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JP6904303B2 - 正極合材の製造方法 - Google Patents
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Description

本願は、全固体リチウム硫黄電池用の正極合材の製造方法を開示するものである。
硫黄は高い理論電気化学容量を有するため、硫黄を正極活物質として用いたリチウム硫黄電池の開発が進められている。
特許文献1には固体電解質としてLiS−P系硫化物固体電解質、硫黄及び/又はその放電生成物(LiS等)、及び、導電助材を用い、これらをメカニカルミリング処理して作製した全固体リチウム硫黄電池用正極合材が開示されている。特許文献2には、LiSとPとLiBrとを含む第一混合物を非晶質化する第一非晶質化工程と、非晶質化した第一混合物と、正極活物質としての単体硫黄と、炭素を含む導電助材と、を含む第二混合物を非晶質化する第二非晶質化工程を含む正極合材の製造方法が開示されている。
特開2015−5452号公報 特開2017−91810号公報
特許文献1に記載の方法では、正極活物質と固体電解質との間に空隙が多く、可逆放電容量が抑制される虞があった。これは特許文献1、2を組み合わせたとしても解決できない課題であった。
そこで、本願では可逆放電容量が高い全固体リチウム硫黄電池用の正極合材の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、メカニカルミリング処理を行って形成された複合体に対して、非酸素条件下、300℃〜500℃で熱処理することにより、製造される正極合材中の空隙率を低下させ、可逆放電容量を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本願は上記課題を解決する1つの手段として、LiSを含む正極活物質と、固体電解質と、導電助材とを含む原料混合物に対してメカニカルミリング処理を行い、複合体を形成する工程と、複合体を非酸素条件下、300℃〜500℃で熱処理する工程と、を含む、全固体リチウム硫黄電池用正極合材の製造方法を開示する。
本願が開示する製造方法によれば、可逆放電容量の高い全固体リチウム硫黄電池用の正極合材を製造することができる。
製造方法10のフローチャートである。 実施例1、2及び比較例1〜3の放電容量密度を示したグラフである。 実施例1及び比較例1の正極断面のSEM画像である。
以下において数値A及びBについて「A〜B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。
1.正極合材の製造方法
本願は全固体リチウム硫黄電池用正極合材の製造方法10(以下において「製造方法10」ということがある。)を開示するものである。図1に製造方法10のフローチャートを示した。図1に示したように、製造方法10は複合体を形成する工程S1(以下において、「工程S1」ということがある。)と、複合体を熱処理する工程S2(以下において、「工程S2」ということがある。)とを備えている。
以下に、詳しく説明する。
1.1.工程S1
工程S1では、LiSを含む正極活物質と、固体電解質と、導電助材とを含む原料混合物に対してメカニカルミリング処理を行い、複合体を形成する。「複合体」とは、単に所定の成分が混合されたものではなく、所定の成分が混合されたものに機械的、熱的エネルギーが加えられ、所定の成分の全部または一部に化学反応が生じたものを言う。工程S1ではメカニカルミリング処理により原料混合物に機械的、熱的エネルギーを付与して複合体を形成させている。
1.1.1.原料混合物
ここで、工程S1における原料混合物について説明する。原料混合物は上記のとおり、LiSを含む正極活物質と、固体電解質と、導電助材とを含むものである。
正極活物質はLiSを含み、かつ、正極活物質として機能し得れば特に限定されない。例えば、LiSのみであってもよく、LiSと単体硫黄(S)との混合物であってもよい。好ましくはLiSのみからなる正極活物質である。原料混合物における正極活物質の割合は特に限定されるものではないが、下限が25質量%以上、上限が65質量%以下であることが好ましい。
固体電解質は全固体リチウム硫黄電池で使用可能な固体電解質であれば特に限定されない。ただし、有機ポリマー電解質と比較して高いイオン伝導度を有する観点から、無機固体電解質が好ましい。好ましい固体電解質としては、LiPO等の酸化物固体電解質やLiS−P、LiS−P−GeS(Li3.5Ge0.50.5)等の硫化物固体電解質のほか、LiBH等の水素化物固体電解質を例示することができる。イオン伝導度が高い等の観点から、これらの中でもLiS−P又はLiS−P−GeSを含む硫化物固体電解質が好ましい。特に好ましくはLiS−P−GeSを含む硫化物固体電解質である。原料混合物における固体電解質の割合は特に限定されるものではないが、下限が25質量%以上、上限が65質量%以下であることが好ましい。
導電助材は全固体リチウム硫黄電池の正極で使用可能な導電助材であれば、特に限定されない。例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)等の炭素材料や、ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料等を例示することができる。原料混合物における導電助材の割合は特に限定されるものではないが、下限が10質量%以上、上限が20質量%以下であることが好ましい。
また、原料混合物中には必要に応じてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)等のバインダーを添加することもできる。
1.1.2.メカニカルミリング処理
工程S1におけるメカニカルミリング処理は、湿式メカニカルミリングであってもよく、乾式メカニカルミリングであってもよい。メカニカルミリング処理は、例えばボールミル装置で行うことができ、好ましくは遊星型ボールミル装置である。
メカニカルミリングの各種条件は、原料混合物の全部または一部が化学反応を起こし、所望の複合体を形成させることができれば特に限定されず、目的に応じて適宜設定する。例えば、遊星型ボールミル装置を使用する場合には、回転数は150rpm〜600rpmの範囲であることが好ましい。処理時間は1時間〜100時間の範囲であることが好ましい。また、メカニカルミリングは非酸素条件下で行うことが好ましく、不活性化ガス雰囲気(例えば、Arガス雰囲気)下で行うことがより好ましい。
1.2.工程S2
工程S2では、工程S1で作製された複合体を熱処理(焼成)して、正極合材を作製する。熱処理は非酸素条件下で行い、好ましくは真空下で行う。ここで「非酸素条件下」とは、雰囲気中の酸素の割合が1000ppm以下であることを言う。また、熱処理温度は300℃〜500℃の範囲内で行う。熱処理時間は特に限定されないが、下限が1時間以上、上限が8時間以下であることが好ましい。
ここで、複合体を熱処理する理由について説明する。複合体はメカニカルミリング処理により混合された状態にある。すなわち、正極活物質に固体電解質及び導電助材が接触して、Liイオン伝導パスが確保された状態にある。しかしながら、メカニカルミリング処理のみでは複合体内に空隙が多く、Liイオン伝導パスをより多く確保する観点から改善の余地があった。そこで、本発明者は、複合体に対して所定の条件下で熱処理を行うことで、得られる正極合材の空隙率を低下させ(正極活物質及び固体電解質の接触率を増加させ)、Liイオン伝導パスをより多く確保できることを見出した。Liイオン伝導パスをより多く確保できるほど、可逆放電容量を増加させることができる。
ここで、特許文献1の[0036]には、正極合材の界面接触を強固にし、界面抵抗を低減させるために、正極合材の各成分を混合した後に加熱処理を行っても良いことが記載されている。また加熱処理の条件として、アルゴン、窒素、空気等の雰囲気下、80℃〜250℃の条件で、1秒〜10時間行うことが記載されている。
しかしながら、特許文献1では実際に加熱処理を行った例については記載されていない。また、加熱処理により複合体の空隙率が低下することは開示されていない。さらに、本願の熱処理は上記のように300℃〜500℃の温度範囲で行うところ、特許文献1に記載の加熱処理は80℃〜250℃の温度範囲である。後述の実施例からわかるように、熱処理温度を300℃〜500℃の範囲で行うことにより、正極合材の空隙率を大幅に低下させ、可逆放電容量を顕著に増加させることができる。
よって、熱処理温度を300℃〜500℃の範囲に設定することにより、空隙率を低下させ可逆放電容量を顕著に増加させる効果は、従来技術である特許文献1から容易に予期できぬ効果であると言える。
なお、工程S2を経て得られる正極合材の空隙率は11%以下であることが好ましい。
以上、製造方法10によれば可逆放電容量の高い全固体リチウム硫黄電池用の正極合材を製造することができる。
2.全固体リチウム硫黄電池の製造方法
上記の製造方法から製造される正極合材は全固体リチウム硫黄電池の正極層に用いられる。そのため、本願は正極層と、負極層と、上記正極層および上記負極層の間に形成された固体電解質層と、を有する全固体リチウム硫黄電池の製造方法であって、上記正極層を上述した正極合材を用いて形成する工程を有する製造方法を提供することもできる。
正極層を上述した正極合材を用いて形成する工程は、公知の方法により行うことができる。例えば、正極合材をプレスして正極層としてもよく、あるいは、正極合材を任意の溶媒に溶かしてスラリーとし、該スラリーを塗工、乾燥させることにより正極層としてもよい。
固体電解質層はリチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含む層であれば特に限定されず、例えば上述した固体電解質を用いて作製することができる。負極層はリチウムイオンを吸蔵放出できる負極活物質を備えていれば特に限定されず、例えば金属リチウム、リチウム合金(例えば、Li−In合金)等を挙げることができる。なお、全固体リチウム硫黄電池は、正極層の集電を行なう正極集電体と、負極層の集電を行なう負極集電体とを備えることもできる。
ここで、全固体リチウム硫黄電池は一次電池であってもよく、二次電池であってもよい。好ましくは二次電池である。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。なお、一次電池には二次電池の一次電池的使用(充電後、一度の放電だけを目的とした使用)も含まれる。
本願の正極合材の製造方法について、実施例及び比較例を用いて詳しく説明する。
1.正極合材の作製
以下において、実施例1、2及び比較例1〜3に係る正極合材の作製方法について説明する。なお、特に断らない限り、以下の操作はArガス雰囲気下で行っている。
1.1.固体電解質(Li3.5Ge0.50.5)の作製
グローブボックス(Arガス雰囲気)内でLiS(日本化学工業社製)0.80g、P(アルドリッチ社製)0.56g、GeS(高純度化学研究所製)0.68gをそれぞれ秤量し、乳鉢に入れ15分混合した。混合した材料を遊星ボールミルポット(45mL、ZrO製)に投入し、さらにZrOボール(φ=10mm)を10個投入し、遊星ボールミルポットをオーバーポット(SUS製)に入れて完全に密閉した。つぎに、オーバーポットをグローブボックスから取り出し、遊星ボールミル装置(フリュッチェ製)に取り付けた。遊星ボールミル装置の回転数を370rpmに設定し、「1時間処理、15分停止、逆回転で1時間処理、15分停止」のサイクルで60時間のメカニカルミリング処理を行った。得られた試料のうち、1gをグローブボックス内でペレット化し、カーボンコート石英管に30Paで真空封入した。そして、500℃の温度で焼成し、固体電解質(Li3.5Ge0.50.5)を得た。
1.2.正極合材の作製
グローブボックス(Arガス雰囲気)内で、作製した固体電解質(Li3.5Ge0.50.5、0.303g)、LiS(日本化学工業社製、0.188g)、VGCF(昭和電工製、0.115g)をそれぞれ秤量し、乳鉢に入れ15分混合した。得られた混合物を遊星ボールミルポット(45mL、ZrO製)に投入し、さらにZrOボール(φ=5mm)を160個投入し、遊星ボールミルポットをオーバーポット(SUS製)に入れて完全に密閉した。つぎに、オーバーポットをグローブボックスから取り出し、遊星ボールミル装置(フリュッチェ製)に取り付けた。遊星ボールミル装置の回転数を500rpmに設定し、24時間のメカニカルミリング処理を行った。得られた複合体をグローブボックス内でペレット化し、カーボンコート石英管に30Paで真空封入した。そして、表1の温度で5時間焼成し、その後自然放冷して実施例1、2及び比較例1〜3に係る正極合材をそれぞれ作製した。
2.全固体リチウム硫黄電池の作製
次に、実施例1、2及び比較例1〜3に係る全固体リチウム硫黄電池の作製方法について説明する。なお、特に断らない限り、以下の操作はArガス雰囲気下で行っている。
2.1.固体電解質(75LiS・25P)の作製
グローブボックス(Arガス雰囲気)内でLiS(日本化学工業社製、1.1g)、P(アルドリッチ社製、1.78g)をそれぞれ秤量し、乳鉢に入れ15分混合した。混合した材料を遊星ボールミルポット(45mL、ZrO製)に投入し、さらにZrOボール(φ=10mm)を10個投入し、遊星ボールミルポットをオーバーポット(SUS製)に入れて完全に密閉した。つぎに、オーバーポットをグローブボックスから取り出し、遊星ボールミル装置(フリュッチェ製)に取り付けた。遊星ボールミル装置の回転数を510rpmに設定し、「1時間処理、15分停止、逆回転で1時間処理、15分停止」のサイクルで10時間のメカニカルミリング処理を行った。これにより、固体電解質(75LiS・25P)を得た。
2.2.全固体リチウム硫黄電池の作製
底面が1cmの金型に作製した固体電解質(75LiS・25P)を加えて6t/cmでプレスし、固体電解質層を作製した。上記により作製した正極合材9mgを正極として用いて、固体電解質層の一方の面に接するように金型に加え、全体を1t/cmでプレスした。また、リチウム箔を負極として用いて、固体電解質層の他方の面に接するように金型に加え、1t/cmでプレスした。これにより実施例1、2及び比較例1〜3に係る全固体リチウム硫黄電池をそれぞれ作製した。
3.放電容量の評価
上記により作製した実施例1、2及び比較例1〜3に係る全固体リチウム硫黄電池を充放電試験装置(北斗電工製)に取り付け、以下の(1)〜(7)の手順を行いながら、放電容量密度について測定した。なお、以下において1C=4.56mA/cmである。
(1)OCV測定。
(2)C/10で1.5Vまで放電後、休止10分。
(3)C/10で3.1Vまで充電後、休止10分。その後、C/10で1.5Vまで放電し、休止10分。これらを計5サイクル行った。
(4)C/10で3.1Vまで充電後、休止10分。その後、C/3で1.5Vまで放電し、休止10分。その後、C/10で1.5Vまで放電し、休止10分。
(5)C/10で3.1Vまで充電後、休止10分。その後、1Cで1.5Vまで放電し、休止10分。その後、C/10で1.5Vまで放電し、休止10分。
(6)C/10で3.1Vまで充電後、休止10分。その後、2Cで1.5Vまで放電し、休止10分。その後、C/10で1.5Vまで放電し、休止10分。
(7)C/10で3.1Vまで充電後、休止10分。その後、C/10で1.5Vまで放電し、休止10分。
得られた測定結果のうち、(3)の2サイクル目のC/10で1.5Vまで放電した際の放電容量密度(mAh/g)、(4)のC/3で1.5Vまで放電した際の放電容量密度(mAh/g)をそれぞれ表1に示した。また、これらの結果を図2にも示した。
4.空隙率の評価
上記により作製した実施例1、2及び比較例1〜3に係る全固体リチウム硫黄電池の正極をCP(日立ハイテクノロジーズ社製、IM4000)により断面加工した後、SEM(FE−SEM、加速電圧1.0kV)により加工された正極断面を観察した。そして、SEM画像を次のように解析し、正極の空隙率を求めた。
(1)Fuji ImageJ, Weka Machine Learningにより、SEM画像をLiS、固体電解質、空隙の3種の領域に分割する。
(2)Matlabにより、それぞれの領域の面積を算出し、空隙率(空隙面積/観察領域面積)を求めた。
得られた空隙率を表1に示した。また、実施例1及び比較例1のSEM画像を図3に示した。
Figure 0006904303
5.結果
表1、図2から明らかなように、電池の放電容量密度は比較例1〜2に比べて、実施例1、2が顕著に高いことが分かった。これは、実施例1、2の空隙率が比較例1〜2に比べて低いためと考えられる。空隙率が低下することにより、LiS(正極活物質)及び固体電解質の接触率が増加するため、Liイオン伝導パスがより多く確保でき、放電容量密度が増加すると考えられる。また比較例3について、空隙率は低いものの、固体電解質が分解してイオン伝導度が下がったため、放電容量密度が下がったと考えられる。図3に示した実施例1及び比較例1のSEM画像を比較しても、実施例1は明らかに空隙がなく、LiS(正極活物質)及び固体電解質が密に接していることが分かる。
以上の結果から、正極合材の作製時において、メカニカルミリング処理後に、所定の条件下で複合体の熱処理を行うことで、電池の放電容量密度が向上することが分かった。

Claims (1)

  1. LiSを含む正極活物質と、固体電解質と、導電助材とを含む原料混合物に対してメカニカルミリング処理を行い、複合体を形成する工程と、
    前記複合体を非酸素条件下、300℃〜500℃の範囲内で熱処理する工程と、を含む、
    全固体リチウム硫黄電池用正極合材の製造方法。
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