[センサーチップの構成]
図1は、本発明のセンサーチップの一例を模式的に示す図である。本発明のセンサーチップ1は、被検出物質を検出するために用いられるものであって、基板10と、基板10上に設けられ、30個以上の金属系粒子200が互いに離間して配置されてなる粒子集合体からなる金属系粒子集合体層20と、金属系粒子集合体層20を覆う保護層30と、保護層30上に設けられ、被検出分子と特異結合する捕捉物質を有する捕捉層40と、を備える。
金属系粒子集合体層20は、30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなり、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にある。
本発明のセンサーチップにおいては、捕捉層40の捕捉物質と被検出物質とが特異結合して、センサーチップ上に被検出物質が捕捉される。センサーチップを用いた検出においては、捕捉物質と被検出物質の特異的結合の状態に対応する信号によって、被検出物質を定性的または定量的に分析することができる。
本発明のセンサーチップを用いると、金属系粒子集合体層20により生じる局在プラズモン共鳴により、捕捉物質と被検出物質の特異的結合の状態に対応する信号を増強することができ、高感度の検出が可能となる。なお、特異的結合の状態に対応する信号は、例えば、捕捉物質と被検出物質の特異的結合の近傍に存在する標識物質に由来する信号である。さらに、本発明に係る金属系粒子集合体層20によると、局在プラズモン共鳴の作用範囲を長くすることができるので、金属系粒子集合体層20から標識物質までの距離が長い場合であっても信号の増強効果を得ることができる。また、局在プラズモン共鳴の作用範囲が狭い範囲に限定されないので、局在プラズモン共鳴により信号の増強効果が得られるセンサーチップの構成の自由度が増し、金属系集合体層20が保護層30により十分に保護されている構成とすることができる。このような構成により、金属系粒子集合体層20の劣化が防止され、局在プラズモン共鳴の効果の低減を抑制することができる。
ここで、本明細書で用いられる主たる技術用語について説明する。
「捕捉物質」とは、これと特異的結合する物質(被検出物質)を捕捉するために機能する物質であって、捕捉層中に固定されて存在したり、捕捉層中に遊離状態で存在したり、保護層の表面に固定されて存在したりする。上記機能を有する物質である限り、あらゆる有機物質、無機物質を捕捉物質として用いることができ、一例を挙げれば、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、タンパク質、糖類等の生体由来物質、ウィルス、細胞等がある。また、被検出物質が有する官能基と静電相互作用により結合し得る結合性活性基を有する物質を用いることができる。
「被検出物質」とは、定性的または定量的な検出を行う対象の物質であり、捕捉物質に特異的結合する物質である。あらゆる有機物質及び無機物質を被検出物質とすることができ、例えば、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、タンパク質、糖類等の生体由来物質、ウィルス、細胞等を被検出物質とすることができる。
上記において、核酸は、プリン塩基またはピリミジン塩基と糖がグリコシド結合したヌクレオシドのリン酸エステルの重合体(ヌクレオチド鎖)を意味し、プローブDNAを含むオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチドが重合したDNA(全長あるいはその断片)、RNA、ポリアミドヌクレオチド誘導体(PNA)等を含む。また、ヌクレオシドは、塩基と糖がグリコシド結合した化合物であり、ヌクレオチドはヌクレオシドにリン酸が結合した化合物であり、ヌクレオシド及びヌクレオチド共に塩基を含む化合物である。
「特異的結合」とは、物質間の非共有結合、共有結合、水素結合を含む化学結合を広く意味し、例えば、タンパク質分子間の相互作用、分子間の静電相互作用、等が挙げられる。捕捉物質とこれと特異的結合する被検出物質として、レクチンによる糖鎖の捕捉、包摂化合物による分子の捕捉等が挙げられる。
「センサーチップ」は、捕捉層近傍の反応領域において、捕捉物質と被検出物質の特異的結合を進行させ、被検出物質を検出するために用いられるセンサーチップを意味し、捕捉物質と被検出物質の種類は制限されない。被検出物質が生体由来物質、ウィルス、細胞等であるセンサーチップをバイオチップともいう。センサーチップにおける被検出物質の検出は、捕捉物質と被検出物質の特異的結合の状態に対応する信号を検出することにより行われ、例えば、捕捉物質と被検出物質の特異的結合の近傍に存在する標識物質に由来する信号を検出することにより行われる。本発明において、かかる信号は金属系粒子集合体層により生じる局在プラズモン共鳴により増強され得る信号であれば限定されることはない。このような信号として、標識物質が発光物質である場合に、発光物質による光の吸収または発光に由来する信号が例示される。発光物質は、励起光等の励起エネルギーの注入により発光する物質である。発光物質における発光の原理は限定されることはなく、蛍光、りん光、化学発光等が挙げられる。
標識物質は、捕捉物質または被検出物質に予め結合されているものであってもよいし、捕捉物質及び被検物質の特異的結合により得られる生成物に特異的結合する標識物質であってもよい。以下では、主として、標識物質として発光物質を用いた場合について詳述する。
<金属系粒子集合体層>
本発明のセンサーチップの好ましい実施形態において、金属系粒子集合体層は下記のいずれかの特徴を有する。
〔i〕金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子が、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されている(第1の実施形態)、
〔ii〕金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記平均粒径と同じ粒径、上記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている(第2の実施形態)、
〔iii〕金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記平均粒径と同じ粒径、上記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い(第3の実施形態)。
(第1の実施形態)
上記〔i〕の特徴を有する金属系粒子集合体層を備える本実施形態のセンサーチップは、次の点において極めて有利である。
(1)本実施形態に係る金属系粒子集合体層が極めて強いプラズモン共鳴を示すため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い発光増強効果を得ることができ、これにより発光効率を飛躍的に高めることができる。金属系粒子集合体層が示すプラズモン共鳴の強さは、特定波長における個々の金属系粒子が示す局在プラズモン共鳴の単なる総和ではなく、それ以上の強さである。すなわち、30個以上の所定形状の金属系粒子が上記の所定間隔で密に配置されることにより、個々の金属系粒子が相互作用して、極めて強いプラズモン共鳴が発現する。これは、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。
一般にプラズモン材料は、吸光光度法で吸光スペクトルを測定したとき、紫外〜可視領域におけるピークとしてプラズモン共鳴ピーク(以下、プラズモンピークともいう)が観測され、このプラズモンピークの極大波長における吸光度値の大小から、そのプラズモン材料のプラズモン共鳴の強さを略式に評価することができるが、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光スペクトルを測定したとき、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
金属系粒子集合体層の吸光スペクトルは、吸光光度法によって、ガラス基板に積層した状態で測定される。具体的には、吸光スペクトルは、金属系粒子集合体層が積層されたガラス基板の裏面側(金属系粒子集合体層とは反対側)であって、基板面に垂直な方向から紫外〜可視光領域の入射光を照射し、金属系粒子集合体層側に透過した全方向における透過光の強度Iと、前記金属系粒子集合体膜積層基板の基板と同じ厚み、材質の基板であって、金属系粒子集合体膜が積層されていない基板の面に垂直な方向から先と同じ入射光を照射し、入射面の反対側から透過した全方向における透過光の強度I0を、それぞれ積分球分光光度計を用いて測定することにより得られる。このとき、吸光スペクトルの縦軸である吸光度は、下記式:
吸光度=−log10(I/I0)
で表される。
(2)金属系粒子集合体層によるプラズモン共鳴の作用範囲(プラズモンによる増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長されているため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い発光増強効果を得ることができ、このことは上記と同様、発光効率の飛躍的な向上に寄与する。すなわち、この作用範囲の大幅な伸長によって、金属系粒子集合体層を十分に保護するものとするために金属系粒子集合体を覆う第1層の平均厚みが10nm以上であっても、または担持物質及び被検出物質が大きいものであっても、標識物質の発光を増強させることが可能になり、これによりセンサーチップの発光効率を著しく向上させることができる。
このような伸長作用もまた、30個以上の所定形状の金属系粒子を所定間隔で密に配置したことによって生じた金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。本実施形態の金属系粒子集合体層によれば、従来では概ねフェルスター距離の範囲内(約10nm以下)に限定されていたプラズモン共鳴の作用範囲を、たとえば数百nm程度まで伸長することができる。
このように本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、それ単独では双極子型の局在プラズモンが可視光領域で生起し難い比較的大型の金属系粒子を用いるにもかかわらず、このような大型の金属系粒子(所定の形状を有していることが必要であるが)の特定数以上を、特定の間隔を置いて密に配置することにより、当該大型の金属系粒子が内包する極めて多数の表面自由電子を有効にプラズモンとして励起することができ、著しく強いプラズモン共鳴およびプラズモン共鳴の作用範囲の著しい伸長の実現を可能にしたものである。
また、本実施形態のセンサーチップは、その金属系粒子集合体層が特定の形状を有する比較的大型な金属系粒子の特定数以上を二次元的に特定の間隔で離間して配置した構造を有していることに起因して、次のような有利な効果を奏し得る。
(3)本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、金属系粒子の平均粒径および粒子間の平均距離に依存して、プラズモンピークの極大波長が特異なシフトを示し得るため、特定の(所望の)波長領域の発光を、特に増強させることが可能になる。具体的には、粒子間の平均距離を一定にして金属系粒子の平均粒径を大きくするに従い、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が短波長側にシフト(ブルーシフト)する。同様に、大型の金属系粒子の平均粒径を一定にして粒子間の平均距離を小さくするに従い(金属系粒子をより密に配置すると)、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が短波長側にシフトする。この特異な現象は、プラズモン材料に関して一般的に認められているミー散乱理論(この理論に従えば、粒径が大きくなるとプラズモンピークの極大波長は長波長側にシフト(レッドシフト)する。)に反するものである。
上記のような特異なブルーシフトもまた、金属系粒子集合体層が大型の金属系粒子を特定の間隔を置いて密に配置した構造を有しており、これに伴い、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じていることによるものと考えられる。本実施形態に係る金属系粒子集合体層(ガラス基板上に積層した状態)は、金属系粒子の形状や粒子間の距離に応じて、吸光光度法によって測定される可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークが、たとえば350〜550nmの波長領域に極大波長を示し得る。また、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、金属系粒子が十分に長い粒子間距離(たとえば1μm)を置いて配置される場合と比較して、典型的には30〜500nm程度(たとえば30〜250nm)のブルーシフトを生じ得る。
このようなプラズモンピークの極大波長がブルーシフトした金属系粒子集合体層を備えるセンサーチップは、たとえば次の点で極めて有利である。すなわち、比較的発光効率の低い青色発光物質を標識物質として用いる場合であっても、その発光効率を十分な程度にまで増強させることができる。
次に、本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成について説明する。
金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、ナノ粒子またはその集合体としたときに、吸光光度法による吸光スペクトル測定において、紫外〜可視領域にプラズモンピークを有する材料からなる限り特に限定されず、たとえば、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属や、アルミニウム、タンタル等の金属;該貴金属または金属を含有する合金;該貴金属または金属を含む金属化合物(金属酸化物や金属塩など)を挙げることができる。これらのなかでも、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属が好ましく、安価で、吸収が小さい(可視光波長において誘電関数の虚部が小さい)ことから銀であることがより好ましい。
金属系粒子の平均粒径は200〜1600nmの範囲内であり、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは200〜1200nm、より好ましくは250〜500nm、さらに好ましくは300〜500nmの範囲内である。ここで特筆すべき点は、たとえば平均粒径500nmという大型の金属系粒子は、上述のように、それ単独では局在プラズモンによる増強効果がほとんど認められないということである。これに対し本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、このような大型の金属系粒子の所定数(30個)以上を所定の間隔で密に配置することにより、著しく強いプラズモン共鳴およびプラズモン共鳴の作用範囲の著しい伸長、さらには上記(3)の効果を実現するものである。
金属系粒子の平均粒径とは、二次元的に金属系粒子が配置された金属系粒子集合体(膜)の直上からのSEM観察画像において、無作為に粒子を10個選択し、各粒子像内に無作為に接線径を5本引き(ただし、接線径となる直線はいずれも粒子像内部のみを通ることができ、このうち1本は粒子内部のみ通り、最も長く引ける直線であるものとする)、その平均値を各粒子の粒径としたときの、選択した10個の粒径の平均値である。接線径とは、粒子の輪郭(投影像)をこれに接する2本の平行線で挟んだときの間隔(日刊工業新聞社 「粒子計測技術」,1994,第5頁)を結ぶ垂線と定義する。
平均粒径の測定方法についてより具体的に説明すると、まずSEM観察画像は、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM−5500」を用いて測定する。次いで、得られた観察画像を、アメリカ国立衛生研究所製のフリー画像処理ソフト「ImageJ」を用いて横1280ピクセル×縦960ピクセルで読み込む。次に、Microsoft社製の表計算ソフト「excel」の乱数発生関数「RANDBETWEEN」を用いて、1〜1280から10個の乱数(x1、x2、x3、x4、x5、x6、x7、x8、x9、x10)、1〜960から10個の乱数(y1、y2、y3、y4、y5、y6、y7、y8、y9、y10)をそれぞれ得る。得られた各10個の乱数から10組の乱数組み合わせ(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)、(x5,y5)、(x6,y6)、(x7,y7)、(x8,y8)、(x9,y9)及び(x10,y10)を得る。1〜1280から発生させた乱数の数値をx座標、1〜960から発生させた乱数の数値をy座標として、10組の座標点(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)、(x5,y5)、(x6,y6)、(x7,y7)、(x8,y8)、(x9,y9)及び(x10,y10)を得る。そして、当該座標点を含む合計10個の粒子像のそれぞれについて上記の接線径平均値を得、次いで当該10個の接線径平均値の平均値として平均粒径を得る。10組の乱数組み合わせである10個の座標点の少なくともいずれか1つが粒子像内に含まれない場合、あるいは同一粒子内に2つ以上の座標点が含まれる場合には、この乱数組み合わせを破棄し、10個の座標点がすべて異なる粒子像内に含まれるまで乱数発生を繰り返す。
金属系粒子の平均高さは55〜500nmの範囲内であり、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは55〜300nm、より好ましくは70〜150nmの範囲内である。金属系粒子の平均高さとは、金属系粒子集合体層(膜)のAFM観察画像において、無作為に粒子を10個選択し、これら10個の粒子の高さを測定したときの、10個の測定値の平均値である。
金属系粒子のアスペクト比は1〜8の範囲内であり、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは2〜8、より好ましくは2.5〜8の範囲内である。金属系粒子のアスペクト比は、上記平均高さに対する上記平均粒径の比(平均粒径/平均高さ)で定義される。金属系粒子は真球状であってもよいが、アスペクト比が1を超える扁平形状を有していることが好ましい。
金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面が滑らかな曲面からなることが好ましく、とりわけ表面が滑らかな曲面からなる扁平形状を有していることがより好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。
金属系粒子集合体層面内におけるプラズモン共鳴の強さの均一性に鑑み、金属系粒子間のサイズのバラツキはできるだけ小さいことが好ましい。ただし、粒径に多少バラツキが生じたとしても、大型粒子間の距離が大きくなることは好ましくなく、その間を小型の粒子が埋めることで大型粒子間の相互作用を発現しやすくすることが好ましい。
本実施形態に係る金属系粒子集合体層において金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離(以下、平均粒子間距離ともいう。)が1〜150nmの範囲内となるように配置される。このように金属系粒子を密に配置することにより、著しく強いプラズモン共鳴およびプラズモン共鳴の作用範囲の著しい伸長、さらには上記(3)の効果を実現することができる。当該平均距離は、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜50nm、さらに好ましくは1〜20nmの範囲内である。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、局在プラズモンの失活の点で不利となる。
金属系粒子が互いに離間して配置されている金属系粒子集合体層は、当該層として導電性を示さないものであり、具体的には、金属系粒子集合体層20にマルチメーター〔テスター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」)〕の一対のテスタープローブを10〜15mm離して接触させたとき、レンジ設定「30MΩ」のときに、当該測定条件にて抵抗値が30MΩ以上である結果、「オーバーロード」と表示される。一部もしくは全ての金属系粒子間で電子の授受が可能であると、プラズモンピークは先鋭さを失い、バルク金属の吸光スペクトルに近づき、また高いプラズモン共鳴が得られない。従って、金属系粒子間は確実に離間されており、金属系粒子間には導電性物質が介在されないことが好ましい。
平均粒子間距離とは、二次元的に金属系粒子が配置された金属系粒子集合体層の直上からのSEM観察画像において、無作為に粒子を30個選択し、選択したそれぞれの粒子について、隣り合う粒子との粒子間距離を求めたときの、これら30個の粒子の粒子間距離の平均値である。隣り合う粒子との粒子間距離とは、すべての隣り合う粒子との距離(表面同士間の距離である)をそれぞれ測定し、これらを平均した値である。
平均粒子間距離の測定方法についてより具体的に説明すると、まずSEM観察画像は、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM−5500」を用いて測定する。次いで、得られた観察画像を、アメリカ国立衛生研究所製のフリー画像処理ソフト「ImageJ」を用いて横1280ピクセル×縦960ピクセルで読み込む。次に、Microsoft社製の表計算ソフト「excel」の乱数発生関数「RANDBETWEEN」を用いて、1〜1280から30個の乱数(x1〜x30)、1〜960から30個の乱数(y1〜y30)をそれぞれ得る。得られた各30個の乱数から30組の乱数組み合わせ(x1,y1)から(x30,y30)を得る。1〜1280から発生させた乱数の数値をx座標、1〜960から発生させた乱数の数値をy座標として、30組の座標点(x1,y1)〜(x30,y30)を得る。そして、当該座標点を含む合計30個の粒子像のそれぞれについて、当該粒子と隣り合う粒子との粒子間距離を得、次いで当該30個の隣り合う粒子との粒子間距離の平均値として平均粒子間距離を得る。30組の乱数組み合わせである30個の座標点の少なくともいずれか1つが粒子像内に含まれない場合、あるいは同一粒子内に2つ以上の座標点が含まれる場合には、この乱数組み合わせを破棄し、30個の座標点がすべて異なる粒子像内に含まれるまで乱数発生を繰り返す。
金属系粒子集合体層に含まれる金属系粒子の数は30個以上であり、好ましくは50個以上である。金属系粒子を30個以上含む集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用によって極めて強いプラズモン共鳴およびプラズモン共鳴の作用範囲の伸長が発現する。
センサーチップの一般的な素子面積に照らせば、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、たとえば300個以上、さらには17500個以上となり得る。
金属系粒子集合体層における金属系粒子の数密度は、7個/μm2以上であることが好ましく、15個/μm2以上であることがより好ましい。
金属系粒子集合体層において、金属系粒子間は互いに絶縁されている、換言すれば、隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性(金属系粒子集合体層として非導電性)であることが好ましい。一部もしくは全ての金属系粒子間で電子の授受が可能であると、プラズモンピークは先鋭さを失い、バルク金属の吸光スペクトルに近づき、また高いプラズモン共鳴が得られない。したがって、金属系粒子間は確実に離間されており、金属系粒子間には導電性物質が介在されないことが好ましい。
(第2の実施形態)
本実施形態のセンサーチップは、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている(上記〔ii〕の特徴を有する)金属系粒子集合体層を備えるものである。このような特徴を有する金属系粒子集合体層を備える本実施形態のセンサーチップは、次の点において極めて有利である。
(I)本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が特異的な波長領域に存在するため、特定の(所望の)波長領域の発光を、特に増強させることが可能になる。具体的には、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、吸光スペクトルを測定したとき、上記プラズモンピークの極大波長が、後述する参照金属系粒子集合体(X)の極大波長に比べて、30〜500nmの範囲(たとえば30〜250nmの範囲)で短波長側にシフト(ブルーシフト)しており、典型的には、上記プラズモンピークの極大波長は350〜550nmの範囲内にある。
上記ブルーシフトは、金属系粒子集合体層が特定の形状を有する大型な金属系粒子の特定数以上を二次元的に離間して配置した構造を有しており、これに伴い、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じていることによるものと考えられる。
青色またはその近傍波長領域にプラズモンピークを有する本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、青色またはその近傍波長領域の発光物質を有する被検出物質を検出するセンサーチップの発光増強に極めて有用であり、かかる金属系粒子集合体層を備えるセンサーチップでは、比較的発光効率の低い青色発光材料を用いる場合であっても、その発光効率を十分な程度にまで増強させることができる。
ここで、ある金属系粒子集合体と参照金属系粒子集合体(X)との間で最も長波長側にあるピークの極大波長や該極大波長における吸光度を比較する場合には、両者について、顕微鏡(Nikon社製「OPTIPHOT−88」と分光光度計(大塚電子社製「MCPD−3000」)とを用い、測定視野を絞って吸光スペクトル測定を行う。
参照金属系粒子集合体(X)は、吸光スペクトル測定の対象となる金属系粒子集合体層が有する平均粒径、平均高さと同じ粒径、高さおよび同じ材質を有する金属系粒子Aを、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した金属系粒子集合体であって、ガラス基板に積層した状態で、上記の顕微鏡を利用した吸光スペクトル測定を行い得る程度の大きさを有するものである。
参照金属系粒子集合体(X)の吸光スペクトル波形は、金属系粒子Aの粒径および高さ、金属系粒子Aの材質の誘電関数、金属系粒子A周辺の媒体(たとえば空気)の誘電関数、基板(たとえばガラス基板)の誘電関数を用いて、3D−FDTD法によって理論上計算することも可能である。
また、本実施形態のセンサーチップは、その金属系粒子集合体層が特定の形状を有する比較的大型な金属系粒子の特定数以上を二次元的に離間して配置した構造を有していることに起因して、(II)金属系粒子集合体層が極めて強いプラズモン共鳴を示し得るため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い発光増強効果を得ることができ、これにより発光効率を飛躍的に高めることが可能となる(上記第1の実施形態の効果(1)と同様)、および(III)金属系粒子集合体層によるプラズモン共鳴の作用範囲(プラズモンによる増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長され得るため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い発光増強効果を得ることができ、同様に発光効率を飛躍的に高めることが可能となる(上記第1の実施形態の効果(2)と同様)、などの効果を奏し得る。本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光スペクトルを測定したとき、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
次に、本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成について説明する。本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成は、第1の実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成(金属系粒子の材質、平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離、金属系粒子の数、金属系粒子集合体層の非導電性など)と基本的には同様であることができる。平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離などの用語の定義も第1の実施形態と同じである。
金属系粒子の平均粒径は200〜1600nmの範囲内であり、上記(I)〜(III)の効果を効果的に得るために、好ましくは200〜1200nm、より好ましくは250〜500nm、さらに好ましくは300〜500nmの範囲内である。本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、このような大型の金属系粒子の所定数(30個)以上を二次元的に配置した集合体とすることにより、著しく強いプラズモン共鳴およびプラズモン共鳴の作用範囲の著しい伸長の実現を可能とする。また、上記〔ii〕の特徴(短波長側へのプラズモンピークのシフト)を発現させるうえでも、金属系粒子は、平均粒径が200nm以上の大型であることが必須であり、好ましくは250nm以上である。
本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は、金属系粒子の平均粒径に依存する。すなわち、金属系粒子の平均粒径が一定の値を超えると、当該プラズモンピークの極大波長は短波長側にシフト(ブルーシフト)する。
金属系粒子の平均高さは55〜500nmの範囲内であり、上記(I)〜(III)の効果を効果的に得るために、好ましくは55〜300nm、より好ましくは70〜150nmの範囲内である。金属系粒子のアスペクト比は1〜8の範囲内であり、上記(I)〜(III)の効果を効果的に得るために、好ましくは2〜8、より好ましくは2.5〜8の範囲内である。金属系粒子は真球状であってもよいが、アスペクト比が1を超える扁平形状を有していることが好ましい。
金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面が滑らかな曲面からなることが好ましく、とりわけ表面が滑らかな曲面からなる扁平形状を有していることがより好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。また、金属系粒子集合体層面内におけるプラズモン共鳴の強さの均一性に鑑み、金属系粒子間のサイズのバラツキはできるだけ小さいことが好ましい。ただし上述のように、粒径に多少バラツキが生じたとしても、大型粒子間の距離が大きくなることは好ましくなく、その間を小型の粒子が埋めることで大型粒子間の相互作用を発現しやすくすることが好ましい。
本実施形態に係る金属系粒子集合体層において金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離(平均粒子間距離)が1〜150nmの範囲内となるように配置されることが好ましい。より好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nm、特に好ましくは1〜20nmの範囲内である。このように金属系粒子を密に配置することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記(I)〜(III)の効果が発現されやすくなる。プラズモンピークの極大波長は、金属系粒子の平均粒子間距離に依存するので、平均粒子間距離の調整により、最も長波長側にあるプラズモンピークのブルーシフトの程度や当該プラズモンピークの極大波長を制御することが可能である。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、局在プラズモンの失活の点で不利となる。
上記〔ii〕の特徴(短波長側へのプラズモンピークのシフト)を発現させる上記以外の他の手段としては、たとえば、金属系粒子間に、空気とは誘電率の異なる誘電体物質(後述するように非導電性物質であることが好ましい)を介在させる方法を挙げることができる。
金属系粒子集合体層に含まれる金属系粒子の数は30個以上であり、好ましくは50個以上である。金属系粒子を30個以上含む集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記〔ii〕の特徴および上記(I)〜(III)の効果の発現が可能となる。
センサーチップの一般的な素子面積に照らせば、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、たとえば300個以上、さらには17500個以上となり得る。
金属系粒子集合体層における金属系粒子の数密度は、7個/μm2以上であることが好ましく、15個/μm2以上であることがより好ましい。
本実施形態の金属系粒子集合体層においても、第1の実施形態と同様、金属系粒子間は互いに絶縁されている、換言すれば、隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性(金属系粒子集合体層として非導電性)であることが好ましい。
(第3の実施形態)
本実施形態のセンサーチップは、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い(上記〔iii〕の特徴を有する)金属系粒子集合体層を備えるものである。このような特徴を有する金属系粒子集合体層を備える本実施形態のセンサーチップは、次の点において極めて有利である。
(A)本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、プラズモンピークである可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が、金属系粒子が何らの粒子間相互作用もなく単に集合した集合体とみなすことができる上記参照金属系粒子集合体(Y)よりも大きく、したがって、極めて強いプラズモン共鳴を示すため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い発光増強効果を得ることができ、これにより発光効率を飛躍的に高めることができる。このような強いプラズモン共鳴は、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。
上記のように、プラズモンピークの極大波長における吸光度値の大小から、そのプラズモン材料のプラズモン共鳴の強さを略式に評価することが可能であるが、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光スペクトルを測定したとき、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
上述のように、ある金属系粒子集合体と参照金属系粒子集合体(Y)との間で最も長波長側にあるピークの極大波長や該極大波長における吸光度を比較する場合には、両者について、顕微鏡(Nikon社製「OPTIPHOT−88」と分光光度計(大塚電子社製「MCPD−3000」)とを用い、測定視野を絞って吸光スペクトル測定を行う。
参照金属系粒子集合体(Y)は、吸光スペクトル測定の対象となる金属系粒子集合体層が有する平均粒径、平均高さと同じ粒径、高さおよび同じ材質を有する金属系粒子Bを、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した金属系粒子集合体であって、ガラス基板に積層した状態で、上記の顕微鏡を利用した吸光スペクトル測定を行い得る程度の大きさを有するものである。
吸光スペクトル測定の対象となる金属系粒子集合体層と参照金属系粒子集合体(Y)との間で、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を比較する際には、以下に述べるように、同じ金属系粒子数になるように換算した参照金属系粒子集合体(Y)の吸光スペクトルを求め、当該吸光スペクトルにおける最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を比較の対象とする。具体的には、金属系粒子集合体と参照金属系粒子集合体(Y)の吸光スペクトルをそれぞれ求め、それぞれの吸光スペクトルにおける最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を、それぞれの被覆率(金属系粒子による基板表面の被覆率)で除した値を算出し、これらを比較する。
また、本実施形態のセンサーチップは、その金属系粒子集合体層が特定の形状を有する比較的大型な金属系粒子の特定数以上を二次元的に離間して配置した構造を有していることに起因して、(B)金属系粒子集合体層によるプラズモン共鳴の作用範囲(プラズモンによる増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長され得るため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い発光増強効果を得ることができ、これにより発光効率を飛躍的に高めることが可能となる(上記第1の実施形態の効果(2)と同様)、および(C)金属系粒子集合体層のプラズモンピークの極大波長が特異なシフトを示し得るため、特定の(所望の)波長領域の発光を増強させることが可能になる(上記第1の実施形態の効果(3)と同様)、などの効果を奏し得る。
本実施形態の金属系粒子集合体層(ガラス基板上に積層した状態)は、金属系粒子の形状や粒子間の距離に応じて、吸光光度法によって測定される可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークが、たとえば350〜550nmの波長領域に極大波長を示し得る。また、本実施形態の金属系粒子集合体層は、金属系粒子が十分に長い粒子間距離(たとえば1μm)を置いて配置される場合と比較して、典型的には30〜500nm程度(たとえば30〜250nm)のブルーシフトを生じ得る。
次に、本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成について説明する。本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成は、第1の実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成(金属系粒子の材質、平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離、金属系粒子の数、金属系粒子集合体層の非導電性など)と基本的には同様であることができる。平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離などの用語の定義も第1の実施形態と同じである。
金属系粒子の平均粒径は200〜1600nmの範囲内であり、上記〔iii〕の特徴(最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が参照金属系粒子集合体(Y)のそれよりも高いという特徴)、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に得るために、好ましくは200〜1200nm、より好ましくは250〜500nm、さらに好ましくは300〜500nmの範囲内である。このように、比較的大型の金属系粒子を用いることが肝要であり、大型の金属系粒子の所定数(30個)以上を二次元的に配置した集合体とすることにより、著しく強いプラズモン共鳴、さらにはプラズモン共鳴の作用範囲の著しい伸長、短波長側へのプラズモンピークのシフトの実現を可能となる。
金属系粒子の平均高さは55〜500nmの範囲内であり、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に得るために、好ましくは55〜300nm、より好ましくは70〜150nmの範囲内である。金属系粒子のアスペクト比は1〜8の範囲内であり、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に得るために、好ましくは2〜8、より好ましくは2.5〜8の範囲内である。金属系粒子は真球状であってもよいが、アスペクト比が1を超える扁平形状を有していることが好ましい。
金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面が滑らかな曲面からなることが好ましく、とりわけ表面が滑らかな曲面からなる扁平形状を有していることがより好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。
上記〔iii〕の特徴が効果的に得られることから、金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、それらのサイズおよび形状(平均粒径、平均高さ、アスペクト比)ができるだけ均一であることが好ましい。すなわち、金属系粒子のサイズおよび形状を均一にすることにより、プラズモンピークが先鋭化し、これに伴い、最も長波長側にあるプラズモンピークの吸光度が参照金属系粒子集合体(Y)のそれよりも高くなりやすくなる。金属系粒子間のサイズおよび形状のバラツキの低減は、金属系粒子集合体層面内におけるプラズモン共鳴の強さの均一性の観点からも有利である。ただし上述のように、粒径に多少バラツキが生じたとしても、大型粒子間の距離が大きくなることは好ましくなく、その間を小型の粒子が埋めることで大型粒子間の相互作用を発現しやすくすることが好ましい。
本実施形態に係る金属系粒子集合体層において金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離(平均粒子間距離)が1〜150nmの範囲内となるように配置されることが好ましい。より好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nm、特に好ましくは1〜20nmの範囲内である。このように金属系粒子を密に配置することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に発現させることができる。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、局在プラズモンの失活の点で不利となる。
金属系粒子集合体層に含まれる金属系粒子の数は30個以上であり、好ましくは50個以上である。金属系粒子を30個以上含む集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に発現させることができる。
センサーチップの一般的な素子面積に照らせば、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、たとえば300個以上、さらには17500個以上となり得る。
金属系粒子集合体層における金属系粒子の数密度は、7個/μm2以上であることが好ましく、15個/μm2以上であることがより好ましい。
本実施形態の金属系粒子集合体層においても、第1の実施形態と同様、金属系粒子間は互いに絶縁されている、換言すれば、隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性(金属系粒子集合体層として非導電性)であることが好ましい。
以上のように、上記〔iii〕の特徴を有する本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これを構成する金属系粒子の金属種、サイズ、形状、金属系粒子間の平均距離などの制御により得ることができる。
本発明のセンサーチップが備える金属系粒子集合体層は、上記〔i〕〜〔iii〕のいずれか1つの特徴を有することが好ましく、〔i〕〜〔iii〕のいずれか2つ以上の特徴を有することがより好ましく、〔i〕〜〔iii〕のすべての特徴を有することがさらに好ましい。
<金属系粒子集合体層の製造方法>
上記第1〜第3の実施形態に係る金属系粒子集合体層を含む本発明に係る金属系粒子集合体層は、次のような方法によって作製することができる。
(1)基板上において微小な種(seed)から金属系粒子を成長させていくボトムアップ法、
(2)所定の形状を有する金属系粒子を所定の厚みを有する両親媒性材料からなる保護層で被覆した後、LB(Langmuir Blodgett)膜法により、これを基板上にフィルム化する方法、
(3)その他、蒸着またはスパッタリングにより作製した薄膜を後処理する方法、レジスト加工、エッチング加工、金属系粒子が分散された分散液を用いたキャスト法など。
上記方法(1)においては、所定温度に調整された基板上に、極めて低速で金属系粒子を成長させる工程(以下、粒子成長工程ともいう。)を含むことが肝要である。かかる粒子成長工程を含む製造方法によれば、30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されており、該金属系粒子が、所定範囲内の形状(平均粒径200〜1600nm、平均高さ55〜500nmおよびアスペクト比1〜8)、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離(1〜150nm)を有する金属系粒子集合体の層(薄膜)を制御良く得ることができる。
粒子成長工程において、基板上に金属系粒子を成長させる速度は、平均高さ成長速度で1nm/分未満であることが好ましく、0.5nm/分以下であることがより好ましい。ここでいう平均高さ成長速度とは、平均堆積速度または金属系粒子の平均厚み成長速度とも呼ぶことができ、下記式:
金属系粒子の平均高さ/金属系粒子成長時間(金属系材料の供給時間)
で定義される。「金属系粒子の平均高さ」の定義は上述のとおりである。
粒子成長工程における基板の温度は、好ましくは100〜450℃の範囲内、より好ましくは200〜450℃、さらに好ましくは250〜350℃、特に好ましくは300℃またはその近傍(300℃±10℃程度)である。
100〜450℃の範囲内に温度調整された基板上に、1nm/分未満の平均高さ成長速度で金属系粒子を成長させる粒子成長工程を含む製造方法では、粒子成長初期において、供給された金属系材料からなる島状構造物が複数形成され、この島状構造物が、さらなる金属系材料の供給を受けて大きく成長しながら、周囲の島状構造物と合体していき、その結果、個々の金属系粒子が互いに完全に分離されていながらも、比較的平均粒径の大きい粒子が密に配置された金属系粒子集合体層が形成される。したがって、所定範囲内の形状(平均粒径、平均高さおよびアスペクト比)、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離を有するように制御された金属系粒子からなる金属系粒子集合体層を製造することが可能となる。
また、平均高さ成長速度、基板温度および/または金属系粒子の成長時間(金属系材料の供給時間)の調整によって、基板上に成長される金属系粒子の平均粒径、平均高さ、アスペクト比および/または平均粒子間距離を所定の範囲内で制御することも可能である。
さらに、上記粒子成長工程を含む製造方法によれば、粒子成長工程における基板温度および平均高さ成長速度以外の諸条件を比較的自由に選択できることから、所望のサイズの基板上に所望のサイズの金属系粒子集合体層を効率的に形成できるという利点もある。
平均高さ成長速度が1nm/分以上である場合や、基板温度が100℃未満または450℃を超える場合には、島状構造物が大きく成長する前に周囲の島状構造物と連続体を形成し、互いに完全に分離された大粒径の金属系粒子からなる金属系集合体を得ることができないか、または、所望の形状を有する金属系粒子からなる金属系集合体を得ることができない(たとえば平均高さや平均粒子間距離、アスペクト比が所望の範囲から外れてしまう)。
金属系粒子を成長させる際の圧力(装置チャンバ内の圧力)は、粒子成長可能な圧力である限り特に制限されないが、通常、大気圧未満である。圧力の下限は特に制限されないが、平均高さ成長速度を上記範囲内に調整し易いことから、好ましくは6Pa以上、より好ましくは10Pa以上、さらに好ましくは30Pa以上である。
基板上に金属系粒子を成長させる具体的方法は、1nm/分未満の平均高さ成長速度で粒子成長できる方法である限り特に制限されないが、スパッタリング法、真空蒸着等の蒸着法を挙げることができる。スパッタリング法のなかでも、比較的簡便に金属系粒子集合体層を成長させることができ、かつ、1nm/分未満の平均高さ成長速度を維持しやすいことから、直流(DC)スパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタンリング方式は特に制限されず、イオンガンやプラズマ放電で発生したアルゴンイオンを電界で加速してターゲットに照射する直流アルゴンイオンスパッタリング法などを用いることができる。スパッタリング法における電流値、電圧値、基板・ターゲット間距離等の他の諸条件は、1nm/分未満の平均高さ成長速度で粒子成長がなされるよう適宜調整される。
なお、所定範囲内の形状(平均粒径、平均高さおよびアスペクト比)、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離を有する金属系粒子からなる金属系粒子集合体層を制御良く得るためには、粒子成長工程において平均高さ成長速度を1nm/分未満とすることに加えて、平均粒径成長速度を5nm未満とすることが好ましいが、平均高さ成長速度が1nm/分未満である場合、通常、平均粒径成長速度は5nm未満となる。平均粒径成長速度は、より好ましくは1nm/分以下である。平均粒径成長速度とは、下記式:
金属系粒子の平均粒径/金属系粒子成長時間(金属系材料の供給時間)
で定義される。「金属系粒子の平均粒径」の定義は上述のとおりである。
粒子成長工程における金属系粒子の成長時間(金属系材料の供給時間)は、少なくとも、基板上に担持された金属系粒子が所定範囲内の形状、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離に達する時間であり、かつ、当該所定範囲内の形状、平均粒子間距離から逸脱し始める時間未満である。たとえば、上記所定範囲内の平均高さ成長速度および基板温度で粒子成長を行なっても、成長時間が極端に長すぎる場合には、金属系材料の担持量が多くなり過ぎて、互いに離間して配置された金属系粒子の集合体とはならずに連続膜となったり、金属系粒子の平均粒径や平均高さが大きくなり過ぎたりする。
したがって、金属系粒子の成長時間を適切な時間に設定する(粒子成長工程を適切な時間で停止する)必要があるが、このような時間の設定は、たとえば、あらかじめ予備実験を行なうことにより得られる、平均高さ成長速度および基板温度と、得られる金属系粒子集合体における金属系粒子の形状および平均粒子間距離との関係に基づいて行なうことができる。あるいは、基板上に成長された金属系材料からなる薄膜が導電性を示すまでの時間(すなわち、薄膜が金属系粒子集合体膜ではなく、連続膜となってしまう時間)をあらかじめ予備実験により求めておき、この時間に達するまでに粒子成長工程を停止するようにしてもよい。
金属系粒子を成長させる基板表面は、できるだけ平滑であることが好ましく、とりわけ、原子レベルで平滑であることがより好ましい。基板表面が平滑であるほど、基板から受け取った熱エネルギーにより、成長中の金属系粒子が別の周囲の隣接金属系粒子と合体成長しやすくなるため、より大きなサイズの金属系粒子からなる膜が得られやすい傾向にある。
金属系粒子を成長させる基板は、センサーチップの基板としてそのまま用いることが可能である。すなわち、上記した方法で作製された、金属系粒子集合体層が積層、担持された基板(金属系粒子集合体層積層基板)をセンサーチップの構成部材として用いることができる。
<基板>
基板10はいずれの材料で構成されてもよいが、特に金属系粒子集合体層が基板10に直接積層される場合には、金属系粒子集合体層の非導電性を確保する観点から、非導電性基板を用いることが好ましい。非導電性基板としては、ガラス、各種無機絶縁材料(SiO2、ZrO2、マイカ等)、各種プラスチック材料を用いることができる。
<保護層>
図1に示されるように、本発明のセンサーチップは、金属系粒子集合体層を構成するそれぞれの金属系粒子200の表面を覆い、金属系粒子200を保護する保護層30を有する。保護層30は、絶縁性であることが好ましい。絶縁性であることにより、上述した金属系粒子集合体層の非導電性(金属系粒子間の非導電性)を担保できるとともに、金属系粒子集合体層20とこれに隣り合う他の層との間の電気的絶縁を図ることができる。金属系粒子集合体層20に電流が流れてしまうと、プラズモン共鳴による発光増強効果が十分に得られないおそれがある。また金属系粒子を覆う保護層30により、金属系粒子200が保護層30以外の層または外部環境と直接接触することを防ぐことができ、金属系粒子200の劣化を防止することができる。
保護層30を構成する材料としては、良好な絶縁性を有するものが好ましく、たとえば、スピンオングラス(SOG;たとえば有機シロキサン材料を含有するもの)のほか、SiO2やSi3N4などを用いることができる。保護層30の厚みは、金属系粒子200が保護層30以外の層または外部環境と直接接触することを防ぐことができるものであれば特に制限はないが、後述するように捕捉物質と被検出物質の特異的結合の近傍に存在する標識物質と金属系粒子集合体層200との距離が所定範囲内であることが好ましいことから、所望の保護性が確保される範囲で薄いほどよい。保護層30の厚みは、たとえば10〜150nmが好ましく、20〜150nmがより好ましく、20〜90nmがさらに好ましい。なお、本明細書において、保護層30の厚みは、基板10の上面から保護層30の上面までの平均厚みから、金属系粒子集合体層20の平均高さを引いた値とする。十分な保護性を確保できる点から10nm以上であることが好ましく、センサーチップの上方に存在することになる標識物質について、局在プラズモン共鳴による発光増強効果が十分に得られるようにするとの観点から150nm以下であることが好ましい。
本発明によれば、強いプラズモン共鳴を示すとともに、プラズモン共鳴の作用範囲(プラズモンによる増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長された金属系粒子集合体層を備えるため、金属系粒子集合体層20の上面からセンサーチップの上方に存在することになる標識物質までの距離がたとえば15nm以上、さらには25nm以上、なおさらにはそれ以上の距離を有する場合であっても、例えば標識物質の発光増強が可能である。なお、金属系粒子集合体層20の上面から標識物質までの距離は170nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。
したがって、被検出物質の大きさの分だけ金属系粒子集合体層20の上面から標識物質までの距離が離れることがあるものの、本発明では、長径5nm以上、さらには長径10nm以上の被検出物質の検出においても標識物質に由来する信号を増強させることができる。なお、被検出物質は長径1μm以下であることが好ましい。被検出物質の長径が100nmを超える場合には、標識物質がプラズモン共鳴の作用範囲内に位置するように被検出物質が捕捉されるように調整することが好ましい。被検出物質が核酸などの鎖状の化合物の場合、ここでいう長径は鎖長を意味する。
本発明によると、検出感度を増強させることができるので、発光効率が低いとされる発光物質を標識物質として用いる場合であっても、被検出物質が少量である場合であっても、高感度で検出することが可能となる。
また、本発明のセンサーチップによれば、比較的発光効率の低い従来の青色(もしくはその近傍波長領域)発光物質を用いる場合であっても、プラズモンピークの極大波長が短波長側にシフトした金属系粒子集合体層を備えることにより、その発光効率を増強させることができる。
金属系粒子集合体層のプラズモンピークの極大波長は、標識物質として用いる発光物質の発光波長と一致するかまたは近いことが好ましい。これにより、プラズモン共鳴による発光増強効果をより効果的に高めることができる。金属系粒子集合体層のプラズモンピークの極大波長は、これを構成する金属系粒子の金属種、平均粒径、平均高さ、アスペクト比および/または平均粒子間距離の調整により制御可能である。
<捕捉層>
図1に示されるように、捕捉層40は捕捉物質を有するものであり、保護層30の上に形成されてなる。捕捉物質は、捕捉層40中に固定されて存在したり、捕捉層中に遊離状態で存在したり、保護層30の表面に固定されて存在したりする。捕捉層40の表面に被検出物質と特異的結合し得る結合活性基を誘導する処理を行い、かかる結合活性基を捕捉物質としてもよい。
[ヌクレオチドを検出するセンサーチップの構成例]
図2(a)は、ヌクレオチドを検出するセンサーチップの一例を示す断面模式図である。図2(b)は、本構成例のセンサーチップ110において、被検出物質51が捕捉層41に捕捉されている状態を示す断面模式的である。
被検出物質51は、蛍光物質が結合されたヌクレオチドである。捕捉層41の材料は限定されることはなく、有機物、無機物、これらの酸化物等を用いることができ、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、SiO2、Si3N4、TiO2、Ta2O5、Al2O3等で形成することができる。捕捉層41の表面は、被検出物質であるヌクレオチドが有する塩基と特異的結合し得る結合活性基を誘導する処理が行われている。かかる結合活性基が捕捉物質として機能する。このような結合活性基としては、例えば、塩基と静電相互作用する、カルボキシル基、水酸基等が挙げられる。
本構成例において、センサーチップの表面近傍に位置する蛍光物質が、金属系粒子層により生じる局在プラズモン共鳴の作用範囲に入るように、保護層30及び捕捉層41の厚さが決定されることが好ましい。捕捉層41の平均厚さは、例えば5〜50nmとすることができる。保護層30の平均厚さは、例えば15〜145nmとすることができる。なお、保護層30の平均厚さと捕捉層41の平均厚さの合計が20〜150nmであることが好ましく、20〜150nmがより好ましく、20〜90nmがさらに好ましい。
[被検出物質の検出方法]
本発明のセンサーチップを用いた被検出物質の検出方法の一例を説明する。なお、以下の説明では、図2(a)、図2(b)に基づいて、被検出物質に結合させた蛍光物質を用いて検出する場合を例に挙げて説明する。
センサーチップ110の保護層30の表面に、蛍光物質で標識した被検出物質51を含むサンプル溶液を捕捉層41の表面に滴下する。その後、所定時間放置したセンサーチップ110を、例えば以下で説明するセンシングシステムを用いて分析し、被検出物質の検出を行う。
[センシングシステム]
図3は、本発明のセンシングシステムの一例を示す断面模式図である。センシングシステムにおいては、センサーチップ110の捕捉層41側に、捕捉層41の表面に対して垂直な方向から励起光3を照射することによりセンサーチップの表面近傍に存在する標識物質である発光物質を発光させる。励起光源4からの発光をレンズ5で集光して励起光3とし、これを照射する。その後、励起光3の光軸に対して40°の方向に放射されるセンサーチップ110からの発光6をレンズ7で集光し、励起光の波長の光をカットする波長カットフィルタ8を通して、分光測定器9により検出する。検出器としては、分光測定器9以外にも、落射蛍光顕微鏡、全反射照明蛍光顕微鏡、走査型近接場光顕微鏡、などを用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[金属系粒子集合体層積層基板の作製]
<製造例1>
直流マグネトロンスパッタリング装置を用いて、下記の条件で、ソーダガラス基板上に、銀粒子を極めてゆっくりと成長させ、基板表面の全面に金属系粒子集合体の薄膜を形成して、金属系粒子集合体層積層基板を得た。
使用ガス:アルゴン、
チャンバ内圧力(スパッタガス圧):10Pa、
基板・ターゲット間距離:100mm、
スパッタ電力:4W、
平均粒径成長速度(平均粒径/スパッタ時間):0.9nm/分、
平均高さ成長速度(=平均堆積速度=平均高さ/スパッタ時間):0.25nm/分、
基板温度:300℃、
基板サイズおよび形状:一辺が5cmの正方形。
図4は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像である。図4(a)は10000倍スケールの拡大像であり、図4(b)は50000倍スケールの拡大像である。また図5は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を示すAFM画像である。AFM像撮影にはキーエンス社製「VN−8010」を用いた(以下同様)。図5に示される画像のサイズは5μm×5μmである。
図4に示されるSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は335nm、平均粒子間距離は16.7nmと求められた。また図5に示されるAFM画像より、平均高さは96.2nmと求められた。これらより銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は3.48と算出され、また、取得した画像からも銀粒子は扁平形状を有していることがわかる。さらにSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層は、約6.25×1010個(約25個/μm2)の銀粒子を有することがわかる。
また、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層の表面にテスター〔マルチメーター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」〕を接続して導電性を確認したところ、導電性を有しないことが確認された。
<製造例2>
銀ナノ粒子水分散物(三菱製紙社製、銀ナノ粒子濃度:25重量%)を純水で、銀ナノ粒子濃度が2重量%となるように希釈した。次いで、この銀ナノ粒子水分散物に対して1体積%の界面活性剤を添加して良く攪拌した後、得られた銀ナノ粒子水分散物に対して80体積%のアセトンを添加して常温で十分撹拌し、銀ナノ粒子塗工液を調製した。
次に、表面をアセトン拭きした1mm厚のソーダガラス基板上に上記銀ナノ粒子塗工液を1000rpmでスピンコートした後、そのまま大気中で1分間放置し、その後550℃の電気炉内で40秒間焼成した。次いで、形成された銀ナノ粒子層上に再度、上記銀ナノ粒子塗工液を1000rpmでスピンコートした後、そのまま大気中で1分間放置し、その後550℃の電気炉内で40秒間焼成して、金属系粒子集合体層積層基板を得た。
図6は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像である。図6(a)は10000倍スケールの拡大像であり、図6(b)は50000倍スケールの拡大像である。また図7は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を示すAFM画像である。図7に示される画像のサイズは5μm×5μmである。
図6に示されるSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は293nm、平均粒子間距離は107.8nmと求められた。また図7に示されるAFM画像より、平均高さは93.0nmと求められた。これらより銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は3.15と算出され、また、取得した画像からも銀粒子は扁平形状を有していることがわかる。さらにSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層は、約3.13×1010個(約12.5個/μm2)の銀粒子を有することがわかる。
また、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層の表面にテスター〔マルチメーター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」〕を接続して導電性を確認したところ、導電性を有しないことが確認された。
[実施例1:蛍光物質で標識化したヌクレオチドを被検出物質とするセンサーチップ]
(センサーチップの作製)
図2(a)に示すセンサーチップを次の方法にしたがって作製した。製造例1と同条件で銀粒子を成長させることにより、0.5mm厚のソーダガラス基板である基板10上に製造例1に記載の金属系粒子集合体層20を形成した。その後直ちに、スピンオングラス(SOG)溶液を金属系粒子集合体層上にスピンコートして、所定の厚みの保護層30を積層した。SOG溶液には、有機系SOG材料である東京応化工業株式会社製「OCD T−7 5500T」をエタノールで希釈したものを用いた。次に、スパッタリング法により、捕捉層41としてITO層(厚み10nm)を保護層30の上に積層した。このようにして、保護層30の厚みが異なる5つのセンサーチップ(実施例1a,1b,1c,1d,1e)を作製した。実施例1a,1b,1c,1d,1eの保護層30の厚みは、それぞれ10nm,30nm,50nm,80nm,150nmとした。
[比較例1:蛍光物質で標識化したヌクレオチドを被検出物質とするセンサーチップ]
金属系粒子集合体層を形成しないことと、保護層30の厚みを150nmとしたこと以外は実施例1と同様にしてセンサーチップを作製した。
[実施例1及び比較例1の発光増強効果の評価]
実施例1b及び比較例1のセンサーチップの表面に、蛍光物質Cy3を結合させたシチジン三リン酸(CTP)を含む溶液を回転数2000rpmでスピンコートし、その後乾燥させた。蛍光物質Cy3を結合させたシチジン三リン酸(CTP)を含む溶液は以下のように調整した。パーキンエルマー社製蛍光標識ヌボヌクレオチド(製品名:CTP analogs Cyanine 3-CTP、製品コード:NEL580001EA)に200μLのエタノールを投入し攪拌した。この溶液を100μL測り取り800μLのエタノールで希釈することによって、蛍光物質Cy3を結合させたシチジン三リン酸(CTP)を含む溶液を得た。かかる工程により、捕捉層40の表面にCy3−CTPが捕捉された。その後、図3に示すセンシングシステムにおいて、分光測定器9として蛍光分光光度計(商品名:FP-6500、日本分光社製)を用いて発光スペクトルを測定した。励起光源の波長は532nmとした。
図8は、実施例1b及び比較例1のセンサーチップを用いて測定された発光スペクトルを示す。実施例1bのセンサーチップで観測される発光スペクトルの積分値(波長545nmから波長755nm)で表される発光強度は、比較例1のセンサーチップで観測される発光スペクトルの積分値(波長545nmから波長755nm)で表される発光強度の10.1倍を示すことが確認された。
実施例1a,1c,1d,1eについても同様に発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルについて、発光スペクトルの積分値(波長545nmから波長755nm)で表される発光強度を比較例1の発光強度を1とした場合の値に換算した値を算出した。図9は、発光強度の上記換算値を、保護層の平均厚みと捕捉層の平均厚みを足し合わせた値に対してプロットした図である。図9より、捕捉層41の平均厚みが10nmである場合は、保護層の平均厚みが10〜150nm(保護層の平均厚みに捕捉層の平均厚みを足し合わせた場合は20〜160nmn)である範囲において発光増強効果が得られ、保護層の平均厚みが30nmである場合が最も高い発光増強効果が得られることがわかった。かかる結果より、標識物質である蛍光物質が捕捉層のほぼ表面に存在していると仮定した場合は、金属系粒子集合体層の表面から標識物質までの距離が20〜160nmである場合に発光増強効果が得られることがわかる。なお、本評価では、被検出物質として蛍光物質Cy3を結合させたシチジン三リン酸(CTP)を用いており、CTPの分子量が483であることに鑑みても蛍光物質Cy3が捕捉層のほぼ表面に存在していると仮定して問題ないものと考える。