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JP6840326B2 - プラズマ殺菌水溶液とその製造方法および殺菌方法 - Google Patents
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プラズマ殺菌水溶液とその製造方法および殺菌方法 Download PDF

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Description

本明細書の技術分野は、プラズマ殺菌水溶液とその製造方法および殺菌方法に関する。
プラズマ技術は、電気、化学、材料の各分野に応用されている。プラズマの内部では、電子やイオン等の荷電粒子の他に、原子や分子等の中性粒子や紫外線が発生する。これらプラズマの内部で発生する生成物のうち、不対電子を有する粒子(原子、分子、イオンを含む)のことをラジカルという。このような紫外線やラジカルには、殺菌効果があることが知られている。
例えば、特許文献1には、プラズマ放電部が放電を行うことにより滅菌する技術が開示されている(特許文献1の請求項1参照)。ストリーマ放電によりOHラジカル等の活性種が発生し、これらの活性種が空気中の菌を分解する旨が記載されている(特許文献1の段落[0026]参照)。このように、プラズマから発生する活性種には、殺菌作用があることが知られている。
特開2012−95737号公報
このような活性種は、高い反応性を有する。そのため、このような活性種を用いて生体等を殺菌する場合には、生体等に何らかの影響を及ぼすおそれがある。もちろん、生体等を殺菌する場合には、生体等に損傷を与えることなく、毒性のないもので処理することが好ましい。
本明細書の技術は、前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、生体等に悪影響を及ぼすことなく殺菌することのできるプラズマ殺菌水溶液とその製造方法および殺菌方法を提供することである。
第1の態様におけるプラズマ殺菌水溶液は、真菌または菌類を殺菌するためのものである。このプラズマ殺菌水溶液は、YPD培養液非平衡大気圧プラズマを照射した水溶液である。非平衡大気圧プラズマを照射した後のpHが4.78以上5.4以下である。
このプラズマ殺菌水溶液は、真菌または菌類を殺菌することができる。プラズマ殺菌水溶液は、培養液に非平衡大気圧プラズマを照射したものである。そのため、このプラズマ殺菌水溶液は、生体親和性を有している。したがって、例えば、人体表面を殺菌するためにプラズマ殺菌水溶液を染み込ませた脱脂綿等を人体表面に接触させる。これにより、人体表面等を殺菌することができる。このプラズマ殺菌水溶液は、人体表面に悪影響を及ぼすことがほとんどない。
第2の態様におけるプラズマ殺菌水溶液は、真菌または菌類を殺菌するためのプラズマ殺菌水溶液である。このプラズマ殺菌水溶液は、B培養液に非平衡大気圧プラズマを照射した水溶液である。非平衡大気圧プラズマを照射した後のpHが4.80以上5.59以下である。
第3の態様におけるプラズマ殺菌水溶液の製造方法は、真菌または菌類を殺菌するためのプラズマ殺菌水溶液の製造方法である。この製造方法は、YPD培養液準備する水溶液準備工程と、YPD培養液非平衡大気圧プラズマを照射するプラズマ照射工程と、を有する。プラズマ照射工程では、YPD培養液プラズマ殺菌水溶液とし、プラズマ殺菌水溶液のpHを4.78以上5.4以下とする。
第4の態様におけるプラズマ殺菌水溶液の製造方法は、真菌または菌類を殺菌するためのプラズマ殺菌水溶液の製造方法である。この製造方法は、NB培養液を準備する水溶液準備工程と、NB培養液に非平衡大気圧プラズマを照射するプラズマ照射工程と、を有する。プラズマ照射工程では、NB培養液をプラズマ殺菌水溶液とし、プラズマ殺菌水溶液のpHを4.80以上5.59以下とする。
本明細書では、生体等に悪影響を及ぼすことなく殺菌することのできるプラズマ殺菌水溶液とその製造方法および殺菌方法が提供されている。
実施形態のプラズマ発生装置のガス噴出口を走査するロボットアームの構成を説明するための概念図である。 図2.Aは第1のプラズマ発生装置の構成を示す断面図であり、図2.Bは電極の形状を示す図である。 図3.Aは第2のプラズマ発生装置の構成を示す断面図であり、図3.Bはプラズマ領域の長手方向に垂直な断面における部分断面図である。 プラズマを照射したDMEM培養液を用いた場合のミドリカビ胞子の生菌数を示すグラフである。 プラズマを照射したNB培養液を用いた場合のミドリカビ胞子の生菌数を示すグラフである。 プラズマを照射したDMEM培養液を用いた場合の大腸菌の生菌数の時間変化を示すグラフである。 プラズマを照射したNB培養液を用いた場合の大腸菌の生菌数の時間変化を示すグラフである。 5分間のプラズマの照射を3回繰り返したNB培養液についての大腸菌の生菌数の時間変化を示すグラフである。 プラズマを照射したDMEM培養液を用いた場合の出芽酵母の生菌数の時間変化を示すグラフである。 プラズマを照射したYPD培養液を用いた場合の出芽酵母の生菌数の時間変化を示すグラフである。 5分間のプラズマの照射を3回繰り返したYPD培養液についての出芽酵母の生菌数の時間変化を示すグラフである。 実験結果をまとめた表である。
以下、具体的な実施形態について、プラズマ殺菌水溶液とその製造方法および殺菌方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。
1.プラズマ殺菌水溶液製造装置
1−1.プラズマ殺菌水溶液製造装置の構成
本実施形態のプラズマ殺菌水溶液製造装置PMは、図1に示すように、プラズマ照射装置P1と、アームロボットM1とを有している。プラズマ照射装置P1は、プラズマを発生させるとともに、そのプラズマを溶液に向けて照射するためのものである。
アームロボットM1は、図1に示すように、プラズマ照射装置P1の位置をx軸、y軸、z軸方向のそれぞれの方向に移動させることができるようになっている。なお、説明の便宜上、プラズマを照射する向きを−z軸方向としている。これにより、溶液の液面と、プラズマ照射装置P1との間の距離を調整することができる。また、このプラズマ殺菌水溶液製造装置PMは、予めプラズマ照射時間を設定することにより、その時間だけプラズマを照射することができるものである。
プラズマ照射装置P1には、後述するように、2種類の方式(第1のプラズマ発生装置P10および第2のプラズマ発生装置P20)がある。そして、いずれの方式を用いてもよい。
1−2.第1のプラズマ発生装置
図2.Aはプラズマ発生装置P10の概略構成を示す断面図である。ここで、プラズマ発生装置P10は、プラズマを点状に噴出する第1のプラズマ発生装置である。図2.Bは、図2.Aのプラズマ発生装置P10の電極2a、2bの形状の詳細を示す図である。
プラズマ発生装置P10は、筐体部10と、電極2a、2bと、電圧印加部3と、を有している。筐体部10は、アルミナ(Al2 3 )を原料とする焼結体から成るものである。そして、筐体部10の形状は、筒形状である。筐体部10の内径は2mm以上3mm以下である。筐体部10の厚みは0.2mm以上0.3mm以下である。筐体部10の長さは10cm以上30cm以下である。筐体部10の両端には、ガス導入口10iと、ガス噴出口10oとが形成されている。ガス導入口10iは、プラズマを発生させるためのガスを導入するためのものである。ガス噴出口10oは、プラズマを筐体部10の外部に照射するための照射部である。なお、ガスの移動する向きは、図中の矢印の向きである。また、これらの数値範囲は、例示である。そのため、上記以外の数値を用いてもよい。
電極2a、2bは、対向して配置されている対向電極対である。電極2a、2bの対向面方向の長さは、筐体部10の内径より小さい。例えば1mm程度である。電極2a、2bには、図2.Bに示すように、対向面のそれぞれに凹部(ホロー)Hが多数形成されている。そのため、電極2a、2bの対向面は、微細な凹凸形状となっている。なお、この凹部Hの深さは、0.5mm程度である。
電極2aは、筐体部10の内部であってガス導入口10iの近傍に配置されている。電極2bは、筐体部10の内部であってガス噴出口10oの近傍に配置されている。そのため、プラズマ発生装置P10では、電極2aの対向面の反対側からガスを導入するとともに、電極2bの対向面の反対側にガスを噴出するようになっている。そして、電極2a、2b間の距離は、24cmである。電極2a、2b間の距離は、これより小さい距離であってもよい。
電圧印加部3は、電極2a、2b間に交流電圧を印加するためのものである。電圧印加部3は、商用交流電圧である、60Hz、100Vを用いて9kVに昇圧するとともに、電極2a、2b間に電圧を印加する。
ガス導入口10iからアルゴンを導入するとともに、電圧印加部3により、電極2a、2b間に電圧を印加すると、筐体部10の内部にプラズマが発生する。図2.Aの斜線で示すように、プラズマが発生する領域をプラズマ発生領域Pとする。プラズマ発生領域Pは、筐体部10に覆われている。
1−3.第2のプラズマ発生装置
図3.Aはプラズマ発生装置P20の概略構成を示す断面図である。ここで、プラズマ発生装置P20は、プラズマを線状に噴出する第2のプラズマ発生装置である。図3.Bは、図3.Aのプラズマ発生装置P20のプラズマ領域Pの長手方向に垂直な断面における部分断面図である。
プラズマ発生装置P20は、筐体部11と、電極2a、2bと、電圧印加部3と、を有している。筐体部11は、アルミナ(Al2 3 )を原料とする焼結体から成るものである。筐体部11の両端には、ガス導入口11iと、多数のガス噴出口11oとが形成されている。ガス導入口11iは、図3.Aの左右方向を長手方向とするスリット形状をしている。ガス導入口11iからプラズマ領域Pの直上までのスリット幅(図3.Bの左右方向の幅)は1mmである。
ガス噴出口11oは、プラズマを筐体部11の外部に照射するための照射部である。ガス噴出口11oは、円筒形状もしくはスリット形状である。円筒形状の場合のガス噴出口11oは、プラズマ領域の長手方向に沿って一直線状に形成されている。ガス噴出口11oの内径は1mm以上2mm以下の範囲内である。また、スリット形状の場合には、ガス噴出口11oのスリット幅を1mm以下とすることが好ましい。これにより、安定したプラズマが形成される。また、ガス導入口11iは、電極2aと電極2bとを結ぶ線と交差する向きにガスを導入するようになっている。なお、これらの数値範囲は、例示である。そのため、上記以外の数値を用いてもよい。
電極2a、2bおよび電圧印加部3については、図1に示したプラズマ発生装置P10と同じものである。そして、同様に、商用交流電圧を用いて、電極2a、2b間に電圧を印加する。これにより、プラズマを一直線状に噴出することができる。
また、この一直線状にプラズマを噴出するプラズマ発生装置P20を図3.Bの左右方向に列状に並べて配置すれば、プラズマをある長方形の領域にわたって平面的に噴出することができる。
2.プラズマ発生装置により発生されるプラズマ
2−1.第1のプラズマ発生装置および第2のプラズマ発生装置
プラズマ発生装置P10、P20により発生されるプラズマは、非平衡大気圧プラズマである。ここで、大気圧プラズマとは、0.5気圧以上2.0気圧以下の範囲内の圧力であるプラズマをいう。
本実施の形態では、プラズマ発生ガスとして、主にArガスを用いる。プラズマ発生装置P10、P20により発生されるプラズマの内部では、もちろん、電子と、Arイオンとが生成されている。そして、Arイオンは、紫外線を発生する。また、このプラズマは大気中に放出されているため、酸素ラジカルや窒素ラジカル等を発生させる。
このプラズマのプラズマ密度は、1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲内である。なお、誘電体バリア放電により発生されるプラズマにおけるプラズマ密度は、1×1011cm-3以上1×1013cm-3以下の程度である。したがって、プラズマ発生装置P10、P20により発生されるプラズマのプラズマ密度は、誘電体バリア放電により発生されるプラズマのプラズマ密度に比べて、3桁程度大きい。したがって、このプラズマの内部では、より多くのArイオンが生成する。そのため、ラジカルや、紫外線の発生量も多い。なお、このプラズマ密度は、プラズマ内部の電子密度にほぼ等しい。
そして、このプラズマ発生時におけるプラズマ温度は、およそ1000K以上2500K以下の範囲内である。また、このプラズマにおける電子温度は、ガスの温度に比べて大きい。しかも、電子の密度が1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲内の程度であるにもかかわらず、ガスの温度はおよそ1000K以上2500K以下の範囲内である。このプラズマの温度は、プラズマの発生しているプラズマ領域Pでの温度である。したがって、プラズマの条件や、ガス噴出口から液面までの距離を異なる条件とすることにより、液面の位置でのプラズマ温度を室温程度とすることができる。
また、三重項酸素原子の密度(ラジカル密度)は、2×1014cm-3以上1.6×1015cm-3以下の範囲内である。アルゴンガスに対して混入する酸素ガスの量を調整することにより、この三重項酸素原子の密度を調整することができる。
3.プラズマ殺菌水溶液
本実施形態のプラズマ殺菌水溶液は、真菌または菌類を殺菌するためのものである。このプラズマ殺菌水溶液は、培養液に非平衡大気圧プラズマを照射した水溶液である。つまり、プラズマ殺菌水溶液は、プラズマ培養液である。そして、その非平衡大気圧プラズマのプラズマ密度は、1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲内である。このようにプラズマ密度の高い非平衡大気圧プラズマを照射されているため、このプラズマ殺菌水溶液は、十分な殺菌作用を備える。なお、プラズマ照射時間は、30秒以上である。また、プラズマ照射時間は、3分以上であると好ましい。よって、プラズマ照射時間は、3分以上30分以下であるとよい。
4.プラズマ殺菌水溶液の製造方法
4−1.水溶液準備工程
まず、水溶液を準備する。ここで、準備する水溶液は、培養液である。培養液として例えば、DMEM培養液、YPD培養液、NB培養液が挙げられる。
4−2.プラズマ照射工程
次に、培養液に非平衡大気圧プラズマを照射する。その際に、上記のプラズマ殺菌水溶液製造装置PMを用いる。プラズマ密度は、1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲内である。プラズマガスの流量は、0.1slm以上5slm以下の範囲内である。プラズマ照射時間は、30秒以上30分以下である。好ましくは、3分以上30分以下である。プラズマ照射装置P1の下面と培養液の表面との間の距離は0mmより大きく30mm以下の範囲内である。また、この距離は、13mm以下であるとよい。これらの数値範囲は例示であり、これら以外の値を用いてもよい。
5.プラズマ殺菌水溶液を用いた殺菌方法
まず、培養液の非平衡大気圧プラズマを照射したプラズマ殺菌水溶液を準備する。そして、プラズマを照射したプラズマ殺菌水溶液を生体上に処理する。例えば、生体上を殺菌するに際し、このプラズマ殺菌水溶液を脱脂綿等に含ませ、殺菌対象箇所に接触させる。または、殺菌対象箇所をプラズマ殺菌水溶液に浸す。これにより、殺菌対象は殺菌される。
6.本実施形態のまとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態のプラズマ殺菌水溶液は、培養液に非平衡大気圧プラズマを照射したものである。このプラズマ殺菌水溶液は、真菌または菌類を殺菌することができる。また、プラズマ殺菌水溶液は、生体によくなじむ。したがって、生体上の殺菌を好適に実施することができる。
A.プラズマ殺菌水溶液の製造
本実験のためにプラズマ殺菌水溶液を製造した。また、プラズマを照射していない単なる培養液も準備した。プラズマ殺菌水溶液を製造するために、上記のプラズマ殺菌水溶液製造装置PMを用いた。そして、培養液にArプラズマを照射した。プラズマガスの流量は2slmであった。照射距離は5mmであった。照射時間は5分であった。照射距離および照射時間については、下記の実験に応じて適宜変更した。また、培養液の種類についても、下記の実験に応じて、DMEM培養液、YPD培養液、NB培養液の3種類を用いた。
B.ミドリカビ胞子
ミドリカビ胞子は、真菌の一種である。
B−1.実験手順
B−1−1.ミドリカビ胞子の懸濁
まず、ミドリカビ胞子が10mg/ml懸濁された懸濁液を培養した。そして、その懸濁液を1000倍に希釈した。
B−1−2.プラズマ殺菌水溶液による殺菌処理
希釈した懸濁液50μlとプラズマ殺菌水溶液とを混合した。混合した後の体積は1mlであった。そしてこの混合液を転倒混和した。処理時間は、4時間と24時間とであった。そして、これらのサンプルについて生菌数を測定した。なお、プラズマ殺菌水溶液として、照射距離が5mmのものと13mmのものとを準備した。また、プラズマ殺菌水溶液の効果を比較するために、プラズマを照射しない単なる培養液について、同様の処理をした。
B−2.DMEM培養液の実験結果
図4は、DMEM培養液を用いた場合のミドリカビ胞子の生菌数を示すグラフである。図4中の「1」は、プラズマを照射しないDMEM培養液で処理した場合を示す。図4中の「2」は、照射距離13mmでArプラズマを照射したDMEM培養液で処理した場合を示す。図4中の「3」は、照射距離5mmでArプラズマを照射したDMEM培養液で処理した場合を示す。図4中の縦軸は、生菌数(CFU/ml)を示す。つまり、1ml当たりの生菌数を示す。
図4中に示すように、プラズマを照射しないDMEM培養液で4時間処理したものでは、生菌数は1ml当たり10万個であった。プラズマを照射しないDMEM培養液で24時間処理したものでは、生菌数は1ml当たり3万個であった。照射距離13mmでArプラズマを照射したDMEM培養液で4時間処理したものでは、生菌数は1ml当たり4万個であった。照射距離13mmでArプラズマを照射したDMEM培養液で24時間処理したものでは、生菌数は1ml当たり3万個であった。照射距離5mmでArプラズマを照射したDMEM培養液で4時間処理したものでは、生菌数は1ml当たり4万個であった。照射距離5mmでArプラズマを照射したDMEM培養液で24時間処理したものでは、生菌数は1ml当たり3万個であった。
このように、プラズマを照射したDMEM培養液でミドリカビ胞子を処理すると、ミドリカビ胞子の生菌数は減少する。つまり、プラズマを照射したDMEM培養液は、真菌に対して殺菌効果を有する。
B−3.YPD培養液の実験結果
プラズマを照射しないYPD培養液で24時間処理した場合には、ミドリカビ胞子から発芽して菌糸塊が形成された。プラズマを照射したYPD培養液で24時間処理した場合には、菌糸塊は形成されなかった。つまり、プラズマを照射したYPD培養液は、真菌に対して殺菌効果を有する。
B−4.NB培養液の実験結果
図5は、NB培養液を用いた場合のミドリカビ胞子の生菌数を示すグラフである。図5に示すように、プラズマを照射したNB培養液で4時間処理した場合には、生菌数は処理前の17%程度であった。つまり、ミドリカビ胞子は83%程度減少した。プラズマを照射しないNB培養液で4時間処理した場合には、生菌数は処理前の80%程度であった。このように、プラズマを照射したNB培養液は、真菌に対して殺菌効果を有する。
C.大腸菌
大腸菌は、細菌類の一種である。
C−1.実験手順
C−1−1.大腸菌の培養液の希釈
まず、大腸菌をNB培養液で一晩培養した。そして、その培養液を1000倍に希釈した。希釈した後の培養液には、1ml当たり100000個の大腸菌が存在すると推定した。
C−1−2.プラズマ殺菌水溶液による殺菌処理
希釈した大腸菌の培養液を300μlとプラズマ殺菌水溶液とを混合した。混合した後の体積は3mlであった。そしてこの混合液で大腸菌を振とう培養した。この培養液を所定の時間(1h、2h、4h、6h、18h、24h)経過後にサンプリングした。サンプリングした培養液については、寒天培地に塗布した。そして、大腸菌の数を数えた。
C−2.DMEM培養液の実験結果
図6は、DMEM培養液を用いた場合の大腸菌の生菌数の時間変化を示すグラフである。図6の横軸は、プラズマを照射したDMEM培養液もしくはプラズマを照射していないDMEM培養液での処理時間である。図6の縦軸は、1ml当たりの生菌数である。
図6に示すように、プラズマを照射していないDMEM培養液で処理した場合には、大腸菌の数は処理時間の増加とともに増加している。プラズマを照射したDMEM培養液で処理した場合には、大腸菌の数は処理時間の増加とともに減少している。プラズマを照射したDMEM培養液では、照射時間によらず、大腸菌は同程度の割合で減少している。プラズマを照射したDMEM培養液では、大腸菌の数は、6時間の処理で1/10程度になった。プラズマを照射したDMEM培養液では、大腸菌の数は、18時間の処理で1/1000以下になった。
このように、プラズマを照射したDMEM培養液は、細菌に対して殺菌効果を有する。
C−3.NB培養液の実験結果
図7は、NB培養液を用いた場合の大腸菌の生菌数の時間変化を示すグラフである。図7の横軸は、プラズマを照射したNB培養液もしくはプラズマを照射していないNB培養液での処理時間である。図7の縦軸は、1ml当たりの生菌数である。
図7に示すように、プラズマを照射していないNB培養液で処理した場合には、大腸菌の数は時間の経過とともに増加している。プラズマを照射したNB培養液で処理した場合には、大腸菌の数は処理時間の増加とともに減少している。5分間プラズマを照射した培養液で6時間処理した場合には、大腸菌の数は処理前の1/10程度になった。
図8は、5分間のプラズマの照射を3回繰り返したNB培養液についての大腸菌の生菌数の時間変化を示すグラフである。図8に示すように、プラズマを繰り返し照射したNB培養液で処理した場合には、大腸菌の数は処理時間の増加とともに急激に減少している。5分間のプラズマ照射を3回繰り返したNB培養液で処理した場合には、大腸菌の数は、1.5時間の処理時間で1/1000000以下に減少した。
このように、プラズマを照射したNB培養液は、細菌に対して殺菌効果を有する。また、プラズマを照射した時間が長いほど、殺菌効果は強かった。
D.酵母
酵母は、真核細胞である。
D−1.実験手順
D−1−1.酵母の懸濁液
まず、YPD培養液で出芽酵母を一晩培養した。そして、出芽酵母を集菌した。集菌した出芽酵母をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁した。
D−1−2.プラズマ殺菌水溶液による殺菌処理
そして、出芽酵母の懸濁液を300μlとプラズマ殺菌水溶液とを混合した。混合した後の体積は3mlであった。そしてこの混合液で出芽酵母を振とう培養した。この培養液を所定の時間(0.5h、1h、1.5h、2h、4h、6h、8h…)経過後にサンプリングした。サンプリングした培養液については、寒天培地に塗布した。そして、出芽酵母の数を数えた。
D−2.DMEM培養液の実験結果
図9は、DMEM培養液を用いた場合の出芽酵母の生菌数の時間変化を示すグラフである。図9の横軸は、プラズマを照射したDMEM培養液もしくはプラズマを照射していないDMEM培養液での処理時間である。図9の縦軸は、1ml当たりの生菌数である。
図9に示すように、プラズマを照射していないDMEM培養液で処理した場合には、出芽酵母の数は、処理時間の増加とともに緩やかに減少している。DMEM培養液は、出芽酵母を培養するのに、それほど適していないためと考えられる。図9に示すように、プラズマを照射したDMEM培養液で処理した場合には、出芽酵母の数は、処理時間の増加とともに減少している。図9に示すように、プラズマを照射したDMEM培養液で6時間処理した場合には、出芽酵母の数は1/1000以下に減少している。
このように、プラズマを照射したDMEM培養液は、真核細胞に対して殺菌効果を有する。
D−3.YPD培養液の実験結果
図10は、YPD培養液を用いた場合の出芽酵母の生菌数の時間変化を示すグラフである。図10の横軸は、プラズマを照射したYPD培養液もしくはプラズマを照射していないYPD培養液での処理時間である。図10の縦軸は、1ml当たりの生菌数である。
図10に示すように、プラズマを照射していないYPD培養液で処理した場合には、出芽酵母の数は、処理時間の増加とともに緩やかに増加している。図10に示すように、プラズマを照射したYPD培養液で処理した場合には、出芽酵母の数は、処理時間の増加とともに減少している。プラズマを5分照射したYPD培養液では、出芽酵母の数は、8時間の処理によって1/10程度になった。
図11は、5分間のプラズマの照射を3回繰り返したYPD培養液についての出芽酵母の生菌数の時間変化を示すグラフである。図11に示すように、プラズマを繰り返し照射したYPD培養液で処理した場合には、出芽酵母の数は処理時間の増加とともに急激に減少している。5分間のプラズマ照射を3回繰り返したYPD培養液で処理した場合には、出芽酵母の数は、2時間の処理時間で1/1000以下に減少した。
このように、プラズマを照射したNB培養液は、真核細胞に対して殺菌効果を有する。また、プラズマを照射した時間が長いほど、殺菌効果は強かった。
E.実験のまとめ
図12は、以上の実験をまとめた表である。図12に示すように、プラズマを照射しないDMEM培養液、YPD培養液、NB培養液を用いた処理では、真菌または細菌は、増加するかもしくは緩やかに減少した。プラズマを照射したDMEM培養液、YPD培養液、NB培養液を用いた処理では、真菌または細菌は、減少した。つまり、プラズマを照射した培養液、すなわち、プラズマ殺菌水溶液は、殺菌効果を示した。
なお、図12に示すように、プラズマの照射時間の増加とともに、H2 2 、NO2 - 、NO3 - の量は増加した。H2 2 の濃度は、1.0mM以上10.0mM以下であるとよい。より好ましくは、H2 2 の濃度は、1.2mM以上8.0mM以下である。NO2 - の濃度は、1.0mM以上10.0mM以下であるとよい。より好ましくは、NO2 - の濃度は、1.2mM以上8.0mM以下である。NO3 - の濃度は、0.1mM以上1.6mM以下であるとよい。より好ましくは、NO3 - の濃度は、0.2mM以上1.2mM以下である。ここで、各濃度は、化学プローブ法で測定される濃度である。
PM…プラズマ殺菌水溶液製造装置
P1…プラズマ照射装置
M1…ロボットアーム
P10、P20…プラズマ発生装置
10、11…筐体部
10i、11i…ガス導入口
10o、11o…ガス噴出口
2a、2b…電極
P…プラズマ領域
H…凹部(ホロー)

Claims (4)

  1. 真菌または菌類を殺菌するためのプラズマ殺菌水溶液であって、
    YPD培養液非平衡大気圧プラズマを照射した水溶液であり、
    前記非平衡大気圧プラズマを照射した後のpHが4.78以上5.4以下であること
    を特徴とするプラズマ殺菌水溶液。
  2. 真菌または菌類を殺菌するためのプラズマ殺菌水溶液であって、
    B培養液に非平衡大気圧プラズマを照射した水溶液であり、
    前記非平衡大気圧プラズマを照射した後のpHが4.80以上5.59以下であること
    を特徴とするプラズマ殺菌水溶液。
  3. 真菌または菌類を殺菌するためのプラズマ殺菌水溶液の製造方法であって、
    YPD培養液準備する水溶液準備工程と、
    前記YPD培養液非平衡大気圧プラズマを照射するプラズマ照射工程と、
    を有し、
    前記プラズマ照射工程では、
    前記YPD培養液プラズマ殺菌水溶液とし、
    前記プラズマ殺菌水溶液のpHを4.78以上5.4以下とすること
    を特徴とするプラズマ殺菌水溶液の製造方法。
  4. 真菌または菌類を殺菌するためのプラズマ殺菌水溶液の製造方法であって、
    B培養液を準備する水溶液準備工程と、
    記NB培養液に非平衡大気圧プラズマを照射するプラズマ照射工程と、
    を有し、
    前記プラズマ照射工程では、
    記NB培養液をプラズマ殺菌水溶液とし、
    前記プラズマ殺菌水溶液のpHを4.80以上5.59以下とすること
    を特徴とするプラズマ殺菌水溶液の製造方法。
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