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JP6858799B2 - 絶縁電線、コイル及び電気・電子機器並びに絶縁電線の製造方法 - Google Patents
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絶縁電線、コイル及び電気・電子機器並びに絶縁電線の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、絶縁電線、コイル及び電気・電子機器並びに絶縁電線の製造方法に関する。
導体が絶縁層で被覆された絶縁電線は、モータや変圧器に代表される電気・電子機器に組み込まれて使用されている。近年、モータ効率等の向上が要求され、高電圧のモータ駆動による出力の向上が求められるが、このモータの出力向上は発熱量の増大を招く。
コイルにおいて、絶縁電線は曲率の大きい曲げに付された状態で固定される。そのため、導体と絶縁層との間には高い密着性が要求される。また、この密着性の向上は、絶縁電線同士の固着力の向上にも寄与する。また、絶縁電線には、上述した高圧下の使用によるコイル温度の上昇によっても絶縁破壊を生じにくい特性も求められる。この温度上昇による絶縁破壊は、絶縁層の放熱性を高めることにより抑制できる。放熱性を向上させた絶縁電線として、例えば、特許文献1には、導体と、この導体上に特定の構造を有する液晶ポリエステルからなる絶縁層とを有する絶縁電線が記載されている。
特開2014−225433号公報
本発明は、絶縁層が導体から剥がれにくく、絶縁電線間の固着力にも優れ、さらに放熱性に優れ、高圧下、高温下の使用においても絶縁破壊を生じにくい絶縁電線を提供することを課題とする。また、本発明は、この絶縁電線を使用したコイル及び電気・電子機器を提供することを課題とする。また、本発明は、上記絶縁電線の製造方法を提供することを課題とする。
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段によって達成された。
<1>
導体上に熱可塑性樹脂層を有する絶縁電線であって、
前記熱可塑性樹脂層を構成する下記の層a、層b及び層cの熱伝導率が、下記(条件1)〜(条件3)を満たす絶縁電線。
(条件1)
層aの熱伝導率<層bの熱伝導率<層cの熱伝導率
(条件2)
4%≦{(層cの熱伝導率−層aの熱伝導率)/層aの熱伝導率}×100≦50%
(条件3)
層aの熱伝導率が0.1W/mK以上であり、層cの熱伝導率が0.5W/mK以下
ここで、層a、層b及び層cは、前記熱可塑性樹脂層の厚さを100%とし、前記熱可塑性樹脂層を厚み方向に3つに分割した3層のサブ層を想定した場合における各サブ層に対応し、前記熱可塑性樹脂層の前記導体と接する面から最外層表面に向けて前記熱可塑性樹脂層の厚み方向に厚さ10%までの間を層aとし、前記熱可塑性樹脂層の最外層表面から前記導体と接する面に向けて前記熱可塑性樹脂層の厚み方向に厚さ10%までの間を層cとし、層aとcの間の層を層bとする。
<2>
前記熱可塑性樹脂層が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリケトン、ポリフェニレンスルフィド又は熱可塑性ポリイミドを含んでなる結晶性樹脂層である、<1>に記載の絶縁電線。
<3>
前記導体が平角導体である、<1>又は<2>に記載の絶縁電線。
<4>
<1>〜<3>のいずれか1項に記載の絶縁電線を巻回してなるコイル。
<5>
<4>に記載のコイルを用いてなる電気・電子機器。
<6>
前記層cをアニールする工程を含む、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の絶縁電線の製造方法。
本発明の絶縁電線は、絶縁層が導体から剥がれにくく、絶縁電線間の固着力にも優れ、さらに放熱性に優れ、高圧下、高温下の使用においても絶縁破壊を生じにくい。また、本発明のコイルは、上記絶縁電線を巻回してなり、絶縁層が導体から剥がれにくく、絶縁電線間の固着力にも優れ、さらに放熱性に優れ、高圧下、高温下の使用においても絶縁破壊を生じにくい。また、本発明の電気・電子機器は、上記コイルを具備し、このコイルを構成する絶縁電線は、絶縁層が導体から剥がれにくく、絶縁電線間の固着力にも優れ、さらに放熱性に優れ、高圧下、高温下の使用においても絶縁破壊を生じにくい。また、本発明の絶縁電線の製造方法によれば、本発明の絶縁電線を提供できる。
図1は、本発明の絶縁電線の一実施態様を示した概略断面図である。 図2は、本発明の絶縁電線の別の実施態様を示した概略断面図である。
<絶縁電線>
本発明の絶縁電線は、導体上に絶縁層として熱可塑性樹脂層を有する。
前記熱可塑性樹脂層(厚さを100%とする)を厚み方向に3つに分割した3層のサブ層を想定し、前記熱可塑性樹脂層の前記導体と接する面から最外層表面に向けて前記熱可塑性樹脂層の厚み方向に厚さ10%までの間を層aとし、前記熱可塑性樹脂層の最外層表面から前記導体と接する面に向けて前記熱可塑性樹脂層の厚み方向に厚さ10%までの間を層cとし、層aとcの間の層を層bとする。
層a、層b及び層cの熱伝導率が、下記(条件1)〜(条件3)を満たす。
本発明において、層a〜cの熱伝導率は、実施例に記載の方法により、測定・算出される値である。
(条件1)
層aの熱伝導率<層bの熱伝導率<層cの熱伝導率
(条件2)
4%≦{(層cの熱伝導率−層aの熱伝導率)/層aの熱伝導率}×100≦50%
(条件3)
層aの熱伝導率が0.1W/mK以上であり、層cの熱伝導率が0.5W/mK以下
本発明の絶縁電線が(条件1)〜(条件3)を満たすことにより、すなわち、熱伝導率が(条件3)の範囲内で略グラジエント形態であることにより、本発明の絶縁電線は、絶縁層が導体から剥がれにくく、絶縁電線間の固着力にも優れ、さらに放熱性に優れ、絶縁劣化が抑制される。
(条件2)の下限は5%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましい。一方、(条件2)の上限は30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
本発明において、導体上に熱可塑性樹脂層を有するとは、導体の外周に直接、熱可塑性樹脂層を有することを意味する。すなわち、導体と熱可塑性樹脂層との間に他の層(例えば、接着剤層、エナメル層)を設けることなく、導体の外周面に接した状態で熱可塑性樹脂層を有することを意味する。
本発明の絶電電線が有する熱可塑性樹脂層は、1層構造でも2層以上の構造でもよいが、1層構造が好ましい。なお、本発明において、含有される樹脂及び必要に応じて含有される添加剤の種類と含有量が同じ層を互いに接して積層した場合、積層された層全体を合わせて1層とみなす。一方、同じ樹脂で構成されていても添加剤の種類又は含有量が異なる層を互いに接して積層した場合、積層された層各々を1層とみなす。
本発明の絶縁電線の寸法は、用途、使用場面等によって設定することができ、断面が円形である場合、外径として、0.33〜3.45mmが好ましく、0.43〜3.15mmがより好ましい。断面が矩形である場合、幅(長辺)として1.03〜5.45mmが好ましく、1.43〜4.45mmがより好ましい。厚さ(短辺)として、0.43〜3.45mmが好ましく、0.53〜2.95mmがより好ましい。
図1に概略断面図を示した本発明の絶縁電線の一実施態様は、断面が矩形の導体1と、導体1の外周面を直接被覆する熱可塑性樹脂層(A)5とを有する絶縁電線10である。
熱可塑性樹脂層(A)5は、符号2で示される層aと、符号3で示される層bと、符号4で示される層cからなる。この層a、層b及び層cの熱伝導率が、上記(条件1)〜(条件3)を満たす。
図2に概略断面図を示した本発明の絶縁電線の別の実施態様(絶縁電線20)は、熱可塑性樹脂層(A)5上に、熱可塑性樹脂層(B)6を有すること以外は、絶縁電線10と同じである。なお、熱可塑性樹脂層(A)を構成する樹脂と熱可塑性樹脂層(B)を構成する樹脂は互いに別種の樹脂であり、熱可塑性樹脂層(A)5を構成する層a〜cの熱伝導率よりも、熱可塑性樹脂層(B)6の熱伝導率は大きいことが好ましい。ただし、熱可塑性樹脂層(B)6の熱伝導率は0.5W/mK以下であることが好ましい。
なお、図1及び図2において、導体の断面積、及び熱可塑性樹脂層の厚さは、適宜設定できる。
(導体)
本発明で使用する導体の断面形状は、矩形(正方形を含む平角形状)であっても円形であっても構わないが、矩形の平角導体が好ましい。
平角導体は、円形のものと比較し、絶縁電線の放熱性をより向上させることができる。
平角導体は、角部からの部分放電を抑制する点において、図1に示すように、導体の長手方向に垂直な断面の4隅に面取り(曲率半径r)を設けた形状であることが好ましい。曲率半径rは、0.6mm以下が好ましく、0.2〜0.4mmがより好ましい。
導体の大きさは、特に限定されないが、平角導体の場合、矩形の断面形状において、幅(長辺)は1.0〜5.0mmが好ましく、1.4〜4.0mmがより好ましく、厚さ(短辺)は0.4〜3.0mmが好ましく、0.5〜2.5mmがより好ましい。幅(長辺)と厚さ(短辺)の長さの割合(厚さ:幅)は、1:1〜1:4が好ましい。一方、断面形状が円形の導体の場合、直径は0.3〜3.0mmが好ましく、0.4〜2.7mmがより好ましい。なお、幅(長辺)と厚さ(短辺)の長さの割合(厚さ:幅)が1:1のとき、長辺とは1対の対向する辺を意味し、短辺とは他の1対の対向する辺を意味する。
(熱可塑性樹脂層)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂に含まれるポリマーは特に制限されないが、具体例として、ポリアミド(PA)(ナイロン)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(変性ポリフェニレンエーテルを含む)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(Uポリマー)、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)(変性ポリエーテルエーテルケトン(変性PEEK)を含む)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、熱可塑性ポリイミド樹脂(TPI)、ポリアミドイミド(PAI)、液晶ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及び芳香族ポリアミド樹脂(芳香族PA)が挙げられる。
これらのポリマーのなかでも、絶縁電線の耐熱性を高めるため、PEEK、PEKK、PK、PPS及びTPIが好ましい。
本発明において、各熱可塑性樹脂層は、これらポリマーに加えて、通常の添加剤を含有していてもよい。各熱可塑性樹脂層中の上記ポリマーの含有量は、特に制限されないが、例えば、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
各熱可塑性樹脂層の膜厚は、10μm以上250μm以下が好ましく、10μm以上200μm以下がより好ましく、10μm以上150μm以下がより好ましい。
<絶縁電線の製造方法>
本発明の絶縁電線の製造方法は特に制限されないが、具体例として、以下の3つの製造方法を挙げることができる。
(アニール工程を含む製造方法)
この製造方法は、(1)押出被覆工程、(2)冷却工程及び(3)アニール工程をこの順に含む。(1)及び(2)は、例えば、特開2016−058230号公報を参照して行うことができる。
(1)押出被覆工程は、導体を心線とし、導体と相似形の押出ダイ及び押出機のスクリューを用いて熱可塑性樹脂を導体上に押出被覆することにより熱可塑性樹脂層を形成することができる。熱可塑性樹脂の加熱温度は、熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度を考慮して、例えば、200〜450℃とすることができる。
(2)冷却工程は、例えば、10〜40℃で行うことができる。冷却時間は、絶縁電線製造装置の冷却区間の長さ及び搬送速度等により、適宜調節することができる。
(3)アニール工程は、熱可塑性樹脂層の表面を、例えば、150〜300℃で加熱することにより行うことができる。
導体は、(1)押出被覆工程を行う温度未満(例えば、常温)にして使用し、導体と押し出された熱可塑性樹脂が接する際に、熱可塑性樹脂層の導体側が冷却されること、及び(2)の冷却工程により、層aの熱伝導率<層bの熱伝導率とすることができ、(3)アニール工程により層bの熱伝導率<層cの熱伝導率にすることができる。
(UV照射工程を含む製造方法)
この製造方法は、アニール工程を含む製造方法の(3)アニール工程に代えて、(3)UV照射工程により層bの熱伝導率<層cの熱伝導率にすること以外は、アニール工程を含む製造方法と同じである。(3)UV照射工程は、例えば、50〜2000mJ/cmで照射することにより行うことができる。
(多層押出工程を含む製造方法)
この製造方法は、同じ樹脂を用いて、(1)押出被覆工程及び(2)冷却工程を繰り返し行う。ただし、回数が増えるごとに、(2)の冷却時間を長くする。
<コイル及び電気・電子機器>
本発明のコイルは、本発明の絶縁電線を用いたものである。
本発明のコイルは、各種電気・電子機器に適した形態を有していればよく、本発明の絶縁電線をコイル加工して形成したもの、本発明の絶縁電線を曲げ加工した後に所定の部分を電気的に接続してなるもの等が挙げられる。例えば、特開2018−014191号公報に開示のコイルと同様のものとすることができる。
本発明の絶縁電線をコイル加工して形成したコイルとしては、特に限定されず、長尺の絶縁電線を螺旋状に巻回したものが挙げられる。このようなコイルにおいて、絶縁電線の巻き方、巻数(2巻以上)及びピッチ等は特に限定されず、用途等に応じて、適宜に選択される。電線が巻回される芯(コアともいう。)については、材質(鉄芯、磁性体芯又は空気芯等)やサイズは、用途等に応じて、適宜に選択される。
本発明の絶縁電線を曲げ加工した後に所定の部分を電気的に接続したコイルとして、回転電機等のステータに用いられるコイルが挙げられる。
本発明の電気・電子機器は、本発明のコイルを用いたものである。
本発明の電気・電子機器としては、特に限定されない。例えば、特開2018−014191号公報に開示の電気・電子機器と同様のものとすることができる。電気・電子機器の好ましい一態様として、上記ステータを備えた回転電機(特にHV及びEVの駆動モータ)が挙げられる。この回転電機は、上記ステータを備えていること以外は、従来の回転電機と同様の構成とすることができる。
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、これは本発明を制限するものではない。
(実施例1)
以下の様にして、図1に示す構成を有する絶縁電線を製造した。
断面が矩形の導体(長辺:3.3mm、短辺1.9mm)の外周面に、押出機を用いてPEEK(ポリエーテルエーテルケトン、ビクトレックスジャパン社製、商品名450G)を押出して、押出被覆樹脂層(熱可塑性樹脂層)を形成した。押出ダイは、押出被覆樹脂層の層厚が160μmになるものを用いて、厚さ160μmの押出被覆樹脂層を形成した。押出機のスクリューとして、30mmフルフライト、L/D=20、圧縮比3のスクリューを用いた。
押出温度条件は、樹脂投入側から順に以下の通りである。
C1:260℃
C2:300℃
C3:380℃
ヘッド部(H):380℃
ダイス部(D):380℃
C1、C2、C3は押出機内のシリンダー温度を示し、樹脂投入側から順にC1、C2、C3の3ゾーンの温度をそれぞれ示す。
押出被覆樹脂層を形成後、以下の条件で冷却し、次いでアニール処理を行い、巻き取り装置により絶縁電線を巻き取った。
(冷却条件)
冷却装置:水層
冷却温度:20℃
冷却区間:2m
(アニール条件)
輻射加熱装置:全自動開閉式管状炉 EPKRO−12K、商品名、いすゞ製作所社製
加熱温度:200℃
(実施例4)
以下の様にして、図1に示す構成を有する絶縁電線を製造した。
実施例1の絶縁電線の製造において、押出被覆樹脂層の層厚を200μmにしたこと以外は、実施例1と同様にして冷却工程まで行った。冷却後、押出被覆樹脂層に対して1200mJ/cmでUV照射した後、巻き取り装置により絶縁電線を巻き取った。
(実施例5)
以下の様にして、図1に示す構成を有する絶縁電線を製造した。
実施例1の絶縁電線の製造において、押出被覆樹脂層の層厚を100μmにしたこと以外は、実施例1と同様にして冷却工程まで行った。このようにして形成した押出被覆樹脂層上に、同様にして層厚が100μmの押出被覆樹脂層を形成した。形成後、実施例1に記載した(冷却条件)において、冷却区間を4.6mにして冷却し、巻き取り装置により絶縁電線を巻き取った。
(実施例2、3、6〜9及び比較例1〜5)
実施例1の絶縁電線の製造において、下記表1に記載の熱可塑性樹脂を用いたこと、熱可塑性樹脂層の層厚を下記表1に記載の層厚にしたこと、下記表1に記載のように熱伝導率を調整したこと以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成を有する、実施例2、3、6〜9及び比較例1〜5の絶縁電線を製造した。
<熱伝導率の測定>
上記製造した絶縁電線の熱伝導率を以下のようにして測定した。
(層a〜cの熱伝導率の決定)
上記製造した絶縁電線から、長さ10cmの試験片を切り出し、この試験片の導体から、熱可塑性樹脂層を剥した。この熱可塑性樹脂層を構成する層aをミクロトーム(商品名ウルトラミクロトーム、ライカ社製)を用いて切り出し、この層aから、ミクロトーム(商品名ウルトラミクロトーム、ライカ社製)を用いて、縦1cm、横1cmの切片を無作為に5つ切り出した。これらの切片の熱伝導率を、熱分析装置(商品名:迅速熱伝導率計QTM−710/700、京都電子工業社製)により測定した。5つの切片の熱伝導率の平均値(算術平均値)を求め、小数点以下第3位を四捨五入して層aの熱伝導率とした。
層aと同様にして層cを切り出し、この層cに対して上記と同様にして層cの熱伝導率を算出した。さらに、熱可塑性樹脂層から層a及びcを切り出して得た層bに対して上記と同様にして層bの熱伝導率を算出した。
<試験>
上記製造した絶縁電線に対して、密着力試験、固着力試験、放熱性試験及び耐熱性試験を行った。結果を後記表1に示す。
(密着力試験)
JIS Z 0237:2009に従って、導体から熱可塑性樹脂層を引き剥がす180℃ピール試験を行い、密着力を決定した。
具体的には、引張試験機〔島津製作所社製のAGS−J(商品名)〕を使用し、熱可塑性樹脂層をピール速度5mm/minで引っ張り、50mmの長さの密着力の測定値を平均し、各絶縁電線の密着力とした。
測定結果を下記評価基準に従って評価した。本試験において、「●」以上が合格である。
−評価基準−
◎:2000gf/mm以上
○:1000gf/mm以上2000gf/mm未満
●:500gf/mm以上1000gf/mm未満
△:100gf/mm以上500gf/mm未満
×:100gf/mm未満
(固着力試験)
上記で製造した2本の絶縁電線同士に対して、互いの200mmの部分を接触させ、280℃10分間の加熱処理に付して、2本の絶縁電線を固着させた。この固着させた絶縁電線を恒温槽付引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ AGS−J(商品名)、恒温槽温度:200℃)にセットし、50mm/minの引張速度で重ね合せた絶縁電線の両端を互いに反対方向に引っ張った。2本の絶縁電線の固着状態を破断するのに要した強度(MPa)を測定した。
測定結果を下記評価基準に従って評価した。本試験において、「○」以上が合格である。
−評価基準−
◎:2MPa以上
○:0.5MPa以上2MPa未満
×:0.5MPa未満
(放熱性試験)
V−t試験
2本の電線をツイスト状に撚り合わせた試験片を作製し、各々の導体間に正弦波50Hzで実施例、比較例にある交流電圧を印加して破壊するまでの時間を測定した。測定結果を下記評価基準に従って評価した。本試験において、「●」以上が合格である。本試験の結果が優れる程、高圧下で生じた熱を効率的に放熱できていることを示す。
−評価基準−
◎:5000分以上
○:1000分以上5000分未満
●:100分以上1000分未満
△:10分以上100分未満
×:10分未満
(耐熱性試験)
上記で製造した絶縁電線を300mm長に切り出し、250℃168時間加熱処理した。加熱処理後、絶縁電線の中央部にアルミホイルを20mm幅で一周巻きつけた(すなわち、絶縁電線の一方の末端からの距離が140mm〜160mmの部位に20mm幅のアルミホイルを一周巻き付けた)。この絶縁電線の一方の端末から5mmの距離までの間の熱可塑性樹脂層を剥離し、端末剥離箇所の導体とアルミホイル部との間に課電した。500V/sec.で昇圧し、絶縁破壊が生じた際の電圧を「加熱後絶縁破壊電圧」とした。一方、上記加熱処理を施していない絶縁電線についても同様にして絶縁破壊電圧を測定し、「加熱前絶縁破壊電圧」とした。測定結果を下記評価基準に従って評価した。
本試験において、「○」以上が合格である。
−評価基準−
◎:「加熱後絶縁破壊電圧」/「加熱前絶縁破壊電圧」の比の値0.9以上
○:「加熱後絶縁破壊電圧」/「加熱前絶縁破壊電圧」の比の値0.7以上0.9未満
×:「加熱後絶縁破壊電圧」/「加熱前絶縁破壊電圧」の比の値0.7未満
Figure 0006858799
<表の注>
実:実施例
比:比較例
PEEK:ビクトレックスジャパン社製、商品名:450G(ポリエーテルエーテルケトン)
PEKK:アルケマ社製、商品名:スーパーエンプラPEKK(ポリエーテルケトンケトン)
PEK:ビクトレックスジャパン社製、商品名:HT−G22(ポリエーテルケトン)
PPS:ポリプラスチックス社製、商品名:A02209(ポリフェニレンスルフィド)
PET:帝人社製、商品名:TR−8550(ポリエチレンテレフタレート)
表1から明らかなように、比較例1は、本発明で規定する条件1を満たさないため、放熱性が不合格であった。比較例2は、本発明で規定する条件2を満たさないため、放熱性及び密着力が不合格であった。同様に、比較例3は固着力が不合格であり、比較例4は放熱性及び耐熱性が不合格であった。比較例5は、本発明で規定する条件1及び2を満たさないため、放熱性及び密着力が不合格であった。
これに対し、本発明で規定する条件1〜3を満たす実施例1〜8は、全ての試験が合格であった。
10、20 絶縁電線
1 導体
2 層a
3 層b
4 層c
5 熱可塑性樹脂層(A)
6 熱可塑性樹脂層(B)

Claims (6)

  1. 導体上に熱可塑性樹脂層を有する絶縁電線であって、
    前記熱可塑性樹脂層を構成する下記の層a、層b及び層cの熱伝導率が、下記(条件1)〜(条件3)を満たす絶縁電線。
    (条件1)
    層aの熱伝導率<層bの熱伝導率<層cの熱伝導率
    (条件2)
    4%≦{(層cの熱伝導率−層aの熱伝導率)/層aの熱伝導率}×100≦50%
    (条件3)
    層aの熱伝導率が0.1W/mK以上であり、層cの熱伝導率が0.5W/mK以下
    ここで、層a、層b及び層cは、前記熱可塑性樹脂層の厚さを100%とし、前記熱可塑性樹脂層を厚み方向に3つに分割した3層のサブ層を想定した場合における各サブ層に対応し、前記熱可塑性樹脂層の前記導体と接する面から最外層表面に向けて前記熱可塑性樹脂層の厚み方向に厚さ10%までの間を層aとし、前記熱可塑性樹脂層の最外層表面から前記導体と接する面に向けて前記熱可塑性樹脂層の厚み方向に厚さ10%までの間を層cとし、層aとcの間の層を層bとする。
  2. 前記熱可塑性樹脂層が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリケトン、ポリフェニレンスルフィド又は熱可塑性ポリイミドを含んでなる結晶性樹脂層である、請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記導体が平角導体である、請求項1又は2に記載の絶縁電線。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁電線を巻回してなるコイル。
  5. 請求項4に記載のコイルを用いてなる電気・電子機器。
  6. 前記層cをアニールする工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁電線の製造方法。
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