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JP6898646B2 - 電気化学反応器、燃料ガスの製造システム及び燃料ガスの製造方法 - Google Patents
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JP6898646B2 - 電気化学反応器、燃料ガスの製造システム及び燃料ガスの製造方法 - Google Patents

電気化学反応器、燃料ガスの製造システム及び燃料ガスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電気化学反応器、燃料ガスの製造システム及び燃料ガスの製造方法に関する。
日本国内では、1年間に約150億Nmの水素が石油関連及びアンモニア製造関連等の工業用途に利用されている。近年の水素エネルギーの利用拡大に応じて、水素市場のさらなる拡大が予想される。
現在使用される水素の90%は、化石燃料のナフサを水蒸気改質して製造されている。ナフサの原料である原油の供給力は相対的に低下しつつある。さらに、大気中の二酸化炭素の削減が世界的動向となっている。
低炭素社会をめざして、食物残渣、焼酎残滓、家畜排泄物及び下水汚泥等からメタン菌によるメタン発酵で発生するバイオガスの利用が注目されている。バイオガスは主にメタン60%及び二酸化炭素40%からなる混合ガスである。バイオガスの燃焼で生成する熱エネルギー及びバイオガスの改質で得られる水素ガスの利用は、原油等の化石燃料の消費量を抑制し、温室効果ガスである二酸化炭素の排出量を抑制する。
メタン(CH)及び二酸化炭素(CO)を反応させることで生成する水素(H)及び一酸化炭素(CO)は種々の燃料として利用できる。電極での酸化還元反応を利用して、CH及びCOを含むガスからHガス及びCOガスを含む燃料ガスを合成する方法として、ニッケル(Ni)等の金属触媒を用いたCHのドライリフォーミングがある。ドライリフォーミングは(1)式で表される。
CH+CO→2H+2CO (1)
例えば、Ni触媒を用いたドライリフォーミングでは、600℃未満では(2)式に示すように、COからCO及び炭素(C)が生成する不均化反応が起こる。
2CO→CO+C (2)
一方、高温下では、(3)式に示すように、CHの熱分解が進行し、析出する炭素がNi触媒を覆う。このため、触媒能が時間の経過とともに低下する。また、析出した炭素によるガス閉塞が起こることがある。
CH→2H+C (3)
このように、バイオガスのドライリフォーミングでは、CO不均化反応及びCH熱分解による炭素の析出が電気化学反応器の耐久性に大きな影響を及ぼす。
特許文献1には、カソード及びアノードにルテニウム(Ru)−ガドリニウム(Gd)固溶セリア(GDC)複合体を用いた電気化学反応器で、CH及びCOを含むガスをドライリフォーミングし、Hを合成する技術が提案されている。特許文献1によれば、当該電気化学反応器は、炭素の析出を抑制しつつ、400〜800℃で模擬バイオガスのドライリフォーミングを促進した。
また、非特許文献1には、Ni−GDC複合体を用いたカソード、Ru−GDC複合体を用いたアノードを備える電気化学反応器が開示されている。この電気化学反応器にバイオガスとCOとの混合ガスを供給したとき、出口ガス割合が80%を超えるH−CO混合燃料が24時間にわたり連続して生成した。
国際公開第2009/157454号
Yoshihiro Hirata、外4名、「Hydrogen formation from a real biogas using electrochemical cell with gadolinium−doped ceria electrolyte」、Ceramics International、2017年、43、3639−3646
特許文献1に開示された電気化学反応器においては、高温(700〜800℃)では、出口ガス流量が増加し、十分なH生成速度が得られたが、600℃では出口ガス流量が比較的少なく、H生成速度が低下した。また、非特許文献1に開示された電気化学反応器では、H−CO混合燃料が高効率で得られるものの、特に600〜700℃でカソードに析出した炭素が観察された。
このため、炭素の析出をさらに抑えつつ、高効率でH−CO混合燃料が得られるように電気化学反応器のさらなる改良が求められている。また、特許文献1及び非特許文献1に開示された電気化学反応器はいずれもRuを用いている。地球に存在するRuの量は、Ni等よりはるかに少ないため、RuはNi等よりも高価である。このため、電気化学反応器の製造及び維持のためのコスト面でも改善の余地がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、炭素の析出を抑えつつ、高効率で燃料ガスが得られる電気化学反応器、燃料ガスの製造システム及び燃料ガスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点に係る電気化学反応器は、
ニッケル、ルテニウム及びコバルトからなる群から選択される第1の金属を含有するカソードと、
ルテニウム又はコバルトである第2の金属を含有するアノードと、
前記カソードと前記アノードとの間に介在し、酸化物イオンを透過させる金属酸化物を含有する多孔質の電解質膜と、
を備え、
前記カソードに向けて、酸素を含む酸化剤ガス及びバイオガスが供給される。
この場合、前記第1の金属は、
ニッケルであって、
前記第2の金属は、
コバルトである、
こととしてもよい。
また、前記酸化剤ガスは、
空気であって、
前記バイオガスに含まれるメタンのモル数と、前記バイオガス及び前記空気それぞれに含まれる酸素のモル数及び二酸化炭素のモル数の合計との比が、
1:0.9〜1.1である、
こととしてもよい。
本発明の第2の観点に係る燃料ガスの製造システムは、
上記本発明の第1の観点に係る電気化学反応器と、
前記カソードに向けて、前記酸化剤ガス及び前記バイオガスを供給する供給部と、
を備える。
この場合、上記本発明の第2の観点に係る燃料ガスの製造システムは、
前記カソードと前記アノードとの間にパルス電圧を印加する印加部をさらに備える、
こととしてもよい。
また、上記本発明の第2の観点に係る燃料ガスの製造システムは、
前記酸化剤ガス及び前記バイオガスを保持する保持部をさらに備え、
前記供給部は、
前記保持部に保持された前記酸化剤ガス及び前記バイオガスを前記カソードに向けて供給する、
こととしてもよい。
本発明の第3の観点に係る燃料ガスの製造方法は、
ニッケル、ルテニウム及びコバルトからなる群から選択される第1の金属を含有するカソードと、ルテニウム又はコバルトである第2の金属を含有するアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に介在し、酸化物イオンを透過させる金属酸化物を含有する多孔質の電解質膜と、を備える電気化学反応器を用いた燃料ガスの製造方法であって、
前記カソードと前記アノードとの間に電圧を印加する印加ステップと、
前記カソードに向けて、酸素を含む酸化剤ガス及びバイオガスを供給する供給ステップと、
を含む。
本発明によれば、炭素の析出を抑えつつ、高効率で燃料ガスが得られる。
実施の形態1に係る電気化学反応器の構成を示す図である。 実施の形態2に係る燃料ガスの製造システムの構成を示す図である。 実施例1における実験用の反応器の概略断面を示す図である。 COを添加したバイオガスのセル1によるドライリフォーミングにおける出口ガスの割合(a)及び出口ガスの流量(b)を示す図である。 セル1によるバイオガスのドライリフォーミング後のコバルト(Co)−GDCカソードの微構造及び元素分布を示す図である。(a)はCo−GDCカソードの微構造を示す。(b)〜(g)は、それぞれ炭素(C)、酸素(O)、コバルト(Co)、セリウム(Ce)、ガドリニウム(Gd)及びシリコン(Si)を示す。 COを添加したバイオガスのセル2による600℃でのドライリフォーミングにおける出口ガスの割合(a)、出口ガスの流量(b)及びセル2の電流密度(c)を示す図である。 COを添加したバイオガスのセル2による800℃でのドライリフォーミングにおける出口ガスの割合(a)、出口ガスの流量(b)及びセル2の電流密度(c)を示す図である。 セル2による800℃でのバイオガスのドライリフォーミング後のNi−GDCカソードの微構造及び元素分布を示す図である。(a)はNi−GDCカソードの微構造を示す。(b)〜(f)は、それぞれC、O、Ni、Ce及びGdを示す。 空気を添加したバイオガスのセル2によるドライリフォーミングにおける出口ガスの割合(a)、出口ガスの流量(b)及びセル2の電流密度(c)を示す図である。 セル3の構成を示す図である。 COを添加したバイオガスのセル3によるドライリフォーミングにおける出口ガスの割合(a)、出口ガスの流量(b)及びセル3の電流密度(c)を示す図である。 空気を添加したバイオガスのセル3によるドライリフォーミングにおける700又は800℃での出口ガスの割合(a)、出口ガスの流量(b)及びセル3の電流密度(c)を示す図である。
本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は下記の実施の形態によって限定されるものではない。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。本実施の形態に係る電気化学反応器100は、供給されたバイオガスをドライリフォーミング(以下では「改質」ともいう)して燃料ガスとしてのH−CO混合燃料を製造するのに好適である。図1に示すように、電気化学反応器100は、電解質膜1と、カソード2と、アノード3と、を備える。
電解質膜1は多孔質である。電解質膜1は、酸化物イオンを透過させる金属酸化物を含有する。電解質膜1はカソード2とアノード3との間に介在する。より具体的には、電解質膜1はカソード2とアノード3との間に挟み込まれて保持されている。金属酸化物としては、例えば、Ce−希土類元素(イッテルビウム、イットリウム、ガドリニウム、サマリウム、ネオジム、ランタン等)系酸化物、ジルコニウム−イットリウム系酸化物、及びランタン−ガリウム系酸化物が挙げられる。例えば、電解質膜1は、GDCで形成される。当該GDCは、Ce0.9Gd0.11.95又はCe0.8Gd0.21.9である。
カソード2は、Ni、Ru及びCoからなる群から選択される金属(第1の金属)を含有する。好ましくは、カソード2は、当該金属と酸化物イオン導電体の多孔質の電解質との混合物である。当該電解質は、例えば、GDCである。
アノード3は、Ru又はCoである金属(第2の金属)を含有する。カソード2と同じく、アノード3も、好ましくは当該金属と酸化物イオン導電体の多孔質の電解質との混合物である。好適には、カソード2が含有する金属はNiであって、アノード3が含有する金属はCoである。
好ましくは、電気化学反応器100は、図1に示すように円柱状に形成される。処理されるバイオガスの体積等にもよるが、電気化学反応器100を円柱の高さ方向に垂直に切断した断面の円の直径は、例えば5mm〜15mm、8mm〜12mm、好ましくは10mmである。当該円の直径が10mmの場合、カソード2及びアノード3の軸方向の厚みは、2〜10mm、好ましくは3〜6mmであって、電解質膜1の軸方向の厚みは、10〜200μm、好ましくは50〜100μmである。
次に、電気化学反応器100を製造する方法について説明する。以下では、GDCを用いて、電解質膜1、カソード2及びアノード3を製造する場合について説明する。GDC粉体は、例えばシュウ酸塩共沈法で製造できる。GDC粉体をシュウ酸塩共沈法で製造する場合、まず、Ce(NO水溶液及びGd(NO水溶液を、Ce及びGdのモル比を9〜3:1として混合する。次いで、この混合液をシュウ酸水溶液に加え、共沈させる。得られたシュウ酸塩を500〜800℃、好ましくは600℃で、空気中で仮焼することでGDC粉体が得られる。次に、GDC粉体をさらに粉化することで微細なGDC粉体が得られる。
GDC粉体で電解質膜1を形成するには、GDC粉体を、例えばイソプロパノール及びトルエンの混合有機溶媒中に分散させる。続いて、ポリビニルブチラール等の結合剤、及びポリエチレングリコール等の可塑剤を、得られた懸濁液に添加する。結合剤及び可塑剤の量は、適宜調整される。結合剤の量は、GDC粉体の質量に対して2〜8%、4〜6%、好ましくは5%である。可塑剤の量は、GDC粉体の質量に対して5〜15%、8〜12%、好ましくは9%である。そして、懸濁液をドクターブレード装置等で電解質に製膜すればよい。
次に、カソード2及びアノード3、すなわち電極の製造方法について説明する。まず、上記のいずれかの金属を含む水溶液とGDC粉体とを混合する。その後、凍結乾燥し、得られた粉体を600〜800℃で1時間程度、仮焼することで金属酸化物とGDCとの混合粉体(金属酸化物−GDC)を得る。金属酸化物−GDCを水素還元して、金属−GDC混合粉体へ変える。なお、凍結乾燥の前に、適宜、pHを調整してもよい。電極の当該製造方法において、金属とGDCとは、体積比で4:6〜1:9、好ましくは3:7〜2:8となるように混合される。
より具体的には、CoとGDCとの混合物(Co−GDC)で電極を製造する場合、体積比がCo:GDC=3:7となるようにCo(NO水溶液とGDC粉体とを混合する。その後凍結乾燥し、600℃で1時間、空気中で仮焼してCo−GDC混合粉体を得る。
NiとGDCとの混合物(Ni−GDC)で電極を製造する場合、体積比がNi:GDC=3:7となるようにNi(NO水溶液とGDC粉体とを混合する。その後凍結乾燥し、800℃で1時間、空気中で仮焼してNiO−GDC混合粉体を得る。
RuとGDCとの混合物(Ru−GDC)で電極を製造する場合、体積比がRu:GDC=3:7となるようにRuCl水溶液とGDC粉体とを混合する。アンモニア水でpH10に調整し、24時間撹拌した後、凍結乾燥する。得られた粉体を800℃、1時間、空気中で仮焼してRuO−GDC混合粉体を得る。
図1に示すように、電解質膜1がカソード2とアノード3との間に挟まれるように、カソード2に用いる金属酸化物−GDCと、電解質膜1と、アノード3に用いる金属酸化物−GDCと、を錠剤成形器中で積層し、50〜100MPa、60〜90MPa、好ましくは80MPaで一軸加圧する。続いて、積層体を150〜300MPa、180〜220MPa、好ましくは200MPaで等方加圧した後、共焼結を1200℃で2時間、空気中で行う。
好ましくは、共焼結したカソード2及びアノード3の相対密度は、70〜90%、75〜85%又は80〜85%である。カソード2及びアノード3の開気孔率は、12〜22%、14〜20%又は15〜19%である。また、カソード2及びアノード3の閉気孔率は、0〜3%又は0〜2%である。
さらに、H雰囲気下、800℃で12〜24時間程度の還元処理を行うことにより、カソード2及びアノード3に含まれる金属を還元する。この還元処理によって、例えば、カソード2及びアノード3に含まれるNiO、Co及びRuOは、それぞれNi、Co及びRuに還元される。
続いて、電気化学反応器100の動作について説明する。電気化学反応器100は、例えばアルミナ等で形成された管4に挿入されて、その温度が500〜1000℃、好ましくは600〜900℃に維持されて使用される。電気化学反応器100においては、カソード2に向けて、Oを含む酸化剤ガス及びバイオガスが供給される。
酸化剤ガスは、Oガス、好ましくは空気である。酸化剤ガス及びバイオガスは、カソード2に同時に供給されるのであれば、個別にカソード2に供給されてもよい。好適には、酸化剤ガスとバイオガスとを混合した原料ガスがカソード2に供給される。
電気化学反応器100では、カソード2とアノード3との間に1〜5V程度の電圧が印加部5によって印加される。ここで、上記原料ガスがカソード2に供給されると、カソード2において、(4)式に示す還元反応が生じる。すなわち、カソード2は、COからCO及び酸化物イオン(O2−)を生成する。
CO+2e→CO+O2− (4)
電解質膜1は、カソード2に供給されたCH及びカソード2で生成されたO2−を透過させる。電解質膜1を透過したCH及びO2−は、アノード3まで到達する。そして、CH及びO2−がアノード3に到達すると、アノード3において、(5)式に示す酸化反応が生じる。すなわち、CH及びO2−からCO及びHを生成する。
CH+O2−→CO+2H+2e (5)
したがって、電気化学反応器100における全反応の反応式は、(6)式で表わされる。
CH+CO→2H+2CO (6)
電気化学反応器100は、印可電圧下での温度を制御することで、ドライリフォーミングにより効率よく燃料ガスを製造できる。一方で、下記実施例2、4に示すように、印可電圧下での温度上昇は、ドライリフォーミングのみならずCH熱分解(上記(2)式)及び一酸化炭素不均化反応(上記(3)式)による炭素の析出も促進する(競争並列反応)。
これに対し、電気化学反応器100では、上述のように、カソード2にバイオガスとともにOを含む酸化剤ガスが供給される。供給されたOは、酸化剤として機能し、(7)式に示すように析出した炭素を酸化する。これにより、炭素の析出が抑制される。
2C+O→2CO (7)
バイオガスにおける各成分の濃度(vol%)は、通常は、CHが約60%で、COが約40%であるが、0.1〜0.7%又は1%未満のOを含むことがある。カソード2へは、バイオガス自体に含まれるO以外のOがバイオガスとともに供給されればよい。酸化剤ガス及びバイオガスの供給量の比は、好適には化学量論比に基づいて設定される。酸化剤ガスとして空気を用いる場合、バイオガスに含まれるCHのモル数と、バイオガス及び空気それぞれに含まれるOのモル数及びCOのモル数の合計との比が、1:0.8〜1.4、1:0.9〜1.2好ましくは1:0.9〜1.1である。また、例えば、上記の原料ガスにおけるCH、CO及びOのモル比は、3:1.5〜2.4:0.5〜1.6、3:1.6〜2.2:0.8〜1.5又は3:1.8〜2.0:1.0〜1.4、好ましくは3:1.9:1.3に調整されてもよい。
以上詳細に説明したように、電気化学反応器100では、カソード2にバイオガスとともにOを含む酸化剤ガスが供給される。こうすることで、炭素が酸化されるため、実施例3、4に示されたように、炭素の析出を抑制することができる。析出する炭素の除去によって金属触媒の高い活性を維持することができるため、電気化学反応器100は、長期運転のための高い耐久性を備える。また、供給されたOは、バイオガスの改質にも利用されると考えられる。このため、電気化学反応器100は、下記実施例3、4に示すように、高効率で燃料ガスを得ることができる。
また、本実施の形態では、カソード2が含有する金属がNiであって、アノード3が含有する金属がCoであってもよいこととした。こうすることで、電気化学反応器100は、下記実施例5に示すように、優れた改質効率を示す。さらに、Coは、Ruより安価であって、しかも下記実施例5に示すように、Ruと同等以上の触媒活性を示した。よって、Coを用いることで電気化学反応器100の製造及び維持においてコスト面で有利である。
なお、カソード2とアノード3に含有される金属量は、均一でなく、傾斜をつけてもよい。例えば、積層体におけるカソード2の金属含量は、アノード3から遠ざかるにしたがって、徐々に増えるようにしてもよい。同様に、積層体におけるアノード3の金属含量は、カソード2から遠ざかるにしたがって、徐々に増えるようにしてもよい。より具体的には、アノード3は、Co:GDC=3:7のCo−GDC混合粉体から製造した第1の層とCo:GDC=2:8のCo−GDC混合粉体から製造した第2の層とを備えてもよい。この場合、積層体において、電解質膜1と第1の層の間に第2の層が配置される。カソード2も同様である。こうすることで、焼結時のカソード2又はアノード3と電解質膜1との剥離を防ぐことができる。
(実施の形態2)
次に、図2を参照しながら、実施の形態2について説明する。実施の形態2に係る燃料ガスの製造システム200は、上記実施の形態1に係る電気化学反応器100と、印加部5と、保持部6と、供給部7と、温度制御部8と、を備える。
電気化学反応器100の構成は、上記実施の形態1で説明した構成である。印加部5は、カソード2とアノード3との間に1〜5V程度の電圧を印加する。印加部5は、例えばポテンショスタット等で構成され、白金リード線を溶接した白金メッシュ集電体をカソード2及びアノード3それぞれの表面に接着されることで電気化学反応器100と接続される。印加部5によって印加される電圧は、直流電圧でも、パルス電圧でもよい。好適には、印加部5は、カソード2とアノード3との間にパルス電圧を印加する。
保持部6は、上記の酸化剤ガス及びバイオガスを保持する。保持部6は、上記の酸化剤ガスとバイオガスとを混合した原料ガスを保持してもよいし、酸化剤ガス及びバイオガスを個別に保持してもよい。保持部6は、容器、例えばボンベ及びタンク等で酸化剤ガス及びバイオガスを保持する。
供給部7は、カソード2に向けて、上記の酸化剤ガス及びバイオガスを供給する。より詳細には、供給部7は、保持部6に保持された酸化剤ガス及びバイオガスをカソード2に向けて供給する。例えば、保持部6は電気化学反応器100にガスを供給可能に接続されており、保持部6に保持された酸化剤ガス及びバイオガスが供給部7を介してカソード2に供給される。
供給部7は酸化剤ガス及びバイオガスの供給量を制御する。例えば、保持部6が酸化剤ガスとしての空気及びバイオガスを個別に保持している場合、供給部7は空気を40〜60ml/分で供給するのに対してバイオガスを30〜50ml/分で供給する。保持部6が原料ガスを保持している場合、供給部7は空気を50〜150ml/分で供給する。供給部7は、空気及びバイオガスを、バイオガスに含まれるCHのモル数と、バイオガス及び空気それぞれに含まれるOのモル数及びCOのモル数の合計との比が上記の比になるように供給してもよいし、上記の原料ガスを供給してもよい。
温度制御部8は、電気化学反応器100の温度を500〜1000℃、好ましくは600〜900℃に制御する。温度制御部8は、限定されない加熱装置を備え、加熱装置を介して電気化学反応器100の温度を制御する。温度制御部8は、例えば加熱装置として電気炉を備え、電気炉内に設置された電気化学反応器100の温度を制御する。温度制御部8は、熱電対等で電気化学反応器100の温度を監視することで、電気化学反応器100の温度を柔軟に制御してもよい。
以上詳細に説明したように、燃料ガスの製造システム200は、供給部7を備えるため、バイオガスとともに、Oを含む酸化剤ガスを確実にカソード2に供給することができる。また、燃料ガスの製造システム200は、印加部5を備えるため、カソード2における還元反応を促進し、COを効率よく分解できる。
また、燃料ガスの製造システム200は、保持部6を備えることで、電気化学反応器100に最適化した混合比でOを含む酸化剤ガスを供給できる。こうすることで、炭素の析出を極力抑えつつ、効率よく燃料ガスを製造でき、長期耐久性をもたらすことができる。
また、燃料ガスの製造システム200では、印加部5がカソード2とアノード3との間にパルス電圧を印加してもよいこととした。パルス電圧を用いることで、直流電圧を用いるよりも消費電力を抑制することができる。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(実施例1:セル1及びセル2の作製)
以下のようにして、二種類の電気化学反応器としてセル1及びセル2を作製した。セル1は、GDC多孔質電解質膜、カソード及びアノードを備える。GDCは、Ce0.9Gd0.11.95である。セル1のカソードはCo(30vol%)−GDC(70vol%)で、セル1のアノードはCo(30vol%)−GDC(70vol%)である。
セル2は、セル1と同様のGDC多孔質電解質膜、カソード及びアノードを備える。セル2のカソードはNi(30vol%)−GDC(70vol%)で、セル2のアノードはCo(30vol%)−GDC(70vol%)である。
上記のGDCは、次のようにシュウ酸塩共沈法で作製した。0.2M Ce(NO水溶液と0.2M Gd(NO水溶液を、モル比がCe:Gd=9:1となるように混合した。混合溶液を0.4Mのシュウ酸水溶液中に滴下し、シュウ酸塩固溶体(Ce0.9Gd0.1(Cとして共沈させた。得られたシュウ酸塩を600℃で1時間、空気中で仮焼し、GDC粉体を得た。GDC粉体を直径3mmのアルミナボールを用いて粉砕し、微細なGDC粒子を得た。GDC粒子をイソプロパノール67vol%とトルエン33vol%の有機溶媒中に固体量25vol%で分散させた。結合剤としてポリビニルブチラール、可塑剤としてポリエチレングリコールをGDC粉体の質量に対してそれぞれ5%と9%を懸濁液に添加した。懸濁液を前ブレードの開口部が170μmのドクターブレード装置で厚さ100μmの電解質膜とした。
電極の作製では、Co−GDCの場合、体積比がCo:GDC=3:7となるように1.0M Co(NO水溶液をGDC粉体と混合した。その後凍結乾燥し、600℃で1時間、空気中で仮焼してCo−GDC混合粉体を得た。一方、Ni−GDCの場合、体積比がNi:GDC=3:7となるように1.4M Ni(NO水溶液をGDC粉体と混合した。その後凍結乾燥し、800℃で1時間、空気中で仮焼してNiO−GDC混合粉体を得た。
電解質膜、カソード粉体(Co−GDC混合粉体又はNiO−GDC混合粉体)、アノード粉体(Co−GDC混合粉体)を直径10mmの錠剤成形器中で積層し、80MPaで一軸加圧した。その後、積層体を200MPaで等方加圧した後、共焼結を1200℃で2時間、空気中で行った。共焼結した電極のかさ密度と見かけ密度とを再蒸留水を用いたアルキメデス法で測定した。Co−GDCカソードの相対密度、開気孔率及び閉気孔率はそれぞれ81.7%、18.3%、及び0%であった。NiO−GDCアノードの相対密度、開気孔率及び閉気孔率はそれぞれ83.2%、15.3%及び1.6%であった。
図3に示すように、白金リード線を溶接した白金メッシュ集電体をカソードとアノードの各表面に白金ペーストを用いて接着し、870℃で焼き付けた。セル1を磁製管内に設置した。セル1と磁製管との隙間を、ガラスリングを870℃、空気中で加熱することにより封着した。そして、磁製管とシリカ−アルミナ管とをガラスリングで封着することで実験用の反応器を作製した。セル2についても同様に実験用の反応器を作製した。
電極内のNiOとCoは3vol%の水蒸気を添加したH雰囲気中、800℃で8時間還元され、金属Niと金属Coを生成した。Hガスをアルゴンガスで追い出した後、得られたセル1及びセル2を用いてバイオガスのドライリフォーミングを行った。セル1及びセル2の温度は、電気炉で制御した。
(実施例2:セル1及びセル2を用いたCOによるバイオガスのドライリフォーミング)
バイオガスとして焼酎粕バイオガス(西薩クリーンサンセット事業協同組合製)を使用した。当該バイオガスの化学組成は60.0vol% CH、37.5vol% CO、2.5vol% N、0.1vol% O、2.1ppm 硫化水素(HS)であった。高純度CO(純度>99.99%)をバイオガスと混合し、ドライリフォーミングの化学量論比CH/CO=1/1に調整した。40ml/分のバイオガスと10ml/分のCOを混合し、セル1及びセル2それぞれに供給した。
ポテンショスタット/ガルバノスタット(HAL−3001、北斗電工社製)を用いて、0〜2Vの電圧をセル1及びセル2それぞれに印加し、セル1及びセル2の電流密度を測定した。出口ガス組成は活性炭カラムと熱伝導度検出器を有するガスクロマトグラフ(GC7100T、ジェイサイエンスラボ社製)でキャリアガスにアルゴンを用いて測定した。活性炭カラムと熱伝導度検出器の温度はそれぞれ70℃と100℃であった。熱伝導度検出器に供給した電流は60mAであった。出口ガスの流量は石けん膜流量計(3001−11002、ジーエルサイエンス社製)で測定した。ドライリフォーミング実験の後にセル1及びセル2の構成相を、X線回折装置(RINT2200 PCH/KG、リガク社製)を用いて同定した。反応器内の炭素の析出を電子線マイクロアナライザー(JXA−8230、日本電子社製)で分析した。
(結果)
図4はセル1を用いたCOによるバイオガスのドライリフォーミングにおける出口ガスの割合(a)及び出口ガスの流量(b)を示す。反応器の温度は200〜800℃であり、印可電圧は0V又は1Vとした。HガスとCOガスの生成が600℃以上で測定された。HガスとCOガスの出口ガス割合は600℃でそれぞれ2.8〜5.2%と6.2〜9.0%であり、800℃でそれぞれ20.1〜27.3%と27.4〜30.6%に増加した。各ガスの流量は各温度でほぼ一定であった。1Vの電圧印可で0.197A/cmの電流が流れた。しかしながら、印可電圧はHガスとCOガスの割合と流量に影響を及ぼさなかった。なお、使用したガスクロマトグラフ装置では、OとNの分離は困難であった。
印可電圧1VのときのHとCOの生成機構として以下の反応が考えられる。
カソード
Co+CO→CoO+CO (8)
CoO+2e→Co+O2− (9)
アノード
Co+O2−→CoO+2e (10)
CoO+CH→Co+CO+2H (11)
全反応
CH+CO→2CO+2H (12)
上記の反応過程は、カソードでのCOとCo触媒との相互作用及びアノードでのCHとCo触媒との相互作用を示す。しかし、H−CO混合燃料は0Vでも生成した。この結果は(9)式と(10)式の反応過程が省略されることを示す。すなわち、(8)式と(11)式を組み合わせた(12)式に示すドライリフォーミング反応がカソード又はアノード内のCo触媒上で進行すると考えられる。
図4によれば、600〜800℃で印可電圧は出口ガス割合と流量に影響を及ぼさない。この結果は600〜800℃でのCo触媒上でのバイオガスのドライリフォーミングが主に熱力学的に進行したことを示す。
図5はセル1による200〜800℃で8時間のバイオガスのドライリフォーミング後のCo−GDCカソードの微構造(a)と元素分布((b)〜(g))を示す。なお、シリコン元素(Si)の分布はセル1及びセル2と磁製管の隙間を封着したガラスに由来する。図5(b)に示すように少量の炭素の析出が観測された。供給されたCOは還元してCOガスとO原子((8)式のCoO)を生成する。炭素は供給されたCOからは生成しない。観測された炭素はCo触媒上に供給されたCHから生成した(CH→C+2H)。炭素の分布は金属CoとGDC電解質の分布と重なっており、金属Co上のCHの熱分解(CH→C+2H)及びCHとGDCの格子酸素との相互作用による炭素と水蒸気の生成を示唆する。この競争反応が(12)式に示すバイオガスのドライリフォーミングとともに進行する。
Co−GDCアノード及びGDC電解質の微構造も観察した。アノード又は電解質内で検出された炭素の含有量はカソードに比べて非常に少なかった。この結果はカソード内の金属Coが供給されたCOとCHのいずれとも相互作用することを示す。
図6はセル2を用いた600℃でのCOによるバイオガスのドライリフォーミングの出口ガスの割合(a)、出口ガスの流量(b)及びセル2の電流密度(c)を示す。印可電圧は0.5Vであった。Hガス及びCOガスが連続的に6時間生成した。Hガス及びCOガスの出口ガスの割合はそれぞれ7.7〜31.5%及び9.3〜17.8%であった。Hガス/COガスの体積比は改質開始から2時間後に1に近づいた。これは、CHとCOの化学量論的な反応が進行したことを示している。
全ガス流量は60ml/分で6時間ほぼ一定であったが、Hガス及びCOガスの流量は改質時間にともない徐々に減少した。6時間以上の改質で起きるガス流量と電流密度の急速な減少はセル1及びセル2内の炭素の析出に関係すると考えられる。
図7はセル2を用いた800℃でのCOによるバイオガスのドライリフォーミングの出口ガスの割合(a)、出口ガスの流量(b)及びセル2の電流密度(c)を示す。温度を800℃に増加させるとHガス及びCOガスの出口ガス割合はそれぞれ37.6〜46.7%と38.4〜42.6%に増加した。Hガス及びCOガスは28時間安定的に生成した。H/COの体積比はほぼ1であり、CHとCOの化学量論的なドライリフォーミング反応が進行した。図7(b)に示す出口ガスの流量は改質開始の61.4ml/分から28時間後の5.9ml/分まで徐々に低下した。図7(c)に示す電流密度は改質開始の1.74A/cmから急速に低下し、5時間後に0.10A/cmになった。その後は0.05〜0.1A/cmでほぼ一定であった。Hガス及びCOガスの出口ガスの流量及び電流密度は印可電圧の増加により回復しなかった。
図8は800℃で28時間のバイオガスドライリフォーミング後のセル2のNi−GDCカソードの微構造及び元素分布を示す。炭素の析出がカソードの表面及び内部で観測された。この炭素の析出が図7(b)のガス流量の緩やかな減少をもたらした。
(実施例3:セル2での空気添加がドライリフォーミングに及ぼす影響の検討)
セル2では空気中のOを用いたバイオガスの改質も調査した。40ml/分のバイオガスと50ml/分の空気を混合し、セル2に供給した。ガスのモル比はCH/CO/O=3/1.875/1.314である。その他の条件は、上記実施例2と同様である。
(結果)
図9は、バイオガスに空気を添加した際のバイオガスのドライリフォーミングにおける出口ガスの割合(a)、出口ガスの流量(b)及びセル2の電流密度(c)を示す。反応器の温度は600℃又は800℃であった。出口ガスの割合と流量は8時間にわたり安定していた。COによるバイオガスのドライリフォーミングでは、800℃、0.3〜1.0VでH/COの体積比が1/1の混合燃料が80%を超える出口ガス割合で生成した。バイオガス(40ml/分)と空気(50ml/分)を混合したときの化学組成は3CH+1.875CO+1.314O+5.005Nである。CHはバイオガスに含まれるCO及び混合した空気中のOガスと反応する。800℃での改質ガスの組成は3.1〜6.3% CH、2.7〜5.0% CO、36.8〜41.1% H、28.8〜31.6% CO、21.6〜23.1% N−Oであった。
供給したガスの化学組成から考えられる改質反応を(13)〜(15)式に示す。
3CH+1.875CO+1.314O+5.005N
=4.875CO+6H+0.7515O+5.005N (13)
=3.372CO+1.503CO+6H+5.005N (14)
=4.875CO+4.497H+5.005N+1.503HO (15)
空気を添加したバイオガスのドライリフォーミングを800℃で2時間行ったときの出口ガスの割合を上記の計算値と表1で比較する。測定されたCOの割合、H/COのモル比、(N+O)/COのモル比は(13)式の計算値と最もよく一致した。この分析結果から次の2つのことが言える。(1)バイオガス中のCHはバイオガスに含まれるCOと空気由来のOの両者により改質される。(2)生成したCOとHは残留するOにより酸化されない。図9の測定結果と表1の出口ガス割合の分析結果は、バイオガスの改質に空気が利用できることを示す。
Figure 0006898646
温度を600℃に低下させても混合燃料の出口ガス割合と流量は比較的に高い値を示した。図9(c)に示す通り、この反応器の電流密度は印可電圧に対して良い応答を示した。これは図7(c)の測定結果と異なる。これは図9の反応器内の炭素の析出が抑制されたことを示唆している。供給された空気による析出した炭素の酸化(2C+O→2CO)が考えられる炭素析出の抑制の要因の一つである。
(実施例4:セル3の作製及びセル3を用いたバイオガスのドライリフォーミング)
GDC多孔質電解質、Ni(20又は30vol%)−GDC(80又は70vol%)カソード、Ru(20又は30vol%)−GDC(80又は70vol%)アノードを備えるセル3を作製した。図10はセル3の構造を示す。Ni(20vol%)−GDC(80vol%)、Ni(30vol%)−GDC(70vol%)、Ru(20vol%)−GDC(80vol%)及びRu(30vol%)−GDC(70vol%)の厚さはそれぞれ2mmとした。電解質膜の厚さは80μmとした。電極材料の金属量を20から30vol%と傾斜させることで、焼結時の電極−電解質間の剥離を防いだ。電解質粉体、電解質膜及びNiO−GDCカソード粉体の作製は、上記実施例1と同様とした。RuO−GDCアノード粉体の調製では、RuCl水溶液とGDC粉体とをRu:GDCの体積比が2:8又は3:7となるように混合した。アンモニア水でpH10に調整し、24時間撹拌した後、凍結乾燥した。得られた粉体を800℃、1時間、空気中で仮焼し、RuO−GDC粉体を得た。電解質膜、カソード粉体、アノード粉体を図10の順に直径10mmの錠剤成形器中で積層し、100MPaで一軸加圧した。その後、積層体を298MPaで等方加圧した後、共焼結を1200℃、空気中で2時間行った。
白金メッシュ集電体をカソードとアノードの各表面に実施例1と同様に接着し、セル3を磁製管内に設置した。セル3と磁製管との隙間を、ガラスリングを870℃、空気中で加熱することにより封着した。電極内のNiOとRuOはH雰囲気中、800℃、12時間で金属Niと金属Ruに還元された。Hガスをアルゴンガスで追い出した後、バイオガスのドライリフォーミングを700又は800℃で行った。バイオガスとして使用したバイオガスAの化学組成は実施例2で使用したバイオガスと同じで、バイオガスBの化学組成は55.6vol% CH、37.7vol% CO、5.7vol% N、0.7vol% O、1.1ppm HSであった。バイオガスA又はBを40ml/分でセル3に供給した。
CHに富むバイオガスに対して不足する酸化剤としてCO又は空気を供給した。CO添加では、ドライリフォーミングの化学量論比CH/CO=1/1(CH+CO→2H+2CO)となるように、COを10ml/分で供給した。空気添加は0〜50ml/分の供給速度で行った。表2にバイオガスのドライリフォーミング反応と空気添加量との関係を示す。空気添加量が10ml/分以下で酸化剤不足となり、20ml/分以上で酸化剤過剰となる。電圧は0.5Vを直流又は0.1〜100Hzの長方形パルスで印可した。パルス時間は電圧印可と無印可の時間の比が1:1となるように制御した。出口ガス組成及び出口ガスの流量を実施例2と同様に測定した。セル3の電流密度を高速データアクイジションユニット(SL−1000、横河メータ&インスツルメント社製)で測定した。
Figure 0006898646
(結果)
図11はCOを添加したバイオガスAのドライリフォーミングにおける800℃での出口ガスの割合(a)、出口ガスの流量(b)及びセル3の電流密度(c)を示す。改質開始直後では29.6% Hガス−32.9% COガスの混合燃料が生成した。出口ガス中のHガス及びCOガスの割合は時間とともに低下し、12時間後に8.9% Hガス−17.4% COガスになった。パルス周波数の増加はこの性能低下を促進した。特に10Hz以上では出口ガス流量の低下が顕著であった。100Hzで電流の急激な低下が起きた。改質速度の低下後に再び直流電圧を印可したが、改質速度は回復しなかった。実験後、カソードに大量の炭素の析出が認められた。これが生成ガス流量の低下を招いた。
図12は空気を添加したバイオガスBのドライリフォーミングにおける700又は800℃での出口ガスの割合(a)、出口ガスの流量(b)及びセル3の電流密度(c)を示す。空気を50ml/分で供給したとき、HガスとCOガスの安定した生成が起こり、24時間にわたり改質速度の低下は認められなかった。出口ガスにおけるHの割合は800℃で36.9〜40.9%であり、700℃で34.5〜36.0%であった。出口ガスにおけるCOの割合は800℃で16.7〜20.5%であり、700℃で17.0〜18.8%であった。Hに富む混合燃料の生成は表2の反応(3CH+2.034CO+1.416O→6H+5.034CO+0.933O)と対応している。また、未反応のOは改質時に生成する炭素の除去に利用される(2C+O→2CO)。一方、800℃でOを供給しない場合、HとCOの生成速度も低下した。このことも表2の反応式とよく対応している。800℃での電流密度は測定装置の限界値に達していた。電流密度は温度が700℃に低下すると約3桁低下した。一方で、H生成速度の低下はほとんど起きておらず、小さな電流密度で改質は促進される。改質後の反応器の電子線マイクロアナライザーを用いた分析では、炭素の析出がほとんど起きていないことが示された。
以上の結果は、700℃でNi及びRuの一部が添加した空気により酸化され、導電性の低いNiOが生成することを示唆している。RuOは酸化物であるが、電子導電性はRu並みに高い。また、生成するO2−イオンの拡散速度も700℃では小さくなる。800℃では、供給した電子によりNiOがNiにすみやかに還元され(NiO+2e→Ni+O2−)、生成するO2−イオンの拡散速度も大きい。そのため、電流密度は高い値を示したと考えられる。
本実施例では、COを添加したとき、800℃で改質速度が徐々に低下した。改質速度の低下はパルス周波数の増加により促進された。これは、ガス改質時に並行して炭素が析出するためである。空気添加はこの改質速度の低下を抑制し、混合燃料の安定した生成が700又は800℃で24時間にわたり認められた。これは生成した炭素が供給されたOでCOガスへ変換されるためである。
(実施例5:多孔質GDC電解質を有する電気化学反応器の改質効率の比較)
CO又はOを利用したバイオガスのドライリフォーミングでは、CHからH−CO混合燃料への高い変換率及び長期運転のための高い耐久性が電気化学反応器に求められる。電極内の金属触媒とCHとの相互作用によってCHが分解し、固体炭素を生成させる。これが反応器の耐久性に大きく影響する。CHの分解に対する弱い触媒活性が、特にカソードにおいて重要である。一方で、改質反応は800℃ではカソードの金属触媒上で熱力学的に進行し、600℃では両電極の金属触媒上で電気化学的に進行する。低温での改質効率はカソードでのCOと金属触媒との相互作用及びアノードでのCHと金属触媒との相互作用に依存する。
上記のセル1と同様にGDC電解質を備え、カソードがNi(30vol%)−GDC(70vol%)で、アノードがNi(30vol%)−GDC(70vol%)であるセル(比較例1)、カソードがRu(30vol%)−GDC(70vol%)で、アノードがRu(30vol%)−GDC(70vol%)であるセル(比較例2)、及びカソードがNi(30vol%)−GDC(70vol%)で、アノードがRu(30vol%)−GDC(70vol%)であるセル(比較例3)を、上記実施例1と同様に作製した。RuO−GDC粉体の調製については実施例4を参照されたい。セル1及びセル2に加え、比較例1〜3において50%CH−50%CO混合ガスのドライリフォーミングを各温度で行った。
表3は、50%CH−50%CO混合ガスのドライリフォーミングのHの生成速度(f(H))とCOの生成速度(f(CO))のセル間の比較を示す。炭素の析出による反応器の劣化の影響の小さい改質開始から2時間の範囲で生成速度の比較を行った。出口ガスの流量はCH−CO混合ガスの供給速度、電極の細孔径分布、反応器の改質効率に依存する。改質効率を評価するために、HとCOの生成速度を50ml/分の出口ガスの流量で規格化した。
アノードのNi(比較例1)は1Vの印可電圧下でドライリフォーミングよりもむしろCH熱分解を促進した。600℃でのHの生成速度は、比較例3<セル1<比較例2<セル2の順に大きくなった。800℃でのHの生成速度は、セル1<比較例2<比較例3≒セル2の順に大きくなった。600℃に比べて800℃では生成速度の反応器間の差は小さくなった。結果として、カソードにNi触媒、アノードにCo触媒を有するセル2が最も高い改質効率を示した。
Figure 0006898646
なお、比較例1及び比較例2の詳細については、Shotaro MATAYOSHI、外4名、「Electrochemical reforming of CH−CO gas using porous Gd−doped ceria electrolyte with Ni and Ru electrodes」、Journal of the Ceramic Society of Japan、2009年、117、1147−1152を参照されたい。比較例3の詳細については、上記非特許文献1を参照されたい。
以上、実施例2〜5で得られた知見により、少なくとも次のことが言える。(1)空気中のOガスを用いたバイオガスのドライリフォーミングでは析出した炭素が供給空気によって酸化されるため、電気化学反応器の高い耐久性が維持される。(2)カソードに金属Niを有するセル2は高いH生成速度を示した。アノードの金属Coの触媒活性は金属Ruよりも600〜800℃で大きい。
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
本発明は、燃料ガス、特にH−CO混合燃料の製造に好適である。
1 電解質膜
2 カソード
3 アノード
4 管
5 印加部
6 保持部
7 供給部
8 温度制御部
100 電気化学反応器
200 燃料ガスの製造システム

Claims (7)

  1. ニッケル、ルテニウム及びコバルトからなる群から選択される第1の金属を含有するカソードと、
    ルテニウム又はコバルトである第2の金属を含有するアノードと、
    前記カソードと前記アノードとの間に介在し、酸化物イオンを透過させる金属酸化物を含有する多孔質の電解質膜と、
    を備え、
    前記カソードに向けて、酸素を含む酸化剤ガス及びバイオガスが供給される、
    電気化学反応器。
  2. 前記第1の金属は、
    ニッケルであって、
    前記第2の金属は、
    コバルトである、
    請求項1に記載の電気化学反応器。
  3. 前記酸化剤ガスは、
    空気であって、
    前記バイオガスに含まれるメタンのモル数と、前記バイオガス及び前記空気それぞれに含まれる酸素のモル数及び二酸化炭素のモル数の合計との比が、
    1:0.9〜1.1である、
    請求項1又は2に記載の電気化学反応器。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の電気化学反応器と、
    前記カソードに向けて、前記酸化剤ガス及び前記バイオガスを供給する供給部と、
    を備える、燃料ガスの製造システム。
  5. 前記カソードと前記アノードとの間にパルス電圧を印加する印加部をさらに備える、
    請求項4に記載の燃料ガスの製造システム。
  6. 前記酸化剤ガス及び前記バイオガスを保持する保持部をさらに備え、
    前記供給部は、
    前記保持部に保持された前記酸化剤ガス及び前記バイオガスを前記カソードに向けて供給する、
    請求項4又は5に記載の燃料ガスの製造システム。
  7. ニッケル、ルテニウム及びコバルトからなる群から選択される第1の金属を含有するカソードと、ルテニウム又はコバルトである第2の金属を含有するアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に介在し、酸化物イオンを透過させる金属酸化物を含有する多孔質の電解質膜と、を備える電気化学反応器を用いた燃料ガスの製造方法であって、
    前記カソードと前記アノードとの間に電圧を印加する印加ステップと、
    前記カソードに向けて、酸素を含む酸化剤ガス及びバイオガスを供給する供給ステップと、
    を含む、燃料ガスの製造方法。
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