[電極触媒の製造方法]
本発明の一実施形態は、白金含有触媒金属が炭素担体に担持された電極触媒前駆体を準備すること、および前記電極触媒前駆体を酸素含有雰囲気下で加熱して、当該電極触媒前駆体の重量を、0%を超えて10%未満の割合で減少させることを含む、電極触媒の製造方法に関する。
本発明の別の実施形態は、白金含有触媒金属が炭素担体に担持された電極触媒前駆体を準備すること、および前記電極触媒前駆体を、酸素含有雰囲気下で以下の関係式3を満たす温度で加熱することを含む、電極触媒の製造方法に関する。
ただし、上記関係式3において、Theat(℃)は前記加熱における温度を表し;Tcarbon(℃)は前記炭素担体の燃焼温度を表す。
上記手法によれば、水素の酸化反応または酸素の還元反応を促進させる触媒金属があらかじめ担持された電極触媒前駆体を加熱処理に供しているため、金属粒子の担持を複数回行う必要が無い。このため、電極触媒を低いコストで製造可能である。
また、上記手法によれば、高活性な電極触媒を得ることができる。本発明の技術的範囲を制限するものでは無いが、これは、以下のメカニズムによるものと推測される。
白金含有触媒金属が炭素担体に担持された電極触媒前駆体を上記条件で加熱することで、白金含有触媒金属と接触している部分において炭素担体の酸化分解が進行し、触媒金属が炭素担体に適度に埋没した構造の電極触媒を得ることができる。これにより、触媒金属のシンタリングが防止された、すなわち触媒金属が高分散担持された電極触媒となる。特に、かような構造の電極触媒は、触媒金属を固体高分子形燃料電池に利用した場合において、以下の観点から利点がある。
従来、固体高分子形燃料電池における電気化学反応が進行するためには、プロトンパスとしての高分子電解質(アイオノマー)と、反応触媒としての触媒金属とが接触していることが必要であると考えられてきた。しかしながら、本発明者らは、電極触媒および高分子電解質(アイオノマー)を含む燃料電池用電極触媒層において、電極触媒が高分子電解質と接触しない場合であっても、水により三相界面を形成することによって、電極触媒を有効に利用できることを見出した。ここで、高分子電解質は触媒金属表面に吸着し易い性質を有しているため、高分子電解質によって触媒金属への反応ガスのアクセスが阻害され得る。したがって、触媒金属が炭素担体に適度に埋没した構造の電極触媒を固体高分子形燃料電池の燃料電池用電極触媒層に用いることにより、高分子電解質が触媒金属と接触することを抑えることができる。これにより触媒金属表面の反応活性面積が減少することを防止し、さらに、水により三相界面を形成することによって、電極触媒を有効に利用できると考えられる。
一方、本発明の範囲を超えて加熱処理を過剰に行うと、却って触媒活性が低下する。これは、白金含有触媒金属は、特許文献1に記載の酸化コバルト等よりも炭素担体の分解活性が高いことに起因すると推測される。すなわち、本発明の範囲を超えて加熱処理を過剰に行うと、白金含有触媒金属と接触している部分における炭素担体の加熱処理における酸化分解が過度に進行し、触媒金属と炭素担体との接触面積の低下により電子伝達パスが狭小化するのではないかと考えられる。また、かような炭素担体の酸化分解が過度に進行した電極触媒では、触媒金属が炭素担体に完全に埋没してしまい、これによって触媒金属への反応ガスのアクセス性や、水による三相界面の形成が不十分となると考えられる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
本発明において使用する白金含有触媒金属が炭素担体に担持された電極触媒前駆体(以下、「白金含有触媒金属が炭素担体に担持された電極触媒前駆体」を、単に「電極触媒前駆体」とも称する)は特に制限されない。電極触媒前駆体は、例えば後述の手法等により白金含有触媒金属を炭素担体に担持して調製してもよく、または、市販品を用いてもよい。かような市販品としては、例えばTEC10V30E、TEC10V40E、TEC10V50E(以上、TANAKAホールディングス株式会社製)等が例示できるが、これらに限定されない。
本発明で使用できる白金含有触媒金属は、電気的化学反応の触媒作用をする機能を有する。例えば、燃料電池のアノード触媒層に用いられる触媒金属であれば、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の白金含有触媒金属が同様にして使用できる。また、燃料電池のカソード触媒層に用いられる触媒金属であれば、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の白金含有触媒金属が同様にして使用できる。
本発明では、白金を含有する触媒金属が用いられる。白金含有触媒金属は、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などに優れるという利点を有する。白金含有触媒金属(以下、「白金含有触媒金属」を単に「触媒金属」とも称する。)は実質的に白金原子からなるものであっても、白金原子と非白金金属原子からなる白金含有合金であってもよい。なお、上記の「実質的に白金原子からなる」とは、触媒金属を構成する原子のうち、白金原子の含有量が90原子%を超えるものを指し、好ましくは白金原子の含有量が99原子%以上(上限:100原子%)である。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金の含有量を30〜90原子%とし、白金と合金化する金属の含有量を10〜70原子%とするのがよい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。非白金金属原子としては、より具体的には、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、銅、銀、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、およびアルミニウム等から選択される1種以上が例示できる。
炭素担体は、触媒金属を担持するための担体、および触媒金属と他の部材との間での電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。本明細書において「炭素担体」は、主成分として炭素原子を含むものをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3重量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
炭素担体としては、具体的には、アセチレンブラック、チャンネルブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック(例えば、Vulcan(登録商標))、ランプブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラック;ブラックパール(登録商標);黒鉛化アセチレンブラック;黒鉛化チャンネルブラック;黒鉛化オイルファーネスブラック;黒鉛化ガスファーネスブラック;黒鉛化ランプブラック;黒鉛化サーマルブラック;黒鉛化ケッチェンブラック(登録商標);黒鉛化ブラックパール(登録商標);カーボンナノチューブ;カーボンナノファイバー;カーボンナノホーン;カーボンフィブリル;活性炭;コークス;天然黒鉛;人造黒鉛などを挙げることができる。また、炭素担体として、ナノサイズの帯状グラフェンが3次元状に規則的に連結した構造を有するゼオライト鋳型炭素(ZTC)も挙げることができる。
炭素担体のBET比表面積は、好ましくは10m2/g担体以上800m2/g担体未満であり、より好ましくは20〜700m2/g担体であり、更に好ましくは50〜600m2/g担体である。このようなBET比表面積であれば、炭素担体に十分な触媒金属を担持(高分散)しつつ、加熱処理により触媒金属が炭素担体に過度に埋没することを防止できる。なお、担体の「BET比表面積(m2/g担体)」は、窒素吸着法により測定される。
また、炭素担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、一次平均粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。なお、「担体の平均粒子径」は、X線回折(XRD)における担体粒子の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径や、透過型電子顕微鏡(TEM)により調べられる担体の粒子径の平均値として測定されうる。本明細書では、「担体の平均粒子径」は、統計上有意な数(例えば、少なくとも200個、好ましくは少なくとも300個)のサンプルについて透過型電子顕微鏡像より調べられる担体粒子の粒子径の平均値である。ここで、「粒子径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味するものとする。
炭素担体への触媒金属の担持は公知の方法で行うことができ、特に制限されない。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。また、白金含有合金を担持する場合は、白金イオンおよび非白金金属イオンを順次炭素担体上に担持してもよい。あるいは、白金前駆体および非白金金属前駆体を含む混合液を調製し、この混合液に還元剤を添加し、白金前駆体由来の白金イオンおよび非白金金属前駆体由来の非白金金属イオンを同時に炭素担体上に担持してもよい。炭素担体への触媒金属の担持手法の一例として、液相還元担持法による担持を以下に詳述するが、担持方法を以下に限定するものではない。
まず、白金前駆体を溶媒に添加して、白金前駆体含有液を調製する。ここで、白金前駆体としては、特に制限されないが、白金塩および白金錯体が使用できる。より具体的には、塩化白金酸(典型的にはその六水和物;H2[PtCl6]・6H2O)、ジニトロジアンミン白金等の硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、アミン、テトラアンミン白金およびヘキサアンミン白金等のアンミン塩、炭酸塩、重炭酸塩、塩化白金等のハロゲン化物、亜硝酸塩、シュウ酸などの無機塩類、ギ酸塩などのカルボン酸塩ならびに水酸化物、アルコキサイドなどを使用することができる。なお、上記白金前駆体は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物として使用してもよい。
上記白金前駆体含有液の調製に使用する溶媒は、特に制限されず、使用する白金前駆体の種類によって適宜選択される。なお、上記白金前駆体含有液の形態は特に制限されず、溶液、分散液および懸濁液を包含する。均一に混合できるという観点から、白金前駆体含有液は溶液の形態であることが好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の有機溶媒、酸、アルカリなどが挙げられる。これらのうち、白金前駆体を十分に溶解する(白金を効率よくイオン化する)という観点から、水が好ましく、純水または超純水を用いることが特に好ましい。上記溶媒は、単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用してもよい。
白金前駆体含有液における白金前駆体の濃度は、特に制限されないが、金属換算で0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜45質量%である。
次に、上記白金前駆体含有液に炭素担体および還元剤を添加し、白金前駆体由来の白金イオンを炭素担体上で還元、担持して、白金担持前駆粒子を製造する。ここで、炭素担体および還元剤の白金前駆体含有液への添加順序は特に制限されないが、白金粒子の炭素担体上への分散のしやすさなどを考慮すると、炭素担体をまず白金前駆体含有液に添加した後、還元剤を添加することが好ましい。
炭素担体の白金前駆体含有液への添加量は、特に制限されないが、担体の全量に対して、0.1〜70重量%となるように調節することが好ましい。担持濃度をこのような範囲にすることで、触媒金属同士の凝集が抑制され、また、電極触媒層の厚さの増加を抑制できるため好ましい。より好ましくは0.5〜60重量%、さらにより好ましくは2〜50重量%である。
白金前駆体含有液に炭素担体を添加した後、撹拌してもよい。これにより、白金前駆体および炭素担体を均一に混合するため、触媒金属粒子を炭素担体上に均一に分散可能である。ここで、撹拌条件は、特に均一に混合できる条件であれば特に制限されない。例えば、スターラーやホモジナイザなどの適当な攪拌機を用いる、あるいは、超音波分散装置など超音波を印加することによって、均一に分散混合できる。また、撹拌温度は、好ましくは0〜50℃である。また、撹拌時間としては分散が十分に行われるように適宜設定すればよく、通常、1〜60分である。
また、還元剤としては、特に制限されず、従来と同様の還元剤が使用できる。例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ギ酸、ギ酸ナトリウムやギ酸カリウムなどのギ酸塩、ホルムアルデヒド、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウムなどのクエン酸塩、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)およびヒドラジン(N2H4)などが使用できる。なお、上記還元剤のうち、クエン酸三ナトリウム二水和物は凝集防止剤としても作用しうる。これらは水和物の形態になっていてもよい。また、2種類以上を混合して使用してもよい。還元剤の添加形態は特に制限されず、そのまま白金前駆体含有液に添加しても、または予め溶媒に溶解した還元剤溶液の形態で、白金前駆体含有液に添加してもよい。溶液の形態であると、容易に均一に混合できるため、好ましい。
還元剤の添加量としては、白金イオンを還元させるのに十分な量であれば特に制限されない。具体的には、還元剤の添加量は、白金イオン 1モル(金属換算)に対して、好ましくは5〜90モルである。このような量であれば、白金イオンを十分還元できる。なお、2種以上の還元剤を用いる場合には、これらの合計の添加量が上記範囲であることが好ましい。
白金前駆体の還元反応条件は、白金イオン等の触媒金属イオンを十分炭素担体上に還元、担持できる条件であれば特に制限されない。例えば、還元反応温度は、溶媒の沸点付近(溶媒沸点±10℃、より好ましくは溶媒沸点±5℃)であることが好ましい。または、還元反応温度は、好ましくは40〜150℃、より好ましくは60〜100℃である。また、還元反応時間は、白金前駆体および還元剤を均一に混合できる時間であれば特に制限されないが、好ましくは0.5〜30時間、より好ましくは1〜8時間である。このような条件であれば、触媒金属を炭素担体により高分散・担持できる。
上記還元反応により、触媒金属イオンが炭素担体上に還元、担持され、電極触媒前駆体粒子含有液が得られる。ここで、必要であれば、電極触媒前駆体粒子を反応液から単離してもよい。ここで、単離方法は、特に制限されず、電極触媒前駆体粒子を濾過、乾燥すればよい。なお、必要であれば、電極触媒前駆体粒子を濾過した後に、洗浄(例えば、水洗)を行ってもよい。また、上記濾過ならびに必要であれば洗浄工程は、繰り返し行ってもよい。また、濾過または洗浄後、電極触媒前駆体粒子を乾燥してもよい。ここで、電極触媒前駆体粒子の乾燥は、空気中で行ってもよく、また減圧下で行ってもよい。また、乾燥温度は特に限定されないが、例えば、10〜100℃、好ましくは室温(25℃)〜80℃程度の範囲で行うことができる。また、乾燥時間もまた、特に限定されないが、例えば、1〜60時間、好ましくは5〜50時間程度の範囲で行うことができる。
なお、触媒金属の平均粒径を所望の範囲とするために、触媒金属を担体に担持させた後、電極触媒前駆体を還元雰囲気下でアニール処理を行ってもよい。このとき、アニール処理温度は、300〜1200℃の範囲であると好ましく、500〜1150℃の範囲であるとより好ましく、700〜1000℃の範囲であると特に好ましい。また、還元雰囲気とは、触媒金属の粒成長に寄与するものであれば特に制限されないが、還元性ガスと不活性ガスとの混合雰囲気下で行うことが好ましい。還元性ガスは、特に制限されないが、水素(H2)ガスが好ましい。また、不活性ガスは、特に制限されないが、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、及び窒素(N2)などが使用できる。上記不活性ガスは、単独で使用してもあるいは2種以上の混合ガスの形態で使用してもよい。また、加熱処理時間は、0.1〜2時間であると好ましく、0.5〜1.5時間であるとより好ましい。
電極触媒前駆体における白金含有触媒金属の平均粒径(直径)は特に制限されないが、例えば、1〜30nmであり、好ましくは2nm以上10nm未満であり、さらに好ましくは3nmを超えて10nm未満である。白金含有触媒金属の平均粒径(直径)を上記範囲とすることで、触媒金属の比表面積を確保しつつ、複雑な工程を必要とせずに白金含有触媒金属を炭素担体に適度に埋没させ得る。なお、白金含有触媒金属の平均粒子径(直径)は、以下のようにして測定される値である。まず、n個の粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、各粒子の投影面積よりその面積が真円であった場合の粒子径(等価円直径)を逆算して、各粒子の粒子径(d(nm))を測定する。このようにして得られた粒子の粒子径(d(nm))を用いて、下記式(A)によって、粒子の平均粒子径(nm)を算出する。なお、粒子の測定数(n)は、特に制限されないが、統計学的に有意差のない数であることが好ましく、例えば少なくとも300個である。
また、触媒活性のさらなる向上の観点から、電極触媒前駆体において、触媒金属と炭素担体との合計重量に対する触媒金属の重量比(触媒金属の担持率、金属換算)は、好ましくは5〜45重量%である。より好ましくは、電極触媒前駆体において、触媒金属の担持率(金属換算)は、10〜35重量%である。触媒金属の担持量がかような範囲内の値であると、炭素担体上での触媒成分の分散度と触媒性能とのバランスが適切に制御されうる。なお、触媒金属の担持量は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP atomic emission spectrometry)や誘導結合プラズマ質量分析(ICP mass spectrometry)、蛍光X線分析(XRF)等の、従来公知の方法によって調べることができる。
本発明に係る方法では、以上のように準備した電極触媒前駆体を酸素含有雰囲気下で加熱(加熱処理)する。これによって、電極触媒前駆体の重量を減少させる。本発明の一実施形態では、電極触媒前駆体の重量が、0%を超えて10%未満の割合で減少するように、上記加熱を行う。本発明の別の実施形態では、上記関係式3を満たす温度で加熱を行う。以上のような条件で電極触媒前駆体を加熱することで、白金含有触媒金属と接触している部分において炭素担体の酸化分解が進行し、触媒金属が炭素担体に適度に埋没した構造の電極触媒を得ることができる。これにより、高活性の電極触媒を得ることができる。
本発明に係る方法では、上記の電極触媒前駆体の加熱処理を酸素(分子状酸素)含有雰囲気下で行う。酸素(分子状酸素)含有雰囲気下で加熱処理を行うことで、白金含有触媒金属と接触している炭素担体表面において酸化分解が進行する。加熱処理は、酸素に加え、ヘリウム、アルゴン、窒素等の酸素以外の気体を含む雰囲気下で行ってもよい。加熱処理における雰囲気の酸素含有量は、酸化分解反応促進の観点から、例えば1〜80体積%であり、好ましくは5体積%を超えて50体積%以下であり、より好ましくは10体積%を超えて40体積%以下である。好ましい一実施形態では、上記の加熱は、空気雰囲気下で行う。
加熱処理は従来公知の機器を用いて行えばよく、特に制限されないが、例えば、オーブン、ファーネス、低温乾燥機等を用いて行えばよい。
一実施形態では、加熱処理による電極触媒前駆体の重量減少の割合は0%を超えて10%未満である。好ましくは加熱において電極触媒前駆体の重量を6%以上10%未満の割合で減少させる。より好ましくは、加熱において電極触媒前駆体の重量を6%を超えて10%未満の割合で減少させる。上記のような重量減少の割合で加熱処理を行うことで、特に高活性な電極触媒を得ることができる。なお、本明細書において電極触媒前駆体の重量減少の割合(重量減少率)は、実施例に記載の手法により算出された値である。
一実施形態では、電極触媒前駆体の加熱処理は炭素担体の燃焼温度(Tcarbon)未満で行う。これにより、炭素担体が燃焼により消失することを防止できる。すなわち、本発明の一実施形態は加熱における温度が、炭素担体の燃焼温度未満である。なお、炭素担体の燃焼温度は、実施例に記載のように、加熱処理を行う雰囲気下で炭素担体の熱重量分析を行うことにより、示差熱分析(DTA)の発熱ピーク温度として求めることができる。電極触媒の活性の観点から、好ましい一実施形態では、以下の関係式2を満たす温度で上記加熱を行う:
ただし、上記関係式2において、Theat(℃)は前記加熱における温度を表し;Tcarbon(℃)は前記炭素担体の燃焼温度を表す。
一実施形態では、得られる電極触媒の活性の観点から、炭素担体の燃焼温度(Tcarbon)から150℃を引いた温度を下限として、当該下限温度以上の温度で電極触媒前駆体の加熱処理を行う。すなわち、当該実施形態では、以下の関係式1を満たす温度で上記加熱を行う:
ただし、上記関係式1において、Theat(℃)は前記加熱における温度を表し;Tcarbon(℃)は前記炭素担体の燃焼温度を表す。
より好ましくは、炭素担体の燃焼温度(Tcarbon)から130℃を引いた温度を下限として、当該下限温度以上の温度で電極触媒前駆体の加熱処理を行う。すなわち、当該実施形態では、以下の関係式1aを満たす温度で上記加熱を行う:
ただし、上記関係式1aにおいて、Theat(℃)およびTcarbon(℃)は、上記関係式1と同様である。
一実施形態では、上記関係式3を満たす温度で加熱を行う。特に高活性な電極触媒を得ることができるという観点から、より好ましい実施形態では、下記関係式3aを満たす温度で電極触媒前駆体の加熱を行う。
ただし、上記関係式3aにおいて、Theat(℃)およびTcarbon(℃)は、上記関係式3と同様である。
さらに好ましい実施形態では、下記関係式3bを満たす温度で電極触媒前駆体の加熱を行う。
ただし、上記関係式3bにおいて、Theat(℃)およびTcarbon(℃)は、上記関係式3と同様である。
例えば、炭素担体としてVulcan(登録商標)を用いる場合は、電極触媒前駆体の加熱は、200〜320℃の範囲内の温度で行ってもよく、好ましい一実施形態では、280〜320℃の範囲内の温度で行う。
加熱処理時は減圧や加圧してもよいが、加熱処理時の雰囲気圧力は、例えば0.05〜0.5MPaの範囲内であってもよく、好ましくは大気圧である。
上記加熱温度での必要な加熱時間は、特に制限されないが、例えば、電極触媒前駆体重量が定常状態となるのに必要な時間を熱重量分析により求めることで決定されてもよい。より具体的には、加熱処理の時間は、例えば、0.5時間を超えて24時間以内であり、好ましくは1〜7時間であり、より好ましくは1時間を超えて5時間未満である。加熱処理時間を上記範囲内とすることで、所望の減少率で電極触媒前駆体の重量を減少させつつ、加熱時間の長期化による生産コストの増加を抑えることができる。
加熱処理時の昇温速度もまた特に制限されないが、好ましくは5〜30℃/分である。昇温速度を5℃/分以上とすることにより、温度制御がしやすくなり、オーバーシュート(一時的に目標値よりも高い温度になってしまう現象)による副反応を防止し得る。昇温速度を30℃/分以下とすることにより、副反応を防止し、加熱処理工程が過度に長期化することを防止し得る、という利点がある。上記観点から、加熱処理時の昇温速度は、より好ましくは10〜20℃/分である。
上記本発明の方法によって製造される電極触媒では、触媒金属が炭素担体上に高分散する。また、固体高分子形燃料電池(PEFC)に利用した場合、高分子電解質が触媒金属と接触することを抑えることができ、触媒金属の電気化学的に有効な表面積を確保することができる。このため、本発明に係る製造方法で得られる電極触媒は、家庭用や移動体駆動用の電源などより高性能が求められる燃料電池用途により好適に適用できる。すなわち、本発明の方法によって製造される電極触媒を触媒層に有する膜電極接合体および燃料電池は、発電性能に優れる。
すなわち、本発明の一実施形態では、本発明の方法によって製造される電極触媒を含む触媒層を備える膜電極接合体(MEA)および燃料電池を提供する。以下では、本発明の一実施形態に係る電極触媒を含む触媒層を備える膜電極接合体(MEA)および燃料電池、ならびにこれらの製造方法を説明する。
[電解質膜−電極接合体(MEA)]
本発明の方法によって製造される電極触媒は、電解質膜−電極接合体(MEA)に好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明に係る電極触媒を含む電解質膜−電極接合体(MEA)、特に燃料電池用電解質膜−電極接合体(MEA)をも提供する。本発明に係る電解質膜−電極接合体(MEA)は、高い発電性能(特に面積比活性)を発揮できる。
本発明の電解質膜−電極接合体(MEA)は、従来の電極触媒に代えて、本発明に係る製造方法で得られる電極触媒(触媒)を用いる以外は、同様の構成を適用できる。以下に、本発明のMEAの好ましい形態を説明するが、本発明は下記形態に限定されない。
MEAは、電解質膜、上記電解質膜の両面に順次形成されるアノード触媒層およびアノードガス拡散層ならびにカソード触媒層およびカソードガス拡散層から構成される。そしてこの電解質膜−電極接合体において、前記カソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方に本発明の電極触媒を使用する。
(電解質膜)
電解質膜は、例えば、固体高分子電解質膜から構成される。この固体高分子電解質膜は、例えば、燃料電池(PEFC等)の運転時にアノード触媒層で生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層へと選択的に透過させる機能を有する。また、固体高分子電解質膜は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
固体高分子電解質膜を構成する電解質材料としては特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、以下の触媒層にて高分子電解質として説明したフッ素系高分子電解質や炭化水素系高分子電解質を同様にして用いることができる。この際、触媒層に用いた高分子電解質と必ずしも同じものを用いる必要はない。
電解質膜の厚さは、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定すればよく、特に制限されない。電解質膜の厚さは、通常は5〜300μm程度である。電解質膜の厚さがかような範囲内の値であると、製膜時の強度や使用時の耐久性および使用時の出力特性のバランスが適切に制御されうる。
(触媒層)
触媒層は、実際に電池反応が進行する層である。具体的には、アノード触媒層では水素の酸化反応が進行し、カソード触媒層では酸素の還元反応が進行する。ここで、本発明の電極触媒は、カソード触媒層またはアノード触媒層のいずれに存在してもいてもよい。酸素還元活性の向上の必要性を考慮すると、少なくともカソード触媒層に本発明の電極触媒を使用することが好ましい。ただし、上記形態に係る触媒層は、アノード触媒層として用いてもよいし、カソード触媒層およびアノード触媒層双方として用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
触媒層は、本発明に係る電極触媒および電解質を含む。電解質は、特に制限されないが、イオン伝導性の高分子電解質であることが好ましい。上記高分子電解質は、燃料極側の触媒活物質周辺で発生したプロトンを伝達する役割を果たすことから、プロトン伝導性高分子とも呼ばれる。
当該高分子電解質は、特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。高分子電解質は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質とに大別される。
フッ素系高分子電解質を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性、耐久性、機械強度に優れるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質が用いられる。
炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の観点からは、これらの炭化水素系高分子電解質が好ましく用いられる。なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。
プロトンの伝達を担う高分子電解質においては、プロトンの伝導度が重要となる。ここで、高分子電解質のEWが大きすぎる場合には触媒層全体でのイオン伝導性が低下する。したがって、本形態の触媒層は、EWの小さい高分子電解質を含むことが好ましい。具体的には、本形態の触媒層は、好ましくはEWが1500g/eq.以下の高分子電解質を含み、より好ましくは1200g/eq.以下の高分子電解質を含み、特に好ましくは1000g/eq.以下の高分子電解質を含む。一方、EWが小さすぎる場合には、親水性が高すぎて、水の円滑な移動が困難となる。かような観点から、高分子電解質のEWは600以上であることが好ましい。なお、EW(Equivalent Weight)は、プロトン伝導性を有する交換基の当量重量を表している。当量重量は、イオン交換基1当量あたりのイオン交換膜の乾燥重量であり、「g/eq」の単位で表される。
また、触媒層は、EWが異なる2種類以上の高分子電解質を発電面内に含み、この際、高分子電解質のうち最もEWが低い高分子電解質が流路内ガスの相対湿度が90%以下の領域に用いることが好ましい。このような材料配置を採用することにより、電流密度領域によらず、抵抗値が小さくなって、電池性能の向上を図ることができる。流路内ガスの相対湿度が90%以下の領域に用いる高分子電解質、すなわちEWが最も低い高分子電解質のEWとしては、900g/eq.以下であることが望ましい。これにより、上述の効果がより確実、顕著なものとなる。
さらに、EWが最も低い高分子電解質を冷却水の入口と出口の平均温度よりも高い領域に用いることが望ましい。これによって、電流密度領域によらず、抵抗値が小さくなって、電池性能のさらなる向上を図ることができる。
さらには、燃料電池システムの抵抗値を小さくするとする観点から、EWが最も低い高分子電解質は、流路長に対して燃料ガスおよび酸化剤ガスの少なくとも一方のガス供給口から3/5以内の範囲の領域に用いることが望ましい。
触媒層には、必要に応じて、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などの撥水剤、界面活性剤などの分散剤、グリセリン、エチレングリコール(EG)、ポリビニルアルコール(PVA)、プロピレングリコール(PG)などの増粘剤、造孔剤等の添加剤が含まれていても構わない。
触媒層の膜厚(乾燥膜厚)は、好ましくは0.05〜30μm、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは2〜15μmである。なお、上記は、カソード触媒層およびアノード触媒層双方に適用される。しかしながら、カソード触媒層およびアノード触媒層は、同じであってもあるいは異なってもよい。
(ガス拡散層)
ガス拡散層(アノードガス拡散層、カソードガス拡散層)は、セパレータのガス流路を介して供給されたガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)の触媒層への拡散を促進する機能、および電子伝導パスとしての機能を有する。
ガス拡散層の基材を構成する材料は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性および多孔質性を有するシート状材料が挙げられる。基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。基材の厚さがかような範囲内の値であれば、機械的強度とガスおよび水などの拡散性とのバランスが適切に制御されうる。
ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防止することを目的として、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、ガス拡散層は、撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層(マイクロポーラス層;MPL、図示せず)を基材の触媒層側に有するものであってもよい。
カーボン粒子層に含まれるカーボン粒子は特に限定されず、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく用いられうる。カーボン粒子の平均粒径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられうる。
カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、撥水性および電子伝導性のバランスを考慮して、重量比で90:10〜40:60(カーボン粒子:撥水剤)程度とするのがよい。なお、カーボン粒子層の厚さについても特に制限はなく、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
(電解質膜−電極接合体の製造方法)
電解質膜−電極接合体の作製方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を使用できる。例えば、電解質膜に触媒層をホットプレスで転写または塗布し、これを乾燥したものに、ガス拡散層を接合する方法や、ガス拡散層のマイクロポーラス層側(マイクロポーラス層を含まない場合には、基材層の片面)に触媒層を予め塗布して乾燥することによりガス拡散電極(GDE)を2枚作製し、固体高分子電解質膜の両面にこのガス拡散電極をホットプレスで接合する方法を使用することができる。ホットプレス等の塗布、接合条件は、固体高分子電解質膜や触媒層内の高分子電解質の種類(パ−フルオロスルホン酸系や炭化水素系)によって適宜調整すればよい。
[燃料電池]
上述した電解質膜−電極接合体(MEA)は、燃料電池に好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明の電解質膜−電極接合体(MEA)を用いてなる燃料電池をも提供する。本発明の燃料電池は、高い発電性能(特に質量比活性)および耐久性を発揮できる。
ここで、燃料電池は、膜電極接合体(電解質膜−電極接合体、MEA)と、燃料ガスが流れる燃料ガス流路を有するアノード側セパレータと酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路を有するカソード側セパレータとからなる一対のセパレータとを有する。本発明の燃料電池は、耐久性に優れ、かつ高い発電性能を発揮できる。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明に係る電極触媒を使用した触媒層を有する膜電極接合体(MEA)および燃料電池の一実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明した場合では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池(PEFC)1の基本構成を示す概略図である。PEFC1は、まず、固体高分子電解質膜2と、これを挟持する一対の触媒層(アノード触媒層3aおよびカソード触媒層3c)とを有する。そして、固体高分子電解質膜2と触媒層(3a、3c)との積層体はさらに、一対のガス拡散層(GDL)(アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4c)により挟持されている。このように、固体高分子電解質膜2、一対の触媒層(3a、3c)および一対のガス拡散層(4a、4c)は、積層された状態で電解質膜−電極接合体(MEA)10を構成する。
PEFC1において、MEA10はさらに、一対のセパレータ(アノードセパレータ5aおよびカソードセパレータ5c)により挟持されている。図1において、セパレータ(5a、5c)は、図示したMEA10の両端に位置するように図示されている。ただし、複数のMEAが積層されてなる燃料電池スタックでは、セパレータは、隣接するPEFC(図示せず)のためのセパレータとしても用いられるのが一般的である。換言すれば、燃料電池スタックにおいてMEAは、セパレータを介して順次積層されることにより、スタックを構成することとなる。なお、実際の燃料電池スタックにおいては、セパレータ(5a、5c)と固体高分子電解質膜2との間や、PEFC1とこれと隣接する他のPEFCとの間にガスシール部が配置されるが、図1ではこれらの記載を省略する。
セパレータ(5a、5c)は、例えば、厚さ0.5mm以下の薄板にプレス処理を施すことで図1に示すような凹凸状の形状に成形することにより得られる。セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凸部はMEA10と接触している。これにより、MEA10との電気的な接続が確保される。また、セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凹部(セパレータの有する凹凸状の形状に起因して生じるセパレータとMEAとの間の空間)は、PEFC1の運転時にガスを流通させるためのガス流路として機能する。具体的には、アノードセパレータ5aのガス流路6aには燃料ガス(例えば、水素など)を流通させ、カソードセパレータ5cのガス流路6cには酸化剤ガス(例えば、空気など)を流通させる。
一方、セパレータ(5a、5c)のMEA側とは反対の側から見た凹部は、PEFC1の運転時にPEFCを冷却するための冷媒(例えば、水)を流通させるための冷媒流路7とされる。さらに、セパレータには通常、マニホールド(図示せず)が設けられる。このマニホールドは、スタックを構成した際に各セルを連結するための連結手段として機能する。かような構成とすることで、燃料電池スタックの機械的強度が確保されうる。
なお、図1に示す実施形態においては、セパレータ(5a、5c)は凹凸状の形状に成形されている。ただし、セパレータは、かような凹凸状の形態のみに限定されるわけではなく、ガス流路および冷媒流路の機能を発揮できる限り、平板状、一部凹凸状などの任意の形態であってもよい。
(セパレータ)
セパレータは、固体高分子形燃料電池などの燃料電池の単セルを複数個直列に接続して燃料電池スタックを構成する際に、各セルを電気的に直列に接続する機能を有する。また、セパレータは、燃料ガス、酸化剤ガス、および冷却剤を互に分離する隔壁としての機能も有する。これらの流路を確保するため、上述したように、セパレータのそれぞれにはガス流路および冷却流路が設けられていることが好ましい。セパレータを構成する材料としては、緻密カーボングラファイト、炭素板などのカーボンや、ステンレスなどの金属など、従来公知の材料が適宜制限なく採用できる。セパレータの厚さやサイズ、設けられる各流路の形状やサイズなどは特に限定されず、得られる燃料電池の所望の出力特性などを考慮して適宜決定できる。
燃料電池の製造方法は、特に制限されることなく、燃料電池の分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。
さらに、燃料電池が所望する電圧を発揮できるように、セパレータを介して電解質膜−電極接合体を複数積層して直列に繋いだ構造の燃料電池スタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
上述したPEFCや電解質膜−電極接合体は、発電性能および耐久性に優れる触媒層を用いている。したがって、当該PEFCや電解質膜−電極接合体は発電性能および耐久性に優れる。
本実施形態のPEFCやこれを用いた燃料電池スタックは、例えば、車両に駆動用電源として搭載されうる。
上記のような燃料電池は、優れた発電性能を発揮する。ここで、燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では固体高分子形燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、固体高分子形燃料電池(PEFC)が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求される自動車などの移動体用電源として用いられることが特に好ましい。
燃料電池を運転する際に用いられる燃料は特に限定されない。例えば、水素、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが用いられうる。なかでも、高出力化が可能である点で、水素やメタノールが好ましく用いられる。
また、燃料電池の適用用途は特に限定されるものではないが、車両に適用することが好ましい。本発明の電解質膜−電極接合体は、発電性能および耐久性に優れ、小型化が実現可能である。このため、本発明の燃料電池は、車載性の点から、車両に該燃料電池を適用した場合、特に有利である。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
(電極触媒前駆体の準備)
炭素担体としてVulcan(登録商標) XC72(キャボット社製、BET比表面積:220(m2/g担体)、一次平均粒子径:37nm)を用いて、平均粒径(直径)3.4nmの白金を担持率10重量%となるように担持して、電極触媒前駆体を得た。すなわち、白金濃度4.6質量%のジニトロジアンミン白金硝酸水溶液(白金前駆体含有液)1000g(白金含有量:46g)に46gの炭素担体を浸漬させ攪拌後、還元剤として100%エタノールを100ml添加した。この溶液を沸点で7時間、攪拌、混合し、白金を炭素担体に担持させた。そして、濾過、乾燥することにより、担持率が10重量%の粉末を得た。その後、水素雰囲気において、温度900℃に1時間保持することによってアニール処理を行い、電極触媒前駆体を得た。
熱重量分析により炭素担体の燃焼温度(DTAにおける発熱ピーク温度、Tcarbon)を求めたところ、387℃であった。なお、熱重量分析は、以下の条件にて行った。
方法 TG−DTA
昇温速度 5℃/分
ガス雰囲気 空気
測定試料を白金パンに入れて計測した。
(実施例1)
上記の電極触媒前駆体を用いて、空気雰囲気(大気圧)において、300℃で2時間、電気炉内で加熱処理をし、空冷して電極触媒1を得た(昇温速度:10℃/分)。電極触媒1の電子顕微鏡像を図2Aに示す。加熱前後における重量減少率は8%であった。なお、加熱前後における重量減少率は、以下の式により求めた。
(実施例2)
実施例1における加熱温度を250℃(昇温速度:10℃/分)に変更した以外は実施例1と同様に電極触媒前駆体の加熱処理をし、電極触媒2を得た。加熱前後における重量減少率は6%であった。
(比較例1)
上記の電極触媒前駆体を加熱処理せずに、25℃で保管していたものを比較電極触媒1として用いた。比較電極触媒1の電子顕微鏡像を図2Bに示す。図2Aと比較して、図2Bでは、白点状の触媒金属粒子が炭素担体上に露出していることが分かる。
(比較例2)
実施例1における加熱温度を330℃(昇温速度:10℃/分)に変更した以外は実施例1と同様に電極触媒前駆体の加熱処理をし、比較電極触媒2を得た。加熱前後における重量減少率は10%であった。
上記にて得られた電極触媒1〜2および比較電極触媒1〜2について、下記方法にしたがって、比表面積(m2/g Pt)および面積比活性(μA/cm2 Pt)を測定した。結果を下記表に示す。
[白金の電気化学的表面積(cm2 Pt)の測定]
実施例および比較例の電極触媒を、それぞれ、直径5mmのグラッシーカーボンディスクにより構成される回転ディスク電極(RDE、幾何面積:0.19cm2)上に、回転ディスク電極の単位面積当たりの白金担持量が34μg/cm2となるように、ナフィオン(登録商標)(ナフィオン(登録商標)の塗布量=10μg/cm2)と共に、均一に塗布し、性能評価用RDE電極を作製した。
各実施例及び比較例の性能評価用RDE電極に対して、電気化学計測装置を用い、N2ガスで飽和した25℃の0.1M過塩素酸中において、可逆水素電極(RHE)に対して0.05〜1.2Vの電位範囲で、50mVs−1の走査速度でサイクリックボルタンメトリーを行った。得られたボルタモグラムの0.05〜0.4Vに現れる水素吸着ピークの面積より、各電極触媒における白金の電気化学的表面積(cm2 Pt)を算出した。
[面積比活性の測定]
実施例及び比較例の性能評価用RDE電極に対して、電気化学計測装置を用い、酸素で飽和した25℃の0.1M過塩素酸中で、0.2Vから1.2Vまで速度10mV/sで電位走査を行った。さらに、電位走査によりに得られた電流から、物質移動(酸素拡散)の影響をKoutecky−Levich式を用いて補正した上で、0.9Vでの電流値を抽出した。そして、得られた電流値を上記白金の電気化学的表面積(cm2 Pt)で除した値を面積比活性(μA/cm2 Pt)とした。Koutecky−Levich式を用いた方法は、例えば、Electrochemistry Vol.79, No.2, p.116−121 (2011) (対流ボルタモグラム(1)酸素還元(RRDE))の「4 Pt/C触媒上での酸素還元反応の解析」に記載されている。
上記表に示す通り、本発明に係る製造方法により得られた電極触媒は高い触媒活性(面積比活性)を有することが分かる。なお、比較電極触媒2は電気化学的表面積の測定値が安定せず、触媒活性を計測することができなかった。これは、比較電極触媒2では、触媒金属が炭素担体内に過度に埋没されたためではないかと考えられる。