JP6897449B2 - 高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2には、板厚40〜100mmを対象とした、溶接性に優れた600MPa級の鋼板およびその製造方法の発明が開示されている。
特許文献2の実施例から判断される限り、特許文献2により開示された発明の溶接割れ防止予熱温度は25℃である。
Pcm=[C%]+[Si%]/30+[Mn%]/20+[Cu%]/20+[Ni%]/60+[Cr%]/20+[Mo%]/15+[V%]/10+5×[B%]・・・(2)
式(2)において[ ]付元素はそれぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
(B)Moは、含有量が増加すると靭性を劣化させる傾向があるため、多くは含有しない。
[2]複合介在物の周長に占めるMnSの割合が10%以上である。
[3]粒径0.5〜5.0μmの複合介在物の個数密度が10〜40個/mm2である。
本発明は、これらの知見A〜Gに基づくものであり、以下に列記の通りである。
下記式(2)により定義される溶接割れ感受性指数Pcmの値が0.17〜0.24であり、
残部はFeおよび不純物であり、
鋼中にTi酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含み、前記複合介在物の断面における前記MnSの面積率が10〜50%であり、前記複合介在物の周長に占めるMnSの割合が10%以上であり、粒径0.5〜5.0μmの前記複合介在物の個数密度が10〜40個/mm2である、引張強さ570MPa以上で、予熱無しで溶接が可能な板厚60mm以上の高張力厚鋼板。
0.0003≦[B%]≦0.0005+[Cu%]/1000+[Ni%]/500+[Mo%]/500・・・(1)
Pcm=[C%]+[Si%]/30+[Mn%]/20+[Cu%]/20+[Ni%]/60+[Cr%]/20+[Mo%]/15+[V%]/10+5×[B%]・・・(2)
式(1),(2)において[ ]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
RH真空脱ガス処理において化学組成を調整して溶鋼を製造し、
該溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片を製造し、
該鋳片を1050〜1250℃の温度に加熱および均熱してから、800〜900℃にて所定の板厚に仕上げるように熱間圧延を行い、熱間圧延の直後に焼入れをする、1または2項に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
1.化学組成
本発明に係る高張力厚鋼板の化学組成を、上述のように限定する理由を説明する。はじめに必須元素を説明する。
Cは、高張力厚鋼板の強度を決定する最も重要な元素である。C含有量が0.05%未満であると、必要とする570MPa以上の強度を得られない。したがって、C含有量は、0.05%以上であり、好ましくは0.07%以上であり、好ましくは0.08%以上である。
高張力厚鋼板の強度、低温靭性およびHAZ靭性がバランスした特性を得るためには、C含有量は0.07〜0.11%であることが好ましい。
Siは、溶鋼の予備脱酸に有効な元素であり、かつ靭性を悪化させることなく強度を向上させる効果を有する。Si含有量が0.10%未満ではこの効果を十分に得られない。したがって、Si含有量は、0.10%以上であり、好ましくは0.11%以上であり、さらに好ましくは0.12%以上である。
Mnは、焼入れ性の向上を通じて強度を向上させるために重要であるとともに、HAZ靭性の向上に好適な介在物の形態を得るために必要である。したがって、Mn含有量は、0.8%以上であり、好ましくは0.83%以上であり、さらに好ましくは0.85%以上である。
高張力厚鋼板の強度、靭性及びHAZ靭性がバランスした特性を得るためには、Mn含有量は1.0〜1.4%であることが好ましい。
Pは、結晶粒界に偏析して鋼板の靱性を劣化させるため、P含有量はできるだけ低いことが望ましい。P含有量が0.015%を超えると靭性の劣化が著しい。したがって、P含有量は、0.015%以下であり、好ましくは0.011%以下であり、さらに好ましくは0.010%以下である。
Sは、MnSを複合析出させ、MnSと母材のマトリクス界面にMn欠乏領域を形成するのに有効であり、母材を溶接した場合、このMn欠乏領域から粒内フェライトが優先的に成長するため、HAZの低温靭性を確保することができる。そのため、S含有量は0.001%以上である。しかし、S含有量が0.005%を超えると、鋼板の延性や母材靭性を劣化させる原因ともなる。したがって、S含有量は、0.005%以下であり、好ましくは0.004%以下である。さらに好ましくは0.003%以下である。
Alは、溶鋼の清浄度を得るために含有する元素である。Alは、他の元素よりも優先的に酸化物を形成するため、低温靭性およびHAZ靭性の向上に寄与するTi系酸化物が得られなくなる。したがって、Al含有量は、0.003%以下であり、好ましくは0.002%以下であり、さらに好ましくは0.001%以下である。
Cuは、溶接性や靭性を大きく損なうことなく、焼入れ性の向上により強度を向上させることができる。したがって、Cu含有量は、0.30%以上であり、好ましくは0.31%以上であり、さらに好ましくは0.32%以上である。
Niは、焼入れ性と靭性の両方を向上させ、さらに、Cuを多く含有する鋼板の熱間脆性を防止する。したがって、Ni含有量は、0.15%以上であり、好ましくは0.17%以上であり、さらに好ましくは0.18%以上である。
Crは、Cuと同様に溶接性や靭性を損なうことなく、強度を向上させることができる。したがって、Cr含有量は、0.30%以上であり、好ましくは0.33%以上であり、さらに好ましくは0.40%以上である。
強度を安定的に確保するために、Cr含有量は、好ましくは0.40〜0.60%である。
Nbは、未再結晶域を広げ、その領域で圧延を行うことにより高密度の転位を導入し、変態核生成サイトを増加させることで組織の微細化を図ることができるため、靭性を向上することができる。したがって、Nb含有量は、0.015%以上であり、好ましくは0.016%以上であり、さらに好ましくは0.025%以上である。
Tiは、窒化物を生成して結晶粒の粗大化を抑制するとともに、粒内変態核となる複合介在物の生成に必要である。しかし、Ti含有量が0.005%未満では、この作用が奏されない。したがって、Ti含有量は、0.005%以上であり、好ましくは0.010%以上である。
Bは,少量で焼入れ性を向上することができるため、強度の向上に極めて有効である。さらに、Bは、溶接時にオーステナイト粒界に偏析し、粒界エネルギーを低下させることにより粒内から変態し、組織が微細化される。このため、HAZ靭性の向上にも効果がある。したがって、B含有量は、0.0003%以上であり、好ましくは0.0005%以上であり、さらに好ましくは0.0006%以上である。
Nは、窒化物を形成することにより加熱時の組織粗大化を抑制するため、靭性向上に寄与する。したがって、N含有量は、0.0020以上であり、好ましくは0.0024%であり、さらに好ましくは0.0031%である。
O(酸素)は、粒内変態核となる複合酸化物の生成に有効である。したがって、O含有量は、0.0005%以上であり、好ましくは0.0008%以上であり、さらに好ましくは0.0011%以上である。
(1−15)Mo:0〜0.40%
Moは、強度を向上させ、またBの添加による靭性の劣化を緩和する効果を有するので、含有することが好ましい。しかし、Mo含有量が0.40%を超えると、靭性が著しく劣化する。このため、Moを含有しても靭性を劣化させないために、Mo含有量は、0.40%以下であり、好ましくは0.15%である。
Vは、一般的に焼入れ性を向上させ、析出硬化によって溶接による軟化を抑制するのに有効である。しかし、前述のように、板厚60mm以上といった厚鋼板では、冷却時の板厚中央部の冷却速度が遅く、冷却過程においてV析出物が粗大化して靭性が劣化する。したがって、Vが不純物で存在していたとしても、V含有量は、0.008%以下であり、好ましくは0.005%以下であり、さらに好ましくは0.004%以下である。Vは含有しないことが最も好ましい。
溶接割れ感受性指数Pcmの値が高いほど、溶接での低温割れを防止するための予熱温度が高くなる。溶接割れ感受性指数Pcmが0.24%を超えると、鋼板温度0℃で低温割れが発生する。したがって、溶接割れ感受性指数Pcmは、0.24以下であり、好ましくは0.23以下であり、さらに好ましくは0.22以下である。
上記以外の残部はFeおよび不純物である。不純物としては、鉱石やスクラップ等の原材料に含まれるものや、製造工程において含まれるものが例示される。
本発明に係る高張力厚鋼板は、HAZ組織の微細化に寄与する複合介在物として、鋼中にTi酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含む。そして、複合介在物の断面におけるMnSの面積率、界面におけるMnSの割合、その介在物の粒径および個数密度が下記の範囲を取る。
本発明では、任意の切断面に現出した複合介在物を分析し、その複合介在物の断面積におけるMnSの面積率を測定することにより、複合介在物中のMnS量を規定する。
複合介在物中のMnSは、Ti系酸化物の周囲に形成される。複合介在物の周長に占めるMnSの割合が10%未満であると、MnSとマトリクスとの界面に形成される初期Mn欠乏領域が小さく、溶接しても粒内フェライトの形成量が十分でないので、良好な低温HAZ靭性を得ることができない。したがって、複合介在物のマトリクスとの周長に占めるMnSの割合は、10%以上である。
複合介在物の個数密度とは、規定する粒径を有する複合介在物の単位面積当たりの個数をいう。複合介在物の粒径が0.5μm未満では、複合介在物の周囲から吸収できるMn量が少なく、その結果、粒内フェライトの生成量が低下する。一方、複合介在物の粒径が5.0μmより大きいと、複合介在物が破壊の起点になる。このため、本発明においては対象とする複合介在物の粒径を0.5〜5.0μmとする。
次に、本発明に係る高張力厚鋼板は、上記の化学組成を有していても、所用のHAZ靭性を確保するためには、製造方法が適切でなければ、上記のような複合介在物が得られない。
工程I:鋳片を1050〜1250℃の温度域へ加熱および均熱する。
工程II:熱間圧延の仕上げ温度が800〜900℃となるように所望の板厚まで熱間圧延を行う。
工程III:熱間圧延終了後、直ちに強制冷却(直接焼入れ)を行う。
さらに必要に応じて工程IIIの後に工程IVを行ってもよい。
工程IV:350〜550℃の温度での焼戻しを行う。
本発明では、転炉で溶製し、表1,2に示す化学組成(残部はFeおよび不純物)を有する300mm厚の鋳片を、連続鋳造法にて作製した。ここで、複合介在物の制御の観点より、転炉においてRH真空脱ガス処理前の溶鋼中の酸素ポテンシャルOxpを表3,4に示す量に調整した後、Ti等を添加し成分調整した。その後、連続鋳造過程で、溶鋼の温度を過度に高くせず、溶鋼組成から決まる凝固温度に対し、その差が50℃以内になるように管理し、さらに凝固直前の電磁攪拌および凝固時の圧下を行って、300mm厚さの鋳片とした。
・引張強さ:570MPa以上
・−10℃吸収エネルギー:100J以上であること。
・HAZ部−10℃吸収エネルギー:47J以上であること。
・耐低温割れ性:0℃で断面割れ率が0であること。
得られた試験結果を表3,4にまとめて示す。
表1,3に示すように、記号A01〜A35は、引張強さ:570MPa以上、−10℃吸収エネルギー:100J以上およびHAZ部−10℃吸収エネルギー:47J以上の機械特性と、0℃で断面割れ率:0の溶接性を兼ね備えている。
記号B02は、C含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、溶接性が不足した。
記号B03は、Si含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B05は、Mn含有量が本発明の範囲の下限を下回り、MnS面積率、MnS周長割合及び個数密度が不十分となったため、HAZ靭性が不足した。
記号B06は、Mn含有量が本発明の範囲の上限を上回り、個数密度が不十分となったため、HAZ靭性が不足した。
記号B08は、Cu含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、引張強さが不足した。
記号B09は、Cu含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B10は、Ni含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B12は、Cr含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B13は、Mo含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B14は、Nb含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B16は、V含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B17は、Ti含有量が本発明の範囲の下限を下回り、個数密度が不十分となったため、HAZ靭性が不足した。
記号B18は、Ti含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、HAZ靭性が不足した。
記号B20は、B含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B21は、N含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、HAZ靭性が不足した。
記号B22は、N含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B26は、溶接割れ感受性指数Pcmが本発明の範囲の下限を下回るため、引張強さが不足した。
さらに、記号B30は、S含有量が本発明の範囲の下限を下回り、MnS面積率およびMnS周長割合が不十分となったため、HAZ靭性が不足した。
2 溶接ビード
3 2mmVノッチシャルピー試験片
Claims (4)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.05〜0.14%、
Si:0.10〜0.5%、
Mn:0.8〜1.8%、
P:0.015%以下、
S:0.001〜0.005%、
Al:0.003%以下、
Cu:0.30〜0.50%、
Ni:0.15〜0.50%、
Cr:0.30〜0.60%、
Nb:0.015〜0.045%、
Ti:0.005〜0.030%、
B:下記式(1)により示される範囲、
N:0.0020〜0.0050%、
O:0.0005〜0.0050%、
Mo:0〜0.40%、
V:0〜0.008%を含有し、
下記式(2)により定義される溶接割れ感受性指数Pcmの値が0.17〜0.24であり、
残部はFeおよび不純物であり、
鋼中にTi酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含み、
前記複合介在物の断面における前記MnSの面積率が10〜50%であり、
前記複合介在物の周長に占めるMnSの割合が10%以上であり、
粒径0.5〜5.0μmの前記複合介在物の個数密度が10〜40個/mm2である、
引張強さ570MPa以上で、予熱無しで溶接が可能な板厚60mm以上の高張力厚鋼板。
0.0003≦[B%]≦0.0005+[Cu%]/1000+[Ni%]/500+[Mo%]/500・・・(1)
Pcm=[C%]+[Si%]/30+[Mn%]/20+[Cu%]/20+[Ni%]/60+[Cr%]/20+[Mo%]/15+[V%]/10+5×[B%]・・・(2)
式(1),(2)において[ ]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。 - さらに、Mo:0.03〜0.4質量%を含有する、請求項1に記載の高張力厚鋼板。
- RH真空脱ガス処理前において、溶鋼中の酸素ポテンシャルを10〜30ppmとし、
RH真空脱ガス処理において化学組成を調整して溶鋼を製造し、
該溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片を製造し、
該鋳片を1050〜1250℃の温度に加熱および均熱してから、800〜900℃にて所定の板厚に仕上げるように熱間圧延を行い、熱間圧延の直後に焼入れをする、請求項1または2に記載の高張力厚鋼板の製造方法。 - 前記焼入れを行った後に、350〜550℃の温度で焼戻しを行う、請求項3に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
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