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JP6867657B2 - マグネシウム合金粉末の製造方法 - Google Patents
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JP6867657B2 - マグネシウム合金粉末の製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、マグネシウム合金粉末の製造方法に関する。
マグネシウム(Mg)は、地球上に豊富に存在する資源であり、アルミニウム(Al)と同様にリサイクル性に優れている。そのため、様々な分野において、Mgを使用した材料の開発が進められている。
例えば、最近、医療分野では、WE43(Mg−4Y−3RE)合金の生体安全性が欧米機関によって確認され、生体吸収性ステント材、又は生体硬組織用インプラント材といった生体用の構造材料への展開が期待されている。
また、自動車、鉄道車両、航空機等の輸送機器の分野では、燃費効率向上による省エネルギー化およびCOガス排出低減による環境対策のために、車両の軽量化への対応が必須となっている。そのため、従来の鉄鋼系材料から、Mg合金およびAl合金等の軽量金属材料への転換の要求が高まっている。このような要求に対し、Mg合金は、構造材料として使用される代表的な金属の中で比重が最も低く、高比強度であるため、輸送機器の軽量化に適した材料として注目されている。また、Mg合金は、高い制振性および電磁波シールド性を有する。そのため、輸送機器に特有となる振動対策又は駆動系統等の電子制御化に伴うノイズ対策の観点からも、有効な材料になり得ると考えられる。
Mg合金を含む構造材料は、構造体(成形体)の成形方法によって、溶製材と、粉末冶金材とに大別される。溶製材は、溶融したMg合金を鋳型に鋳込んで最終製品に近い形状に鋳造する方法、又はビレット等の単純形状を有するMg合金の鋳造材を熱間又は冷間で塑性加工する方法に用いられる。一方、粉末冶金材は、Mg合金粉末を金型等に充填および加圧成形し、次いで焼結する方法に用いられる。
一般的に、金属粉末を焼結して得た成形体(以下、焼結部品という)は、鋳造による成形体(以下、鋳造体という)と比較して、組織が微細であり、かつ均一であるため、強い靭性を得ることが容易である。また、焼結部品では、母材となる金属粉末に対して、セラミックス粒子又は金属間化合物粒子を混合することにより、セラミックス粒子又は金属間化合物粒子を上記母材に均一に微細分散させた組織設計が可能である。その他、例えば、上記各粒子の表層付近での分散濃度を内部よりも高くする等、分散濃淡を有する組織設計も可能である。このように、焼結部品では、組織設計において、強度の向上だけでなく、用途に応じて、耐摩耗性の向上、および骨細胞との親和性の付与等の様々な機能性を容易に追加できるという利点を有する。
粉末冶金材として使用する金属粉末の代表的な製造方法として、アトマイズ法、又はプラズマ回転電極法が知られている。これらの方法では、溶融した金属を微細化、急冷することによって金属粉末を得る。しかし、Mg合金の溶湯は活性であり、大気中で燃焼しやすい。そのため、通常、上記方法によるMg合金の粉末化は、アルゴン又はヘリウムといった高価な不活性ガスの雰囲気下で実施される。
アトマイズ法は、ガス、又は水を用いて金属の溶湯を微細化、急冷し、金属粉末を得る方法であり、量産性に優れている。しかし、ガスアトマイズ法によってMg合金の粉末化を行う場合、高価な不活性ガスを大量に使用する必要があるため、操業コストが増加し、Mg合金粉末は非常に高価になる。そのため、Mg合金の粉末化を低コストで実施できる、Mg合金粉末の製造方法が望まれている。
これに対し、高速回転水流を用いて、カルシウム(Ca)をMg合金に添加した溶湯を噴霧して粉末化を行う、水アトマイズ法によるMg合金粉末の製造方法が提案されている(特許文献1〜3)。
特開2014−162991号公報 特開2014−167136号公報 特開2017−61753号公報
焼結部品の製造では、金属粉末の成形工程又は成形後の焼結工程での加圧、あるいは焼結後の熱間加工によって、粉末同士の接触界面にはせん断応力が加わる。そのため、粉末表面に薄い酸化被膜が存在しても、通常の処理工程において酸化被膜は破壊され、強固な金属結合を得ることができる。しかし、酸化被膜が数ミクロンオーダーの厚さになると、通常の処理工程では酸化被膜を十分に破壊することが困難となり、焼結性が低下しやすい。
上述の水アトマイズ法によるMg合金粉末の製造方法によれば、高価な不活性ガスではなく、水を使用するため、製造コストの低減が可能である。しかし、上述の製造方法では、水を使用してMg合金を粉末化し、水中で粉末を回収するため、粉末の表面には、数ミクロンオーダーの厚い酸化被膜が生成し、優れた焼結性を得ることは困難であると考えられる。
したがって、本開示は、上述の状況に鑑み、低コストであり、かつ焼結性の向上が可能なMg合金粉末の製造方法を提供する。
ガスアトマイズ法による金属粉末の製造コストを低減するために、溶湯の噴霧時に高価な不活性ガスにかえて、空気を使用する空気アトマイズ法を適用することが考えられる。しかし、Mg合金の溶湯は活性であるため、通常、空気アトマイズ法を適用することは困難である。
これに対し、本発明者らは、Mg合金の粉末化について種々の検討を行い、特定の元素を含むMg合金の溶解原料を使用することで溶湯の難燃性を高めることができ、空気アトマイズ法の適用が可能となることを見出した。また、Mg合金の粉末の製造に空気アトマイズ法を適用した場合、粉末化工程における酸化被膜の生成を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に記載する実施形態に関する。しかし、本発明は、以下に記載する実施形態に限定されず、様々な実施形態を含む。
一実施形態は、Mgを主成分とし、Y、Al、およびCaからなる群から選択される少なくとも1種を第1の副成分として含有するMg合金の溶解原料を溶解して、Mg合金の溶湯を得る工程、および
空気を用いて、上記Mg合金の溶湯を噴霧して、Mg合金粉末を得る工程
を有する、Mg合金粉末の製造方法に関する。
上記実施形態において、上記Mg合金の溶解原料の全質量を基準として、上記第1の副成分の含有量は、0.5〜20質量%であることが好ましい。
上記Mg合金の溶解原料は、Zn、Mn、Si、Ni、Cu、Zr、およびSnからなる群から選択される1種又は2種以上を含む第2の副成分をさらに含有することが好ましい。
上記Mg合金の溶解原料の全質量を基準として、上記第2の副成分の含有量は、0.01〜12質量%であることが好ましい。
上記Mg合金の溶解原料は、Mg−Zn−Y系合金材料、Mg−Al−Ca系合金材料、Mg−Al−Zn−Ca系合金材料、又はMg−Al−Zn系合金材料であることが好ましい。
本発明によれば、低コストであり、かつ焼結性の向上が可能なMg合金粉末の製造方法を提供することができる。
図1は、空気アトマイズ装置の構造例を示す模式的断面図である。 図2は、実施例1で製造したMg合金粉末の形状を示すSEM写真である。 図3は、実施例2で製造したMg合金粉末の形状を示すSEM写真である。 図4は、実施例3で製造したMg合金粉末の形状を示すSEM写真である。 図5は、実施例1で製造したMg合金粉末の表面付近の状態(断面)を示すSTEM写真である。 図6Aは、図5に示すSTEM写真に対応する領域のEDX分析(STEM/EDX)による元素マッピング(O)の画像を示す。 図6Bは、図5に示すSTEM写真に対応する領域のEDX分析(STEM/EDX)による元素マッピング(Y)の画像を示す。 図7は、実施例2で製造したMg合金粉末の表面付近の状態(断面)を示すSTEM写真である。 図8Aは、図7に示すSTEM写真に対応する領域のEDX分析(STEM/EDX)による元素マッピング(O)の画像を示す。 図8Bは、図7に示すSTEM写真に対応する領域のEDX分析(STEM/EDX)による元素マッピング(Ca)の画像を示す。 図8Cは、図7に示すSTEM写真に対応する領域のEDX分析(STEM/EDX)による元素マッピング(Al)の画像を示す。 図9は、実施例3で製造したMg合金粉末の表面付近の状態(断面)を示すSTEM写真である。 図10Aは、図9に示すSTEM写真に対応する領域のEDX分析(STEM/EDX)による元素マッピング(O)を示す画像である。 図10Bは、図9に示すSTEM写真に対応する領域のEDX分析(STEM/EDX)による元素マッピング(Al)を示す画像である。 図11は、実施例2で製造したMg合金粉末におけるAl分布のライン分析の結果を示すグラフである。 図12は、実施例3で製造したMg合金粉末におけるAl分布のライン分析の結果を示すグラフである。
本発明について実施形態に沿って具体的に説明する。但し、本発明は、以下に記載する実施形態に限定されるものではない。
例えば、アルゴンガスを用いたガスアトマイズ法によってMg合金粉末を製造する場合、一般的に、アトマイズ(粉末化)の操業コストの90%をアルゴンガスの費用が占めるといわれている。
これに対し、本開示の一実施形態であるMg合金粉末の製造方法は、(a)Mgを主成分とし、イットリウム(Y)、カルシウム(Ca)、およびアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種を第1の副成分として含有するMg合金の溶解原料を溶解して、Mg合金の溶湯を得る工程、および(b)空気を用いて、上記Mg合金の溶湯を噴霧して、Mg合金粉末を得る工程を有する。上記実施形態の製造方法では、高価なアルゴンガスでなく空気を使用して溶湯を噴霧するため、操業コストの大幅な低減を図ることができる。一実施形態において、Mg合金粉末は、主成分として68質量%を超えるMgを含有することが好ましい。Mg合金粉末は、78質量%を超えるMgを含有することがより好ましく、85質量%を超えるMgを含有することがさらに好ましい。
空気アトマイズ法による粉末化において、純Mgの溶湯の場合には、溶滴の表面にMgO被膜が生成すると考えられる。しかし、MgOは多孔質であるため、MgOの表面被膜によって、液滴内部の液相Mgを空気から遮蔽できず、Mg溶滴は激しく燃焼することになる。そのため、純Mg又はMg合金の粉末化方法として、空気アトマイズ法を適用することは困難である。
Mg溶滴の燃焼を抑制するためには、大気と溶滴内部の液相とを十分に遮蔽できる酸化被膜等の緻密な被膜を生成し、粉末化における難燃性を高める必要がある。これに対し、上記実施形態の製造方法では、上記工程(a)において、Mgを主成分とし、Y、Ca、およびAlからなる群から選択される少なくとも1種を第1の副成分として含有するMg合金の溶解原料を使用することによって、空気アトマイズ法によるMg合金の粉末化が可能となる。
一実施形態において、Mg合金の溶解原料は、全質量を基準として、第1の副成分を0.5〜20質量%含み、その残部としてMgと不回避的成分とを含むことが好ましい。一実施形態において、第1の副成分の含有量は、1〜20質量%がより好ましく、2〜15質量%がさらに好ましく、3.5〜12質量%がいっそう好ましい。
他の実施形態において、Mg合金の溶解原料は、Mg合金の機能性を向上させる観点から、Mgおよび上記第1の副成分に加えて、第2の副成分をさらに含んでもよい。上記第2の副成分は、Zn、Mn、Si、Ni、Cu、Zr、およびSnからなる群から選択される1種又は2種以上を含む。
第2の副成分による効果を発現させる観点から、その含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。一方、上記第2の副成分の含有量は、Mg合金の溶解原料の全質量を基準として、12質量%以下が好ましく、11質量%以下がより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
第2の副成分の含有量を0.01〜12質量%の範囲内に調整することによって、Mgによる特性、および粉末化における難燃性に加えて、所望とする機能性を得ることが容易となる。このような観点から、一実施形態において、Mg合金の溶解原料は、全質量を基準として、第1の副成分を0.5〜20質量%、第2の副成分を0.01重量%〜12質量%、その残部としてMgと不回避的成分とを含むことが好ましい。
上記「不可避的成分」とは、もともとMg原料に含まれるか、製造工程において不可避的に混入した成分を意味する。通常、Mg合金の特性に影響を及ぼさない元素を意味し、その量は微量である。本明細書において、「不可避的成分」とは、溶解原料に含まれる、Mg、第1の副成分、および第2の副成分を除いた元素成分を意味する。一実施形態において、溶解原料の全質量を基準として、不可避的成分の含有量は、それぞれ0.01質量%未満であることが好ましい。
以下、Mg合金の溶解原料について、より具体的に説明する。
上記製造方法において、Mg合金の溶解原料は、第1の副成分として、Y、Ca、およびAlからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。少なくとも、Y、Ca、又はAlを含むMg合金の溶解材料を使用した場合、アトマイズ時に優れた難燃性を得ることができ、空気アトマイズ法によるMg合金の粉末化が容易となる。特に、溶解原料がY又はCaを含む場合、Mg合金の溶湯の噴霧時に、溶滴の表面に緻密な酸化被膜が生成し、難燃性を高めることが容易になると考えられる。
理論によって拘束するものではないが、YおよびCaOの酸素1モルに対する標準生成自由エネルギーは、それぞれ、−605.55kJおよび−604.05kJである。一方、MgOの酸素1モルに対する標準生成自由エネルギーは−569.45kJである。このように、MgOよりも、YおよびCaOの標準生成自由エネルギーの方が低いことから、溶湯の噴霧において、溶滴の表面にYまたはCaOを含有する緻密な酸化被膜が瞬時に生成すると考えられる。MgOに比べてモル体積が大きいYまたはCaOが存在することによって、酸化被膜は圧縮傾向となって酸化被膜が緻密化すると考えられる。このような緻密な酸化被膜が溶滴表面に生成することによって、液滴内部のMgと空気中の酸素との反応が遮断され、アトマイズ(粉末化)における溶滴の燃焼を防ぐことができ、空気アトマイズ法によるMg合金粉末の製造を安全に実施することが可能となる。
また、酸化被膜が緻密であるために被膜の成長速度は遅く、凝固後の酸化被膜の厚さは薄いと考えられる。実際のところ、本発明者らの検討において、水アトマイズ法によって製造したMg合金粉末との対比において、上記製造方法によれば、Mg合金粉末の表面に生成する酸化被膜の厚さを低減できることが確認されている。したがって、Mg合金粉末を用いた焼結部品の製造において、成形時又は焼結時の加圧処理、あるいは焼結後の熱間加工時に粉末同士の接触界面にせん断応力を加える処理といった、通常の処理工程により、Mg合金粉末の表面の酸化被膜を容易に破壊することができ、焼結部品の製造において、強固な金属結合が形成され、優れた焼結性を得ることが容易になると考えられる。
また、焼結部品の製造において、上記酸化物の組織中への微細分散は、焼結体の強度向上にも有効であると考えられる。さらに、製造されたMg合金粉末は、表面に緻密な酸化被膜を有することから、長期保管した場合にも、特性低下の一因となる酸化が進み難いと考えられる。
一実施形態において、Mg合金の溶解原料は、第1の副成分として、少なくともYを含む。溶解原料におけるYの存在は、緻密な酸化被膜の生成において有利であることに加えて、焼結体組織における長周期積層構造(LPSO)相の生成を促進する点でも好ましい。
溶解原料の全質量を基準として、Yの含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、1〜9質量%がより好ましく、2〜7質量%がさらに好ましい。溶解原料におけるYの含有量を0.5質量%以上に調整することによって、空気アトマイズ法によるアトマイズ時に、溶滴表面にYを含有する緻密な酸化被膜を生成することが容易となり、溶湯の燃焼による危険性を回避することができる。一方、溶解原料におけるYの含有量を10質量%以下に調整することによって、溶湯の粘度上昇による流動性の低下を容易に抑制することができる。これにより、ノズル詰まり等の不具合を発生させずに、良好にアトマイズを実施することができる。
上記実施形態の溶解原料は、第2の副成分として、少なくともZnを含むことが好ましい。YとZnとを含む溶解原料から得られるMg合金粉末は、LPSO相の生成をさらに促進することができ、焼結部品の強度をさらに向上することできる。
溶解原料におけるZnの含有量は、LPSO相の生成促進の観点から、全質量を基準として、0.3〜5質量%が好ましく、0.5〜4質量%がより好ましく、1〜3質量%がさらに好ましい。
より具体的な実施形態において、溶解原料は、第1の副成分として少なくともYを2〜10質量%、第2の副成分として少なくともZnを1〜3質量%、およびその残部としてMgおよび不回避的成分を含むことが好ましい。
上記実施形態の溶解原料は、所望の組成となるように各金属材料を組合せた混合物であっても、所望の組成を有する市販のMg合金材料(ビレット又はインゴット)であってもよい。例えば、上記溶解原料として使用可能なMg合金材料の一例として、Mg−Zn−Y系合金材料が挙げられる。具体例として、Mg97Zn(1原子%(2.5質量%)Zn、2原子%(6.8質量%)Yを含有)、Mg98Zn(1原子%(2.6質量%)Zn、1原子%(3.5質量%)Yを含有)、Mg95Zn(2原子%(4.8質量%)Zn、3原子%(9.9質量%)Yを含有)が挙げられる。なかでも、Mg97Znを好適に使用することができる。なお、具体例として挙げた上記Mg合金材料において、括弧内に記載した各元素の含有量(質量%)は、代表的な値を記載しており、実際には幅がある。以下に記載するMg合金材料についても同様である。
他の実施形態において、Mg合金の溶解原料は、第1の副成分として、少なくともCaを含む。溶解原料におけるCaの存在は、酸化被膜の生成において有利であることに加えて、Mg−Ca系の金属間化合物を微細に析出分散させることができ、そのことにより焼結体の強度を向上できる点でも好ましい。
溶解原料の全質量を基準として、Caの含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、1〜8質量%がより好ましく、2〜5質量%がさらに好ましい。溶解原料におけるCaの含有量を0.5質量%以上に調整することによって、アトマイズ時に溶滴表面にCaを含有する緻密な酸化被膜を生成することが容易となり、溶湯の燃焼による危険性を回避することができる。一方、溶解原料におけるCaの含有量を10質量%以下に調整することによって、Mg−Ca系の金属間化合物の析出量の増加による焼結体の脆化を抑制し、優れた加工性を得ることができる。
上記実施形態の溶解原料は、第1の副成分としてAlをさらに含むことが好ましい。CaとAlとを含む溶解原料から得られるMg合金粉末は、(Mg,Al)Ca等の金属間化合物が析出するため、焼結部品の強度をより向上させることが容易となる。また、CaとAlとが共存する場合、酸化被膜にAlが濃化するため、酸化被膜がより安定となり、難燃性が向上すると考えられる。この場合、CaおよびAlの含有量の合計量を20質量%以下とすることが好ましい。CaとAlとを含む溶解原料の場合、それらの含有量の割合を調整することで金属間化合物の析出量を調整することがさらに容易となる。金属間化合物の析出量の増加を抑制する観点から、Caの含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、0.7〜7質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。一方、Alの含有量は、1〜12質量%が好ましく、3〜11質量%がより好ましく、5〜10質量%がさらに好ましい。
より具体的な実施形態において、溶解原料は、第1の副成分としてCaおよびAlを合計で1〜20質量%含むことが好ましく、2〜15質量%含むことがより好ましく、3〜12質量%含むことがさらに好ましく、その残部としてMgおよび不回避的成分を含む。
上記実施形態の溶解原料は、第2の副成分として、少なくともZnをさらに含むことが好ましい。溶解原料におけるZnの含有量は、0.1〜8質量%が好ましく、0.2〜6質量%がより好ましく、0.3〜4質量%がさらに好ましい。
より具体的な実施形態において、溶解原料は、第1の副成分としてCaおよびAlを合計で1〜20質量%、第2の副成分として少なくともZnを0.1〜8質量%、およびその残部としてMgおよび不回避的成分を含むことが好ましい。
上記実施形態の溶解原料は、所望の組成となるように各金属材料を組合せた混合物であっても、所望の組成を有するMg合金材料(ビレット又はインゴット)であってもよい。
例えば、上記溶解原料として使用可能なMg合金材料の一例として、Mg−Al−Ca系合金材料が挙げられる。具体例として、AMX602(6質量%Al,2質量%Caを含有)、Mg85Al10Ca(10原子%(10.7質量%)Al,5原子%(7.9質量%)Caを含有)が挙げられる。
他の例として、Mg−Al−Zn−Ca系合金材料が挙げられる。具体例として、AZX912(9質量%Al,1質量%Zn,2質量%Caを含有)、AZX311(3質量%Al,1質量%Zn,1質量%Caを含有)、およびAZX611(6質量%Al,1質量%Zn,1質量%Caを含有)が挙げられる。なかでも、AZX912を好適に使用することができる。
さらに他の実施形態において、Mg合金の溶解原料は、第1の副成分として、少なくともAlを含む。溶解原料におけるAlの存在は、粉末化における難燃性の向上に有利であることに加えて、焼結体の強度を向上することが容易になる点でも好ましい。
溶解原料の全質量を基準として、Alの含有量は、3.5〜12質量%が好ましく、4.5〜11質量%がより好ましく、5.5〜10質量%がさらに好ましい。溶解原料におけるAlの含有量を3.5質量%以上に調整することによって、Alは酸化被膜およびその直ぐ内部の液相にかけて濃化しやすくなる。AlはMgOに比べてモル体積が大きいため、酸化被膜の緻密化が期待できる。また、酸化被膜より直ぐ内部の液相についても、Alの濃化に伴うMg蒸気圧の低下等の効果が期待できる。これらのことから、Alによって、溶湯の燃焼による危険性を回避することができると考えられる。一方、溶解原料におけるAlの含有量を12質量%以下に調整することによって、Mg−Al系の金属間化合物の析出量の増加による焼結体の脆化を抑制し、優れた加工性を得ることができる。
上記実施形態の溶解原料は、第2の副成分として、少なくともZnを含むことが好ましい。副成分としてAlとZnとを含む溶解原料から得られるMg合金粉末は、機械的性質および加工性の良好なバランスを得ることが容易である。溶解原料におけるZnの含有量は、機械的特性の向上の観点から、0.1〜8質量%が好ましく、0.2〜6質量%がより好ましく、0.3〜4質量%がさらに好ましい。
より具体的な実施形態において、溶解原料は、第1の副成分として少なくともAlを3.5〜12質量%、第2の副成分として少なくともZnを0.1〜8質量%、およびその残部としてMgと不回避的成分とを含む。
上記実施形態の溶解原料は、所望の組成となるように各金属材料を組合せた混合物であっても、所望の組成を有する市販のMg合金材料(ビレット又はインゴット)であってもよい。例えば、上記溶解原料として使用可能なMg合金材料の一例として、Mg−Al−Zn系合金材料が挙げられる。具体例として、AZ91D(9質量%Al,1質量%Znを含有)、AZ61A(6質量%Al,1質量%Znを含有)、AZ63(6質量%Al,3質量%Znを含有)、AZ81A(8質量%Al,1質量%Znを含有)が挙げられる。なかでも、AZ91Dを好適に使用することができる。
上記実施形態のMg合金粉末の製造方法は、ガスアトマイズ法で用いられる代表的な技術を適用して実施することができる。ガスアトマイズ法による金属粉末の製造は、一般的に、溶解、アトマイズ、分級、集積といった区分を有する粉末化装置を用いて実施される。上記実施形態の製造方法は、少なくとも、溶解区分、およびアトマイズ区分を構成する装置を使用して実施することができ、アトマイズ区分では少なくとも空気を使用して溶湯を噴霧する。
より具体的には、上記製造方法において、(a)溶解原料を溶解して、Mg合金の溶湯を得る工程は、黒鉛坩堝等を備えた溶解炉を使用して実施することができる。工程(a)において、Mg合金の溶湯は、先に説明した溶解原料を溶解炉に入れて加熱することによって得ることができる。
溶解温度は、使用する溶解原料、装置の特性、目標とする粉末粒径に応じて調整することができる。Mg合金の溶解原料を溶解し、溶湯の噴霧時に好ましい液相の状態を得る観点から、溶解温度は、溶解炉から噴霧される位置まで溶湯が移動する間の温度低下を考慮して設定することが好ましい。通常、溶湯が噴霧される位置において、液相線温度以上の温度を確保できるように溶解温度を設定することが好ましい。一般的に、溶解温度は、溶解原料の液相線温度よりも50〜300℃高い温度に設定することが好ましい。
溶解炉の底にストッパー付のノズルを装着した場合、溶湯の溶解炉からノズルへの移動における温度低下を抑えることができ、アトマイズ位置での溶湯温度を制御すること、また溶湯の酸化を抑えることが容易となる。また、溶解炉内の雰囲気を加圧した場合、溶湯ノズルからの溶湯の流出速度を制御することが容易となり、粒径等の品質を安定化することができる。また、ノズルが閉塞し難くなる等、操業性の向上が容易であり、得られる粉末の品質も安定する。
上記製造方法において、(b)空気を用いて、上記Mg合金の溶湯を噴霧して、Mg合金粉末を得る工程は、一般的なアトマイズ装置を使用して実施することができる。アトマイズ時の空気の噴射形式は、自然落下式(free fall type)、および拘束式(confined type)のいずれでもよい。いずれの方法を用いても、溶湯流の周囲から効率的に空気を噴射できるため、より微細なMg合金粉末を製造することが可能である。また、ダンディッシュからの出湯方向は、一般的に下向きであるが、横向き、又は上向きとすることもできる。出湯方向を横向き又は上向きにした場合、堆積した粉末への溶湯の滴下による燃焼を防止することが可能であり、より安全にアトマイズを実施することができる。
一実施形態において、製造コストを抑える観点から、空気のみを使用して溶湯の噴霧を行うことが好ましいが、必要に応じて不活性ガスを空気に混入してもよい。不活性ガスを混入した場合、酸化被膜の膜厚などを制御することが容易になると考えられる。不活性ガスとしては、代表的にアルゴンガス又はヘリウムガスを使用できるが、窒素ガスを使用することもできる。
図1は、空気アトマイズ装置の構造例を示す模式的断面図である。図1に示したアトマイズ装置では、構造を簡略化するために、溶解炉で溶解原料を加熱して溶湯を得た後に、溶湯をアトマイズ装置のタンディッシュに手動で移す構造にしている。また、タンディッシュ下の溶湯ノズルから落下する溶湯の流れに対し、横向きに空気を噴射できるように空気ノズルが設置されている。
以下、図1に示したアトマイズ装置9を使用した場合を例にして、工程(b)について、より具体的に説明する。
先ず、工程(a)で得た溶湯1をタンディッシュ2に移し、タンディッシュ2の下に設けたノズル3から溶湯1を流出させる。一方、この溶湯の流れに対して空気ノズル4から空気5を噴射することで溶湯1を噴霧し、溶滴(噴霧された溶湯)6を形成する。この溶滴6が凝固することによって粉末が得られる。アトマイズされずに落下した溶湯は溶湯受皿7によって回収される。また、アトマイズによって形成された粉末(不図示)は粉末受皿8によって回収される。
溶湯をタンディッシュに移す時、すなわち注湯時の温度は、タンディッシュから噴霧される位置まで溶湯が移動する間の温度低下を考慮して設定することが好ましい。溶湯が噴霧される位置において、液相線温度以上の温度を確保できるように注湯時の温度を調整することが好ましい。
空気の噴射は、通常の噴射方法を適用して実施することができる。例えば、コンプレッサーで加圧した空気を空気ノズルから噴射させる。噴射時の空気の流速は、噴射圧力によって調整される。空気を用いてアトマイズを行う方法は、水アトマイズ法との対比において、空気を媒体とすることから酸化を抑えることが可能であり、粉末と水との反応による水素の発生を心配する必要がない。また、水を加圧する大きなポンプや水の回収浄化装置が不要であり、回収した粉末の乾燥工程も不要であるため、装置および工程の大幅な簡略化が可能である。
Mg合金粉末の形状および大きさは、溶湯ノズルの形状、溶湯温度、および空気の噴射圧力等によって調整することができる。一実施形態において、上記製造方法によって得られるMg合金粉末は、不規則形状(不定形の非球状)を有することが好ましい。不規則形状の粉末は、粉末粒子間のアンカー効果によって、成形後の圧粉体の強度が高くなる。また、脱脂工程後、バインダーが分解し、気散した後も成形体が変形し難いという利点がある。
ガスアトマイズ法による金属粉末の製造において、アトマイズ直後の溶滴は不規則形状を有しているが、通常は、溶滴が凝固する前に表面張力によって球状となることで球状の粉末が得られる。これに対し、上記実施形態のMg合金粉末の製造方法では、空気を用いるため、アトマイズ直後に溶滴の表面に酸化被膜が生成され、不規則形状を維持した粉末を得ることが容易である。
アルゴンガスを用いたアトマイズ法では、通常、球状のMg合金粉末が得られるが、これはアルゴンガスによって溶滴表面での酸化被膜の生成が抑制されているためと考えられる。このような観点から、空気アトマイズ法は、溶滴表面が空気によって速やかに酸化されるため、不規則形状のMg合金粉末を製造するのに適した方法といえる。
上記実施形態の製造方法によって製造されたMg合金粉末は、製造時に使用した溶解原料に対応する組成を有する。上記Mg合金粉末は様々な用途に使用することができる。通常、水アトマイズ法によって製造されたMg合金粉末では、粉末表面の酸化被膜が1μmを超えるのに対し、上記実施形態の製造方法によれば、酸化被膜の膜厚を1μm未満の厚さに制御することが容易である。酸化被膜の厚さは、粉末の表面付近の断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM)によって観察することができる。
一実施形態において、Mg合金粉末表面の酸化被膜の厚さは、優れた焼結性を得る観点から、800nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。上記製造方法によれば、酸化被膜の厚さを上記範囲内に制御することが容易である。したがって、一実施形態において、上記実施形態のMg合金粉末は、優れた焼結性を有し、粉末冶金材として好適に使用することができる。上記実施形態のMg合金粉末を使用することで、各種特性に優れた焼結部品を容易に製造することができる。
焼結部品は、Mg合金粉末を金型等に充填および加圧成形し、次いで焼結する方法によって製造することができる。上記実施形態のMg合金粉末は表面の酸化被膜の厚さが薄いため、焼結時に金属間の強い結合が形成され、強度の高い焼結部品を得ることが容易である。焼結温度は、Mg合金粉末の組成に応じて、適宜調整することが好ましい。例えば、Mg−Zn−Y系合金の組成を有するMg合金粉末の場合は、500〜550℃の温度で焼結を実施することが好ましい。焼結時の温度を適切に調整することによって、強度の高い焼結部品を得ることがより容易となる。また、その後に熱間加工の工程を入れることにより、さらに緻密化し、歪の導入により焼結体の強度はさらに向上する。ホットプレスやパルス通電加圧焼結法による焼結も緻密化と高強度化に有効である。
焼結部品は、特に限定されず、様々な用途で使用することができる。焼結部品は、例えば、Mg合金の特性から、自動車、鉄道車両、および航空機等の輸送機器用部品、パソコン、および携帯電話等の電子機器用部品、並びに人口骨、およびインプラント等の生体用部品などの用途で好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4、比較例1)
1.Mg合金粉末の製造
溶解原料として表1に示すMg合金材料を使用し、以下に示す手順で空気アトマイズを実施した。
まず、溶解原料として、表1に示すMg合金材料の市販のビレット又はインゴットを適当な大きさに切出した。切出したビレット又はインゴットを約80g秤量して黒鉛坩堝に入れ、加熱炉に設置し、アルゴンガス雰囲気中で650℃まで昇温して上記ビレット又はインゴットを溶解した。
次に、加熱炉から速やかに黒鉛坩堝を取り出し、内製の空気アトマイズ装置(図1を参照)のタンディッシュに溶湯を注湯した。タンディッシュの下方に設定した溶湯ノズルから落下する溶湯の流れに対し、横向きに設置した空気ノズルから空気を噴射し、溶湯を噴霧してアトマイズ(粉末化)した。溶湯ノズルの口径はφ10mmであり、空気の噴射圧力は10kgf/cmであり、空気ノズルの口径はφ1.8mmであった。
Figure 0006867657
実施例1〜4については、アトマイズ時に燃焼は確認されず、アトマイズ後に得られたMg合金粉末を回収することができた。ただし、実施例4については、一部アトマイズが不十分となり溶湯受皿付近に飛散した溶湯は黒っぽく変色したが、遠くまで噴霧された微細な粉末は銀白色を示した。実施例1、2、3、および4におけるMg合金粉末の収量は、順におよそ、50g、40g、40g、および20gであった。
一方、比較例1については、黒鉛坩堝を加熱炉から取り出してタンディッシュへ注湯する時点で溶湯が激しく燃焼した。空気の噴射によってさらに燃焼が激しくなると判断されたため、実験を中断した。
以上のことから、溶解原料が、Y、Ca、およびAlからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む場合、Mg合金の難燃性が向上し、空気アトマイズ法によるMg合金粉末の製造が可能となることがわかる。
2.Mg合金粉末の分析
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)による粉末形状の観察
実施例1〜3で製造した空気アトマイズ法によるMg合金粉末について、SEMを用いて、それぞれの粉末形状を観察した。観察は、FEI社製のQuanta200 3D FEGを使用し、加速電圧15kVの条件下で電子線を照射して実施した。それぞれのSEM写真を、図2(実施例1)、図3(実施例2)、および図4(実施例3)に示す。SEM写真から明らかなように、実施例1〜3で製造したMg合金粉末のいずれも不規則形状を有することがわかった。
(2)X線光電子分光法(XPS)による元素分布
XPSは、表面から5nm程度以内の表層部における元素の存在比や状態分析に有効である。試料台上に貼った1cm角のカーボンテープ表面に、実施例1〜3で製造した空気アトマイズ法によるMg合金粉末をそれぞれ隙間なく接着させた。次いで、表面を軽く押えて平坦にした後に分析試料として使用し、XPSによる元素分析を行った。そのため、表2に示す分析値は、X線が照射された範囲に存在する複数の粉末粒子の平均値を示す。
分析では、アルバック・ファイ株式会社製のPHI 5000 VersaProbeIIを使用した。測定条件は、X線:単色化AlKα線(1486.6eV)、検出角度:45°、分析面積:φ200μmとした。また、ワイドスキャンおよびナロースキャン時のパスエネルギーは、それぞれ187.85eV、29.35eVとした。
Figure 0006867657
表2に示すように、いずれの粉末表面も酸素(O)の存在比が50原子%前後と高く、Mg合金粉末の表面は酸化被膜によって覆われていることがわかった。表2に示した粉末表面の炭素(C)の存在比は、主にMg合金粉末の表面に付着した大気中の炭化水素による汚染に由来する。
また、実施例1のMg合金粉末については、粉末表面のイットリウム(Y)存在比は12.3原子%であった。これに対して、溶解原料のY含有量は2.1原子%(表1の溶解材料のY含有量6.8質量%から換算)であることから、粉末表面にYが濃化していることがわかった。また、状態分析より、Yの結合エネルギーのピークが確認された。
実施例2のMg合金粉末については、粉末表面のカルシウム(Ca)存在比は4.2原子%であった。これに対して、溶解原料のCa含有量は3.3原子%(表1の溶解原料のCa含有量2.06質量%から換算)であることから、粉末表面にCaが濃化していることがわかった。また、状態分析より、CaOの結合エネルギーのピークが確認された。一方、Alは検出されず、0.1原子%未満であることがわかった。
実施例3のMg合金粉末については、状態分析により、酸化物としてMgOおよびMgO(X<1)の結合エネルギーのピークが確認された。一方、Alは検出されず、0.1原子%未満であることがわかった。
(3)Mg合金粉末の断面の分析
実施例1〜3で製造したMg合金粉末の表面付近の状態(断面)を分析するために、各Mg合金粉末に対し収束イオンビーム(FIB)加工を行い、箔状の試験片(厚さ約100nm)をそれぞれ採取した。FIB加工は、日本電子株式会社製の複合ビーム加工観察装置「JIB4501」を使用し、イオンビーム:Gaイオン、加速電圧:30kV、保護膜:炭素の条件下で実施した。
上記のようにして採取した実施例1〜3の各試験片について、日本電子株式会社製の走査型透過電子顕微鏡(STEM)「JEM‐2100F」を使用し、加速電圧:200kVの条件下で、それぞれの断面を観察した。また、STEM写真の測定領域に対応させて、日本電子株式会社製のエネルギー分散型X線検出器「JED−2300」を使用して元素マッピングの分析を実施し、元素の分布状態を観察した。
実施例1で製造したMg合金粉末の表面付近の状態(断面)を示すSTEM写真を図5に示す。また、図5に示すSTEM写真の測定領域に対応するEDX分析(STEM/EDX)による元素マッピングの画像を図6Aおよび図6Bに示す。図6AはOの元素マッピング、図6BはYの元素マッピングをそれぞれ示す画像である。
実施例2で製造したMg合金粉末の表面付近の状態(断面)を示すSTEM写真を図7に示す。また、図7に示すSTEM写真に対応するSTEM/EDXによる元素マッピングの画像を図8A〜8Cに示す。図8AはOの元素マッピング、図8BはCaの元素マッピング、図8CはAlの元素マッピングをそれぞれ示す画像である。
実施例3で製造したMg合金粉末の表面付近の状態(断面)を示すSTEM写真を図9に示す。また、図9に示すSTEM写真に対応するSTEM/EDXによる元素マッピングの画像を図10Aおよび図10Bに示す。図10AはOの元素マッピング、図10BはAlの元素マッピングをそれぞれ示す画像である。
実施例1で製造したMg合金粉末の試験片では、図5に示した走査型透過電子顕微鏡(STEM)写真からわかるように、試験片の表面側(画像の上方)に黒い層が存在した。図6Aに示した元素マッピング(O)において、酸素(O)の濃化が確認できることから、上記層は、厚さ50〜100nm程度の酸化被膜であることがわかった。また、図6Bに示した元素マッピング(Y)からわかるように、酸化被膜では、Yの濃化も確認された。
実施例2で製造したMg合金の試験片では、図7に示したSTEM写真からわかるように、試験片の表面側(画像の上方)に、黒い層とその下に薄い灰色の層が存在した。図8Aに示す元素マッピング(O)において、酸素(O)の濃化が上記両方の層にわたって確認できることから、厚さ130nm程度の酸化被膜であることがわかった。また、図8Bに示す元素マッピング(Ca)および図8Cに示す元素マッピング(Al)からわかるように、酸化被膜ではCaおよびAlの濃化も確認された。
実施例3で製造したMg合金の試験片では、図9に示したSTEM画像からわかるように、試験片の表面側(画像の上方)に、黒い層が存在した。図10Aに示す元素マッピング(O)において、酸素(O)の濃化が確認できることから、上記層は厚さ70nm程度の酸化被膜であることがわかった。なお、図10Bに示す元素マッピング(Al)からわかるように、実施例2で製造したMg合金の試験片で見られたような明瞭なAlの酸化被膜への濃化(図8Cを参照)は確認されなかった。
(4)Al分布のライン分析
実施例2および実施例3のMg合金粉末について、Alの分布を比較するためにライン分析を実施した。実施例2および実施例3の各試験片のライン分析結果を図11及び図12に示す。粉末表面の酸化被膜は観察面および分析ラインに対して垂直な平面ではないため、最表面および母材界面の情報を拾うことによって酸化被膜の境界はシャープにはならない。ここでは、酸素(O)のピークの領域を酸化被膜の領域と定義した。なお、ライン分析は、図7(実施例2)および図9(実施例3)の各STEM写真に示した点線(符号a参照)を中心とした幅200nmの範囲について、EDXによる元素マッピングデータを使用して、ライン分析結果に変換したものである。
試料の厚さや合金成分等の影響により、図11と図12との間で強度の絶対値の比較はできないが、いずれの場合も、表面から内部に向けてのAl強度(濃度)の上昇開始位置またはピーク位置は他元素に比べて、粉末の内側(内部)にずれていることがわかった。これは、XPSによる分析で粉末表面にAlが検出されないことに対応していると考えられる。実施例2のMg合金粉末では、酸化被膜の領域にAlのピークがみられ(図11を参照)、Alが濃化していることがわかった。一方、実施例3のMg合金粉末は、酸化被膜の内部側境界付近にブロードなAlのピークがみられ(図12を参照)、酸化被膜から内部の母材にわたってAlが濃化していることがわかった。
以上の結果から、実施例1および2で製造されたMg合金粉末は、溶解材料の溶湯が空気の噴射によって微細化急冷されて溶滴になると同時に、溶滴表面にYまたはCaが濃化した薄く緻密な酸化被膜が形成され、その被膜が溶滴内部の液相と大気雰囲気中の酸素との接触を遮断することにより、アトマイズ時に溶湯が燃焼せずに粉末粒子を形成できたと考えられる。また、Caと同時にAlを含有する場合は、Alの酸化被膜への濃化も促進されるため、さらに酸化被膜は緻密化し、難燃性が向上すると考えられる。
また、実施例3および4において、空気アトマイズによってMg合金粉末を得ることができたことから、Alの含有は溶湯の難燃性向上に効果的であることがわかった。実施例3のMg合金粉末のライン分析結果において、酸化被膜に濃化したAlは酸化被膜の緻密化に寄与し、酸化被膜より内部の母材に濃化したAlはMgの蒸気圧の降下等に寄与することによって、難燃性が向上している可能性がある。また、実施例4のアトマイズ時の状況から、Al濃度の低下に伴い溶湯における難燃性の効果が小さくなり、比較例1の純Mgでは燃焼が発生してアトマイズが不可能になったと考えられる。
実施例1〜3に代表されるように、上記実施形態の製造方法によれば、不規則形状のMg合金粉末を得ることができ、また粉末表面の酸化被膜の厚さは50〜130nm程度と薄いため、優れた焼結性を得ることが容易であると考えられる。そのため、一実施形態において、上記実施形態の製造方法によって製造されたMg合金粉末は、焼結部品を製造するために有効であると考えられる。
1:溶湯、2:タンディッシュ、3:溶湯ノズル、4:空気ノズル、5:空気、6:溶滴、7:溶湯受皿、8:粉末受皿、9:アトマイズ装置

Claims (5)

  1. Mgを主成分とし、Y、Al、およびCaからなる群から選択される少なくとも1種を第1の副成分として含有するMg合金の溶解原料を溶解して、Mg合金の溶湯を得る工程、および
    空気を用いて、前記Mg合金の溶湯を噴霧して、Mg合金粉末を得る工程
    を有する、Mg合金粉末の製造方法。
  2. 前記Mg合金の溶解原料の全質量を基準として、前記第1の副成分の含有量が、0.5〜20質量%である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記Mg合金の溶解原料が、Zn、Mn、Si、Ni、Cu、Zr、およびSnからなる群から選択される1種又は2種以上を含む第2の副成分をさらに含有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記Mg合金の溶解原料の全質量を基準として、前記第2の副成分の含有量が、0.01〜12質量%である、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記Mg合金の溶解原料が、Mg−Zn−Y系合金材料、Mg−Al−Ca系合金材料、Mg−Al−Zn−Ca系合金材料、又はMg−Al−Zn系合金材料である、請求項1又は2に記載の製造方法。
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