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JP6865459B2 - インスリン抵抗性改善剤 - Google Patents
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JP6865459B2 - インスリン抵抗性改善剤 - Google Patents

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Description

本発明は、2型糖尿病の治療に有効なインスリン抵抗性改善剤に関し、特に、梅酢ポリフェノール又はそれを構成する複数のアグリコンの特定の組み合わせを有効成分として含有するインスリン抵抗性改善剤に関する。
糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度が異常に高い疾患であり、原因の違いにより、膵臓のランゲルハンス島でインスリンを分泌しているβ細胞が死滅することが原因で患者の1割程度を占める1型糖尿病と、インスリン分泌低下又はインスリン抵抗性の向上が原因で患者の9割程度を占める2型糖尿病の2つに大きく分類される(非特許文献1を参照。)。
そして、2型糖尿病は、食餌療法と運動療法による減量、インスリンの自己注射、インスリン分泌促進薬の投与、ミグリトール(非特許文献2を参照。)等のブドウ糖吸収阻害剤(αグルコシダーゼ阻害剤)の投与、インスリン抵抗性改善剤の投与などの方法によって、主に治療されている。
このうち、インスリン抵抗性改善剤とは、肝臓、筋肉、脂肪組織などのインスリン抵抗性を改善する薬である。なお、インスリン抵抗性とは、細胞、臓器、個体レベルでインスリンの作用を得るために通常量以上のインスリンを必要とする状態のこと、すなわち、インスリンに対する感受性が低下した状態のことである。
インスリン抵抗性改善剤としては、ピオグリタゾン(非特許文献3を参照。)等のチアゾリジンジオン系インスリン抵抗性改善剤のほか、メトホルミン(非特許文献4を参照。)やブホルミン(非特許文献5を参照。)等のビグアニド系インスリン抵抗性改善剤が使用されている。また、これらのインスリン抵抗性改善剤以外にも、現在までに様々な研究がなされている。
具体的には、ロフェノール骨格を持つ化合物を有効成分として含有するもの(特許文献1を参照。)、アロエベラ等のユリ科植物の抽出物を有効成分として含有するもの(特許文献2を参照。)、シクロラノスタン骨格を持つ化合物を有効成分として含有するもの(特許文献3を参照。)、スフィンゴミエリン等のスフィンゴ脂質を有効成分として含有するもの(特許文献4を参照。)、フィブレート系薬剤とデュナリエラ属微細藻の抽出物を有効成分として含有するもの(特許文献5を参照。)、レモン果実等の抽出物を有効成分として含有するもの(特許文献6を参照。)が例示できる。
一方、梅干などの梅製品製造時に副生物(廃棄物)として大量に発生する梅酢は、ポリフェノール(梅酢ポリフェノール)を含んでおり、この梅酢ポリフェノールは多様な健康増進効果を備えていることが既に報告されている。
具体的には、ブドウ糖吸収阻害(αグルコシダーゼ阻害)効果(特許文献7を参照。)、抗疲労効果(特許文献8を参照。)、血圧上昇抑制効果(特許文献9を参照。)、抗菌効果(特許文献10を参照。)、抗ウィルス作用(特許文献11を参照。)が報告されている。しかし、梅酢ポリフェノールによるインスリン抵抗性改善効果については、一切報告されていなかった。
特許4165658号公報 特許4169777号公報 特許4176140号公報 特許5154218号公報 特許5317175号公報 特許5563181号公報 特許5282932号公報 特許5643928号公報 特開2012−171936号公報 特許5867802号公報 特開2014−214121号公報
"糖尿病"、[online]、[平成28年3月11日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/wiki/糖尿病> "ミグリトール"、[online]、[平成28年3月11日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/wiki/ミグリトール> "ピオグリタゾン"、[online]、[平成28年3月11日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/ピオグリタゾン> "メトホルミン"、[online]、[平成28年3月11日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/メトホルミン> "ブホルミン"、[online]、[平成28年3月11日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/ブホルミン>
本発明は、安全で効果が高く、梅加工食品を製造する際に副産物として生じる梅酢の利用をより促進できるインスリン抵抗性改善剤を提供することを課題とする。また、強いインスリン抵抗性改善活性を備えた医薬品、医薬部外品、食品組成物、飼料組成物を提供することも課題とする。
発明者らは、鋭意研究の結果、梅酢ポリフェノール又はそれを構成する複数のアグリコンの特定の組み合わせが優れたインスリン抵抗性改善効果を備えていることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明のインスリン抵抗性改善剤は、trans-p-クマル酸、カフェ酸及びフェルラ酸からなる群より選ばれた2種以上のアグリコンを有効成分とするものである。中でも、trans-p-クマル酸及びフェルラ酸の組み合わせ、trans-p-クマル酸及びカフェ酸の組み合わせ、又はtrans-p-クマル酸、カフェ酸及びフェルラ酸の組み合わせが好ましい。また、本発明の医薬品、医薬部外品、飼料組成物は、本発明のインスリン抵抗性改善剤を含むものである。
なお、本発明のインスリン抵抗性改善剤に利用可能な梅酢ポリフェノールとしては、(1)梅酢をスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂と接触させる接触工程と、(2)スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を水で洗浄する水洗工程と、(3)スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を、水と有機溶媒の混合溶媒で溶出する溶出工程とを含む製造方法により得られたものであることが好ましい。
そして、前記製造方法は、前記(1)〜(3)の各工程に加えて、(4)(3)溶出工程によって得られた溶出液を濃縮する濃縮工程を含んでいることが好ましく、(3)溶出工程で使用する水と有機溶媒の混合溶媒はエタノール水溶液であることが好ましい。
本発明の空腹時血糖値上昇抑制剤は、本発明のインスリン抵抗性改善剤におけるインスリン抵抗性改善作用の一側面としての空腹時血糖値上昇抑制作用を別途発明として捉えたものであり、trans-p-クマル酸、カフェ酸及びフェルラ酸からなる群れより選ばれた2種以上のアグリコンを有効成分とする。
なお、上記において、「空腹時血糖値上昇抑制」とは、空腹時血糖値上昇抑制剤の摂取により、空腹時血糖値の上昇が非摂取の場合と比較して相対的に抑制されることをいい、高い空腹時血糖値を低下させるような場合も含む。
本発明のインスリン抵抗性改善剤は、優れたインスリン抵抗性改善効果を備えているので、患者の生活の質を向上することができる。また、本発明のインスリン抵抗性改善剤は食品由来であるため高い安全性を有していることが保証されているので、長期間に渡って使用できることが期待できる。さらに、本発明のインスリン抵抗性改善剤は、梅干などの梅由来食品の製造時に発生する梅酢を原料とするため、産業廃棄物を減少することができる。
図1は、梅酢ポリフェノールのインスリン抵抗性改善効果を確認した結果を示すグラフである。 図2は、梅酢ポリフェノールの構成成分であるアグリコンの違いが、インスリン抵抗性の改善に与える影響を比較した結果を示すグラフである。 図3は、アグリコンの組み合わせの違いが、インスリン抵抗性の改善に与える影響を比較した結果を示すグラフである。
1.インスリン抵抗性改善剤
本発明のインスリン抵抗性改善剤は、梅酢ポリフェノール又はそれを構成する複数のアグリコンを有効成分として含有するものである。ここで、梅酢ポリフェノールは、多種類の成分を含んでおり、それら成分の構造は非糖部分(アグリコン)がヒドロキシ桂皮酸である配糖体等のヒドロキシ桂皮酸誘導体が大部分を占める。
なお、梅酢ポリフェノールを構成するアグリコンの主な成分は、trans-p-クマル酸、カフェ酸及びフェルラ酸である。これらのアグリコンは、2種以上を組み合わせることによって、単独で使用するよりもより優れたインスリン抵抗性改善効果を示す。具体的には、trans-p-クマル酸及びフェルラ酸の組み合わせ、trans-p-クマル酸及びカフェ酸の組み合わせ、又はtrans-p-クマル酸、カフェ酸及びフェルラ酸の組み合わせが好ましい組み合わせとして示される。
本発明の梅酢ポリフェノールは、(1)接触工程、(2)水洗工程、(3)溶出工程によって製造したものが好ましい。さらに、(4)濃縮工程を含んでいるほうがより好ましい。そこで、(1)〜(4)の各工程などについて以下に詳説する。
(1)接触工程
接触工程は、梅酢をスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂と接触させる工程である。なお、両者の接触は、大型の容器中で梅酢と吸着樹脂とを混合するバッチ法、吸着樹脂をカラムに詰めたカラムを使用する連続法どちらの方法でも行える。中でも、大量処理、省力化、自動化も可能であることから、カラムを使用する連続法が好ましい。
スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂には、ポリフェノール類を選択的に吸着、溶出できるのであれば、特に限定することなく公知の樹脂を使用できる。具体的には、ダイヤイオン(登録商標)HP20、HP21、セパビーズ(登録商標)SP70、SP700、SP825L、SP850など(すべて、三菱化学株式会社製)が例示できる。中でも、ダイヤイオン(登録商標)HP20、セパビーズ(登録商標)SP70が好ましい。
(2)水洗工程
水洗工程は、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を水で洗浄する工程である。この工程によって、梅酢中に含まれていたクエン酸や食塩等を、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂から水洗する。
(3)溶出工程
溶出工程は、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を、水と有機溶媒の混合溶媒で溶出する工程である。有機溶媒としては、水と混ざるものであれば特に限定されないが、具体的には、炭素数が1〜5のアルコール、アセトンなどが例示できる。中でも、エタノール、アセトンが好ましく、エタノールがより好ましい。なお、有機溶媒は単独で又は複数を組み合わせて使用してもよい。
水と有機溶媒との混合比は、有機溶媒の割合が30〜90容積%が好ましく、50〜60容積%がより好ましい。有機溶媒の割合が、30容量%よりも低いと、梅酢ポリフェノールの収率が下がり、90容量%よりも高いと溶媒が爆発する可能性があり、安全性の問題が生じる。
(4)濃縮工程
濃縮工程は、溶出工程によって得られた溶出液を濃縮する工程である。濃縮後の形態は、用途に応じて、例えば、粘度の高い液体であってもよく、粉末状の固体であってもよい。濃縮方法は公知の方法であれば特に限定することなく使用できる。具体的には、限外ろ過法、スプレードライ、凍結乾燥などの乾燥方法、デキストリンなどの造形剤を添加して造形処理する方法が例示できる。
(5)その他
本発明の梅酢ポリフェノールを製造する際には、前記(1)から(4)の各工程に加えて、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂を有機溶媒で再生する工程、混合溶媒を蒸留して再生する工程等の工程を必要に応じて加えてもよい。
2.医薬品等
本発明の医薬品、医薬部外品、食品組成物及び飼料組成物は、本発明のインスリン抵抗性改善剤を含んでいるものである。なお、医薬品、医薬部外品、食品組成物及び飼料組成物におけるインスリン抵抗性改善剤の含有量は、使用するインスリン抵抗性改善剤の改善効果やその用途等を勘案して自由に設定することができる。
(1)医薬品
医薬品とは、医薬品医療機器等法に規定されているものであって、ヒト用の医療用医薬品、ヒト用一般用医薬品(OTC)、動物用医薬品の何れをも含む。さらに、その形態については、例えば、丸薬剤、液剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル錠剤、トローチ剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、懸濁液、エマルジョン剤、エリキシル剤などの経口剤、注射剤、坐剤、外用液剤、軟膏等の塗布剤等の非経口剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、本発明の医薬品を経口剤として製造する場合には、公知の賦型剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、矯臭剤、着色剤等とともに、公知の製造方法により製造すればよい。
また、本発明の医薬品を非経口剤として製造する場合には、注射用蒸留水、生理食塩水希釈剤、ブドウ糖水溶液等の希釈剤、公知の殺菌剤、防腐剤、安定剤、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤とともに、公知の方法によって製造すればよい。
(2)医薬部外品
医薬部外品とは、医薬品医療機器等法に規定されているものであって、例えば、栄養補給薬(サプリメント)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(3)食品組成物
食品組成物とは、ヒト用の一般食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)、健康食品、栄養補助食品などを意味している。食品として、具体的には、かまぼこ、ちくわ、はんぺん等の水産加工製品、ソーセージ、ハム、ウインナ−等の食肉加工製品、豆腐や油揚げ、コンニャク等の農産加工製品、洋菓子、和菓子、パン、ケ−キ、ゼリ−、プリン、スナック、クッキ−、ガム、キャンディ、ラムネ等の菓子類、生めん、中華めん、そば、うどん等のめん類、ソ−ス、醤油、ドレッシング、マヨネ−ズ、タレ、ハチミツ、粉末あめ、水あめ等の調味料、カレ−粉、からし粉、コショウ粉等の香辛料、ジャム、マーマレード、チョコレ−トスプレッド、漬物、そう菜、ふりかけや、各種野菜・果実の缶詰・瓶詰等の加工野菜・果実類、チ−ズ、バタ−、ヨ−グルト等の乳製品、果実ジュ−ス、野菜ジュ−ス、乳清飲料、清涼飲料、健康茶、薬用酒類等の飲料、その他、栄養補強(栄養補助)等を目的とする健康維持のための錠剤、飲料、顆粒等の健康志向の飲食品類などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
(4)飼料組成物
飼料組成物とは、ヒト以外の動物の餌のことである。ヒト以外の動物としては、例えば、イヌ、ネコなどの愛玩動物、カナリア、インコなど観賞用鳥類、キンギョ、熱帯魚などの観賞用魚類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜、ニワトリなどの家禽、ブリ、マダイ、ヒラメなどの養殖魚などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以下、本発明について実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明の特許請求の範囲は、以下の実施例によって如何なる意味においても制限されない。
1.梅酢ポリフェノールの製造
本発明の梅酢ポリフェノールを、次のような製造方法によって製造した。まず、ダイヤイオン(登録商標)HP20樹脂(スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤、三菱化学株式会社製)を密閉式金属性のカラム(Φ30cm×200cm)に詰めた。このカラムに樹脂に対して30〜40倍量(体積比)の梅酢を流して接触させ、梅酢ポリフェノールを樹脂に吸着させた(接触工程)。梅酢ポリフェノールを吸着させたカラムに、カラムに詰められた樹脂に対して4倍量(体積比)の水を流し、カラム中のクエン酸と食塩とを水洗した(水洗工程)。
エタノール水溶液(60容積%)を水洗したカラムに流し、梅酢ポリフェノールを含有する溶出液を得た。最後に、溶出液を真空凍結乾燥機により濃縮・乾燥して、梅酢ポリフェノールを含有する粉末を得た(濃縮工程)。なお、梅酢15トンから、この粉末15.7kgが得られた。
粉末中のポリフェノールをFolin-Ciocalteu法に従って測定した。その結果、粉末が没食子酸換算でポリフェノールを11.5重量%(以下、%と省略する。)含有することが分かった。また、フェノール硫酸法によって全糖を、乾燥減量法(90℃、7時間)によって水分を、550℃灰化法によって灰分を、HPLC法によって有機酸含量を測定した。その結果、粉末は、梅酢ポリフェノールのほか、全糖を64.5%、水分3.9%、灰分2.6%、クエン酸0.2%、キナ酸2.2%を含有することが分かった。
さらに、梅酢ポリフェノールのアグリコンであるヒドロキシ桂皮酸の構成成分を調べた。具体的には、粉末をアルカリ分解したのち、HPLC法によって測定した。その結果、trans-p-クマル酸が2%、カフェ酸が1.1%、フェルラ酸が1.1%、cis-p-クマル酸が0.5%であることが分かった。
2.食餌誘導性肥満マウスにおける梅酢ポリフェノールのインスリン抵抗性改善効果
肥満により誘導されたインスリン抵抗性に対する梅酢ポリフェノールの摂取の影響を調べるため、本発明の梅酢ポリフェノールを摂取させた場合とさせない場合の空腹時血糖値、空腹時インスリン濃度、及び両値から算出されるインスリン抵抗性指数(HOMA-IR値)を比較した。なお、肥満誘導によりインスリン抵抗性が進行していることを確認するために、対照区として、普通食を摂取させた群を設けた。実験の内容について以下に詳説する。
(1)実験動物及び供試物質
5週齢の雄性C57BL/6JKwlマウス(SPF、株式会社紀和実験動物研究所、平均体重16g、明期:6時〜18時)を実験動物として使用した。また、マウスに摂取させる通常食はMF(オリエンタル酵母工業株式会社製)を使用し、高脂肪食はHFD-60(オリエンタル酵母工業株式会社製)を使用した。さらに、梅酢ポリフェノールは実施例1で製造したものを使用し、セルロースは、ナカライテスク株式会社から入手したものを使用した。なお、普通食と高脂肪食の成分を表1に示す。
Figure 0006865459
(2)実験方法
1)馴化と群分け
実験試験開始から7日間マウス(22匹)を飼育施設で普通食により飼育して馴化し、7日目に群間で体重や餌の摂取量に有意差がつかないように、5-6匹ずつの4群に分けた。具体的には、普通食群(Normal,n=5)、高脂肪食+1%セルロース群(HF,n=6)、高脂肪食+0.25%梅酢ポリフェノール(以下、必要に応じてUPと省略する。)+0.75%セルロース群(UP0.25%,n=5)、高脂肪食+1%梅酢ポリフェノール群(UP1%,n=6)に分けた。
2)肥満誘導と測定
各群のマウスに、それぞれ普通食(MF)、高脂肪食(HFD-60)に1%セルロースを混ぜた高脂肪食飼料、高脂肪食に0.25%の梅酢ポリフェノール及び0.75%セルロースを混ぜた飼料、高脂肪食に1%梅酢ポリフェノールを混ぜた飼料を5週間にわたって摂取させた。飼育中は、3日おきに体重と餌の摂取量を測定した。実験開始から5週間後、16時間の絶食をしたのち、空腹時血糖値と空腹時インスリン濃度を測定し、HOMA-IR値を算出した。
なお、空腹時血糖値は、マウスを16時間絶食させたのち、尾静脈から採血し、血糖測定器(グルテストNeoスーパー、三和化学研究所)を使用して測定した。「空腹時血糖値」は同じ試料を3回測定して、その平均値を算出した。
また、空腹時インスリン濃度は、マウスを16時間絶食させたのち、麻酔下で開腹して大動脈より採血した。採血した血液を室温で30分静置したのち、3000rpm×20分間遠心分離して、血清を取得した。血清中のインスリン濃度をELISA法(超高感度マウスインスリン測定キット、森永生化学研究所)を使用して測定した。「空腹時インスリン濃度」は同じ試料を3回測定し、その平均値を算出した。
さらに、HOMA-IR値は以下の式(I)に従って算出した。なお、インスリン濃度から酵素単位(IU)への変換式は、1ng/mL = 26μIU/mLを使用した。
Figure 0006865459
3)統計処理
体重増加量(g/5week)、平均食餌摂取量(g/day)、空腹時血糖値(mg/dL)、空腹時インスリン濃度(ng/mL)、HOMA-IR値について、平均値、標準偏差を算出した。また、高脂肪食群に対して、各群の値が有意差を示すかどうかをt検定で確認した。
(3)実験結果
実験結果を表2及び図1に示す。表2は算出した値をまとめた表であり、図1は表2に記載の空腹時血糖値、空腹時インスリン濃度、HOMA-IR値についてのグラフである。表2及び図1から、梅酢ポリフェノールの添加によって、高脂肪食群に比べて、空腹時血糖値、空腹時インスリン濃度、HOMA-IR値の何れも濃度依存的に減少する傾向があることが分かった。特に、梅酢ポリフェノール1%群においては、高脂肪食群に比べて、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IR値が有意に減少し(p<0.05)、普通食群と同程度まで低下することが分かった。
Figure 0006865459
3.食餌誘導性肥満マウスにおけるアグリコンのインスリン抵抗性改善効果
梅酢ポリフェノールを構成するアグリコンを高脂肪食とともにマウスに摂取させ、これらの物質がインスリン抵抗性に与える影響を、梅酢ポリフェノールと比較した。具体的には、以下のようにして実験した。
(1)実験動物及び供試物質
実施例2と同じ実験動物、普通食、高脂肪食、セルロースを使用した。また、梅酢ポリフェノールは、実施例1で調製したものを使用し、trans-p-クマル酸、カフェ酸、フェルラ酸は、和光純薬工業から入手したものを使用した。
(2)実験方法
1)馴化と群分け
実施例2と同様にして馴化したマウス37匹を、通常食群(n=4)、高脂肪食群(n=5)、高脂肪食+1%UP群(n=6)、高脂肪食+0.02%クマル酸群(n=5)、高脂肪食+0.011%カフェ酸群(n=5)、高脂肪食+0.011%フェルラ酸群(n=5)、高脂肪食+0.02%クマル酸+0.011%カフェ酸+0.011%フェルラ酸群(3種混合群、n=5)の7つに群れ分けした。
なお、各群に含まれるアグリコンの濃度は、実施例1に記載のように、梅酢ポリフェノールが、アグリコンとしてtrans-p-クマル酸2%、カフェ酸が1.1%、フェルラ酸が1.1%含有していることに基づいて設定した。また、高脂肪食を摂取させる6群は、そのカロリー摂取量が同じになるようにセルロースを添加して調整した。
2)肥満誘導、測定及び統計処理
各群のマウスを実施例2と同様にして肥満誘導したのち、空腹時血糖値と空腹時インスリン濃度を測定して、HOMA-IR値を算出した。また、算出した値を実施例2と同様にして統計処理した。
なお、「空腹時血糖値」は、より精度の高い測定法である・グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ(GOD/POD)法(グルコースCII-テストワコー、和光純薬)を使用して測定した。「空腹時血糖値」は同じ試料を3回測定して、その平均値を算出した。また、空腹時インスリン濃度は、実施例2と同じようにして測定して、その平均値を算出した。
(3)実験結果
実験結果を表3及び図2に示す。表3は算出した値をまとめた表であり、図2は表3に記載の空腹時血糖値、空腹時インスリン濃度、HOMA-IR値についてのグラフである。図2及び表3から、空腹時血糖値は梅酢ポリフェノール、trans-p-クマル酸、カフェ酸、フェルラ酸摂取群、及び3種混合群で高脂肪食群に比べて有意に減少することが分かった。また、空腹時インスリン濃度はフェルラ酸摂取群において高脂肪食群よりも低下すること、3種混合群で有意に減少することが分かった。さらに、HOMA-IR値はクマル酸摂取群において高脂肪食群よりも低下すること、1%梅酢ポリフェノール、フェルラ酸、3種混合摂取群で有意に減少することが分かった。
以上の結果から、梅酢ポリフェノールを構成する3種類のアグリコン分子(trans-p-クマル酸、カフェ酸、フェルラ酸)のうち、フェルラ酸が最もインスリン抵抗性を改善する効果が高かった。すなわち、梅酢ポリフェノールのインスリン抵抗性改善効果の活性本体がフェルラ酸誘導体であることを示唆しており、梅酢ポリフェノールの摂取後消化管内で分解されて生じたフェルラ酸が体内に吸収され、インスリン抵抗性の改善効果を示したと考えられた。
また、梅酢ポリフェノール中のフェルラ酸誘導体の中には、消化効率が悪く体内に吸収されにくいものも存在すると思われる。そのため、フェルラ酸の含有量が同じになるように調整した0.011%フェルラ酸単独摂取群と1%梅酢ポリフェノール群では、単独摂取群のほうがフェルラ酸の吸収効率が高く、空腹時血糖値、空腹時インスリン濃度、HOMA-IR値の減少量が大きくなったのだと考えられる。
梅酢ポリフェノールを構成するアグリコン分子であるtrans-p-クマル酸は空腹時血糖を低下させ、HOMA-IR値を抵抗させる傾向を示した。カフェ酸も空腹時血糖を下げる作用を示した。3種類のアグリコン分子を同時に摂取させると、単独で摂取させた場合よりも、強いインスリン抵抗性改善効果を示したことから、これら3種類のアグリコン分子は協調的に働いてインスリン抵抗性を改善することが示唆された。
Figure 0006865459
4.食餌誘導性肥満マウスにおける複数アグリコンのインスリン抵抗性改善効果
実施例3から、梅酢ポリフェノールを構成する主アグリコンのうち、フェルラ酸が最もインスリン抵抗性を改善すること、3種類のアグリコンを組み合わせればよりインスリン抵抗性が改善することが分かった。
そこで、複数のアグリコンを組み合わせて高脂肪食とともにマウスに摂取させ、アグリコン組み合わせの違いが、インスリン抵抗性に与える影響を調べた。具体的には、以下のようにして実験した。
(1)実験動物及び供試物質
実施例3と同じ実験動物、高脂肪食、セルロース、trans-p-クマル酸、カフェ酸、フェルラ酸を使用した。
(2)実験方法
1)馴化と群分け
実施例3と同様にして馴化したマウス31匹を、高脂肪食群(n=5)、高脂肪食+0.042%フェルラ酸群(n=6)、高脂肪食0.011%フェルラ酸+0.02%クマル酸+0.011%カフェ酸群(3種混合群、n=6)、高脂肪食+0.011%フェルラ酸+0.02%クマル酸群(n=5)、高脂肪食0.011%フェルラ酸+0.011%カフェ酸群(n=5)、高脂肪食0.02%クマル酸0.011%カフェ酸群(n=4)の6つに群れ分けした。
なお、各群に含まれるアグリコンの濃度は、実施例1に記載のように、梅酢ポリフェノールが、アグリコンとしてtrans-p-クマル酸2%、カフェ酸が1.1%、フェルラ酸が1.1%含有していることに基づいて設定した。また、各群は、そのカロリー摂取量が同じになるようにセルロースを添加して調整した。
2)肥満誘導、測定及び統計処理
各群のマウスを実施例3と同様にして食餌誘導したのち、空腹時血糖値と空腹時インスリン濃度を測定して、HOMA-IR値を算出した。また、算出した値を実施例3と同様にして統計処理した。
(3)実験結果
実験結果を表4及び図3に示す。表4は算出した値をまとめた表であり、図3は表4に記載の空腹時血糖値、空腹時インスリン濃度、HOMA-IR値についてのグラフである。表4及び図3から、空腹時血糖値は、3種混合群および何れの2種混合群でも、フェルラ酸群と同程度もしくはフェルラ酸よりも低い値を示した。特に、3種混合群は、フェルラ酸群よりも空腹時血糖を下げる傾向(P<0.1)を示し、クマル酸+フェルラ酸群ではフェルラ酸群よりも空腹時血糖を有意に下げる(P<0.05)ことが確認できた。
また、空腹時インスリン濃度は、3種混合群および何れの2種混合群でも、フェルラ酸群に比べて減少する傾向が示された(P<0.1)。特に、クマル酸+フェルラ酸群、クマル酸+カフェ酸群では、空腹時インスリン濃度は、フェルラ酸群に比べて有意に減少する(P<0.01)ことが確認できた。
さらに、HOMA-IR値は、3種混合群および何れの2種混合群でも、フェルラ酸群に比べて減少する傾向が示された(P<0.1)。特に、3種混合群(P<0.05)、クマル酸+フェルラ酸群(P<0.01)、クマル酸+カフェ酸群(P<0.01)では、HOMA-IR値は、フェルラ酸群に比べて有意に減少することが確認できた。
Figure 0006865459
以上の結果から、梅酢ポリフェノールを構成する3種類のアグリコン(trans-p-クマル酸、カフェ酸、フェルラ酸)のうち、フェルラ酸+クマル酸群が最もインスリン抵抗性を改善する効果が高かった。すなわち、フェルラ酸のインスリン抵抗性改善をクマル酸が大きく向上させていると考えられた。また、クマル酸+カフェ酸群及び3種混合群でも一定の有意差が認められた。

Claims (9)

  1. trans-p-クマル酸、カフェ酸及びフェルラ酸からなる群より選ばれた2種以上のアグリコンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤。
  2. trans-p-クマル酸及びフェルラ酸を有効成分とする請求項1に記載のインスリン抵抗性改善剤。
  3. trans-p-クマル酸及びカフェ酸を有効成分とする請求項1に記載のインスリン抵抗性改善剤。
  4. trans-p-クマル酸、カフェ酸及びフェルラ酸を有効成分とする請求項1に記載のインスリン抵抗性改善剤。
  5. 請求項1から請求項4の何れかに記載のインスリン抵抗性改善剤を含むインスリン抵抗性改善用の医薬品。
  6. 請求項1から請求項4の何れかに記載のインスリン抵抗性改善剤を含むインスリン抵抗性改善用の医薬部外品。
  7. 請求項1から請求項4の何れかに記載のインスリン抵抗性改善剤を含むインスリン抵抗性改善用の食品組成物。
  8. 請求項1から請求項4の何れかに記載のインスリン抵抗性改善剤を含むインスリン抵抗性改善用の飼料組成物。
  9. trans-p-クマル酸、カフェ酸及びフェルラ酸からなる群より選ばれた2種以上のアグリコンを有効成分とする空腹時血糖値上昇抑制剤。
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