発明の詳細な説明
その基礎科学および治療用途の両方の莫大な潜在性にもかかわらず、体細胞核移入(SCNT)による哺乳動物クローニングの効率は、非常に低いままである。SCNT後の生きた幼体の出生率は、使用される種、ドナー細胞の種類、プロトコール、または技法に関わらず10%未満である。同様に、クローニングされた胚の発生率は、正常に受精した胚の発生率よりも低く、胚盤胞への発生不良および胚盤胞でのより少ない細胞数を招く。これらの欠損は、クローニングされたマウスSCNT胚からES細胞株の成功裏な樹立が滅多に起こらないことの原因にもなり、成功は、正常な胚が使用されるときの約30%の成功と比較して、マウス系統またはドナー細胞型にかかわらず約5%である。クローニングされた胚の機能不全は、主として、ドナー核における不完全な核プログラミングおよび/またはエピジェネティックなバリアが原因である。
本発明は、ドナー細胞核におけるリプログラミング耐性領域(RRR)でのヒストンH3-リジン9のトリメチル化(H3K9me3)が、SCNTによる効率的な体細胞核リプログラミングを阻止するエピジェネティックなバリアであるという発見に基づく。本明細書に開示されるように、本発明者らは、SCNTの有効性を改善する2つの方法を、第一にデメチラーゼKdm4d(Jmjd2dもしくはJhdm3dとしても公知)の外因性もしくは増加した発現を使用することによるH3K9me3の脱メチル化を促進することによって、および/またはヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1もしくはSuv39h2を阻害することによるH3K9me3のメチル化を阻害することによって実証した。それゆえに、本発明は、エピジェネティックなバリアを除去し、SCNTの効率を増加させるための、H3K9me3ヒストンデメチラーゼ活性化剤、例えばKdm4/Jmjd2ファミリー活性化剤および/またはH3K9me3メチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばSuv39h1もしくはSuv39h2もしくはSetdb1の阻害剤を含む、方法、組成物およびキットに関する。これは、ドナー体細胞(例えば、細胞質もしくは核における)および/またはレシピエント卵母細胞(例えば、有核もしくは除核卵母細胞)および/またはSCNT胚(例えば、5hpa、もしくは10〜12hpa、もしくは20〜28hpa、1細胞期、2細胞期SCNT胚)の任意の1つにおいて行うことができる。
それゆえに、本発明の局面は、(i)H3K9me3を脱メチル化する能力のあるヒストンデメチラーゼ、例えば、例えばKdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼのメンバー、例えば非限定的にJmjd2b/Kdm4bもしくはJmjd2a/Kdm4a、もしくはJmjd2c/Kdm4cもしくはJmjd2d/Kdm4dを発現させること、および/または(ii)H3K9me3のメチル化に関与するヒストンメチルトランスフェラーゼを阻害すること、例えばSuv39h1、Suv39h2もしくはSetdb1の任意の1つもしくは組み合わせの阻害のいずれかによって、H3K9me3メチル化を低減することにより、SCNT効率を増加させることを目指す方法、組成物およびキットに関する。いくつかの態様では、Kdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼの発現または活性を増加させる作用物質は、Kdm4d(Jmjd2d)、Kdm4c(Jmjd2c)、Kdm4b(Jmjd2b)またはKdm4a(Jmjd2a)の発現または活性を増加させる。
別の局面は、1つまたは複数の割球まで発生させるために、本明細書開示の方法および組成物を使用して生成されるSCNT胚の使用に関し、該SCNT胚は、取り出すもしくは生検することができ、かつ/またはES細胞(すなわちntESC)を作製するためもしくは非ヒト哺乳動物の生殖クローニング用に使用することができる。
定義
便宜上、本出願全体に採用される特定の用語(明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲を含む)を、ここに集める。特に定義しない限り、本明細書に使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の技術者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
語句「体細胞核移入」または「SCNT」は、通例、治療用または生殖クローニングとも呼ばれ、体細胞が除核卵母細胞と融合される工程である。体細胞核は、遺伝情報を提供し、一方で卵母細胞は、胚発生に必要な栄養分および他のエネルギー産生物質を提供する。融合が起こった後、細胞は全能であり、最終的には胚盤胞まで発生し、その時点で内部細胞塊が単離される。
本明細書に使用される用語「核移入」は、除核卵母細胞を細胞核遺伝物質または体細胞核と人工的に組み合わせることによって獲得される、同一の特徴および品質を可能にする遺伝子操作技法を表す。いくつかの態様では、核移入手順は、ドナー体細胞由来の核または核遺伝物質が除核卵または除核卵母細胞(核/前核が除去された卵または卵母細胞)に移入される手順である。ドナー核は、体細胞由来であることができる。
用語「核遺伝物質」は、個体に関する情報をコードするポリヌクレオチド(例えばDNA)を含む核に見られる構造および/または分子を表す。核遺伝物質は、染色体およびクロマチンを含む。本用語は、親細胞から娘細胞への分裂のような細胞分裂によって産生される核遺伝物質(例えば染色体)も表す。核遺伝物質は、ミトコンドリアDNAを含まない。
用語「SCNT胚」は、体細胞の核または核遺伝物質と融合された除核卵母細胞の細胞またはその全能性子孫を表す。SCNT胚は、胚盤胞まで発生することができ、着床後に生きた子孫まで発生することができる。SCNT胚は、1細胞期胚、2細胞期胚、4細胞期胚、または胚盤胞になる前の任意の期の胚であることができる。
用語「親胚(parental embryo)」は、単一割球が取り出されるまたは生検されるSCNT胚を表すために使用される。生検後、残りの親胚(生検された割球を除いた親胚)を割球と共に培養して、割球の増殖促進を助けることができる。残りの、生存可能な親SCNT胚は、続いて、長期もしくは永久貯蔵のために、または将来使用するために凍結され得る。あるいは、生存可能な親胚を使用して妊娠が引き起こされ得る。
用語「ドナー哺乳動物細胞」または「ドナー哺乳動物体細胞」は、核アクセプターまたはレシピエントとしてのレシピエント卵母細胞に移入される体細胞または細胞核を表す。
用語「体細胞」は、生殖細胞または生殖細胞前駆体ではない植物または動物細胞を表す。いくつかの態様では、分化した細胞は、生殖細胞ではない。体細胞は、多能性細胞または全能性細胞と関係しない。いくつかの態様では、体細胞は、胚に存在しないまたは胚から得られない体細胞であり、そのような細胞のインビトロ増殖に起因しない体細胞が意味される、「非胚性体細胞」である。いくつかの態様では、体細胞は、胚もしくは胎児以外の生物に存在するもしくは得られる、またはそのような細胞のインビトロ増殖に起因する細胞が意味される「成熟体細胞」である。
本明細書に使用される用語「分化した細胞」は、体細胞系列に分化する過程の、または最終分化した、任意の細胞を表す。例えば胚細胞は、腸を覆う上皮細胞に分化することができる。分化した細胞は、例えば胎児または生きて生まれた動物から単離することができる。
細胞個体発生に関連して、形容詞「分化した(differentiated)」、または「分化している(differentiating)」は、比較されている細胞よりも、「分化した細胞」が発生経路をさらに下流に進行した細胞であることを意味する、相対的な用語である。したがって、幹細胞は、系列制限された前駆細胞(例えば中胚葉幹細胞)に分化することができ、それは、今度はその経路のさらに下流の他の前駆細胞型(例えば心筋細胞前駆細胞)に、それから特定の組織型に特徴的な役割を果たす最終期の分化した細胞に分化することができ、さらに増殖する能力を保持する場合、または保持しない場合がある。
本明細書に使用される用語「卵母細胞」は、減数分裂の中期IIに到達した成熟卵母細胞を表す。卵母細胞は、また、生殖に関与する雌性配偶子または生殖細胞を説明するために使用され、通例、卵とも呼ばれる。成熟卵は、単一セットの母系染色体(ヒト霊長類では23X)を有し、中期IIで停止される。「雑種」卵母細胞は、第1の霊長類卵母細胞(「レシピエント」と呼ばれる)由来の細胞質を有するが、レシピエントの核遺伝物質を有さず;それは、「ドナー」と呼ばれる別の卵母細胞からの核遺伝物質を有する。
本明細書に使用される用語「除核卵母細胞」は、その核が除去された卵母細胞を表す。
本明細書に使用される「レシピエント哺乳動物卵母細胞」は、その本来の核を除去後に哺乳動物核ドナー細胞由来の核を受け入れる哺乳動物卵母細胞を表す。
本明細書に使用される用語「融合」は、核ドナー細胞とレシピエント卵母細胞の脂質膜との組み合わせを表す。例えば、脂質膜は、細胞の形質膜または核膜であり得る。融合は、核ドナー細胞およびレシピエント卵母細胞が互いに隣り合って置かれるとき、または核ドナー細胞がレシピエント卵母細胞の囲卵腔内に置かれるときに、それらの間に電気刺激を適用すると起こり得る。
本明細書に使用される用語「活性化」は、核移入の前、途中または後に分割するような細胞刺激を表す。好ましくは、本発明において、核移入後に分割するような細胞刺激を意味する。
本明細書に使用される用語「生きた子孫」は、子宮外で生存できる動物を意味する。好ましくは、それは、1秒、1分、1日、1週間、1ヶ月、6ヶ月または1年よりも長く生存することができる動物である。動物は、生存のために子宮内環境を要さない場合がある。
用語「出生前」は、誕生前に存在または起こることを表す。同様に、用語「出生後」は、誕生後に存在するまたは起こることである。
本明細書に使用される用語「胚盤胞」は、胎盤哺乳動物における細胞約30〜150個の着床前胚(マウスの受精の約3日後、ヒトの受精の約5日後)を表す。胚盤胞期は桑実胚期に続き、その独特な形態によって識別することができる。胚盤胞は、細胞層(栄養外胚葉)、液体で満たされた腔(卵割腔または胚盤胞腔)、および内部の細胞クラスター(内部細胞塊またはICM)から構成される球体からなる。未分化細胞からなるICMは、胚盤胞が子宮に着床したならば胎児になるものを生み出す。これらの同じICM細胞は、培養状態で成長するならば、胚性幹細胞株を生じることができる。着床時に、マウス胚盤胞は、約70個の栄養膜細胞および30個のICM細胞から構成されている。
本明細書に使用される用語「胞胚」は、割腔と呼ばれる、液体で満たされた腔を囲む細胞の中空球体からなる、胚発生の初期を表す。胞胚という用語は、ときに胚盤胞と互換的に使用される。
用語「割球」は、着床前胚から得られる少なくとも1つの割球(例えば1、2、3、4など)を表すために全体にわたり使用される。用語「2つ以上の割球のクラスター」は、「割球由来外植片(outgrowth)」と互換的に使用され、割球のインビトロ培養の間に作製される細胞を表す。例えば、割球がSCNT胚から得られて最初に培養された後、それは、一般的に少なくとも1回分裂して2つ以上の割球のクラスター(割球由来外植片としても公知)を産生する。このクラスターを胚細胞または胎児細胞と共にさらに培養することができる。最終的に、割球由来外植片は、分裂し続ける。培養方法の過程で、これらの構造からES細胞、全能性幹(TS)細胞、および部分的に分化した細胞型が発生する。
本明細書に使用される用語「カリオプラスト」は、細胞から除核によって得られる、細胞質および形質膜の狭い周縁部によって囲まれる細胞核を表す。
本明細書に使用される用語「細胞カプレット」は、融合および/または活性化前の除核卵母細胞および体細胞または胎児カリオプラストを表す。
本明細書に使用される用語「分割パターン」は、非常に初期の胚で細胞が分裂するパターンを表し、各生物種は、顕微鏡観察できる特徴的な分割パターンを示す。特徴的なパターンからの逸脱は、通常、胚が異常であることを示し、それで、胚の着床前スクリーニングのための基準として分割パターンが使用される。
本明細書に使用される用語「クローン」は、DNA分子、細胞、組織、器官、植物もしくは動物全体、または別の生物と同じ核ゲノムを有する生物の正確な遺伝的複製を表す。
本明細書に使用される用語「クローニングされた(またはクローニング)」は、別の個別のユニットと同一の遺伝子セットを有する新しい個別のユニットを調製するための遺伝子操作技法を表す。本発明において、本明細書に使用される用語「クローニングされた」は、別の細胞、胚細胞、胎児細胞、分化した細胞、および/または動物細胞の核DNA配列と実質的に類似または同一の核DNA配列を有する、細胞、胚細胞、胎児細胞、および/または動物細胞を表す。用語「実質的に類似」および「同一」は、本明細書に記載される。クローニングされたSCNT胚は、1つの核移入から生じることができ、または代替的に、クローニングされたSCNT胚は、少なくとも1つの再クローニング段階を含むクローニング工程から生じることができる。
本明細書に使用される用語「トランスジェニック生物」は、ホストが、その染色体組成中に移入された遺伝子の遺伝形質を獲得するように、別の生物由来の遺伝物質が実験的に移入された生物を表す。
本明細書に使用される用語「胚分割」は、初期胚を、同一の遺伝的構成を有する2つ以上の胚に分離して、本質的に、同一の双生児またはより高度な多生児(三つ子、四つ子など)を創出することを表す。
本明細書に使用される用語「桑実胚」は、胚が細胞12〜32個から構成される固形の塊(割球)である、受精の3〜4日後の着床前胚を表す。8細胞期の後に、着床前胚の細胞は、相互によりしっかりと接着し始め、「緻密」になる。結果として生じた胚は、桑の実に似ており、桑実胚と呼ばれる(ラテン語:morus=桑の実)。
本明細書に使用される用語「除核」は、細胞の核物質が除去され、細胞質だけを残す工程を表す。卵に適用された場合、除核は、核膜に囲まれていない母系染色体の除去を表す。用語「除核卵母細胞」は、核物質または核が除去された卵母細胞を表す。
用語「胚性幹細胞」(ES細胞)は、細胞株として連続継代されている胚盤胞または桑実胚の内部細胞塊から派生する多能性細胞を表す。ES細胞は、卵細胞と精子またはDNAとの受精、核移入、例えばSCNT、単為生殖などから派生し得る。用語「ヒト胚性幹細胞」(hES細胞)は、ヒトES細胞を表す。用語「ntESC」は、SCNTから産出された胚盤胞または桑実胚の内部細胞塊から得られる胚性幹細胞を表す。ESCの作製は、米国特許第5843780号および同第6200806号に開示されており、体細胞核移入から派生する胚盤胞の内部細胞塊から得られるESCは、米国特許第5945577号、同第5994619号、および同第6235970号に記載されており、それらは、その全体として参照により本明細書に組み入れられる。胚性幹細胞の顕著な特徴は、胚性幹細胞の表現型を定義する。それゆえに、胚性幹細胞が他の細胞と識別することができるように細胞が1つまたは複数の独特な特徴を有する場合、細胞は、胚性幹細胞の表現型を有する。例示的な顕著な胚性幹細胞の特徴には、非限定的に、遺伝子発現プロファイル、増殖能、分化能、核型、特定の培養条件への応答性などが含まれる。
本明細書に使用される用語「多能性」は、異なる条件下で1つよりも多い分化した細胞型に分化する能力、好ましくは、3種の胚葉細胞(germ cell layer)全てに特徴的な細胞型に分化する能力を有する細胞を表す。多能性細胞は、主として、例えばヌードマウス奇形腫形成アッセイを使用して、それらが1つよりも多い細胞型、好ましくは3つの胚葉全てに分化できるそれらの能力によって特徴付けられる。そのような細胞には、hES細胞、ヒト胚由来細胞(hEDC)、ヒトSCNT胚由来幹細胞および成体由来幹細胞が含まれる。多能性幹細胞は、遺伝的に修飾されている、または遺伝子修飾されていない場合がある。遺伝的に修飾された細胞には、細胞の特定を促進するための蛍光タンパク質のようなマーカーを含み得る。多能性に関する好ましい検査は、3つの胚葉それぞれの細胞への分化能を実証することであるものの、多能性は、胚性幹(ES)細胞マーカーの発現によっても証明される。そのような細胞を単に培養することが、自然にそれらを多能性にするわけではないことに留意されたい。リプログラミングされた多能性細胞(例えばその用語が本明細書において定義されるところのiPS細胞)は、一般的に培養状態で限られた回数だけ分裂する能力を有する初代細胞親と比較して、成長能を喪失せずに長期間継代できるという特徴も有する。
SCNT胚に関連して本明細書に使用される用語「全能」は、生きて生まれた動物まで発生することができるSCNT胚を表す。
本明細書に使用される用語「iPS細胞」および「人工多能性幹細胞」は、互換的に使用され、非多能性細胞、典型的には成熟体細胞から、例えば1種または複数種の遺伝子の強制発現を誘導することによって人工的に派生した(例えば、誘導された、または完全な後退による)多能性幹細胞を表す。
本明細書に使用される用語「リプログラミング」は、核の発生時計がリセットされるように体細胞の分化状態を変更または後退させる工程;例えば、初期胚細胞核の遺伝プログラムを遂行することができるように、成熟分化細胞核の発生状態をリセットして、胚発生に必要な全てのタンパク質を製造することを表す。いくつかの態様では、ドナー哺乳動物細胞は、SCNTによるリプログラミング前に最終分化する。本明細書開示のリプログラミングは、体細胞の分化状態の多能性または全能生細胞への完全後退を包含する。リプログラミングは、一般的に、接合体が成体まで発生する細胞分化の間に起こる、核酸修飾(例えばメチル化)、クロマチン凝縮、エピジェネティックな変化、ゲノム刷り込みなどの遺伝パターンの少なくとも一部の、変更、例えば後退を含む。体細胞核移入(SCNT)において、レシピエント卵母細胞細胞質の成分は、体細胞核のリプログラミングに重要な役割を演じて、胚性核の機能を遂行すると考えられる。
SCNT胚に関連して本明細書に使用される用語「培養すること」は、胚を培地中に入れることを含む実験手順を表す。SCNT胚を適切な時間、培養培地中に入れて、培地中にSCNT胚を静止状態であるが機能的なままにさせる、またはSCNT胚を培地中で成長させることができる。胚を培養するために適した培地は、当業者に周知である。例えば、全ての図面、表および描画を含めてその全体として参照により本明細書に組み入れられる、1993年5月25日に発行された「In vitro Culture of Bovine Embryos」(Firstら)という名称の米国特許第5,213,979号、および1992年3月17日に発行された「Bovine Embryo Medium」(Rosenkrans, Jr.ら)という名称の米国特許第5,096,822号を参照されたい。
用語「培養培地」は、「適切な培地」と互換的に使用され、細胞増殖を可能にする任意の培地を表す。適切な培地は、最大増殖を促進する必要はなく、測定可能な細胞増殖のみを促進する必要がある。いくつかの態様では、培養培地は、細胞を多能性または全能状態に維持する。
SCNT胚に関連して本明細書に使用される用語「着床させること」は、代理母雌性動物に本明細書記載のSCNT胚を受胎させることを表す。本技法は、当業者に周知である。例えば、Seidel and Elsden, 1997, Embryo Transfer in Dairy Cattle, W. D. Hoard & Sons, Co., Hoards Dairymanを参照されたい。胚は、子宮内で発生可能であり得、または代替的に、胎児は、分娩前に子宮環境から取り出され得る。
本明細書に使用される用語「作用物質」は、非限定的に、小分子、核酸、ポリペプチド、ペプチド、薬物、イオンなどのような任意の化合物または物質を意味する。「作用物質」は、非限定的に、合成および天然のタンパク質性および非タンパク質性実体を含めた、任意の化学物質、実体または部分であることができる。いくつかの態様では、作用物質は、非限定的に、タンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマー、ならびにそれらの修飾物および組み合わせなどを含めた、核酸、核酸類似体、タンパク質、抗体、ペプチド、アプタマー、核酸のオリゴマー、アミノ酸、または糖質である。特定の態様では、作用物質は、化学部分を有する小分子である。例えば、化学部分には、マクロライド、レプトマイシンおよび関連天然産物またはその類似体を含む、非置換または置換されたアルキル、芳香族、またはヘテロシクリル部分が含まれた。化合物は、所望の活性および/もしくは性質を有することが公知であることができ、または多様な化合物のライブラリーより選択することができる。
本明細書に使用される用語「接触させること」(すなわち、哺乳動物ドナー細胞、哺乳動物レシピエント卵母細胞またはSCNT胚を作用物質と接触させること)は、作用物質、および細胞、卵母細胞またはSCNT胚を一緒にインビトロでインキュベートすることを含むことが意図される(例えば、培養状態または容器中のドナー細胞、卵母細胞またはSCNT胚に作用物質を添加すること)。いくつかの態様では、用語「接触させること」は、対象において自然に起こり得る、本明細書開示の作用物質への細胞のインビボ曝露(すなわち、自然生理過程の結果として起こり得る曝露)を含むことが意図されない。哺乳動物ドナー細胞、哺乳動物レシピエント卵母細胞またはSCNT胚を、本明細書開示の作用物質と接触させることは、任意の適切な方法で行うことができる。例えば、哺乳動物ドナー細胞、哺乳動物レシピエント卵母細胞またはSCNT胚は、接着培養または懸濁培養として処置され得る。哺乳動物ドナー細胞、哺乳動物レシピエント卵母細胞またはSCNT胚は、本明細書開示の作用物質と接触されることができ、同時にまたは続いて、成長因子もしくは他の分化作用物質のような別の作用物質または環境と接触させて、細胞を安定化するまたは細胞をさらに分化させることもできることが理解されている。同様に、哺乳動物ドナー細胞、哺乳動物レシピエント卵母細胞またはSCNT胚は、本明細書開示の作用物質(例えば、Kdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤)と、および次に本明細書開示の第2の作用物質(例えばH3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤)と接触させることができ、逆もまた同様である。いくつかの態様では、哺乳動物ドナー細胞、哺乳動物レシピエント卵母細胞、SCNT胚は、本明細書開示の作用物質および本明細書開示の第2の作用物質と接触され、接触は、時間的に分離されている。いくつかの態様では、哺乳動物ドナー細胞、哺乳動物レシピエント卵母細胞、SCNT胚は、本明細書開示の1種または複数種の作用物質と実質的に同時に接触される(例えば、Kdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤およびH3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤と実質的に同時に接触される)。
用語「外因性」は、そのネイティブな起源以外の細胞または生物中に存在する物質を表す。例えば、用語「外因性核酸」または「外因性タンパク質」は、ヒトの手を必要とする工程によって細胞または生物のような生体システム中に導入された核酸またはタンパク質を表す(該細胞または生物において、それは通常見出されない、またはより少量見出される)。ある物質が細胞に導入される、または該物質を継承する細胞の先祖に導入されるならば、外因性と見なされる。対照的に、用語「内因性」は、その時点で生体システムまたは細胞にネイティブな物質を表す。例えば、「外因性Kdm4d」は、その時点で細胞または生物に通常見出されないまたは発現されないKdm4dのmRNAまたはcDNAの導入を表す。
用語「発現」は、該当する場合RNAおよびタンパク質の産生に関与する細胞過程、例えば転写、翻訳、フォールディング、修飾およびプロセシングを表す。「発現産物」には、遺伝子から転写されるmRNAの翻訳によって得られる遺伝子およびポリペプチドから転写されるRNAが含まれる。
「遺伝的に修飾された」または「操作された」細胞は、外因性核酸がヒトの手を必要とする工程によって導入されている細胞(または核酸の少なくとも一部を受け継いだ、そのような細胞の子孫)を表す。核酸は、例えば、細胞に外因性である配列を含み得、核酸は、ネイティブな配列(すなわち、細胞中に自然に見出される配列)を自然に存在しない配置(例えば、異なる遺伝子由来のプロモーターと連結されるコード領域)で、またはネイティブな配列を変更されたバージョンなどで含み得る。核を細胞内に移入する工程は、任意の適切な技法によって達成することができる。適切な技法には、リン酸カルシウムまたは脂質介在性トランスフェクション、エレクトロポレーション、およびウイルスベクターを使用するトランスダクションまたは感染が含まれる。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドまたはその部分は、細胞のゲノム内に組み入れられる。核酸はその後、ゲノムから除去または切り出されていてもよいが、ただしそのような除去または切り出しは、未修飾である以外は同等の細胞と比較して細胞における検出可能な変更をもたらす。
用語「同一性」は、2種以上の核酸またはポリペプチドの配列が同じである度合いを表す。評価ウインドウにわたる、例えば関心対象の配列長にわたる、関心対象の配列と第2の配列との間の同一性パーセントは、配列をアライメントすること、ギャップの導入を見込みながら同一性が最大になるように相手側の評価ウインドウ内で同一残基である残基(ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を判定すること、ウインドウ内に入る関心対象の配列または第2の配列(どちらでも大きい方)の総残基数で割ること、および100を掛けることによって計算され得る。特定の同一性パーセントを達成するために必要な同一残基数を計算するとき、分数を丸めて最も近い整数にするべきである。同一性パーセントは、当技術分野において公知の多様なコンピュータープログラムを使用して計算することができる。例えば、BLAST2、BLASTN、BLASTP、ギャップ付きBLASTなどのコンピュータープログラムは、アライメントを作製し、関心対象の配列間の同一性パーセントを提供する。Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993のように改変された、KarlinおよびAltschul(Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:22264-2268, 1990)のアルゴリズムは、Altschulら(Altschul, et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990)のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み入れられている。比較目的でギャップ付きアライメントを得るために、ギャップ付きBLASTが、Altschulら(Altschul, et al. Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402, 1997)に記載されているように利用される。BLASTおよびギャップ付きBLASTプログラムを利用するとき、それぞれのプログラムのデフォルトのパラメーターが使用され得る。PAM250またはBLOSUM62マトリックスが使用され得る。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI)を経由して公的に入手可能である。これらのプログラムについては、www.ncbi.nlm.nih.govのURLを有するウェブサイトを参照されたい。具体的な一態様では、同一性パーセントは、NCBIによって提供されるデフォルトのパラメーターを用いてBLAST2を使用して計算される。いくつかの態様では、核酸またはアミノ酸配列は、該核酸またはアミノ酸配列と少なくとも80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%または少なくとも約99%の配列同一性を有する。
本明細書に使用される用語「単離された」または「部分精製された」は、核酸またはポリペプチドの場合、その天然起源から見出される核酸もしくはポリペプチドと共に存在する少なくとも1種の他の成分(例えば、核酸またはポリペプチド)から、かつ/あるいは細胞によって発現される場合は核酸もしくはポリペプチドと共に存在する、または分泌型ポリペプチドの場合は分泌される成分から分離された、核酸またはポリペプチドを表す。化学合成された核酸もしくはポリペプチド、またはインビトロ転写/翻訳を使用して合成された核酸もしくはポリペプチドは、「単離された」と見なされる。「単離された細胞」は、本来それが見い出された生物から取り出された細胞、またはそのような細胞の子孫である。任意で、細胞は、例えば他の細胞の存在下で、インビトロ培養されたものである。任意で、細胞は、その後に第2の生物に導入される、またはそれが単離された生物(もしくはその細胞が由来する細胞)に再導入される。
本明細書に使用される単離された細胞集団に関連する用語「単離された集団」は、細胞の混合集団または不均一集団から取り出され、分離された細胞集団を表す。いくつかの態様では、単離された集団は、細胞が単離された、または濃縮された元の不均一集団と比較して、実質的に純粋な細胞集団である。
特定の細胞集団に関連する用語「実質的に純粋な」は、総細胞集団を構成する細胞に関して、少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%純粋な細胞集団を表す。整理し直すと、胚体内胚葉細胞集団に関する用語「実質的に純粋な」または「本質的に精製された」は、本明細書における用語によって定義される胚体内胚葉細胞またはそれらの子孫ではない細胞を、約20%よりも少ない、より好ましくは約15%、10%、8%、7%よりも少ない、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%よりも少ない、または1%未満含有する細胞集団を表す。いくつかの態様では、本発明は、増大した胚体内胚葉細胞集団が胚体内胚葉細胞の実質的純粋な集団である、胚体内胚葉細胞集団を増大させる方法を包含する。同様に、SCNT由来幹細胞集団または多能性幹細胞集団に関して、「実質的に純粋な」または「本質的に精製された」集団は、本明細書における用語によって定義されるような幹細胞またはそれらの子孫ではない細胞を、約20%よりも少ない、より好ましくは約15%、10%、8%、7%よりも少ない、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%よりも少ない、または1%未満含有する細胞集団を表す。
用語「濃縮すること」または「濃縮される」は、本明細書において互換的に使用され、1種の細胞の収率(割合)が、出発培養物または調製物中のその種の細胞の割合よりも少なくとも10%増加していることを意味する。
用語「再生」または「自己再生」または「増殖」は、本明細書において互換的に使用され、幹細胞が長期間および/または何ヶ月〜何年にもわたり同じ特殊化していない細胞型に分裂することによって自己再生する能力を表すために使用される。場合によっては、増殖は、単一細胞から2つの同一の娘細胞への反復分裂による細胞の増大を表す。
本明細書に使用される用語「系列」は、共通の祖先を有する細胞または共通の発生的運命を有する細胞を説明する。内胚葉起源または「内胚葉系列」である細胞に関連して、これは、細胞が内胚葉細胞から派生したが、胚体内胚葉細胞を生じる1種または複数種の発生系列経路のような内胚葉系列に限られた経路に沿って分化することができ、それが今度は肝細胞、胸腺、膵臓、肺および腸に分化することができることを意味する。
本明細書に使用される用語「異種の」は、異なる種由来の細胞を表す。
本明細書に使用される用語「マーカー」は、細胞の特徴および/または表現型を説明するために使用される。マーカーは、関心対象の特徴を含む細胞の選択のために使用することができる。マーカーは、固有の細胞により様々である。マーカーは、特定の細胞型の細胞、または該細胞型によって発現される分子の形態的、機能的または生化学的(酵素的)特徴のいずれかの特徴である。好ましくは、そのようなマーカーは、タンパク質であり、より好ましくは、当技術分野において利用可能な抗体または他の結合分子についてのエピトープを有する。しかし、マーカーは、非限定的にタンパク質(ペプチドおよびポリペプチド)、脂質、多糖、核酸およびステロイドを含めた細胞から見出される任意の分子からなり得る。形態学的特徴または形質の例には、非限定的に、形状、サイズ、および核細胞質比が含まれる。機能的特徴または形質の例には、非限定的に、特定の基材に接着する能力、特定の色素を取り込むまたは排除する能力、特定条件下で遊走する能力、および特定の系列に沿って分化する能力が含まれる。マーカーは、当業者に利用可能な任意の方法によって検出され得る。マーカーは、また、形態的特徴の非存在またはタンパク質、脂質などの非存在であることができる。マーカーは、ポリペプチドおよび他の形態的特徴の存在および非存在の独特な特徴のパネルの組み合わせであることができる。
用語「モジュレートする」は、当技術分野におけるその使用と一致して使用され、すなわち、関心対象の工程、経路、または現象における質的または量的な変化、変更、または改変を引き起こすまたは助長することを意味する。非限定的に、そのような変化は、工程、経路、または現象の異なる成分または部門の相対強度または活性における増加、減少、または変化であり得る。「モジュレーター」は、関心対象の工程、経路、または現象における質的または量的な変化、変更、または改変を引き起こすまたは助長する作用物質である。
用語「RNA干渉」または「RNAi」は、当技術分野におけるその意味と一致して本明細書において使用されて、二本鎖RNA(dsRNA)が、dsRNAの1つの鎖と相補性を有する対応するmRNAの配列特異的分解または翻訳抑制をトリガーする現象を表す。dsRNAの該鎖とmRNAとの間の相補性は、100%である必要はなく、遺伝子発現の阻害(「サイレンシング」または「ノックダウン」とも呼ばれる)を媒介するために十分でさえあればよいことが理解されよう。例えば、相補性の度合いは、鎖が、(i)RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)中のmRNAの切断をガイドすること;または(ii)mRNAの翻訳抑制を引き起こすことのいずれかを行うことができる程度である。特定の態様では、RNAの二本鎖部分は、約30ヌクレオチド長未満、例えば17から29ヌクレオチド長の間である。哺乳動物細胞において、RNAiは、細胞に適切な二本鎖核酸を導入すること、または細胞中で核酸を発現させ、次にその核酸を細胞内でプロセシングしてその中でdsRNAをもたらすことによって達成され得る。RNAiを媒介する能力のある核酸は、本明細書において「RNAi剤」と呼ばれる。RNAiを媒介する能力のある例示的な核酸は、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、およびマイクロRNA前駆体である。これらの用語は周知であり、当技術分野におけるそれらの意味と一致して本明細書に使用される。siRNAは、典型的には、相互にハイブリダイズされて二重鎖を形成する2つの別々の核酸鎖を含む。例えば、標準的な核酸合成技法を使用して、それらをインビトロ合成することができる。それらは、多種多様な修飾ヌクレオシド、ヌクレオシド類似体を含むことができ、化学的または生物学的に修飾された塩基、修飾された骨格などを含むことができる。当技術分野においてRNAiに有用であると認識されている任意の修飾を使用することができる。いくつかの修飾は、増加した安定性、細胞取り込み、効力などを招く。特定の態様では、siRNAは、約19ヌクレオチド長の二重鎖および1〜5ヌクレオチド長の1または2つの3'オーバーハングを含み、オーバーハングは、デオキシリボヌクレオチドから構成され得る。shRNAは、主に非自己相補性領域によって分離された2つの相補的部分を含む一本の核酸鎖を含む。相補性部分はハイブリダイズして二重鎖構造を形成し、非自己相補性領域は、二重鎖の片方の鎖の3'末端ともう一方の鎖の5'末端とを繋ぐループを形成する。shRNAは、細胞内プロセシングを受けてsiRNAを産出する。
用語「選択マーカー」は、発現されたときに、細胞傷害剤もしくは細胞増殖抑制剤に対する耐性(例えば抗生物質耐性)、原栄養性、またはタンパク質を発現する細胞をタンパク質を発現しない細胞と識別するための基礎として使用することができる特定のタンパク質の発現のような選択可能な表現型を細胞に付与する、遺伝子、RNA、またはタンパク質を表す。蛍光もしくは発光タンパク質のような、発現を容易に検出できるタンパク質、または着色、蛍光、もしくは発光物質(「検出可能なマーカー」)を産生する基質に作用する酵素が、選択マーカーのサブセットを構成する。通常、多能性細胞に選択的または独占的に発現される遺伝子にネイティブな発現制御エレメントに連結した選択マーカーの存在は、多能性状態にリプログラミングされている体細胞を特定および選択することを可能にする。ネオマイシン耐性遺伝子(neo)、ピューロマイシン耐性遺伝子(puro)、グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、アデノシンデアミナーゼ(ada)、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(PAC)、ヒグロマイシン耐性遺伝子(hyg)、多剤耐性遺伝子(mdr)、チミジンキナーゼ(TK)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、およびhisD遺伝子のような多様な選択マーカー遺伝子を使用することができる。検出可能なマーカーには、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色、サファイア、黄色、赤色、橙色、およびシアン蛍光タンパク質ならびにこれらのいずれかのバリアントが含まれる。ルシフェラーゼ(例えば、ホタルまたはウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ)のような発光タンパク質も有用である。当業者に明白なように、本明細書に使用される用語「選択マーカー」は、遺伝子または遺伝子発現産物、例えばコードされるタンパク質を表すことができる。
用語「小分子」は、複数の炭素炭素結合および1500ダルトン未満の分子量を有する有機化合物を表す。典型的には、そのような化合物は、タンパク質との構造的相互作用、例えば水素結合形成を媒介する1つまたは複数の官能基を含み、典型的には、少なくとも1つのアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基を含み、いくつかの態様では、少なくとも2つの官能化学基を含む。小分子作用物質は、1つまたは複数の化学官能基および/またはヘテロ原子で置換された、環状炭素もしくは複素環構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含み得る。
本明細書に使用される用語「ポリペプチド」は、アミノ酸のポリマーを表す。用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、本明細書において互換的に使用される。ペプチドは、典型的には約2から60アミノ酸長の間の、相対的に短いポリペプチドである。本明細書に使用されるポリペプチドは、典型的には、タンパク質中から最も一般的に見出される20種のL-アミノ酸のようなアミノ酸を含む。しかし、当技術分野において公知の他のアミノ酸および/またはアミノ酸類似体を使用することができる。ポリペプチド中の1つまたは複数のアミノ酸は、例えば糖質基、リン酸基、脂肪酸基、コンジュゲーション、官能化などのためのリンカーのような化学実体の付加によって修飾され得る。共有結合または非共有結合した非ポリペプチド部分を有するポリペプチドは、依然、「ポリペプチド」と見なされる。例示的な修飾には、グリコシル化およびパルミトイル化が含まれる。ポリペプチドは、天然起源から精製され、組み換えDNA技法を使用して産生され、従来の固相ペプチド合成などのような化学的手段により合成され得る。本明細書に使用される用語「ポリペプチド配列」または「アミノ酸配列」は、ポリペプチドを生化学的に特徴付けるポリペプチド物質自体および/または配列情報(すなわち、アミノ酸名の略語として使用される文字または三文字コードの連続)を表すことができる。本明細書に示されるポリペプチド配列は、特に記載しない限り、N末端からC末端方向に表示される。
ポリペプチドまたは核酸配列を指すときの用語「バリアント」は、例えば完全長ポリペプチドまたは核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するポリペプチドまたは核酸配列であることもできる。いくつかの態様では、バリアントは、完全長ポリペプチドまたは核酸配列のフラグメントであることができる。いくつかの態様では、バリアントは、天然に存在するスプライスバリアントであることもできる。バリアントは、完全長ポリペプチドまたは完全長核酸配列の少なくとも50%の長さのフラグメントと、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するポリペプチドまたは核酸配列であることもでき、その際、フラグメントは、関心対象の活性を有する完全長野生型ポリペプチドまたは核酸配列の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の長さである。例えば、SCNTの効率を増加させる能力を、Kdm4dポリペプチドまたはKdm4d核酸配列と比較して同じまたは同程度有するKdm4dのバリアントである。
用語「機能的フラグメント」または「生物学的に活性なフラグメント」は、本明細書において互換的に使用され、フラグメントの元となるポリペプチドよりもサイズが小さなアミノ酸配列を有するポリペプチドを表し、その際、機能的フラグメントのポリペプチドは、フラグメントの元となるポリペプチドの少なくとも約50%、または60%または70%または80%または90%または100%の、または100%よりも大きい、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍の、または4倍よりも大きい、生物学的作用を有する。機能的フラグメント性ポリペプチドは、減少した抗原性、増加したDNA結合性(転写因子の場合のように)、または変更されたRNA結合性(RNAの安定性または分解を調節する場合のように)を含むことができる追加的な機能を有し得る。いくつかの態様では、生物学的に活性なフラグメントは、フラグメントの元となるポリペプチドと実質的に相同である。理論に限定されることなく、Kdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤Kdm4dの機能的フラグメントの例示的な例は、同じ方法を使用し同じ条件下で、SEQ ID NO:1のアミノ酸を含むKdm4dポリペプチドと比較して、少なくとも約50%、または60%または70%または80%または90%または100%の、または100%よりも大きい、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍の、または4倍よりも大きい、SCNTの効率を増加させる能力を有する、SEQ ID NO:55のフラグメントを含む(例えばその際、フラグメントは、SEQ ID NO:55の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の長さである)。いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、Antony et al., Nature, 2013に開示されるような、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番のC末端またはN末端に、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも2〜10個の間、または少なくとも10〜20個の間、または少なくとも20〜50個の間、または少なくとも50〜100個の間のアミノ酸も欠如する、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番のC末端およびN末端の両方に、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも2〜10個の間、または少なくとも10〜20個の間、または少なくとも20〜50個の間、または少なくとも50〜100個の間のアミノ酸も欠如する、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番を含む。
核酸配列に関して本明細書に使用される用語「機能的フラグメント」または「生物学的に活性なフラグメント」は、フラグメントの元となる核酸配列よりもサイズが小さな核酸配列を表し、その際、該核酸配列は、フラグメントの元となる生物学的に活性なフラグメントの少なくとも約50%、または60%または70%または80%または90%または100%の、または100%よりも大きい、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍の、または4倍よりも大きい、同じ生物学的作用を有する。理論に限定されることなく、Kdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤Kdm4dの核酸配列の機能的フラグメントの例示的な例は、同じ方法を使用し同じ条件下で、SEQ ID NO:1のKdm4d核酸配列と比較して、少なくとも約50%、または60%または70%または80%または90%または100%の、または100%よりも大きい、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍の、または4倍よりも大きい、SCNTの効率を増加させる能力を有する、SEQ ID NO:1のフラグメントを含む(例えばその際、フラグメントは、SEQ ID NO:1の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の長さである)。
単離された細胞に適用されるような用語「処置する」、「処置すること」、「処置」などは、細胞を任意の種類の工程もしくは条件に供すること、または細胞に任意の種類の操作もしくは手順を行うことを含む。対象に適用されるような該用語は、個体に医学的または外科的な注意、ケア、または管理を提供することを表す。個体は、たいてい病気である(医学/外科的注意を必要とする疾患または他の状態を患う)もしくは負傷している、または集団の平均的メンバーと比較して病気になるリスクが増加しており、かつそのような注意、ケア、もしくは管理の必要がある。本明細書において「個体」は、「対象」と互換的に使用される。本発明の任意の態様では、「個体」は、ヒト、例えば、細胞療法が有用な(「指示される」)疾患を患う、またはそのリスクがあるヒトであり得る。
発情周期に関して本明細書に使用される用語「同期化された」または「同期的な」は、当業者に周知の生殖補助技術を表す。これらの技術は、以前の節に引用された参考文献に十分に説明されている。典型的には、エストロゲンおよびプロゲステロンホルモンは、雌性動物の発情周期を胚の発生周期と同期化するために利用される。本明細書に使用される用語「発生周期」は、本発明の胚、および胚内で各細胞分裂の間に存在する時間を表す。この時間は、胚にとって予測可能であり、レシピエント動物の発情周期と同期化することができる。
核DNA配列に関連して本明細書に使用される用語「実質的に類似する」は、ほぼ同一の2つの核DNA配列を表す。2つの配列は、核DNAの複製の間に通常起こるコピー誤差だけ異なり得る。実質的に類似のDNA配列は、好ましくは97%よりも大きく同一であり、より好ましくは98%よりも大きく同一であり、最も好ましくは99%よりも大きく同一である。同一性は、2つの配列の中で同一な残基数を残基の総数で割り、結果に100を掛けることによって測定される。したがって、正確に同じ配列の2つのコピーは、100%の同一性を有し、一方であまり高度に保存されていない欠失、付加、または置換を有する配列は、より低い程度の同一性を有する。当業者は、配列比較を行って、配列同一性を決定するためにいくつかのコンピュータープログラムが利用可能であることを認識している。
用語「より低い」、「低下した」、「低下」または「減少する」または「阻害する」は、全て、本明細書において統計的に有意な量だけの減少を意味するために一般的に使用される。しかし、誤解を避けるために、「より低い」、「低下した」、「低下」または「減少する」または「阻害する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%の減少または最大100%以下の減少(すなわち参照試料と比較して非存在のレベル)、または参照レベルと比較して10〜100%の間の任意の減少を意味する。
用語「増加した」、「増加する」または「高まる」または「活性化する」は、全て、本明細書において統計的に有意な量だけの増加を一般的に意味するために使用され、任意の誤解を避けるために、用語「増加した」、「増加する」または「高まる」または「活性化する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%または最大で100%以下の増加または参照レベルと比較して10〜100%の間の任意の増加、または参照レベルと比較して少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍または少なくとも約10倍の増加、または2倍〜10倍以上の間の任意の増加を意味する。
用語「統計的に有意な」または「有意に」は、統計的有意性を表し、マーカーの正常濃度から2標準偏差(2SD)よりも下を一般的に意味する。本用語は、差があるという統計的証拠を表す。それは、帰無仮説が実際に真である場合に帰無仮説を棄却する決定をなす確率として定義される。決定は、多くの場合にp値を使用してなされる。
本明細書に使用される用語「含んでいる」または「含む」は、本発明に不可欠な組成物、方法、およびそれらの各々の成分に関して使用されるが、不可欠であろうとなかろうと、それでも不特定の要素を包含する。
本明細書に使用される用語「から本質的になる」は、所与の態様に必要とされる要素を表す。本用語は、本発明のその態様の基本的な特徴および新規または機能的な特徴に実質的に影響しない追加的な要素の存在を許す。
用語「からなる」は、態様のその記載に列挙されない任意の要素を排除する、本明細書記載の組成物、方法、およびそれらの各々の成分を表す。
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「該(the)」は、文脈がはっきりと他のことを示さない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば「該方法」の言及は、本明細書記載の、および/または本開示などを読むと当業者に明らかになる種類の、1つまたは複数の方法、および/または段階を含む。
前述の詳細な説明および以下の実施例は、単なる例証であり、本発明の範囲に対する限定としてとらえるべきではないことが理解されている。開示された態様に対する当業者に明らかな様々な変形および改変が、本発明の精神および範囲から逸脱せずに加えられ得る。さらに、特定される全ての特許、特許出願、および刊行物は、本発明に関連して使用され得る、例えばそのような刊行物の中で記載される方法論を説明および開示する目的で、参照により本明細書に明白に組み入れられる。これらの刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示内容のためだけに提供される。これに関して何も、本発明者らが、先行発明のために、または任意の他の理由でそのような開示に先行する権利がないと認めるものとして解釈されるべきではない。日付に関する全ての記述またはこれらの文書の内容についての表現は、本出願人が入手可能な情報に基づくものであり、これらの文書の日付または内容の正確性に関するいかなる容認も構成するものではない。
Kdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤
一局面では、本発明は、SCNTの効率を増加させる方法であって、ドナー哺乳動物細胞、またはSCNT胚、または卵母細胞の核または細胞質を、ヒストンメチル化を阻害する、特にH3K9メチル化を阻害する、特にH3H9me3トリメチル化を阻害する作用物質と接触させる段階を含む方法を提供する。いくつかの態様では、作用物質は、Kdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤である。
いくつかの態様では、本明細書開示の方法、組成物およびキットに有用なKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤は、Kdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼをコードする遺伝子の発現を増加させる、またはKdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼ、例えばKdm4a、Kdm4b、Kdm4cまたはKdm4dの活性を増加させる作用物質である。いくつかの態様では、作用物質は、Kdm4d(Jmjd2d)またはKdm4a(Jmjd2a)の発現または活性を増加させる。
いくつかの態様では、作用物質は、多様な異なる哺乳動物種より選択されるKdm4d、例えばヒトKDM4D(SEQ ID NO:1)、マウスKdm4d(SEQ ID NO:2)、ラットKdm4d(SEQ ID NO:3)、ウサギKdm4d(SEQ ID NO:4)、ブタKdm4d(SEQ ID NO:5)、 ウシKdm4d(SEQ ID NO:6)、マカクKdm4d(SEQ ID NO:7)、およびチンパンジーKdm4d(SEQ ID NO:8)の核酸配列を含む、または作用物質は、SEQ ID NO:1〜8の対応する配列と比較してSCNTの効率を同程度またはより大きい程度まで増加させる、それと少なくとも80%の配列同一性(もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性)の、その生物学的に活性なフラグメント もしくはホモログもしくはバリアントである。いくつかの態様では、組成物は、SEQ ID NO:1の対応するヒトKDM4D核酸配列を含む、またはSEQ ID NO:1の核酸配列と比較してSCNTの効率を同程度もしくはより大きな程度まで増加させる、その生物学的に活性なフラグメントを含む。
いくつかの態様では、本明細書開示の方法、組成物およびキットに有用なKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤は、KDM4Aポリペプチドをコードする核酸作用物質もしくはKDM4Aポリペプチド、またはそのバリアントもしくは生物学的に活性なフラグメントである。本明細書に使用されるヒトKdm4aヌクレオチド配列は、Genbank Accession No. NM_014663.2に対応し、SEQ ID NO:49を表す。KDM4Aは、リジン(K)特異的デメチラーゼ4A、JMJD2、JMJD2A、「十文字ドメイン含有2」、または「十文字ドメイン含有2A」としても公知である。ヒトKDM4Aタンパク質は、Genebank Accession no. NP_055478.2(SEQ ID NO:50)に対応する。それゆえに、KDM4Aのタンパク質配列は、以下の通りである:
いくつかの態様では、本明細書開示の方法、組成物およびキットに有用なKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤は、KDM4Bポリペプチドをコードする核酸作用物質もしくはKDM4Bポリペプチド、またはそのバリアントもしくは生物学的に活性なフラグメントである。本明細書に使用されるヒトKDM4B核酸は、Genbank Accession No. NM_015015.2に対応し、本明細書開示のSEQ ID NO:51を表す。KDM4Bは、リジン(K)特異的デメチラーゼ4B、JMJD2Bもしくは「十文字ドメイン含有2B」、KIAA0876、TDRD14B、または「チューダードメイン含有14Bとしても公知である。ヒトKDM4Bタンパク質は、Genebank Accession no. NP_055830.1(SEQ ID NO:52)に対応する。それゆえに、KDM4Bのタンパク質配列は、以下の通りである:
いくつかの態様では、本明細書開示の方法、組成物およびキットに有用なKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤は、KDM4Cポリペプチドをコードする核酸作用物質もしくはKDM4Cポリペプチド、またはそのバリアントもしくは生物学的に活性なフラグメントである。本明細書に使用されるヒトKDM4C核酸配列は、本明細書開示のGenbank Accession No. NM_015061.3(SEQ ID NO:53)に対応する。KDM4Cは、リジン(K)特異的デメチラーゼC、JMJD2Cもしくは「十文字ドメイン含有2C」GASC1、KIAA0780、TDRD14Cまたは「チューダードメイン含有14Cとしても公知である。ヒトKDM4Cタンパク質は、Genebank Accession no. NP_055876.2(SEQ ID NO:54)に対応する。それゆえに、KDM4Cのタンパク質配列は、以下の通りである:
いくつかの態様では、本明細書開示の方法、組成物およびキットに有用なKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤は、KDM4Dポリペプチドをコードする核酸作用物質もしくはKDM4Dポリペプチド、またはそのバリアントもしくは生物学的に活性なフラグメントである。本明細書に使用されるヒトKDM4D核酸配列は、Genbank Accession No. NM_018039.2に対応し、本明細書開示のSEQ ID NO:1を表す。KDM4Dは、リジン(K)特異的デメチラーゼ4D、FLJ10251、JMJD2Dまたは「十文字ドメイン含有2D」としても公知である。ヒトKDM4Dタンパク質は、Genebank Accession no. NP_060509.2"(SEQ ID NO:55)に対応する。それゆえに、KDM4Dのタンパク質配列は、以下の通りである:
いくつかの態様では、レシピエント哺乳動物卵母細胞または哺乳動物SCNT胚と接触する作用物質は、SEQ ID NO:55のヒトKDM4dタンパク質の発現を増加させ、かつ/またはSEQ ID NO:1の対応するヒトKDM4d核酸配列、もしくはSEQ ID NO:1の核酸配列と比較して、SCNTの効率を同程度またはより大きな程度まで増加させる(例えば、少なくとも約110%、もしくは少なくとも約120%、もしくは少なくとも約130%、もしくは少なくとも約140%、もしくは少なくとも約150%、もしくは150%よりも大きく増加)、その生物学的に活性なフラグメントを含む。
いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、Antony et al., Nature, 2013に開示されるような、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、また、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番のC末端またはN末端に少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも2〜10個の間、または少なくとも10〜20個の間、または少なくとも20〜50個の間、または少なくとも50〜100個の間のアミノ酸を欠如する、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、また、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番のC末端およびN末端の両方に少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも2〜10個の間、または少なくとも10〜20個の間、または少なくとも20〜50個の間、または少なくとも50〜100個の間のアミノ酸を欠如する、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、SEQ ID NO:64を含み、その際、SEQ ID NO:64のタンパク質配列は、以下を含む:
いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、また、SEQ ID NO:64のC末端に、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも2〜10個の間、または少なくとも10〜20個の間、または少なくとも20〜50個の間のアミノ酸を欠如する、SEQ ID NO:64のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、また、SEQ ID NO:64のN末端に、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも2〜10個の間、または少なくとも10〜20個の間、または少なくとも20〜50個の間のアミノ酸を欠如する、SEQ ID NO:64のアミノ酸を含む。
いくつかの態様では、本明細書開示の方法に使用するためのヒストンデメチラーゼ活性化剤は、任意の哺乳動物KDM4Aポリペプチドをコードする、または哺乳動物KDM4Aポリペプチドのバリアントもしくは生物学的に活性なフラグメントをコードする、核酸作用物質より選択される。いくつかの態様では、本明細書開示の方法に使用するためのヒストンデメチラーゼ活性化剤は、任意の哺乳動物KDM4Aポリペプチド、またはそのような哺乳動物KDM4Aポリペプチドのバリアントもしくは生物学的に活性なフラグメントより選択される。当業者が、本明細書開示の方法および組成物に使用するための、ヒトKDM4Aポリペプチドの適切な哺乳動物ホモログ、およびそのような哺乳動物ホモログをコードする核酸を特定できることが、本発明に包含されている。
いくつかの態様では、本明細書開示の方法に使用するためのヒストンデメチラーゼ活性化剤は、任意の哺乳動物KDM4Bポリペプチドをコードする、または哺乳動物KDM4Bポリペプチドのバリアントもしくは生物学的に活性なフラグメントをコードする、核酸作用物質より選択される。いくつかの態様では、本明細書開示の方法に使用するためのヒストンデメチラーゼ活性化剤は、任意の哺乳動物KDM4Bポリペプチド、またはそのような哺乳動物KDM4Bポリペプチドのバリアントもしくは生物学的に活性なフラグメントより選択される。当業者が、本明細書開示の方法および組成物に使用するために、ヒトKDM4Bポリペプチドの適切な哺乳動物ホモログ、およびそのような哺乳動物ホモログをコードする核酸を特定できることが、本発明に包含されている。
いくつかの態様では、本明細書開示の方法に使用するためのヒストンデメチラーゼ活性化剤は、任意の哺乳動物KDM4Cポリペプチドをコードする、または哺乳動物KDM4Cポリペプチドのバリアントもしくは生物学的に活性なフラグメントをコードする、核酸作用物質より選択される。いくつかの態様では、本明細書開示の方法に使用するためのヒストンデメチラーゼ活性化剤は、任意の哺乳動物KDM4Cポリペプチド、またはそのような哺乳動物KDM4Cポリペプチドのバリアントもしくは生物学的に活性なフラグメントより選択される。当業者が、本明細書開示の方法および組成物に使用するために、ヒトKDM4Cポリペプチドの適切な哺乳動物ホモログ、およびそのような哺乳動物ホモログをコードする核酸を特定できることが、本発明に包含されている。
いくつかの態様では、本明細書開示の方法に使用するためのヒストンデメチラーゼ活性化剤は、任意の哺乳動物KDM4Dポリペプチドをコードする、または哺乳動物KDM4Dポリペプチドのバリアントもしくは生物学的に活性なフラグメントをコードする、核酸作用物質より選択される。いくつかの態様では、本明細書開示の方法に使用するためのヒストンデメチラーゼ活性化剤は、任意の哺乳動物KDM4Dポリペプチド、またはそのような哺乳動物KDM4Dポリペプチドのバリアントもしくは生物学的に活性なフラグメントより選択される。当業者が、本明細書開示の方法および組成物に使用するために、ヒトKDM4Dポリペプチドの適切な哺乳動物ホモログ、およびそのような哺乳動物ホモログをコードする核酸を特定できることが、本発明に包含されている。
いくつかの態様に使用されるように、本明細書開示の方法に使用するためのヒストンデメチラーゼ活性化剤は、AOF(LSD1)、AOF1(LSD2)、FBXL11(JHDM1A)、Fbxl10(JHDM1B)、FBXL19(JHDM1C)、KIAA1718(JHDM1D)、PHF2(JHDM1E)、PHF8(JHDM1F)、JMJD1A(JHDM2A)、JMJD1B(JHDM2B)、JMJD1C(JHDM2C)、KDM4A(JMJD2A;JHDM3A)、KDM4B(JMJD2B;JHDM3B)、KDM4C(JMJD2C;JHDM3C)、KDM4D(JMJD2D;JHDM3D)、RBP2(JARID1A)、PLU1(JARID1B)、SMCX(JARID1C)、SMCY(JARID1D)、十文字(JARID2)、UTX(UTX)、UTY(UTY)、JMJD3(JMJD3)、JMJD4(JMJD4)、JMJD5(JMJD5)、JMJD6(JMJD6)、JMJD7(JMJD7)、JMJD8(JMJD8)からなる群のいずれかより選択される。そのようなヒストンデメチラーゼ活性化剤は、その全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2011/0139145号に開示されている。
いくつかの態様では、KDM4ヒストンデメチラーゼ活性化剤は、SEQ ID NO:50、52、54、55の、またはSEQ ID NO:1〜8に対応する任意の1つの核酸配列によってコードされる、任意のヒトKdm4ポリペプチド(ヒトKDM4A〜KDM4D)の完全長ポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一な、ポリペプチドバリアントまたはポリペプチドバリアントをコードする核酸配列である。
いくつかの態様では、KDM4ヒストンデメチラーゼ活性化剤は、SEQ ID NO:50、52、54、55(ヒトKDM4A〜KDM4D)のKdm4ポリペプチドの完全長ポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメントと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一な、ポリペプチドバリアントまたはポリペプチドバリアントをコードする核酸配列である。いくつかの態様では、Kdm4ヒストンデメチラーゼは、SEQ ID NO:50、52、54、55(ヒトKDM4A〜KDM4D)の少なくとも20個の連続するアミノ酸のフラグメント、またはそれぞれSEQ ID NO:50、52、54、55(ヒトKDM4A〜KDM4D)のタンパク質の効率と比較して、SCNTの効率を増加させる能力が少なくとも80%以上のような、関心対象の活性を有する、完全長野生型ポリペプチドもしくはそのドメインの少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%の長さのヒトKDM4A、KDM4B、KDM4CもしくはKDM4Dのフラグメントである。
いくつかの態様では、ヒトKDM4Aの生物学的に活性なフラグメントは、同じ方法を使用して同じ条件下で、SEQ ID NO:50のアミノ酸を含むKDM4Aポリペプチドと比較して、少なくとも約50%、または60%または70%または80%または90%または100%または100%よりも大きな、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍または4倍よりも大きな、SCNTの効率を増加させる能力を有する、SEQ ID NO:50のフラグメント(例えば、その際、フラグメントは、SEQ ID NO:50の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の長さである)を含む。
いくつかの態様では、ヒトKDM4Bの生物学的に活性なフラグメントは、同じ方法を使用して同じ条件下で、SEQ ID NO:52のアミノ酸を含むKDM4Bポリペプチドと比較して、少なくとも約50%、または60%または70%または80%または90%または100%または100%よりも大きな、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍または4倍よりも大きな、SCNTの効率を増加させる能力を有する、SEQ ID NO:52のフラグメント(例えば、その際、フラグメントは、SEQ ID NO:52の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の長さである)を含む。
いくつかの態様では、ヒトKDM4Cの生物学的に活性なフラグメントは、同じ方法を使用して同じ条件下で、SEQ ID NO:54のアミノ酸を含むKDM4Cポリペプチドと比較して、少なくとも約50%、または60%または70%または80%または90%または100%または100%よりも大きな、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍または4倍よりも大きな、SCNTの効率を増加させる能力を有する、SEQ ID NO:54のフラグメント(例えば、その際、フラグメントは、SEQ ID NO:54の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の長さである)を含む。
いくつかの態様では、ヒトKDM4Dの生物学的に活性なフラグメントは、同じ方法を使用して同じ条件下で、SEQ ID NO:55のアミノ酸を含むKDM4Dポリペプチドと比較して、少なくとも約50%、または60%または70%または80%または90%または100%または100%よりも大きな、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍または4倍よりも大きなSCNTの効率を増加させる能力を有する、SEQ ID NO:55のフラグメント(例えば、その際、フラグメントは、SEQ ID NO:55の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の長さである)を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、Antony et al., Nature, 2013に開示されるような、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、また、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番のC末端またはN末端に少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも2〜10個の間、または少なくとも10〜20個の間、または少なくとも20〜50個の間、または少なくとも50〜100個の間のアミノ酸を欠如する、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、また、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番のC末端およびN末端の両方に少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも2〜10個の間、または少なくとも10〜20個の間、または少なくとも20〜50個の間、または少なくとも50〜100個の間のアミノ酸を欠如する、SEQ ID NO:55のアミノ酸1〜424番を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、SEQ ID NO:64を含み、その際、SEQ ID NO:64のタンパク質配列は、以下を含む:
いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、また、SEQ ID NO:64のC末端に、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも2〜10個の間、または少なくとも10〜20個の間、または少なくとも20〜50個の間のアミノ酸を欠如する、SEQ ID NO:64のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:55の生物学的に活性なフラグメントは、また、SEQ ID NO:64のN末端に、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも2〜10個の間、または少なくとも10〜20個の間、または少なくとも20〜50個の間のアミノ酸を欠如する、SEQ ID NO:64のアミノ酸を含む。
いくつかの態様では、ヒトKDM4Aの生物学的に活性なバリアントは、同じ方法を使用して同じ条件下で、SEQ ID NO:50のアミノ酸を含むKDM4Aポリペプチドと比較して、少なくとも約50%、または60%または70%または80%または90%または100%のまたは100%よりも大きな、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍のまたは4倍よりも大きな、SCNTの効率を増加させる能力を有する、SEQ ID NO:50と少なくとも80%の配列同一性(または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性)を有する、SEQ ID NO:50のバリアント(例えば、その際、バリアントは、SEQ ID NO:50の少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%同一である)を含む。
いくつかの態様では、ヒトKDM4Bの生物学的に活性なバリアントは、同じ方法を使用して同じ条件下で、SEQ ID NO:52のアミノ酸を含むKDM4Bポリペプチドと比較して、少なくとも約50%、または60%または70%または80%または90%または100%のまたは100%よりも大きな、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍のまたは4倍よりも大きな、SCNTの効率を増加させる能力を有する、SEQ ID NO:52と少なくとも80%の配列同一性(または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性)を有するSEQ ID NO:52のバリアント(例えば、その際、バリアントは、SEQ ID NO:52と少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%同一である)を含む。
いくつかの態様では、ヒトKDM4Cの生物学的に活性なバリアントは、同じ方法を使用して同じ条件下で、SEQ ID NO:54のアミノ酸を含むKDM4Cポリペプチドと比較して、少なくとも約50%、または60%または70%または80%または90%または100%のまたは100%よりも大きな、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍のまたは4倍よりも大きな、SCNTの効率を増加させる能力を有する、SEQ ID NO:54と少なくとも80%の配列同一性(または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性)を有するSEQ ID NO:54のバリアント(例えば、その際、バリアントは、SEQ ID NO:54と少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%同一である)を含む。
いくつかの態様では、ヒトKDM4Dの生物学的に活性なバリアントは、同じ方法を使用して同じ条件下で、SEQ ID NO:55のアミノ酸を含むKDM4Dポリペプチドと比較して、少なくとも約50%、または60%または70%または80%または90%または100%のまたは100%よりも大きな、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍のまたは4倍よりも大きな、SCNTの効率を増加させる能力を有する、SEQ ID NO:55と少なくとも80%の配列同一性(または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性)を有するSEQ ID NO:55のバリアント(例えば、その際、バリアントは、SEQ ID NO:55と少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%同一である)を含む。
いくつかの態様では、本明細書開示の方法および組成物およびキットに有用なKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤は、SEQ ID NO:50、52、54もしくは55のポリペプチド、またはその生物学的に活性なバリアントもしくはフラグメントをコードする、RNAまたは米国特許出願公開第US2012/03228640号に開示されているような修飾RNA(modRNA)のような核酸作用物質である。いくつかの態様では、KDM4ヒストンデメチラーゼ活性化剤は、SEQ ID NO:1〜8、49、51もしくは53のいずれか、またはSEQ ID NO:1〜8、49、51もしくは53と少なくとも80%の配列同一性(もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性)を有する核酸バリアントより選択される核酸作用物質を含む。いくつかの態様では、KDM4ヒストンデメチラーゼ活性化剤は、SEQ ID NO:1〜8、49、51または53の任意の1つの少なくとも20個の連続するアミノ酸のフラグメント、例えば、SEQ ID NO:1〜8、49、51または53の少なくとも20個、または少なくとも30個または少なくとも40個または少なくとも50個の核酸のフラグメントである核酸を含む。いくつかの態様では、該方法および組成物およびキットに有用な核酸作用物質であるKDM4ヒストンデメチラーゼ活性化剤は、ベクター、例えば、ウイルスベクターから発現される。
代替的な態様では、本明細書に使用するために包含されるKDM4ヒストンデメチラーゼ活性化剤は、SEQ ID NO:1〜8、49、51または53をコードする合成修飾RNA(modRNA)である。合成修飾RNA(modRNA)は、米国特許出願公開第US2012/03228640号;第US2009/0286852号および第US2013/0111615号ならびに米国特許第8,278,036号;同第8,691,966号;同第8,748,089号;同第8,835,108号に記載されており、これらは、その全体として参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの態様では、合成修飾RNA分子は、ベクターにおいて発現されず、合成修飾RNA分子は、裸の合成修飾RNA分子であることができる。いくつかの態様では、組成物は、脂質複合体中に存在する少なくとも1つの合成修飾RNA分子を含むことができる。
いくつかの態様では、合成修飾RNA分子は、少なくとも2つの修飾ヌクレオシドを含み、例えば少なくとも2つの修飾ヌクレオシドは、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、プソイドウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2'dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2,7G)、N2,N2,7-トリメチルグアノシン(m2,2,7G)、およびイノシン(I)からなる群より選択される。いくつかの態様では、合成修飾RNA分子は、さらに、5'キャップ類似体、例えば、5'ジグアノシンキャップのような5'キャップを含む。いくつかの態様では、本明細書開示の方法および組成物に使用するための合成修飾RNA分子は、5'三リン酸エステルを含まない。いくつかの態様では、本明細書開示の方法および組成物に使用するための合成修飾RNA分子は、さらに、ポリ(A)尾部、コザック配列、3'非翻訳領域、5'非翻訳領域、またはその任意の組み合わせを含み、いくつかの態様では、合成修飾RNA分子を、任意で、アルカリホスファターゼで処理することができる。
H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤
一局面では、本発明は、SCNTの効率を増加させる方法であって:ドナー哺乳動物細胞またはSCNT胚または卵母細胞の核または細胞質を、ヒストンメチル化を阻害する、特にH3K9メチル化を阻害する、特にH3H9me3トリメチル化を阻害する作用物質と接触させる段階を含む、方法を提供する。本発明の特定の態様では、作用物質は、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を阻害する。本発明の特定の態様では、作用物質は、ヒストンメチルトランスフェラーゼの発現を阻害する。本発明の特定の態様では、阻害剤は、H3K9メチルトランスフェラーゼの阻害剤である。本明細書に述べられるように、本発明者らは、H3K9メチルトランスフェラーゼタンパク質の阻害をSCNTの効率を増加させるために使用することができることを発見した。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤は、タンパク質 阻害剤であり、いくつかの態様では、阻害剤は、H3K9メチルトランスフェラーゼタンパク質の機能またはその遺伝子からのH3K9メチルトランスフェラーゼの発現を阻害する任意の作用物質である。
本発明の特定の態様では、作用物質は、ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1を阻害する。本発明の特定の態様では、作用物質は、ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h2を阻害する。本発明の特定の態様では、作用物質は、ヒストンメチルトランスフェラーゼ Ehmt1の阻害剤である。本発明の特定の態様では、作用物質は、ヒストンメチルトランスフェラーゼSetdb1を阻害する。特定の態様では、少なくとも2つのH3K9メチルトランスフェラーゼ(例えば2、3、4つなど)が、阻害される。本発明の特定の態様では、Suv39h1およびSuv39h2の両方が、同じ作用物質(例えば、Suv39h1/2阻害剤)によって、または2つ以上の別々の作用物質によって、阻害される。本発明の特定の態様では、作用物質は、RNAi作用物質、例えばヒストンメチルトランスフェラーゼ、例えばH3K9メチルトランスフェラーゼ、例えばSuv39h1、Suv39h2、またはSetdb1の発現を阻害するsiRNAまたはshRNAである。
本明細書に使用される用語「Suv39h1」または「H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、ヒストンH3のLys-9をメチル化するヒストンメチルトランスフェラーゼ「斑入り(variegation)サプレッサー3-9ホモログ1(ショウジョウバエ(Drosophila))」を表す(Aagaard L, Laible G, Selenko P, Schmid M, Dorn R, Schotta G, Kuhfittig S, Wolf A, Lebersorger A, Singh P B, Reuter G, Jenuwein T (June 1999). "Functional mammalian homologues of the Drosophila PEV-modifier Su(var)3-9 encode centromere-associated proteins which complex with the heterochromatin component M31". EMBO J 18 (7): 1923-38.)。該ヒストンメチルトランスフェラーゼは、MG44、KMT1A、SUV39H、ヒストン-リジンN-メチルトランスフェラーゼSUV39H1、H3-K9-HMTase1、OTTHUMP00000024298、Su(var)3-9ホモログ1、リジンN-メチルトランスフェラーゼ1A、ヒストンH3-K9メチルトランスフェラーゼ1、斑入り位置効果3-9ホモログ、ヒストン-リジン N-メチルトランスフェラーゼ、またはH3リジン-9特異的1としても公知である。本用語は、SU(VAR)3-9のような全てのSuv39h1オーソログを包含する。
本発明によると、Suv39h1の阻害剤は、H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1の阻害剤;H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1の遺伝子発現阻害剤からなる群より選択される。
用語「H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1の阻害剤」は、H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1によるヒストンH3のLys-9のメチル化を阻害する能力を有する、天然または非天然の任意の化合物を表す。用語「H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h2の阻害剤」は、H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h2によるヒストンH3のLys-9のtheメチル化を阻害する能力を有する、天然または非天然の任意の化合物を表す。
化合物の阻害活性は、Greiner D. Et al. Nat Chem Biol. 2005 August; 1(3):143-5またはEskeland, R. et al. Biochemistry 43, 3740-3749 (2004)に記載されるように、様々な方法を使用して決定され得る。
いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼの阻害は、作用物質による。任意の作用物質、例えば非限定的に、核酸、核酸類似体、ペプチド、ファージ、ファージミド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、リボソーム、アプタマー、抗体、小型もしくは大型の有機もしくは無機分子、またはその任意の組み合わせを使用することができる。
いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼの阻害剤は、RNAi剤、siRNA剤、shRNA、オリゴヌクレオチド、CRISPR/Cas9、中和抗体または抗体フラグメント、アプタマー、小分子、タンパク質、ペプチド、小分子、アビジミル、アビミル(avimir)、およびその機能的フラグメントまたは誘導体などからなる群より選択される。CRISPR/Cas9システムを介してSuv39h1および/またはSuv39h2をノックアウトするために市販されている配列は、Origene(製品番号KN202428およびKN317005)ならびにSanta Cruz Biotechnology(製品番号:sc-401717)から入手可能であり、本明細書開示の方法および組成物での使用のために包含されている。
本明細書開示の方法に有用な作用物質は、遺伝子発現も阻害する(すなわち遺伝子の発現を抑えるおよび/または抑制する)ことができる。そのような作用物質は、当技術分野において「遺伝子サイレンサー」と呼ばれ、当業者に一般的に公知である。例には、非限定的に、RNA、DNAまたは核酸類似体のための核酸配列が含まれ、一本鎖または二本鎖であることができ、関心対象のタンパク質をコードする核酸、オリゴヌクレオチド、核酸、核酸類似体、例えば非限定的に、ペプチド核酸(PNA)、疑似相補性PNA(pc-PNA)、ロックド核酸(LNA)およびその誘導体などを含む群より選択することができる。核酸作用物質には、また、例えば非限定的に、転写リプレッサーとして作用するタンパク質をコードする核酸配列、アンチセンス分子、リボザイム、低分子阻害性核酸配列、例えば非限定的に、RNAi、shRNAi、siRNA、マイクロRNAi(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが含まれる。
本発明の全ての局面のいくつかの態様では、ドナー哺乳動物細胞と接触する作用物質は、H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えば非限定的に、Suv39h1、Suv39h2またはSetdb1の阻害剤である。いくつかの態様では、Suv39h1、Suv39h2またはSetdb1の阻害剤の少なくとも1つまたは任意の組み合わせを、SNCTの効率を増加させるための方法に使用することができる。いくつかの態様では、Suv39h1、Suv39h2またはSetdb1の阻害剤は、多様な哺乳動物種、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシのSuv39h1、Suv39h2もしくはSetdb1核酸配列(例えば、SEQ ID NO:9〜14)の発現、または多様な異なる哺乳動物、例えば、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ由来のSuv39h1、Suv39h2もしくはSetdb1タンパク質の活性を阻害する。
本発明に関連して、H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1/2の阻害剤は、好ましくは、他の分子と比較して、H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1/2に選択的である。「選択的」によって、阻害剤の親和性が、他のヒストンメチルトランスフェラーゼに対する親和性よりも、少なくとも10倍、好ましくは25倍、より好ましくは100倍、なお好ましくは500倍高いことが意味される。
典型的には、H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1および/またはSuv39h2の阻害剤は、小型有機分子である。用語「小型有機分子」は、一般的に医薬品に使用される有機分子に匹敵するサイズの分子を表す。本用語は、生物学的高分子(例えばタンパク質、核酸など)を除外するものである。好ましい小型有機分子は、最大で約5000Da、より好ましくは最大で2000Da、最も好ましくは最大で約1000Daサイズの範囲である。
特定の一態様では、H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1の阻害剤は、Greiner D, Bonaldi T, Eskeland R、Roemer E, Imhof A. Identification of a specific inhibitor of the histone methyltransferase SU(VAR)3-9. Nat Chem Biol. 2005 August; 1(3):143-5. Epub 2005 Jul. 17.; Weber, H. P., et al., The molecular structure and absolute configuration of chaetocin. Acta Cryst., B28, 2945-2951 (1972); Udagawa, S., et al., The production of chaetoglobosins、sterigmatocystin, O-methylsterigmatocystin, and chaetocin by Chaetomium spp. and related fungi. Can. J. microbiol., 25, 170-177 (1979).; Gardiner, D. M., et al., The epipolythiodioxopiperazine (ETP) class of fungal toxins: distribution, mode of action, functions and biosynthesis. Microbiol., 151, 1021-1032 (2005)によって記載されるカエトシン(chaetocin)(CAS 28097-03-2)である。例えばカエトシンは、Sigma Aldrichから市販されている。
別の態様では、H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1の阻害剤は、アプタマーである。アプタマーは、分子認識に関して抗体の代替となる分子の一クラスである。アプタマーは、高い親和性および特異性を有する事実上任意のクラスの標的分子を認識する能力を有するオリゴヌクレオチド配列またはオリゴペプチド配列である。そのようなリガンドは、Tuerk C. and Gold L., 1990に記載されるように、ランダムな配列ライブラリーの試験管内進化法(SELEX)を経て単離され得る。ランダムな配列ライブラリーは、DNAのコンビナトリアル化学合成によって入手可能である。このライブラリーにおいて、各メンバーは、ユニーク配列の、最終的に化学修飾された直鎖オリゴマーである。このクラスの分子の可能な修飾、使用および利点は、Jayasena S. D., 1999に総説されている。ペプチドアプタマーは、ツーハイブリッド法によってコンビナトリアルライブラリーより選択される、大腸菌(E. coli)チオレドキシンAのようなプラットフォームタンパク質によってディスプレイされる立体配座的に束縛された抗体可変領域からなる(Colas et al., 1996)。
本発明に使用するための発現阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド構築物に基づき得る。アンチセンスRNA分子およびアンチセンスDNA分子を含めたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1またはHP1αのmRNAに結合することによってその翻訳を直接遮断することで、タンパク質の翻訳を阻止するように、またはmRNAの分解を増加させることによってH3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1もしくはHP1αのレベルを減少させ、このようにして細胞内の活性に作用する。例えば、少なくとも約15塩基であり、H3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1をコードするmRNA転写物配列のユニーク領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを、例えば、従来のホスホジエステル技法によって合成し、例えば静脈内注射または注入によって投与することができる。配列が公知な遺伝子の遺伝子発現を特異的に阻害するためにアンチセンス技法を使用するための方法は、当技術分野において周知である(例えば、米国特許第6,566,135号;同第6,566,131号;同第6,365,354号;同第6,410,323号;同第6,107,091号;同第6,046,321号;および同第5,981,732号を参照されたい)。Suv39h1の阻害剤は、その全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2015/0038496号に開示されている。小分子、ベチシリン(Veticillin)は、その全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2014/0161785号に開示されるような、Suv39h1およびSuv39h2の両方に対する選択的阻害剤(すなわち、Suv39h1/2を阻害する)として特定される。
Suv39h2の阻害剤およびその特定方法は、その全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2014/0094387号に開示されている。
H3K9メチルトランスフェラーゼのRNAi阻害剤。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤は、RNAi剤、例えば、siRNAまたはshRNA分子である。Suv39h1、Suv39h2、Setdb1、Ehmt1、およびPRDM2のRNAi剤は、当技術分野において周知である。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼの阻害剤は、RNAi剤である。いくつかの態様では、RNAi剤は、本明細書開示のSuv39h1、Suv39h2またはSetdb1のタンパク質の任意の1つの発現を阻害する。
H3K9メチルトランスフェラーゼ遺伝子の阻害は、当業者に一般的に公知の方法による遺伝子サイレンシングRNAi分子によることができる。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤は、表2より選択されるsiRNA剤の任意の1つまたは組み合わせであるRNAi剤である。
例えば、NM_003173.3(SEQ ID NO:43)に対応するヒトSuv39h1に特異的に標的化される遺伝子サイレンシングsiRNAオリゴヌクレオチド二重鎖は、Suv39h1の発現をノックダウンするために容易に使用することができる。Suv39h1 mRNAは、siRNAを使用して成功裏に標的化することができ;他のsiRNA分子は、標的mRNAの公知配列に基づき当業者によって容易に調製され得る。誤解を避けるために、ヒトSuv39h1の配列は、例えばGenBank Accession Nos. NM_003173.3(SEQ ID NO:43)に提供される。当業者は、タンパク質であるヒトSuv39h1(SEQ ID NO:9)、マウスSuv39h1(SEQ ID NO:11)、ラットSuv39h1(SEQ ID NO:13)もしくはウシSuv39h1(SEQ ID NO:15)をコードするmRNAの発現を阻害する、または任意の他の哺乳動物Suv39h1タンパク質の発現を阻害する、使用されるべきRNAi剤を選択することができる。
誤解を避けるために、ヒトSuv39h1 cDNAの配列は、例えばGenBank Accession No:NM_003173.3(SEQ ID NO:43)に提供され、本明細書開示の方法および組成物にH3K9メチル転移阻害剤として使用するための、ヒトSuv39h1 mRNAの発現を阻害する遺伝子サイレンシングRNAiモジュレーターを設計するために使用することができる。いくつかの態様では、Suv39h1の阻害剤は、siRNA剤、例えば非限定的に:
およびそれと少なくとも80%の配列同一性のフラグメントまたは誘導体である。
本明細書に使用される用語「Suv39h1タンパク質」は、本明細書開示のSEQ ID NO:9の核酸、および機能の構造に不利に影響しない、その中に保存的置換、付加、欠失を含むそのホモログを表す。本明細書に使用されるSuv39h1タンパク質は、以下のようなヒトSuv39h1転写物の核酸配列(SEQ ID NO:43)によってコードされる:
いくつかの態様では、作用物質は、ヒトSuv39h1(SEQ ID NO:9)、マウスSuv39h1(SEQ ID NO:11)、ラットSuv39h1(SEQ ID NO:13)またはウシSuv39h1(SEQ ID NO:15)の発現を少なくとも50%(Suv39h1阻害剤の非存在下と比較して)阻害または低下させる核酸阻害剤を含む。いくつかの態様では、作用物質は、ヒトSuv39h2(SEQ ID NO:10)、マウスSuv39h2(SEQ ID NO:12)、ラットSuv39h2(SEQ ID NO:14)またはウシSuv39h2(SEQ ID NO:16)のタンパク質発現を阻害または減少させる核酸阻害剤を含む。いくつかの態様では、マウスSuv39h1のsiRNA阻害剤は、SEQ ID NO:18もしくはその少なくとも10個の連続するヌクレオチドのフラグメント、またはSEQ ID NO:18と少なくとも80%の配列同一性(もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性)を有する核酸配列である。いくつかの態様では、siRNAまたは他の核酸阻害剤は、Suv39h1のSEQ ID NO:17の標的配列と全体的または部分的にハイブリダイズする。いくつかの態様では、マウスSuv39h2のsiRNA阻害剤は、SEQ ID NO:20もしくはその少なくとも10個の連続するヌクレオチドのフラグメント、またはSEQ ID NO:20と少なくとも80%(もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有する核酸配列である。いくつかの態様では、siRNAまたは他の核酸阻害剤は、全体または部分的に、Suv39h2のSEQ ID NO:19の標的配列とハイブリダイズする。
H3K9メチルトランスフェラーゼ遺伝子の阻害は、当業者によって一般的に公知の方法に従ってRNAi分子を遺伝子サイレンシングすることによることができる。Suv39h1、Suv39h2、Setdb1、Ehmt1、およびPRDM2の阻害は、当技術分野において周知である。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤は、表2より選択されるsiRNA剤の任意の1つまたは組み合わせであるRNAi剤である。
いくつかの態様では、Suv39h1は、hsa-mir-98-5p(MIRT027407)、hsa-mir-615-3p(MIRT040438)、hsa-mir-331-3p(MIRT043442)またはそれと少なくとも85%の配列同一性のmiRバリアントによって標的化および阻害されることができる。ヒト、マウスおよびラットにおいてSuv39h1および/またはSuv39h2を阻害する、市販のsiRNA、RNAiおよびshRNA製品は、Origene、QiagenおよびSanta Cruz Biotechnilogyから入手可能であり、当業者によって使用されることができる。
例えば、NM_024670.3(SEQ ID NO:43)に対応するヒトSuv39h2に特異的に標的化されるsiRNAオリゴヌクレオチド二重鎖を遺伝子サイレンシングすることは、Suv39h2の発現をノックダウンするために容易に使用することができる。Suv39h2 mRNAは、siRNAを使用して成功裏に標的化することができ;他のsiRNA分子は、標的mRNAの公知の配列に基づき当業者によって容易に調製され得る。誤解を避けるために、ヒトSuv39h2の配列は、例えばGenBank Accession No:NM_024670.3(SEQ ID NO:44)に提供される。誤解を避けるために、ヒトSuv39h2 cDNAの配列は、例えばGenBank Accession No:NM_024670.3 (SEQ ID NO:44)に提供され、本明細書開示の方法および組成物においてH3K9メチル転移阻害剤として使用するために、ヒトSuv39h2 mRNAの発現を阻害する遺伝子サイレンシングRNAiモジュレーターを設計するために使用することができる。いくつかの態様では、Suv39h2の阻害剤は、siRNA剤、例えば非限定的に:
およびそのフラグメントまたは少なくとも80%の配列同一性の誘導体である。
本明細書に使用される、用語「Suv39h2タンパク質」は、本明細書開示のSEQ ID NO:10の核酸、および機能の構造に不利に影響しない、その中に保存的置換、付加、欠失を含むそのホモログを表す。本明細書に使用されるSuv39h2タンパク質は、以下のようなヒトSuv39h2転写物についての核酸配列(SEQ ID NO:44)によってコードされる:
いくつかの態様では、または、本明細書開示のSEQ ID NO:2のmRNA発現を阻害する。いくつかの態様では、当業者は、ヒトSuv39h2(SEQ ID NO:10)、マウスSuv39h2(SEQ ID NO:12)、ラットSuv39h2(SEQ ID NO:14)もしくはウシSuv39h2(SEQ ID NO:16)のタンパク質をコードするmRNAの発現を阻害する、または任意の他の哺乳動物Suv39h2タンパク質の発現を阻害する、使用されるべきRNAi剤を選択することができる。
Suv39h1およびSuv39h2についての他の例示的なsiRNA配列は、その全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2012/0034192号に開示されている。
(表2)H3K9メチルトランスフェラーゼを阻害するための例示的なsiRNA配列
誤解を避けるために、ヒトSetdb1 cDNAの配列は、例えばGenBank Accession No:NM_001145415.1(SEQ ID NO:45)に提供され、本明細書開示の方法および組成物においてH3K9メチル転移阻害剤として使用するための、ヒトSetdb1 mRNAの発現を阻害する遺伝子サイレンシングRNAiモジュレーターを設計するために当業者によって使用されることができる。
誤解を避けるために、ヒトEhmt1 cDNAの配列は、例えばGenBank Accession No:NM_024757.4(SEQ ID NO:46)に提供され、本明細書開示の方法および組成物においてH3K9メチル転移阻害剤として使用するための、ヒトEhmt1 mRNAの発現を阻害する遺伝子サイレンシングRNAiモジュレーターを設計するために当業者によって使用されることができる。
誤解を避けるために、ヒトPRDM2 cDNAの配列は、例えばGenBank Accession No:NM_012231.4(SEQ ID NO:47)に提供され、本明細書開示の方法および組成物においてH3K9メチル転移阻害剤として使用するための、ヒトPRDM2 mRNAの発現を阻害する遺伝子サイレンシングRNAiモジュレーターを設計するために当業者によって使用されることができる。
いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼの阻害剤は、RNAi剤、siRNA剤、shRNA、オリゴヌクレオチド、CRISPR/Cas9、中和抗体または抗体フラグメント、アプタマー、小分子、タンパク質、ペプチド、小分子、アビジミル、およびその機能的フラグメントまたは誘導体などからなる群より選択される。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤は、RNAi剤、例えばsiRNAまたはshRNA分子である。いくつかの態様では、作用物質は、ヒトSuv39h1(SEQ ID NO:9)、マウスSuv39h1(SEQ ID NO:11)、ラットSuv39h1(SEQ ID NO:13)またはウシSuv39h1(SEQ ID NO:15)のタンパク質発現を低下させる核酸阻害剤を含む。いくつかの態様では、作用物質は、ヒトSuv39h2(SEQ ID NO:10)、マウスSuv39h2(SEQ ID NO:12)、ラットSuv39h2(SEQ ID NO:14)またはウシSuv39h2(SEQ ID NO:16)の発現を阻害するための核酸阻害剤を含む。いくつかの態様では、マウスSuv39h1のsiRNA阻害剤は、SEQ ID NO:18もしくはその少なくとも10個の連続するヌクレオチドのフラグメント、またはSEQ ID NO:18と少なくとも80%の配列同一性(もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性)を有する核酸配列である。いくつかの態様では、siRNAまたは他の核酸阻害剤は、Suv39h1のSEQ ID NO:17の標的配列と全体的または部分的にハイブリダイズする。いくつかの態様では、マウスSuv39h2のsiRNA阻害剤は、SEQ ID NO:20もしくはその少なくとも10個の連続するヌクレオチドのフラグメント、またはSEQ ID NO:20と少なくとも80%(もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%)の配列同一性を有する核酸配列である。いくつかの態様では、siRNAまたは他の核酸阻害剤は、全体または部分的に、Suv39h2のSEQ ID NO:19またはSEQ ID NO:44の標的配列とハイブリダイズする。
上記局面の他の態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤は、SUV39H1、SUV39H2、G9A(EHMT2)、EHMT1、ESET(SETDB1)、SETDB2、MLL、MLL2、MLL3、SETD2、NSD1、SMYD2、DOT1L、SETD8、SUV420H1、SUV420H2、EZH2、SETD7、PRDM2、PRMT1、PRMT2、PRMT3、PRMT4、PRMT5、PRMT6、PRMT7、PRMT8、PRMT9、PRMT10、PRMT11、CARM1からなる群より選択される前記のヒストンメチルトランスフェラーゼの任意の1つを阻害する。
いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えば、Suv39h1、Suv39h2またはSetdb1を阻害する作用物質は、核酸である。H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えば、Suv39h1、Suv39h2またはSetdb1の核酸阻害剤には、例えば非限定的に、RNA干渉(RNAi)誘導分子、例えば非限定的に、siRNA、dsRNA、stRNA、shRNAおよびその修飾バージョンが含まれ、その際、RNA干渉(RNAi)分子は、Suv39h1、Suv39h2またはSetdb1遺伝子の任意の1つからの遺伝子発現をサイレンシングする。
それゆえに、いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えば、Suv39h1、Suv39h2またはSetdb1の阻害剤は、当業者によって一般的に公知の任意の「遺伝子サイレンシング」方法によって阻害することができる。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えばSuv39h1、Suv39h2またはSetdb1の核酸阻害剤は、アンチセンスオリゴ核酸、または核酸類似体、例えば非限定的に、DNA、RNA、ペプチド-核酸(PNA)、疑似相補性PNA(pc-PNA)、またはロックド核酸(LNA)などである。代替的な態様では、核酸は、DNAまたはRNA、および核酸類似体、例えばPNA、pcPNAおよびLNAである。核酸は、一本鎖または二本鎖であることができ、関心対象のタンパク質をコードする核酸、オリゴヌクレオチド、PNAなどを含む群より選択することができる。そのような核酸配列には、例えば非限定的に、転写リプレッサーとして作用するタンパク質をコードする核酸配列、アンチセンス分子、リボザイム、低分子阻害性核酸配列、例えば非限定的に、RNAi、shRNAi、siRNA、マイクロRNAi(mRNAi)、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが含まれる。
いくつかの態様では、真核細胞に内因的に見出されるRNAの一形態である一本鎖RNA(ssRNA)を使用して、RNAi分子を形成させることができる。細胞性ssRNA分子には、メッセンジャーRNA(および前駆体のプレ-メッセンジャーRNA)、核内低分子RNA、核小体低分子RNA、転移RNAおよびリボソームRNAが含まれる。二本鎖RNA(dsRNA)は、サイズ依存性免疫応答を誘導し、それにより30bpよりも大きなdsRNAがインターフェロン応答を活性化し、一方でより短いdsRNAがDicer酵素下流の細胞の内因性RNA干渉機構に供給される。
RNA干渉(RNAi)は、選択された標的ポリペプチドの発現を阻害するための強力なアプローチを提供する。RNAiは、選択的分解のために、標的ポリペプチドをコードするメッセンジャーRNAを標的化する低分子干渉RNA(siRNA)二重鎖を使用する。遺伝子発現のsiRNA依存性転写後サイレンシングは、siRNAによってガイドされる部位で標的メッセンジャーRNA分子を切断することを伴う。
RNA干渉(RNAi)は、標的遺伝子と同一または高度に類似の配列のRNAの発現または導入が、その標的化遺伝子から転写されるメッセンジャーRNA(mRNA)の配列特異的分解または特異的転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を招く(Coburn, G. and Cullen, B. (2002) J. of Virology 76(18):9225参照)ことによって標的遺伝子の発現を阻害する、進化的に保存された過程である。一態様では、RNAは、二本鎖RNA(dsRNA)である。この過程は、植物、無脊椎動物、および哺乳動物細胞において記載されている。自然界で、RNAiは、長鎖dsRNAからsiRNAと呼ばれる二本鎖フラグメントの連続的切断を促進するdsRNA特異的エンドヌクレアーゼDicerによって開始される。siRNAは、標的mRNAを認識および切断するタンパク質複合体(「RNA誘導サイレンシング複合体」または「RISC」と呼ばれる)に組み入れられる。また、核酸分子、例えば合成siRNAまたはRNA干渉剤を導入して、標的遺伝子の発現を阻害またはサイレンシングすることによって、RNAiを開始することができる。本明細書に使用される、「標的遺伝子発現の阻害」は、RNA干渉が誘導されていない状況と比較して、標的遺伝子または標的遺伝子によってコードされるタンパク質の発現またはタンパク質活性またはレベルにおける任意の減少を含む。減少は、標的遺伝子の発現またはRNA干渉剤によって標的化されていない標的遺伝子によってコードされるタンパク質の活性もしくはレベルと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%またはそれよりも大きいことができる。
本明細書において「低分子干渉RNA」とも呼ばれる「短鎖干渉RNA」(siRNA)は、標的遺伝子、例えばRNAiによる、標的遺伝子の発現を阻害するように機能する作用物質として定義される。siRNAは、化学合成することができ、インビトロ転写によって産生することができ、またはホスト細胞内で産生することができる。一態様では、siRNAは、約15〜約40ヌクレオチド長、好ましくは約15〜約28ヌクレオチド、より好ましくは約19〜約25ヌクレオチド長、より好ましくは約19、20、21、22、または23ヌクレオチド長の二本鎖RNA(dsRNA)分子であり、各鎖上に約0、1、2、3、4、または5ヌクレオチド長を有する3'および/または5'オーバーハングを含むことができる。オーバーハングの長さは、2つの鎖の間で無関係であり、すなわち、一方の鎖上のオーバーハングの長さは、2番目の鎖上のオーバーハングの長さに依存しない。好ましくは、siRNAは、標的メッセンジャーRNA(mRNA)の分解または特異的転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)によりRNA干渉を促進する能力がある。
siRNAには、また、低分子ヘアピン型(ステムループとも呼ばれる)RNA(shRNA)が含まれる。一態様では、これらのshRNAは、短鎖(例えば、ヌクレオチド約19〜約25個の)アンチセンス鎖に続くヌクレオチド約5〜約9個のヌクレオチドループ、および類似のセンス鎖から構成される。あるいは、センス鎖は、ヌクレオチドループ構造に先行することができ、アンチセンス鎖は、後続することができる。これらのshRNAは、プラスミド、レトロウイルス、およびレンチウイルス中に含有され、例えばpol III U6プロモーター、または別のプロモーターから発現されることができる(例えば、その全体として参照により本明細書に組み入れられる、Stewart, et al. (2003) RNA Apr;9(4):493-501を参照されたい)。
RNA干渉剤の標的遺伝子または配列は、細胞性遺伝子またはゲノム配列、例えばSuv39h1、Suv39h2またはSetdb1遺伝子配列のH3K9メチルトランスフェラーゼ遺伝子配列であることができる。siRNAは、標的遺伝子もしくはゲノム配列、またはそのフラグメントと実質的に相同であることができる。これに関連して使用されるように、用語「相同である」は、標的のRNA干渉を引き起こすために、標的mRNAまたはそのフラグメントと実質的に同一、十分に相補的、または類似であるとして定義される。ネイティブなRNA分子に加えて、標的配列の発現を阻害または干渉するために適切なRNAには、RNA誘導体および類似体が含まれる。好ましくは、siRNAは、その標的配列と同一である。
siRNAは、好ましくは、1つの配列だけを標的化する。siRNAのような各RNA干渉剤は、例えば発現プロファイリングにより潜在的オフターゲット効果についてスクリーニングすることができる。そのような方法は、当業者に公知であり、例えば、Jackson et al, Nature Biotechnology 6:635-637, 2003に記載されている。発現プロファイリングに加えて、配列データベース中の類似配列について潜在的標的配列をスクリーニングして、オフターゲット効果を有する可能性がある潜在的配列を特定することができる。例えばJacksonら(同上)によると、配列が同一な15個、またはことによるとわずか11個の連続するヌクレオチドは、標的化されていない転写物のサイレンシングを指令するのに十分である。したがって、提案されたsiRNAを最初にスクリーニングして、BLASTのような任意の公知の配列比較方法による配列同一性分析を使用して潜在的なオフターゲットサイレンシングを回避することができる。
siRNA分子は、RNAだけを含む分子に限定される必要はなく、例えばさらに化学修飾ヌクレオチドおよび非ヌクレオチドを包含し、また、リボース糖分子が、別の糖分子または類似の機能を果たす分子の代わりに置換された分子を含む。そのうえ、ヌクレオチド残基間にホスホロチオエート結合のような非天然結合を使用することができる。例えば、RNA中に見出される天然D-リボヌクレオシドの代わりにD-アラビノフラノシル構造を含むsiRNAを、本発明によるRNAi分子に使用することができる(米国特許第5,177,196号)。他の例には、ヌクレオシドの糖と複素環塩基との間にヌクレアーゼ耐性を付与するo-結合を含むRNA分子および2'-O-メチルリボース、アラビノース、特にD-アラビノースを含むオリゴヌクレオチドに類似のオリゴヌクレオチド分子に結合する、緊密な相補鎖が含まれる(米国特許第5,177,196号)。
RNA鎖は、フルオロフォアのようなレポーター基の反応性官能基で誘導体化することができる。特に有用な誘導体は、RNA鎖の1つまたは複数の末端で、典型的にはセンス鎖の3'末端で、修飾される。例えば、3'末端の2'-ヒドロキシルを、多様な基で容易におよび選択的に誘導体化することができる。
他の有用なRNA誘導体は、2'O-アルキル化残基または2'-O-メチルリボシル誘導体および2'-O-フルオロリボシル誘導体のような修飾糖質部分を有するヌクレオチドを組み入れている。RNA塩基も修飾することができる。標的配列の発現を阻害または干渉するために有用な任意の修飾塩基を、使用することができる。例えば、5-ブロモウラシルおよび5-ヨードウラシルのようなハロゲン化塩基を組み入れることができる。また塩基をアルキル化することができ、例えば、グアノシン残基の代わりに7-メチルグアノシンを組み入れることができる。成功裏な阻害をもたらす非天然塩基も、組み入れることができる。
最も好ましいsiRNA修飾には、2'-デオキシ-2'-フルオロウリジンまたはロックド核酸(LNA)ヌクレオチドおよびホスホジエステルまたは様々な数のホスホロチオエート結合のいずれかを含むRNA二重鎖が含まれる。そのような修飾は、当業者に公知であり、例えば、Braasch et al., Biochemistry, 42: 7967-7975, 2003に記載されている。アンチセンスオリゴヌクレオチド技法のために樹立された化学反応を使用して、siRNA分子への有用な修飾の大部分を導入することができる。好ましくは、修飾は、最小限の2'-O-メチル修飾を伴い、好ましくはそのような修飾を排除する。修飾は、また、好ましくはsiRNAの遊離5'-ヒドロキシル基の修飾を排除する。
それらの3'-またはそれらの5'-末端のいずれかまたは両方に共有結合した様々な「尾部」を有するsiRNAおよびmiRNA分子も、当技術分野において公知であり、本発明の方法を使用して送達されるsiRNAおよびmiRNA分子を安定化するために使用することができる。一般的に述べると、挿入基(intercalating group)、RNA分子の3'または5'末端に結合される様々な種類のレポーター基および親油性基は、当業者に周知であり、本発明の方法により有用である。本発明により有用な修飾RNA分子の調製に適用可能な3'-コレステロールまたは3'-アクリジン修飾オリゴヌクレオチドの合成の説明は、例えば文献:Gamper, H. B., Reed, M. W., Cox, T., Virosco, J. S., Adams, A. D., Gall, A., Scholler, J. K. and Meyer, R. B. (1993) Facile Preparation and Exonuclease Stability of 3'-Modified Oligodeoxynucleotides. Nucleicc Acids Res. 21 145-150;およびReed, M. W., Adams, A. D., Nelson, J. S., and Meyer, R. B.,Jr. (1991) Acridine and Cholesterol-Derivatized Solid Supports for Improved Synthesis of 3'-Modified Oligonucleotides. Bioconjugate Chem. 2 217-225 (1993)から見出すことができる。
H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えばSuv39h1、Suv39h2またはSetdb1遺伝子の標的化に有用な他のsiRNAを、容易に設計および検査することができる。それゆえに、本明細書記載の方法に有用なsiRNAには、特異的H3K9メチルトランスフェラーゼ遺伝子、例えばSuv39h1、Suv39h2またはSetdb1遺伝子に相同な、約15〜約40または約15〜約28ヌクレオチド長のsiRNA分子が含まれる。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ標的化作用物質、例えばSuv39h1、Suv39h2またはSetdb1標的化siRNA分子は、約25〜約29ヌクレオチド長を有する。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ標的化siRNA、例えばSuv39h1、Suv39h2またはSetdb1標的化siRNA分子は、約27、28、29、または30ヌクレオチド長を有する。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ標的化RNAi、例えばSuv39h1、Suv39h2またはSetdb1標的化siRNA分子は、また、3'ヒドロキシル基を含むことができる。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ標的化siRNA、例えばSuv39h1、Suv39h2またはSetdb1標的化siRNA分子は、一本鎖または二本鎖であることができ、そのような分子は、平滑末端である、またはオーバーハング末端(例えば、5'、3')を含むことができる。特定の態様では、RNA分子は、二本鎖であり、かつ平滑末端であるか、またはオーバーハング末端を含むかのいずれかであることができる。
一態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えばSuv39h1、Suv39h2またはSetdb1の標的化RNA分子の少なくとも1つの鎖は、約0〜約6ヌクレオチド(例えばピリミジンヌクレオチド、プリンヌクレオチド)長の3'オーバーハングを有する。他の態様では、3'オーバーハングは、約1〜約5ヌクレオチド、約1〜約3ヌクレオチド、および約2〜約4ヌクレオチド長である。一態様では、Suv39h1/2、Setdb1、Ehmt1またはPRDM2標的化RNA分子は、二本鎖であり、一方の鎖が3'オーバーハングを有し、もう一方の鎖が平滑末端である、またはオーバーハングを有することができる。H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えばSuv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1またはPRDM2のRNAi剤が二本鎖であり、両方の鎖が、オーバーハングを含む態様では、オーバーハングの長さは、各鎖で同じまたは異なることができる。特定の一態様では、本発明のRNAは、約19、20、21、または22個のヌクレオチドを含み、それらは対形成しており、かつそれらはRNAの両方の3'末端に約1〜約3つ、特に約2つのヌクレオチドのオーバーハングを有する。一態様では、3'オーバーハングを、分解に対抗して安定化することができる。好ましい一態様では、RNAは、アデノシンまたはグアノシンヌクレオチドのようなプリンヌクレオチドを含めることによって安定化される。あるいは修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、2'-デオキシチミジンによるウリジン2ヌクレオチド3'オーバーハングの置換は、耐容され、RNAiの効率に影響しない。2'ヒドロキシルの非存在は、組織培養培地中のオーバーハングのヌクレアーゼ耐性を顕著に高める。
本明細書の実施例に開示するように、H3K9メチルトランスフェラーゼSuv39h1、Suv39h2およびSetdb1に対するsiRNAは、SCNTの効率を増加させるために成功裏に使用されている。H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えばSuv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1またはPRDM2の遺伝子サイレンシングRNAiが市販されていないいくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えばSuv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1またはPRDM2の阻害を標的化する遺伝子サイレンシングRNAi剤を、当業者が本明細書開示の方法により産生することができる。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えばSuv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1またはPRDM2のmRNAおよび/またはタンパク質の発現および/またはノックダウンの評価は、当業者に公知の市販のキットを使用して決定することができる。当業者は、標的mRNAの公知の配列に基づいて他を容易に調製することができる。
いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼの阻害剤は、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1またはPRDM2のmRNAレベルの任意の1種または複数種を下方調節または減少させる遺伝子サイレンシングRNAi剤であり、かつ25ntヘアピン型配列であることができる。いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤は、例えば、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1またはPRDM2の任意の1種または複数種のshRNA配列のような遺伝子サイレンシングRNAiである。
一態様では、本明細書記載の方法に使用されるRNA干渉剤は、RNA干渉剤、例えば本発明の方法に使用されるsiRNAの効率的なインビボ送達を例証しているベクターを使用せずに静脈内注射、例えばハイドロダイナミック注射の後に細胞によって能動的にインビボ取り込みされる。
例えばベクター、例えばプラスミドまたはウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターによる送達のような、RNA干渉剤、例えば本発明の方法に使用されるsiRNAまたはshRNAの送達のための他の戦略も用いることができる。そのようなベクターを、例えばXiao-Feng Qin et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 100: 183-188に記載されているように使用することができる。他の送達方法には、RNA干渉剤を塩基性ペプチド、例えばTATペプチドのフラグメントとコンジュゲートもしくは混合すること、陽イオン性脂質と混合すること、または粒子に製剤化することにより塩基性ペプチドを用いる、RNA干渉剤、例えば本発明のsiRNAまたはshRNAの送達が含まれる。
述べたように、siRNAまたはshRNAのようなdsRNAを、テトラサイクリン誘導ベクターなどの誘導ベクターを使用して送達することができる。例えば、pTet-Onベクター(BD Biosciences Clontech, Palo Alto, CA)を用いる、Wang et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 100: 5103-5106に記載の方法を使用することができる。いくつかの態様では、ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、または挿入のために適合された任意の他の適切なビヒクルおよび真核細胞に導入するための外来配列であることができる。ベクターは、アゴニストまたはアンタゴニスト核酸分子のDNA配列のRNAへの転写を指令する能力のある発現ベクターであることができる。ウイルス発現ベクターは、例えば レトロウイルス、レンチウイルス、エプスタイン-バーウイルス、ウシパピローマウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスに基づくベクターまたは上記のいずれかの雑種ウイルスを含む群より選択することができる。一態様では、ベクターはエピソーム性である。適切なエピソームベクターの使用は、対象におけるアンタゴニスト核酸分子を高コピー数染色体外DNA中に維持することによって、染色体組み込みの潜在的効果を除去する手段を提供する。
本明細書開示の方法に有用なRNA干渉分子および核酸阻害剤は、直接化学合成のような公知の技法を使用して、組み換えDicerタンパク質またはショウジョウバエ胚溶解物への曝露によるより長い二本鎖RNAのプロセシングを介して、S2細胞由来インビトロシステムを介して、ファージRNAポリメラーゼ、RNA依存性RNAポリメラーゼ、およびDNAベースのベクターを使用して、産生することができる。細胞溶解物の使用またはインビトロプロセシングはさらに、短鎖の、例えば約21〜23個のヌクレオチドのsiRNAを溶解物などからその後、単離することを伴うことができる。化学合成は、通常、2つの一本鎖RNAオリゴマーを製造することによって進み、続いて2つの一本鎖オリゴマーが二本鎖RNAにアニーリングされる。他の例には、siRNAの化学的および酵素的合成を教示する国際公開公報第99/32619号および同第01/68836号に開示される方法が含まれる。そのうえ、特定のsiRNAを設計および製造するために多数の商業サービスが利用可能である(例えば、QIAGEN Inc., Valencia, CAおよびAMBION Inc., Austin, TXを参照されたい)。
用語「アンチミル(antimir)」「マイクロRNA阻害剤」または「miR阻害剤」は、同義であり、特異的miRNAの活性を干渉するオリゴヌクレオチドを表す。阻害剤は、一本鎖、二本鎖(RNA/RNAまたはRNA/DNA二重鎖)、およびヘアピン設計を含めた多様な立体配置を採ることができ、一般に、マイクロRNA阻害剤は、標的化されるべきmiRNAの1つ(または複数の)成熟鎖と相補的または部分的に相補的な、1つまたは複数の配列または配列の部分を含み、加えて、miRNA阻害剤は、成熟miRNAの逆相補鎖である配列の5'および3'に位置する追加的な配列も含むことができる。追加的な配列は、成熟miRNAが得られる一次miRNA(pri-miRNA)中の成熟miRNAに隣接する配列の逆相補鎖であることができ、または付加的な配列は、任意の配列であることができる(A、G、C、U、またはdTの混合を有する)。いくつかの態様では、付加的な配列の一方または両方は、ヘアピンを形成する能力のある任意の配列である。したがって、いくつかの態様では、miRNAの逆相補鎖である配列は、ヘアピン構造により5'側および3'側に隣接する。マイクロRNA阻害剤は、二本鎖の場合、向かい合う鎖のヌクレオチド間にミスマッチを含むことができる。
いくつかの態様では、作用物質は、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの任意の1つまたは組み合わせの発現を阻害する、タンパク質またはポリペプチドまたはRNAi剤である。そのような態様では、細胞は、改変されて(例えば相同組み換えにより)、そのような作用物質の増加した発現を提供することができ、改変は、例えば天然プロモーターを全体でまたは部分的に異種プロモーターの全てまたは部分と置換することにより、その結果、細胞は、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの阻害剤、例えばタンパク質またはRNAi剤(例えば遺伝子サイレンシングRNAi剤)を発現する。典型的には、異種プロモーターは、作用物質をコードする所望の核酸に機能的に連結されるように挿入される。例えば、Transkaryotic Therapies, Inc.によるPCT国際公開公報WO94/12650、Cell Genesys, Inc.によるPCT国際公開公報WO92/20808、およびApplied Research SystemsによるPCT国際公開公報WO91/09955を参照されたい。阻害性作用物質を含む内因性遺伝子を誘導調節エレメントの制御下で発現するように、細胞を操作することもでき、その場合、内因性遺伝子の調節配列を、相同組み換えによって置換することができる。遺伝子活性化技法は、Chappelへの米国特許第5,272,071号;Sherwinらへの米国特許第5,578,461号;SeldenらによるPCT/US92/09627(国際公開公報第93/09222号);およびSkoultchiらによるPCT/US90/06436(国際公開公報第91/06667号)に記載されている。作用物質は、miRNAを発現するために適した培養条件下で形質転換宿主細胞を培養することによって調製することができる。次に、結果として生じた発現済み作用物質を、そのような培養物から(すなわち培地または細胞抽出物から)、ゲル濾過およびイオン交換クロマトグラフィーのような公知の精製工程を使用して精製することができる。Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼのペプチドまたは核酸作用物質阻害剤の精製は、また、タンパク質と結合する作用物質を含有するアフィニティーカラム;コンカナバリンA-アガロース、HEPARIN-TOYOPEARL(商標)またはシバクロンブルー(Cibacrom blue)3GAセファロースのようなアフィニティー樹脂による1つまたは複数のカラム段階;フェニルエーテル、ブチルエーテル、もしくはプロピルエーテルのような樹脂を使用する疎水性相互作用クロマトグラフィーを伴う1つまたは複数の段階;イムノアフィニティークロマトグラフィー、または相補的cDNAアフィニティークロマトグラフィーを含むことができる。
一態様では、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの核酸阻害剤、例えば(遺伝子サイレンシングRNAi剤)は、合成的に、例えば、当業者に公知の任意の合成方法により核酸を化学合成することによって得ることができる。次に、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの合成核酸阻害剤を、当技術分野において公知の任意の方法によって精製することができる。核酸の化学合成のための方法には、非限定的に、ホスホトリエステル、リン酸エステルもしくはホスホロアミダイト化学反応および固相技法を使用する、またはデオキシヌクレオシドH-ホスホン酸中間体を介する、インビトロ化学合成(Bhongleへの米国特許第5,705,629号参照)が含まれる。
一部の状況では、例えば、核酸阻害剤の増加したヌクレアーゼ安定性が望ましい場合、核酸類似体および/または修飾ヌクレオシド間結合を有する核酸を使用することができる。修飾ヌクレオシド間結合を含む核酸を、また、当技術分野において周知の試薬および方法を使用して合成することができる。例えば、ホスホネート ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミデート メトキシエチルホスホルアミデート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、ジイソプロピルシリル、アセトアミデート、カルバメート、ジメチレン-スルフィド(-CH2-S-CH2)、ジメチレン(diinethylene)-スルホキシド(-CH2-SO-CH2)、ジメチレン-スルホン(-CH2-SO2-CH2)、2'-O-アルキル、および2'-デオキシ-2'-フルオロ'ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含有する核酸を合成する方法は、当技術分野において周知である(Uhlmann et al., 1990, Chem. Rev. 90:543-584; Schneider et al., 1990, Tetrahedron Lett. 31:335およびその中に引用される参考文献を参照されたい)。Cookらへの米国特許第5,614,617号および同第5,223,618号、Acevedoらへの同第5,714,606号、Cookらへの同第5,378,825号、Buhrらへの同第5,672,697号および同第5,466,786号、Cookらへの同第5,777,092号、De Mesmackerらへの同第5,602,240号、Cookらへの同第5,610,289号、およびWangへの同第5,858,988号も、増強されたヌクレアーゼ安定性および細胞取り込みのための核酸類似体を記載している。
shRNA分子を含む合成siRNA分子も、当業者に公知のいくつかの技法を使用して容易に得ることができる。例えば、当技術分野において公知の方法を使用して、例えば適切に保護されたリボヌクレオシドホスホロアミダイトおよび従来のDNA/RNA合成装置を使用して、siRNA分子を化学合成または組み換え産生することができる(例えば、Elbashir, S.M. et al. (2001) Nature 411:494-498; Elbashir, S.M., W. Lendeckel and T. Tuschl (2001) Genes & Development 15:188-200; Harborth, J. et al. (2001) J. Cell Science 114:4557-4565; Masters, J.R. et al. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci., USA 98:8012-8017;およびTuschl, T. et al. (1999) Genes & Development 13:3191-3197を参照されたい)。あるいは、非限定的に、Proligo(Hamburg, Germany)、Dharmacon Research(Lafayette, CO, USA)、Pierce Chemical(Perbio Scienceの一部門、Rockford, IL , USA)、Glen Research(Sterling, VA, USA)、ChemGenes(Ashland, MA, USA)、およびCruachem (Glasgow, UK)を含めた、いくつかの商業的RNA合成供給業者が、利用可能である。このように、siRNA分子は、合成が過度に困難なわけではなく、RNAiに適切な品質で容易に供給される。加えて、プラスミドベクター、レトロウイルスおよびレンチウイルスによってコードされるステムループ構造としてdsRNAを発現させることができる(Paddison, P.J. et al. (2002) Genes Dev. 16:948-958; McManus, M.T. et al. (2002) RNA 8:842-850; Paul, C.P. et al. (2002) Nat. Biotechnol. 20:505-508; Miyagishi, M. et al. (2002) Nat. Biotechnol. 20:497-500; Sui, G. et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci., USA 99:5515-5520; Brummelkamp, T. et al. (2002) Cancer Cell 2:243; Lee, N.S., et al. (2002) Nat. Biotechnol. 20:500-505; Yu, J.Y., et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci., USA 99:6047-6052; Zeng, Y., et al. (2002) Mol. Cell 9:1327-1333; Rubinson, D.A., et al. (2003) Nat. Genet. 33:401-406; Stewart, S.A., et al. (2003) RNA 9:493-501)。これらのベクターは、一般的に、dsRNAの上流にpolIIIプロモーターを有し、センスおよびアンチセンスRNA鎖を別々に、および/またはヘアピン構造として発現することができる。細胞内で、Dicerは、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を有効なsiRNAにプロセシングする。
いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼの阻害剤は、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2遺伝子の任意の1つを標的化する遺伝子サイレンシングsiRNA分子であり、特定の態様では、開始コドンの約25〜50ヌクレオチド、約50〜75ヌクレオチド、または約75〜100ヌクレオチド下流から開始する、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼのコードmRNA配列を標的化する。本発明のsiRNA分子を設計する一方法は、ヌクレオチド29個の配列モチーフAA(N29)TT(式中、Nは、任意のヌクレオチドであることができる)(SEQ ID NO:48)を特定する段階、および少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%のG/C含量を有するヒットを選択する段階を伴う。配列の「TT」部分は、任意である。あるいは、そのような配列が見つからないならば、モチーフNA(N21)(式中、Nは、任意のヌクレオチドであることができる)を使用して検索を拡張することができる。この状況下で、センスsiRNAの3'末端をTTに変換して、センスおよびアンチセンスの3'オーバーハングの配列組成に関して対称的な二重鎖の作製を可能にすることができる。次に、アンチセンスsiRNA分子を、ヌクレオチド23個の配列モチーフのヌクレオチド位置1〜21番の相補体として合成することができる。対称的3'TTオーバーハングの使用は、低分子干渉リボ核タンパク質粒子(siRNP)がおよそ等しい比のセンス標的RNA切断siRNPおよびアンチセンス標的RNA切断siRNPで形成されることを確実にするために有利であることができる(Elbashir et al. (2001)前記およびElbashir et al. 2001前記)。非限定的に、NCBI、BLAST、DerwentおよびGenSeqを含めた配列データベースの解析ならびにOLIGOENGINE(登録商標)のような市販のオリゴ合成ソフトウェアも使用して、ESTライブラリーに対してsiRNA配列を選択して、唯一の遺伝子が標的化されることを確実にすることができる。
本明細書記載の方法に有用なsiRNAには、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの任意の1つに相同な、約15〜約40または約15〜約28ヌクレオチド長のsiRNA分子が含まれる。好ましくは、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼ遺伝子に対する標的化siRNA分子は、約19〜約25ヌクレオチド長を有する。より好ましくは、標的化siRNA分子は、約19、20、21、または22ヌクレオチド長を有する。標的化siRNA分子は、また、3'ヒドロキシル基を含むことができる。標的化siRNA分子は、一本鎖または二本鎖であることができ、そのような分子は平滑末端である、またはオーバーハング末端(例えば、5'、3')を含むことができる。特定の態様では、RNA分子は、二本鎖であり、かつ平滑末端であるか、またはオーバーハング末端を含むかのいずれかである。
一態様では、RNA分子を標的化するH3K9メチルトランスフェラーゼRNAiの少なくとも1つの鎖は、約0〜約6ヌクレオチド(例えば、ピリミジンヌクレオチド、プリンヌクレオチド)長の3'オーバーハングを有する。他の態様では、3'オーバーハングは、約1〜約5ヌクレオチド、約1〜約3ヌクレオチドおよび約2〜約4ヌクレオチド長である。一態様では、標的化RNA分子は、二本鎖であり、一方の鎖が3'オーバーハングを有し、もう一方の鎖が平滑末端である、またはオーバーハングを有することができる。標的化RNA分子が二本鎖である態様において、両方の鎖は、オーバーハングを含み、オーバーハングの長さは、各鎖で同じまたは異なることができる。特定の一態様では、本発明のRNAは、約19、20、21、または22個のヌクレオチドを含み、それらは対形成しており、かつそれらはRNAの両方の3'末端に約1〜約3つ、特に約2つのヌクレオチドのオーバーハングを有する。一態様では、3'オーバーハングは、分解に対して安定化することができる。好ましい一態様では、RNAは、アデノシンまたはグアノシンヌクレオチドのようなプリンヌクレオチドを含めることによって安定化される。あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、2'-デオキシチミジンによるウリジン2つのヌクレオチドの3'オーバーハングの置換は耐容性であり、RNAiの効率に影響しない。2'ヒドロキシルの非存在は、組織培養培地中でのオーバーハングのヌクレアーゼ耐性を顕著に高める。
オリゴヌクレオチドの修飾
未修飾オリゴヌクレオチドは、一部の適用において最適未満である可能性があり、例えば未修飾オリゴヌクレオチドは、例えば細胞ヌクレアーゼによる分解を受けやすい可能性がある。ヌクレアーゼは、核酸ホスホジエステル結合を加水分解することができる。しかし、オリゴヌクレオチドの1つまたは複数のサブユニットに対する化学修飾は、改善された性質を付与することができ、例えば、オリゴヌクレオチドをヌクレアーゼに対してより安定にすることができる。
修飾核酸およびヌクレオチド代用物は、(i)変更、例えば、ホスホジエステル骨格結合における一方もしくは両方の非結合型リン酸エステル性酸素および/または1つもしくは複数の結合型リン酸エステル性酸素の置換、(ii)変更、例えば、リボース糖の構成要素の、例えばリボース糖の2'ヒドロキシルの置換;(iii)「デホスホ」リンカーによるリン酸エステル部分の大規模置換;(iv)非天然塩基による天然塩基の修飾または置換;(v)リボースリン酸エステル骨格の置換または修飾;(vi)オリゴヌクレオチドの3'末端または5'末端の修飾、例えば、末端リン酸基の除去、修飾もしくは置換、またはオリゴヌクレオチドの3'もしくは5'末端のいずれかへの部分、例えば蛍光標識部分のコンジュゲーション;および(vii)糖(例えば六員環)の修飾の、1つまたは複数を含むことができる。
この文脈で使用される置換、修飾、変更のような用語は、任意の工程の限定を意味せず、例えば修飾は、参照または天然のリボ核酸から出発してそれを修飾して修飾リボ核酸を産生しなければならないことを意味するわけでなく、むしろ修飾は、単に天然分子と異なることを示す。
オリゴヌクレオチドは、サブユニットまたはモノマーのポリマーであるので、本明細書記載の修飾、例えば核酸塩基、糖、リン酸エステル部分、またはリン酸エステル部分の非架橋型酸素の修飾の多くは、オリゴヌクレオチド内で繰り返される位置に生じることができる。所与のオリゴヌクレオチドにおける全ての位置が一様に修飾されている必要はなく、実際、上述の修飾の1つよりも多くを、単一のオリゴヌクレオチドに、またはオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドにさえ、組み入れることができる。
一部の例では、修飾は、オリゴヌクレオチドにおける対象位置の全てに生じるが、多くの、実際に大部分の場合で、そうならない。例として、修飾は、3'または5'末端位にだけ生じることができ、内部領域にだけ生じることができ、末端領域に、例えばオリゴヌクレオチドの末端ヌクレオチドの位置に、または最後の2、3、4、5、もしくは10個のヌクレオチドにだけ生じることができる。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域、またはその両方に生じることができる。修飾は、オリゴヌクレオチドの二本鎖領域にだけ生じることができ、またはオリゴヌクレオチドの一本鎖領域にだけ生じることができる。例えば、非架橋型酸素位置でのホスホロチオエート修飾は、一方または両方の末端にだけ生じることができ、末端領域、例えば末端ヌクレオチドの位置に、または鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10個のヌクレオチドにだけ生じることができ、または二本鎖および一本鎖領域の特に末端に生じることができる。1つまたは複数の5'末端をリン酸化することができる。
本明細書記載の修飾は、唯一の修飾、もしくは複数のヌクレオチド上に含まれる唯一の種類の修飾であることができ、または修飾は、本明細書記載の1つまたは複数の他の修飾と組み合わせることができる。本明細書記載の修飾は、また、オリゴヌクレオチド上に組み合わせることができ、例えばオリゴヌクレオチドの異なるヌクレオチドは、本明細書記載の異なる修飾を有する。
いくつかの態様では、例えば安定性を高めるために、オーバーハング中に特定の核酸塩基を含むこと、または一本鎖オーバーハング中に、例えば5'もしくは3'オーバーハング、もしくはその両方に修飾ヌクレオチドもしくはヌクレオチド代用物を含むことが特に好ましい。例えば、オーバーハング中にプリンヌクレオチドを含めることが理想的であることができる。いくつかの態様では、3'または5'オーバーハング中の塩基の全てまたは一部は、例えば本明細書記載の修飾で修飾される。修飾は、例えばリボース糖の2'OH基に修飾を使用すること、例えばリボヌクレオチドの代わりにデオキシリボヌクレオチド、例えばデオキシチミジンを使用すること、およびリン酸基を修飾すること、例えばホスホチオエート(phosphothioate)修飾をすることを含むことができる。オーバーハングは、標的配列と相同である必要はない。
オリゴヌクレオチドへの特異的修飾
リン酸基
リン酸基は、負荷電化学種である。電荷は、2つの非架橋型酸素原子に等しく分布される。しかし、リン酸基を、酸素の一方を異なる置換基により置換することによって修飾することができる。RNAリン酸エステル骨格に対するこの修飾の1つの結果は、核酸分解性破壊に対するオリゴリボヌクレオチドの増加した耐性であることができる。したがって、理論に縛られることを望むわけではないが、非荷電リンカーまたは非対称な電荷分布を有する荷電リンカーのいずれかを生じる変更を導入することが、いくつかの態様で理想的であることができる。
修飾リン酸基の例には、ホスホロチオエート、ホスホロセレネート、ボラノリン酸、ボラノリン酸エステル、ホスホン酸水素、ホスホロアミデート、アルキルホスホネートまたはアリールホスホネートおよびホスホトリエステルが含まれる。特定の態様では、リン酸エステル骨格部分における非架橋型リン酸エステル性酸素原子の1つを、以下:S、Se、BR3(Rは、水素、アルキル、アリールである)、C(すなわち、アルキル基、アリール基など…)、H、NR2(Rは、水素、アルキル、アリールである)、またはOR(Rは、アルキルまたはアリールである)のいずれかによって置換することができる。未修飾リン酸基中のリン原子は、アキラルである。しかし、上記原子または原子群の1つによる非架橋型酸素の1つの置換は、リン原子をキラルにし;言い換えると、この方法で修飾されたリン酸基におけるリン原子は不斉中心である。不斉リン原子は、「R」立体配置(本明細書においてRp)または「S」立体配置(本明細書においてSp)のいずれかを有することができる。
ホスホロジチオエートは、両方の非架橋型酸素を硫黄により置換されている。ホスホロジチオエートにおけるリン中心は、アキラルであり、このことが、オリゴリボヌクレオチドジアステレオマーの形成を妨げている。したがって、理論に縛られることを望むわけではないが、キラル中心を除去する両方の非架橋型酸素への修飾、例えばホスホロジチオエート形成は、それらがジアステレオマー混合物を産生できない点で理想的であることができる。したがって、非架橋型酸素は、独立して、S、Se、B、C、H、N、またはOR(Rは、アルキルまたはアリールである)の任意の1つであることができる。
リン酸エステルリンカーは、また、架橋型酸素(すなわち、リン酸エステルをヌクレオシドに結合する酸素)の、窒素(架橋型ホスホロアミデート)、硫黄(架橋型ホスホロチオエート)および炭素(架橋型メチレンホスホネート)による置換によって修飾することができる。置換は、一方の結合型酸素または両方の結合型酸素で生じることができる。架橋型酸素がヌクレオシドの3'-酸素である場合、炭素による置換が好ましい。架橋型酸素がヌクレオシドの5'-酸素である場合、窒素による置換が好ましい。
リン酸基の置換
リン酸基を、リン不含コネクターによって置換することができる。理論に縛られることを望むわけではないが、荷電ホスホジエステル基は、核酸分解における反応中心であるので、中性構造模倣物によるその置換は、増強したヌクレアーゼ安定性を付与するはずであると考えられる。さらに、理論に縛られることを望むわけではないが、いくつかの態様において、荷電リン酸基が中性部分によって置換される変更を導入することが理想的であることができる。
リン酸基を置換することができる部分の例には、メチルホスホネート、ヒドロキシルアミノ、シロキサン、カルボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノが含まれる。好ましい置換には、メチレンカルボニルアミノおよびメチレンメチルイミノ基が含まれる。
リン酸エステルに結合している酸素の少なくとも1つが置換されている、またはリン酸基が非リン基によって置換されている修飾リン酸エステル結合も、「非ホスホジエステル骨格結合」と呼ばれる。
リボリン酸エステル骨格の置換
リン酸リンカーおよびリボース糖が、ヌクレアーゼ耐性のヌクレオシド代用物またはヌクレオチド代用物によって置換されている、オリゴヌクレオチド模倣足場も構築することができる。理論に縛られることを望むわけではないが、反復荷電した骨格の非存在は、ポリアニオンを認識するタンパク質(例えばヌクレアーゼ)への結合を減少させると考えられる。さらに、理論に縛られることを望むわけではないが、ある態様において、塩基が中性代用物骨格によって繋がれている変更を導入することが理想的であることができる。例には、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジンおよびペプチド核酸(PNA)ヌクレオシド代用物が含まれる。好ましい代用物は、PNA代用物である。
糖修飾
オリゴヌクレオチドは、核酸の糖基の全てまたは一部の修飾を含むことができる。例えば、2'ヒドロキシル基(OH)を、いくつかの異なる「オキシ」または「デオキシ」置換基により修飾または置換することができる。理論に縛られるわけではなく、ヒドロキシルが脱プロトン化されてもはや2'-アルコキシドイオンを形成することができないので、増強した安定性が予期される。2'-アルコキシドは、リンカーのリン原子への分子内求核攻撃による分解を触媒することができる。さらに、理論に縛られることを望むわけではないが、2'位でのアルコキシド形成が不可能である変更を導入することが、いくつかの態様に理想的であることができる。
「オキシ」-2'ヒドロキシル基の修飾の例には、アルコキシまたはアリールオキシ(OR、例えば、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖);ポリエチレングリコール(PEG)、O(CH2CH2O)nCH2CH2OR;2'ヒドロキシルが、例えばメチレン架橋によって同じリボース糖の4'炭素に結合される「ロックド」核酸(LNA);O-アミン(アミン=NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)およびアミノアコキシ、O(CH2)nアミン、(例えば、アミン=NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)が含まれる。メトキシエチル基(MOE)(OCH2CH2OCH3、PEG誘導体)だけを含むオリゴヌクレオチドが、頑健なホスホロチオエート修飾を有する修飾に匹敵するヌクレアーゼ安定性を示すことは、注目すべきである。
「デオキシ」修飾には、水素(すなわち、部分的dsRNAのオーバーハング部分に特に関連するデオキシリボース糖);ハロ(例えばフルオロ);アミノ(例えばNH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ酸);NH(CH2CH2NH)nCH2CH2-アミン(アミン=NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ)、-NHC(O)R(R=アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖)、シアノ;メルカプト;アルキル-チオ-アルキル;チオアルコキシ;チオアルキル;ならびに例えばアミノ官能基により置換されてもよいことができるアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニルおよびアルキニルが含まれる。
糖基は、また、リボース中の対応する炭素と比較して逆の立体化学的立体配置を有する、1つまたは複数の炭素を含むことができる。したがって、オリゴヌクレオチドは、例えば、糖としてアラビノースを含むヌクレオチドを含むことができる。モノマーは、糖の1'位にα結合例えば、α-ヌクレオシドを有することができる。オリゴヌクレオチドは、また、C-1'に核酸塩基を欠如する「脱塩基」糖を含むことができる。これらの脱塩基糖は、また、構成糖原子の1つまたは複数にさらに修飾を含むことができる。オリゴヌクレオチドは、また、L体である1つまたは複数の糖、例えばL-ヌクレオシドを含むことができる。
好ましい置換基は、2'-O-Me(2'-O-メチル)、2'-O-MOE(2'-O-メトキシエチル)、2'-F、2'-O-[2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル](2'-O-NMA)、2'-S-メチル、2'-O-CH2-(4'-C)(LNA)、2'-O-CH2CH2-(4'-C)(ENA)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAOE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-DMAP)および2'-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-DMAEOE)である。
末端修飾
オリゴヌクレオチドの3ダッシュ(3')および5ダッシュ(5')末端を修飾することができる。そのような修飾は、分子の3'末端、5'末端または両末端にあることができる。それらは、末端リン酸全体またはリン酸基の原子の1つまたは複数の修飾または置換を含むことができる。例えば、オリゴヌクレオチドの3'および5'末端を、標識部分、例えばフルオロフォア(例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3もしくはCy5色素)または保護基(例えば、硫黄、ケイ素、ホウ素またはエステルに基づく)のような他の機能的分子実体にコンジュゲートすることができる。機能的分子実体を、リン酸基および/またはリンカーを経由して糖に結合させることができる。リンカーの末端原子は、リン酸基の結合原子または糖のC-3'もしくはC-5'のO、N、SもしくはC基と結合またはそれを置換することができる。あるいは、リンカーは、ヌクレオチド代用物(例えばPNA)の末端原子と結合またはそれを置換することができる。
リンカー/リン酸-機能的分子実体-リンカー/リン酸アレイがdsRNAの2つの鎖の間に挿置された場合、このアレイは、ヘアピン型RNA作用物質においてヘアピン型RNAループの代わりとなることができる。
活性をモジュレートするために有用な末端修飾には、リン酸エステルまたはリン酸エステル類似体による5'末端の修飾が含まれる。例えば、好ましい態様では、dsRNAのアンチセンス鎖は、5'リン酸化されている、または5'ダッシュ末端にホスホリル類似体を含む。5'-リン酸修飾には、RISC介在性遺伝子サイレンシングに適合するものが含まれる。5'末端での修飾は、また、対象の免疫系を刺激または阻害することに有用であることができる。適切な修飾には:5'-一リン酸((HO)2(O)P-O-5');5'-二リン酸((HO)2(O)P-O-P(HO)(O)-O-5');5'-三リン酸((HO)2(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5');5'-グアノシンキャップ(7-メチル化または非メチル化)(7m-G-O-5'-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5');5'-アデノシンキャップ(Appp)、および任意の修飾または未修飾ヌクレオチドキャップ構造(N-O-5'-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5');5'-モノチオホスフェート(ホスホロチオエート;(HO)2(S)P-O-5');5'-モノジチオホスフェート(ホスホロジチオエート;(HO)(HS)(S)P-O-5')、5'-ホスホロチオレート(phosphorothiolate)((HO)2(O)P-S-5');酸素/硫黄置換された一リン酸エステル、二リン酸エステルおよび三リン酸エステルの任意の追加的な組み合わせ(例えば5'-α-チオ三リン酸、5'-β-チオ三リン酸、5'-γ-チオ三リン酸など)、5'-ホスホルアミデート((HO)2(O)P-NH-5'、(HO)(NH2)(O)P-O-5')、5'-アルキルホスホネート(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えばRP(OH)(O)-O-5'-、(OH)2(O)P-5'-CH2-)、5'-アルキルエーテルホスホネート(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH2-)、エトキシメチルなど、例えばRP(OH)(O)-O-5'-)が含まれる。他の態様には、BH3、BH3-および/またはSeによる酸素/硫黄の置換が含まれる。
末端修飾は、また、分布をモニタリングするために有用であることができ、そのような場合、付加されるべき好ましい基には、フルオロフォア、例えばフルオレセインまたはALEXA(登録商標)色素、例えばALEXA(登録商標)488が含まれる。末端修飾は、また、取り込みを高めるために有用であることができ、このために有用な修飾には、コレステロールが含まれる。末端修飾は、また、RNA作用物質を別の部分に架橋結合させるために有用であることができ、このために有用な修飾には、マイトマイシンCが含まれる。
核酸塩基
アデニン、グアニン、シトシンおよびウラシルは、RNAに見出される最も一般的な塩基である。これらの塩基を、修飾または置換して、改善された性質を有するRNAを提供することができる。例えばヌクレアーゼ耐性オリゴリボヌクレオチドを、これらの塩基を用いて、または合成および天然の核酸塩基(例えば、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌブラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、もしくはツベルシジン)および上記修飾の任意の1つを用いて調製することができる。あるいは、上記塩基および「ユニバーサル塩基」のいずれかの置換または修飾類似体を用いることができる。例には、2-(ハロ)アデニン、2-(アルキル)アデニン、2-(プロピル)アデニン、2(アミノ)アデニン、2-(アミノアルキル)アデニン、2(アミノプロピル)アデニン、2(メチルチオ)N6(イソペンテニル)アデニン、6(アルキル)アデニン、6(メチル)アデニン、7(デアザ)アデニン、8(アルケニル)アデニン、8-(アルキル)アデニン、8(アルキニル)アデニン、8(アミノ)アデニン、8-(ハロ)アデニン、8-(ヒドロキシル)アデニン、8(チオアルキル)アデニン、8-(チオール)アデニン、N6-(イソペンチル)アデニン、N6(メチル)アデニン、N6,N6(ジメチル)アデニン、2-(アルキル)グアニン、2(プロピル)グアニン、6-(アルキル)グアニン、6(メチル)グアニン、7(アルキル)グアニン、7(メチル)グアニン、7(デアザ)グアニン、8(アルキル)グアニン、8-(アルケニル)グアニン、8(アルキニル)グアニン、8-(アミノ)グアニン、8(ハロ)グアニン、8-(ヒドロキシル)グアニン、8(チオアルキル)グアニン、8-(チオール)グアニン、N(メチル)グアニン、2-(チオ)シトシン、3(デアザ)5(アザ)シトシン、3-(アルキル)シトシン、3(メチル)シトシン、5-(アルキル)シトシン、5-(アルキニル)シトシン、5(ハロ)シトシン、5(メチル)シトシン、5(プロピニル)シトシン、5(プロピニル)シトシン、5(トリフルオロメチル)シトシン、6-(アゾ)シトシン、N4(アセチル)シトシン、3(3アミノ-3カルボキシプロピル)ウラシル、2-(チオ)ウラシル、5(メチル)2(チオ)ウラシル、5(メチルアミノメチル)-2(チオ)ウラシル、4-(チオ)ウラシル、5(メチル)4(チオ)ウラシル、5(メチルアミノメチル)-4(チオ)ウラシル、5(メチル)2,4(ジチオ)ウラシル、5(メチルアミノメチル)-2,4(ジチオ)ウラシル、5(2-アミノプロピル)ウラシル、5-(アルキル)ウラシル、5-(アルキニル)ウラシル、5-(アリルアミノ)ウラシル、5(アミノアリル)ウラシル、5(アミノアルキル)ウラシル、5(グアニジニウムアルキル)ウラシル、5(1,3-ジアゾール-1-アルキル)ウラシル、5-(シアノアルキル)ウラシル、5-(ジアルキルアミノアルキル)ウラシル、5(ジメチルアミノアルキル)ウラシル、5-(ハロ)ウラシル、5-(メトキシ)ウラシル、ウラシル-5オキシ酢酸、5(メトキシカルボニルメチル)-2-(チオ)ウラシル、5(メトキシカルボニル-メチル)ウラシル、5(プロピニル)ウラシル、5(プロピニル)ウラシル、5(トリフルオロメチル)ウラシル、6(アゾ)ウラシル、ジヒドロウラシル、N3(メチル)ウラシル、5-ウラシル(すなわち、プソイドウラシル)、2(チオ)プソイドウラシル、4(チオ)プソイドウラシル、2,4-(ジチオ)プソイドウラシル、5-(アルキル)プソイドウラシル、5-(メチル)プソイドウラシル、5-(アルキル)-2-(チオ)プソイドウラシル、5-(メチル)-2-(チオ)プソイドウラシル、5-(アルキル)-4(チオ)プソイドウラシル、5-(メチル)-4(チオ)プソイドウラシル、5-(アルキル)-2,4(ジチオ)プソイドウラシル、5-(メチル)-2,4(ジチオ)プソイドウラシル、1置換プソイドウラシル、1置換2(チオ)-プソイドウラシル、1置換4(チオ)プソイドウラシル、1置換2,4-(ジチオ)プソイドウラシル、1(アミノカルボニルエチレニル)-プソイドウラシル、1(アミノカルボニルエチレニル)-2(チオ)-プソイドウラシル、1(アミノカルボニルエチレニル)-4(チオ)プソイドウラシル、1(アミノカルボニルエチレニル)-2,4-(ジチオ)プソイドウラシル、1(アミノアルキルアミノカルボニルエチレニル)-プソイドウラシル、1(アミノアルキルアミノ-カルボニルエチレニル)-2(チオ)-プソイドウラシル、1(アミノアルキルアミノカルボニルエチレニル)-4(チオ)プソイドウラシル、1(アミノアルキルアミノカルボニルエチレニル)-2,4-(ジチオ)プソイドウラシル、1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェノキサジン-1-イル、1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジン-1-イル、1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェンチアジン(phenthiazin)-1-イル、1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェンチアジン-1-イル、7-置換1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェノキサジン-1-イル、7-置換1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジン-1-イル、7-置換1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェンチアジン-1-イル、7-置換1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェンチアジン-1-イル、7-(アミノアルキルヒドロキシ)-1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェノキサジン-1-イル、7-(アミノアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジン-1-イル、7-(アミノアルキルヒドロキシ)-1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェンチアジン-1-イル、7-(アミノアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェンチアジン-1-イル、7-(グアニジニウムアルキルヒドロキシ)-1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェノキサジン-1-イル、7-(グアニジニウムアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジン-1-イル、7-(グアニジニウムアルキル-ヒドロキシ)-1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェンチアジン-1-イル、7-(グアニジニウムアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェンチアジン-1-イル、1,3,5-(トリアザ)-2,6-(ジオキサ)-ナフタレン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌブラリン、ツベルシジン、イソグアニシン(isoguanisine)、イノシニル、2-アザ-イノシニル、7-デアザ-イノシニル、ニトロイミダゾリル、ニトロピラゾリル、ニトロベンゾイミダゾリル、ニトロインダゾリル、アミノインドリル、ピロールピリミジニル、3-(メチル)イソカルボスチリリル(isocarbostyrilyl)、5-(メチル)イソカルボスチリリル、3-(メチル)-7-(プロピニル)イソカルボスチリリル、7-(アザ)インドリル、6-(メチル)-7-(アザ)インドリル、イミジゾピリジニル(imidizopyridinyl)、9-(メチル)-イミジゾピリジニル、ピロールピリジニル、イソカルボスチリリル、7-(プロピニル)イソカルボスチリリル、プロピニル-7-(アザ)インドリル、2,4,5-(トリメチル)フェニル、4-(メチル)インドリル、4,6-(ジメチル)インドリル、フェニル、ナフタレニル、アントラセニル、フェナントラセニル、ピレニル、スチルベニル、テトラセニル、ペンタセニル、ジフルオロトリル、4-(フルオロ)-6-(メチル)ベンゾイミダゾール、4-(メチル)ベンゾイミダゾール、6-(アゾ)チミン、2-ピリジノン、5ニトロインドール、3ニトロピロール、6-(アザ)ピリミジン、2(アミノ)プリン、2,6-(ジアミノ)プリン、5置換ピリミジン、N2-置換プリン、N6-置換プリン、O6-置換プリン、置換1,2,4-トリアゾール、またはその任意のO-アルキル化もしくはN-アルキル化誘導体が含まれる。
さらなるプリンおよびピリミジンには、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第3,687,808号に開示されるもの、Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. I., ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されるもの、およびEnglisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613に開示されるものが含まれる。
陽イオン性基
オリゴヌクレオチドへの修飾は、また、リン酸エステルまたは修飾リン酸エステル骨格部分の糖、塩基、および/またはリン原子に対する1つまたは複数の陽イオン性基の結合を含むことができる。陽イオン性基は、天然、異常またはユニバーサル塩基上での置換が可能な任意の原子に結合することができる。好ましい位置は、ハイブリダイゼーションを妨害しない、すなわち、塩基対形成のために必要な水素結合形成相互作用を妨害しない位置である。陽イオン性基は、例えば糖のC2'位または環式もしくは非環式糖代用物における類似の位置を経由して結合することができる。例えば、陽イオン性基は、例えば、O-アミン(アミン=NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、もしくはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ);アミノアルコキシ、例えば、O(CH2)nアミン、(例えば、アミン=NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、もしくはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ);アミノ(例えばNH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、もしくはアミノ酸);またはNH(CH2CH2NH)nCH2CH2-アミン(アミン=NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、もしくはジヘテロアリールアミノ)から得られるプロトン化アミノ基を含むことができる。
オリゴヌクレオチド内の配置
いくつかの修飾は、好ましくは、オリゴヌクレオチド上の特定の部位で、例えば鎖の内部位置で、またはオリゴヌクレオチドの5'もしくは3'末端上に含まれることができる。オリゴヌクレオチド上の修飾の好ましい部位は、作用物質に好ましい性質を付与することができる。例えば、特定の修飾の好ましい部位は、最適な遺伝子サイレンシング性質、またはエンドヌクレアーゼもしくはエキソヌクレアーゼ活性に対する増加した耐性を付与することができる。
オリゴヌクレオチドの1つまたは複数のヌクレオチドは、2'-5'結合を有することができる。オリゴヌクレオチドの1つまたは複数のヌクレオチドは、逆結合(inverted linkage)、例えば3'-3'、5'-5'、2'-2'または2'-3'結合を有することができる。
オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの5'-ピリミジン-プリン-3'(5'-PyPu-3')ジヌクレオチドを含むことができ、その際、ピリミジンは、2'-O-Me(2'-O-メチル)、2'-O-MOE(2'-O-メトキシエチル)、2'-F、2'-O-[2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル](2'-O-NMA)、2'-S-メチル、2'-O-CH2-(4'-C)(LNA)および2'-O-CH2CH2-(4'-C)(ENA)からなる群より独立して選択される修飾で修飾されている。
一態様では、オリゴヌクレオチド中の配列モチーフ5'-ピリミジン-プリン-3'(5'-PyPu-3')ジヌクレオチドの全ての出現における、最も5'側のピリミジンは、2"-O-Me(2'-O-メチル)、2'-O-MOE(2'-O-メトキシエチル)、2'-F、2'-O-[2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル](2'-O-NMA)、2'-S-メチル、2'-O-CH2-(4'-C)(LNA)および2'-O-CH2CH2-(4'-C)(ENA)からなる群より選択される修飾により修飾されている。
二本鎖オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの5'-ウリジン-アデニン-3'(5'-UA-3')ジヌクレオチド(ここで、該ウリジンは、2'-修飾ヌクレオチドである)、または5'-ウリジン-グアニン-3'(5'-UG-3')ジヌクレオチド(ここで、該5'-ウリジンは、2'-修飾ヌクレオチドである)、または末端5'-シチジン-アデニン-3'(5'-CA-3')ジヌクレオチド(ここで、該5'-シチジンは2'-修飾ヌクレオチドである)、または末端5'-ウリジン-ウリジン-3'(5'-UU-3')ジヌクレオチド(ここで、該5'-ウリジンは、2'-修飾ヌクレオチドである)、または末端5'-シチジン-シチジン-3'(5'-CC-3')ジヌクレオチド(ここで、該5'-シチジンは、2'-修飾ヌクレオチドである)、または末端5'-シチジン-ウリジン-3'(5'-CU-3')ジヌクレオチド(ここで、該5'-シチジンは、2'-修飾ヌクレオチドである)、または末端5'-ウリジン-シチジン-3'(5'-UC-3')ジヌクレオチド(ここで、該5'-ウリジンは、2'-修飾ヌクレオチドである)を含むことができる。これらの修飾を含めた二本鎖オリゴヌクレオチドは、エンドヌクレアーゼ活性に対して特に安定化されている。
一般的な参考文献
本発明により使用されるオリゴリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオシドは、固相合成で合成することができる。例えば、"Oligonucleotide synthesis, a practical approach", Ed. M. J. Gait, IRL Press, 1984; "Oligonucleotides and Analogues, A Practical Approach", Ed. F. Eckstein, IRL Press, 1991(特にChapter 1, Modern machine-aided methods of oligodeoxyribonucleotide synthesis、Chapter 2, Oligoribonucleotide synthesis、Chapter 3, 2'-O--Methyloligoribonucleotide- s: synthesis and applications、Chapter 4, Phosphorothioate oligonucleotides、Chapter 5, Synthesis of oligonucleotide phosphorodithioates、Chapter 6, Synthesis of oligo-2'-deoxyribonucleoside methylphosphonates、およびChapter 7, Oligodeoxynucleotides containing modified basesを参照されたい。他の特に有用な合成手順、試薬、ブロッキング基および反応条件は、Martin, P., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504; Beaucage, S. L. and Iyer, R. P., Tetrahedron, 1992, 48, 2223-2311およびBeaucage, S. L. and Iyer, R. P., Tetrahedron, 1993, 49, 6123-6194、またはその中で参照される参考文献に記載されている。国際公開公報第00/44895号、同第01/75164号、または同第02/44321号に記載されている修飾を、本明細書において使用することができる。本明細書に挙げられる全ての刊行物、特許、および公開された特許出願の開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
リン酸基の参考文献
ホスフィン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,508,270号に記載されている。アルキルホスホネートオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第4,469,863号に記載されている。ホスホロアミダイトオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,256,775号または同第5,366,878号に記載されている。ホスホトリエステルオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,023,243号に記載されている。ボラノリン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,130,302号および第5,177,198号に記載されている。3'-デオキシ-3'-アミノホスホルアミデートオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,476,925号に記載されている。3'-デオキシ-3'-メチレンホスホネートオリゴリボヌクレオチドは、An, H, et al. J. Org. Chem. 2001, 66, 2789-2801に記載されている。硫黄架橋ヌクレオチドの調製は、Sproat et al. Nucleosides Nucleotides 1988, 7,651およびCrosstick et al. Tetrahedron Lett. 1989, 30, 4693に記載されている。
糖基の参考文献
2'修飾への修飾は、Verma, S. et al. Annu. Rev. Biochem. 1998, 67, 99-134およびその中の全ての参考文献に見出すことができる。リボースへの特異的修飾は、以下の参考文献中に見出すことができる:2'-フルオロ(Kawasaki et. al., J. Med. Chem., 1993, 36, 831-841)、2'-MOE(Martin, P. Helv. Chim. Acta 1996, 79, 1930-1938)、「LNA」(Wengel, J. Acc. Chem. Res. 1999, 32, 301-310)。
リン酸基の置換の参考文献
本明細書においてMMI結合型オリゴリボヌクレオシドとしても特定されるメチレンメチルイミノ結合型オリゴリボヌクレオシド、本明細書においてMDH結合型オリゴリボヌクレオシドとしても特定されるメチレンジメチルヒドラゾ結合型オリゴリボヌクレオシド、および本明細書においてアミド-3結合型オリゴリボヌクレオシドとしても特定されるメチレンカルボニルアミノ結合型オリゴヌクレオシド、および本明細書においてアミド-4結合型オリゴリボヌクレオシドとしても特定されるメチレンアミノカルボニル結合型オリゴヌクレオシド、ならびに例えば交互のMMI結合およびPOまたはPS結合として有する混合骨格化合物は、米国特許第5,378,825号、同第5,386,023号、同第5,489,677号および公開されたPCT出願PCT/US92/04294およびPCT/US92/04305(それぞれ国際公開公報第92/20822号および同第92/20823号として公開されている)に記載されているように調製することができる。ホルムアセタール結合型オリゴリボヌクレオシドおよびチオホルムアセタール結合型オリゴリボヌクレオシドは、米国特許第5,264,562号および同第5,264,564号に記載されているように調製することができる。エチレンオキシド結合型オリゴリボヌクレオシドは、米国特許第5,223,618号に記載されているように調製することができる。シロキサン置換は、Cormier,J.F. et al. Nucleic Acids Res. 1988, 16, 4583に記載されている。カルボネート置換は、Tittensor, J.R. J. Chem. Soc. C 1971, 1933に記載されている。カルボキシメチル置換は、Edge, M.D. et al. J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 1972, 1991に記載されている。カルバメート置換は、Stirchak, E.P. Nucleic Acids Res. 1989, 17, 6129に記載されている。
リン酸-リボース骨格の置換の参考文献
シクロブチル糖代用化合物は、米国特許第5,359,044号に記載されているように調製することができる。ピロリジン糖代用物は、米国特許第5,519,134号に記載されているように調製することができる。モルホリノ糖代用物は、米国特許第5,142,047号および同第5,235,033号および他の関連特許開示に記載されているように調製することができる。ペプチド核酸(PNA)は、それ自体が公知であり、Peptide Nucleic Acids (PNA): Synthesis, Properties and Potential Applications, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 1996, 4, 5-23の中で参照される様々な手順のいずれかに従って調製することができる。それらは、その全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,539,083号に従って調製することもできる。
末端修飾の参考文献
末端修飾は、Manoharan, M. et al. Antisense and Nucleic Acid Drug Development 12, 103-128 (2002)およびその中の参考文献に記載されている。
核酸塩基の参考文献
N-2置換プリンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,459,255号に記載されているように調製することができる。3-デアザプリンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,457,191号に記載されているように調製することができる。5,6-置換ピリミジンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,614,617号に記載されているように調製することができる。5-プロピニルピリミジンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,484,908号に記載されているように調製することができる。追加的な参考文献は、塩基修飾に関する上記の節に開示されている。
オリゴヌクレオチドの産生
本発明のオリゴヌクレオチド化合物は、溶液相または固相有機合成を使用して調製することができる。有機合成は、非天然ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド鎖を容易に調製できるという利点を提供する。当技術分野において公知のそのような合成のための任意の他の手段を、追加的または代替的に用いることができる。ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートおよびアルキル化誘導体のような他のオリゴヌクレオチドを調製するために類似の技法を使用することも公知である。本発明の二本鎖オリゴヌクレオチド化合物は、二段階手順を使用して調製することができる。最初に、二本鎖分子の個別の鎖は、別々に調製される。次に、構成要素の鎖がアニーリングされる。
合成方法にかかわらず、オリゴヌクレオチドは、製剤化に適切な溶液(例えば、水溶液および/または有機溶液)として調製することができる。例えば、オリゴヌクレオチド調製物を沈殿させ、純粋な再蒸留水中に再溶解させ、凍結乾燥することができる。次に、乾燥したオリゴヌクレオチドを、意図される製剤化工程に適した溶液中に再懸濁することができる。
特定の修飾オリゴヌクレオチドの合成に関する教示は、以下の米国特許または係属中の特許出願:ポリアミンコンジュゲート型オリゴヌクレオチドに関する米国特許第5,138,045号および同第5,218,105号;キラルなリン結合を有するオリゴヌクレオチドの調製のためのモノマーに関する米国特許第5,212,295号;修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドに関する米国特許第5,378,825号および第5,541,307号;骨格修飾型オリゴヌクレオチドおよび還元カップリングによるその調製に関する米国特許第5,386,023号;3-デアザプリン環系に基づく修飾核酸塩基およびその合成方法に関する米国特許第5,457,191号;N-2置換プリンに基づく修飾核酸塩基に関する米国特許第5,459,255号;キラルなリン結合を有するオリゴヌクレオチドを調製するための方法に関する米国特許第5,521,302号;ペプチド核酸に関する米国特許第5,539,082号;β-ラクタム骨格を有するオリゴヌクレオチドに関する米国特許第5,554,746号;オリゴヌクレオチドの合成のための方法および材料に関する米国特許第5,571,902号;ヌクレオシドの多様な位置のいずれかに結合される他の部分へのリンカーとして使用できるアルキルチオ基を有するヌクレオシドに関する米国特許第5,578,718号;高いキラル純度のホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチドに関する米国特許第5,587,361号および同第5,599,797号;2,6-ジアミノプリン化合物を含めた2'-O-アルキルグアノシンおよび関連化合物の調製のための方法に関する米国特許第5,506,351号;N-2置換プリンを有するオリゴヌクレオチドに関する米国特許第5,587,469号;3-デアザプリンを有するオリゴヌクレオチドに関する米国特許第5,587,470号;共にコンジュゲート型4'-デスメチルヌクレオシド類似体に関する米国特許第5,223,168号および米国特許第5,608,046号;骨格修飾オリゴヌクレオチド類似体に関する米国特許第5,602,240号および同第5,610,289号;ならびにとりわけ2'-フルオロ-オリゴヌクレオチドを合成する方法に関する米国特許第6,262,241号および同第5,459,255号から見い出すことができる。
RNA干渉剤の送達:
標的細胞(例えば、基底細胞または肺および/もしくは呼吸器系の細胞または他の所望の標的細胞)にRNAi剤、例えばsiRNA、またはRNAi剤を含有するベクターを送達する方法は、当業者に周知である。いくつかの態様では、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2の任意の1つを阻害する、RNAi剤のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの阻害剤である、RNAi剤(例えば遺伝子サイレンシングRNAi剤)を、エアロゾル手段を介して、例えばネブライザーなどを使用して、対象に投与することができる。代替的な態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2の任意の1つの阻害剤である、RNAi剤(例えば遺伝子サイレンシングRNAi剤)の投与は、例えば(i)RNA干渉剤、例えばsiRNAを含有する組成物の注射、または(ii)細胞(例えば、ドナー哺乳動物細胞、レシピエント卵母細胞、またはSCNT胚)を、RNAi剤、例えばsiRNAを含む組成物と直接接触させることを含むことができる。
いくつかの態様では、細胞、卵母細胞または胚の投与は、単回注射または2回以上の注射によることができる。いくつかの態様では、RNAi剤は、薬学的に許容される担体中に入れて送達される。1種または複数種のRNAi剤を同時に使用することができ、例えば、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの1種または複数種の遺伝子サイレンシングRNAi剤阻害剤を一緒に投与することができる。RNA干渉剤、例えば、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM21の阻害剤などのsiRNA性H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤を、単回で、または他のRNA干渉剤、例えばsiRNA、例えば他の細胞性遺伝子に対するsiRNAと組み合わせて送達することができる。
いくつかの態様では、特定の細胞は、RNA干渉の非特異的標的化によって起こるRNA干渉の潜在的副作用を限定しながら、RNA干渉を用いて標的化される。該方法は、例えば細胞標的化部分と、RNAiを細胞内に効果的に送達するために使用されるRNA干渉結合性部分とを含む複合体または融合分子を使用することができる。例えば抗体-プロタミン融合タンパク質は、siRNAと混合した場合、siRNAと結合し、かつ抗体によって認識される抗原を発現している細胞内にsiRNAを選択的に送達し、結果として抗体によって特定される抗原を発現する細胞だけに遺伝子発現のサイレンシングを招く。
いくつかの態様では、siRNAまたはRNAi結合性部分は、タンパク質またはタンパク質の核酸結合性ドメインもしくはフラグメントであり、結合性部分は、標的化部分の一部に融合される。標的化部分の部位は、構築物のカルボキシル末端もしくはアミノ末端または融合タンパク質の中央のいずれかであることができる。
いくつかの態様では、ウイルス介在性送達メカニズムは、また、Xia, H. et al. (2002) Nat Biotechnol 20(10):1006)に記載されているように、siRNAを、例えばSuv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼのsiRNA(例えば遺伝子サイレンシングRNAi剤)阻害剤を細胞にインビトロ送達するために用いることができる。shRNAのプラスミドまたはウイルス介在性送達メカニズムを、また、Rubinson, D.A.ら((2003) Nat. Genet. 33:401-406)およびStewart, S.A.ら((2003) RNA 9:493-501)に記載されるように、shRNAを細胞にインビトロおよびインビボ送達するために用いることができる。あるいは、他の態様では、RNAi剤、例えば、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの遺伝子サイレンシングRNAi剤阻害剤は、また、細胞、卵母細胞またはSCNT胚をRNAi剤阻害剤単独またはRNAi剤を発現しているウイルスベクターと共に培養することにより、細胞内に導入することができる。
一般に、核酸分子を送達する任意の方法を、RNAi干渉分子を用いた使用のために適応させることができる(例えば、その全体として参照により本明細書に組み入れられるAkhtar S. and Julian RL. (1992) Trends Cell. Biol. 2(5):139-144;国際公開公報第94/02595号を参照されたい)。
細胞取り込みを高め、かつ分解を防止するために、RNA干渉分子を、化学コンジュゲーションによってコレステロールのような親油性基に修飾することができる。代替的な一態様では、例えば、ナノ粒子、デンドリマー、ポリマー、リポソーム、または陽イオン性送達システムのような薬物送達システムを使用して、RNAi分子を送達することができる。陽性荷電した陽イオン性送達システムは、RNA干渉分子(陰性荷電)の結合を容易にし、また陰性荷電した細胞膜での相互作用を高めて、細胞によるsiRNAの効率的な取り込みを可能にする。陽イオン性脂質、デンドリマー、またはポリマーは、RNA干渉分子に結合しているか、またはRNAi分子を収容する小胞もしくはミセルを形成するように誘導されるかのいずれかであることができる(例えば、Kim SH., et al (2008) Journal of Controlled Release 129(2):107-116を参照されたい)。小胞またはミセルの形成は、さらに、全身投与したときのRNAi分子の分解を防止する。陽イオン-RNAi複合体を製造および投与するための方法は、十分に当業者の能力の範囲内である(例えば、その全体として参照により本明細書に組み入れられるSorensen, DR., et al (2003) J. Mol. Biol 327:761-766; Verma, UN., et al (2003) Clin. Cancer Res. 9:1291-1300; Arnold, AS et al (2007) J. Hypertens. 25:197-205を参照されたい)。
特定のRNAi剤の用量は、RNA干渉、例えば、H3K9メチルトランスフェラーゼ遺伝子の遺伝子サイレンシングを引き起こすことによって、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2の遺伝子発現レベルのようなH3K9メチルトランスフェラーゼの遺伝子発現レベルの現象ならびにその後のそれぞれのタンパク質発現レベルにおける減少を導くために必要な量である。
RNAi分子が、それらの標的配列と完璧に一致する必要がないことも公知である。しかし、好ましくは、siRNAのアンチセンス(ガイド)鎖の5'および中央部分は、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼ遺伝子の標的核酸配列と完全に相補的である。
それゆえに、本明細書開示のSuv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの遺伝子サイレンシングRNAi剤阻害剤として機能するRNAi分子は、例えば非限定的に、短鎖一時的(short-temporal)RNA(stRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)(例えばBaulcombe, Science 297:2002-2003, 2002を参照されたい)を含めた、未修飾および修飾二本鎖(ds)RNA分子である。dsRNA分子、例えばsiRNAは、また、3'オーバーハング、好ましくは3'UUまたは3'TTオーバーハングを含むことができる。一態様では、本発明のsiRNA分子には、約30〜40塩基、約40〜50塩基、約50塩基以上よりも大きなssRNAを含むRNA分子が含まれない。一態様では、本発明のsiRNA分子は、それらの長さの約25%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超について二本鎖である。
いくつかの態様では、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの遺伝子サイレンシングRNAi核酸阻害剤は、H3K9メチルトランスフェラーゼ遺伝子、例えば、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2遺伝子と結合し、かつその発現を阻害する任意の作用物質であり、その際、それぞれのメチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現が阻害される。
本発明の別の態様では、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの阻害剤は、RNA転写物を切断することによって野生型タンパク質の産生を阻止する能力のある、例えばリボザイムのような触媒性核酸構築物であることができる。リボザイムは、リボザイム触媒部位に隣接する標的と相補性の2つの配列領域のおかげで特定の配列に標的化され、その配列とアニーリングする。結合した後、リボザイムは、標的を部位特異的に切断する。例えば当業者に周知の技法(例えばLleber and Strauss, (1995) Mol Cell Biol 15:540.551、その開示は、参照により本明細書に組み入れられる)によってSuv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの切断のための、本明細書記載の遺伝子産物の配列を特異的に認識して切断するリボザイムの設計および検査。
H3K9メチルトランスフェラーゼのタンパク阻害剤およびペプチド阻害剤
いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤は、Suv39h1、Suv39h2、Setdb1、Ehmt1またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの任意の1つのタンパク質阻害剤および/またはペプチド阻害剤、例えば非限定的に、Suv39h1、Suv39h2、Setdb1、Ehmt1またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの変異型タンパク質;治療用タンパク質および組み換えタンパク質ならびにドミナントネガティブ阻害剤(例えば、H3K9メチルトランスフェラーゼの非機能的タンパク質、またはH3K9メチルトランスフェラーゼに競合的に結合するH3K9メチルトランスフェラーゼの非機能的リガンド)である。タンパク質およびペプチド阻害剤は、また、例えば変異型タンパク質、遺伝的に修飾されたタンパク質、ペプチド、合成ペプチド、組み換えタンパク質、キメラタンパク質、抗体、ヒト化タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、修飾タンパク質およびそのフラグメントを含むことができる。
本明細書に使用される、H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えば、Suv39h1、Suv39h2もしくはSetdb1の遺伝子発現の阻害剤および/またはSuv39h1、Suv39h2もしくはSetdb1タンパク質機能の阻害としての方法に有用な作用物質は、任意の種類の実体、例えば非限定的に化学物質、核酸配列、核酸類似体、タンパク質、ペプチドまたはそのフラグメントであることができる。いくつかの態様では、作用物質は、非限定的に、合成および天然の非タンパク質性実体を含めた、任意の化学物質、実体または部分である。特定の態様では、作用物質は、化学部分を有する小分子である。
代替的な態様では、本明細書開示の方法に有用な作用物質は、H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えばSuv39h1、Suv39h2またはSetdb1の遺伝子発現または機能を阻害するタンパク質および/もしくはペプチドまたはそのフラグメントである。そのような作用物質には、例えば非限定的に、タンパク質バリアント、変異型タンパク質、治療用タンパク質、切断型タンパク質およびタンパク質フラグメントが含まれる。変異型タンパク質、遺伝的に修飾されたタンパク質、ペプチド、合成ペプチド、組み換えタンパク質、キメラタンパク質、抗体、ミディボディー(midibody)、ミニボディー(minibody)、トリアボディー(triabody)、ヒト化タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、修飾タンパク質およびそのフラグメントを含む群よりタンパク質作用物質を選択することもできる。
あるいは、H3K9メチルトランスフェラーゼ、例えば、Suv39h1、Suv39h2またはSetdb1の阻害剤として本明細書開示の方法に有用な作用物質は、非限定的に、合成および天然の非タンパク質性実体を含めた化学物質、小分子、大分子または実体または部分であることができる。特定の態様では、作用物質は、本明細書開示の化学部分を有する小分子である。
いくつかの態様では、本明細書開示の方法および組成物に使用するためのH3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤は、H3K9メチルトランスフェラーゼのドミナントネガティブバリアント、例えば、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2のようなH3K9メチルトランスフェラーゼの非機能的バリアント、例えば、SEQ ID NO:9もしくは10のようなタンパク質またはSEQ ID NO:9もしくは10の少なくとも約50個、もしくは少なくとも約60個、もしくは少なくとも約70個、もしくは少なくとも約80個もしくは少なくとも約90個もしくは90個よりも多いアミノ酸のフラグメントである。いくつかの態様では、Suv39h1、Suv39h2 Setdb1、Ehmt1および/またはPRDM2タンパク質のようなH3K9メチルトランスフェラーゼタンパク質のドミナントネガティブ阻害剤は、H3K9メチルトランスフェラーゼタンパク質の可溶性細胞外ドメインである。DBC1(Deleted Breast Cancer 1)遺伝子の遺伝子産物またはタンパク質のようなタンパク質阻害剤は、SUV39H1触媒ドメインに結合し、それがヒストンH3をインビトロおよびインビボでメチル化する能力を阻害し(Lu et al., Inhibition of SUV39H1 Methyltransferase Activity by DBC1, JBC, 2009, 284; 10361-10366)、本明細書開示の方法および組成物における使用のために包含される。
抗体
いくつかの態様では、本発明の方法に有用なH3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤には、例えば、モノクローナル、キメラヒト化、および組み換え抗体ならびにその抗原結合性フラグメントを含めた抗体が含まれる。いくつかの態様では、中和抗体は、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤として使用することができる。抗体は、ウサギまたはマウスのような動物において、抗原を免疫処置することによって容易に産生される。免疫処置されたマウスは、ハイブリドーマを製造するためのB細胞源を提供するために特に有用であり、今度はハイブリドーマが培養されて、大量のモノクローナル抗体を産生する。Suv39h1および/またはSuv39h2の市販の抗体阻害剤が、本発明における使用のために包含され、例えばSanta Cruz biotechnologyなどから入手可能である。
本発明の一態様では、本明細書において特定される遺伝子産物に対する阻害剤は、抗体分子または抗体分子のエピトープ結合性部分などであることができる。抗体は、多種多様な標的抗原およびハプテンに対して高い結合アビディティーおよび独特な特異性を提供する。本発明の実施に有用なモノクローナル抗体は、抗体全体およびそのフラグメントを含み、ハイブリドーマ合成、組み換えDNA技法およびタンパク質合成のような従来技法により作製される。
有用なモノクローナル抗体およびフラグメントは、任意の種(ヒトを含む)由来であることができ、または1種よりも多い配列を用いるキメラタンパク質として形成させることができる。ヒトモノクローナル抗体または「ヒト化」マウス抗体は、また、本発明により使用される。例えばマウスモノクローナル抗体は、マウスFv領域(すなわち抗原結合部位を含む)またはその相補性決定領域をコードするヌクレオチド配列を、ヒト定常ドメイン領域およびFc領域をコードするヌクレオチド配列と遺伝的に組み換えすることによって「ヒト化」することができる。ヒト化標的化部分は、ホストレシピエントにおける抗体またはポリペプチドの免疫反応性を減少させ、欧州特許出願第0,411,893A2号に開示されるものに類似して半減期の増加および有害免疫反応の可能性の減少を可能にすることが認識されている。マウスモノクローナル抗体は、好ましくは、ヒト化形態として用いるべきである。抗原結合活性は、抗体の可変部分(Fv)の軽鎖および重鎖に位置する6つの相補性決定領域(CDR)(各3つ)のアミノ酸の配列およびコンフォメーションによって決定される。軽鎖可変領域(VL)および重鎖可変領域(VH)が短鎖ペプチドスペーサー配列を介して結合したものから構成される25kDaの一本鎖Fv(scFv)分子は、これまでのところ開発された最も小さな抗体フラグメントである。scFvに対する遺伝子を含む線状ファージの表面にscFv分子をディスプレイするための技法が開発されている。広い範囲の抗原特異性を有するscFv分子は、scFvファージライブラリーの単一の大型プール中に存在することができる。本発明の方法に有用な高親和性モノクローナル抗体およびそのキメラ誘導体のいくつかの例は、欧州特許出願EP186,833;PCT特許出願である国際公開公報第92/16553号;および米国特許第6,090,923号に記載されている。
キメラ抗体は、様々な動物種由来の2つ以上のセグメントまたは部分によって特徴付けられる免疫グロビン(immunoglobin)分子である。一般的に、キメラ抗体の可変領域は、マウスモノクローナル抗体のような非ヒト哺乳動物抗体由来であり、免疫グロビン定常領域は、ヒト免疫グロビン分子由来である。好ましくは、両方の領域および組み合わせは、日常的に決定されるように低免疫原性を有する。
scFv分子の1つの限界は、それらが標的抗原と一価的に相互作用することである。scFvからその標的抗原への結合を改善する最も容易な方法の1つは、マルチマーの創出によりその機能的親和性を増加させることである。ダイアボディー、トリアボディーおよびテトラボディーを形成するための同一のscFv分子の結合は、いくつかの同一のFvモジュールを含むことができる。したがって、これらの試薬は、多価であるが一特異性である。異なる親Ig由来のVHおよびVLドメインをそれぞれ含む、2つの異なるscFv分子の結合は、完全に機能的な二重特異性ダイアボディーを形成する。二重特異性scFvの独特な適用は、2つの部位を2つの(隣接する)表面エピトープを介して同じ標的分子上に同時に結合させることである。これらの試薬は、単一のscFvまたはFabフラグメントよりも顕著なアビディティーという利点を獲得している。例えばミニ抗体、ダイマー性ミニ抗体、ミニボディー、(scFv)2、ダイアボディーおよびトリアボディーを含めた、scFvに基づくいくつかの多価構造が操作されている。これらの分子は、一連の価数(2〜4つの結合部位)、サイズ(50〜120kDa)、柔軟性および産生の容易さに及ぶ。一本鎖Fv抗体フラグメント(scFv)は、主にモノマー性であり、その際、VHおよびVLドメインは、少なくとも12残基のポリペプチドリンカーによって繋がれている。モノマー性scFvは、全ての条件下で12および25アミノ酸長のリンカーを有して熱力学的に安定である。非共有ダイアボディーおよびトリアボディー分子は、操作しやすく、単一のscFv分子の可変重鎖および可変軽鎖を連結するペプチドリンカーを短縮することによって産生される。scFvダイマーは、高度の柔軟性を提供する両親媒性ヘリックスによって繋がれ、ミニ抗体構造を修飾して、二重ヘリックスを介して結合される2つのミニ抗体(4つのscFv分子)を含有するダイマー性二重特異性(DiBi)ミニ抗体を創出することができる。遺伝子融合またはジスルフィド結合scFv二量体は、中等度の柔軟性を提供し、C末端Gly4Cys(SEQ ID NO:65)配列を付加する直接的クローニング技法によって産生される。scFv-CH3ミニボディーは、直接(LDミニボディ)または極めて柔軟なヒンジ領域(Flexミニボディ)を介してのいずれかでIgG CH3ドメインに繋がれた2つのscFv分子から構成される。約80kDaの分子量により、これらの二価構築物は、顕著に抗原に結合する能力がある。Flexミニボディーは、マウスにおいてすばらしい腫瘍局在化を示す。二重特異性および三重特異性マルチマーを、異なるscFv分子の結合によって形成させることができる。Fabまたは単鎖Fv抗体フラグメント(scFv)フラグメントが、ダイマー、トリマー、またはより大きな凝集物に複合体化されると、機能的親和性の増加を達成することができる。一価scFvおよびFabフラグメントを上回る多価scFvの最も重要な利点は、標的抗原に対する機能的結合親和性(アビディティー)の獲得である。高アビディティーは、scFvマルチマーが別々の標的抗原に同時に結合する能力があることを必要とする。scFvモノマーと比較してscFvダイアボディーについての機能的親和性の獲得は有意であり、主として、2つ以上の標的抗原との多重結合、および1つのFvが解離した場合の再結合に起因する解離速度定数(off-rate)の低下に見られる。そのようなscFv分子が結合してマルチマーになる場合、それらを、単一標的抗原に対する高アビディティー、または異なる標的抗原に対する多重特異性のいずれかを有するように設計することができる。抗原との多重結合は、Fvモジュールにおける正確なアライメントおよび配向に依存する。多価scFv標的における最大限のアビディティーのために、抗原結合部位は同じ方向を向いていなければならない。多重結合が立体的に不可能ならば、機能的親和性の明らかな獲得は、拡散速度および抗原濃度に依存する再結合の増加の効果に起因し得る。これらの性質を改善する部分とコンジュゲートした抗体も本発明のために考えられている。例えば、抗体のインビボ半減期を増加させるPEGとの抗体コンジュゲートを本発明のために使用することができる。免疫ライブラリーは、ナイーブなまたは免疫処置された動物または患者のBリンパ球由来の可変抗体フラグメントをコードする遺伝子をPCR増幅に供することによって調製される。免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子ファミリーに特異的なオリゴヌクレオチドの組み合わせが使用される。免疫グロブリン生殖系列遺伝子を使用して、半合成抗体レパートリーを調製することができ、可変フラグメントの相補性決定領域が、縮重プライマーを使用してPCRによって増幅される。これらの単一ポットライブラリーは、多数の抗原に対する抗体フラグメントを、単一のライブラリーから単離できるという利点を有する。ファージディスプレイ技法を使用して、抗体フラグメントの親和性を増加させることができ、新たなライブラリーが、ランダムな、コドンに基づく、または部位特異的な変異誘発によって、個別のドメインの鎖をナイーブなレパートリー由来のフラグメントの鎖とシャッフルすることによって、または細菌ミューテーター株の使用によって、既存の抗体フラグメントから調製される。
あるいは、SCID-huマウス、例えば、Genpharmによって開発されたモデルを使用して、抗体またはそのフラグメントを産生することができる。一態様では、多価相互作用の効果を利用することによって創出された、ペプタボディーと呼ばれる新しい種類の高アビディティー結合分子が考えられている。短いペプチドリガンドが半剛性ヒンジ領域を介して軟骨オリゴマー性マトリクスタンパク質のコイルドコイル集合ドメインと融合されて、五量体多価結合分子が生じた。本発明の好ましい態様では、リガンドおよび/またはキメラ阻害剤を、例えば、抗リガンド抗体(Ab)および特異的標的物に対するAbの化学的連結により産生される二重特異性抗体を使用することによって、組織特異的標的または腫瘍特異的標的に標的化することが可能である。化学コンジュゲートの限界を回避するために、抗体の分子コンジュゲートを、リガンドおよび/またはキメラ阻害剤を細胞表面分子に向ける組み換え二重特異性単鎖Abの産生のために使用することができる。あるいは、標的化部分に結合した2種以上の活性作用物質および/または阻害剤を投与することができ、その際、各コンジュゲートは、標的化部分、例えば異なる抗体を含む。各抗体は、異なる標的部位エピトープと反応する(同じまたは異なる標的部位抗原と結合)。作用物質が結合した異なる抗体は、所望の標的部位で相加的に蓄積する。抗体に基づくまたは抗体に基づかない標的化部分を用いて、標的部位にリガンドまたは阻害剤を送達することができる。好ましくは、この目的のために、調節されていない抗原または疾患関連抗原に対する天然結合作用物質が使用される。
小分子
上の節に述べられる適用の全ては、参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの態様では、当業者は、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤として他の作用物質を使用することができ、例えば、抗体、デコイ抗体、またはRNAiは、本明細書開示のSCNTの効率を増加させるための方法、化合物およびキットに有効である。
いくつかの態様では、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤は、グリオトキシンまたは関連エピポリチオジオキソピペラジン、またはBIX-01294(その全体として参照により本明細書に組み入れられるTakahashi et al., 2012, J. Antibiotics 65, 263-265またはShaabam et al., Chemistry & Biology, Volume 14, Issue 3, March 2007, Pages 242-244に開示されるようなジアゼピン-キナゾリン-アミン誘導体)である。BIX-01294は、以下の化学構造を有する。
UNC0638としても公知のキナゾリンも、G9aを阻害し、本明細書開示の方法および組成物に使用するために包含される。UNC0638は、以下の構造を有する。
Suv39h1の小分子阻害剤は、その全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2015/0038496号に開示されている。その全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2014/0161785号に開示されるように、小分子ベルチシリンAは、Suv39h1およびSuv39h2の両方についての選択的阻害剤(すなわち、Suv39h1/2を阻害する)として特定され、かつ本明細書開示の方法および組成物に使用するために包含される。
Suv39h1の他の小分子阻害剤には、カエトシン(化学名:(3S,3'S,5aR,5aR,10bR,10'bR,11aS,11'aS)-2,2',3,3',5a,5'a,6,6'-オクタヒドロ-3,3'-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2'-ジメチル-[10b,10'b(11H,11'H)-ビ3,11a-エピジチオ-11aH-ピラジノ[1',2':1,5]ピロロ[2,3-b]インドール]-1,1',4,4'-テトロン)(Bernhard et al., FEBS Letts, 2011, 585 (22); 3549-3554を参照されたい)が含まれ、カエトシンは以下の化学構造を有し、かつ本明細書開示の方法および組成物に使用するために包含される。
化合物A-366(CHEMBL3109630とも呼ばれる)(PubChem CID: 76285486)も、3.3nMのIC
50を有し、21種の他のメチルトランスフェラーゼと比較して1000倍よりも大きな選択性を有する、G9aとしても公知のEHMT2(ユークロマチン性ヒストンメチルトランスフェラーゼ2)の強力な阻害剤であることが見出されており(Sweis et al.,. Discovery and development of potent and selective inhibitors of histone methyltransferase G9a. ACS medical Chem Letts, 2014; 5(2); 205-209を参照されたい)、本明細書開示の方法および組成物に使用するために包含される。小分子A-366は、以下の構造を有する。
3-デアザネプラノシンA(DZNep)(CAS No: 102052-95-9)は、SetDB1 H3K9me3 HMTaseの減少を招き、H3K27me3およびH3K9me3の両方の低下したレベルにおける減少を招き(Lee et al., Biochem Biophys Res Comm, 2013, 438(4); 647-652)、本明細書開示の方法および組成物に使用するために包含される。DZNpは、次式を有する。
HMTase阻害剤IVであるUNC0638(Calbiochemから入手可能)は、Suv39h2を最低限に阻害し(IC
50>10μM)(Vedadi, M., et al. 2011. Nat. Chem. Biol. 7, 566; およびLiu, F., et al. 2011. J. Med. Chem. 54, 6139を参照されたい)、本明細書開示の方法および組成物に使用するために包含される。HMTase阻害剤IVは、また、同義語:2-シクロヘキシル-N-(1-イソプロピルピペリジン-4-イル)-6-メトキシ-7-(3-(ピロリジン-1-イル)プロポキシ)キナゾリン-4-アミン、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤III、DNA MTase阻害剤III、EHMT1/GLP阻害剤II、EHMT2/G9a阻害剤IVによって公知であり、以下の化学式を有する。
SCNT
本発明の目的は、SCNTの効率を増加させ、かつSCNTを使用して体細胞をより効率的にクローニングする手段を提供することである。本開示の方法は、哺乳動物をクローニングするため、全能細胞もしくは多能性細胞を得るため、または哺乳動物細胞をリプログラミングするために使用され得る。
レシピエント哺乳動物卵母細胞
特定の態様では、本発明の方法、キットおよび組成物に使用するためのレシピエント卵母細胞は、任意の哺乳動物種由来であり得る。特定の態様では、凍結保存した卵母細胞が、レシピエント卵母細胞として使用される。特定の態様では、レシピエント卵母細胞はヒト性である。卵母細胞の低温貯蔵および解凍は、当業者に公知である(Tucker et al., Curr Opin Obstet Gynecol. 1995 June; 7(3):188-92を参照されたい)。いくつかの態様では、レシピエント卵母細胞は、自発的な雌性ドナー、例えば卵ドナーから得られる。いくつかの態様では、卵母細胞は、卵巣刺激または卵巣の過剰刺激(すなわち排卵誘発または制御卵巣過剰刺激)を受けた雌性哺乳動物対象から得られる。制御卵巣過剰刺激の方法は、例えばその全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,173,592号および国際特許出願である国際公開公報第2000/059542号に開示されるように、当技術分野において周知である。
いくつかの態様では、レシピエント卵母細胞は除核卵母細胞である。ドナー卵母細胞の除核は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,994,384号に記載されるような公知の方法によって達成され得る。例えば、中期II(MII)卵母細胞は、即時除核について、任意で7.5マイクログラム/ミリリットルのサイトカラシンBを含有するHECM中に入れられるか、または適切な培地、例えば10%発情期雌ウシ血清を加えたCR1aaに入れられ得るかのいずれかであり、次いでその後、除核される。除核は、また、マイクロ手術によって、極体および隣接細胞質を取り出すためにマイクロピペットを使用して達成することができる。次に、細胞がスクリーニングされて、成功裏に除核された細胞が特定され得る。このスクリーニングは、HECM 1mL中1マイクログラムの33342 Hoechst色素で細胞を染色し、次に紫外線照射下で細胞を10秒未満観察することによって達成され得る。次に、成功裏に除核された細胞を適切な培養培地中に入れることができる。
いくつかの態様では、紫外線照射が日常的な手順として使用される、例えば両生類由来卵母細胞の除核のための手順に類似して、卵母細胞の除核のための非侵襲アプローチを使用することができる(Gurdon Q. J. Microsc. Soc. 101 299-311 (1960))。いくつかの態様では、哺乳動物卵母細胞の卵母細胞除核は、紫外線にマウス卵母細胞を30秒よりも大きく曝露することが細胞の発生能を低下させる、DNA特異的蛍光色素を使用して行うことができる(Tsunoda et al., J. Reprod. Fertil. 82 173 (1988))。
いくつかの態様では、除核した哺乳動物卵母細胞は、減数分裂紡錘体の微小管の不安定化(例えば脱重合)を介して減数分裂紡錘体を破壊することによる卵母細胞の除核を表す「誘発除核」を受けている(その全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2006/0015950号を参照されたい)。微小管の不安定化は、減数分裂成熟の間に染色分体が分離するのを阻止し(例えば、成功する核分裂を阻止し)、卵母細胞ゲノム(例えば核クロマチン)が不等分離する(例えば歪む)ように誘導し、その際、卵母細胞の本質的に全ての内因性クロマチンが第二極体中に集まる。
いくつかの態様では、卵母細胞の供与は、健康な女性、例えば、健康なヒト雌性卵母細胞ドナーからのものである。いくつかの態様では、ヒト卵母細胞ドナーの必要性を回避するために、異種間SCNTが探究されており、その際、非ヒト卵母細胞がヒトドナー体細胞の核リプログラミングのために報告されている(Chung et al., Cloning and Stem Cells 11, 1-11 (2009))。それゆえに、いくつかの態様では、ドナー卵母細胞はウシまたは任意の他の非ヒト哺乳動物種であり、それは、ヒトドナー体細胞から得られた核または核遺伝物質のためのレシピエント卵母細胞であることができる。
いくつかの態様では、卵母細胞は、ミトコンドリア病を有さない雌性対象から得られる。いくつかの態様では、卵母細胞は、ミトコンドリア病を有する雌性対象から得られる。典型的にはミトコンドリアDNA(mtDNA)中に保因されるミトコンドリア病は、当業者によって周知である。
それゆえに、いくつかの態様では、レシピエント卵母細胞は、ドナー体細胞が得られる対象/個体と同じ哺乳動物種の異なる対象または個体から得られる。いくつかの態様では、レシピエント卵母細胞は、ドナー体細胞が得られる対象/個体と異なる哺乳動物種の異なる対象または個体から得られる。いくつかの態様では、レシピエント卵母細胞は、SCNT胚が着床後発生のために体内移植されるのと同じ対象から得られる。
いくつかの態様では、雌性対象がミトコンドリアDNA欠損またはmtDNAにおける変異を有するならば、健康なミトコンドリアおよび野生型mtDNAを有する卵細胞質を卵細胞質移入とも呼ばれる細胞質移入を介してレシピエント卵母細胞に導入して、ヘテロプラスミー卵母細胞を生じるように、ミトコンドリア移入が起こることができる(Sterneckert et al., Nat Reviews Genetics, Genetics 15, 625-639 (2014)およびMa et al., 2015; Metabolic rescue in pluripotent cells from patients with mtDNA disease, Nature 524, 234-238を参照されたい)。細胞質移入のための方法は、周知であり、例えば、その全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2004/0268422号に記載されている。次に、そのようなヘテロプラスミー卵母細胞を除核し、ドナー体細胞からの核遺伝物質の注射のためのレシピエント卵母細胞として使用することができる。それゆえに、いくつかの態様では、結果として生じたSCNT胚は、3つの別々の個体由来であることができ;すなわち、ドナー体細胞由来の核遺伝物質、レシピエント卵母細胞由来の細胞質、および第3の個体またはドナー対象由来の野生型または変異型mtDNAを含有することができる。
ドナー哺乳動物細胞
本明細書開示の方法、キットおよび組成物は、ドナー哺乳動物細胞を含み、その細胞から核が除核卵母細胞内に注射されてSCNT胚が作製される。いくつかの態様では、ドナー哺乳動物細胞は、最終分化した体細胞である。いくつかの態様では、ドナー哺乳動物細胞は、胚性幹細胞または成熟幹細胞またはiPS細胞ではない。いくつかの態様では、ドナー哺乳動物細胞は、ドナー哺乳動物細胞として本明細書開示の方法に使用するためのヒトまたは動物細胞であり、その際、ドナー細胞由来の核は、除核卵母細胞内に移入される。いくつかの態様では、ドナー体細胞は、雄性哺乳動物対象、例えばXY対象から得られる。代替的な態様では、体細胞のドナーは、雌性対象、例えばXX対象から得られる。いくつかの態様では、体細胞のドナーは、XXY対象から得られる。
本発明に有用なヒトおよび動物/哺乳動物ドナー体細胞には、例として、上皮、神経細胞、表皮細胞、角化細胞、造血細胞、メラニン細胞、軟骨細胞、リンパ球(BおよびTリンパ球)、他の免疫細胞、赤血球、マクロファージ、メラニン細胞、単球、単核球、線維芽細胞、心筋細胞、卵丘細胞および他の筋細胞などが含まれる。そのうえ、核移入のために使用されるヒト細胞は、異なる器官、例えば、皮膚、肺、膵臓、肝臓、胃、腸、心臓、生殖器、膀胱、腎臓、尿道および他の泌尿器などから得られ得る。これらは、適切な哺乳動物ドナー細胞のいくつかの例に過ぎない。適切なドナー細胞、すなわち、対象発明に有用な細胞は、身体の任意の細胞または器官から得られ得る。これには、全ての体細胞およびいくつかの態様では生殖細胞、例えば、始原生殖細胞、精子細胞が含まれる。いくつかの態様では、ドナー細胞またはドナー細胞由来の核(すなわち核遺伝物質)は、これがクローニング有効性を高めると報告されているので、活発に分裂している、すなわち非静止状態の細胞である。そのようなドナー体細胞には、G1、G2 SまたはM細胞期の細胞が含まれる。あるいは、静止状態の細胞が使用され得る。いくつかの態様では、そのようなドナー細胞は、G1細胞周期である。特定の態様では、本出願のドナーおよび/またはレシピエント細胞は、2細胞ブロックを受けない。
いくつかの態様では、哺乳動物ドナー体細胞の核遺伝物質(すなわち核)は、卵丘細胞、セルトリ細胞または胚性線維芽細胞または成熟線維芽細胞から得られる。
いくつかの態様では、核遺伝物質は、一般的に、例えば遺伝的変異もしくは異常を修正するように、または遺伝的修飾を導入するように、例えば疾患モデルにおける、例えばSCNT胚から得られるntESCにおける遺伝的修飾の効果を検討するように、遺伝的に修飾される。いくつかの態様では、核遺伝物質は、例えばドナー体細胞に所望の特徴を導入するように、遺伝的に修飾される。体細胞を遺伝的に修飾するための方法は、当業者によって周知であり、本明細書開示の方法および組成物に使用するために包含される。
いくつかの態様では、ドナー体細胞は、その全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2004/0025193号に開示されるような方法に従って選択され、該特許出願は、ドナー体細胞に所望の導入遺伝子を導入することおよび導入遺伝子を有する体細胞を選択すること、その後、レシピエント卵母細胞内に注射するために核を得ることを開示している。
特定の態様では、ドナー核(例えば、ドナー体細胞からの核遺伝物質)は、標識され得る。細胞は、緑色蛍光タンパク質のような容易に視覚化されるタンパク質(Yang, M., et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97:1206-1211)、もしくはその誘導体の1つをコードする導入遺伝子を用いて遺伝的に修飾され得る、またはホタル(Photinus pyralis)ルシフェラーゼ遺伝子(Fluc)から構築された導入遺伝子を用いて(Sweeney, T. J., et al. 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96: 12044-12049)もしくはウミシイタケ(Renilla reniformis)ルシフェラーゼ遺伝子(Rluc)から構築された導入遺伝子を用いて(Bhaumik, S., and Ghambhir, S. S., 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:377-382)修飾され得る。
ドナー体細胞の核遺伝物質中に導入される1つもしくは複数の導入遺伝子が「ハウスキーピング遺伝子」プロモーターを使用して構成的発現され得ることにより、導入遺伝子は、多数もしくは全ての細胞に高レベルで発現され、または導入遺伝子が組織特異的および/もしくは特定の発生期特異的遺伝子プロモーターを使用して発現され得ることにより、特別なニッチに局在し、特定の組織もしくは細胞型に発生した特定の細胞系列もしくは細胞だけが、導入遺伝子を発現し、視覚化される(導入遺伝子がレポーター遺伝子の場合)。追加的なレポーター導入遺伝子または標識化試薬には、非限定的に、蛍光タンパク質類似体およびバイオセンサーを含めた発光標識された高分子、緑色蛍光タンパク質およびその変異体と一緒に形成されるものを含めた発光高分子キメラ、生理学的応答に関与する細胞性抗原と反応する発光標識された一次または二次抗体、発光株、色素、および他の小分子が含まれる。モザイク胚盤胞由来の標識細胞を、例えばクローニングされた集団を単離するためのフローサイトメトリーによって選別することができる。
いくつかの態様では、哺乳動物ドナー体細胞は、健康なドナー、例えば健康なヒト、または先在する医学的状態を有するドナー(例えば、パーキンソン病(PD)および加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病、肥満症、嚢胞性線維症、自己免疫疾患、神経変性疾患、遺伝的もしくは後天性疾患を有する任意の対象)または既存のもしくは先在するもしくは発生中の状態もしくは疾患を処置するために再生療法もしくは幹細胞移植を必要とする任意の対象由来であることができる。例えば、いくつかの態様では、ドナー哺乳動物体細胞は、SCNT由来ヒトES細胞(ntESC)の幹細胞移植のレシピエントであるべき対象から得られ、それによって患者特異的hES細胞の自家移植が可能になる。それゆえに、いくつかの態様では、該方法および組成物は、患者特異的同質遺伝子胚性幹細胞株(すなわち同質遺伝子ntESC株)の産生を可能にする。
いくつかの態様では、ドナー体細胞または核(すなわち核遺伝物質)は、本明細書開示のH3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば本明細書開示の方法によるSuv39h1、Suv39h2もしくはSetdb1の阻害剤の任意の1つで処置される。特定の態様では、ドナー哺乳動物細胞または核は、核移入の前に予備処置されず、SCNT胚は本明細書開示の方法によるH3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤で処置される。特定の態様では、ドナー細胞または核は、核移入または除核レシピエント卵母細胞に注射するための遺伝物質(もしくは核)の収集前に、スペルミン、プロタミン、またはプトレッシンで前処置されない。
ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞またはSCNTを、H3K9me3メチル化を減少させる作用物質と接触させる段階
いくつかの態様では、ドナー哺乳動物体細胞は、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤で処置される、またはそれと接触される。いくつかの態様では、ドナー哺乳動物細胞の核(または核遺伝物質)は、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤で処置される、またはそれと接触される。いくつかの態様では、ドナー哺乳動物細胞の細胞質および/または核は、本明細書開示のH3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばSuv39h1、Suv39h2および/またはSetdb1の任意の1つまたは組み合わせの阻害剤で処置される、またはそれと接触される。いくつかの態様では、接触は、ドナー哺乳動物体細胞の細胞質および/または核へのH3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤のマイクロインジェクションである。
いくつかの態様では、ドナー体細胞は、除核哺乳動物ドナー卵母細胞への移入のために核を取り出す少なくとも約24時間、または少なくとも約48時間、または少なくとも約3日または少なくとも約4日または4日よりも長い前に、Suv39h1および/もしくはSuv39h2、またはその両方(Suv39h1/2)の阻害剤と接触される。いくつかの態様では、Suv39h1および/もしくはSuv39h2、またはその両方(Suv39h1/2)の阻害剤は、siRNAにより、Suv39h1および/もしくはSuv39h2、またはその両方(Suv39h1/2)の発現阻害は、レシピエント卵母細胞に注射するために核を取り出す前に、少なくとも12時間、または少なくとも24時間またはそれよりも長い期間起こる。いくつかの態様では、Suv39h1および/もしくはSuv39h2、または両方(Suv39h1/2)の阻害は、除核哺乳動物ドナー卵母細胞への移入のために核を取り出す、例えば、少なくとも約24時間、または少なくとも約48時間、または少なくとも約3日または少なくとも約4日または4日よりも長い前に、ドナー体細胞において起こる。いくつかの態様では、Suv39h1および/もしくはSuv39h2、またはその両方(Suv39h1/2)の発現を阻害することは、siRNAにより、核を除去する前に、少なくとも12時間、または少なくとも24時間またはそれより長い期間起こる。
いくつかの態様では、いくつかの態様では、哺乳動物卵母細胞は、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤で処置される、またはそれと接触される。いくつかの態様では、哺乳動物卵母細胞は、例えば除核卵母細胞の細胞質への直接注射によって、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤で処置される、またはそれと接触される除核卵母細胞である。いくつかの態様では、哺乳動物卵母細胞または除核した哺乳動物卵母細胞は、Kdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤、例えば非限定的に、Kdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼのメンバー、例えばKdm4A、Kdm4B、Kdm4CまたはKdm4Dの任意の1つまたは組み合わせを活性化する作用物質で処置される、またはそれと接触される。いくつかの態様では、除核卵母細胞は、ドナー核の遺伝物質を注射されたこと、または受けたことがない。
代替的な態様では、レシピエント卵母細胞は、核移入前(すなわち、ドナー核の遺伝物質を注射される前)の約40時間の時間枠内でH3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤で処置される。そのような接触は、核移入の約40時間前に、またはより好ましくは核移入の約12もしくは24時間前の時間枠内で、最も好ましくは核移入の約4〜9時間前の時間枠内で起きることができる。いくつかの態様では、レシピエント卵母細胞が雑種卵母細胞である(すなわち、ドナー体細胞由来の核遺伝物質を含むが、まだ活性化されていない)とき、レシピエント卵母細胞は、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤と接触される。そのような接触は、核移入の約40時間後、またはより好ましくは核移入の約1〜4もしくは4〜12時間の時間枠内で、または24時間後以内の任意の時間に、最も好ましくは、核移入の約1〜4または4〜9時間後の時間枠内であるが、融合または活性化の前に起きることができる。
レシピエント卵母細胞を、核移入の前、同時、または後のいずれかにH3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤で処置することができる。一般に、レシピエント卵母細胞は、核移入の5時間以内または活性化もしくは融合の5時間以内(例えば、5hpa;活性化の5時間後)に処置される。いくつかの態様では、活性化(または融合)は、遺伝物質をドナー体細胞から除核卵母細胞に注射した1〜2または2〜4時間後以内に起き、その場合、SCNT胚は、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤と接触される。
いくつかの態様では、SCNT胚は、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤で処置される。SCNT胚は、核(例えば核遺伝物質)をドナー体細胞から除核レシピエント卵母細胞に注射して、「雑種卵母細胞」を形成させることから作製され、雑種卵母細胞は活性化(または融合)されてSCNT胚が作製される。SCNT胚は、レシピエント卵母細胞の細胞質を用いたドナー核の活性化(融合としても公知)後に作製される。いくつかの態様では、ドナー細胞および/または除核卵母細胞由来の細胞質または核のいずれかまたは両方は、本明細書開示のH3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤で処置されている、またはそれと接触されている。いくつかの態様では、ドナー細胞および/または除核卵母細胞のどれも、H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはKdm4ヒストンデメチラーゼ活性化剤で処置されていない。
いくつかの態様では、体細胞核移入(SCNT)の効率を増加させる段階は、例えば少なくとも5hpa、または10〜12hpaの間(すなわち1細胞期)、または約20hpa(すなわち2細胞初期)または20〜28hpaの間(すなわち2細胞期)のSCNT胚を、(i)Kdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼおよび/または(ii)H3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤の少なくとも1つと接触させる段階を含む。いくつかの態様では、Kdm4遺伝子、例えばKdm4dの外因性発現は、5hpa、10〜12hpaの間(すなわち1細胞期)、または約20hpa(すなわち2細胞初期)または20〜28hpaの間(すなわち2細胞期)の任意の1つにSCNT胚において起こる。SCNT胚が、H3K9me3を阻害する作用物質、例えば、Kdm4遺伝子、例えばKdm4dの外因性発現(例えばKdm4d mRNAまたはmod-RNA)を増加させる作用物質のような作用物質と接触されるいくつかの態様では、SCNT胚の各細胞(例えば、2細胞期胚の各細胞)に、Kdm4dを活性化または過剰発現させる作用物質が注射される。いくつかの態様では、Kdm4遺伝子、例えばKdm4dの外因性発現は、5hpa、10〜12hpaの間(すなわち1細胞期)、または約20hpa(すなわち2細胞初期)または20〜28hpaの間(すなわち2細胞期)の任意の1つにSCNT胚において起こる。SCNT胚が、H3K9me3を阻害する作用物質、例えば、Kdm4遺伝子、例えばKdm4dの外因性発現(例えばKdm4d mRNAまたはmod-RNA)を増加させる作用物質のような作用物質と接触されるいくつかの態様では、SCNT胚の各細胞(例えば、2細胞期胚の各細胞)に、Kdm4dを活性化または過剰発現させる作用物質が注射される。
核移入の方法
本発明の一目的は、体細胞をより効率的にクローニングする手段を提供することである。本開示の方法および組成物は、哺乳動物、例えば非ヒト哺乳動物をクローニングするために、哺乳動物(例えば、ヒトおよび非ヒト哺乳動物)多能性細胞および全能細胞を得るために、および哺乳動物細胞をリプログラミングするために、使用され得る。
核移入技法または核移植技法は、文献から公知である。特に、その全体として参照により本明細書に組み入れられるCampbell et al, Theriogenology, 43:181 (1995); Collas et al, Mol. Report Dev., 38:264-267 (1994); Keefer et al, Biol. Reprod., 50:935-939 (1994); Sims et al, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 90:6143-6147 (1993);国際公開公報第94/26884号;同第94/24274号、および同第90/03432号を参照されたい。また、米国特許第4,944,384号および同第5,057,420号は、ウシ核移植の手順を記載している。Cibelli et al, Science, Vol. 280:1256-1258 (1998)も参照されたい。
ドナー核をレシピエントの受精胚に移入する段階は、マイクロインジェクション装置を用いて行われ得る。特定の態様では、最小限の細胞質が核と共に移入される。最小限の細胞質の移入は、細胞融合アプローチによる移入とは対照的に、核がマイクロインジェクションを使用して移入される場合に達成可能である。一態様では、マイクロインジェクション装置は、圧電ユニットを含む。典型的には、針に振動を付与するように、圧電ユニットが針に操作可能的に取り付けられる。しかし、針に振動を付与することができる任意の構成の圧電ユニットが、本発明の範囲内に含まれる。特定の場合に、圧電ユニットは、針が物体内を通過するのを助けることができる。特定の態様では、圧電ユニットは、核と共に最小限の細胞質を移入するために使用され得る。その目的に適した任意の圧電ユニットが使用され得る。特定の態様では、圧電ユニットは、圧電マイクロマニピュレーター制御装置PMM150(PrimeTech, Japan)である。
いくつかの態様では、該方法は、ドナー核を除核卵母細胞と融合させる段階を含む。細胞質体と核との融合は、ポリエチレングリコール(Pontecorvo "Polyethylene Glycol (PEG) in the Production of Mammalian Somatic Cell Hybrids" Cytogenet Cell Genet. 16(1-5):399-400 (1976)参照、核の直接注射、センダイウイルス介在性融合(米国特許第4,664,097号およびGraham Wistar Inst. Symp. Monogr. 9 19 (1969)参照)、または電気融合のような当技術分野において公知の他の技法を含む、当技術分野において公知のいくつかの技法を使用して行われる。細胞の電気融合は、細胞を一緒に近接させて、それらを交流電場に曝露することを伴う。適切な条件下で、細胞は一緒に押し付けられ、そこで細胞膜の融合、次に融合(fusate)細胞または雑種細胞の形成がある。細胞の電気融合およびそれを行うための装置は、例えば米国特許第4,441,972号、同第4,578,168号および同第5,283,194号、国際特許出願PCT/AU92/00473[国際公開公報第1993/05166号として公開]、Pohl, "Dielectrophoresis", Cambridge University Press, 1978およびZimmerman et al., Biochimica et Bioplzysica Acta 641: 160-165, 1981に記載されている。
SCNTの方法、およびレシピエント卵母細胞の細胞質を用いたドナー核遺伝物質の活性化(すなわち融合)は、その全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2004/0148648号に開示されている。
卵母細胞の収集
卵母細胞ドナーは、以前に記載されたように同期化および過排卵させることができ(Gavin W.G., 1996)、精管切除された雄と48時間にわたり交配された。収集後、2mM L-グルタミンおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン(各10,000I.U./ml)を補充した10%FBSを有する平衡化M199中で卵母細胞を培養した。核移入は、インビボまたはインビトロで成熟できた卵母細胞を利用することもできる。インビボ成熟した卵母細胞を、上に説明したように派生させ、インビトロ成熟した卵母細胞を特定の細胞期までインビトロで発生させ、その後、核移入に使用するためにそれらが回収される。
細胞質体の調製および除核
卵丘細胞が付着した卵母細胞は、典型的には廃棄される。卵丘細胞のない卵母細胞を2群に分類した:停止した分裂中期II(1つの極体)および分裂終期IIのプロトコール(はっきりと視認可能な極体または部分的に突出している第二極体の存在がない)。停止した分裂中期IIのプロトコールでは卵母細胞は最初に除核される。活性化分裂終期IIのプロトコールに割り当てられた卵母細胞は、M199/10%FBS中で2〜4時間培養することによって調製された。この期間の後に、全ての活性化卵母細胞(部分的に突出した第二極体が存在)を、培養誘導カルシウム活性化分裂終期II卵母細胞(分裂終期II-Ca)として群分けし、除核した。続いて、培養期間中に活性化されなかった卵母細胞を、7%エタノール含有M199、10%FBS中で5分間インキュベートして活性化を誘導し、次に10%FBSを有するM199中で追加的に3時間培養して、分裂終期IIに到達させた(分裂終期II-EtOHプロトコール)。除核前に、全ての卵母細胞をサイトカラシン-Bで15〜30分間処置する。ガラスピペットで第一極体および極体周囲の隣接細胞質(細胞質の約30%)吸引して赤道板を除去することによって、分裂中期IIの卵母細胞を除核した。第一極体および部分的に突出している第二極体を含む周囲の細胞質(細胞質の10〜30%)を除去することによって、分裂終期II-Caおよび分裂終期II-EtOH卵母細胞を除核した。除核後、全ての卵母細胞を直ちに再構築した。
核移入および再構築
卵母細胞の除核のために使用された同じ培地中でドナー細胞の注射を行った。ガラスピペットを使用して、透明帯と卵細胞質膜との間にドナー細胞を1つ置いた。電気融合および活性化手順の前に、細胞-卵母細胞のカプレット(couplet)をM199中で30〜60分間インキュベートした。再構築された卵母細胞を、融合緩衝液(300mM マンニトール、0.05mM CaCl2、0.1mM MgSO4、1mM K2HPO4、0.1mMグルタチオン、0.1mg/ml BSA)中で2分間平衡化した。融合培地で満たされた「融合スライド」になるよう形成された2つのステンレス鋼電極(間隙500μm; BTX-Genetronics, San Diego, Calif.)を有する融合チャンバー中において、電気融合および活性化を室温で行った。
融合スライドを使用して融合(例えば活性化)を行う。融合ディッシュ内に融合スライドを置き、十分量の融合緩衝液にこのディッシュを浸して、融合スライドの電極を覆った。カプレットを培養インキュベーターから取り出し、融合緩衝液に通して洗浄した。実体顕微鏡を使用して、カリオプラスト/細胞質体接合部が電極と平行となるよう、カプレットを両方の電極から等距離に置いた。活性化および融合を促進するためにカプレットに印加される電圧範囲は、1.0kV/cm〜10.0kV/cmであることができることに留意すべきである。しかし、最初の単回同時融合および活性化電気パルスは、好ましくは、電圧範囲2.0〜3.0kV/cm、最も好ましくは2.5kV/cmを有し、好ましくは持続時間少なくとも20μ秒である。これは、BTX ECM 2001 Electrocell Manipulatorを使用して細胞カプレットに印加される。マイクロパルスの持続時間は、10〜80μsecまで変動することができる。この工程の後、処置されたカプレットは、典型的には1滴の新鮮な融合緩衝液に移動される。融合処置されたカプレットを平衡化SOF/FBSに通して洗浄し、次にサイトカラシンBを有するまたは有さない平衡化SOF/FBSに移動させた。サイトカラシンBが使用される場合、その濃度は、1〜15μg/mlまで変動することができ、最も好ましくは5μg/mlである。空気中に約5%のCO2が入った加湿ガスチャンバー中でカプレットを37〜39℃でインキュベートした。本開示に提供される任意のプロトコールの全体にわたり、サイトカラシンBの代わりにマンニトールが使用され得る(Ca+2およびBSAを有するHEPES緩衝マンニトール(0.3mm)に基づく培地)ことに留意すべきである。融合後10〜90分の間に、最も好ましくは融合の30分後に開始して、その後の体内移植または核移入の追加的なラウンドに使用するためのトランスジェニック胚の発生のために、実際のカリオプラスト/細胞質体融合体の存在が判定される。
シクロヘキシミド処置後に、少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも0.7%、好ましくは0.8%のウシ血清アルブミンに加えて100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(SOF/BSA)を補充した平衡化SOF培地でカプレットを徹底的に洗浄する。カプレットを平衡化SOF/BSAに移し、約6%O2、5%CO2、残りは窒素が入った加湿モジュールインキュベーションチャンバー中に入れ、37〜39℃で24〜48時間静置培養した。齢に応じた発生を示す核移入胚(24〜48時間で1細胞〜最大8細胞)を代理母である同期化されたレシピエントに移入した。
核移入胚培養およびレシピエントへの移入
SCNT胚の培養
SCNTによって得られた胚は、胚が通常培養される条件(少なくともインビボ)以外のインビボ培養条件から利益を得る、またはそれを必要にさえし得ると示唆されている。ウシ胚の日常的な増倍において、再構築された胚(その多くが一度に)は、ヒツジ輸卵管内で5〜6日間培養されたものである(Willadsen, In Mammalian Egg Transfer (Adams, E. E., ed.) 185 CRC Press, Boca Raton, Fla. (1982)によって記載)。特定の態様では、SCNT胚は、移入前に寒天のような保護培地中に包埋され、次に一時的レシピエントから回収後に寒天から切り出され得る。保護寒天または他の培地の機能は、2つある:第一に、それは、透明帯を一緒に保持することによってSCNT胚用の構造補助物として作用し、第二に、それは、レシピエント動物の免疫系細胞に対するバリアとして作用する。このアプローチは、胚盤胞を形成する胚の比率を増加させるものの、いくつかの胚が失われ得るという欠点がある。いくつかの態様では、SCNT胚を、50μlの液滴中でフィーダー細胞、例えば初代ヤギ輸卵管上皮細胞の単層上で共培養することができる。胚培養物を、5%CO2を有する加湿39℃インキュベーター中で48時間維持し、その後、胚をレシピエント代理母に移入することができる。
SCNT実験から、成熟分化体細胞由来の核を全能状態にリプログラミングできることが示された。それゆえに、本明細書開示の方法を使用して作製されるSCNT胚を、全能または胚性の幹細胞または幹様細胞および細胞コロニーの作製のために適したインビトロ培養培地中で培養することができる。胚の培養および成熟に適した培養培地は、当技術分野において周知である。ウシ胚の培養および維持のために使用され得る公知の培地の例には、HamのF-10+10%ウシ胎児血清(FCS)、組織培養培地-199(TCM-199)+10%ウシ胎児血清、タイロード-アルブミン-ラクテート-ピルベート(TALP)、Dulbeccoリン酸緩衝食塩水(PBS)、EagleおよびWhitten培地が含まれる。卵母細胞の収集および成熟のために使用される最も一般的な培地の1つは、TCM-199、およびウシ胎児血清、新生児血清、発情期雌ウシ血清、子ヒツジ血清または去勢ウシ血清を含む、1〜20%血清補充物である。好ましい維持培地には、アール塩、10%ウシ胎児血清、0.2Maピルビン酸塩および50ug/ml硫酸ゲンタマイシンを有するTCM-199が含まれる。上記のいずれかは、顆粒膜細胞、輸卵管細胞、BRL細胞および子宮細胞およびSTO細胞のような多様な細胞型と一緒の共培養も伴い得る。
特に、子宮内膜のヒト上皮細胞は、着床前および着床期の間に白血病抑制因子(LIF)を分泌する。したがって、いくつかの態様では、SCNT由来胚のインビトロ発生を高めるために、培養培地へのLIFの添加が包含される。胚または幹様細胞培養物のためのLIFの使用は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,712,156号に記載されている。
別の維持培地が、参照により本明細書に組み入れられるRosenkrans, Jr.らへの米国特許第5,096,822号に記載されている。CR1と名付けられたこの胚培地は、胚を支援するために必要な栄養物を含有する。CR1は、ヘミカルシウムL-ラクテートを1.0mM〜10mM、好ましくは1.0mM〜5.0mMの範囲の量で含有する。ヘミカルシウムL-ラクテートは、ヘミカルシウム塩が組み入れられたL-ラクテートである。また、Thomson et al., Science, 282:1145-1147 (1998)およびProc. Natl. Acad. Sci., USA, 92:7844-7848 (1995)に述べられたような、ヒト胚性幹細胞を培養状態に維持するために適した培養培地である。
いくつかの態様では、フィーダー細胞は、マウス胚性線維芽細胞を含む。適切な線維芽細胞フィーダー層の調製のための手段は、以下の実施例に記載されており、十分に当業者の技能の範囲内である。
胚盤胞期SCNT胚(またはその等価物)からES細胞(例えばntESC)を派生させる方法は、当技術分野において周知である。そのような技法は、SCNT胚からES細胞を派生させるために使用することができる。追加的または代替的に、ES細胞を、発生のより早い時期に、クローニングされたSCNT胚から派生させることができる。
適用
全能細胞を得る段階
特定の態様では、全能細胞を得るために、SCNT胚から作製される割球は、ガラスピペットを使用して解離され得る。いくつかの態様では、解離は、0.25%トリプシンの存在下で起こり得る(Collas and Robl, 43 BIOL. REPROD. 877-84, 1992; Stice and Robl, 39 BIOL. REPROD. 657-664, 1988; Kanka et al., 43 MOL. REPROD. DEV. 135-44, 1996)。
特定の態様では、結果として生じたSCNT胚由来の胚盤胞または胚盤胞様クラスターを使用して、胚性幹細胞株、例えば核移入ESC(ntESC)細胞株を得ることができる。そのような株は、例えば、その全体として参照により本明細書に組み入れられるThomson et al., Science, 282:1145-1147 (1998)およびThomson et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 92:7544-7848 (1995)によって報告される培養方法に従って得ることができる。
多能性胚性幹細胞を、また、出生までの胚の正常な発生を妨害せずに、SCNT胚から取り出された単一割球から作製することができる。その開示が、その全体として参照により組み入れられる、2004年11月4日に出願された米国特許出願第60/624,827号;2005年3月14日に出願された同第60/662,489号;2005年6月3日に出願された同第60/687,158号;2005年10月3日に出願された同第60/723,066号;2005年10月14日に出願された同第60/726,775号;2005年11月4日に出願された同第11/267,555号;2005年11月4日に出願されたPCT出願PCT/US05/39776を参照されたく、それぞれの全開示が、その全体として参照により組み入れられる;Chung et al., Nature, Oct. 16, 2005 (印刷に先立って電子刊行された)およびChung et al., Nature V. 439, pp. 216-219 (2006)も参照されたい)。
本発明の一局面では、該方法は、SCNT胚から派生した細胞の研究および治療法における利用を含む。そのような多能性細胞または全能細胞は、非限定的に、皮膚細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、腎細胞、肝細胞、血液および血液形成細胞、血管前駆および血管内皮細胞、膵β細胞、神経細胞、グリア細胞、網膜細胞、内耳包細胞、腸細胞、肺細胞を含めた、体内の任意の細胞に分化し得る。
本発明の別の態様では、SCNT胚、または胚盤胞、またはSCNT胚(例えばntESC)から得られる多能性もしくは全能細胞を、網膜色素上皮、造血前駆細胞および血管芽前駆細胞ならびに外胚葉、中胚葉、および内胚葉の多数の他の有用な細胞型のような、他の治療的に有用な細胞をもたらすために、1種または複数種の分化誘導因子に曝露することができる。そのような誘導因子には、非限定的に、インターロイキン-αA、インターフェロン-αA/D、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターフェロン-γ誘導タンパク質-10、インターロイキン-1-17、角化細胞成長因子、レプチン、白血病抑制因子、マクロファージコロニー刺激因子、およびマクロファージ炎症性タンパク質-1α、1-β、2、3α、3β、および単球走化性タンパク質1〜3、6カインなどのサイトカイン、アクチビンA、アンフィレギュリン、アンジオゲニン、B-内皮細胞成長因子、βセルリン(cellulin)、脳由来の神経栄養因子、C10、カルジオトロフィン-1、絨毛神経栄養因子、サイトカイン誘導好中球走化性因子-1,エオタキシン、上皮成長因子、上皮好中球活性化ペプチド-78、エリトロポエチン、エストロゲン受容体-α、エストロゲン受容体-β、線維芽細胞成長因子(酸性および塩基性)、ヘパリン、FLT-3/FLK-2リガンド、神経膠細胞株由来の神経栄養因子、Gly-His-Lys、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、GRO-α/MGSA、GRO-β、GRO-γ、HCC-1、ヘパリン結合上皮成長因子、肝細胞成長因子、ヘレグリン-α、インスリン、インスリン成長因子結合タンパク質-1、インスリン様成長因子結合タンパク質-1、インスリン様成長因子、インスリン様成長因子II、神経発育因子、ニューロトロフィン-3,4、オンコスタチンM、胎盤成長因子、プレイオトロフィン、RANTES、幹細胞因子、ストロマ細胞由来因子1B、スロモポエチン(thromopoietin)、形質転換成長因子--(α、β1、2、3、4、5)、腫瘍壊死因子(αおよびβ)、血管内皮成長因子、および骨形成タンパク質、17B−エストラジオール、副腎皮質刺激ホルモン、アドレノメデュリン、α−メラニン細胞刺激ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、コルチコステロイド結合グロブリン、コルチコステロン、デキサメタゾン、エストリオール、卵胞刺激ホルモン、ガストリン1、グルカゴン、ゴナドトロピン、L-3,3',5'-トリヨードチロニン、黄体ホルモン、L-チロキシン、メラトニン、MZ-4、オキシトシン、副甲状腺ホルモン、PEC-60、下垂体成長ホルモン、プロゲステロン、プロラクチン、セクレチン、性ホルモン結合グロブリン、甲状腺刺激ホルモン、サイトロピン放出因子、チロキシン結合グロブリン、およびバソプレシンのようなホルモンおよびホルモンアンタゴニストの発現を変更する酵素、フィブロネクチン、フィブロネクチンのタンパク質分解フラグメント、ラミニン、テネイシン、トロンボスポンジンのような細胞外マトリックス成分、ならびにアグリカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、コントロイチン硫酸プロテオグリカン、およびシンデカンのようなプロテオグリカンが含まれる。他の誘導因子には、本発明のリプログラミングされた細胞から派生する分化途中の細胞に誘導信号を提供するために使用される所定の組織由来の細胞に由来する細胞または成分が含まれる。そのようなインデューサー細胞(inducer cell)は、ヒト、非ヒト哺乳動物、または鳥類の、例えば特定病原体未感染(SPF)胚または成熟細胞から派生し得る。
本発明の特定の態様では、SCNT胚(例えばntESC)から得られる多能性細胞または全能細胞を任意で分化させ、治療的有用性を示すために、これらの細胞が普通は属する組織内に導入することができる。例えば、SCNT胚から得られた多能性細胞または全能細胞を組織内に導入することができる。特定の他の態様では、SCNT胚から得られる多能性細胞または全能細胞を、全身的に、または治療的有用性が望まれる部位から距離をおいて導入することができる。そのような態様では、SCNT胚から得られる多能性細胞または全能細胞は、距離をおいて作用することができ、または所望の部位にホーミングし得る。
本発明の特定の態様では、クローニングされた細胞、SCNT胚から得られる多能性細胞または全能細胞を、他の多能性幹細胞の分化を誘導することに利用することができる。遺伝子発現の胚性パターンを維持しながら、インビトロで増殖する能力のある細胞の単一細胞由来集団を作製することは、他の多能性幹細胞の分化を誘導する上で有用である。細胞-細胞誘導は、初期胚における分化を方向付ける、一般的な手段である。脊髄神経細胞、心臓細胞、膵β細胞、および二次造血細胞を含めた、多くの潜在的に医学に有用な細胞型は、正常な胚発生の間に誘導シグナルによって影響される。遺伝子発現の胚性パターンを維持しながら、インビトロで増殖する能力のある細胞の単一細胞由来集団を、多様なインビトロ、インオボ(in ovo)、またはインビボ培養条件で培養して、所望の細胞または組織型になるための他の多能性幹細胞の分化を誘導することができる。
SCNT胚(例えばntESC)から得られる多能性細胞または全能細胞を使用して、任意の所望の分化した細胞型を得ることができる。そのような分化したヒト細胞の治療的使用は、並ぶものがない。例えば、ヒト造血幹細胞は、骨髄移植を必要とする医学処置に使用され得る。そのような手順は、多数の疾患、例えば、卵巣癌および白血病のような末期癌、ならびにAIDSのような免疫系を損なう疾患を処置するために使用される。造血幹細胞は、癌またはAIDS患者のドナー成熟最終分化体細胞、例えば上皮細胞またはリンパ球を、レシピエント除核卵母細胞、例えば非限定的に、ウシ卵母細胞と融合させること、本明細書開示の方法に従ってSCNT胚を得ること(SCNT胚は、次に、上記の多能性もしくは全脳細胞または幹様細胞を得るために使用することができる)、および造血幹細胞が得られるまでそのような細胞を分化に好都合な条件で培養することによって、得ることができる。そのような造血細胞は、癌およびAIDSを含めた疾患の処置に使用され得る。本明細書に述べられるように、成熟ドナー細胞、またはレシピエント卵母細胞またはSCNT胚を、本明細書開示の方法に従って、Kdm4ヒストンジメチラーゼ活性化剤および/またはH3K9メチルトランスフェラーゼ阻害剤で処置することができる。
あるいは、ドナー哺乳動物細胞は、神経学的障害を有する患者由来の成熟体細胞であることができ、産生されたSCNT胚を使用して、多能性細胞または全能細胞を産生することができ、それらの細胞を分化条件で培養して、神経細胞株を産生することができる。そのようなヒト神経細胞の移植によって処置可能な特定の疾患には、例として、とりわけパーキンソン病、アルツハイマー病、ALSおよび脳性麻痺が含まれる。特定例のパーキンソン病では、移植された胎児脳神経細胞が周囲の細胞と適正に結合し、ドーパミンを産生することが実証されている。これは、パーキンソン病の症状の長期後退を招くことができる。
いくつかの態様では、SCNT胚(例えばntESC)から得られる多能性細胞または全能細胞は、遺伝子発現の皮膚科的出生前パターンを有する細胞に分化することができ、その細胞は、高度に弾性線維形成性である、または瘢痕形成を引き起こさずに再生する能力がある。特に、関節周囲の領域内のような、外皮が高レベルの弾性から利益を得る場所に対応する、哺乳動物胎児皮膚の皮膚線維芽細胞は、ターンオーバーなしに長年機能する弾性細線維の入り組んだ構造をデノボ合成することを担う。加えて、初期胚皮膚は、瘢痕形成なしに再生する能力がある。SCNT胚から得られる多能性細胞または全能細胞からの胚発生におけるこの時点からの細胞は、正常なエラスチン構造を形成することを含めた、瘢痕なしの皮膚再生を促進する上で有用である。これは、正常なヒト加齢の過程の症状を処置する上で、または皮膚の弛みおよびシワを含めた加齢性外観を招く皮膚の著明な弾性線維症がある可能性がある光線皮膚損傷に、特に有用である。
分化した細胞の特定の選択を可能にするために、いくつかの態様では、誘導プロモーターを介して発現される選択マーカーを、ドナー哺乳動物細胞にトランスフェクトすることによって、分化が誘導されたときに特別な細胞系列の選択または富化が可能になり得る。例えば、造血細胞の選択のためにCD34-neoが、筋細胞のためにPw1-neoが、交感神経細胞のためにMash-1-neoが、大脳皮質の灰白質のヒトCNS神経細胞のためにMal-neo神経細胞などが、使用され得る。
本発明の大きな利点は、SCNTの効率を増加させることによって、それが、移植に適する同質遺伝子ヒト細胞またはシンジェニックなヒト細胞、特に人工多能性幹細胞ではない多能性細胞の本質的に無限の供給を提供することである。いくつかの態様では、これらは、SCNT胚から得られる患者特異的多能性であり、その際、ドナー哺乳動物細胞は、多能性幹細胞またはその分化した子孫で処置されるべき対象から得られたものである。したがって、それは、現在の移植方法に関連する重大な問題、すなわち、宿主対移植片または移植片対宿主拒絶反応のせいで起こり得る、移植された組織の拒絶反応を回避する。慣例的に、拒絶反応は、サイクロスポリンのような抗拒絶反応薬の投与によって阻止または軽減される。しかし、そのような薬物は、重大な有害副作用、例えば免疫抑制、発癌性を有し、加えて非常に高価である。本発明は、サイクロスポリン、イムラン、FK-506、グルココルチコイド、およびラパマイシン、ならびにその誘導体のような抗拒絶反応薬の必要性を排除する、または少なくとも大きく低減するはずである。
同質遺伝子細胞療法によって処置可能な、他の疾患および状態には、例として、脊髄損傷、多発性硬化症、筋ジストロフィー、糖尿病、肝疾患、すなわち高コレステロール血症、心疾患、軟骨置換、熱傷、足潰瘍、消化管疾患、血管病、腎臓病、尿路疾患、ならびに加齢関連疾患および状態が含まれる。
非ヒト動物の生殖クローニング
いくつかの態様では、非ヒト哺乳動物をクローニングするためのSCNT胚の産生効率を増加させるために、該方法および組成物を使用することができる。本明細書開示の方法および組成物から得られるSCNT胚から非ヒト哺乳動物をクローニングための方法は、当技術分野において周知である。哺乳動物をクローニングするために使用される2つの主な手順は、Roslin法およびHonolulu法である。これらの手順は、1996年にスコットランドのRoslin InstituteでヒツジのDolly(Campbell, K. H. et al. (1996) Nature 380:64-66)が、および1998年にホノルルのUniversity of HawaiiでマウスのCumulina(Wakayama, T. et al. (1998) Nature 394:369-374)が作製されたことにちなんで名付けられた。
他の態様では、本発明の方法は、親胚として使用できる、クローニングされた卵割期胚または桑実胚期胚を産生するために使用することができる。そのような親胚を、ES細胞を作製するために使用することができる。例えば、そのような親胚から割球(1、2、3、4割球)を取り出すまたは生検することができ、そのような割球を使用して、ES細胞を派生させることができる。
特に本発明は、長い間望まれている、増加した重量、乳汁内容物、乳汁生産体積、乳汁分泌時間の長さおよび耐病性のような、特定の所望の形質または特徴を有する非ヒト哺乳動物を作製するためにSCNTを使用することに適用可能である。従来の繁殖工程は、いくつかの特異的に望ましい形質を有する動物を生成することができるが、しかし多くの場合、これらの形質は、望まれていないいくつかの特徴と関連し、時間および費用がかかり、信頼できない。そのうえ、これらの工程は、その他の場合には問題となる種の遺伝的相補物に全く非存在の所望のタンパク質治療薬(すなわち、ウシ乳汁中のクモの糸タンパク質)のような遺伝子産物を特定の動物系統に産生する能力が全くない。
いくつかの態様では、本明細書開示の方法および組成物は、例えば導入された所望の特徴を有する、または特別な望まれない特徴が非存在もしくは欠如する(例えば遺伝子ノックアウトにより)、トランスジェニック非ヒト哺乳動物を作製するために使用することができる。トランスジェニック動物を作製することができる技法の開発は、特定の形質を有するように操作された、または特定のタンパク質もしくは他の分子化合物を発現するように設計された、動物の生成における例外的な精度ための手段を提供する。すなわち、トランスジェニック動物は、発生初期に体細胞および/または生殖系列細胞に意図的に導入されている遺伝子を有する動物である。動物が発生および成長するにつれ、動物に操作されたタンパク質産物または特定の発生変化が明白になる。
あるいは、該方法および組成物を、非ヒト哺乳動物をクローニングするため、例えば特別な非ヒト哺乳動物の遺伝的に同一の子孫を生成するために使用することができる。そのような方法は、例えば所望の特徴を有する産業または商業用動物(例えば、高品質乳汁生産および/もしくは食肉生産用の筋肉を有する雌ウシ/ウシ)のクローニングに、または遺伝的に同一の伴侶動物、例えばペットまたは絶滅に近い動物をクローニングもしくは生成するのに有用である。
簡潔に述べると、本発明の1つの利点は、選択された形質についてホモ接合性のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の増加した生成効率を可能にする。非ヒト哺乳動物細胞株に、所望の遺伝子をコードする少なくとも1つのDNAを含む所与の導入遺伝子構築物をトランスフェクトすることによって、非ヒトドナー体細胞が遺伝的に修飾されているいくつかの態様では、所望の遺伝子が細胞または細胞株のゲノムに挿入されている細胞株を選択すること;所望の遺伝子についてヘテロ接合性のトランスジェニック動物を生成するために核移入手順を行うこと;ヘテロ接合性トランスジェニック動物の遺伝的組成を特徴付けること;選択剤の使用により所望の導入遺伝子についてホモ接合性の細胞を選択すること;公知の分子生物学的方法を使用して生存細胞を特徴付けること;第二ラウンドの核移入または胚移入に使用するために生存細胞または細胞コロニーの細胞を選び取ること;および所望の導入遺伝子についてホモ接合性の動物を生成すること。
本発明により行われ得る追加的な段階は、培養細胞および/または細胞株においてヘテロ接合性動物から得られる細胞株を増大させることである。本発明により行われ得る追加的な段階は、ヘテロ接合性トランスジェニック動物に生検を実施することである。
あるいは、核移入手順は、研究、連続クローニング、またはインビトロ使用に有用な大量のトランスジェニック細胞を産生するために行うことができる。本発明のいくつかの態様では、生きたSCNT胚は、非限定的に、FISH、サザンブロット、PCRを含めたいくつかの公知の分子生物学的方法の1つによって特徴付けられる。先に提供される方法は、所望の導入遺伝子についてホモ接合性の群れの生成を加速することによって、所望の生物学的医薬品のより効率的な生産を可能にする。
いくつかの態様では、本発明は、遺伝的に望ましい家畜または非ヒト哺乳動物の生成を可能にする。例えば、いくつかの態様では、1種または複数種のタンパク質を、SCNT工程に使用されるドナー体細胞のゲノム中に組み入れて、トランスジェニック細胞株を産生することができる。関心対象の追加的な遺伝子/分子のための追加的なDNA導入遺伝子による逐次ラウンドのトランスフェクション(例えば、そのように産生することもできる分子には、非限定的に、抗体、生物学的医薬品が含まれる)。いくつかの態様では、これらの分子は、異なる生理学的条件下で発動される異なるプロモーターを利用することもでき、または異なる細胞型での産生に導く。βカゼインプロモーターは、哺乳動物上皮細胞での泌乳の間に作動されるようなプロモーターの1つであり、一方で他のプロモーターは、他の細胞組織において異なる条件下で作動されることもできる。
加えて、本発明の方法は、群れのスケールアップを可能にし、かつ以前の方法よりもずっと素早く所望のタンパク質の群れ収量を潜在的に増加させる、特に有益または貴重な遺伝子を有する1つまたは複数のホモ接合性動物の加速した発生を可能にする。同様に、本発明の方法は、また、疾患またはそれ自体の死亡により失われた特定のトランスジェニック動物の交替要員を提供する。それは、また、所望の生物学的医薬品の生産を最適化し、コストを下げるように、多様なDNA構築物を用いて構築されたトランスジェニック動物の生成を促進および加速する。別の態様では、ホモ接合性トランスジェニック動物が、異種移植目的でより素早く開発される、またはヒト化Ig遺伝子座を有するように開発される。
それゆえに、本発明の一局面は、SCNT胚を生成するための方法であって:ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞または哺乳動物体細胞核移入(SCNT)胚の少なくとも1つを、ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞または哺乳動物SCNT胚におけるH3K9me3メチル化を減少させる少なくとも1つの作用物質と接触させる段階であって、レシピエント哺乳動物卵母細胞が、有核または除核卵母細胞である段階;レシピエント哺乳動物卵母細胞が有核ならば、該哺乳動物卵母細胞を除核する段階;ドナー哺乳動物細胞由来の核を除核卵母細胞に移入する段階;および哺乳動物SCNT胚を形成させるために十分な時間、レシピエント卵母細胞をインキュベートする段階を含む、方法に関する。
割球の培養。一態様では、SCNT胚を使用して割球を作製し、着床前遺伝子診断(PGD)に現在使用される技法に関係するインビトロ技法を利用して、本明細書開示の方法によって作製されるSCNT胚から、SCNT胚を破壊せずに、またはその他の点でその生存率を顕著に変更することなく、単一割球を単離することができる。本明細書に示されるように、多能性ヒト胚性幹(hES)細胞および細胞株を、出生までの胚の正常な発生を干渉せずに本明細書開示のSCNT胚から取り出される単一割球から作製することができる。
治療的クローニング
ヒツジ「Dolly」のクローニングにおけるWilmutらの発見(Wilmut, et al, Nature 385, 810 (1997)は、hESCを派生させることにおけるThomsonらの発見(Thomson et al., Science 282, 1145 (1998))と一緒になって、患者自身の核から作製されるSCNT胚またはSCNT操作された細胞塊から派生する患者特異的hESCの樹立に基づく再生細胞移植にかなりの熱狂を引き起こした。自家移植により免疫拒絶反応を避けることを目的とするこの戦略は、おそらく、SCNTについての最も強い臨床的な理論的根拠である。その証拠に、複合疾患特異的SCNT-hESCの派生は、疾患メカニズムの発見を加速し得る。細胞移植について、個別のマウス自身のSCNT由来mESCを用いたマウスSCIDおよびPDモデルの革新的な処置が有望である(Rideout et al, Cell 109, 17 (2002); Barberi, Nat. Biotechnol. 21, 1200 (2003))。最終的に、広い組織適合性を有するSCNT由来幹細胞のバンクを創出できることが、新しい卵母細胞を継続して供給する必要性を下げるであろう。
SCNTの効率を増加させるための本明細書記載の方法および組成物は、幹細胞研究および発生生物学の分野を進歩させる数多くの重要な用途を有する。例えば、SCNT胚は、ES細胞、ES細胞株、全能性幹(TS)細胞および細胞株を作製するために使用することができ、それから分化した細胞を、基礎発生生物学を研究するために使用することができ、数多くの疾患および状態の処置に治療的に使用することができる。追加的に、これらの細胞の成長、分化、生存、または移動をモジュレートするために使用することができる要因および条件を特定するために、これらの細胞をスクリーニングアッセイに使用することができる。特定された作用物質は、インビトロおよびインビボ細胞挙動を調節するために使用することができ、細胞または無細胞療法の基礎を形成し得る。
多能性ヒト胚性幹細胞の単離および哺乳動物におけるSCNTでのブレークスルーは、組織修復および移植医療に潜在的適用を有して、研究に使用するための未分化細胞の潜在的に無限の供給源を作製するために、ヒトSCNTを行う可能性をもたらしている。
「治療的クローニング」と呼ばれるときもあるこの概念は、除核ドナー卵母細胞への体細胞核の移入を表す(Lanza, et al., Nature Med. 5,975 (1999))。理論上、卵母細胞の細胞質は、体細胞遺伝子の全てをサイレンシングし、胚細胞遺伝子を活性化することによって、移入された核をリプログラミングする。ES細胞(すなわちntESC)は、クローニングされた着床前期胚の内部細胞塊(ICM)から単離される。治療環境において適用されると、これらの細胞は患者の核ゲノムを有し、したがって、定方向細胞分化の後に、免疫拒絶反応なしに細胞を移植して、糖尿病、変形性関節症、およびパーキンソン病(とりわけ)のような変性障害を処置できることが提唱されている。以前の報告は、クローニングされた胚盤胞のICMからのウシES様細胞(Cibelli et al., Nature Biotechnol. 16, 642 (1998))、およびマウスES細胞の作製(Munsie et al., Curro Bio! 10, 989 (2000); Kawase, et al., Genesis 28, 156 (2000); Wakayama et al., Science 292, 740 (2001))、ならびにクローニングされたヒト胚から8〜10細胞期および胚盤胞の発生(Cibelli et al., Regen. Med. 26, 25 (2001); Shu, et al., Fertil. Steril. 78, S286 (2002))を記載している。ここで、本発明を使用して、本明細書開示の方法によって作製されたSCNT操作細胞塊からヒト患者特異的ES細胞を作製させることができる。SCNTから作製されるそのようなES細胞は、本明細書において「ntESC」と呼ばれ、患者特異的同質遺伝子胚性幹細胞株を含むことができる。
ヒトhESC株を産生するための本技法は、過剰なIVFクリニックの胚を利用し、患者特異的ES細胞を生じない。患者特異的な、免疫がマッチしたhESCは、疾患および発生の研究のために、および治療用幹細胞移植方法を進歩させるために、生物医学的に非常に重要であると予期されている。それゆえに、本発明は、提供された除核卵母細胞中にその核が挿入されている、インフォームド・ドナー由来のヒトドナー皮膚細胞、ヒトドナー卵丘細胞、または他のヒトドナー体細胞から作製されるSCNTからhESC株を樹立するために使用することができる。SCNT由来hESCのこれらの株は、動物タンパク質不含培養培地上で成長される。
免疫学的適合性を示すために、各SCNT由来hESCの主要組織適合遺伝子複合体の同一性を患者自身の同一性と比較することができるが、これは、来たるべき移植にとって重要である。これらのSCNT由来hESCの作製を用いて、遺伝的およびエピジェネティックな安定性の評価がなされる。
多数のヒト傷害および疾患は、単一細胞型での欠損に起因する。欠損細胞を適切な幹細胞、前駆細胞、またはインビトロ分化した細胞により置換できるならば、および移植された細胞の免疫拒絶反応を回避できるならば、クリニックで疾患および傷害を細胞レベルで処置することが可能であり得る(Thomson et al., Science 282, 1145 (1998))。体細胞核が個別の患者からもたらされたヒトSCNT胚またはSCNT操作細胞塊からhESCを作製するという、核ゲノムがドナーのゲノムと同一(ミトコンドリアDNA(mtDNA)は同一でないにせよ)という状況によって、もしもこれらの細胞がヒトの処置に使用されるならば、免疫拒絶反応の可能性は排除され得るであろう(Jaenisch, N. Engl. Med. 351, 2787 (2004); Drukker, Benvenisty, Trends Biotechnol. 22, 136 (2004))。近年、重症複合免疫不全症(SCID)およびパーキンソン病(PD)のマウスモデル(Barberi et al., Nat. Biotechnol. 21, 1200 (2003)は、NT胚盤胞から派生した、分化したマウス自己胚性幹細胞(mESC)の移植という治療的クローニングとも呼ばれる工程によって成功裏に処置されている。
本明細書開示の方法を使用して作製されたヒトSCNT胚またはSCNT操作細胞塊からhESCを作製することを、アルカリホスファターゼ(AP)、ステージ特異的胚抗原4(SSEA-4)、SSEA-3、腫瘍拒絶抗原1-81(Tra-I-81)、Tra-I-60、およびオクタマー-4(Oct-4)を含めたhESC多能性マーカーの発現について評価することができる。ヒト短反復配列プローブを用いたDNAフィンガープリンティングを使用して、各NT-hESC株が体細胞性哺乳動物細胞のそれぞれのドナーに端を発して派生したこと、ならびにこれらの株が、除核の失敗およびその後の単為生殖活性化の結果ではなかったことを高い確実性で示すこともできる。幹細胞は、自己再生できること、ならびに全部で3つの胚葉、すなわち外胚葉、中胚葉、および内胚葉から体細胞に分化できることによって定義される。分化は、適切な動物モデルへのIM注射によって実証されるように、奇形腫形成および胚様体(EB)形成に関して分析される。
要約すれば、SCNTの効率を増加させるための本方法は、ES細胞を派生させるための現行方法の代替を提供する。しかし、現行のアプローチとは異なり、ドナー組織と組織適合性のES細胞株を作製するためにSCNTを使用することができる。このように、本明細書開示の方法によって生成されるSCNT胚は、将来的に、処置を必要とする特別な患者と組織適合性の細胞療法を開発する機会を提供し得る。
いくつかの態様では、サービス提供会社が本明細書開示の方法、システム、キットおよび装置を実行することができ、例えばその際、研究者は、SCNT胚、またはSCNT胚から派生した多能性幹細胞もしくは全能幹細胞を提供するようサービス提供会社に要請することができ、SCNT胚は、サービス提供会社によって運営される研究室内で本明細書開示の方法を使用して作製されたものである。そのような態様では、ドナー哺乳動物細胞を得た後、サービス提供会社は、本明細書開示の方法を行って、SCNT胚、またはそのようなSCNT胚から派生する胚盤胞を生成し、研究者にSCNT胚、またはそのようなSCNT胚から派生する胚盤胞を提供することができる。いくつかの態様では、研究者は、ドナー哺乳動物細胞試料を任意の手段、例えば郵便、速達便などによりサービス提供会社に送ることができ、またはその代わりに、サービス提供会社は、ドナー哺乳動物細胞試料を研究者から収集し、それらをサービス提供会社の診断研究室に輸送するサービスを提供することができる。いくつかの態様では、研究者は、SCN方法において使用されるべきドナー哺乳動物細胞試料をサービス提供会社の研究室の活動場所に寄託することができる。代替的な態様では、サービス提供会社は、ストップバイ(stop-by)サービスを提供し、そのサービスでは、サービス提供会社が研究者の研究室に人員を派遣し、研究者の研究室において研究者の所望のドナー哺乳動物細胞の、本明細書に開示されるような本発明のSCNT方法の方法およびシステムを行うためのキット、装置、および試薬も提供する。そのようなサービスは、非ヒト哺乳動物の生殖クローニングに、例えば、本明細書開示の伴侶ペットおよび動物に、または治療的クローニングに、例えば、SCNT胚由来の胚盤胞から多能性幹細胞を得るために、例えば、再生細胞または組織療法の必要のある対象への移植のための患者特異的多能性幹細胞にとって、有用である。
組成物およびキット
本発明の別の局面は、本明細書開示の方法によって生成されるSCNTから得られるntESC集団に関する。いくつかの態様では、ntESCは、ヒトntESC、例えば患者特異的ntESC、および/または患者特異的同質遺伝子ntESCである。いくつかの態様では、ntESCは、ntESCを全能または多能性状態に維持する培養培地のような培地中に存在する。いくつかの態様では、培養培地は、凍結保存に適した培地である。いくつかの態様では、ntESC集団は凍結保存される。低温保存は、例えば将来使用するために、例えば、治療使用のために、または他の使用、例えば研究使用のために、ntESCを貯蔵するために有用である。ntESCは増幅され得、増幅されたntESCの一部分が使用され得、別の部分が低温保存され得る。ntESCを増幅および保存できることは、かなりの柔軟性、例えば複数の患者特異的ヒトntESCの生成およびSCNT手順に使用するためのドナー体細胞の選択を可能にする。例えば、組織適合性ドナー由来の細胞が、増幅され、1つよりも多いレシピエントに使用され得る。組織バンクがntESCの低温保存を提供することができる。ntESCは、組織適合性データと共に凍結保存され得る。本明細書開示の方法を使用して生成されるntESCを、日常的な手順により凍結保存することができる。例えば、凍結保存を、適切な増殖培地、10%BSAおよび7.5%ジメチルスルホキシドを含むことができる「凍結」培地中の約100万〜1000万個の細胞に関して実施することができる。ntESCは遠心分離される。成長培地が吸引され、凍結培養培地により置換される。ntESCが球体として再懸濁される。細胞は、例えば-80℃の容器中に入れることによってゆっくりと凍結される。凍結したntESCは、37℃の浴中でかきまぜることによって解凍され、新鮮幹細胞培地中に再懸濁され、上記のように成長される。
いくつかの態様では、ntESCは、レシピエント卵母細胞が第三のドナー対象由来のmtDNAを含む、レシピエント卵母細胞の細胞質中にドナー体細胞由来の核遺伝物質を注射することから作製されたSCNT胚から作製される。
本発明は、また、本明細書開示の方法によって産生されるSCNT胚に関する。いくつかの態様では、SCNT胚はヒト胚であり、いくつかの態様では、SCNT胚は非ヒト哺乳動物胚である。いくつかの態様では、非ヒト哺乳動物SCNT胚は、遺伝的に修飾されており、例えば、ドナー核の遺伝物質中の少なくとも1つの導入遺伝子がSCNT手順の前に(すなわちドナー核を収集し、レシピエント卵母細胞の細胞質と融合させる前に)修飾された(例えば、導入または欠失または変化された)ものである。いくつかの態様では、SCNT胚は、ドナー体細胞由来の核DNA、レシピエント卵母細胞由来の細胞質、および第三のドナー対象由来のmtDNAを含む。
本発明は、また、哺乳動物、例えば非ヒト哺乳動物の生存可能なまたは生きた子孫に関し、その際、生きた子孫は、本明細書開示の方法によって生成されるSCNT胚から発生する。
本発明の別の局面は、哺乳動物SCNT胚もしくはその胚盤胞、またはレシピエント哺乳動物卵母細胞(有核もしくは除核)の少なくとも1つ、および(i)Kdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼの発現もしくは活性を増加させる作用物質;または(ii)H3K9メチルトランスフェラーゼを阻害する作用物質の、少なくとも1つを含む組成物に関する。
別の態様では、本発明は、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。本発明の別の局面は、(i)Kdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼの発現または活性を増加させる作用物質および/またはH3K9メチルトランスフェラーゼを阻害する作用物質、ならびに(ii)哺乳動物卵母細胞を含む、1つまたは複数の容器を含むキットに関する。キットは、任意で、レシピエント卵母細胞および/またはSCNT胚のための培養培地、ならびにレシピエント卵母細胞の細胞質を用いたドナー核遺伝物質の活性化(例えば融合)のための1種または複数種試薬を含み得る。いくつかの態様では、哺乳動物卵母細胞は除核卵母細胞である。いくつかの態様では、哺乳動物卵母細胞は、非ヒト卵母細胞またはヒト卵母細胞である。いくつかの態様では、卵母細胞は、凍結保存用凍結培地中で凍結されている、かつ/または存在する。いくつかの態様では、卵母細胞は、ミトコンドリア病を有する、またはmtDNAに変異もしくは異常を有するドナー雌性対象から得られる。いくつかの態様では、卵母細胞は、ミトコンドリア病を有さない、またはmtDNAに変異を有さないドナー雌性対象から得られる。いくつかの態様では、卵母細胞は、第三の対象由来のmtDNAを含む。
キットは、任意で、Kdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼの発現もしくは活性を増加させる作用物質および/またはH3K9メチルトランスフェラーゼを阻害する作用物質の光もしくは他の有害条件による分解を阻止するために適したシステム(例えば不透明な容器)または安定化剤(例えば抗酸化剤)も含み得る。
キットは、任意で、SCNT手順を行うため(例えば、卵母細胞を除核するため、および/またはレシピエント卵母細胞にドナー体細胞の核遺伝物質を注射するため、および/または融合/活性化、および/またはSCNT胚を培養するため)の指示書(すなわちプロトコール)を含む教材、ならびに少なくとも1つのドナー体細胞および/またはレシピエント卵母細胞および/またはSCNT胚を、Kdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼの発現もしくは活性を増加させる作用物質および/またはH3K9メチルトランスフェラーゼを阻害する作用物質の少なくとも1つと接触させる使用説明書を含み得る。
本明細書記載の発明が完全に理解され得るように、以下の詳細な説明を述べる。
本発明のいくつかの態様は、以下の番号付きパラグラフのいずれかに定義され得る。
1.
体細胞核移入(SCNT)の効率を増加させるための方法であって、
ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または哺乳動物SCNT胚を、ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または哺乳動物SCNT胚におけるH3K9me3メチル化を減少させる作用物質と接触させる段階であって、それによってSCNTの効率を増加させる、段階
を含む、SCNTの効率を増加させる方法。
2.
哺乳動物体細胞核移入(SCNT)胚を生成するための方法であって、
(a)ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または哺乳動物体細胞核移入(SCNT)胚の少なくとも1つを、ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または哺乳動物SCNT胚におけるH3K9me3メチル化を減少させる少なくとも1つの作用物質と接触させる段階であって、レシピエント哺乳動物卵母細胞が、有核または除核卵母細胞である、段階;
(b)レシピエント哺乳動物卵母細胞が有核である場合、レシピエント哺乳動物卵母細胞を除核する段階;
(c)ドナー哺乳動物細胞由来の核を除核卵母細胞に移入する段階;および
(d)哺乳動物SCNT胚を形成させるために十分な時間、レシピエント卵母細胞をインキュベートする段階
を含む、方法。
3.
作用物質が、Kdm4(Jmjd2)ファミリーのヒストンデメチラーゼの発現または活性を増加させる、パラグラフ1または2の方法。
4.
作用物質が、Kdm4a(Jmjd2a)、Kdm4b(Jmjd2b)、Kdm4c(Jmjd2c)、またはKdm4d(Jmjd2d)のうち少なくとも1つの発現または活性を増加させる、パラグラフ1〜3のいずれか一つの方法。
5.
作用物質が、Kdm4d(Jmjd2D)またはKdm4A(Jmjd2A)の発現または活性を増加させる、パラグラフ1〜4のいずれか一つの方法。
6.
作用物質が、SEQ ID NO:1〜8に対応する核酸配列、またはSEQ ID NO:1〜8の対応する配列と比較してSCNTの効率を同程度もしくはより大きな程度まで増加させるその生物学的に活性なフラグメントを含む、パラグラフ1〜5のいずれか一つの方法。
7.
作用物質が、SEQ ID NO:1に対応する核酸配列、またはSEQ ID NO:1の核酸配列と比較してSCNTの効率を同程度もしくはより大きな程度まで増加させるその生物学的に活性なフラグメントを含む、パラグラフ6の方法。
8.
作用物質が、H3K9メチルトランスフェラーゼの阻害剤である、パラグラフ1〜7のいずれか一つの方法。
9.
H3K9メチルトランスフェラーゼが、Suv39h1またはSuv39h2である、パラグラフ8の方法。
10.
H3K9メチルトランスフェラーゼが、Setdb1である、パラグラフ8の方法。
11.
Suv39h1、Suv39h2、およびSetdb1のうち2つ以上が阻害される、パラグラフ8の方法。
12.
H3K9メチルトランスフェラーゼを阻害する作用物質が、RNAi剤、CRISPR/Cas9、オリゴヌクレオチド、中和抗体または抗体フラグメント、アプタマー、小分子、ペプチド阻害剤、タンパク質阻害剤、アビジミル(avidimir)、およびそれらの機能的フラグメントまたは誘導体からなる群より選択される、パラグラフ8の方法。
13.
RNAi剤が、siRNAまたはshRNA分子である、パラグラフ12の方法。
14.
作用物質が、SEQ ID NO:9、11、13または15のいずれかの発現を阻害するための核酸阻害剤を含む、パラグラフ1〜13のいずれか一つの方法。
15.
作用物質が、SEQ ID NO:10、12、14または16のいずれかの発現を阻害する核酸阻害剤を含む、パラグラフ1〜13のいずれか一つの方法。
16.
RNAi剤が、SEQ ID NO:17またはSEQ ID NO:19の少なくとも一部とハイブリダイズする、パラグラフ15の方法。
17.
RNAi剤が、SEQ ID NO:18もしくはSEQ ID NO:20、またはその少なくとも10個の連続する核酸のフラグメント、またはSEQ ID NO:18もしくはSEQ ID NO:20と少なくとも80%同一の配列を有するホモログを含む、パラグラフ16の方法。
18.
レシピエント哺乳動物卵母細胞が、除核した哺乳動物卵母細胞である、パラグラフ1〜17のいずれか一つの方法。
19.
SCNT胚が、1細胞期SCNT胚、活性化の5時間後(5hpa)のSCNT胚、活性化の10〜12時間後(10〜12hpa)のSCNT胚、活性化の20〜28時間後(20〜28hpa)のSCNT胚、2細胞期SCNT胚のいずれかより選択される、パラグラフ1〜18のいずれか一つの方法。
20.
核移入前に、作用物質が、レシピエント哺乳動物卵母細胞または除核した哺乳動物卵母細胞と接触する、パラグラフ1〜19のいずれか一つの方法。
21.
活性化の前もしくは5時間後に、またはSCNT胚が1細胞期のときに、作用物質が、SCNT胚と接触する、パラグラフ1〜19のいずれか一つの方法。
22.
活性化の5時間後(5hpa)、もしくは活性化の12時間後(hpa)、もしくは活性化の20時間後(20hpa)に、またはSCNT胚が2細胞期のときに、または5hpaから28hpaの間の任意の時間に、作用物質が、SCNT胚と接触する、パラグラフ1〜19のいずれか一つの方法。
23.
レシピエント哺乳動物卵母細胞またはSCNT胚を作用物質と接触させる段階が、レシピエント哺乳動物卵母細胞またはSCNT胚の核または細胞質に作用物質を注射することを含む、パラグラフ1〜22のいずれか一つの方法。
24.
作用物質が、Kdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼの発現または活性を増加させる、パラグラフ1〜23のいずれか一つの方法。
25.
除核した哺乳動物卵母細胞にドナー哺乳動物細胞の核を注射する前に、作用物質が、ドナー哺乳動物細胞の細胞質またはドナー哺乳動物細胞の核と接触する、パラグラフ1〜24のいずれか一つの方法。
26.
除核した哺乳動物卵母細胞にドナー哺乳動物細胞の核を注射する少なくとも24時間前に、または注射する前の少なくとも1日間、ドナー哺乳動物細胞が接触される、パラグラフ25の方法。
27.
除核した哺乳動物卵母細胞にドナー哺乳動物細胞の核を注射する前に、作用物質が、ドナー哺乳動物細胞と少なくとも24時間、または少なくとも48時間、または少なくとも3日間接触する、パラグラフ25の方法。
28.
作用物質が、H3K9メチルトランスフェラーゼを阻害する、パラグラフ25〜27のいずれか一つの方法。
29.
H3K9メチルトランスフェラーゼが、Suv39h1もしくはSuv39h2、またはSuv39h1およびSuv39h2(Suv39h1/2)である、パラグラフ25〜28のいずれか一つの方法。
30.
ドナー哺乳動物細胞が、最終分化した体細胞である、パラグラフ1〜29のいずれか一つの方法。
31.
ドナー哺乳動物細胞が、胚性幹細胞でも、人工多能性幹(iPS)細胞でも、胎児細胞でも、胚細胞でもない、パラグラフ1〜30のいずれか一つの方法。
32.
ドナー哺乳動物細胞が、卵丘細胞、上皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、角化細胞、造血細胞、メラニン細胞、軟骨細胞、赤血球、マクロファージ、単球、筋細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、胎児細胞、胎盤細胞、および成熟細胞からなる群より選択される、パラグラフ1〜32のいずれか一つの方法。
33.
ドナー哺乳動物細胞が、線維芽細胞または卵丘細胞である、パラグラフ1〜32のいずれか一つの方法。
34.
除核したレシピエント哺乳動物卵母細胞に注射するためにドナー哺乳動物細胞から核を取り出す前に、作用物質が、ドナー哺乳動物細胞の核と接触する、パラグラフ1〜33のいずれか一つの方法。
35.
ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または哺乳動物SCNT胚が、ヒトドナー細胞、レシピエントヒト卵母細胞、またはヒトSCNT胚である、パラグラフ1〜34のいずれか一つの方法。
36.
ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または哺乳動物SCNT胚が、非ヒトドナー細胞、レシピエント非ヒト卵母細胞、または非ヒトSCNT胚である、パラグラフ1〜34のいずれか一つの方法。
37.
ドナー非ヒト哺乳動物細胞、レシピエント非ヒト哺乳動物卵母細胞、または非ヒト哺乳動物SCNT胚が、マウス、ラット、ウサギ、雌ウシ、ウマ、ブタ、ニワトリ、イヌ、ネコ、雌ウシ、マカク、チンパンジーからなる群より選択される、パラグラフ36の方法。
38.
ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または哺乳動物SCNT胚が、飼育動物または商業用動物由来である、パラグラフ36の方法。
39.
飼育動物が、アルパカ、バイソン、ラクダ、ネコ、ウシ、シカ、ゾウ、げっ歯動物、イヌ、ロバ、ガヤル、ヤギ、モルモット、ラマ、ウマ、サル、ラバ、雄ウシ、ブタ、ハト、非ヒト霊長類、ウサギ、トナカイ、ヒツジ、スイギュウ、またはヤクからなる群より選択される労役動物または競技動物または家畜動物または実験動物である、パラグラフ38の方法。
40.
ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または哺乳動物SCNT胚が、伴侶動物またはペット由来である、パラグラフ36の方法。
41.
伴侶動物が、イヌ、ネコ、雌ウシ、ハムスター、爬虫類、ウサギ、げっ歯動物、フェレット、チンチラ、鳥類ペット、モルモット、水生ペット、またはウマからなる群より選択される、パラグラフ41の方法。
42.
ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または哺乳動物SCNT胚が、絶滅に近い哺乳動物種由来である、パラグラフ36の方法。
43.
H3K9me3メチル化を減少させる作用物質の不在下で行われるSCNTと比較して、胚盤胞期へのSCNTの効率における少なくとも50%の増加を招く、パラグラフ1〜42のいずれか一つの方法。
44.
H3K9me3メチル化を減少させる作用物質の不在下で行われるSCNTと比較して、SCNTの効率における50%〜80%の増加を招く、パラグラフ1〜43のいずれか一つの方法。
45.
H3K9me3メチル化を減少させる作用物質の不在下で行われるSCNTと比較して、SCNTの効率における80%よりも大きな増加を招く、パラグラフ1〜44のいずれか一つの方法。
46.
SCNT効率における増加が、胚盤胞期へのSCNT胚の発生における増加である、パラグラフ44〜45のいずれか一つの方法。
47.
SCNT効率における増加が、SCNT胚の着床後発生における増加である、パラグラフ44〜46のいずれか一つの方法。
48.
SCNT効率における増加が、SCNT胚由来胚性幹細胞(ntESC)の派生における増加である、パラグラフ44〜47のいずれか一つの方法。
49.
ドナー哺乳動物細胞が、遺伝的に修飾されたドナー哺乳動物細胞である、パラグラフ1〜48のいずれか一つの方法。
50.
SCNT胚をインビトロ培養して胚盤胞を形成させる段階をさらに含む、パラグラフ2の方法。
51.
SCNT胚が、少なくとも1細胞期SCNT胚である、パラグラフ50の方法。
52.
SCNT胚が、少なくとも2細胞期SCNT胚である、パラグラフ50の方法。
53.
胚盤胞由来の内細胞塊から細胞を単離する段階、および
未分化状態の内細胞塊からの細胞を培養して哺乳動物胚性幹(ES)細胞を形成させる段階
をさらに含む、パラグラフ50の方法。
54.
ドナー哺乳動物細胞、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または哺乳動物SCNT胚のうち任意の1つまたは複数が、凍結および解凍されたものである、パラグラフ1または2の方法。
55.
パラグラフ1〜54のいずれか一つの方法から生成された、哺乳動物SCNT胚由来胚性幹細胞(ntESC)集団。
56.
ntESCが、ヒトntESCである、パラグラフ55の哺乳動物ntESC集団。
57.
ntESCが、遺伝的に修飾されたntESCである、パラグラフ55の哺乳動物ntESC集団。
58.
ntESCが、多能性幹細胞である、パラグラフ55の哺乳動物ntESC集団。
59.
ntESCが、培養培地中に存在する、パラグラフ55の哺乳動物ntESC集団。
60.
培養培地が、ntESCを多能性または全能状態に維持する、パラグラフ59の哺乳動物ntESC集団。
61.
培養培地が、ntESCの凍結または凍結保存に適切な培地である、パラグラフ59の哺乳動物ntESC集団。
62.
凍結または凍結保存される、パラグラフ61の哺乳動物ntESC集団。
63.
パラグラフ1〜54の方法によって生成される、哺乳動物SCNT胚。
64.
遺伝的に修飾されている、パラグラフ63の哺乳動物SCNT胚。
65.
非ヒト哺乳動物SCNT胚である、パラグラフ63の哺乳動物SCNT胚。
66.
レシピエント哺乳動物卵母細胞由来ではないミトコンドリアDNAを含む、パラグラフ65の哺乳動物SCNT胚。
67.
培養培地中に存在する、パラグラフ63の哺乳動物SCNT胚。
68.
培養培地が、哺乳動物SCNTの凍結または凍結保存に適切な培地である、パラグラフ67の哺乳動物SCNT胚。
69.
凍結または凍結保存される、パラグラフ68の哺乳動物SCNT胚。
70.
体細胞核移入(SCNT)胚から非ヒト哺乳動物子孫を生成するための方法であって、
(a)ドナー非ヒト哺乳動物細胞、レシピエント非ヒト哺乳動物卵母細胞、または非ヒト哺乳動物体細胞核移入(SCNT)胚のうち少なくとも1つを、ドナー非ヒト哺乳動物細胞、レシピエント非ヒト哺乳動物卵母細胞、または非ヒト哺乳動物SCNT胚におけるH3K9me3メチル化を減少させる少なくとも1つの作用物質と接触させる段階であって、レシピエント非ヒト哺乳動物卵母細胞が、有核または除核卵母細胞である、段階;
(b)レシピエント非ヒト哺乳動物卵母細胞が有核である場合に、除核する段階;
(c)ドナー非ヒト哺乳動物細胞由来の核を非ヒト哺乳動物除核卵母細胞に移入し、核を除核卵母細胞と融合させ、融合した卵母細胞を活性化させる段階;
(d)非ヒト哺乳動物SCNT胚を形成させるために十分な時間、レシピエント卵母細胞をインキュベートする段階;
(e)非ヒト哺乳動物SCNT胚を非ヒト代理母の輸卵管に体内移植し、非ヒト哺乳動物SCNTの非ヒト哺乳動物子孫への発生を可能にする段階
を含む、方法。
71.
非ヒト哺乳動物SCNT胚が、胚1細胞期、胚2細胞期、胚4細胞期、桑実胚、または胚盤胞胚期に非ヒト代理母に体内移植される、パラグラフ70の方法。
72.
非ヒト代理母が、ドナー細胞またはレシピエント卵母細胞の起源ではない、パラグラフ71の方法。
73.
非ヒト代理母にSCNT胚を満期まで妊娠させる段階をさらに含む、パラグラフ70の方法。
74.
パラグラフ1〜47またはパラグラフ70〜73のいずれか一つの方法によって生成されるSCNT胚から生成される、非ヒト哺乳動物子孫。
75.
哺乳動物SCNT胚、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または胚盤胞のうち少なくとも1つと、
(a)Kdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼの発現もしくは活性を増加させる作用物質;または
(b)H3K9メチルトランスフェラーゼを阻害する作用物質
のうち少なくとも1つと
を含む、組成物。
76.
Kdm4(Jmjd2)ファミリーのヒストンデメチラーゼの発現または活性を増加させる作用物質が、 Kdm4a(Jmjd2a)、Kdm4b(Jmjd2b)、Kdm4c(Jmjd2c)、またはKdm4d(Jmjd2d)のうち少なくとも1つの発現または活性を増加させる、パラグラフ75の組成物。
77.
前記作用物質が、Kdm4d(Jmjd2d)またはKdm4a(Jmjd2a)の発現または活性を増加させる、パラグラフ76の組成物。
78.
前記作用物質が、SEQ ID NO:1〜8に対応する核酸、またはSEQ ID NO:1〜8の対応する配列と比較してSCNTの効率を同程度もしくはより大きな程度まで増加させるその生物学的に活性なフラグメントを含む、パラグラフ77の組成物。
79.
前記作用物質が、SEQ ID NO:1に対応する核酸、またはSEQ ID NO:1の核酸配列と比較してSCNTの効率を同程度もしくはより大きな程度まで増加させるその生物学的に活性なフラグメントを含む、パラグラフ75の組成物。
80.
H3K9メチルトランスフェラーゼの阻害剤が、Suv39h1、Suv39h2、またはSetdb1の少なくとも1つまたは任意の組み合わせを阻害する、パラグラフ75の組成物。
81.
哺乳動物SCNT胚が、1細胞期または2細胞期である、パラグラフ75の組成物。
82.
レシピエント哺乳動物卵母細胞が、除核したレシピエント哺乳動物卵母細胞である、パラグラフ75の組成物。
83.
哺乳動物SCNT胚が、最終分化した体細胞核の注射から生成され、または胚盤胞が、除核した哺乳動物卵母細胞に、最終分化した体細胞核を注射することから生成される哺乳動物SCNT胚から発生する、パラグラフ75の組成物。
84.
哺乳動物SCNT胚、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または胚盤胞が、ヒトSCNT胚、レシピエントヒト卵母細胞、またはヒト胚盤胞である、パラグラフ75〜83のいずれか一つの組成物。
85.
哺乳動物SCNT胚、レシピエント哺乳動物卵母細胞、または胚盤胞が、非ヒト哺乳動物由来である、パラグラフ75〜84のいずれか一つの組成物。
86.
非ヒト哺乳動物が、マウス、ラット、ウサギ、雌ウシ、ウマ、ブタ、ニワトリ、イヌ、ネコ、マカク、チンパンジーからなる群より選択される、パラグラフ85の組成物。
87.
非ヒト哺乳動物が、飼育動物または商業用動物である、パラグラフ85の組成物。
88.
飼育動物または商業用動物が、アルパカ、バイソン、ラクダ、ネコ、ウシ、シカ、ゾウ、げっ歯動物、イヌ、ロバ、ガヤル、ヤギ、モルモット、ラマ、ウマ、サル、ラバ、雄ウシ、ブタ、ハト、非ヒト霊長類、ウサギ、トナカイ、ヒツジ、スイギュウ、またはヤクからなる群より選択される労役動物または競技動物または家畜動物または実験動物である、パラグラフ87の組成物。
89.
非ヒト哺乳動物が、伴侶動物またはペットである、パラグラフ85の組成物。
90.
伴侶動物が、イヌ、ネコ、雌ウシ、ハムスター、爬虫類、ウサギ、げっ歯動物、フェレット、チンチラ、鳥類ペット、モルモット、水生ペット、またはウマからなる群より選択される、パラグラフ89の組成物。
91.
非ヒト哺乳動物が、絶滅に近い哺乳動物種である、パラグラフ85の組成物。
92.
(i)Kdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼの発現または活性を増加させる作用物質および/またはH3K9メチルトランスフェラーゼを阻害する作用物質、ならびに
(ii)哺乳動物卵母細胞
を含む、キット。
93.
哺乳動物卵母細胞が、除核した卵母細胞である、パラグラフ92のキット。
94.
哺乳動物卵母細胞が、非ヒト卵母細胞である、パラグラフ92のキット。
特に定義しない限り、本明細書に使用される全ての技術用語および科学用語は、本明細書が属する技術分野の技術者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書記載の方法および材料と類似または等価の方法および材料を本発明または本発明の試験に使用することができるものの、適切な方法および材料が下に記載されている。これらの材料、方法および実施例は、例証に過ぎず、限定することを意図しない。
本明細書において言及される全ての刊行物、特許、特許公報、特許出願および他の文書は、その全体として参照により組み入れられる。
上に要約するように、本発明は、初期胚の単一割球から、胚を必ずしも破壊せずに、ES細胞、ES細胞株、および分化した細胞型を派生させるための方法を提供する。該方法の様々な特徴が、下に詳細に記載されている。上および下に詳述される本発明の様々な局面および態様の組み合わせの全てが、考察されている。
本明細書に紹介される実施例は、SCNT胚および/またはドナー核における、(i)Kdm4ファミリーのヒストンデメチラーゼの発現もしくは活性を増加させること、および/または(ii)メチルトランスフェラーゼSuv39h1もしくはSuv39h2もしくはSetdb1の任意の1つを阻害することのいずれかによって、H3K9me3を減少または低下させることによって、SCNTの効率を増加させるための方法および組成物に関する。本出願にわたり、様々な刊行物が参照される。刊行物および該刊行物の中でその全体で引用される参考文献の全ての開示は、本発明が属する現況技術をより十分に説明するために、本明細書によって参照により本出願に組み入れられる。以下の実施例は、本発明への特許請求の範囲を限定することを意図するのでなく、むしろ、特定の態様の例示を意図する。当業者に思い浮かぶ、例示された方法における任意の変形は、本発明の範囲内に入ることが意図される。
実験手順
動物
C57BL/6J雌性マウスをDBA/2J雄と交配して、B6D2F1/J(BDF1)マウスを生成した。BDF1およびCD-1(ICR)成体雌を、それぞれレシピエント卵母細胞の収集および胚移入レシピエントのために使用した。BDF1マウスを、発生分析用のドナー体細胞の収集のために使用した。(C57BL/6×CAST/EiJ)F1マウスを、RNA-seq用のドナー細胞の収集のために使用した。GOF18デルタ-PE(Jackson Laboratory, 004654:Tg(Pou5f1-EGFP)2Mnn、C57BL/6Jバックグラウンド)を有するE13.5胚をマウス胚性線維芽細胞(MEF)の単離のために使用した。全ての動物実験は、Harvard Medical Schoolの所内動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認された。
ドナー細胞の調製
妊馬血清性ゴナドトロピン(PMSG; Harbor)7.5IUおよびヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG; Millipore)7.5IUを注射することによる過排卵を経て成体BDF1雌から卵丘細胞を収集した。hCG注射の15時間後に、卵丘-卵母細胞複合体(COC)を輸卵管から収集し、300U/mlウシ精巣ヒアルロニダーゼ(Calbiochem #385931)を含有するHepes緩衝カリウムシンプレックス最適化培地(KSOM)で短時間処置して、解離した卵丘細胞を得た。記載されたように(Matoba et al., 2011)、セルトリ細胞を3〜5日齢BDF1雄性マウスの精巣から収集した。精巣の塊を、0.1mg/mlコラゲナーゼ(Life Technologies #17104-019)を含有するPBS中に入れ、37℃で30分間インキュベートし、続いて、1mM EDTAを有する0.25%トリプシン(Life Technologies #25200-056)を用いて室温で5分処置した。3mg/mlウシ血清アルブミンを含有するPBSで4回洗浄後、解離した細胞をHepes-KSOM培地中で懸濁した。
初代マウス胚性線維芽(MEF)細胞を13.5dpcのGOF18デルタ-PEマウス胚から樹立した。頭部および全ての器官の除去後、残りの体から細かく切り刻んだ組織を、1mM EDTAを有する0.25%トリプシン 500μl中に入れ、37℃で10分間解離させた。10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies #15140-022)を含有する等量のDMEM(Life Technologies # 11995-073)で細胞懸濁物を希釈し、ピペットで20回吸引および吐出した。細胞懸濁物を新鮮培地で希釈し、100mmディッシュ上に蒔き、37℃で培養した。2日後に、MEF細胞を収集し、凍結した。MEF細胞の凍結貯蔵物を解凍し、1回継代後に実験のために使用した。
siRNAのトランスフェクションによるMEF細胞のヒストンメチルトランスフェラーゼのノックダウン
マウスSuv39h1(Life Technologies #s74607)、Suv39h2(Life Technologies #s82300)およびSetdb1(Life Technologies #s96549)に対するsiRNAを、50μM 貯蔵液となるようにヌクレアーゼ不含水で希釈した。Lipofectamine RNAi Max(Life technologies #35050-061)を用いて、製造業者のプロトコールに従い、siRNAをMEFに導入した。簡潔には、MEF細胞1×105個を24ウェルプレート上に蒔いた(0日目;図5A参照)。24時間後に、Lipofectamine RNAi Maxを使用して5pM siRNAをMEF細胞にトランスフェクトした(1日目)。最初のトランスフェクションの24時間後に、培地を新鮮M293T培地[10%FBS、0.1mM可欠アミノ酸(Life technologies #11140-050)、2mM GlutaMAX(Life technologies #35050-079)、50U/ml ペニシリン-ストレプトマイシンおよび0.1mM 2-メルカプトエタノール(Life technologies #21985-023)を補充したDMEM]に交換した(2日目)。3日目に、MEF細胞を細胞1×105個の密度で24ウェルプレート上に再播種した。次に、トランスフェクションを上記のように1回繰り返した(4日目)。2回目のトランスフェクションの48時間後に(6日目)、MEF細胞を免疫染色、RT-qPCRまたはSCNTのために使用した。
SCNTおよびmRNA注射
以前に記載されたように、体細胞核移入を実施した(Matoba et al., 2011)。簡潔には、300U/ml ウシ精巣ヒアルロニダーゼ(Calbiochem)を用いた短時間処理により、過排卵成BDF1雌からレシピエントMII卵母細胞を収集した。単離されたMII卵母細胞を、7.5μg/ml サイトカラシンB(Calbiochem #250233)を含有するHepes緩衝KSOM培地中で除核した。圧電駆動マイクロマニピュレーター(Primetech #PMM-150FU)を使用して、ドナー卵丘細胞またはセルトリ細胞の核を除核卵母細胞中に注射した。不活性化センダイウイルスエンベロープ(HVJ-E; Ishihara Sangyo, Japan)によってMEF細胞を除核卵母細胞と融合した。KSOM中で1時間インキュベーション後に、再構築したSCNT卵母細胞を、5μg/ml サイトカラシンBを含有するCa不含KSOM中で1時間インキュベートすることによって活性化し、サイトカラシンBを有するKSOM中でさらに4時間培養した。活性化SCNT胚を、SrCl2処理の開始から5時間後(活性化後時間、hpa)に洗浄し、KSOM中で、5%CO2の加湿雰囲気中にて37.8℃で培養した。いくつかの実験では、圧電駆動マイクロマニピュレーター(Primetech)を使用することによって、5〜6hpaにSCNT胚に水(対照)、1800ng/μl 野生型または変異型(H189A)Kdm4d mRNA約10plを注射した。一部の実験では、培養培地にトリコスタチンA(TSA)を15nMになるよう活性化の開始から合計8時間添加した。着床前発生率は、スチューデントのT検定によって統計解析した。ドナー細胞の調製、胚移入、mRNA調製および他の手順に関するさらなる詳細は、増補の実験手順に含まれる。
Kdm4d mRNAのインビトロ転写
完全長Kdm4d mRNAのインビトロ転写用のテンプレートプラスミドを製造するために、マウスKdm4dのオープンリーディングフレームを、ES細胞から得られたcDNAからPCRによって増幅し、In-Fusionキット(Clonetech #638909)を使用することによってpcDNA3.1-ポリ(A)83プラスミド(Inoue & Zhang, 2014)中にクローニングした。PrimeSTAR変異誘発基本キット(TAKARA # R045A)を使用して触媒欠損変異体Kdm4d(H188A)を作製した。直線化されたテンプレートプラスミドから、mMESSAGE mMACHINE T7 Ultra Kit(Life technologies # AM1345)を使用するインビトロ転写によって、製造業者の説明書に従ってmRNAを合成した。合成したmRNAを塩化リチウムで沈殿させ、ヌクレアーゼ不含水に溶解させた。NanoDrop ND-1000分光光度計(NanoDrop Technologies)によって濃度を測定した後、使用まで一定分量を-80℃で保存した。
siRNAのトランスフェクションによるMEF細胞中のヒストンメチルトランスフェラーゼのノックダウン
マウスSuv39h1(Life Technologies #s74607)、Suv39h2(Life Technologies #s82300)およびSetdb1(Life Technologies #s96549)に対するsiRNAを、50μM貯蔵液となるようにヌクレアーゼ不含水で希釈した。Lipofectamine RNAi Max(Life technologies #35050-061)を用いて、製造業者のプロトコールに従ってsiRNAをMEFに導入した。簡潔には、MEF細胞1×105個を24ウェルプレート上に蒔いた(0日目;図5A参照)。24時間後に、Lipofectamine RNAi Maxを使用して5pM siRNAをMEF細胞中にトランスフェクトした(1日目)。最初のトランスフェクションの24時間後に、培地を新鮮M293T培地[10%FBS、0.1mM 可欠アミノ酸(Life technologies #11140-050)、2mM GlutaMAX(Life technologies #35050-079)、50U/ml ペニシリン-ストレプトマイシンおよび0.1mM 2-メルカプトエタノール(Life technologies #21985-023)を補充したDMEM]に交換した(2日目)。3日目に、MEF細胞を1×105個の密度で24ウェルプレート上に再播種した。次に、トランスフェクションを上記のように1回繰り返した(4日目)。2回目のトランスフェクションの48時間後に(6日目)、免疫染色、RT-qPCRまたはSCNTのためにMEF細胞を使用した。
逆転写およびリアルタイムPCR
RNeasyミニキット(Qiagen)を製造業者の説明書に従って使用して、MEF細胞から総RNAを精製した。オリゴ-dTプライマーおよびImProm-II Reverse Transcription Syetem(Promega)を用いてcDNAを合成した。Ssofast Evagreen Supermix(Bio-Rad)を使用するCFX384 Real-Time PCR検出システム(Bio-Rad)でリアルタイムPCRを行った。比較Ct法を使用して相対遺伝子発現レベルを分析し、CFX Managerソフトウェア(Bio-Rad)を使用してGapdhに対して標準化した。結果をスチューデントのT検定によって統計解析した。以下のプライマーを使用した:
。
胚移入
SCNTまたはインビトロ受精によって作製した2細胞期胚を偽妊娠(E0.5)ICR雌の輸卵管に移入した。分娩日(E19.5)に、帝王切開によって子を回収し、泌乳ICR雌により授乳させた。
ntESCの樹立
酸性タイロード処理により胚盤胞を裸化し、マイトマイシン処理MEFフィーダー細胞上で、5%FBS、10%KnockOut血清代替物(Life Technologies #10828-028)、0.1mM 可欠アミノ酸、2mM GlutaMAX、50U/ml ペニシリン-ストレプトマイシン、0.1mM 2-メルカプトエタノールおよび2000U 白血病抑制因子(LIF, Millipore #ESG1107)を補充したDMEM中に入れて、37℃および5%CO2で培養した。4〜5日後に、付着した胚からの外植片を0.25%トリプシンで解離させ、全てを新しいフィーダー細胞上に継代した。翌日、培地を、N2B27-LIF培地[0.1mM 可欠アミノ酸、2mM GlutaMAX、50U/ml ペニシリン-ストレプトマイシン、0.1mM 2-メルカプトエタノール、0.5×N2サプリメント(Life technologies #17502-048)、0.5×B27サプリメント(Life technologies #17504-044)、3μM CHIR99021(STEMGENT #04-0004)、0.5μM PD0325901(STEMGENT #04-0006)および1000U LIFを補充したDMEM/F12(Life Technologies #10565-042)]により置換した。5日後に、増大した細胞を樹立ntESCとして再播種した。
免疫染色
胚またはMEF細胞を、3.7%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて室温で20分間固定した。10mg/ml BSAを含有するPBS(PBS/BSA)で洗浄後、固定された胚または細胞を0.5%トリトン-X100と共に15分間インキュベートすることによって透過処理した。PBS/BSA中に入れて室温で1時間ブロッキング後、それらを最初の抗体の混合物中に入れ、4℃で一晩インキュベートした。抗体には、マウス抗H3K9me3(1/500: Abcam #ab71604)、ウサギ抗H3K9me3(1/500: Millipore #07-442)、ウサギ抗H3K27me3(1/500: Millipore #07-449)、ヤギ抗Oct4(1/500: Santa Cruz #SC8628)、およびマウス抗Cdx2(1/100: BioGenex #AM392-5M)が含まれる。PBS/BSAで3回洗浄後、胚または細胞を2次抗体と共に室温で1時間インキュベートした。2次抗体には、フルオレセインイソチオシアネート-コンジュゲーション型ロバ抗マウスIgG(1/400, Jackson Immuno-Research)、Alexa Flour 568ロバ抗ウサギIgG(1/400, Life technologies)、および/またはAlexa Flour 647ロバ抗ヤギIgG(1/400, Life technologies)が含まれる。最終的に、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を有するVectashield(Vector Laboratories #H-1200)を用いてそれらを封入した。レーザー走査共焦点顕微鏡(Zeiss LSM510)およびEM-CCDカメラ(Hamamatsu ImagEM)を使用して蛍光シグナルを観察した。
RNA配列分析
胚を直接溶解し、SMARTer Ultra Low Input RNA cDNA調製キット(Clontech)を使用するcDNA合成のために使用した。増幅後、Covaris超音波処理器(Covaris)を使用してcDNA試料をフラグメント化した。Illumina用のNEBNext Ultra DNA Library Prep Kitを使用して、製造業者(New England Biolabs)の説明書に従って、フラグメント化されたDNAを用いて配列ライブラリーを製造した。単一端50bp配列決定を、HiSeq 2500シーケンサー(Illumina)で行った。NovoalignV3.02.00を用いてシーケンシングのリードをマウスゲノム(mm9)に対してマッピングした。全てのプログラムをデフォルト設定で行った(特に規定しない限り)。続いて、一意的にマッピングされるリード(総リードの約70%)をCufflinks v2.0.2を用いて集合させ、参照アノテーション(UCSC遺伝子モデル)によってガイドされる転写物を構築した。各遺伝子の発現レベルを、標準化FPKM(エキソン1キロ塩基あたり、マッピングされるフラグメント100万個あたりのフラグメント)を用いて定量した。有意に異なる転写物の機能的アノテーションおよびエンリッチメント解析をDAVIDで行った。統計解析をRで実行した(ワールドワイドウェブwww.r-project.org/)。独立した2群Wilcoxon順位和検定を使用して、Rでのwilcox.test関数を使用して分布を比較した。デフォルトのパラメーターを用いたcor関数を使用して、Pearsonのr係数を計算した。Rでのhearmap.2関数(gplotsパッケージ)を使用して、異なる試料での全般的遺伝子発現パターンの階層的クラスタリング分析を実施した。
リプログラミング耐性領域の特定
スライドウインドウ(サイズ100kb、ステップサイズ20kb)を使用して、1細胞期胚および2細胞期胚のゲノムワイドな発現レベルを評価した。各ウインドウについて、標準化RPM(一意的にマッピングされるリード100万個あたりのリード)を用いて発現レベルを定量した。ストリンジェントな基準(FC>5、Fisherの正確検定p値<0.01、2細胞期IVF胚においてRPM>10)で、1細胞期IVF胚と比較して2細胞期IVF胚で有意に活性化された領域を特定し、オーバーラップする領域をマージした。これらの活性化領域を、SCNTおよびIVF 2細胞期胚におけるそれらの発現差に基づき3群に分類した。
公表されたDNAiおよびChIP-Seqデータセットの解析
図2およびS2においてヒストン修飾およびDNaseI過感受性エンリッチメント解析を行うために、本発明者らは、以下の公表されたChIP-seqおよびDNaseI-seqデータセットを使用した:MEF細胞でのH3K9me3およびH3K96me3(Pedersen et al., 2014);MEF細胞でのH3K4me2、H3K27me3(Chang et al., 2014);MEF細胞でのH3K4me1およびH3K27ac(ENCODE/LICRプロジェクト);CH12、赤芽球、巨核(ENCODE/PSUプロジェクト)および全脳(ENCODE/LICRプロジェクト)でのH3K9me3;NIH3T3、CH12、MEL、Treg、416Bおよび全脳(ENCODE/UWプロジェクト)でのDNaseI-seq。標準化FPKMを用いてChIP-seq強度を定量した。シーケンシングリードによりゲノム位置に関するカバー率を決定し、UCSCゲノムブラウザーでのカスタムトラックとして視覚化した。
実施例1
2細胞期SCNT胚における異常なZGA
インビトロ受精(IVF)およびSCNTを経て派生するマウス胚の間の最も初期の転写差を特定するために、本発明者らは、1細胞期(活性化の12時間後:hpa)および2細胞後期(28hpa)のプール胚(25〜40個/試料)を使用してRNA-seq実験を行った(図1A)。各試料について3000万個よりも多い一意的にマッピングされるリードを得、各試料の2つの生物学的反復は、高度に再現可能であった(図8Aおよび8B)。1細胞期トランスクリプトームの分析は、SCNT胚およびIVF胚がほぼ同一のトランスクリプトームを特徴とすることを明らかにした(R=0.99;図1B)。具体的には、検出された5517種の遺伝子(少なくとも1つの試料においてFPKM>5)の中で、106種の遺伝子だけがSCNT胚とIVF胚との間で3倍よりも大きな差を示した(図1B)。これは、ZGAが主としてマウス胚での最初の分割後に開始し(Schultz, 2002)、IVFまたはSCNTにかかわらず、1細胞期胚に存在する大部分の転写物が母方に保存される転写物であるという事実と一致する。したがって、本発明者らは、主要なZGAがマウス胚において明らかになる2細胞後期に本発明者らの分析の焦点を合わせた。
2細胞期でのIVF胚とSCNT胚との間のトランスクリプトーム比較は、3倍よりも大きな発現差を示した1212種の遺伝子を特定した(図1C、少なくとも1つの試料においてFPKM>5)。ドナー卵丘細胞、2細胞期IVF胚および2細胞期SCNT胚のトランスクリプトームの対比較は、3775種の差次的に発現される遺伝子を特定し[変化倍数(FC)>5、FPKM>5]、それらの遺伝子は、教師なし階層的クラスター分析により5群に分類することができる(図1D)。これらの3775種の差次的に発現される遺伝子のうち、1549種は、SCNT胚およびIVF胚の両方で活性化された(群1および2)。遺伝子オントロジー(GO)分析は、細胞周期に関係する生物学的過程でこれらの遺伝子が有意に濃縮されていたことを明らかにしたが(図1E)、これは、SCNT胚が適正な細胞周期進行のためにIVF胚と同じように転写的に準備されることを実証している。ドナー卵丘細胞に高発現される遺伝子の一部が2細胞期SCNT胚で依然として発現されているにもかかわらず(372種の遺伝子;群5)、IVF胚での遺伝子に類似して、これらの遺伝子の大多数は、SCNT後にサイレンシングされた(1553種の遺伝子;群4)。群4の遺伝子は、酸化/還元および電子伝達鎖などの細胞代謝に関連する生物学的過程で有意に濃縮されていたが、これは、卵丘細胞特異的代謝過程がSCNT後に迅速に終止することを実証している。興味深いことに、301種の遺伝子の群は、IVF胚と比較してSCNT胚では適正に活性化されなかった(群3)。GO分析は、これらの遺伝子が転写またはmRNAプロセシングにおいて濃縮されたことを明らかにしたが、これは、SCNT胚における発生的に重要な調節因子の活性化が欠損している可能性を示唆している(図1E)。2細胞期胚での接合体遺伝子の適正な活性化が胚発生に重要と考えられることからして、本発明者らは、この群の遺伝子および関連ゲノム遺伝子座に本発明者らの分析の焦点を合わせた。
実施例2
2細胞期SCNT胚におけるリプログラミング耐性領域(RRR)の特定
タンパク質コード遺伝子に加えて、以前の研究は、LTRクラスIIIレトロトランスポゾンおよび主要サテライト反復などの非遺伝子反復エレメントが、特に2細胞期のマウス着床前胚に高発現されることを明らかにした(Evsikov et al., 2004; Peaston et al., 2004; Probst et al., 2010)。IVF 2細胞期胚とSCNT 2細胞期胚との間のトランスクリプトームの差を包括的に特徴付けるために、本発明者らは、検出可能な転写物に関連する全てのゲノム領域を特定するためにスライドウインドウ戦略を適用した。最初に、本発明者らは、1細胞期IVF胚と比較して2細胞期IVF胚において有意に活性化された(Fisherの正確検定p値<0.01)、100〜800kbの範囲の811種のゲノム領域を特定した[図2A、FC>5、IVF 2細胞期胚におけるRPM(一意的にマッピングされるリード100万個あたりのリード)>10]。811種のゲノム領域のうち、342種の領域が、IVF胚に類似したレベルでSCNT胚において活性化されたが(IVF 2細胞期胚をSCNT 2細胞期胚と比較してFC≦2)、これらの領域を、完全リプログラミング領域(FRR)と名付けた。本発明者らは、また、IVF胚と比較してSCNT胚において部分的に活性化された(FC>2およびFC≦5)「部分的リプログラミング領域」(PRR)と名付けられた247種の領域を特定した(図2A)。興味深いことに、本明細書において「リプログラミング耐性領域」(RRR)と呼ばれる残りの222種の領域は、SCNT胚において活性化できなかった(FC>5、図2A)。特に、RRR内で産出される転写物は、13番染色体上の代表的な領域に例示されるように、主として注釈を付けられない(図9A)。実際にFRRおよびPRRを比較して、RRRは、相対的に遺伝子に乏しい領域である(図9B)。しかし、RRRは、LINEおよびLTRなどの特異的リピート配列が濃縮されているが、SINEを枯渇している(図9C)。このように、比較トランスクリプトーム解析は、本発明者らに、SCNTによって作製される2細胞期胚での転写活性化に不応性の222種のRRRを特定させた。
体細胞においてRRRはH3K9me3が濃縮されている
RRRが2細胞期SCNT胚における転写活性化に不応性であるという事実は、RRRが、SCNT介在性リプログラミングについてのバリアとして役立つ特定のエピジェネティック修飾を有し得ることを示している。SCNT胚の発育不全が、マウス胚性線維芽(MEF)細胞を含めた異なるドナー体細胞型で観察されていることを考え(Ono et al., 2001)、本発明者らは、SCNT介在性リプログラミングについてのそのようなエピジェネティックなバリアが、異なる体細胞型に共通であるかどうかを評価した。MEF細胞は、包括的ヒストン修飾データベースのデータセットを有する数少ない体細胞型の1つであるので(Bernstein et al., 2012; Chang et al., 2014; Pedersen et al., 2014)、本発明者らは、6つの主要なヒストン修飾のいずれかがRRRで特異的に濃縮されているかどうかを評価した。本発明者らは、分析される任意の他の修飾でなくH3K9me3が、RRRで特異的に濃縮されたが、一方で、FRRまたはPRRにおいていかなるヒストン修飾の明白な濃縮も観察されなかったことを発見した(図2B)。実際、7番染色体上の代表的な領域の慎重な調査から、2細胞期SCNT胚で活性化できなかったRRRは、明らかにH3K9me3マークが濃縮されており、H3K9me3濃縮領域外側の領域は、2細胞期SCNT胚で適正に活性化されたことが示された(図2C)。RRRでのH3K9me3の類似の濃縮が、ENCODEプロジェクトからのH3K9me3 ChIP-seqデータセットの分析後に(図2Dおよび9D)、4つの他の体細胞型または組織型(CH12、赤芽球、巨核球および全脳)においても観察されたので(Bernstein et al., 2012)、この観察は、MEF細胞に独特ではない。したがって、本発明者らは、体細胞においてRRRにH3K9me3が濃縮されていると結論する。
以前の研究は、また、H3K9me3がいわゆるヘテロクロマチン領域の緊密にパッケージされた大型ドメインで一般的に濃縮されていることを示した(Lachner et al., 2001)。2細胞期SCNT胚においてRRRが活性化されないことに対する1つの可能性のある説明は、そのクロマチン不可触性である。この可能性を検定するために、本発明者らは、ENCODEプロジェクトから得られたデータを使用して6つの異なる体細胞型のDNaseI過感受性を分析した。注目すべきことには、本発明者らは、分析した全ての体細胞型または組織型でのFRRおよびPRRと比較して、RRRがDNaseIに対して有意に低感受性であったことを見出した。(図2Eおよび9E)。まとめると、これらの結果は、RRRが一般的に体細胞型に存在するヘテロクロマチンの特徴を有することを示している。
実施例3
Kdm4dによるH3K9me3の除去はSCNT胚における転写リプログラミングを回復する
RRRとH3K9me3濃縮との間の相関関係を立証したので、本発明者らは、次に、H3K9me3の除去がSCNT胚におけるRRRの転写リプログラミングを促進できるかどうかに取り組もうとした。この目的を達成するために、本発明者らは、H3K9me3特異的ヒストンデメチラーゼKdm4dをコードするmRNAを合成し(Krishnan and Trievel, 2013)、5hpaに該mRNAをSCNT胚に注射した(図3A)。免疫染色は、触媒欠損変異型ではなく、野生型Kdm4d mRNAの注射が、SCNT胚におけるH3K9me3レベルを大きく低下させたことを明らかにした(図3B)。
Kdm4d介在性H3K9me3除去が2細胞SCNT胚の転写アウトカムに及ぼす効果を調査するために、本発明者らは、SCNTにおいて活性化できなかった222種のRRRに焦点を合わすRNA-seq分析を行った。対照SCNT胚と比較して、83%(184/222)のRRRが、触媒欠損変異型ではなく、野生型Kdm4dの注射によって活性化された(図3C、FC>2)。この結果は、H3K9me3の消去がRRR内の転写活性化を促進することを示す。図3Dに例示されるように、Zscan4遺伝子クラスターを含有する7番染色体上のRRRは、触媒欠損変異体ではなく、野生型Kdm4dの注射によって顕著に活性化された。特に、タンパク質コード遺伝子だけでなく、RRRからの注釈づけされていない転写物の大部分も、Kdm4d mRNAの注射を受けて活性化された(図10Aおよび10B)。興味深いことに、階層的クラスタリングトランスクリプトーム解析は、野生型Kdm4dを注射されたSCNT胚のトランスクリプトームが、対照SCNT胚または変異型Kdm4dを注射された胚よりもIVF胚のトランスクリプトームに類似したことを明らかにした(図3E)。実際に、SCNT 2細胞期胚とIVF 2細胞期胚との間で差次的に発現される遺伝子(FC>3)の総数は、Kdm4d注射によって1212種から475種に減少し(図3Fおよび10C)、これは、移入された体細胞核からのH3K9me3除去が、RRRの転写活性化を回復するだけでなく、SCNT胚の全般的トランスクリプトームも回復することを示唆している。
Kdm4d mRNAの注射はSCNT胚の発生を大きく改善する
Kdm4d注射後のSCNT胚の転写回復の生物学的結果を調査するために、本発明者らは、最初に、卵丘細胞をドナー細胞として使用し、Kdm4d mRNAを注射されたSCNT胚の発生能を分析した。対照SCNT胚において、第一分割後に発生率は減少し始め、分割した胚の26.0%だけが、96時間培養後に胚盤胞期まで成功裏に発生したが(図4Aおよび4B、ならびに表S1)、これは、以前の研究に一致する知見である(Kishigami et al., 2006)。著しくは、野生型Kdm4d mRNAを注射されたSCNT胚は、2から4細胞期および4細胞期から桑実胚期の移行の間にめったに停止せず、胚盤胞期まで高い効率で発生する(88.6%;図4Aおよび4B、ならびに表3)。対照的に、触媒欠損変異型Kdm4d mRNAの注射は、SCNT胚の発生率に有意な影響を有さず、Kdm4d注射がSCNT胚発生に及ぼす改善がその酵素活性に依存することを示している。RRRにおけるH3K9me3濃縮が、異なる体細胞型における一般的な現象に見えることを考えれば、本発明者らは、SCNT胚発生に及ぼすKdm4dのプラス効果を他のドナー体細胞型に拡張できるはずだと予測した。実際、Kdm4d mRNAの注射は、セルトリ細胞またはC57BL/6バックグラウンドのMEF細胞がドナー細胞として使用されたときに、SCNT胚の発生効率も有意に改善した(図4Aおよび4B、表3)。まとめると、これらの結果は、Kdm4d mRNAの注射によるH3K9me3の除去が、ドナー体細胞型にかかわらずSCNT胚の着床前発生を有意に改善できることを実証している。
(表3)Kdm4d mRNAを注射されたSCNT胚の着床前発生(図4および6に関連)。
注射されたmRNAの濃度は1800ng/μlであった。siRNAの濃度はそれぞれ5pMであった。# トランスフェクション試薬のみで処置。
* 水を注射された対照と比較してP<0.01。
以前の研究は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を用いた一時的処置もSCNT胚の発生効率を有意に改善できることを実証している(Kishigami et al., 2006; Van Thuan et al., 2009)。HDAC阻害剤とKdm4dとの間の可能な関係を探究するために、本発明者らは、HDAC阻害剤、TSA、およびKdm4dを用いたSCNT胚のコンビナトリアル処置を行った。TSA単独の処置は、以前の報告と同様に(Kishigami et al., 2006)、胚盤胞率を26.0%から53.8%に改善した(図4Cおよび表3)。TSAと組み合わせたKdm4d mRNAの注射は、胚盤胞率を87.5%にさらに増加させたが、これは、Kdm4d注射単独と統計的に類似している(88.6%;図4Cおよび表3)。この結果は、TSA処置およびKdm4d mRNAの注射が、少なくとも着床前期にSCNTのリプログラミングに相乗効果を有さないこと、およびTSA処置がKdm4dと類似の経路によりその効果を発揮し得ることを実証している。
本発明者らは、また、胚盤胞からのntESCの派生効率を調査した。ES細胞派生培地を用いて対照SCNT胚盤胞をフィーダーMEF細胞上で培養したとき、胚盤胞の71%がフィーダー細胞に付着し、胚盤胞の50%が最終的には樹立したntESC株を生じた(図4Dおよび表4)。Kdm4d mRNAの注射、TSA処置、またはKdm4d/TSAの組み合わせによって産出した胚盤胞は、対照と比較して、付着効率またはntESCの派生にいかなる有意差も示さなかった(図4Dおよび表4)。重要なことには、SCNTのために使用されたMII卵母細胞の総数に基づき計算したとき、Kdm4d注射によって効率が大きく改善した(図4Eおよび表4)。
(表4)Kdm4dを注射されたSCNT胚のインビボ発生(図4に関連)
注射されたmRNAの濃度は1800ng/μlであった。
Kdm4dが着床前発生に及ぼす正の効果が着床後発生を通じて維持できるかどうかを調査するために、本発明者らは、卵丘細胞から作製した2細胞期SCNT胚を偽妊娠雌マウスの輸卵管に移入した。E19.5(満期日)での帝王切開は、着床部位によって証明される着床率が、対照SCNT胚(21.2%、図4F)よりもKdm4d注射SCNT胚の方が3倍高かった(63.0%)ことを明らかにした。重要なことには、移入後のKdm4d注射2細胞期SCNT胚の7.6%(9/119)が満期まで発生したが、一方、同じ条件下で移入後の対照胚104個のどれも満期まで発生しなかった(図4Gおよび表5)。セルトリ細胞由来SCNT胚を使用する類似の実験も、Kdm4dが着床率(21%対64%)および満期までの発生率(1%対8.7%)に及ぼすプラス効果を実証した(図4F、Gおよび表S3)。さらに、Kdm4d注射により産出されたSCNT子は、成体まで正常に成長し、自然交配により子孫を産出した(図4H)。これらの結果は、体細胞におけるH3K9me3が、卵母細胞介在性ゲノムリプログラミングについてのバリアであり、SCNT胚発生のごく初期でのKdm4d注射によるH3K9me3除去が、マウス生殖クローニングの全体効率を有意に改善できることを実証している。
(表5)Kdm4dを注射されたSCNT胚のインビボ発生(図4に関連)
注射されたKdm-4d mRNA濃度は1800ng/μlであった。N/A、該当なし。ET、胚移入。
# IVF胚がBDF1精子および卵母細胞から生成された。
実施例4
SCNT胚の発生表現型不良の原因となる遺伝子の候補
本発明者らは、次に、H3K9me3によって抑制される遺伝子のどれがSCNT胚の発生表現型不良の原因となるかを評価した。Kdm4dの過剰発現が胚盤胞期に達しつつあるSCNT胚の率を大きく増加させることを考えれば、原因遺伝子は、野生型Kdm4d注射SCNT胚において抑制解除されていなければならない。2細胞期SCNT胚において活性化できなかった遺伝子(図1Dの群3の遺伝子)、および変異型Kdm4d注射ではなく、野生型Kdm4d注射2細胞期SCNT胚において抑制解除される遺伝子の分析により、本発明者らは49種の共通遺伝子を特定した(図5Aおよび5B、FC>5)。GO分析は、この群の遺伝子に転写およびRNA代謝過程に関与する遺伝子が濃縮されていることを示した(図5A)。着床前発生における49種の遺伝子の大部分の機能は未知であるものの、2細胞期特異的Zscan4ファミリーのメンバーであるZscan4dは、着床前発生に重要であることが示されている(Falco et al., 2007)。したがって、本発明者らは、外因性Zscan4d mRNAの補充が、SCNT胚の発生効率を高めることができるかどうかを調査した。
本発明者らは、内因性Zscan4dの発現パターンを追跡しながら、完全長Zscan4dをコードするmRNAを2細胞初期(20hpa:図5C)のSCNT胚にマイクロインジェクトした。しかし、Zscan4d mRNAの注射は、濃度にかかわらずSCNT胚の発生表現型不良を回復できなかった(図5Dおよび表6)。したがって、2細胞期SCNT胚におけるZscan4dの活性化欠損は、単独でSCNT胚の着床前発生不良の原因である可能性は低い。むしろ、非遺伝子反復エレメントから得られた転写物を含む複雑な遺伝子ネットワーク(図11)が、SCNT胚の発生欠損の基礎をなす可能性がある。
(表6)Zscan4d mRNAを注射されたSCNT胚の着床前発生(図5に関連)。卵丘細胞型、BDF1バックグラウンド、雌細胞生ドナー細胞であったドナー細胞に対して全ての実験を行った。
実施例5
Suv39h1/2は体細胞におけるH3K9me3バリアの樹立の原因である
H3K9me3がSCNT介在性リプログラミングのエピジェネティックなバリアであると実証したので、本発明者らは、次に、体細胞ゲノムにおけるRRR内へのH3K9me3沈着の原因となるヒストンメチルトランスフェラーゼを特定しようとした。以前の研究は、少なくとも3つのヒストンリジンメチルトランスフェラーゼ(KMT)であるSuv39h1、Suv39h2およびSetdb1が、哺乳動物細胞におけるH3K9me3産出を触媒することができると報告している(Matsui et al., 2010; Peters et al., 2001)。最初に、本発明者らは、Suv39h1、Suv39h2およびSetdb1を標的化する低分子干渉RNA(siRNA)の混合物をトランスフェクトすることによって、MEF細胞から3つのH3K9me3メチルトランスフェラーゼを枯渇させた(図6A)。RT-qPCR分析は、トランスフェクションの48時間後に80〜60%のノックダウン効率が達成されたことを確認した(図12A〜12B)。免疫染色は、これらのsiRNAのトランスフェクション(6日の細胞培養の間に2回)がMEF細胞におけるH3K9me3レベルを大きく低下させることができたことを示した(図6Aおよび6B)が、これは、他の未特定の酵素でなく、3つのH3K9me3メチルトランスフェラーゼを体細胞におけるH3K9me3沈着の責任因子として実証するものである。ドナーとしてトリプルKD MEF細胞を使用して、本発明者らは、SCNT胚を作製し、それらの着床前発生を調査した。本発明者らは、対照SCNT胚のわずか6.7%が96時間培養後に胚盤胞期まで発生した(図6C、6D、および表3)が、一方でトリプルノックダウンMEF由来胚の65.6%が胚盤胞期まで発生したことを発見した(図6C、6Dおよび表3)。この結果は、体細胞H3K9me3がSCNT介在性リプログラミングのエピジェネティックなバリアであることを確認するばかりでなく、これらの3つの酵素がこのエピジェネティックなバリアを産出する原因となることも実証している。
本発明者らは、次に、3つのヒストンメチルトランスフェラーゼのどれが、H3K9me3リプログラミングバリアの原因となるかを、MEF細胞からそれらを個別に枯渇させることによって調査した。Suv39h1およびSuv39h2は、H3K9トリメチル化に冗長な機能を有するので(Peters et al., 2001)、本発明者らは、両方の遺伝子を同時にノックダウンした。ノックダウンの6日目の免疫染色は、Suv39のKDが、特に動原体周囲領域での全般的H3K9me3レベルを低下させ、一方でSetdb1のノックダウンがH3K9me3レベルに全般的な変化を引き起こさなかった(図6B)ことを実証したが、これは、以前の報告に一致する知見である(Matsui et al., 2010)。これらのノックダウンMEF細胞がSCNT分析についてのドナーとして使用されたとき、胚盤胞期までの発生率は、対照における6.7%から、トリプルノックダウンMEF群の発生率に非常に近いSuv39h KD MEF群における49.9%に大きく改善した(図6C、6D、および表3)。対照的に、Setdb1のノックダウンは、有意に発生率を変化させなかった(図6C、6D、および表3)。まとめると、これらの結果は、SCNTの効率を増加させるためにSetdb1を使用することができるものの、Suv39h1/2は、主としてSCNT胚のゲノムリプログラミングにおけるバリアとして機能するH3K9me3の体細胞における樹立を担うことを実証している。
実施例6
ツメガエル(Xenopus)卵における体細胞核移入による動物クローニングの最初の実証以来50年超が経過した(Gurdon, 1962)。莫大な尽力にかかわらず、大部分の種でクローニング効率は比較的低いままであり、SCNT後のエピジェネティックリプログラミングの基礎をなすメカニズムは、あまり理解されていないままである。本研究において、比較トランスクリプトームおよび統合エピゲノム分析により、本発明者らは、ドナー体細胞においてSuv39h1/2によって沈着するH3K9me3が、ヒトおよびマウス卵母細胞における体細胞核リプログラミングのエピジェネティックなバリアとして機能することを発見した。IVF胚のトランスクリプトームと比較することによって、本発明者らは、RRR(リプログラミング耐性領域)と呼ばれる、SCNT胚における転写リプログラミングに耐性な222種のゲノム領域を特定した。RRRは、分析されたいくつかの体細胞型において、Suv39h1/2によって沈着されるH3K9me3の顕著な濃縮および低いDNase I到達性(どちらもヘテロクロマチンの一般的特徴である)によって特徴付けられる。Suv39h1/2のノックダウンまたは外因性Kdm4dの発現のいずれかによるH3K9me3の除去が、RRR活性化およびSCNT胚発生の有意な改善を招くので、RRR内の転写物の効率的な活性化は、SCNT胚の発生に重要に見える。したがって、本発明者らは、本明細書において、体細胞でSuv39h1/2によって沈着されるH3K9me3が、卵母細胞において発生的に重要な遺伝子の活性化についてのバリアとしての役目をし、SCNT胚の発生停止を導くモデルを実証している(図7)。SCNT後の外因性Kdm4dまたはドナー細胞におけるSuv39h1/2枯渇のいずれかによるこのエピジェネティックなバリアの除去は、発生遺伝子の発現およびSCNT胚発生の改善を可能にする(図7)。
H3K9me3はどのようにリプログラミンを妨害するのか?以前の研究は、H3K9me3がヘテロクロマチンタンパク質HP1によって認識および結合されることができると報告しており(Bannister et al., 2001; Lachner et al., 2001)、それは、ヘテロクロマチン形成の核となることができる(Canzio et al., 2013)。ヘテロクロマチンと核ラミナとの間の相互作用は、ヘテロクロマチンを核周縁部につなぎ止めて、エピジェネティックなサイレンシングを導くことができる(Poleshko and Katz, 2014)。したがって、H3K9me3によって開始されるヘテロクロマチン集合は、リプログラミングおよび転写因子への接近を阻止することによって、RRRにおける発生的に重要な遺伝子の活性化を阻止することができる。リプログラミングおよび転写因子の接近を阻止することに加えて、本発明者らが以前に実証したように(Wang et al., 2001)、H3K9me3は、H3K9のアセチル化およびH3K4のメチル化などの活性化マークのその後の沈着を阻害することが報告されている。
本発明者らは、本明細書において、H3K9me3介在性ヘテロクロマチンの形成が一般的なリプログラミングバリアとして機能することを実証し、これは、MEF細胞においてH3K9me3(Chen et al., 2013; Soufi et al., 2012)およびHP1(Sridharan et al., 2013)の両方がiPS細胞の作製を阻害するという報告に一致する。それにもかかわらず、バリアに関してSCNTとiPSのリプログラミングとの間でいくつかの重要な差が存在する。最初に、マウスのiPSリプログラミングにおけるH3K9me3バリアは、主としてSetdb1によって樹立される(Chen et al., 2013; Sridharan et al., 2013)。対照的に、本発明者らは、本明細書において、SCNTリプログラミングのH3K9me3バリアを樹立する重大な酵素としてSetdb1ではなくSuv39h1/2を明白に実証している。第二に、H3K9me3バリアによって抑制されるiPSリプログラミングおよびSCNTリプログラミングにおける成功裏なリプログラミングに必要な下流の遺伝子ネットワークは、非常に異なる。特に、iPSリプログラミングでは、H3K9me3バリア内の鍵となる下流の因子は、リプログラミングの比較的後期に作動するNanogおよびSox2のような核心的な多能性ネットワーク遺伝子である(Chen et al., 2013; Sridharan et al., 2013)。対照的に、SCNTリプログラミングでは、2細胞期に重大な機能を果たす転写物は、H3K9me3によって抑制される鍵となる因子である(本明細書記載)。この鍵となる差異は、それぞれiPSおよびSCNTにおける、成功裏なリプログラミングのために必要な転写因子セットの差のせいである。実際に、iPSリプログラミングに必要な核心的な転写因子であるOct4/Pou5f1は、SCNTリプログラミングに不要であることが見出されている(Wu et al., 2013)。したがって、H3K9m3は、iPSでのリプログラミングに重要に見えるものの、iPSリプログラミングおよびSCNTリプログラミングにおける鍵となるメカニズムの差のせいで、iPSリプログラミングのために役立つことをSCNTリプログラミングに適用することはできない。
それゆえに、本明細書に論じるように、H3K9me3の脱メチル化(Kdm4d/JmjdJmjd2Dによる)が、体細胞リプログラミングからのiPS細胞の作製効率を増加させるために使用することが報告されているものの、ES細胞と比較してiPSC細胞の作製および全般的エピジェネティック状態に多数の鍵となる有意な差があり(本明細書の表1参照)、かつSCNT胚の作製における細胞リプログラミングメカニズムと比較して、iPS細胞の作製では有意に異なる細胞リプログラミングメカニズム(表1)があるので、当業者は、iPS細胞の作製におけるH3K9me3の脱メチル化をSCNT胚の成功裏な作製ならびに着床前および着床後効率のための方法に移し替えできるとは分からないであろう。
本発明者らは、潜在的にSCNT胚の発生表現型不良の原因となる49種の候補遺伝子を列挙した。予想外に、候補遺伝子の1つであるZscan4dの過剰発現は、胚盤胞の割合を改善しなかった。Suv39h1およびSuv39h2がSCNTの効率を増加させたが、その他のヒストンリジンメチルトランスフェラーゼであるSetdb1を増加させなかったことも驚くべきことであった。したがって、SCNT胚が胚盤胞期までうまく発生するために、2細胞期IVF胚で活性化される他の因子が必要であると想像することができる。本明細書開示のタンパク質コード遺伝子に加えて、調節解除されたRRRは、また、2細胞期SCNT胚における抑制がH3K9me3依存性を示す、多数のアノテーションされていない転写物および反復配列を有する。例えば、主なサテライト反復の発現は、2細胞期SCNT胚において大きく抑えられ、この抑制は、触媒性変異型でなく、野生型Kdm4dの注射によって完全に回復した(図11)。同様に、Kdm4dの注射は、また、2細胞期SCNT胚におけるMERVLのようなクラスIIIレトロトランスポゾンエレメントのSCNT誘導抑制を部分的に軽減した(図11)。両方の反復配列の活性化が着床前発生に重要であると考えると(Kigami, 2003; Probst et al., 2010)、2細胞期SCNT胚におけるこれらの反復配列の転写調節解除は、また、これらの胚において観察される発生異常の原因になり得る。したがって、体細胞から遺伝したH3K9me3マークを有する、タンパク質コード遺伝子および反復配列の活性化欠損は、ひとまとめにしてSCNT胚における発生不全の原因となる可能性がある。
本発明者らは、SCNT効率を増加させるための、本明細書開示の方法および組成物を、一般的に、他の動物および哺乳動物種に適用できることを示している。マウスに類似して、SCNT胚の発生異常は、ウサギ(Li et al., 2006)、ブタ(Zhao et al., 2009)、ウシ(Akagi et al., 2011)およびヒト(Noggle et al., 2011)のような他の哺乳動物種における、これらの種のSCNT胚において観察される異常なヘテロクロマチンまたはH3K9me3状態を有するZGAと同時に出現する(Pichugin et al., 2010; Santos et al., 2003; Yang et al., 2009)。したがって、H3K9me3のリプログラミングバリアは、異なる種の間で保存されている可能性がある。それゆえに、Kdm4d mRNAの注射は、ヒトおよび飼育動物を含めた広範囲の哺乳動物においてクローニング効率を強化および改善するために使用することができる。重要なことには、本発明者らは、本明細書において、Kdm4d mRNAの注射がマウスにおけるntESC派生効率を大きく高めたことを実証している。それゆえに、Kdm4d mRNAは、ヒト細胞からのntESC派生効率を高めて、ヒト治療的クローニング用のヒト細胞の重大な供給源を提供するために使用することができる(Hochedlinger and Jaenisch, 2003; Yang et al., 2007)。当業者は、SCNTの間にヒト卵母細胞にKdm4d mRNAを注射するという簡単なことを行うことができる。さらに当業者は、その代わりに、ドナー細胞と一緒の単純なインキュベーションにSuv39h特異的阻害剤を使用した後、核を除核卵母細胞に移入または注射して、ヒトntESC派生効率を高め、ヒト治療的クローニングのためのそれらの使用を高めることができる。
参考文献
本明細書に開示する参考文献は、その全体が参照として組み入れられる。