〜1.2、反応温度:20〜180℃、反応時間:0.1〜20時間の範囲で実施する。
次に方法Bについて説明する。方法Bにおいて、求電子基を有する単量体は特に限定されない。このような単量体としては、エポキシ基を有するビニルモノマーやイソシアネート基を有するビニルモノマーが挙げられる。中でも、重合から求核剤との反応までの間における加水分解等による求電子基の失活を抑制する観点から、求電子基を有する単量体がエポキシ基を有するビニルモノマーであることが好ましい。
エポキシ基を有するビニルモノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、ブタジエンモノエポキサイド、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−7−オクテン、1,2−エポキシ−9−デセン、8−ヒドロキシ−6、7−エポキシ−1−オクテン、8−アセトキシ−6、7−エポキシ−1−オクテン、N−(2,3−エポキシ)プロピルアクリルアミド、N−(2,3−エポキシ)プロピルメタクリルアミド、4−アクリルアミドフェニルグリシジルエーテル、3−アクリルアミドフェニルグリシジルエーテル、4−メタクリルアミドフェニルグリシジルエーテル、3−メタクリルアミドフェニルグリシジルエーテル、N−グリシドキシメチルアクリルアミド、N−グリシドキシメチルメタクリルアミド、N−グリシドキシエチルアクリルアミド、N−グリシドキシエチルメタクリルアミド、N−グリシドキシプロピルアクリルアミド、N−グリシドキシプロピルメタクリルアミド、N−グリシドキシブチルアクリルアミド、N−グリシドキシブチルメタクリルアミド、4−アクリルアミドメチル−2,5−ジメチル−フェニルグリシジルエーテル、4−メタクリルアミドメチル−2,5−ジメチル−フェニルグリシジルエーテル、アクリルアミドプロピルジメチル(2,3−エポキシ)プロピルアンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロピルジメチル(2,3−エポキシ)プロピルアンモニウムクロリド、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
イソシアネート基を有するビニルモノマーとしては、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アクリロイルイソシアネート−t−ブチル、メタクリロイルイソシアネート−t−ブチル、メタクリル酸エチルイソシアネート、アリルイソシアネート、メタリルイソシアネート等が挙げられる。
そして、酢酸ビニルと求電子基を有する単量体とを共重合させてビニルエステル系共重合体を得る。このときの重合条件は、アリル基を有する多官能単量体を、求電子基を有する単量体に変更する以外は、方法Aで説明したのと同様にすることができる。
こうして得られた求電子基を側鎖に有するビニルエステル系共重合体に対し、アリル基を有する求核剤を反応させる。ここで用いられる求核剤は、分子内にアリル基と求核基とを有する化合物であれば特に限定されない。当該化合物としては、アリルアミン、メタリルアミンなどのアミン;アリルメルカプタン、メタリルメルカプタン、2−メルカプトエチルアリルエーテル、4−メルカプトブチルアリルエーテルチオールなどのチオール;アリルアルコール、メタリルアルコール、イソプロペニルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル等のアルコール;3−ブテン酸、アジピン酸モノアリル、セバシン酸モノアリル、コハク酸モノアリル、フタル酸モノアリルなどのカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、反応性向上の観点から、求核剤はアリル基を有するアミン又はアリル基を有するチオールであることが好ましい。
アリル基を有する求核剤と側鎖に求電子基を有するビニルエステル系共重合体との反応は、無溶媒、または溶解もしくは膨潤させる溶媒中で実施される。このような溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、ベンゼントルエン、キシレン等の芳香族類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、n−ヘキサン等の炭化水素類が挙げられ、単独もしくは混合して使用される。反応条件は求電子基の構造や求核基の構造によって異なるが、通常、溶剤を使用する場合のポリマー濃度は5〜90%、求核剤のモル数/PVA中の求電子基のモル数=1.0〜5.0(モル比)、反応温度は0〜250℃、反応時間は0.01〜20時間である。
アリル基を有する求核剤と側鎖に求電子基を有するビニルエステル系共重合体との反応において、求電子基がエポキシ基の場合には、トリエチルアミンやピリジン等の3級アミン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン、水酸化ナトリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロオキサイド、ナトリウムメチラート等の塩基性化合物や酢酸ナトリウムや炭酸ナトリウム等の弱塩基性化合物、四塩化チタン、フッ化ホウ素類等のルイス酸、トリブチルアンモニウムクロリド、トリブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウムなどが反応触媒として有効である。求電子基がイソシアネート基の場合には、ジブチル錫ジラウレートなどの錫系触媒、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒、ナフテン酸鉛、酢酸カリウムなどのカルボキシレート触媒、トリエチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィンが反応触媒として有効である。
そして、得られたビニルエステル系共重合体をけん化してビニルアルコール系共重合体を得る。けん化方法は方法Aで記載した通りである。
次に、方法Cについて説明する。方法Cは、アリル基を有する求電子剤とビニルアルコール系重合体とを反応させてビニルアルコール系共重合体を得る方法である。
方法Cで用いられる原料のビニルアルコール系重合体は、酢酸ビニルの単独重合体をけん化したものであってもかまわないし、酢酸ビニルと他の単量体との共重合体をけん化したものであってもかまわない。けん化度や粘度平均重合度は、本発明の懸濁重合用分散安定剤に用いられるビニルアルコール系共重合体における好適な値と同じである。
アリル基を有する求電子剤は、分子内にアリル基と求電子基を有する化合物であれば特に限定されないが、3−ブテン酸、アジピン酸モノアリル、セバシン酸モノアリル、コハク酸モノアリル、フタル酸モノアリルなどのカルボン酸;アリルイソシアネート、メタリルシソシアネートなどのイソシアネート;アリルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−7−ヘキセン、1,2−エポキシ−7−オクテンなどのエポキシドなどが好適なものとして挙げられる。これらの中でも、反応性向上の観点から、求電子剤はアリル基を有するイソシアネート又はアリル基を有するエポキシであることが好ましい。
原料のビニルアルコール系重合体とアリル基を有する求電子剤との反応は、無溶媒、またはビニルアルコール系重合体ならびに上記求電子剤を溶解もしくは膨潤させる溶剤中で実施される。このような溶剤として水、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミドやN−メチルー2−ピロリドンなどが挙げられる。これらの溶媒は単独もしくは混合して使用される。反応条件は、ビニルアルコール系重合体や求電子剤の構造により異なるが、通常、溶剤を使用する場合には、ビニルアルコール系重合体濃度が1〜90%であり、求電子剤のモル数/PVA中のビニルアルコール単位のモル数=(モル比)0.001〜5.0であり、反応温度は0〜250℃であり、反応時間は0.01〜20時間である。得られたビニルアルコール系共重合体は従来公知の方法により精製される。
原料のビニルアルコール系重合体とアリル基を有する求電子剤との反応を促進させるために、触媒として作用する酸性物質または塩基性物質を添加することも可能である。酸性物質としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸;p−トルエンスルホン酸ピリジニウム、塩化アンモニウムなどの塩;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、三塩化鉄、二塩化錫、四塩化錫、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体などのルイス酸などを挙げることができ、これらは1種または2種以上を組合せて用いることができる。また、塩基性物質としては、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)などのアミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩; 酸化バリウム、酸化銀などの金属酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;ナトリウムアミド、カリウムアミドなどのアルカリ金属アミドなどを挙げることができ、これらは1種または2種以上を組合せて用いることができる。これらの酸性物質および塩基性物質の配合量は、通常、原料のビニルアルコール系重合体100質量部に対して0.0001〜5質量部が好ましい。
また、反応を促進するために縮合剤を添加することも可能である。エステル化剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール塩酸塩、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、エチル(ヒドロキシイミノ)シアノアセタート等が挙げられる。
本発明の好適な実施態様は、懸濁重合用分散安定剤の存在下でビニル化合物を懸濁重合することを特徴とするビニル系樹脂の製造方法である。ビニル化合物としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル; 酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル; アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステルおよび塩;マレイン酸、フマル酸、これらのエステルおよび無水物;スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも塩化ビニルが特に好ましい。これらのビニル化合物とともに当該ビニル化合物と共重合可能な単量体を用いて懸濁重合を行ってもかまわない。ビニル化合物と共重合可能な単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類;アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。
ビニル化合物の懸濁重合には、従来から塩化ビニル単量体等の重合に使用されている、油溶性または水溶性の重合開始剤を用いることができる。油溶性の重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、α−クミルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。水溶性の重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの油溶性あるいは水溶性の重合開始剤は単独で、または2種類以上を組合せて用いることができる。
ビニル化合物の懸濁重合に際し、必要に応じて、重合反応系にその他の各種添加剤を加えることができる。添加剤としては、例えば、アルデヒド類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン類などの重合調節剤、フェノール化合物、イオウ化合物、N−オキサイド化合物などの重合禁止剤などが挙げられる。また、pH調整剤、架橋剤なども任意に加えることができる。
ビニル化合物の懸濁重合に際し、重合温度には特に制限はなく、20℃程度の低い温度はもとより、90℃を超える高い温度に調整することもできる。また、重合反応系の除熱効率を高めるために、リフラックスコンデンサー付の重合器を用いることも好ましい実施態様の一つである。
本発明の分散安定剤は単独で使用しても良いが、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテル;ポリビニルアルコール、ゼラチンなどの水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤; ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤等と共に使用することができる。
さらに、ビニル化合物の懸濁重合に際して、本発明の分散安定剤と、水溶性または水分散性の分散安定助剤とを併用することができる。分散安定助剤としては、けん化度65モル%未満で重合度50〜750、好ましくはけん化度30〜60モル%で重合度180〜650の部分けん化PVAが好適に用いられる。また、分散安定助剤は、カルボン酸やスルホン酸のようなイオン性基などを導入することにより、自己乳化性が付与されたものであってもよい。分散安定助剤を併用する場合の分散安定剤と分散安定助剤の添加量の質量比(分散安定剤/分散安定助剤)は、用いられる分散安定剤の種類等によって変化するのでこれを一律に規定することはできないが、95/5〜20/80の範囲が好ましく、特に90/10〜30/70が好ましい。分散安定剤と分散安定助剤は、重合の初期に一括して仕込んでもよいし、あるいは重合の途中で分割して仕込んでもよい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例および比較例において「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準を意味する。
実施例1
(ビニルアルコール系共重合体の合成)
撹拌機、窒素導入口、添加剤導入口および開始剤添加口を備えた6Lの反応槽に酢酸ビニル1200g、メタノール1800g、アリル基を有する多官能単量体としてトリメチロールプロパンジアリルエーテル8gを仕込み、60℃に昇温した後30分間の窒素バブリングにより槽内を窒素置換した。反応槽内の温度を60℃に調整し、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)2gを加えて重合を開始した。重合中は重合温度を60℃に維持した。4.5時間後に重合率が60%に達したところで冷却して重合を停止した。次いで、減圧下にて未反応の酢酸ビニルを除去し、ポリ酢酸ビニル(以下、PVAcと略記することがある)のメタノール溶液を得た。重合条件及び得られたPVAcの物性を表1に示す。こうして得られたPVAcの再沈殿精製を、良溶媒としてアセトン、貧溶媒としてヘキサンを用いて5回行い、引き続き真空乾燥することにより精製後のPVAcを乾燥させた。その後、得られたPVAcを重クロロホルムへ溶解して1H−NMRの測定を実施した。測定結果を図1に示す。得られた図1のスペクトルから変性量(アリル基導入量)は0.14モル%と算出された。
上記PVAcのメタノール溶液の濃度を30%に調整し、アルカリモル比(NaOHのモル数/PVAc中のビニルエステル単位のモル数)が0.0037となるようにNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加してけん化した。得られたビニルアルコール系共重合体はメタノールで洗浄した。以上の操作により重合度740、けん化度74.8モル%のビニルアルコール系共重合体を得た。得られたビニルアルコール系共重合体を90℃の水に溶解させて4質量%の水溶液を調製したところ、完全に溶解した。また得られたビニルアルコール系共重合体の1%水溶液のイエロー・インデックス(YI)をカラーメーター(スガ試験機株式会社製の「SM−T−H1」)を用いて、測定した。ビニルアルコール系共重合体のYIは8であった。けん化条件及び得られたビニルアルコール系共重合体の物性を表1に示す。
(アリル基含有量)
上記ビニルアルコール系共重合体を40℃に保ち1週間、2週間又は3週間放置した。得られたビニルアルコール系共重合体を重DMSOへ溶解して、ビニルアルコール系共重合体の変性量を1H−NMRを用いて測定した。その結果、いずれのビニルアルコール系共重合体の変性量には変化が見られなかった。また放置後のビニルアルコール系重合体はいずれも90℃の水に溶解させて4質量%の水溶液を調整したところ、完全に溶解した。
(塩化ビニルの懸濁重合)
上記で得られたビニルアルコール系共重合体を、塩化ビニルに対して800ppmに相当する量となるように脱イオン水に溶解させ、分散安定剤水溶液を調製した。このようにして得られた分散安定剤水溶液1150gを、容量5Lのオートクレーブに仕込んだ。次いでオートクレーブにジイソプロピルパーオキシジカーボネートの70%トルエン溶液1.5gを仕込んだ。オートクレーブ内の圧力が0.0067MPaになるまで脱気して酸素を除いた。その後、塩化ビニル1000gを仕込み、オートクレーブ内の内容物を57℃に昇温して、撹拌下に重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.83MPaであった。重合を開始してから7時間が経過し、オートクレーブ内の圧力が0.44MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルを除去した。その後、重合スラリーを取り出し、65℃にて一晩乾燥を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。
(塩化ビニル重合体粒子の評価)
塩化ビニル重合体粒子について、平均粒子径、粗大粒子量、スケール付着量、およびシート着色性を以下の方法にしたがって測定した。評価結果を表3に示す。
(1)塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径
タイラーメッシュ基準の金網を使用して、JIS Z8815に記載の乾式篩法により粒度分布を測定した。その結果からRosin-Rammlerプロットを用いて平均粒子径を算出した。
(2)塩化ビニル重合体粒子の粗大粒子量
JIS標準篩い42メッシュオンの含有量を質量%で表示した。数字が小さいほど粗大粒子が少なくて重合安定性に優れていることを示している。
(3)スケール付着量
懸濁重合が終了後、重合体スラリーを重合槽から取り出した時の重合槽の内壁におけるスケールの付着状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
A:スケールの付着がほとんどなかった。
B:スケールの付着が少なかった。
C:白色のスケール付着が著しかった。
(4)塩化ビニル重合体組成物シートの着色性
磁製ビーカーに、上記で得られた塩化ビニル重合体粒子を100g、ジブチル錫ビス(マレイン酸モノアラルキルエステル)塩を3g、無機顔料ピグメントブルー29を0.01gそれぞれ加え混合し、塩化ビニル樹脂組成物を得た。得られたポリ塩化ビニル組成物をテストロールにより170℃で5分間混練し、厚さ0.4mmのシートを作製した。上記のシートを45×30mmの複数のシート片にカットした。得られたシート片を12〜14枚重ね合わせ、195℃で5分間プレスして厚さ5mmの試験片を作製し、カラーメーター(スガ試験機株式会社製の「SM−T−H1」)を用いてイエロー・インデックス(YI)を測定した。
得られた重合体粒子の平均粒子径は152μmで、粗大粒子量は0.8質量%であり、スケールの付着はほとんどなかった。また作製したポリ塩化ビニルシートのYIは20.4であった。
実施例2〜4、比較例1〜3
ビニルエステル系共重合体の重合条件及びけん化条件を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてビニルアルコール系共重合体を得た。得られたビニルアルコール系共重合体の物性を表1に示す。そして、得られたビニルアルコール系共重合体を用いて実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、実施例1と同様の評価をした。評価結果を表2に示す。
表1及び2に示すように、本発明の分散安定剤を使用してビニル化合物の懸濁重合を行うと、得られる重合体粒子の平均粒子径が小さく、粗大粒子の形成も少なく高い重合安定性を示した。また、スケール付着を低減することもできた。さらに得られた重合体粒子から作製したシートの着色性を評価したところ、着色が抑制されることもわかった。加えて、本発明の分散安定剤は保存安定性にも優れていた。
比較例1は、特許文献2に記載されるように、酢酸ビニルを重合する際に連鎖移動剤としてアセトアルデヒドを使用し、分子末端にエノン構造が導入されたビニルアルコール系共重合体からなる分散安定剤を使用して懸濁重合を行ったものである。得られた重合体粒子の平均粒子径は195μmであり粒子径が大きくなった。また粗大粒子量は3.5質量%であり粗大粒子が多く見受けられ、重合が不安定であった。また作製したポリ塩化ビニルシートのYIは25.6であり、着色していた。加えて、比較例1のビニルアルコール系共重合体はYIが40であり、着色していた。
比較例2及び3は特許文献3に記載されるように、酢酸ビニルと無水マレイン酸を共重合して得られる、分子鎖中にエノン構造を導入されたビニルアルコール系共重合体からなる分散安定剤を使用して懸濁重合を行ったものである。得られた重合体粒子の平均粒子径はそれぞれ220μm及び180μmであり粒子径が大きくなった。また粗大粒子量はそれぞれ8質量%及び2.8質量%であり粗大粒子が多く見受けられ、重合が不安定であった。また作製したポリ塩化ビニルシートのYIはそれぞれ31.9及び33.2であり、着色が見られた。
実施例5
(ビニルアルコール系共重合体の合成)
撹拌機、窒素導入口、添加剤導入口および開始剤添加口を備えた6Lの反応槽に酢酸ビニル2140g、メタノール860g、求電子基を有する単量体としてアリルグリシジルエーテル29gを仕込んだ。別途、濃度13%の2,2’−アゾイソブチロニトリルのメタノール溶液を開始剤溶液として調整し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。置換後、別途調整した開始剤溶液を添加し重合を開始した。重合中は重合温度を60℃に維持した。5時間後に重合率が60%に達したところで冷却して重合を停止した。次いで、減圧下にて未反応の酢酸ビニルを除去し、PVAcのメタノール溶液を得た。
PVAcのメタノール溶液の濃度を30%に調整し、アリルメルカプタン1部(求核剤)、アルカリモル比(NaOHのモル数/PVAc中のビニルエステル単位のモル数)が0.0024となるようにNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加して50℃、1時間反応させた。その後、温度を40℃まで冷却し、さらにアルカリモル比が0.0034となるようにNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加し、40℃、1時間けん化した。得られたビニルアルコール系共重合体はメタノールで洗浄した。以上の操作により重合度1000、けん化度74.4モル%のビニルアルコール系共重合体を得た。得られたビニルアルコール系共重合体を重DMSOへ溶解して1H−NMRの測定を実施した。その結果、変性量は1.0モル%と算出された。そして、得られたビニルアルコール系共重合体を用いて実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、実施例1と同様の評価をした。評価結果を表4に示す。
実施例6
PVAcの重合条件を表3に示すように変更した以外は実施例5と同様にしてPVAcを合成した。そして、求核剤をアリルアミンに変更して、表3に示すように反応条件を変更した以外は実施例5と同様にしてビニルアルコール系共重合体を得た。得られたビニルアルコール系共重合体を用いて実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、実施例1と同様の評価をした。結果を表4に示す。
実施例7
撹拌機、窒素導入口、添加剤導入口および開始剤添加口を備えた6Lの反応槽に酢酸ビニル1500g、メタノール1500gを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。反応槽内の温度を60℃に調整し、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)2.5gを加えて重合を開始した。重合中は重合温度を60℃に維持した。4.5時間後に重合率が60%に達したところで冷却して重合を停止した。次いで、減圧下にて未反応の酢酸ビニルを除去し、PVAcのメタノール溶液を得た。PVAcのメタノール溶液の濃度を30%に調整し、アルカリモル比(NaOHのモル数/PVAc中のビニルエステル単位のモル数)が0.0035となるようにNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加してけん化した。得られたビニルアルコール系重合体はメタノールで洗浄した。以上の操作により重合度700、けん化度75.0モル%の原料となるビニルアルコール系重合体を得た。
得られたビニルアルコール系重合体の濃度10%のDMF溶液を調整し、アリルイソシアネートを5.4部、トリエチルアミンを1部添加し、50℃で2時間反応させた。反応後、反応液をアセトン中に滴下することで再沈殿精製することで、アリル基変性ビニルアルコール系共重合体を得た。得られたビニルアルコール系共重合体を重DMSOへ溶解して1H−NMRの測定を実施した。その結果、変性量は0.08モル%と算出された。
実施例8〜9、比較例4〜8
実施例7と同様の原料のビニルアルコール系重合体を用いて、求核剤との反応条件を表5に示すように変更した以外は実施例7と同様にしてビニルアルコール系共重合体を得た。得られたビニルアルコール系共重合体の物性を表5に示す。そして、得られたビニルアルコール系共重合体を用いて実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、実施例1と同様の評価をした。評価結果を表6に示す。
比較例6〜8は特許文献1に記載されるように、不飽和二重結合を有するカルボン酸またはその塩によりビニルアルコール系重合体をエステル化して得られる、側鎖にビニル系二重結合を導入されたビニルアルコール系共重合体の評価結果である。いずれも放置日数の経過により、二重結合量が減少し、二重結合の導入量が多いものに関しては不溶化した。