JP6854515B2 - 解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法及び解糖系代謝制御剤 - Google Patents
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Description
[1]被検物質が、PGAMとChk1との結合を、阻害又は促進する場合に、上記被検物質が解糖系代謝を制御する物質であると評価する、解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法。
[2]被検物質の存在下及び非存在下でPGAMとChk1との結合量を測定し、それぞれの場合における結合量の比から、上記被検物質の解糖系代謝制御活性の有無を判定することを特徴とする、[1]に記載のスクリーニング方法。
[3]以下の工程を含むことを特徴とする、[1]又は[2]に記載のスクリーニング方法;
1)PGAM及びChk1を含む試料に被検物質を加えた場合のPGAMとChk1との結合量を測定する工程、
2)上記被検物質を加えていない場合のPGAMとChk1との結合量を測定する工程及び
3)上記工程1)による測定値と、上記工程2)による測定値とを比較する工程。
[4]PGAM及びChk1が、互いに結合し得るタグで標識されていることを特徴とする、[1]から[3]のいずれかに記載のスクリーニング方法。
[5]上記解糖系代謝制御物質が、抗がん剤として用いられる、[1]から[4]のいずれかに記載のスクリーニング方法。
[6]上記解糖系制御物質が、抗老化用組成物に用いられる、[1]から[4]のいずれかに記載のスクリーニング方法。
[7]PGAMとChk1との結合を阻害又は促進する物質を含む、解糖系代謝制御剤。
[8]PGAMとChk1との結合を阻害又は促進する物質が、
i)PGAM遺伝子若しくはChk1遺伝子に対するアンチセンス核酸又はsiRNA、ii)PGAM又はChk1に特異的な抗体、及び
iii)ナトリン
からなる群より選択される少なくとも1種である、[7]に記載の解糖系代謝制御剤。
[9]抗がん剤として用いられる、[7]又は[8]に記載の解糖系代謝制御剤。
[10]抗老化用組成物に用いられる、[7]又は[8]に記載の解糖系代謝制御剤。
本発明の解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法は、被検物質が、PGAMとChk1との結合を、阻害又は促進する場合に、上記被検物質が解糖系代謝を制御する物質であると評価することを特徴とする。本発明は、細胞内でPGAMとChk1とが結合すること、そしてこれらの結合が解糖系代謝において重要な役割を果たすことを本発明者らが最初に見出したことによって、可能となったものである。
2)上記被検物質を加えていない場合のPGAMとChk1との結合量を測定する工程
3)上記工程1)による測定値と、上記工程2)による測定値とを比較する工程
本発明における解糖系代謝制御剤は、有効成分として、上述の本発明のスクリーニング方法により見出される解糖系代謝制御物質を含む。
i)PGAM遺伝子若しくはChk1遺伝子に対するアンチセンス核酸又はsiRNA、ii)PGAM又はChk1に特異的な抗体、及び
iii)ナトリン等の化合物
が挙げられる。
本発明におけるアンチセンス核酸は、PGAM又はChk1をコードするDNAの転写産物と相補的なアンチセンス核酸である。アンチセンス核酸が、転写、スプライシング又は翻訳の過程を阻害して、標的遺伝子の発現を抑制するアンチセンス核酸であることが好ましい。
本発明におけるPGAM又はChk1に特異的な抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗体の由来は特に限定されるものではないが、好ましくは哺乳動物由来であり、より好ましくはヒト由来の抗体を挙げることが出来る。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、及び遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はPGAM又はChk1と結合することにより、PGAMとChk1との結合を阻害する。
本発明のスクリーニング方法を用いて、化合物ライブラリーについて試験を行ったところ、ナトリンがPGAMとChk1との結合を有意に阻害することが見出された。このナトリンが解糖系代謝に影響を与えるか否かを確認するために、H1299細胞に添加したところ、解糖系酵素発現が顕著に低下し、解糖系代謝に対して抑制的に機能することが明らかとなった。即ち、ナトリンは解糖系代謝制御物質であり、これを含む組成物は、解糖系代謝制御剤として有効に使用することができる。
PGAMのin vivoでの効果を検証するためPGAMモデルマウス(全身発現型トランスジェニックマウス(TG)及びノックアウトマウス(cKO)マウス)の解析を行った。図1に、PGAMノックアウトマウスの遺伝子デザインの概略図を示す。CAG−CreトランスジェニックマウスとPgam1 flox/+マウスとの交配により、グローバルPgam1ヘテロ接合体KOマウスを作製し、Pgam1ヘテロ接合性KOマウスの交配後、ホモ接合型及びヘテロ接合型のKOマウスの生存可能な子孫を調べた。得られた155の子孫の中で、野生型の比率:ヘテロ接合体KO:同型接合KOは、52:103:0であった(表1)。したがって、Pgam1ホモ接合性KOマウスは胚性致死であり、胚胎日13.5(E13.5)では観察されない。Pgam1−/−マウスの初期致死率は、他の解糖酵素のホモ接合性KOマウスで観察されたものと類似している。なお、PGAMホモKOマウスは胎生致死であったため(表1)、以下の解析はヘテロKOマウスで行った。
PGAMモデルマウス(全身発現型TG及びcKOマウス)を用いて、臓器別の解糖系mRNAプロファイルを解析した。PGAM−TGマウスでは、検証した組織・臓器(皮膚、肝臓、腎臓、筋肉、白色脂肪、肺、心臓)では、ほぼ正常であった。一方、PGAMヘテロノックアウトマウスでも多くの臓器(肝臓、腎臓、筋肉、白色脂肪、肺、脳、心臓)で、解糖系mRNAプロファイルは正常であったが、皮膚においては、Hk2、Gpi、Pfkm、Tpi、Aldoa、Gapdh、Pgk1、Pkm1の有意な低下、及びEno3の中程度の減少(p=0.08)が見られ、解糖系mRNA全般が大きく発現低下していることがわかった(図4)。
HeLa、H1299、HSC1(癌培養細胞)で、PGAMsiRNAにより、PGAM不活性化を試みた。即ち、HeLa、H1299、HSC1のそれぞれに、PGAMsiRNAをトランスフェクトしたところ、PGAMのmRNAの発現が95%以上抑制された。これらの細胞においては、多くの解糖系酵素のmRNAプロファイルの減少が観察された(図5)。
上述のとおりPGAM−TGマウスの皮膚では、通常状態での解糖系mRNA発現は正常であった。しかしながら、PGAM−TGマウスの皮膚は野生型マウスと比較して、TPA薬剤処理による炎症が起こりやすいことがわかった。即ち、PGAM−TGマウスの耳を10ngのTPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート)で処理し、その後8時間に渡って耳の状態を観察したところ、より厚く、赤みを帯びた変化を示した(図6)。また、耳部肥厚の程度を定圧厚み測定器により計測したところ、図6に示すとおり、PGAM−TGマウスでは野生型マウスと比較して、耳部肥厚の程度が顕著であることがわかった。
PGAM−TGマウス及び野生型マウスの皮膚に、次のような化学発癌実験を行った。即ち、各マウスの皮膚に100μgのDMBA(7,12−ジメチルベンズ(a)アントラセン)を塗布し、その後TPA12.5μgを週2回、合計20週間繰り返し塗布した。その結果、この処理によって出現した腫瘍の総数はPGAM−TGマウスが野生型マウスよりわずかに多い程度であったが、腫瘍のサイズは、PGAM−TGマウスの方が著しく大きかった(図7)。また、野生型マウスでは形成された皮膚腫瘍はすべて良性の乳頭腫であったが、PGAM−TGマウスでは大きな腫瘍(6mm)が出現し、全体の約10%は病理的に悪性の診断を受けた(表2)。さらに形成した腫瘍において、解糖系mRNAを比較したところ、TGマウスでより優位な亢進が観察された。結論として、PGAM−TGマウスは皮膚がんになりやすく、そのとき解糖系mRNA亢進(ワールブルグ効果)が観察された(図8)。
PGAM−TGマウスでの発癌性の機構を検証するため、がん抑制遺伝子p53に注目した。p53は、ヒト癌で最も欠失の多い(約50%)がん抑制遺伝子であり、転写後修飾(リン酸化やユビキチン化)により制御されている。我々は、PGAM−TG MEF細胞では、恒常活性型変異Ras(Ras−G12V)発現による発癌ストレス存在下で、p53活性化リン酸化の一つであるserine23のリン酸化が低下していることを見出した(図9)。次にserine23のリン酸化は、Chk1キナーゼにより担われているので、Chk1キナーゼのプロファイルを検証した。その結果、PGAM−TG MEF細胞では、Chk1キナーゼの蛋白量や活性化リン酸化に変化はなかったが、PGAMとChk1が細胞内結合することを見出した(図10)。
PGAMとChk1が細胞内結合することの解糖系代謝への影響を検証した。Chk1不活性化(siRNAや阻害剤UCN01処理)により、PGAM不活性化同様、解糖系mRNAが低下することが確認された(図11A)。一方Chk1活性化により、野生型細胞では解糖系mRNAは正常だったが、PGAM−TG細胞では解糖系mRNAの亢進を観察した(図11B)。以上より、PGAMとChk1が協調的に解糖系を制御することがわかった。
PGAMとChk1による協調的解糖系制御の分子機構を解明するための実験を行った。まずPGAMがプロテインフォスファターゼとして機能する可能性を検証したところ、試験管内反応では否定的な結果となった(図12)。図12には、アッセイに利用したリン酸化ペプチドを示した。プロテインフォスファターゼの陽性対照としては、λPPaseを使用した。具体的には、上記リン酸化ペプチドをPGAMリコンビナント蛋白又はλPPaseと反応させ、リン酸化ペプチドから解離するリン酸を測定した。図12に示すとおり、PGAMリコンビナント蛋白にはフォスファターゼ活性は認められなかった。
PGAMとChk1の物理的結合が、解糖系代謝亢進に重要である可能性を検証した。我々は、Chk1と結合するPGAMのN末端側に、ナトリン標的配列(Nicholson et al. Cell Signal 2014)があることに気づいた(図14)。ナトリンは、p53とMdm2の結合を阻害する化学物質として開発された抗がん剤の一種である。PGAM−FLAGとChk1−myc−hisを発現するMEF細胞にナトリンを処理し、その蛋白質抽出液からNi−NTAビーズによりChk1−myc−hisを回収し、結合しているPGAM−FLAGの量を検討したところ、ナトリン処理により、PGAMとChk1の結合が阻害されることを観察した(図15)。同時に、ナトリン処理により、癌細胞H1299において、解糖系mRNA発現が顕著に低下することが確認された(図16)。以上より、PGAMとChk1による協調的解糖系亢進には、PGAMのフォスフォターゼ活性や解糖系代謝酵素活性は関与せず、物理的結合が重要という結論を得た。また、本発明のスクリーニング方法を用いることにより、解糖系代謝を特異的に制御できる解糖系代謝制御物質としてナトリンを見出すことができた。
PGAMとChk1との結合を指標とするスクリーニングを、Nanobitシステムを用いた以下の方法により行う。NanobitではPGAMとChk1にそれぞれルシフェラーゼをベースに作成された発光蛋白質の大サブユニットと小サブユニットをそれぞれタグとして取り付ける。それぞれのサブユニットはそれ自体発光しないが、PGAMとChk1の結合により大サブユニットと小サブユニットが会合し完全な発光蛋白となることで発光シグナルを発する。このときナトリンのようなPGAMとChk1の結合を阻害する物質の存在下では発光シグナルが低下する。よってこの発光シグナルの減少を指標として、薬剤ライブラリーの中からPGAMとChk1との結合を阻害する化合物のスクリーニングを行うことが可能である。また、この発光シグナルを増強する化合物、即ちPGAMとChk1との結合を促進する化合物のスクリーニングも可能である。
Claims (9)
- 被検物質が、PGAMとChk1との結合を、阻害又は促進する場合に、上記被検物質が解糖系代謝を制御する物質であると評価する、解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法。
- 被検物質の存在下及び非存在下でPGAMとChk1との結合量を測定し、それぞれの場合における結合量の比から、上記被検物質の解糖系代謝制御活性の有無を判定することを特徴とする、請求項1に記載のスクリーニング方法。
- 以下の工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のスクリーニング方法;
1)PGAM及びChk1を含む試料に被検物質を加えた場合のPGAMとChk1との結合量を測定する工程、
2)上記被検物質を加えていない場合のPGAMとChk1との結合量を測定する工程及び
3)上記工程1)による測定値と、上記工程2)による測定値とを比較する工程。 - PGAM及びChk1が、互いに結合し得るタグで標識されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
- 上記解糖系代謝制御物質が、抗がん剤として用いられる、請求項1から4のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
- 上記解糖系代謝制御物質が、抗老化用組成物に用いられる、請求項1から4のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
- PGAMとChk1との結合を阻害又は促進する物質として、
i)PGAM遺伝子若しくはChk1遺伝子に対するアンチセンス核酸又はsiRNA、ii)PGAM又はChk1に特異的な抗体、及び
iii)ナトリン
からなる群より選択される少なくとも1種
を含む、解糖系代謝制御剤。 - PGAMとChk1との結合を阻害又は促進する物質として、
i)PGAM遺伝子若しくはChk1遺伝子に対するアンチセンス核酸又はsiRNA、及び
ii)PGAM又はChk1に特異的な抗体
からなる群より選択される少なくとも1種を含む、抗がん剤として用いられる、請求項7に記載の解糖系代謝制御剤。 - 抗老化用組成物に用いられる、請求項7に記載の解糖系代謝制御剤。
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