JP6867657B2 - マグネシウム合金粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、最近、医療分野では、WE43(Mg−4Y−3RE)合金の生体安全性が欧米機関によって確認され、生体吸収性ステント材、又は生体硬組織用インプラント材といった生体用の構造材料への展開が期待されている。
アトマイズ法は、ガス、又は水を用いて金属の溶湯を微細化、急冷し、金属粉末を得る方法であり、量産性に優れている。しかし、ガスアトマイズ法によってMg合金の粉末化を行う場合、高価な不活性ガスを大量に使用する必要があるため、操業コストが増加し、Mg合金粉末は非常に高価になる。そのため、Mg合金の粉末化を低コストで実施できる、Mg合金粉末の製造方法が望まれている。
上述の水アトマイズ法によるMg合金粉末の製造方法によれば、高価な不活性ガスではなく、水を使用するため、製造コストの低減が可能である。しかし、上述の製造方法では、水を使用してMg合金を粉末化し、水中で粉末を回収するため、粉末の表面には、数ミクロンオーダーの厚い酸化被膜が生成し、優れた焼結性を得ることは困難であると考えられる。
したがって、本開示は、上述の状況に鑑み、低コストであり、かつ焼結性の向上が可能なMg合金粉末の製造方法を提供する。
これに対し、本発明者らは、Mg合金の粉末化について種々の検討を行い、特定の元素を含むMg合金の溶解原料を使用することで溶湯の難燃性を高めることができ、空気アトマイズ法の適用が可能となることを見出した。また、Mg合金の粉末の製造に空気アトマイズ法を適用した場合、粉末化工程における酸化被膜の生成を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
一実施形態は、Mgを主成分とし、Y、Al、およびCaからなる群から選択される少なくとも1種を第1の副成分として含有するMg合金の溶解原料を溶解して、Mg合金の溶湯を得る工程、および
空気を用いて、上記Mg合金の溶湯を噴霧して、Mg合金粉末を得る工程
を有する、Mg合金粉末の製造方法に関する。
例えば、アルゴンガスを用いたガスアトマイズ法によってMg合金粉末を製造する場合、一般的に、アトマイズ(粉末化)の操業コストの90%をアルゴンガスの費用が占めるといわれている。
これに対し、本開示の一実施形態であるMg合金粉末の製造方法は、(a)Mgを主成分とし、イットリウム(Y)、カルシウム(Ca)、およびアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種を第1の副成分として含有するMg合金の溶解原料を溶解して、Mg合金の溶湯を得る工程、および(b)空気を用いて、上記Mg合金の溶湯を噴霧して、Mg合金粉末を得る工程を有する。上記実施形態の製造方法では、高価なアルゴンガスでなく空気を使用して溶湯を噴霧するため、操業コストの大幅な低減を図ることができる。一実施形態において、Mg合金粉末は、主成分として68質量%を超えるMgを含有することが好ましい。Mg合金粉末は、78質量%を超えるMgを含有することがより好ましく、85質量%を超えるMgを含有することがさらに好ましい。
Mg溶滴の燃焼を抑制するためには、大気と溶滴内部の液相とを十分に遮蔽できる酸化被膜等の緻密な被膜を生成し、粉末化における難燃性を高める必要がある。これに対し、上記実施形態の製造方法では、上記工程(a)において、Mgを主成分とし、Y、Ca、およびAlからなる群から選択される少なくとも1種を第1の副成分として含有するMg合金の溶解原料を使用することによって、空気アトマイズ法によるMg合金の粉末化が可能となる。
第2の副成分による効果を発現させる観点から、その含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。一方、上記第2の副成分の含有量は、Mg合金の溶解原料の全質量を基準として、12質量%以下が好ましく、11質量%以下がより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
第2の副成分の含有量を0.01〜12質量%の範囲内に調整することによって、Mgによる特性、および粉末化における難燃性に加えて、所望とする機能性を得ることが容易となる。このような観点から、一実施形態において、Mg合金の溶解原料は、全質量を基準として、第1の副成分を0.5〜20質量%、第2の副成分を0.01重量%〜12質量%、その残部としてMgと不回避的成分とを含むことが好ましい。
上記製造方法において、Mg合金の溶解原料は、第1の副成分として、Y、Ca、およびAlからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。少なくとも、Y、Ca、又はAlを含むMg合金の溶解材料を使用した場合、アトマイズ時に優れた難燃性を得ることができ、空気アトマイズ法によるMg合金の粉末化が容易となる。特に、溶解原料がY又はCaを含む場合、Mg合金の溶湯の噴霧時に、溶滴の表面に緻密な酸化被膜が生成し、難燃性を高めることが容易になると考えられる。
また、焼結部品の製造において、上記酸化物の組織中への微細分散は、焼結体の強度向上にも有効であると考えられる。さらに、製造されたMg合金粉末は、表面に緻密な酸化被膜を有することから、長期保管した場合にも、特性低下の一因となる酸化が進み難いと考えられる。
溶解原料の全質量を基準として、Yの含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、1〜9質量%がより好ましく、2〜7質量%がさらに好ましい。溶解原料におけるYの含有量を0.5質量%以上に調整することによって、空気アトマイズ法によるアトマイズ時に、溶滴表面にYを含有する緻密な酸化被膜を生成することが容易となり、溶湯の燃焼による危険性を回避することができる。一方、溶解原料におけるYの含有量を10質量%以下に調整することによって、溶湯の粘度上昇による流動性の低下を容易に抑制することができる。これにより、ノズル詰まり等の不具合を発生させずに、良好にアトマイズを実施することができる。
溶解原料におけるZnの含有量は、LPSO相の生成促進の観点から、全質量を基準として、0.3〜5質量%が好ましく、0.5〜4質量%がより好ましく、1〜3質量%がさらに好ましい。
より具体的な実施形態において、溶解原料は、第1の副成分として少なくともYを2〜10質量%、第2の副成分として少なくともZnを1〜3質量%、およびその残部としてMgおよび不回避的成分を含むことが好ましい。
より具体的な実施形態において、溶解原料は、第1の副成分としてCaおよびAlを合計で1〜20質量%含むことが好ましく、2〜15質量%含むことがより好ましく、3〜12質量%含むことがさらに好ましく、その残部としてMgおよび不回避的成分を含む。
より具体的な実施形態において、溶解原料は、第1の副成分としてCaおよびAlを合計で1〜20質量%、第2の副成分として少なくともZnを0.1〜8質量%、およびその残部としてMgおよび不回避的成分を含むことが好ましい。
例えば、上記溶解原料として使用可能なMg合金材料の一例として、Mg−Al−Ca系合金材料が挙げられる。具体例として、AMX602(6質量%Al,2質量%Caを含有)、Mg85Al10Ca5(10原子%(10.7質量%)Al,5原子%(7.9質量%)Caを含有)が挙げられる。
他の例として、Mg−Al−Zn−Ca系合金材料が挙げられる。具体例として、AZX912(9質量%Al,1質量%Zn,2質量%Caを含有)、AZX311(3質量%Al,1質量%Zn,1質量%Caを含有)、およびAZX611(6質量%Al,1質量%Zn,1質量%Caを含有)が挙げられる。なかでも、AZX912を好適に使用することができる。
溶解原料の全質量を基準として、Alの含有量は、3.5〜12質量%が好ましく、4.5〜11質量%がより好ましく、5.5〜10質量%がさらに好ましい。溶解原料におけるAlの含有量を3.5質量%以上に調整することによって、Alは酸化被膜およびその直ぐ内部の液相にかけて濃化しやすくなる。Al2O3はMgOに比べてモル体積が大きいため、酸化被膜の緻密化が期待できる。また、酸化被膜より直ぐ内部の液相についても、Alの濃化に伴うMg蒸気圧の低下等の効果が期待できる。これらのことから、Alによって、溶湯の燃焼による危険性を回避することができると考えられる。一方、溶解原料におけるAlの含有量を12質量%以下に調整することによって、Mg−Al系の金属間化合物の析出量の増加による焼結体の脆化を抑制し、優れた加工性を得ることができる。
より具体的な実施形態において、溶解原料は、第1の副成分として少なくともAlを3.5〜12質量%、第2の副成分として少なくともZnを0.1〜8質量%、およびその残部としてMgと不回避的成分とを含む。
より具体的には、上記製造方法において、(a)溶解原料を溶解して、Mg合金の溶湯を得る工程は、黒鉛坩堝等を備えた溶解炉を使用して実施することができる。工程(a)において、Mg合金の溶湯は、先に説明した溶解原料を溶解炉に入れて加熱することによって得ることができる。
一実施形態において、製造コストを抑える観点から、空気のみを使用して溶湯の噴霧を行うことが好ましいが、必要に応じて不活性ガスを空気に混入してもよい。不活性ガスを混入した場合、酸化被膜の膜厚などを制御することが容易になると考えられる。不活性ガスとしては、代表的にアルゴンガス又はヘリウムガスを使用できるが、窒素ガスを使用することもできる。
先ず、工程(a)で得た溶湯1をタンディッシュ2に移し、タンディッシュ2の下に設けたノズル3から溶湯1を流出させる。一方、この溶湯の流れに対して空気ノズル4から空気5を噴射することで溶湯1を噴霧し、溶滴(噴霧された溶湯)6を形成する。この溶滴6が凝固することによって粉末が得られる。アトマイズされずに落下した溶湯は溶湯受皿7によって回収される。また、アトマイズによって形成された粉末(不図示)は粉末受皿8によって回収される。
アルゴンガスを用いたアトマイズ法では、通常、球状のMg合金粉末が得られるが、これはアルゴンガスによって溶滴表面での酸化被膜の生成が抑制されているためと考えられる。このような観点から、空気アトマイズ法は、溶滴表面が空気によって速やかに酸化されるため、不規則形状のMg合金粉末を製造するのに適した方法といえる。
(実施例1〜4、比較例1)
1.Mg合金粉末の製造
溶解原料として表1に示すMg合金材料を使用し、以下に示す手順で空気アトマイズを実施した。
次に、加熱炉から速やかに黒鉛坩堝を取り出し、内製の空気アトマイズ装置(図1を参照)のタンディッシュに溶湯を注湯した。タンディッシュの下方に設定した溶湯ノズルから落下する溶湯の流れに対し、横向きに設置した空気ノズルから空気を噴射し、溶湯を噴霧してアトマイズ(粉末化)した。溶湯ノズルの口径はφ10mmであり、空気の噴射圧力は10kgf/cm2であり、空気ノズルの口径はφ1.8mmであった。
一方、比較例1については、黒鉛坩堝を加熱炉から取り出してタンディッシュへ注湯する時点で溶湯が激しく燃焼した。空気の噴射によってさらに燃焼が激しくなると判断されたため、実験を中断した。
以上のことから、溶解原料が、Y、Ca、およびAlからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む場合、Mg合金の難燃性が向上し、空気アトマイズ法によるMg合金粉末の製造が可能となることがわかる。
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)による粉末形状の観察
実施例1〜3で製造した空気アトマイズ法によるMg合金粉末について、SEMを用いて、それぞれの粉末形状を観察した。観察は、FEI社製のQuanta200 3D FEGを使用し、加速電圧15kVの条件下で電子線を照射して実施した。それぞれのSEM写真を、図2(実施例1)、図3(実施例2)、および図4(実施例3)に示す。SEM写真から明らかなように、実施例1〜3で製造したMg合金粉末のいずれも不規則形状を有することがわかった。
XPSは、表面から5nm程度以内の表層部における元素の存在比や状態分析に有効である。試料台上に貼った1cm角のカーボンテープ表面に、実施例1〜3で製造した空気アトマイズ法によるMg合金粉末をそれぞれ隙間なく接着させた。次いで、表面を軽く押えて平坦にした後に分析試料として使用し、XPSによる元素分析を行った。そのため、表2に示す分析値は、X線が照射された範囲に存在する複数の粉末粒子の平均値を示す。
分析では、アルバック・ファイ株式会社製のPHI 5000 VersaProbeIIを使用した。測定条件は、X線:単色化AlKα線(1486.6eV)、検出角度:45°、分析面積:φ200μmとした。また、ワイドスキャンおよびナロースキャン時のパスエネルギーは、それぞれ187.85eV、29.35eVとした。
また、実施例1のMg合金粉末については、粉末表面のイットリウム(Y)存在比は12.3原子%であった。これに対して、溶解原料のY含有量は2.1原子%(表1の溶解材料のY含有量6.8質量%から換算)であることから、粉末表面にYが濃化していることがわかった。また、状態分析より、Y2O3の結合エネルギーのピークが確認された。
実施例1〜3で製造したMg合金粉末の表面付近の状態(断面)を分析するために、各Mg合金粉末に対し収束イオンビーム(FIB)加工を行い、箔状の試験片(厚さ約100nm)をそれぞれ採取した。FIB加工は、日本電子株式会社製の複合ビーム加工観察装置「JIB4501」を使用し、イオンビーム:Gaイオン、加速電圧:30kV、保護膜:炭素の条件下で実施した。
実施例2および実施例3のMg合金粉末について、Alの分布を比較するためにライン分析を実施した。実施例2および実施例3の各試験片のライン分析結果を図11及び図12に示す。粉末表面の酸化被膜は観察面および分析ラインに対して垂直な平面ではないため、最表面および母材界面の情報を拾うことによって酸化被膜の境界はシャープにはならない。ここでは、酸素(O)のピークの領域を酸化被膜の領域と定義した。なお、ライン分析は、図7(実施例2)および図9(実施例3)の各STEM写真に示した点線(符号a参照)を中心とした幅200nmの範囲について、EDXによる元素マッピングデータを使用して、ライン分析結果に変換したものである。
Claims (5)
- Mgを主成分とし、Y、Al、およびCaからなる群から選択される少なくとも1種を第1の副成分として含有するMg合金の溶解原料を溶解して、Mg合金の溶湯を得る工程、および
空気を用いて、前記Mg合金の溶湯を噴霧して、Mg合金粉末を得る工程
を有する、Mg合金粉末の製造方法。 - 前記Mg合金の溶解原料の全質量を基準として、前記第1の副成分の含有量が、0.5〜20質量%である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記Mg合金の溶解原料が、Zn、Mn、Si、Ni、Cu、Zr、およびSnからなる群から選択される1種又は2種以上を含む第2の副成分をさらに含有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記Mg合金の溶解原料の全質量を基準として、前記第2の副成分の含有量が、0.01〜12質量%である、請求項3に記載の製造方法。
- 前記Mg合金の溶解原料が、Mg−Zn−Y系合金材料、Mg−Al−Ca系合金材料、Mg−Al−Zn−Ca系合金材料、又はMg−Al−Zn系合金材料である、請求項1又は2に記載の製造方法。
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