特許文献1に記載された金属缶は、缶胴のほぼ中央部が窪んでいるので、金属缶を掴んだ指が上下方向には滑り難く、この点では、持ちやすい金属缶とすることができる。しかしながら、凹み部は円周方向には滑らかなために、缶胴が結露などによって濡れていた場合には、凹み部を掴んだ指が円周方向に滑りやすく、この点では掴みにくい(持ちにくい)金属缶になってしまう可能性がある。また、凹み部は缶胴の表面積を増大させるように作用するので、内容物と外部との熱交換が促進され、内容物を冷却する場合には冷却効率が良好になる。その反面、内容物の温度が高い場合には、外部に対する放熱が促進され、そのため、例えば凹み部を掴んだ指に伝わる熱量が多くなってその金属缶を持つ人が熱い思いをしたり、金属缶を持つことができない場合が多くなるなどの可能性がある。
また、特許文献2に記載された缶にあっては、缶胴の全周に亘って括れている箇所に、いわゆる横ビードを形成してあるから、缶胴の形状が特殊なものになる。しかしながら、特許文献2に記載されている構成では、缶胴の一部にいわゆる蛇腹を設けたのと同様な構造になるので、缶胴の中心軸線方向(上下方向)に対する剛性もしくは強度が低くなってしまう。そのため、例えば缶蓋を取り付けるシーマーでのリフター圧に耐えられずに変形してしまう可能性があり、そのような変形を防ぐためには缶胴の板厚を厚くせざるを得ないなどの課題が生じる。また、横ビードは、円周方向に延びているから、缶胴を掴んだ指が上下方向には滑り難いとしても、円周方向には滑りやすく、この点で持ちにくい缶になってしまう。さらに、缶胴の表面にバーコードを付するとした場合、リーダーとの距離の変化を可及的に少なくするために、各バーを缶胴の軸線方向(上下方向)に平行に並べて付することになるが、特許文献2に記載された構成では、横ビードにバーコードが掛かってしまうと、バーコードを正確に読み取れない場合が生じる。
さらに、特許文献3に記載された金属容器では、缶胴の外周の一部(直径方向で対向する二箇所)に後退部を形成してあるから、見る方向によって金属容器(もしくは缶胴)の形状あるいは見え方が異なることになる。すなわち、方向性のある構造になってしまう。そのため、非成形部を指で掴んで金属容器を持つこともあり、その場合には、単純な円筒状部分を掴むことになるために指が滑りやすく、持ちにくい容器となってしまう。また、胴部の外表面は縦ビードのある後退部と、円筒状の非成形部との二種類が存在するから、商品表示や装飾などの印刷を施す箇所を後退部と非成形部とのいずれか、あるいはそれらの境界部などに特定する必要が生じ、そのため、印刷や後退部の加工などを行う際に金属容器の姿勢(向き)を逐一、割り出さなくてはならないなど、製造作業性に難点がある。
一方、特許文献4に記載されている方法では、外径を縮小する絞り加工と外径を増大させる拡径加工とを行うから、胴部の内面が擦られて金属面が部分的に露出してしまう可能性がある。また、特許文献5に記載された方法では、幅が狭く、かつ浅い凹溝を形成する加工と、幅が広く、かつ深いビードを形成する加工との二つの加工を行うことになるので、工数が多くなり、また設備が大型化もしくは複雑になるなどの課題がある。
本発明は上記の事情を背景としてなされたものであって、単純な円筒状以外の特異形状をなすにも拘わらず、持ちやすさや製造の容易性などの他の機能を損なうことのない金属缶およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、本発明は、胴部が金属製薄板によって筒状に形成された金属缶において、前記胴部の上端部分と下端部分とがそれぞれ円筒状の上部円筒部と下部円筒部とされ、前記上部円筒部と前記下部円筒部との間の中間部に、前記胴部の中心軸線方向に延びかつ線状に盛り上がっている複数本の縦ビードが全周に亘って形成され、前記中間部は、前記縦ビードの稜線が、前記上部円筒部および下部円筒部からこれらの円筒部の間の部分に向けて前記胴部の半径方向で内側に次第に湾曲した円弧状となるように全周に亘って括れており、前記中間部のうち最も括れている部分が最小外径部とされ、前記縦ビードは、隣接する縦ビードの稜線の間の部分が谷部とされ、前記谷部から前記稜線までの寸法であるビード高さが前記最小外径部で最も高く、かつ前記上部円筒部側および前記下部円筒部側で次第に低くなっていることを特徴とするものである。
本発明においては、高さが80mm以上かつ170mm以下であり、前記上部円筒部および前記下部円筒部の外径が50mm以上かつ70mm以下であり、前記中間部における括れている部分の前記胴部の中心軸線方向での長さが40mm以上かつ120mm以下であり、前記縦ビードの稜線で形成される前記最小外径部における外径が、前記上部円筒部もしくは前記下部円筒部の外径の85%以上かつ95%以下であってよい。
また、本発明においては、前記胴部の厚さが0.1mm以上かつ0.25mm以下であり、前記ビード高さは、前記最小外径部で最も高く、かつ前記上部円筒部側および前記下部円筒部側で次第に低くなっていて、前記最も高い高さが1.5mm以下で前記次第に低くなった最も低い高さが0.3mm以上である。
さらに本発明では、前記縦ビードのピッチは、3.5mm以上でかつ5.5mm以下であってよい。
一方、本発明の方法は、金属製薄板からなる円筒状の胴部に外径が次第に小さくなる括れ部が全周に亘って形成されている金属缶の製造方法において、外周部に回転中心軸線と平行な方向に延びかつ前記回転中心軸線方向での中間部で外径が次第に小さくなるように前記回転中心軸線に対して垂直な半径方向に後退した複数の凹条部と凸条部とが形成された中子を前記胴部の内部に挿入し、前記凹条部に噛み込むリブ部と前記凸条部を噛み込ませる凹溝部とを有し、前記リブ部と前記凹溝部とが前記凹条部と前記凸条部との前記半径方向への後退に合わせた形状となるように前記中子に向けて突出している外型に前記胴部を前記中子によって押し付けつつ、前記胴部を前記中子とともに前記外型に沿って相対的に移動かつ回転させ、前記凹条部および前記凸条部と前記リブ部および前記凹溝部とが互いに噛み合うことにより前記胴部の全周に亘って前記胴部の中心軸線方向に延びた縦ビードを形成し、かつ前記凹条部と前記リブ部との噛み合い深さおよび前記凸条部と前記凹溝部との噛み合い深さを、前記凹条部および前記凸条部の前記半径方向に最も後退している箇所で深く、前記箇所から離れるのに従って次第に浅くすることにより、高さが次第に変化する前記縦ビードと前記括れ部とを同時に成形することを特徴とする方法である。
本発明の方法では、前記外型に設けられている前記リブ部および前記凹溝部の本数は、前記胴部に形成する前記縦ビードの本数より多く、前記中子を挿入した前記胴部の前記外型に沿う移動距離を前記胴部の外周の長さより長くしてよい。
また、本発明の方法では、前記中子に設けられている前記凸条部および前記凹条部の本数は、前記胴部に形成する前記縦ビードの本数の60%以上かつ70%以下であり、前記中子を1回転より多く回転させて前記縦ビードを形成することができる。
本発明によれば、胴部のうち上下の円筒部の間の部分が全周に亘って括れており、その括れた部分に複数本の縦ビードが形成されているので、外観が特異な形状を呈し、意匠性に優れ、もしくは購買者の注意もしくは視線を惹き付ける機能に優れている。特に請求項1の発明では、縦ビードの高さが、最小外径部で高くなっているので、外径が絞られることによるいわゆる余肉が縦ビードによって十分に吸収され、括れ形状や縦ビードの形状を滑らかな形状とすることができる。また、括れおよび縦ビードは胴部の全周に亘って形成されているので、胴部あるいは金属缶全体としてのいわゆる方向性が生じない。そのため、胴部の印刷や金属缶の陳列に制約がなくなり、製造時における金属缶もしくはその金属缶に内容物を充填した製品の取り扱いあるいはハンドリングが容易になる。さらに、胴部が括れていることにより、胴部を掴んだ指の上下方向の滑りが抑制され、かつ縦ビードが形成されていることにより、胴部を掴んだ指の円周方向の滑りが抑制されるので、手で持ちやすい金属缶とすることができる。胴部を掴んだ指は、縦ビードの稜線に接触し、胴部と指との接触面積が小さくなるので、指から胴部に対する熱の伝達が抑制されて金属缶の内容物が温まりにくく、また反対に金属缶の温度が高い場合、指に対する熱の伝達が抑制されて購買者が熱い思いをしにくくなる。そして、バーコードのバーを缶胴の中心軸線方向に並べて印刷する場合、バーコードが縦ビードに掛かるとしても、いずれかのバーが縦ビードの間に埋もれてしまうことがないので、バーコードの読み取りに支障のない金属缶とすることができる。さらにまた、胴部が全周に亘って括れているとしても、括れている箇所の全体に縦ビードが形成されているので、座屈強度の低下を抑制することができる。
本発明によれば、括れている箇所の最小外径が、上部円筒部もしくは下部円筒部の外径すなわち括れ部分の元の外径の95%以下であるから、胴部の括れすなわち特異形状を確実もしくは強く認識させることができ、また元の外径の85%以上であるから、胴部に施した印刷画像の視認性が損なわれることを回避もしくは抑制することができる。
本発明によれば、ビードの高さは最も低くても0.3mmとしたので、明瞭に視認できる縦ビードとすることができ、またビードの高さは最も高くても1.5mmとしたので、胴部の破断や亀裂などのない縦ビードを加工することが容易になり、製造性の良い金属缶とすることができる。
本発明によれば、縦ビードのピッチを3.5mm以上でかつ5.5mm以下としたので、縦ビードが視覚的に明瞭になるとともに、成形時に過度なコイニングなどが生じないので、亀裂や破断などの異常が生じにくくなる。
本発明の方法によれば、胴部を括れさせると同時に縦ビードを形成することができるので、金属缶を製造する工程数を少なくすることができ、また胴部の内面の塗装被膜を損傷することを防止もしくは抑制することができる。また、最も大きく括れさせる箇所における前記凹条部と前記リブ部との噛み合い深さおよび前記凸条部と前記凹溝部との噛み合い深さを深くするので、括れに伴ういわゆる余肉をビード加工によって吸収して、形状に乱れのない括れ形状およびビード形状に加工することができる。
特に本発明の方法によれば、胴部を1回転以上回転させて縦ビードの加工を行うので、加工開始部分での縦ビードを二回加工することになり、その部分の加工不足もしくは加工不良を回避もしくは抑制することができる。
そして、本発明の方法によれば、中子を胴部より小径にすることができるので、胴部に対する中子の出し入れが容易であり、また中子を1回転以上回転させた場合に、既に形成されている縦ビードと凸条部および凹条部とのピッチの差異を小さくして、安定して縦ビードを加工することができる。
本発明に係る金属缶1は、少なくとも胴部が金属製薄板で形成された容器であり、金属製のツーピース缶、金属製のスリーピース缶、金属製のリシール缶が典型的な例である。したがって、素材はスチールやアルミニウムあるいはアルミニウム合金などである。図1は本発明の実施例である飲料用ツーピース缶であり、胴部2と底部3とが一体に形成されたDI缶(絞り・しごき加工によって成形した缶)である。ツーピース缶の場合、底部3は内部に向けて凸なるドーミング加工が施され、スリーピース缶の場合、平板状の底蓋によって形成される。
胴部2の上端部には缶蓋(図示せず)を取り付けるためのフランジ部4が形成されている。フランジ部4に続く下側の部分は、フランジ部4に向けて外径が次第に小さくなるようにネックイン加工されたネックイン部5となっている。ネックイン部5に続く下側の部分と底部3より上側の部分とが円筒状に形成され、これらの部分が上部円筒部6と下部円筒部7となっている。これら上部円筒部6と下部円筒部7とは同一の外径であってよく、あるいは異なる外径であってもよい。
上部円筒部6と下部円筒部7との間の部分は、外径がこれらの円筒部6,7より小さい括れ部8とされている。括れ部8は、胴部2の全周に亘って形成され、括れ部8の中心軸線に沿う方向での中間部に向けて外径が次第に小さくなる部分である。この括れ部8には、中心軸線方向(もしくは胴部2の母線)に沿う複数の縦ビード9が形成されている。縦ビード9は括れ部8の外表面側に線状に盛り上がった部分であり、稜線9aが胴部2の中心軸線方向においては直線状をなし、胴部2の半径方向においては胴部2の内部に向けて滑らかに凸となった(胴部2の外表面から内側に滑らかに窪んだ)円弧状をなしている。
稜線9aが括れ部8の外径を形成しており、胴部2の直径方向で最も遠い縦ビード9の稜線9a同士の間隔(縦ビード9の本数が奇数の場合)もしくは直径上で互いに対向する稜線9a同士の間隔(縦ビード9の本数が偶数の場合)が括れ部8の外径である。括れ部8の外径は、図2および図3に示すように、括れ部8の中心軸線方向での中間部で最小になっている。その最小外径部8aの位置は、括れ部8の中心軸線方向での中央部より幾分下側の位置であり、胴部2の中心軸線方向での中央部より幾分下側の位置になっている。最小外径部8aをそのように中心軸線方向において中央部より幾分下側に設定しているのは、コップなどの飲料用容器に似た形状とするためである。
稜線9aと挟んだ両側の谷部9bから稜線9aまでの寸法が縦ビード9の高さHbであり、縦ビード9の高さHbは図2および図3に示すように、前述した上部円筒部6および下部円筒部7側で最も低く、最小外径部8aで最も高くなるように次第に変化している。なお、稜線9aおよび谷部9bの断面形状は、図2や図3に示すように、丸みのある形状となっている。
本発明の実施例における金属缶1は、胴部2の板厚が0.1mm以上かつ0.25mm以下であり、胴部2の外径(前述した上部円筒部6や下部円筒部7の外径)が50mm以上かつ70mm以下の金属缶である。高さHは80mm以上かつ170mm以下である。金属缶1の高さHは、図1に示すツーピース缶や図示しないスリーピース缶の場合、底部3からフランジ部4までの高さであり、リシール缶の場合は底部から雄ネジが形成される口頸部の下端部までの高さである。また、括れ部8の長さ(上下方向での長さ)Lは、40mm以上かつ120mm以下である。これは、金属缶1のデザインに基づいて決められる。括れ部8は、胴部2の外径を小さくする加工によって変形した部分であるから、その長さLは、そのような変形が生じた箇所の、胴部2の中心軸線方向での長さとしてよい。したがって、積極的な加工を施していなくても括れ部8の加工に伴って括れ部8の上端部や下端部に生じる変形の痕跡のある箇所(例えば、いわゆるダレとして生じる変形箇所)が長さLの端部であってよい。
〈括れ部の最小外径について〉
括れ部8の最小外径部8aの外径Dminは、括れ加工前の元の外径、すなわち上部円筒部6や下部円筒部7の外径D0より小さく、その直径の比率(直径比率)は85%以上でかつ95%以下である。これは、下記の実験の結果に基づいている。元板厚が0.3mmの3004材アルミニウム合金材を使用して絞りしごき加工により、缶径が66mm、高さが123.5mm、壁厚が0.105mmに成形した後、印刷および乾燥を行ったツーピースDI缶に上述した縦ビード9を42本形成し、かつ括れ部8を形成した。括れ部8の最小外径(括れ直径)を、63mm(比較例1)、62mm(実施例1)、60mm(実施例2)、57mm(実施例3)、53mm(比較例2)とし、括れ部8についての視覚による評価を行った。結果を図4に図表で示してある。
比較例1は、括れ部8の最小外径(括れ直径)が加工前の元の直径の95.5%であり、前述した上部円筒部6や下部円筒部7の直径との差異が僅かであり、括れ部8が形成されているようには見えず、括れの印象は不可(×)であった。これに対して実施例1ないし3は、いずれも括れ部8の最小外径(括れ直径)が加工前の元の直径の85%以上でかつ95%以下の範囲に入っており、括れていることを明確に見て取ることができ、特に実施例2の形状は、設計上想定した形状に最も近く、したがって各実施例1〜3についての括れの印象は可(○)であった。なお、比較例2では、最小外径部8aにおける縦ビード9が密になってしまって縦ビード9の印象が強くなりすぎ、また括れ部8に施されている印刷模様もしくは印刷文字の変形が大きくなって金属缶1としてのデザインに対する影響が大きく、したがって括れの印象は不可(×)であった。結局、85%よりも小さいと、胴部2(括れ部8)に施した印刷文字もしくは印刷模様が見にくくなり、印刷の視認性が悪化する。また、95%より外径が大きいと、胴部2の括れの印象が弱くなり、形状の特異性を購買者に印象づけることが難しくなる。
〈縦ビードの高さ(深さ)について〉
縦ビード9の高さ(深さ)Hbは前述したように谷部9bから稜線9aまでの寸法であり、最も小さくても0.3mmであり、また最も大きくても1.5mmである。なお、最も低い部分は上部円筒部6側や下部円筒部7側のいわゆる端部であり、最も高い部分は最小外径部8aの部分であり、縦ビード9の高さ(深さ)Hbはこの範囲で、上部円筒部6側および下部円筒部7側の端部から最小外径部8aの箇所に向けて次第に変化している。なお、縦ビード9の高さHbの最も小さい箇所は、図5の(a)および(b)に示すように、稜線9aの端部に対応する箇所である。稜線9aは、両側を窪ませて谷部9bを形成することにより谷部9bの間に生じる部分であり、その谷部9bを窪ませる場合、図の上下の両端部には、谷部9bの成形に伴って(あるいは引き摺られて)次第に凹む部分が生じる。その凹んだ部分の輪郭が一致もしくは交わる部分が稜線9aとなる。このように稜線9aの端部より上側や下側に、次第に窪んでいる部分が存在するが、その次第に窪んでいる部分に対応する稜線9aが存在しないので、この発明の実施例においては、縦ビード9の高さHbの最も小さい箇所は、稜線9aの端部に対応する箇所とし、その箇所の高さHbを最も小さい高さとしている。縦ビード9の高さ(深さ)Hbを上記の範囲に設定したのは、下記の実験の結果に基づいている。上述したDI缶に等ピッチの縦ビードを42本形成し、ビードの深さを、0.2mm(比較例3)、0.3mm(実施例4)、0.6mm(実施例5)、1.5mm(実施例6)、1.6mm(比較例4)とし、ビードの仕上がりについて視覚による評価を行った。結果を図6に図表で示してある。
比較例3は縦ビードの深さが上記の範囲外であり、上部円筒部6側や下部円筒部7側の端部のビード形状が明確に視認することができず、成形不良のようにも見え、ビードの仕上がりの印象は不可(×)であった。これに対して実施例4〜6は、いずれもビード深さが上記の範囲内であり、縦ビード9をその上下の端部を含めて、全体的に明瞭に視認することができ、ビードの仕上がりの印象は可(○)であった。比較例4は、ビード深さが上記の範囲外であって過度に深く、しかも最も括れている箇所でビード深さが深くなっているので、印刷模様もしくは印刷文字が過度に畳まれた状態になり、印刷デザインが見にくくなってしまう。したがって、比較例4についてのビードの仕上がりの印象は不可(×)であった。結局、縦ビード9の高さHbは0.3mm以上でかつ1.5mm以下とする。こうすることにより、縦ビード9の高さが最も低い部分は、前述した上部円筒部6側や下部円筒部7側の部分であって、この部分の高さHbが最小でも0.3mmであるから、明瞭に視認できる縦ビード9とすることができる。また、縦ビード9の最大高さが1.5mm以下であるから、縦ビード9の明瞭性を確保した状態で、胴部2の素材の変形や引っ張りなどが過剰にならないので、胴部2(括れ部8)の亀裂や破断などの損傷を生じさせることなく括れ部8や縦ビード9を加工でき、製造性の良好な金属缶1とすることができる。また、縦ビード9の高さHbが最も高い位置は、前述した最小外径部8aの位置であり、したがって括れ量の多い箇所における余肉あるいは外径の減少を縦ビード9によって吸収し、不要なシワやビードの変形などのない金属缶1となる。
〈縦ビードのピッチおよび本数について〉
胴部2あるいは括れ部8の外径が上記のように決まっているので、縦ビード9のピッチPを広くすれば、縦ビード9の本数が少なくなり、反対にピッチPを狭くすることにより本数を多くすることができる。そこで、縦ビード9のピッチPは、本発明の実施例では、3.5mm以上でかつ5.5mm以下とされている。これは、以下の実験の結果に基づいている。上述したDI缶の括れ部8に形成する縦ビード9のピッチPを、3.3mm(本数63:比較例5)、3.5mm(本数59:実施例7)、4.9mm(本数42:実施例8)、5.5mm(本数38:実施例9)、5.7mm(本数36:比較例6)とし、ビードの仕上がりについて視覚による評価を行った。結果を図7に図表で示してある。
比較例5では、縦ビード9が細かく、縦ビード9を視認しにくく、縦ビード9の印象が薄れる。また、縦ビード9が細い凸条部となるので、縦ビード9の高さ(深さ)Hbを大きくすることができず、敢えて大きくするとすれば、破断や亀裂が生じる可能性が高くなる。そのため、ピッチPが狭いことに伴って縦ビード9の高さHbが低くなって壁部の折りたたみ量(余肉の吸収量)が小さくなるので、括れ部8の最小外径を小さくすることが困難になり、括れの印象(形状の特異性)が乏しくなる。したがって、ピッチPが3.5mmではビード仕上がりの印象は不可(×)であった。これに対して実施例7〜9は、いずれもピッチPが3.5mm以上でかつ5.5mm以下の範囲内であり、ビードを明瞭に視認できるうえに、括れ部8の最小外径を必要十分に小さくすることができる。したがって、ビード仕上がりの印象は可(○)であった。比較例6では、縦ビード9のピッチPが広く、そのために縦ビード9の高さ(深さ)Hbが大きくなり、縦ビード9の印象は粗い「ゴツゴツ」感の強いものとなってしまい、ビード仕上がりの印象は不可(×)であった。なお、縦ビード9のピッチPを広くし、かつ高さ(深さ)Hbを小さくすると、ビードの断面形状がいわゆる末広がりの形状になってビードあるいは稜線がボケた印象になる。
上述した本発明の実施例による金属缶1にあっては、上述したように、明瞭な縦ビード9および括れ部8を形成することができ、購買者の注意を好感をもって惹くことのできる金属缶とすることができ、そればかりか、括れ部8の最小外径を十分に小さくすることができるので、金属缶1を掴んだ指が上下方向に滑ることを防止もしくは抑制でき、かつビードが縦ビード9であって全周に亘って形成されているので、指が周方向に滑ることを防止もしくは抑制することができる。すなわち、金属缶1がたとえ濡れていても確実に掴むことができ、持ちやすい金属缶とすることができる。また、縦ビード9は全周にほぼ等間隔に形成されているので、円周方向のいずれの箇所から見てもほぼ同一形状に見えることにより金属缶1に方向性がなく、したがって製造時や陳列の際に金属缶1の向きを調整するなどの必要がなく、その点で製造性あるいはハンドリング性が良好になる。さらに、金属缶1を掴んだ指は、縦ビード9の稜線に接触することになり、その接触面積が小さいので、指の熱が金属缶1に伝わりにくく、また内容物の熱が指に伝わりにくく、したがって内容物が温まってしまったり、あるいは指が熱くなるなどの事態を防止もしくは抑制することができる。
図8は、把持のし易さおよび熱さの官能テストの結果を示しており、縦ビード9の本数を42本、括れ部8の最小外径を58mm、縦ビード9の最大高さ(深さ)を1.1mmとし、他の条件を上述した金属缶1と同様とした例(ビード缶)と、括れ部8および縦ビード9を形成していない通常缶とについての結果を示している。
本発明の実施例であるビード缶については、10名のモニターの全員が通常缶に比較して持ちやすさを認めた。また、9名のモニターがビード缶では熱さが和らぐことを認めた。
そして、上述した金属缶1によれば、バーコードのバーが胴部2の中心軸線と平行な方向に並ぶように括れ部8に印刷されていた場合であっても、バー同士の間隔が特には変化しないので、バーコードの読み取りに支障のない金属缶とすることができる。なおまた、上述した金属缶1では胴部2に括れ部8が形成されているだけでなく、括れ部8に多数の縦ビード9が形成されているから、括れ部8を形成することに伴う座屈強度の低下が縦ビード9によって抑制されている。
つぎに上述した金属缶1の製造方法を説明する。図9は本発明の実施例の方法を実施した場合の形状の変化の過程を示しており、図示しないブランク(金属薄板)を絞りしごき加工することにより、図9の(a)に示す粗形材10Aを作成する。また、底部3にはドーミング加工を施す。その絞りしごき加工やドーミング加工は、従来知られている方法であってよい。ついで粗形材10Aの表面に印刷11を施して印刷粗形材10Bとする(図9の(b)参照)。その印刷の方法は従来知られている方法であってよい。なお、スリーピース缶の場合には、印刷の施された金属板を円筒形状に成形および溶接し、その一方の開口端に蓋を取り付けて印刷粗形材とする。
印刷粗形材10Bの胴部2に、上部円筒部6および下部円筒部7を残してビード加工を施し、図9の(c)に示すビード粗形材10Cとする。ビード加工は、図10および図11に示すように、中子12を印刷粗形材10Bに挿入し、その状態で中子12によって印刷粗形材10Bを外型13に押し付け、中子12および印刷粗形材10Bと外型13との少なくともいずれか一方に対して相対的に移動させつつ回転させて行う。
図12は中子12の一例を示しており、中子12は印刷粗形材10Bの内部に挿入できるように印刷粗形材10Bの内径(前述した上部円筒部6や下部円筒部7の内径)より小さい外径で、かつ金属缶1に付与すべき括れ部8に対応する形状の括れ部12aを有するほぼ鼓形をなしている。括れ部12aの上側および下側の部分は、共に、円柱軸状もしくは円筒軸状になっている。括れ部12aには、前述した縦ビード9を形成するための凹条部12bと凸条部12cとが複数本形成されている。
凹条部12bは縦ビード9の谷部9bを成形するためのものであり、凸条部12cは縦ビード9の間の稜線9aを成形するためのものである。これらの凹条部12bおよび凸条部12cは中子12の中心軸線と平行な方向には直線状になっている。また、凸条部12cは中子12の半径方向には、中子12の中心に向けて滑らかに窪んだ円弧状になっている。その円弧形状は、金属缶1に形成するべき縦ビード9の形状とほぼ一致する形状である。凹条部12bの底部を中子12の一定半径の位置とすることにより、凸条部12cの高さは、中心軸線方向での上端側と下端側とで高く、前述した最小外径部8aに対応する位置で最も低くなっている。
したがって、各凹条部12b同士の間隔であるピッチあるいは各凸条部12c同士の間隔であるピッチは、金属缶1に形成するべき縦ビード9のピッチPに一致している。これに対して中子12は印刷粗形材10Bの内部に挿入できる外径であって印刷粗形材10Bの外径より小さいから、各凹条部12bおよび凸条部12cの本数は、金属缶1に形成すべき縦ビード9の本数より少なくなっている。本発明の実施例では、中子12における凹条部12bおよび凸条部12cの本数は、金属缶1に形成するべき縦ビード9の本数の60%以上でかつ70%以下である。60%より少ないと中子12が細くなり、軸線方向での一方側のみで回転可能に支持するいわゆる片持ち状では中子12の剛性が不足して縦ビード9のピッチPが狂うなどの不都合が生じる可能性がある。また、70%より多いと、中子12が太くなり、括れ部8を形成した状態の金属缶1からの抜き取りが困難になる可能性が高くなる。
外型13は平板状の基板部13aを備え、その基板部13aのうち中子12を向く面に複数のリブ部13bとリブ部13bの間の部分である凹溝部13cとが一定間隔で互いに平行に形成されている。リブ部13bは縦ビード9における谷部9bの部分を成形するためのものであり、前述した中子12における凹条部12bに先端部を入り込ませるように構成されている。また、凹溝部13cは縦ビード9における稜線9aを成形するための逃げ溝であって、前述した中子12における凸条部12cの先端部を入り込ませるように構成されている。これらリブ部13bおよび凹溝部13cは、前述した縦ビード9を成形すると同時に前記括れ部8を成形するように構成されている。すなわち、リブ部13bおよび凹溝部13cは、基板部13aの上下方向には直線状になっており、基板部13aの厚さ方向(中子12側を向く面に垂直な方向)には、図13に示すように、金属缶1に形成するべき括れ部8の円弧形状にほぼ一致する円弧状になっている。そして、リブ部13bの高さ(凹溝部13cの底部からリブ部13bの稜線までの寸法)は、縦ビード9の上端側および下端側で低く、前記最小外径部8aに対応する箇所で最も高くなるように、上下方向で次第に変化している。
各リブ部13bおよび各凹溝部13cのピッチは、金属缶1に形成するべき縦ビード9のピッチPに一致している。また、各リブ部13bおよび各凹溝部13cの本数は、金属缶1に形成するべき縦ビード9の本数より多くなっている。印刷粗形材10Bが外型13に押し付けられて最初に形成される一本もしくは数本の縦ビード9の形状を正確にするために、これらの縦ビード9を外型13と中子12とで2回成形加工することが好ましい。そこで、印刷粗形材10Bを外型13に対して1回転以上回転させ、かつその間に縦ビード9の成形を行うために、各リブ部13bおよび各凹溝部13cの本数を、金属缶1に形成するべき縦ビード9の本数より多くしてある。縦ビード9より多い本数は、1〜4本程度であり、より好ましくは2本である。
上記の中子12を印刷粗形材10Bに挿入し、中子12を外型13に接近させて印刷粗形材10Bの外周壁を中子12と外型13との間に挟み込む。その場合、中子12を外型13に接近させる以外に、外型13を中子12に接近させてもよい。印刷粗形材10Bを中子12と外型13との間に挟み込んだ状態で、中子12と外型13とを中子12の中心軸線に対して垂直な方向に相対的に移動させる。このような相対移動は、中子12を外型13に沿って移動させることにより行ってもよく、あるいは中子12は回転可能に保持しておくだけで、外型13を図10の矢印方向に移動させることにより行ってもよい。
中子12と外型13との相対距離は、中子12における凹条部12bおよび凸条部12cと外型13におけるリブ部13bおよび凹溝部13cとが互いに噛み合う距離である。したがって、中子12と外型13とを上記のように相対移動させることにより中子12および印刷粗形材10Bが外型13に沿って移動しつつ回転する。外型13に設けられているリブ部13bは、前述したように、中子12に向けて円弧状に突出しているので、印刷粗形材10Bの胴の部分が図14に示すように内側に窪まされ、括れ部8が形成される。また、中子12における凹条部12bおよび凸条部12cと外型13におけるリブ部13bおよび凹溝部13cとが順次噛み合うので、括れ部8に縦ビード9が形成される。
縦ビード9は、中子12における凹条部12bおよび凸条部12cと外型13におけるリブ部13bおよび凹溝部13cとの形状および噛み合い深さに応じた形状となる。図15は括れ部8における上端側もしくは下端側での中子12における凹条部12bおよび凸条部12cと外型13におけるリブ部13bおよび凹溝部13cとの噛み合い状態を示し、図16は括れ部8における最小外径部8aもしくはその近傍での中子12における凹条部12bおよび凸条部12cと外型13におけるリブ部13bおよび凹溝部13cとの噛み合い状態を示している。これら図15および図16に示すように、縦ビード9の上端部や下端部では、中子12における凹条部12bおよび凸条部12cと外型13におけるリブ部13bおよび凹溝部13cとの噛み合い深さが浅く、括れ部8の最小外径部8aあるいはその近傍では、中子12における凹条部12bおよび凸条部12cと外型13におけるリブ部13bおよび凹溝部13cとの噛み合い深さが深くなる。したがって最小外径部8aあるいはその近傍では、縦ビード9として折り畳まれる量が多くなるので、胴の部分の外径を小さくすることに伴う周壁部の余剰部分あるいは余肉を縦ビード9によって吸収し、その吸収量が外径の減少に応じた量になる。その結果、縦ビード9の変形や皺などの形状の異常を生じさせることなく、括れ部8と縦ビード9とを同時に成形することができる。なお、縦ビード9における稜線9aの部分の断面形状は、中子12における凸条部12cの先端部分の断面形状に倣った丸みのある形状になり、また谷部9bの部分の断面形状は、外型13におけるリブ部13bの先端部分の断面形状に倣った丸みのある形状になる。
中子12は粗形材10A〜10Cや金属缶1に出し入れするために粗形材10A〜10Cや金属缶1の外径より小さい外径に形成され、したがって中子12が1回転以上回転するように中子12と外型13とを相対移動させることにより、金属缶1の外周の全体に亘って括れ部8および縦ビード9が形成される。その相対移動距離は、本発明の実施例においては、金属缶1の外周長より長い。具体的には、初期に形成された縦ビード9の数本(例えば2本)を、相対移動の終期に再度、中子12と外型13との間に噛み込ませることのできる距離である。この結果、設計上決められた本数の縦ビード9を形成することができるとともに、初期に成形される数本の縦ビード9の形状を整えることができる。また、終期に再加工する縦ビード9の本数が特には多くないので、加工途中の中子12と印刷粗形材10Bとの間にたとえ僅かな滑りがあっても、初期に成形された縦ビード9と外型13のリブ部13bや凹溝部13cとのピッチのずれが僅かになり、縦ビード9を正確に成形することができる。
図9の(c)に示すビード粗形材10Cにネックイン加工およびフランジ成形加工を施す。ネックイン加工は、外径が上端側で次第に小さくなるようにテーパー状に成形する加工であり、フランジ成形加工は図示しない蓋を取り付けるためのフランジ部4を形成するための加工であり、これらいずれの加工も従来知られている方法で行うことができる。図9の(d)にこれらの加工を施して得られた金属缶1を示してある。
上述した本発明の実施例による方法では、金属缶1の胴部2を外径が小さくなるように絞ると同時に一定ピッチで凹凸に曲げて(もしくは折って)括れ部8および縦ビード9を形成するから、金属缶1の内面および外面の塗膜にダメージを与えることが殆どない。そのため、塗膜の補修などの加工を省略して製造性を向上させることができる。また、括れ部8の成形と縦ビード9の成形とを同時に行うことができるので、工程数が少なくなり、また使用する金型が少なくなるので、この点でも製造性を向上させることができる。さらに、従来のビード成形のための装置における金型を上述した中子12や外型13に変更することにより、前述した金属缶1を成形できるので、設備を簡素化し、また製造コストを低廉化できる。