JP6846052B2 - クルクミンホウ素錯体及びこれを含有する医薬 - Google Patents
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Description
一方、Aβに関しては、AβペプチドのMet酸素化体(AβペプチドのMet残基の硫黄原子が酸素化(O)された酸素化体)が生体内に少量残存すること、及び当該Met酸素化体はAβペプチドに比べて凝集性が低いことが報告されている(非特許文献1〜3)。かかる観点から、本発明者は、式(a)で表されるAβ結合部位を有するフラビン光触媒を用いてAβペプチドを酸素化するとAβペプチド酸素化体が得られ、当該Aβペプチド酸素化体はAβの凝集を抑制することを報告した(非特許文献4)。
従って、本発明の課題は、生体内に適用可能で、アミロイドに選択的であって、Aβペプチドだけでなく他のアミロイドにも適用可能なアミロイド酸素化触媒として有用な化合物及びこれを用いたアミロイド関連疾患予防治療薬を提供することにある。
X3は、臭素原子、ヨウ素原子又はセレン原子を示し;
R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し;
R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキル基を示すか、R1とR3、又はR2とR4が一緒になって、置換基を有していてもよいアルキレン基又はアルケニレン基を形成してもよく;
R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し;
R7及びR8は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキル基を示すか、R5とR7、又はR6とR8が一緒になって、置換基を有していてもよいアルキレン基又はアルケニレン基を形成してもよく;
m及びnは、1〜3の整数を示す)
で表されるクルクミンホウ素錯体又はその塩。
〔2〕X1がハロゲノアルキル基であり、X2がハロゲン原子である〔1〕記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩。
〔3〕m及びnが1である〔1〕又は〔2〕記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩。
〔4〕R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が示す置換基を有していてもよいアルキル基が、カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、−CO−、−CONH−及びトリアゾール基から選ばれる1種以上の置換基を有していてもよいアルキル基である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩。
〔5〕R1とR3、R2とR4、R5とR7、又はR6とR8が一緒になって形成されるアルキレン基又はアルケニレン基の炭素数が2又は3である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩。
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩を有効成分とする医薬。
〔7〕病原性アミロイドが関連する疾患の予防又は治療薬である〔6〕記載の医薬。
〔8〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
〔9〕病原性アミロイドが関与する疾患の予防又は治療薬製造のための〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩の使用。
〔10〕病原性アミロイドが関与する疾患を予防又は治療するための、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩。
〔11〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩の有効量を投与することを特徴とする病原性アミロイドが関連する疾患を予防又は治療する方法。
l及びpは、同一又は異なって、1〜6の整数を示す。lは1〜6の整数が好ましく、1〜4の整数がより好ましい。pは1〜6の整数が好ましく、1〜4の整数がより好ましい。
Zは、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基(−COOH)又はスルホン酸基(−SO3H)を示す。
R3、R4、R7及びR8で示されるアルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖のC1−C6アルコキシ基が好ましく、C1−C4アルコキシ基がさらに好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等が挙げられる。また、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子が挙げられる。
また、Aβに本発明化合物(1)を添加し、生理的条件下で660nm以上の光を照射すると、経時的にネイティブAβが減少するとともに、酸素原子が1〜4個付加した酸素化Aβが増加した。その酸素化効率は、チオフラビンTに比べて顕著に高かった。また、本発明化合物(1)による酸素化反応は、アンギオテンシンIVやメチオニンエンケファリン等の非アミロイド性のペプチドに対しては極めて弱く、Aβに選択的である。
さらに、本発明化合物(1)は、単量体のAβペプチドに対する酸素化活性よりも、毒性が強い凝集Aβペプチドに対する酸素化活性が高かった。また、本発明化合物(1)は、水に対する安定性及び光照射条件下での安定性も優れている。
従って、本発明化合物(1)は、Aβペプチド、アミリン、トランスサイレチン、αシヌクレイン、タウ蛋白質、ハンチンチン等の病原性アミロイドを選択的に酸素化する触媒として作用する。これらの病原性アミロイドは、酸素化されるとβ−シート構造の積層体を形成しなくなるため、病原性を生じなくなる。従って、本発明化合物(1)は、ヒトを含む動物のアルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病、ハンチントン病、全身性アミロイド−シス等の病原性アミロイドが関与する疾患の予防治療薬として有用である。
液体製剤としては溶液、懸濁液、乳液剤等を挙げることができるが添加剤として懸濁化剤、乳化剤等を含むこともある。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.02 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 6.51-6.54 (m, 2H), 3.66 (s, 3H), 3.20-3.26 (m, 4H), 2.73 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 2.31 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.90-1.94 (m, 2H), 1.63-1.69 (m, 2H), 1.56-1.62 (m, 2H), 1.32-1.38 (m, 2H); LRMS (ESI): m/z calcd for [M+H]+: 262; found: 262.
1H NMR (392 MHz, DMSO-d6) δ 12.03 (s, 1H), 9.56 (s, 1H), 7.48 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.35 (s, 1H), 6.64 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 3.49 - 3.18 (m, 4H), 2.83 - 2.56 (m,2H), 2.35 - 2.06 (m, 2H), 1.93 - 1.66 (m, 2H), 1.63 - 1.41 (m, 4H), 1.41 - 1.12(m, 2H); LRMS (ESI): m/z calcd for [M+H]+: 276; found: 276.
1H NMR (392 MHz, CDCl3) δ 8.03 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 7.19 (s, 2H), 6.91 (d, J =14.4 Hz, 1H), 3.45 - 3.31 (m, 4H), 2.80 - 2.69 (m, 4H), 2.45 (s, 3H), 1.98 (dd, J = 11.2, 5.7 Hz, 4H); LRMS (ESI): m/z calcd for [M+H]+: 510; found: 510.
1H NMR (392 MHz, DMSO-d6) δ 7.66 (dd, J = 14.5, 9.1 Hz, 2H), 7.46 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.41 (s, 1H), 7.30 (s, 2H), 7.01 (dd, J = 17.4, 14.6 Hz, 2H), 6.69 (d, J= 9.0 Hz, 1H), 3.45 - 3.30 (m, 8H), 2.75 - 2.67 (m, 6H), 2.22 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.92 - 1.78 (m, 6H), 1.52 (dd, J = 15.1, 7.4 Hz, 4H), 1.32 (dd, J = 15.1, 8.1 Hz, 2H); LRMS (ESI): m/z calcd for [M+H]+: 767; found: 767.
LRMS (ESI): m/z calcd for [M+H]+: 717; found: 717.
LRMS (ESI): m/z calcd for [M+H]+: 715; found: 715.
LRMS (ESI): m/z calcd for [M+H]+: 665; found: 665.
LRMS (ESI): m/z calcd for [M+H]+: 615; found: 615.
LRMS (ESI): m/z calcd for [M+H]+: 713; found: 713.
LRMS (ESI): m/z calcd for [M+H]+: 620; found: 620.
この中間体化合物(37.7mg、0.1mmol)を化合物Cの代わりに用いて合成例4と同様の方法により、化合物Rを濃紫色固体として得た(20.7mg、37%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.02 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 7.18 (s, 2H), 6.90 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 3.58 - 3.33 (m, 4H), 2.88 - 2.72 (m, 4H), 2.44 (s, 3H), 2.10 - 1.90 (m, 4H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 179.74, 174.17, 154.78, 149.42, 132.10, 121.82, 121.64, 108.49, 95.58, 50.55, 27.41, 24.68, 20.90; 19F NMR (369 MHz, CDCl3) δ -81.48(3F), -128.32(2F), -135.96 (2F), -152.51 (1F); 11B NMR (126 MHz, CDCl3) δ 1.07 (s); LRMS (ESI): m/z calcd for [M+H]+ 560.1, found 560.1.
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 7.63 (d, J = 14.7 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 14.7 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.34 (s, 1H), 7.22 (s, 2H), 6.95 (d, J = 14.7 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 14.7 Hz, 1H), 6.62 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 3.74 - 3.12 (m, 8H), 2.94 - 2.56 (m, 6H), 2.17 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 2.03 - 1.69 (m, 6H), 1.63 - 1.39 (m, 4H), 1.39 - 1.19 (m, 2H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6) δ 174.41, 169.03, 168.39, 149.74, 149.05, 148.40, 147.74, 132.38, 130.69, 122.84, 121.79, 121.43, 121.12, 110.94, 110.78, 109.57, 94.61, 50.60, 49.84, 49.35, 33.61, 27.16, 26.75, 25.93, 25.85, 24.34, 20.90, 20.51; 19F NMR (369 MHz, DMSO-d6) δ -81.38 (3F), -128.29 (2F), -135.73 (2F), -154.02 (1F); 11B NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ -1.22 (s); LRMS (ESI): m/z calcd for [M+H]+ 817.2, found 817.2.
本発明は化合物が実際にAβ酸素化活性を有することを確認するべくAβ1-42を基質としてin vitro酸素化実験を行った。Aβ1-42(10μM)を含むリン酸緩衝液(pH7.4/細胞培養液(0.1%馬血清を含む)(1:3)に、被検化合物(それぞれ1μM)を加え、LED照射下(波長660nm、730nm)、37℃でインキュベートした後、質量分析装置(MALDI−TOF MS)にて反応を追跡した。光照射前はネイティブAβ1-42およびNa+付加体が主に観測されるが、光照射を行うと経時的に酸素化体の存在を示唆するイオンピークが観測されるようになった(図1、図2)。
その結果、化合物E及び化合物Iは、660nm及び730nmの光照射の両条件においてAβの酸素化が進行した(図1)。また、化合物K及び化合物Mは、730nmの光照射条件においてAβの酸素化が進行した(図2)。
ポリD−リジンコート96穴プレートに播種したラット副腎髄質由来褐色細胞腫PC12細胞(理化学研究所から購入)の培養培地を、0.1%ウマ血清を含むダルベッコ変法イーグル培地75μLに置換し、5%CO2雰囲気下、37℃で1日間インキュベートした後、そこへ化合物を含むリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)25μLを加えた。その後、本混合液を、LED照射下(波長660nm,10mW)(darkでは光非照射)、37℃で5分間インキュベートした。さらに、その反応液を含む細胞培養プレートを5%CO2雰囲気下、37℃で48時間インキュベートした。最後に、WST−8を含む生細胞数測定試薬SF(10μL:ナカライから購入)を加え、5%CO2雰囲気下、37℃で3時間インキュベートした後、450nm(参照波長:655nm)における吸光度から細胞生存率を測定した。
その結果、図3に示すように、光照射条件において、化合物Eの毒性が最も低く、化合物J、化合物K、化合物Lの順に高くなった。この結果から、ホウ素中心がBF2の場合に毒性が最も高く、BFCF3>BFC2F5の順で低くなることが示唆された。また化合物Jと化合物Eの比較から、ジメチルアラニンをジュロリジンに変換することによって、毒性が軽減されることが示唆された。
また、図示していないが、化合物Kと化合物Mの比較から、ヨウ素の方が臭素の場合と比べて、毒性が軽減することが示唆されている。
Aβ(40μM)を含むリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)を37℃にて3時間インキュベートした。次に、化合物Eを加えた(4又は12μM)。ポリD−リジンコート96穴プレートに播種したラット副腎髄質由来褐色細胞腫PC12細胞(理化学研究所から購入)の培養培地を、0.1%ウマ血清を含むダルベッコ変法イーグル培地75μLに置換し、5%CO2雰囲気下、37℃で1日間インキュベートした後、そこへAβと化合物Eを含む上記リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)25μLを加えた。(最終ボリューム:100μL,最終Aβ濃度:10μM,最終化合物Eの濃度:1又は3μM)その後、本混合液を、LED照射下(波長660nm,10mW)(darkでは光非照射)、37℃で5分間インキュベートした。さらに、その反応液を含む細胞培養プレートを5%CO2雰囲気下、37℃で48時間インキュベートした。最後に、WST−8を含む生細胞数測定試薬SF(10μL:ナカライから購入)を加え、5%CO2雰囲気下、37℃で3時間インキュベートした後、450nm(参照波長:655nm)における吸光度から細胞生存率を測定した。
その結果、図4に示すように、細胞存在下Aβ1-42を酸素化することでその毒性を低減することができるか否か検証することとした。細胞にはラット副腎髄質由来の神経モデル細胞PC12を用い、触媒としては化合物Eを用いた。細胞生存率はWST−8による450nmの吸光をプレートリーダーにて測定することで得た。Aβ1-42と化合物Eを添加した場合、光を照射しない条件ではAβ1-42のみを添加した場合と同様に顕著な細胞死が見られた一方で、光照射を行った場合には細胞生存率が有意に向上した。この結果から、触媒がAβ1-42を選択的に酸素化することによって細胞毒性を低減していることが示唆された。
ベンゾイルメチオニン(2000μM)を溶解したグリセロール/水(0:100、10:90、30:70、50:50)に化合物K(2μM)を加え、室温でLED照射(波長730nm)した後、LC/MS(ESI−Q)にて反応を追跡した。
その結果、図5に示すように、グリセロール/水混合溶媒において、粘度の高いグリセロールの濃度増加にしたがって、ベンゾイルメチオニン酸素化体比(%)が増大したことから、化合物Kの分子内回転運動が抑えられることによって、一重項酸素の産生を経て、酸素化活性を発現していることが示唆された。
触媒を含む中性のリン酸緩衝液を、光非照射または光照射条件(660nm)にてインキュベートし、その後ベンジルアルコール(内部標準として)を含むエタノールを加え、HPLCにより分析した。
光非照射条件においては、いずれの触媒も1日後安定であった。
また、光照射条件においては、図6に示すように、ホウ素中心がBF2(化合物L)の場合最も安定性が低く、BFCF3(化合物K)<BFCF2CF3(化合物J)の順で安定性が増大した。また、ドナー部位にジュロリジンを有する化合物(化合物E、化合物I)は、相当するジメチルアニリン体(化合物K、化合物J)と比べて安定性が増大した。
8月齢のApp knock−in(AppNL-G-F/NL-G-F)マウス(アルツハイマー型モデルマウス)から摘出した脳を大脳皮質、海馬、および残りの脳組織に分離した。大脳皮質と海馬は合わせてリン酸緩衝液生理食塩水中でホモジナイズし、懸濁物を−80℃で保管した。化合物Eまたはリボフラビンを溶解物の懸濁液にそれぞれ最終濃度が100μM又は50μMになるように加え、光照射(780nmの波長で)を行うか、または室温で暗所に保管した。任意の時点で、任意の反応混合物の分割量をギ酸で最終濃度が70%になるように希釈し、濃縮し、6Mの尿素水溶液に再溶解した。内部標準(Aβ1-40、ペプチド研究所、日本)を加え、残りの混合物をZipTipにて処理し、ArcticタイプAβ1-38およびAβ1-42をMALDI−TOF MSで分析した。
Aβペプチドの変換はMALDI−TOF MS分析によってピーク強度が低下することにより裏付けられた。反応の30分後、60分後、150分後においてそれぞれArcticタイプAβ1-38では36%/53%/74%、ArcticタイプAβ1-42では43%/60%/83%のピーク強度が低下した(図7)。
暗室において行われた対照実験により、光照射はAβペプチドの低下にとって重要であることが確認された。
Aβ1-38とAβ1-42が化合物Eによってそれぞれ53%、60%の収率で変換されるとき(60分経過時)、非Aβの内因性物質であってその質量スペクトル値がAβの値に近いペプチドA、B、C(分子量がそれぞれ3770、4286、4968のペプチド)は、0分時と比較すると、変換されていなかった(図8)。
対照的に、リボフラビンを用いると、Aβ1-38とAβ1-42だけでなく、非AβのペプチドであるA、B、Cも相当程度消費される(図9)。これらの結果より、Aβの濃度が低く標的外の分子が大量に含まれている脳溶解物であっても、化合物EがAβペプチドを選択的に酸素化することを示す。
生体内におけるアミロイドタンパクの酸素化への化合物Eの有用性を証明するために、マウス皮下(末梢アミロイド疾患の治療モデル)での反応を検証した。Aβ1-42(20μM、3時間事前に凝集したもの)および化合物Eまたは化合物3〔9−(6−ブロモ−3−メチル−1,3−ベンゾトリアゾール−3−イウム−2−イル)−ジュロリジン〕を含むリン酸緩衝液を入れたマイクロチューブを野生マウスの背中の皮内に埋め込み、LEDランプを用いて780nmの波長でマウスの体外より30分間光照射を行った(図10)。対照実験として、同じ成分(Aβ1-42(20μM、3時間事前に凝集したもの)および化合物Eまたは化合物3)を含む別のマイクロチューブに対し、マウス体外にて直接光照射を行った。反応混合物をMALDI−TOF MSで分析後、ZipTip処理を行って解析を行った。酸素化比は、皮膚内部と皮膚外部の酸素化の比率「[マウス皮膚内部での酸素化比/マウス皮膚外部の酸素化比]×100」から計算した。
図11に示すように、化合物Eを用いた酸素化率の比(体外での酸素化率に対して生体内での酸素化率)は、65%であったが、それに対して、化合物3(10μM)では酸素化率の比は12%であった。化合物Eと化合物3による結果の違いは、皮膚を透過した後の光強度の違いである。これらの結果は、NIR光活性化可能な酸素化触媒である化合物Eが、生体内で、毒性のある凝集アミロイドタンパクを酸素化するのに適していることを示す。
グリセロール−メタノール混合溶媒(グリセロール:0、10、30、または50%)にフルフリルアルコールまたはN−ベンゾイル−Met(それぞれ2mM)および化合物E(2μM)を加え、混合物に室温で光照射(波長780nm)を行い、開始後10分、20分、30分の時点でのフルフリルアルコールまたはN−ベンゾイル−Metの濃度をLC/MSを用いたUV吸光計で定量化した。
結果を図12および13に示す。化合物Eが触媒するフルフリルアルコール(特異的に1O2と反応する)の酸素化反応速度が、溶媒の粘度が上がるにつれて増加した。化合物Eが触媒するN−ベンゾイル−Metの酸素化もまた、溶媒の粘度が高くなるにつれて加速した。これらの観察は、ドナーとアクセプターの間の単結合の自由回転を妨害することで化合物Eの活性化状態の寿命を延ばすと1O2の量子収率が高められることを示唆する。
凝集前のAβペプチド(37℃で1時間インキュベートして調製)、アンギオテンシン−IV(AT4)、Met−エンケファリン(ME)、又はソマトスタチン(Sst)(それぞれ20μM)を含有するリン酸緩衝液(pH7.4)を、化合物E(5μM)存在下で780nm(7mW)またはリボフラビン(5μM)存在下で500nmの光照射を37℃で30分間行った。
化合物E(25mol%)はプレ凝集したAβペプチドを44%酸素化した(図14)。Aβペプチド以外のペプチドでは、同じ反応条件であったが、5%未満の酸素化率であった。クロスβシート認識機能を有しない触媒であるリボフラビンは非選択的であり、酸素化Aβの収率(43%)は、標的外の基質を用いて得られた収率(アンギオテンシン−IV:35%、Met−エンケファリン:50%、ソマトスタチン:60%)とほぼ同一であった。この標的の選択性は、細胞の存在下、脳溶解物において、凝集Aβの選択的酸素化にとって重要である。
(1)酸素化
Aβ1-42イソペプチド(0.1%トリフルオロ酢酸水溶液中に250μMの濃度)、アンギオテンシンIV(200μM水溶液)、Met−エンケファリン(200μM水溶液)、およびソマトスタチン(200μM水溶液)をリン酸緩衝液またはリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)を加えて最終ペプチド濃度が20μMまたは40μM(pH7.4)となるように調整した(必要に応じて、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いた)。Aβ1-42溶液を酸素化反応に付す前に、37℃で1〜3時間インキュベートした。40μMのAβを含むリン酸緩衝液を25mMの4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)で緩衝した0.1%ウマ血清を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、ライフテクノロジー社)で希釈した。
それぞれの溶液に対し、リボフラビン(0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル(1:1)水溶液中に1mM)、化合物3(アセトニトリルに1mM)、CRANAD−2〔(T−4)−[(1E,6E)−1,7−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオナト−κO3,κO5]ジフルオロボロン〕(200μMジメチルスルホキシド溶液)又は化合物E、化合物I、化合物J、化合物L、化合物K、もしくは化合物Sの5〜10(200μMジメチルスルホキシド溶液)を加えた。化合物の最終濃度を2μMにしたものを、Aβ1-42の酸素化の評価に用いた。最終濃度を5μMにしたものを、ペプチド選択性の評価に用いた。混合物を室温にてLED(波長500、660、又は780nm)で約5〜10cmの距離で光照射を行った。光照射を行わない非対照群も用意した。反応はMALDI−TOF MSを用いてモニター分析を行った。酸素化度は酸素化度(%)=(n[O]付加物のMS強度の合計)/(ネイティブのMS強度+n[O]付加物のMS強度の合計)×100の比で求めた。必要に応じ、反応溶液の分配量はZipTip U−C18(メルク・ミリポア)で質量分析前に脱塩処理を行った。結果を以下の表1および2に示す。
ラット褐色細胞腫PC12細胞を5%ウマ血清および10%胎児ウシ血清をポリ−D−リジンコート96穴プレートに1穴あたり10,000細胞の濃度で播種したDMEMに懸濁し、5%二酸化炭素雰囲気下37℃で3日間インキュベートした。溶媒を除去後、細胞を150μLの血清フリーのDMEMで洗浄し、0.1%馬血清を含有するDMEM(75μL)を加えた。その後、96穴プレートを5%二酸化炭素雰囲気下37℃で1日間インキュベートし、酸素化反応に用いた。酸素化反応において、化合物E((100μMジメチルスルホキシド溶液))をAβ(事前に3時間凝集したもの、40μM)、上記の25μLの本溶液を含むリン酸緩衝液生理食塩水に加えた(Aβの最終濃度は10μM、化合物Eの最終濃度は1μM)。混合物をLED(波長780nm)で約5cmの距離から37℃で5分間照射した。細胞を37℃の5%二酸化炭素雰囲気下で48時間インキュベートした。細胞生存率は細胞カウント試薬SF(ナカライテスク、京都、日本)を用いてWST−8(2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム)で測定した。結果を以下の表1および表2に示す。
b:LC50(暗所)が化合物自身の毒性、LC50(明所)が化合物の光毒性を表す。PC12細胞を暗所または光照射下(波長660nm)光触媒処理し、37℃で5分間、そして5%二酸化炭素雰囲気下37℃で48時間インキュベートし、細胞生存率を分析した(n=5、平均±SEM)。
c:化合物Jは、光照射下(Tukey試験)で化合物Lおよび化合物Kに対してp<0.05であった。
b:PC12細胞を光触媒(1μM)と暗所または光照射(波長780nm)条件で37℃で5分間処置を行った後、細胞生存率を分析した(n=3、平均値±SEM)。
Claims (8)
- 次の一般式(1)
(式中、X1及びX2は、同一又は異なって、ハロゲノアルキル基又はハロゲン原子を示し;
X3は、臭素原子、ヨウ素原子又はセレン原子を示し;
R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し;
R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキル基を示すか、R1とR3、又はR2とR4が一緒になって、置換基を有していてもよいアルキレン基又はアルケニレン基を形成してもよく;
R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し;
R7及びR8は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキル基を示すか、R5とR7、又はR6とR8が一緒になって、置換基を有していてもよいアルキレン基又はアルケニレン基を形成してもよく;
m及びnは、1〜3の整数を示す)
で表されるクルクミンホウ素錯体又はその塩。 - X1がハロゲノアルキル基であり、X2がハロゲン原子である請求項1記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩。
- m及びnが1である請求項1又は2記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩。
- R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が示す置換基を有していてもよいアルキル基が、カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、−CO−、−CONH−及びトリアゾール基から選ばれる1種以上の置換基を有していてもよいアルキル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩。
- R1とR3、R2とR4、R5とR7、又はR6とR8が一緒になって形成されるアルキレン基又はアルケニレン基の炭素数が2又は3である請求項1〜4のいずれか1項に記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩を有効成分とする医薬。
- 病原性アミロイドが関連する疾患の予防又は治療薬である請求項6記載の医薬。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のクルクミンホウ素錯体又はその塩及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
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