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JP6901090B2 - 酸化ストレス抑制剤の製造方法および酸化ストレス抑制剤 - Google Patents
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JP6901090B2 - 酸化ストレス抑制剤の製造方法および酸化ストレス抑制剤 - Google Patents

酸化ストレス抑制剤の製造方法および酸化ストレス抑制剤 Download PDF

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本発明は、海洋深層水から得たニガリに由来する酸化ストレス抑制剤の製造方法および酸化ストレス抑制剤に関する。
細胞が要求する多様な培養条件を満たす細胞培養培地として、海洋深層水を含む培地が知られている(特許文献1)。海洋深層水とは、一般に、深度200メートル以深の深海に分布する海水を意味し、表層海水と同様に、無機栄養塩類が豊富であり、低温安定性が高いなどの特徴を有する。特許文献1の実施例1では、海洋深層水に粉末のRPMI培地を溶解し、抗生物質、グルタミン酸、炭酸水素ナトリウム、終濃度10%のFBSを添加して、海洋深層水含有DMEM培地を作製している。この培地を用いてヒト初代線維芽細胞を培養したところ、海洋深層水濃度が10〜20%に調整された培地条件で細胞増殖が観察されたという。なお、同特許文献の実施例3では、海洋深層水を使用して無血清・海洋深層水含有DMEM培地を作製してヒト初代線維芽細胞を培養したところ、海洋深層水濃度が30%に調整された培地条件では細胞の増殖抑制が観察されたという。
また、海洋深層水の無機塩を90重量%以上分離した後に濃縮して析出物等を荷電モザイク膜により分離し、有機物質の総合量が0.1〜10重量%かつ無機塩の含有量が100ppm以下の、細胞活性物質を高濃度で含有する細胞活性物質の製造方法もある(特許文献2)。前記細胞活性物質は、所定条件のゲル濾過クロマトグラフィー分析による紫外線検出によって、分子量100万以上、分子量3万〜100万、分子量5000〜3万、または分子量5000以下のいずれかの画分にピークを有し、皮膚細胞および/または免疫細胞を活性化するという。実施例では、メンブランフィルターでろ過した駿河湾沖の海洋深層水を減圧蒸留して溶存する無機塩を析出させ、析出物をろ過し、得られたろ液をモザイク荷電膜で脱塩し、次いで、減圧蒸留、析出物のろ過を繰り返して濃縮物を得ている。
更に、電解質と非電解質とを含有する海洋深層水を、荷電モザイク膜を介して該海洋深層水よりも電解質濃度の低い水と接触させて、該海洋深層水中の電解質を、海洋深層水よりも電解質濃度の低い水に選択的に移動させて、電解質と非電解質とを分離することを特徴とする、線維芽細胞活性深層水の製造方法もある(特許文献3)。海水の脱塩方法により線維芽細胞等に対する活性が異なり、荷電モザイク膜によれば、熱、応力、電気などの外部エネルギーを付与せず含まれる電解質を分離できるため、線維芽細胞に対する相対的活性化度が高いという。実施例では、海洋深層水とイオン交換蒸留水との間に荷電モザイク膜を介して脱塩し、元の海洋深層水の容積の5%まで濃縮して細胞活性物質を得て細胞活性化を評価している。荷電モザイク膜に代えて電気透析膜(比較例1)や、限外濾過脱塩装置(比較例3)を使用して得た細胞活性物質と比較して、細胞相対活性が約2倍高いという。
更に、皮膚の水分量やキメ及び/又は角層細胞状態を改善する方法であって、海洋深層水をナノフィルター膜の透過液を濃縮して海洋深層水濃縮物を得て、これを皮膚細胞に適用する方法もある(特許文献4)。海洋深層水の濃縮方法及びその濃縮の程度によって、濃縮物中の成分比及び成分量に大きな差が生じるが、上記した特定の方法で濃縮した海洋深層水は、サイトカインの産生及び線維芽細胞の増殖を伴う細胞賦活作用を有するという。実施例2では、鹿児島県与論島太平洋側沖の海洋深層水を、ナノフィルター膜を使用して脱塩し、減圧蒸留により析出物を得た後これをろ過してろ液を回収し、前記減圧蒸留およびろ過を繰り返して濃縮し、海洋深層水濃縮物を得ている。実施例13では、10%牛胎児血清含有D−MEMで正常ヒト新生児由来の線維芽細胞を24時間培養し、実施例2で得た海洋深層水濃縮物(14倍〜50倍)を添加し、2日間培養し、賦活活性を評価している。その結果、海洋深層水濃縮物が14、25、41倍の濃度範囲で、MTT試験により濃度依存的に賦活作用が向上するという。なお、実施例14において、ニガリによる比較試験を行っているが、ニガリよりも、上記海洋深層水濃縮物(30〜45倍)を培地に添加した方が線維芽細胞の賦活効果が高いという結果を得ている。
海水の塩類濃度は約3.5質量%である。海水に含まれる無機塩を除去するために前記特許文献2、特許文献3は荷電モザイク膜を使用し、特許文献4ではナノフィルター膜を使用して脱塩した脱塩水を使用している。一方、海水の濃縮塩溶液を更に濃縮すると塩の結晶と、塩化マグネシウムを主成分とするニガリ(液)とに分離する。ニガリの製造装置として、一次分離部で淡水と濃縮深層水とに分離し、二次分離部で濃縮深層水を濃塩水とミネラル濃縮液とに分離する多段式電気透析装置がある(特許文献5)。得られた濃縮深層水を更に濃縮すると、塩が結晶析出した上澄み液をニガリとして回収することができる。
特開2003−334066号公報 特許第4601891号公報 特許第4679773号公報 特許第5500757号公報 特開2005−287311号公報
山嵜博未等、"4Nrf2の抗老化因子としての役割"、循環制御、第38巻、第1号、p21−23、(2017)
上記特許文献1〜4は、海水由来成分の細胞増殖活性を評価するものであるが、作用機序は不明である。一方、Nrf2(NF−E2−related factor2)が、活性酸素などの反応性分子種で活性化するストレス応答性転写因子であることが知られている(非特許文献1)。定常状態では、Nrf2は細胞質においてKelch−like ECH−associated protein1(Keap1)と結合し、ユビキチン化修飾を受けプロテアソームにより分解されるが、Keap1が活性酸素種などによる酸化修飾を受けると、Nrf2のユビキチン化が停止し、分解を免れたNrf2が核移行し標的遺伝子群を活性化するという。Nrf2の標的遺伝子にはグルタチオン転移酵素やキノンオキシドレダクターゼなどの解毒代謝酵素、ヘムオキシゲナーゼやチオレドキシン還元酵素などの抗酸化遺伝子、薬物輸送遺伝子、抗炎症性遺伝子などがあり、これら遺伝子を統一的に活性化することで酸化ストレス下での恒常性が維持される。細胞培養の際に、酸化ストレスを抑制することができれば、細胞増殖率の如何を問わず、健常な細胞が生育できる環境を提供することができる。特に、加齢とともに抗酸化力が低下し、Nrf2の活性も加齢とともに低下することが知られているが、組織幹細胞の老化にも同様の現象が生じ、加齢に伴う臓器機能低下とつながっている。したがって、細胞の酸化ストレスに対する抵抗性を向上させ、または酸化ストレスを抑制できる酸化ストレス抑制剤の開発が望まれる。
一方、海洋深層水には未知の微量有機物が存在している可能性がある。上記特許文献2〜4は海洋深層水を使用し、または所定の方法で脱塩・濃縮した海洋深層水濃縮液を使用している。上記したように、海洋深層水を原料とするものとしてニガリがあり、製塩工程で生成する副産物である。ニガリから有効成分が抽出できれば、ニガリの有効利用となる。したがって、ニガリ由来の酸化ストレス抑制剤の開発が望まれる。
更に、特許文献4が記載するように、海洋深層水の濃縮方法や濃縮の程度によって濃縮物中の成分比や成分含有量が相違する。前記特許文献4ではニガリによる比較試験を行い、ナノフィルター膜透過液の濃縮液の方がニガリよりも線維芽細胞の賦活効果が高いと記載している。特許文献4は使用したニガリの調製方法を記載していないが、ニガリから特定処理を経た溶液を酸化ストレス抑制剤として使用できれば、製塩工程で得られる大量のニガリを原料とできるため安定供給が可能となる。したがって、海洋深層水由来のニガリを原料とする酸化ストレス抑制剤の開発が望まれる。
上記現状に鑑みて、本発明は、海洋深層水から得たニガリを原料とする酸化ストレス抑制剤の製造方法、および酸化ストレス抑制剤を提供することを目的とする。
本発明者等は、海洋深層水から得たニガリについて詳細に検討した結果、含まれるマグネシウムとアルコール不溶成分を除去し、およびろ過滅菌して得られた溶液は、酸化ストレス抑制剤として使用できること、当該酸化ストレス抑制剤を添加して動物細胞を培養するとストレスフリーの環境下でNrf2タンパク質の核内移行を誘導できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、海洋深層水から得たニガリにアルカリ金属の炭酸塩を添加した後沈殿物を除去してニガリ由来Mg除去液を調製する工程と、前記ニガリ由来Mg除去液に炭素数1〜5のアルコールを添加して析出物を除去してニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を調製する工程と、前記ニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を除菌する工程とを含むことを特徴とする、酸化ストレス抑制剤の製造方法を提供するものである。
また本発明は、前記ニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を除菌する工程についで、除菌後のニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を乾燥する工程を含む、前記酸化ストレス抑制剤の製造方法を提供するものである。
また本発明は、前記ニガリは、海洋深層水の天然製塩時に得る天然系ニガリ、海洋深層水をイオン交換膜電気透析法により分離した濃塩水から得るイオン交換膜電気透析法系ニガリ、海洋深層水を逆浸透膜装置により分離した濃縮海水から得る逆浸透膜系ニガリのいずれかである、前記酸化ストレス抑制剤の製造方法を提供するものである。
更に、本発明は、海洋深層水の天然製塩時に得る天然系ニガリに含まれるマグネシウムが炭酸マグネシウムとして沈殿除去され、かつアルコール不溶性物質が析出除去された、セリン/プロリンのモル比が5〜50であり、プロリン含有量が150〜500nMである酸化ストレス抑制剤を提供するものである。
また本発明は、転写因子Nrf2を活性化することを特徴とする、前記酸化ストレス抑制剤を提供するものである。
本発明によれば、海洋深層水から得たニガリを原料として、酸化ストレス抑制を製造することができる。この酸化ストレス抑制は、培養細胞の転写因子Nrf2を活性化することができる。
本発明の酸化ストレス抑制剤の製造工程を示す図である。 実施例3の結果を示す図であり、図2(A)は対照培地、図2(B)は酸化ストレス抑制剤含有培地を添加した結果である。本発明の酸化ストレス抑制剤を添加してHaCaT細胞を培養すると、Nrf2タンパク質の核内移行が観察された。 実施例4の結果を示す図であり、図3(A)は、対照(対照培地)および実施例(酸化ストレス抑制剤含有培地)の細胞質および核分画のフィブリラリン検出の結を、図3(B)は、細胞質および核分画のNrf2検出の結果および細胞質におけるβ−アクチン検出の結果を示す。本発明の酸化ストレス抑制剤を添加してMCF−7細胞を培養し、細胞質と核分画とに分離すると、核分画にてNrf2タンパク質のバンドが観察されたが、細胞質ではバンドが観察されなかった。
本発明の第一は、海洋深層水から得たニガリにアルカリ金属の炭酸塩を添加した後沈殿物を除去してニガリ由来Mg除去液を調製する工程と、前記ニガリ由来Mg除去液に炭素数1〜5のアルコールを添加して析出物を除去してニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を調製する工程と、前記ニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を除菌する工程とを含むことを特徴とする、酸化ストレス抑制剤の製造方法である。以下、本発明を詳細に説明する。
(1)ニガリ
本発明で使用するニガリは、海洋深層水から得たニガリである。ニガリは、一般に、海水から塩を作る際にできる塩化マグネシウムを主成分とする液体である。海水には、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムなどが溶解しているが、例えば、海洋深層水を加熱して濃縮すると、まず硫酸カルシウムや塩化ナトリウムが析出する。これらを除去した残り液、すなわち、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウムその他のミネラルを含んだ飽和溶液がニガリとなる。
一方、海水の濃縮方法として、上記した加熱濃縮とは別に逆浸透膜を使用する方法もある。逆浸透膜の内外で、脱塩水と濃縮塩溶液とが別個に形成される。濃縮塩溶液を更に濃縮すると塩が結晶化するが、結晶が沈殿する際に生じる上澄み液をニガリとして回収することができる。
また、イオン交換膜電気透析法により濃縮する方法もある。陽イオン交換膜(カチオン膜)と陰イオン交換膜(アニオン膜)とを交互に並べた多室電気透析槽に海水を供給しながら直流電圧を通じると、電位差により陽イオンは陰極側に、陰イオンは陽極側に移動し、イオンの濃縮室と脱塩室が形成される。脱塩室には脱塩水が集積し、濃縮室には濃縮塩溶液が集積する。この濃縮塩溶液を更に濃縮して塩を結晶化させると、結晶が沈殿する際に生じる上澄み液をニガリとして回収することができる。
本発明で使用するニガリは、海洋深層水から得られるものであれば、海洋深層水の天然製塩時に得る天然系ニガリ、海洋深層水をイオン交換膜電気透析法により分離した濃塩水から得るイオン交換膜電気透析系ニガリ、海洋深層水を逆浸透膜装置により分離した濃縮海水から得る逆浸透膜系ニガリ、その他のニガリのいずれかでもよい。より好ましくは、海洋深層水の天然製塩時に得る天然系ニガリや、海洋深層水をイオン交換膜電気透析法により分離した濃塩水から得るイオン交換膜電気透析系ニガリである。なお、本願において、海洋深層水とは、深度200メートル以深の深海に分布する海水を意味するものとする。
(2)酸化ストレス抑制剤の製造方法
図1に本発明の酸化ストレス抑制剤の製造方法の一例を示す。海洋深層水から得たニガリにアルカリ金属炭酸塩を添加すると、ニガリに含まれるミネラルとアルカリ金属炭酸塩を構成する炭酸イオンとが結合して炭酸塩として沈殿する。添加するアルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム(溶解度:1.54g/100cm水(0℃))、炭酸ナトリウム(溶解度:29.4g/100cm水(25℃))、炭酸カリウム(溶解度:112.1g/100cm水(25℃))、炭酸ルビジウム(溶解度:450g/100cm水(20℃))、炭酸セシウム(溶解度:260.5g/100cm水(15℃))、炭酸フランシウムなどがある。沈殿形成性に優れ、かつ安価である点で炭酸ナトリウム、炭酸カリウムを使用することが好ましい。
アルカリ金属炭酸塩の添加量は、予めニガリに含まれるマグネシウムイオン濃度その他のミネラル濃度を測定し、炭酸マグネシウムとして沈殿させるに適当な量を算出して使用することができる。この場合、アルカリ金属炭酸塩をそのままニガリに添加してもよいが、アルカリ金属炭酸塩を水に溶解してアルカリ金属炭酸塩水溶液とし、ニガリに添加してもよい。また、ニガリに水を加えてニガリ希釈液を調製し、これにアルカリ金属炭酸塩を添加し、またはニガリ希釈液にアルカリ金属炭酸塩水溶液を添加してもよい。予めニガリに含まれるマグネシウム等の濃度を測定することで、炭酸塩の生成に好適な条件を設定することができる。好ましくは、原料である海洋深層水に、炭酸塩を形成せず、アルコールにより沈殿しない成分Aが含まれ、成分Aの全量がニガリに移行したと仮定した場合に、成分Aの濃度が、海洋深層水に含まれる成分Aの濃度の10〜100倍に濃縮され、より好ましくは20〜80倍に濃縮された条件でアルカリ金属炭酸塩による沈殿形成を行う。この範囲であれば、効率的にニガリの主成分であるマグネシウムイオンから炭酸マグネシウムの沈殿を形成することができる。
生成する炭酸塩は、主として炭酸マグネシウムである。これをろ過、吸引ろ過、遠心分離等により分離し、ろ液または沈殿の上清を回収する。この回収液を、ニガリ由来Mg除去液とする。アルカリ金属炭酸塩の添加によってニガリ由来Mg除去液がアルカリ性となっている場合は、塩酸その他を添加してpHを中性に調整することが好ましい。
次いで、ニガリ由来Mg除去液に炭素数1〜5のアルコールを添加する。これにより微量に含まれる塩化ナトリウムなどの塩類やその他のアルコール不溶物質を析出させる。なお、ニガリ由来Mg除去液に含まれる塩化ナトリウムなどの塩類や有機物の含有量にもよるが、アルコールを添加する前に、ニガリ由来Mg除去液を濃縮しておくことが好ましい。濃縮の程度は、海洋深層水に含まれる成分Aが全量ニガリ由来Mg除去液に移行したと仮定した場合に、成分Aの濃度が、海洋深層水の成分Aの濃度の50〜300倍に濃縮され、より好ましくは80〜200倍に濃縮された条件でアルコール添加による不溶物の析出形成を行う。ニガリ由来Mg除去液の濃縮としては、例えばエバポレーターその他による減圧濃縮法、凍結乾燥法がある。
炭素数1〜5のアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール(1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール)、ペンチルアルコール(1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール)があり、いずれでもよい。好ましくは、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールであり、特に好ましくはエチルアルコールである。アルコールにより蛋白質が変性して沈殿し、および残存する塩化ナトリウム、その他の塩類が沈殿する。
添加するアルコール量は、重量換算で、ニガリ由来Mg除去液の上記濃縮液の1〜20倍量、より好ましくは2〜10倍量である。この範囲であれば、効率的にタンパク変性や塩析を行い沈殿物を得ることができる。
析出した沈殿をろ過、遠心分離等により分離し、ろ液または沈殿の上清を回収する。回収液は、ニガリ由来アルコール不溶性物質除去液となる。ニガリ由来アルコール不溶性物質除去液は、pHを確認しpH5.5〜8の中性近傍に調整することが好ましい。
次いで、得られたニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を除菌する。除菌は、例えば目開き0.2〜0.5μmのメンブランフィルターによるろ過などで行うことができる。なお、除菌に先立ち、ニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を濃縮すると、除菌作業が容易となる。このような濃縮方法としては特に制限はないが、例えば濃縮乾固、凍結乾燥等により乾燥物を得た後に水に再溶解し、濃縮液を調製する方法がある。濃縮の程度は、海洋深層水に含まれる成分Aの全量がニガリ由来アルコール不溶性物質除去液に移行したと仮定した場合に、濃縮液に含まれる成分Aの濃度が、海洋深層水の成分Aの濃度の200〜10,000倍に濃縮され、より好ましくは300〜7,000倍、より好ましくは400〜5,000倍に濃縮される程度である。上記除菌によって回収された溶液は、酸化ストレス抑制剤として使用することができる。
本発明の酸化ストレス抑制剤は、前記したニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を除菌する工程についで、除菌後のニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を乾燥する工程を含むものであってもよい。乾燥後に粉砕し、または造粒して、粉末、顆粒その他に調製してもよい。乾燥により保存性が向上する。
(3)酸化ストレス抑制剤
本発明の酸化ストレス抑制剤は、上記によって製造されたものである。
また、海洋深層水の天然製塩時に得る天然系ニガリに含まれるマグネシウムが炭酸マグネシウムとして沈殿除去され、かつアルコール不溶性物質が析出除去された、セリン/プロリンのモル比が5〜50、より好ましくは10〜30であり、プロリン含有量が150〜500nM、より好ましくは200〜500nMである溶液でもよい。後記する実施例に示すように、上記製造方法で調製した酸化ストレス抑制剤のアミノ酸成分を測定したところ、同量の海洋深層水を濃縮した場合のプロリン含有量などに相違があることが判明した。プロリンに対するセリンのモル比(セリン/プロリン)を評価したところ、海洋深層水では55であり、表層海水では102であった。これに対し、本発明の酸化ストレス抑制剤では、10.4〜19.9であり、プロリン含有量が著しく高いことが判明した。この酸化ストレス抑制剤を細胞培養培地に添加して培養すると、Nrf2タンパク質の核内移行が誘導されるなど、酸化ストレスを抑制し得ることが判明した。
本発明の酸化ストレス抑制剤は、細胞培養の際に培地に添加して、細胞培養液成分として使用することができる。その他、アンチエイジング用外用剤医薬品または、化粧品成分として使用することができる。
抗酸化たんぱく質の遺伝子発現が、転写因子Nrf2(NF−E2−related factor2)によって制御されることは公知である。転写因子Nrf2は反応性分子種により活性化するストレス応答性転写因子である。非ストレス下では、転写因子Nrf2によって誘導されたNrf2タンパク質は細胞質内でKeap1(Kelch−like ECH−associated protein1)と結合し、ユビキチン化修飾を受けプロテアソームにより分解される。一方、Keap1が親電子性物質や活性酸素種による酸化修飾を受けると、Nrf2タンパク質のユビキチン化が停止し、分解を免れたNrf2タンパク質が核移行し標的遺伝子群を活性化する。Nrf2タンパク質の標的遺伝子にはグルタチオン転移酵素やキノンオキシドレダクターゼなどの解毒代謝酵素、ヘムオキシゲナーゼやチオレドキシン還元酵素などの抗酸化遺伝子、薬物輸送遺伝子、抗炎症性遺伝子などがあり、これら遺伝子を統一的に活性化することで、酸化ストレス下での恒常性が維持される。後記する実施例に示すように、本発明の酸化ストレス抑制剤を培地に添加して培養したHaCaT細胞やMCF−7細胞は、ストレスフリーの培養環境でNrf2タンパク質の細胞核内移行率を上昇させた。このことは、本発明の酸化ストレス抑制剤には、Keap1を分解し、またはKeap1の酸化修飾を促進するなどのKeap1との結合を阻害する物質や、Nrf2のユビキチン化を抑制する物質、または、ユビキチン化Nrf2の分解を抑制する物質など、何等かのNrf2タンパク質の核移行を促進する物質が含まれることが判明した。その結果、本発明の酸化ストレス抑制剤は、抗酸化遺伝子、薬物輸送遺伝子、抗炎症性遺伝子などの標的遺伝子を統一的に活性化し、酸化ストレス剤として使用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1:酸化ストレス抑制剤の製造)
富山湾で採取した海面下200メートル以深の海洋深層水を熱蒸留により塩化ナトリウムが結晶化して沈殿する際に生じる上澄み液をニガリとして使用した。海洋深層水120Lから500mlのニガリを得た。
ニガリ500mlに水500mlを加えて撹拌し、次いで1mol/mの炭酸ナトリウム水溶液2Lに溶解した加えて撹拌した。生成した沈殿をろ紙(No.2)を使用して吸引ろ過し、ろ液を回収した。1NのHCl溶液を添加してpHを7に調整した後、エバポレーターで液量が1/3量になるまで減圧濃縮した。次いで、エタノール200mlを加えて析出した沈殿をろ紙(No.2)を使用して吸引ろ過し、ろ液を回収した。再度pHを7に調整し、エバポレーターで濃縮乾固した。水40mlを加えて乾固物を溶解し、目開き0.2μmのメンブランフィルターでろ過除菌を行い、ろ液を回収した。得られたろ液を酸化ストレス抑制剤とする。この酸化ストレス抑制剤の海洋深層水からの濃縮率は3,000倍となる。
(実施例2:含有アミノ酸の分析)
実施例1で得た酸化ストレス抑制剤(サンプル1、サンプル2)を下記に示すFmoc−LC−MS法でアミノ酸を分析した。また、富山湾の表層水を3,000倍に濃縮した溶液、および富山湾で採取した海面下200メートル以深の海洋深層水を3,000倍に濃縮した溶液も同様に処理してアミノ酸を分析した。結果を表1に示す。
Figure 0006901090
(Fmoc−LC−MS法)
試料溶液に、0.1Mの四ホウ酸ナトリウム水溶液5mlを添加してpH10.5に調整し、100ppmFmoc−Cl((9H−Fluoren−9−ylmethoxy)carbonyl Chloride)のアセトニトリル溶液2mlを添加し、室温で15分間静置し、Fmoc誘導体を含む反応液を形成した。反応液を、C18カラム(GL Sciences社製;容量1g/6ml)にアプライし、アセトニトリル5ml、1%ギ酸水溶液5mlを移動相として無機塩類を除去した。次いで、1%ギ酸含有アセトニトリル溶液5mlでFmoc誘導体を溶出し、留出液を蒸発乾固した。
蒸発乾固した試料を、LC/MS用溶媒(0.1%ギ酸水溶液:0.1%ギ酸アセトニトリル=8:2)1mlに溶解し、LC/MS用試料を調製した。LC/MS解析は以下の条件で行った。
LC条件
カラム:ACQUITY UPLC BEHC18(2.1×100mm、1.7μm、Waters社製)
移動相:A:0.1% ギ酸水溶液、B:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液
グラジエント:A/B:80/20→40/60(8分)→10/90(10分)→2/98(11分)→2/98(12分)→80/20(12.10分)
カラム温度:40℃、
流速:0.4ml/分
注入量:5μl
MS条件
イオンモード:Electrospray Positive
キャピラリー電圧:2.0kV
エクストラクター電圧:3V
RFレンズ 電圧:2.5V
ソース温度:150℃
デソルベーション温度:400℃
コーン/デソルベーション ガス流量:50/800 L/Hr
MS/ドータースキャンレンジ:m/z150〜1200
コーン電圧:15〜20V
コリジョンエネジー:15〜25eV
(実施例3:HaCaT細胞を用いた転写因子Nrf2の核内移行)
HaCaTの転写因子Nrf2の核内移行について検証した。
RPMI1640培地(100U/mlペニシリン(シグマ)、100μg/mlストレプトマイシン(シグマ))を対照培地とし、対照培地を調製する際に使用した溶解液の一部を実施例1で製造した酸化ストレス抑制剤に代えて、酸化ストレス抑制剤を0.2重量%含有する酸化ストレス抑制剤含有培地を調製した。
2枚の6cmディッシュにHaCaT細胞を40,000細胞/cm濃度で播種し、成長培地DMEM(ペニシリンストレプトマイシン、10%FBS)で一晩培養した後、PBSで3回洗浄した。ディッシュに、対照培地、または酸化ストレス抑制剤含有培地を3.5ml添加し、48時間培養した。その後、各ディッシュをPBSで3回洗浄した。
次いで、各ディッシュの細胞をセルスクレーパーを用いて剥離後、綿棒チューブ(アジア機材:S5000S−10)に分注し、1,500rpm、5分遠心して上清を捨て、フォルマリンメタノールを2mL添加して2時間放置した。これを1,500rpm、5分遠心し、上清を捨て、1%アルギン酸ナトリウム1mLを添加しボルテックスミキサーで混和した。その後、1,500rpm、5分で遠心し、上清を捨てて再度1%アルギン酸ナトリウムを1mL添加しボルテックスミキサーで混和した。次いで、1,500rpm、5分で遠心し、上清を捨てて静かに1Mの塩化カルシウム溶液を添加した。1時間以上放置し、綿棒チューブから細胞塊を回収し、常法に従いパラフィン包埋した。
次いで、パラフィン包埋物を用いて常法に従い、デキストランポリマーによる間接法により免疫染色を行った。抗体としてNrf2抗体(Abcam Inc.(Cambridge,MA)のウサギモノクローナル抗体EP1809Y(商品番号ab76026)を使用した。評価方法は、目視により、数視野における陽性率で評価した。結果を、図2に示す。図2(A)は対照培地、(B)は酸化ストレス抑制剤含有培地を添加した結果である。酸化ストレス抑制剤含有培地のみに15%程度のNrf2タンパク核内移行が認められた。
上記培養条件は、対照培地を使用する場合も、培地に実施例1の酸化ストレス抑制剤を添加した場合もストレスフリーの条件である。HaCaTは、成人男性の皮膚から樹立され、皮膚の研究に広く用いられているヒト表皮角化細胞由来の細胞株である。実施例1の酸化ストレス抑制剤は、ストレスが無い場合でも、HaCaTに対して転写因子Nrf2を活性化できることが示唆された。
(実施例4:MCF−7細胞を用いた転写因子Nrf2の核内移行)
培養細胞を細胞質と核分画とに分離し、転写因子Nrf2が何れに移行するかを確認した。
凍結保存されたMCF−7細胞を37℃で解凍し、増殖培地(シグマ社製DMEM ハイグルコース(シグマ)/10%、FBS(BioWest))10mlを添加して1,000rpmで3分間遠心し、上清を除去しMCF−7細胞を回収した。細胞塊に前記増殖培地10mlを添加して懸濁し、10cmディッシュに播種し、一晩培養した。これを、PBS10mlで1回洗浄し、トリプシン溶液(シグマ)1mlを加え、37℃で2分間インキュベートした。前記増殖培地10mlをディッシュに加えて細胞懸濁液を15ml遠沈管に回収し、1,000rpmで3分間遠心し、細胞塊を得た。10cmディッシュに細胞を70%コンフルーエントで播種し、一晩培養した。次いで、PBSで2回洗浄した。これを3組用意し、それぞれに実施例3で使用した対照培地、または酸化ストレス抑制剤含有培地を添加し、48時間培養した。次いで、PBSで3回洗浄し、セルスクレイパーで細胞をかきとり、1.5mlエッペンチューブに移し、15,000rpm、20分間、4℃で遠心した。細胞を回収し、NE−PER Nuclear and Cytoplasmic Extraction Reagents(Thermo Scientific)を用いて細胞質画分、核分画を調製した。
各画分調製物に2×サンプルバッファー(0.1Mトリス、4%SDS、10%グリセロール、12%β−メルカプトエタノール、ブロモエチルブルーq.l.、全てWako)を等量加え、密閉式超音波ホモジナイザー(マイクロテック・ニチオンNR−220)で1分間超音波処理後、95℃で5分間加熱し、ウェスタンブロット用試料を得た。
次いで、ウェスタンブロット;5−20% グラジエントゲル(Wako)に細胞溶解液を10μl/ウェルアプライし、30mAで60分間電気泳動(泳動バッファー:Tris 25mM、グリシン192mM、0.1%SDS、全てWako)した。これをフッ化ポリビニリデン膜(メルク)に転写(転写バッファー:トリス25mM、グリシン192mM、200mA、45分間)し、5%ミルク(Difco)、0.05%Tween20(Wako)/TS(Tris20mM、NaCl 150mM(Wako))、室温、1時間でブロッキングした。1次抗体処理として、抗β−アクチン抗体(シグマ、2000倍希釈/ブロッキングバッファー)、抗Nrf2抗体(Abcam、10000倍希釈/ブロッキングバッファー)、抗フィブリラリン抗体(Abcam、2000倍希釈)を添加して4℃、一晩処理し、0.1%Tween20/TSで3回洗浄(それぞれ室温、5分間)した。次いで、2次抗体処理として、HRP標識(セルシグナリング、5000倍希釈/ブロッキングバッファー)にて室温、1時間処理した。その後、0.1%Tween20/TSで3回洗浄した。これに、化学発光試薬ImmunoStar LD(Wako)を用い、Amersham Imager 600(GEヘルスケア)でイメージを取得した。結果を図3に示す。
図3(A)は、対照(対照培地)および実施例(酸化ストレス抑制剤含有培地)の細胞質および核分画のフィブリラリン検出の結果であり、図3(B)は、細胞質および核分画のNrf2検出の結果および細胞質におけるβ−アクチン検出の結果を示す。図3(A)に示すように、対照、および実施例において、核小体に特異的なタンパク質であるフィブリラリンは、核分画にのみ検出された。
対照培地、および酸化ストレス抑制剤含有培地には、いずれもFBSその他の血清成分が含まれていない。図3(B)に示すように、対照では、Nrf2の核分画への移行が低く細胞質に強いバンドが示されるが、実施例では細胞質よりも核分画にNrf2のバンドが強く検出された。酸化ストレスなどの刺激により転写因子Nrf2が核内へ移行し、これにより細胞がストレスに対する抵抗性を獲得することが知られている。本願発明の酸化ストレス抑制剤は、血清を含まない培養条件でも、MCF−7細胞に対して顕著に転写因子Nrf2の核内移行を起こすことが明確になった。なお、MCF−7細胞は乳がん細胞株であるが、対照培地では転写因子Nrf2の核内移行は観察されていない。したがって、本発明の酸化ストレス抑制剤の添加による転写因子Nrf2の核内移行は、癌細胞に由来するものではない。

Claims (5)

  1. 海洋深層水から得たニガリにアルカリ金属の炭酸塩を添加した後沈殿物を除去してニガリ由来Mg除去液を調製する工程と、前記ニガリ由来Mg除去液に炭素数1〜5のアルコールを添加して析出物を除去してニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を調製する工程と、前記ニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を除菌する工程とを含むことを特徴とする、酸化ストレス抑制剤の製造方法。
  2. 前記ニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を除菌する工程についで、除菌後のニガリ由来アルコール不溶性物質除去液を乾燥する工程を含む、請求項1記載の酸化ストレス抑制剤の製造方法。
  3. 前記ニガリは、海洋深層水の天然製塩時に得る天然系ニガリ、海洋深層水をイオン交換膜電気透析法により分離した濃塩水から得るイオン交換膜電気透析法系ニガリ、海洋深層水を逆浸透膜装置により分離した濃縮海水から得る逆浸透膜系ニガリのいずれかである、請求項1または2記載の酸化ストレス抑制剤の製造方法。
  4. 海洋深層水の天然製塩時に得る天然系ニガリに含まれるマグネシウムが炭酸マグネシウムとして沈殿除去され、かつアルコール不溶性物質が析出除去された、セリン/プロリンのモル比が5〜50であり、プロリン含有量が150〜500nMである酸化ストレス抑制剤。
  5. 転写因子Nrf2を活性化することを特徴とする、請求項4記載の酸化ストレス抑制剤。
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