以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るバルーンカテーテル10は、図1、2に示すように、バルーン30の外表面に薬剤の結晶が設けられた薬剤溶出型のカテーテルである。なお、本明細書では、バルーンカテーテル10の生体管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
まず、バルーンカテーテル10の構造を説明する。バルーンカテーテル10は、長尺なカテーテル本体20と、カテーテル本体20の先端部に設けられるバルーン30と、バルーン30の外表面に設けられる薬剤を含むコート層40と、カテーテル本体20の基端に固着されたハブ26とを有している。コート層40が設けられたバルーン30は、使用されるまで、保護シース15により覆われて保護される。
カテーテル本体20は、先端および基端が開口した管体である外管21と、外管21の内部に配置される管体である内管22とを備えている。内管22は、外管21の中空内部に納められており、カテーテル本体20は、先端部において二重管構造となっている。内管22の中空内部は、ガイドワイヤを挿通させるガイドワイヤルーメン24である。また、外管21の中空内部であって、内管22の外側には、バルーン30の拡張用流体を流通させる拡張ルーメン23が形成される。内管22は、開口部25において外部に開口している。内管22は、外管21の先端よりもさらに先端側まで突出している。
バルーン30は、基端側端部が外管21の先端部に固定され、先端側端部が内管22の先端部に固定されている。これにより、バルーン30の内部が拡張ルーメン23と連通している。拡張ルーメン23を介してバルーン30に拡張用流体を注入することで、バルーン30を拡張させることができる。拡張用流体は気体でも液体でもよく、例えばヘリウムガス、CO2ガス、O2ガス、N2ガス、Arガス、空気、混合ガス等の気体や、生理食塩水、造影剤等の液体を用いることができる。
バルーン30の軸心方向における中央部には、拡張させた際に外径が等しい円筒状のストレート部31(拡張部)が形成され、ストレート部31の軸心方向の両側に、外径が徐々に変化するテーパ部33が形成される。そして、ストレート部31の外表面の全体に、薬剤を含むコート層40が形成される。なお、バルーン30においてコート層40を形成する範囲は、ストレート部31のみに限定されず、ストレート部31に加えてテーパ部33の少なくとも一部が含まれてもよく、または、ストレート部31の一部のみであってもよい。
ハブ26は、外管21の拡張ルーメン23と連通して拡張用流体を流入出させるポートとして機能する基端開口部27が形成されている。
バルーン30の軸心方向の長さは特に限定されないが、好ましくは5〜500mm、より好ましくは10〜300mm、さらに好ましくは20〜200mmである。
バルーン30の拡張時の外径は、特に限定されないが、好ましくは1〜10mm、より好ましくは2〜8mmである。
バルーン30のコート層40が形成される前の外表面は、平滑であり、非多孔質である。バルーン30のコート層40が形成される前の外表面は、膜を貫通しない微小な孔があってもよい。または、バルーン30のコート層40が形成される前の外表面は、平滑であって非多孔質である範囲と、膜を貫通しない微小な孔がある範囲の両方を備えてもよい。微小な孔の大きさは、例えば、直径が0.1〜5μm、深さが0.1〜10μmであり、1つの結晶に対して、1つまたは複数の孔を有してもよい。また、微小な孔の大きさは、例えば、直径が5〜500μm、深さが0.1〜50μmであり、1つの孔に対して、1つまたは複数の結晶を有してもよい。
バルーン30は、ある程度の柔軟性を有するとともに、血管や組織等に到達した際に拡張されて、その表面に有するコート層40から薬剤を放出できるようにある程度の硬度を有するものが好ましい。具体的には、金属や、樹脂で構成されるが、コート層40が設けられるバルーン30の少なくとも外表面は、樹脂で構成されていることが好ましい。バルーン30の少なくとも外表面の構成材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ナイロンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。そのなかでも、好適にはポリアミド類が挙げられる。すなわち、薬剤をコートするバルーン30の外表面の少なくとも一部がポリアミド類である。ポリアミド類としては、アミド結合を有する重合体であれば特に制限されないが、例えば、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカノラクタム(ナイロン11)、ポリドデカノラクタム(ナイロン12)などの単独重合体、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/ 66)などの共重合体、アジピン酸とメタキシレンジアミンとの共重合体、またはヘキサメチレンジアミンとm,p−フタル酸との共重合体などの芳香族ポリアミドなどが挙げられる。さらに、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などをハードセグメントとし、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、または脂肪族ポリエステルなどをソフトセグメントとするブロック共重合体であるポリアミドエラストマーも、バルーン30の材料として用いられる。上記ポリアミド類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、バルーン30はポリアミドの滑らかな表面を有することが好ましい。
バルーン30は、その外表面上に、後述する方法によって、直接またはプライマー層等の前処理層を介してコート層40が形成される。コート層40は、図3、4に示すように、バルーン30の外表面に層状に配置される水溶性低分子化合物を含む添加剤層である基材41(賦形剤)と、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶である複数の長尺体42とを有している。長尺体42は、延在方向の直線部分を挟んで折れ曲がる屈曲部43を有している。長尺体42aの各々は、コート層40側に固定される固定側長尺体43と、長軸を有する結晶が折れて固定側長尺体43と異なる長軸を有する頂部側長尺体44と、固定側長尺体46および頂部側長尺体47の間の屈曲部43とを有している。頂部側長尺体44は、固定側長尺体43から結晶が物理的に連続している。屈曲部43は、結晶が物理的に連続しており、長尺体42は屈曲部43で分離していない。長尺体42が屈曲部43を有することで、長尺体42の先端部位が他の結晶の間に入り込み、結晶の密度が高くなり、生体組織へ接触する結晶の表面積が大きくなる。このため、バルーン30の表面からの薬剤の放出性や生体組織への移行性を高めることができ、薬剤を生体組織へより効果的に送達できる。長尺体42は、基材41の外表面から面外方向へ延在する第1の長尺体42aと、バルーン30の外表面から基材41を貫通して基材41の外部へ延在する第2の長尺体42bと、基材41の内部から基材41の外部へ延在する第3の長尺体42cとを有している。すなわち、長尺体42の基部45は、バルーン30の外表面と直接接触してもよいが、直接接触せずに、バルーン30の外表面との間に基材41(賦形剤)が存在してもよい。長尺体42の頂部44は、長尺体42の基部45が位置するバルーン30および基材41のいずれにも接触しない。長尺体42a、42b、42cは、薬剤の生体への送達性が異なるため、薬剤の結晶の基部45の位置を調節することで、薬剤の送達性を任意に調節することが可能となる。バルーン30の表面にほぼ長尺体42bのみが存在するように調製してもよい。バルーン30の表面にほぼ長尺体42cが存在するように調製してもよい。また、バルーン30の表面には、複数の長尺体の組み合わせが存在するように調製してもよい。例えば、長尺体42aと長尺体42bの組み合わせ、長尺体42bと長尺体42cの組み合わせ、長尺体42cと長尺体42aの組み合わせ、が挙げられる。バルーン30の表面に、全ての長尺体42a、42b、42cが存在するように調製してもよい。
複数の長尺体42は、バルーン30の外表面に規則的に配置されてもよい。または、複数の長尺体42は、バルーン30の外表面に不規則に配置されてもよい。また、屈曲部43を有する長尺体42は、コート層40の全体に設けられてもよいが、一部にのみ設けられてもよい。なお、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶である長尺体42の一部は、屈曲部43を有しない場合もあり得る。
薬剤の結晶である長尺体42の屈曲部43における、長尺体42の延在方向に対する折れ曲がり角度θは、0度を超えて180度未満であれば特に限定されない。したがって、図5(A)に示すように、90度未満でもよく、図5(B)に示すように、90度でもよく、図5(C)に示すように、90度を超えてもよい。折れ曲がり角度θは、好ましくは1度〜179度であり、より好ましくは30度〜150度であり、さらに好ましくは45度〜135度である。各々の長尺体42の折れ曲がり角度θは、略等しくてもよいが、長尺体42によって異なってもよい。また、長尺体42が折れ曲がる方向は、規則性を有してもよく、または不規則でもよい。
長尺体42のバルーン30または基材41の外表面に対する傾斜角度αは、特に限定されないが、45度〜135度であり、好ましくは60度〜120度であり、より好ましくは75度〜105度であり、さらに好ましくは略90度である。
長尺体42は、図6に示すように、屈曲部43が2つ以上(図6の例では2つ)設けられてもよい。長尺体42に屈曲部43が2つ設けられる場合、基端側の屈強部43の折れ曲がり角度θと先端側の屈強部43の折れ曲がり角度θの組み合わせの例として、基端側の屈強部43の折れ曲がり角度θが10度〜90度のときに先端側の屈強部43の折れ曲がり角度θが10度〜89度である組み合わせ、基端側の屈強部43の折れ曲がり角度θが91度〜135度のときに先端側の屈強部43の折れ曲がり角度θが1度〜34度である組み合わせが挙げられる。
コート層40に含まれる薬剤量は、特に限定されないが、0.1μg/mm2〜10μg/mm2、好ましくは0.5μg/mm2〜5μg/mm2の密度で、より好ましくは0.5μg/mm2〜3.5μg/mm2、さらに好ましくは1.0μg/mm2〜3μg/mm2の密度で含まれる。コート層40の結晶の量は、特に限定されないが、好ましくは5〜500、000[crystal/(10μm2)](10μm2当たりの結晶の数)、より好ましくは50〜50、000[crystal/(10μm2)]、さらに好ましくは500〜5、000[crystal/(10μm2)]である。
結晶が各々独立した長軸を有する複数の長尺体42は、これらが組み合された状態で存在していてもよい。隣接する複数の長尺体42同士が異なる角度を形成した状態で接触して存在してもよい。複数の長尺体42はバルーン表面上で空間(結晶を含まない空間)をおいて位置していてもよい。バルーン30の表面に、組み合された状態の複数の長尺体42と、互いに離れて独立した複数の長尺体42の両方が存在してもよい。複数の長尺体42は、異なる長軸方向を有して円周状にブラシ状として配置されてもよい。各々の前記長尺体42は独立して存在しており、ある長さを有し、その長さ部分の一端(基端)が、基材41またはバルーン30に固定されている。長尺体42は隣接する長尺体42と複合的な構造を形成せず、連結していない。前記結晶の長軸は、ほぼ直線状である。長尺体42はその長軸が交わる基部45が接する表面に対して所定の角度を形成している。
長尺体42は、互いに接触せずに独立して立っていることが好ましい。長尺体42の基部45は、バルーン30上で他の基部45と接触していてもよい。または、長尺体42の基部45は、バルーン30上で他の基部45と接触せずに独立していてもよい。
長尺体42は、中空である場合と、中実である場合がある。バルーン30の表面に、中空の長尺体42と、中実の長尺体42の両方が存在してもよい。長尺体42は、中空である場合、少なくともその先端付近が中空である。長尺体42の長軸に直角な(垂直な)面における長尺体42の断面は中空を有する。当該中空を有する長尺体42は長軸に直角な(垂直な)面における長尺体42の断面が多角形である。当該多角形は、例えば3角形、4角形、5角形、6角形などである。したがって、長尺体42は先端(または先端面)と基端(または基端面)とを有し、先端(または先端面)と基端(または基端面)との間の側面が複数のほぼ平面で構成された長尺多面体として形成される。また、長尺体42は、針状であってもよい。この結晶形態型(中空長尺体結晶形態型)は基部45が接する表面において、ある平面の全体または少なくとも一部を構成する。
長軸を有する長尺体42の長軸方向の長さは5μm〜20μmが好ましく、9μm〜11μmがより好ましく、10μm前後であるのがさらに好ましい。なお、長尺体42の長軸方向の長さは、屈曲部43で折れ曲がる前の長さで定義できる。長軸を有する長尺体42の径は、0.01μm〜5μmであるのが好ましく、0.05μm〜4μmであるのがより好ましく、0.1μm〜3μmであるのがさらに好ましい。長軸を有する長尺体42の長軸方向の長さと径の組み合わせの例として、長さが5μm〜20μmのときに径が0.01〜5μmである組み合わせ、長さが5〜20μmのときに径が0.05〜4μmである組み合わせ、長さが5〜20μmのときに径が0.1〜3μmである組み合わせが挙げられる。長軸を有する長尺体42は、長軸方向に直線状であるが、曲線状に湾曲してもよい。バルーン30の表面に、直線状の長尺体42と、曲線状の長尺体42の両方が存在してもよい。
上述した長軸を有する結晶を有する結晶形態型は、バルーン30の外表面の薬剤結晶全体に対して50体積%以上、より好ましくは70体積%以上である。
コート層40のコーティング後であってバルーン30が折り畳まれる前の(屈曲部43が形成される前の)長軸を有する結晶粒子は、バルーン30の外表面に対して寝ておらず立っているように形成される。この際の結晶粒子は、バルーン30のプリーティング(バルーンに羽根部32を形成するステップ)やフォールディング(羽根部32を折り畳むステップ)により結晶粒子の角度が変わり、バルーン30の外表面に対する結晶粒子の長軸の角度が変化することができる。したがって、最初からバルーン30の外表面に寝たように形成される結晶は、バルーン30の外表面や隣接する結晶粒子に固着(固定)されるのに対し、立っている結晶粒子は、バルーン30の外表面や隣接する結晶粒子と物理的に固定されて形成されていない。このため、立っている結晶粒子は、例えばバルーン30の外表面や隣接する結晶粒子に接触するように位置付けられている(配置されている)だけであり、三次元的に位置を変更可能である。したがって、コーティング後の結晶粒子は、バルーン30のプリーティングやフォールディングの前後で角度や位置が変わり得るように形成されている。結晶粒子の一部は、バルーン30の表面に埋め込まれていてもよい。
基材41は、林立する複数の長尺体42の間の空間に分配されて存在する。基材41は、長尺体42がある領域に存在し、長尺体42がない領域にはなくてもよい。コート層40を構成する物質の割合は、水不溶性薬剤の結晶の方が、基材41よりも大きい体積を占めることが好ましい。基材41を構成する賦形剤は、マトリックスを形成しない。マトリックスとは、比較的高分子の物質(ポリマーなど)が連続して構成された層であり、網目状の三次元構造を形成し、その中に微細な空間が存在する。したがって、結晶を構成する水不溶性薬剤はマトリックス物質中に付着していない。結晶を構成する水不溶性薬剤は、マトリックス物質中に埋め込まれてもいない。
基材41はバルーン30の外表面で水溶液の状態でコートされた後、乾燥して層として形成される。基材41はアモルファスである。基材41は、結晶粒子であってもよい。基材41は、アモルファスおよび結晶粒子の混合物として存在してもよい。図4の基材41は、結晶粒子及び/または粒子状アモルファスの状態である。基材41は、水不溶性薬剤を含んだ層として形成されている。または、基材41は、水不溶性薬剤を含まない独立した層として形成されてもよい。基材41の厚みは、0.1〜5μm、好ましくは0.3〜3μm、より好ましくは0.5〜2μmである。
長尺体結晶の形態型を含む層は、体内に送達する際に、毒性が低く、狭窄抑制効果が高い。中空長尺体結晶形態を含む水不溶性薬剤は、薬剤が組織に移行した時に結晶の一つの単位が小さくなるために組織への浸透性が良く、かつ、良好な溶解性を有するため、有効に作用して狭窄を抑制できる。また、薬剤が大きな塊として組織に残留することが少ないために毒性が低くなると考えられる。
また、長尺体結晶形態型を含む層は、複数の、長軸を有するほぼ均一な長尺体42を有し、かつ基部45が接する表面に規則性を有してほぼ均一に並び立っている形態型である。したがって、組織に移行する結晶の大きさ(長軸方向の長さ)が約10μmと小さい。そのために病変患部に均一に作用し、組織浸透性が高まる。さらに、移行する結晶の寸法が小さいために過剰量の薬剤が、過剰時間、患部に留まることがなくなるために、毒性を発現することなく、高い狭窄抑制効果を示すことが可能であると考える。
バルーン30の外表面にコーティングされる薬剤は、非結晶質(アモルファス)型を含んでもよい。結晶や非晶質は、コート層40において規則性を有するように配置されてもよい。または、結晶や非晶質は、不規則に配置されてもよい。
保護シース15は、バルーン30からの薬剤の脱落を抑制する部材であり、バルーンカテーテル10を使用する前に取り除かれる。保護シース15は、柔軟な材料により構成され、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
次に、上述したバルーン30上のコート層40を形成するためのバルーンコーティングシステムを説明する。本システムは、バルーン30にコート層40を形成するためのバルーンコーティング装置60(図7を参照)と、コート層40が形成されたバルーン30を折り畳むためのバルーン折り畳み装置100(図9を参照)とを備えている。バルーンコーティング装置60を用いることで、バルーン30の外表面に、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶である複数の長尺体42が形成される。この後、バルーン折り畳み装置100によりバルーン30を折り畳むことで、バルーン30の外表面に設けられる複数の長尺体42が、折れ曲がるように変形する。
まず、バルーンコーティング装置60について説明する。バルーンコーティング装置60は、図7、8に示すように、バルーンカテーテル10を回転させる回転機構部61と、バルーンカテーテル10を支持する支持台70とを有する。バルーンコーティング装置60は、さらに、バルーン30の外表面にコーティング溶液を塗布するディスペンシングチューブ94が設けられる塗布機構部90と、ディスペンシングチューブ94をバルーン30に対して移動させるための移動機構部80と、バルーンコーティング装置60を制御する制御部99とを有する。
回転機構部60は、バルーンカテーテル10のハブ26を保持し、内蔵されるモータ等の駆動源によってバルーンカテーテル10を、バルーン30の軸心を中心に回転させる。バルーンカテーテル10は、ガイドワイヤルーメン24内に芯材62が挿通されて保持されるとともに、芯材62によってコーティング溶液のガイドワイヤルーメン24内への流入が防止されている。また、バルーンカテーテル10は、拡張ルーメン23への流体の流通を操作するために、ハブ26の基端開口部27に、流路の開閉を操作可能な三方活栓が接続される。
支持台70は、カテーテル本体20を内部に収容して回転可能に支持する管状の基端側支持部71と、芯材62を回転可能に支持する先端側支持部72とを備えている。なお、先端側支持部72は、可能であれば、芯材62ではなしにカテーテル本体20の先端部を回転可能に支持してもよい。
移動機構部80は、バルーン30の軸心と平行な方向へ直線的に移動可能な移動台81と、ディスペンシングチューブ94が固定されるチューブ固定部83とを備えている。移動台81は、内蔵されるモータ等の駆動源によって、直線的に移動可能である。チューブ固定部83は、ディスペンシングチューブ94の上端を移動台81に対して固定している。したがって、移動台81が移動することで、ディスペンシングチューブ94がバルーン30の軸心と平行な方向へ直線的に移動する。また、移動台81は、塗布機構部90が載置されており、塗布機構部90を軸心に沿う両方向へ直線的に移動させる。
塗布機構部90は、バルーン30の外表面にコーティング溶液を塗布する部位である。塗布機構部90は、コーティング溶液を収容する容器92と、任意の送液量でコーティング溶液を送液する送液ポンプ93と、コーティング溶液をバルーン30に塗布するディスペンシングチューブ94とを備えている。
送液ポンプ93は、例えばシリンジポンプであり、制御部99によって制御されて、容器92から吸引チューブ91を介してコーティング溶液を吸引し、供給チューブ96を介してディスペンシングチューブ94へコーティング溶液を任意の送液量で供給することができる。送液ポンプ93は、移動台81に設置され、移動台81の移動により直線的に移動可能である。なお、送液ポンプ93は、コーティング溶液を送液可能であればシリンジポンプに限定されず、例えばチューブポンプであってもよい。
ディスペンシングチューブ94は、供給チューブ96と連通しており、送液ポンプ93から供給チューブ96を介して供給されるコーティング溶液を、バルーン30の外表面へ吐出する部材である。ディスペンシングチューブ94は、可撓性を備えた円管状の部材である。ディスペンシングチューブ94は、チューブ固定部83に上端が固定されており、チューブ固定部83から鉛直方向下方へ延在し、下端である吐出端97に開口部95が形成されている。ディスペンシングチューブ94は、移動台81を移動させることで、移動台81に設置される送液ポンプ93とともに、バルーンカテーテル10の軸心方向に沿う両方向へ直線的に移動可能である。ディスペンシングチューブ94はバルーン30に押し付けられて撓んだ状態で、コーティング溶液をバルーン30の外表面に供給可能である。
なお、ディスペンシングチューブ94は、コーティング溶液を供給可能であれば、円管状でなくてもよい。また、ディスペンシングチューブ94は、開口部95からコーティング溶液を吐出可能であれば、鉛直方向に延在していなくてもよい。
ディスペンシングチューブ94は、バルーン30への接触負担を低減し、かつバルーン30の回転に伴う接触位置の変化を撓みにより吸収できるように、柔軟な材料であることが好ましい。ディスペンシングチューブ94の構成材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素系樹脂等を適用できるが、可撓性を有して変形可能であれば、特に限定されない。
ディスペンシングチューブ94の外径は、特に限定されないが、例えば0.1mm〜5.0mm、好ましくは0.15mm〜3.0mm、より好ましくは0.3mm〜2.5mmである。ディスペンシングチューブ94の内径は、特に限定されないが、例えば0.05mm〜3.0mm、好ましくは0.1mm〜2.0mm、より好ましくは0.15mm〜1.5mmである。ディスペンシングチューブ94の長さは、特に限定されないが、バルーン直径の5倍以内の長さであることがよく、例えば1.0mm〜50mm、好ましくは3mm〜40mm、より好ましくは5mm〜35mmである。
制御部99は、例えばコンピュータにより構成され、回転機構部61、移動機構部80および塗布機構部90を統括的に制御する。したがって、制御部99は、バルーン30の回転速度、ディスペンシングチューブ94のバルーン30に対する軸心方向への移動速度、ディスペンシングチューブ94からの薬剤吐出速度等を、統括的に制御することができる。
ディスペンシングチューブ94によりバルーン30に供給されるコーティング溶液は、コート層40の構成材料を含む溶液または懸濁液であり、水不溶性薬剤、賦形剤、有機溶媒および水を含んでいる。コーティング溶液がバルーン30の外表面に供給された後、有機溶媒および水が揮発することで、バルーン30の外表面に、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶である複数の長尺体42を有するコート層40が形成される。
コーティング溶液の粘度は、0.5〜1500cP、好ましくは1.0〜500cP、より好ましくは1.5〜100cPである。
水不溶性薬剤とは、水に不溶または難溶性である薬剤を意味し、具体的には、水に対する溶解度が、pH5〜8で5mg/mL未満である。その溶解度は、1mg/mL未満、さらに、0.1mg/mL未満でもよい。水不溶性薬剤は脂溶性薬剤を含む。
いくつかの好ましい水不溶性薬剤の例は、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリンを含むシクロスポリン類、ラパマイシン等の免疫活性剤、パクリタキセル等の抗がん剤、抗ウイルス剤または抗菌剤、抗新生組織剤、鎮痛剤および抗炎症剤、抗生物質、抗てんかん剤、不安緩解剤、抗麻痺剤、拮抗剤、ニューロンブロック剤、抗コリン作動剤およびコリン作動剤、抗ムスカリン剤およびムスカリン剤、抗アドレナリン作用剤、抗不整脈剤、抗高血圧剤、ホルモン剤ならびに栄養剤を含む。
水不溶性薬剤は、好ましくは、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エベロリムスからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。本明細書においてラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エベロリムスとは、同様の薬効を有する限りそれらの類似体および/またはそれらの誘導体を含む。例えば、パクリタキセルとドセタキセルは類似体の関係にある。ラパマイシンとエベロリムスは誘導体の関係にある。これらのうちでは、パクリタキセルがさらに好ましい。
賦形剤は、バルーン30上で基材41を構成する。賦形剤は、水溶性の低分子化合物を含む。水溶性の低分子化合物の分子量は、50〜2000であり、好ましくは50〜1000であり、より好ましくは50〜500であり、さらに好ましくは50〜200である。水溶性の低分子化合物は、水不溶性薬剤100質量部に対して、好ましくは5〜10000質量部、より好ましくは5〜200質量部、さらに好ましくは8〜150質量部である。水溶性の低分子化合物の構成材料は、セリンエチルエステル、クエン酸エステル、ポリソルベート、水溶性ポリマー、糖、造影剤、アミノ酸エステル、短鎖モノカルボン酸のグリセロールエステル、医薬として許容される塩および界面活性剤等、あるいはこれら二種以上の混合物等が使用できる。水溶性の低分子化合物は、親水基と疎水基を有し、水に溶解することを特徴とする。水溶性の低分子化合物は、非膨潤性または難膨潤性であることが好ましい。賦形剤は、バルーン30上でアモルファス(非晶質)であることが好ましい。水溶性の低分子化合物を含む賦形剤は、バルーン30の外表面上で水不溶性薬剤を均一に分散させる効果を有する。基材41となる賦形剤は、ハイドロゲルでないことが好ましい。基材41は低分子化合物であることで、水溶液に接すると膨潤することなく速やかに溶解する。さらに、血管内でのバルーン30の拡張時に基材41が溶解しやすくなることで、バルーン30の外表面上の水不溶性薬剤の結晶粒子を放出しやすくなり、血管への薬剤の結晶粒子の付着量を増加させる効果を有する。基材41がウルトラビスト(Ultravist)(登録商標)のような造影剤からなるマトリクスである場合、結晶粒子がマトリクスに埋め込まれ、バルーン30上からマトリクスの外側に向かって結晶が生成しない。これに対し、本実施形態の長尺体42は、バルーン30の表面から基材41の外側まで延在する。長尺体42の基材41よりも外側に位置する部分の長さは、長尺体42の基材41内に位置する部分の長さより長い。基材41は、結晶である長尺体42の基部45を支持するように形成される。
有機溶媒は、特に限定されず、テトラヒドロフラン、アセトン、グリセリン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、ヘキサン、エチルアセテートである。中でも、テトラヒドロフラン、エタノール、アセトンのうち、これらのいくつかの混合溶媒が好ましい。
有機溶媒と水の混合例として、例えば、テトラヒドロフランと水、テトラヒドロフランとエタノールと水、テトラヒドロフランとアセトンと水、アセトンとエタノールと水、テトラヒドロフランとアセトンとエタノールと水が挙げられる。
次に、上述したバルーンコーティング装置60を用いてバルーン30の外表面に水不溶性薬剤の結晶を形成する方法を説明する。
初めに、バルーンカテーテル10の基端開口部27に接続した三方活栓を介して拡張用の流体をバルーン30内に供給する。次に、バルーン30を拡張させた状態で三方活栓を操作して拡張ルーメン23を密封し、バルーン30を拡張させた状態を維持する。バルーン30は、血管内での使用時の圧力(例えば8気圧)よりも低い圧力(例えば4気圧)で拡張される。なお、バルーン30を拡張させずに、バルーン30の外表面にコート層40を形成することもでき、その場合には、拡張用の流体をバルーン30内に供給する必要はない。
次に、ディスペンシングチューブ94がバルーン30の外表面と接触しない状態で、バルーンカテーテル10を支持台70に回転可能に設置し、ハブ26を回転機構部61に連結する。
次に、移動台81の位置を調節して、ディスペンシングチューブ94を、バルーン30に対して位置決めする。このとき、バルーン30においてコート層40を形成する最も先端側の位置に、ディスペンシングチューブ94を位置決めする。一例として、ディスペンシングチューブ94の延在方向(吐出方向)は、バルーン30の回転方向と逆方向である。したがって、バルーン30は、ディスペンシングチューブ94を接触させた位置において、ディスペンシングチューブ94からのコーティング溶液の吐出方向と逆方向に回転する。これにより、コーティング溶液に物理的な刺激を与え、薬剤結晶の結晶核の形成を促すことができる。そして、ディスペンシングチューブ94の開口部95へ向かう延在方向(吐出方向)が、バルーン30の回転方向と逆方向であることで、バルーン30の外表面に形成される水不溶性薬剤の結晶は、結晶が各々独立した長軸を有する複数の長尺体42を含む形態型(morphological form)を含んで形成されやすい。なお、ディスペンシングチューブ94の延在方向は、バルーン30の回転方向と逆方向でなくてもよく、したがって同方向とすることができ、または垂直とすることもできる。
次に、送液ポンプ93により送液量を調節しつつコーティング溶液をディスペンシングチューブ94へ供給し、回転機構部61によりバルーンカテーテル10を回転させるとともに、移動台81を移動させて、ディスペンシングチューブ94をバルーン30の軸心方向に沿って徐々に基端方向へ移動させる。ディスペンシングチューブ94の開口部95から吐出されるコーティング溶液は、ディスペンシングチューブ94がバルーン30に対して相対的に移動することで、バルーン30の外周面に螺旋を描きつつ塗布される。
ディスペンシングチューブ94の移動速度は、特に限定されないが、例えば0.01〜2mm/sec、好ましくは0.03〜1.5mm/sec、より好ましくは0.05〜1.0mm/secである。コーティング溶液のディスペンシングチューブ94からの吐出速度は、特に限定されないが、例えば0.01〜1.5μL/sec、好ましくは0.01〜1.0μL/sec、より好ましくは0.03〜0.8μL/secである。バルーン30の回転速度は、特に限定されないが、例えば10〜300rpm、好ましくは30〜250rpm、より好ましくは50〜200rpmである。コーティング溶液を塗布する際のバルーン30の直径は、特に限定されないが、例えば1〜10mm、好ましくは2〜7mmである。
この後、バルーン30の外表面に塗布されたコーティング溶液に含まれる有機溶媒が水よりも先に揮発する。したがって、バルーン30の表面に、水不溶性薬剤、水溶性低分子化合物および水が残された状態で、有機溶媒が揮発する。このように、水が残された状態で有機溶媒が揮発すると、水不溶性の薬剤が、水を含む水溶性低分子化合物の内部で析出し、結晶核から結晶が徐々に成長して、バルーン30の外表面に、結晶が各々独立した長軸を有する複数の長尺体42を含む形態型(morphological form)の薬剤結晶が形成される。なお、この状態の長尺体42は、屈曲部43が形成されていない。長尺体42の基部45は、バルーン30の外表面、基材41の外表面または基材41の内部に位置する可能性がある(図4を参照)。有機溶媒が揮発して薬剤結晶が複数の長尺体42として析出した後、水が有機溶媒よりもゆっくり蒸発し、水溶性低分子化合物を含む基材41が形成される。水が蒸発する時間は、薬剤の種類、水溶性低分子化合物の種類、有機溶媒の種類、材料の比率、コーティング溶液の塗布量等に応じて適宜設定されるが、例えば、1〜600秒程度である。
そして、バルーン30を回転させつつディスペンシングチューブ94を徐々にバルーン30の軸心方向へ移動させることで、バルーン30の外表面に、軸心方向へ向かってコート層40を徐々に形成する。バルーン30のコーティングする範囲の全体に、折れ曲がる前の長尺体42を有するコート層40が形成された後、回転機構部61、移動機構部80および塗布機構部90を停止させる。
この後、バルーンカテーテル10をバルーンコーティング装置60から取り外して、バルーン30のコーティングが完了する。
次に、バルーン折り畳み装置100について説明する。バルーン折り畳み装置100は、バルーン30を内管22に対し巻き付けるように折り畳むことのできる装置である。
バルーン折り畳み装置100は、図9に示すように、台状に形成された基台110に、プリーティング部120、フォールディング部130および支持台140が配置されている。プリーティング部120は、バルーン30に径方向に突出する羽根部32を形成できる。フォールディング部130は、バルーン30に形成された羽根部32を周方向に寝かせて畳むことができる。支持台140は、バルーンカテーテル10を載置して保持できる。バルーン30に形成される羽根部32は、バルーン30の略軸心方向に延びる折り目によって形成され、バルーン30の軸心に対して垂直な断面で見たとき、折り目がバルーン30の長軸から周方向に突出するように形成される。羽根部32の長軸方向の長さは、バルーン30の長さを超えない。羽根部32がカテーテル本体20から周方向に突出する方向の長さは、1〜8mmである。羽根部32の数は特に限定されず、2〜7枚のいずれかから選択することができるが、本実施形態では3枚である。
基台110には、プリーティング部120に対して第1フィルム155および第2フィルム156を供給するフィルム供給部150が、プリーティング部120に隣接して配置されている。また、基台110には、フォールディング部130に対して第1フィルム181および第2フィルム182を供給するフィルム供給部180が、フォールディング部130に隣接して配置されている。
プリーティング部120は、基台110に対して垂直な前面板121を有し、前面板121はバルーンカテーテル10の先端部を挿入可能な挿入孔121aを有している。また、フォールディング部130は、基台110に対して垂直な前面板131を有し、前面板131はバルーンカテーテル10の先端部を挿入可能な挿入孔131aを有している。フォールディング部130の前面板131は、プリーティング部120の前面板121が面する方向に対して所定角度異なる方向に向かって面している。
支持台140のプリーティング部120およびフォールディング部130から離れた側には、基台110から上方に突出する支持軸111が枢着している。支持台140は、支持軸111を中心に基台110の上面をスライド移動することで、プリーティング部120の前面板121に対向する位置およびフォールディング部130の前面板131に対向する位置に、位置決めできる。
支持台140は、基台110に載置される基部141と、基部141上を水平移動可能な保持台部142とを有している。基部141は、基台110の上面を摺動可能である。保持台部142は、基部141の上面をスライド移動し、プリーティング部120またはフォールディング部130へ向かって前進または後退可能である。
保持台部142の上面には、バルーンカテーテル10のカテーテル本体20を載置可能な溝状の載置部142aが形成されている。また、保持台部142には、載置部142aの一部を上方から覆うように保持部143が設けられる。保持部143は、載置部142aに載置されたバルーンカテーテル10のカテーテル本体20を保持して固定できる。なお、バルーンカテーテル10を固定できるのであれば、他の方法によりバルーンカテーテル10を固定してもよい。
支持台140がプリーティング部120の前面板121に対向している状態において、保持台部142の載置部142aの延長線上に、前面板121に形成される挿入孔121aの中心が位置する。このため、載置部142aにカテーテル本体20が載置されたバルーンカテーテル10は、プリーティング部120に対し挿入孔121aの中心位置から内部に挿入される。支持台140がフォールディング部130の前面板131に対向している状態では、保持台部142の載置部142aの延長線上に、前面板131に形成される挿入孔131aの中心が位置する。このため、載置部142aにカテーテル本体20が載置されたバルーンカテーテル10は、保持台部142を基部141上でスライド移動させることで、フォールディング部130に対し挿入孔131aの中心位置から内部に挿入される。
次に、プリーティング部120の構造について説明する。図10に示すように、プリーティング部120は、内部に3つのブレード122(羽根形成用部材)を有している。各ブレード122は、挿入されるバルーンカテーテル10の軸心方向に沿う各位置における断面形状が、同形状で形成される板状の部材である。ブレード122は、バルーン30が挿通される中心位置を基準として、それぞれが120度の角度をなすように配置されている。すなわち、各ブレード122は、周方向において等角度毎に配置されている。ブレード122は、外周端部付近に回動中心部122aを有し、この回動中心部122aを中心として回動することができる。また、ブレード122は、回動中心部122aより内周側に、軸心方向に延びる移動ピン122dを有している。移動ピン122dは、プリーティング部120内で回転可能な回転部材124に形成される嵌合溝124aに嵌合している。回転部材124は、略水平方向に延びる梁部126に連結されている。回転部材124は、油圧シリンダーやモータ等の駆動源125から力を受けて傾く梁部126から回転力を受けて回動可能である。回転部材124が回転すると、嵌合溝124aに嵌合する移動ピン122dが周方向へ移動し、これにより、各々のブレード122が回動中心部122aを中心として回動する。3つのブレード122が回動することにより、ブレード122に囲まれた中心部の空間領域を狭めることができる。なお、ブレード122の数は、2つ以上であれば、特に限定されない。
ブレード122は、回動中心部122aと反対側の内周端部に、略弧状の第1形状形成部122bと第2形状形成部122cとを有している。第1形状形成部122bは、ブレード122が回動するのに伴い、プリーティング部120内に挿通されるバルーン30の表面に当接して、バルーン30に径方向に突出する羽根部32を形成することができる。第2形状形成部122cは、ブレード122が回動するのに伴い、バルーン30に形成される羽根部分に当接し、羽根部32を所定方向に湾曲させることができる。また、プリーティング部120は、ブレード122を加熱するためのヒーター(図示しない)を有している。ブレード122のバルーンカテーテル10の軸心方向に沿う長さは、バルーン30の長さよりも長い。また、ブレード122の第1形状形成部122b及び第2形状形成部122cの長さは、ブレード122の全長に渡っていてもよいし、渡っていなくてもよい。
ブレード122には、フィルム供給部150から樹脂製の第1フィルム155および第2フィルム156が供給される。各フィルムを案内するため、プリーティング部120内には複数の回転軸部123が設けられている。第1フィルム155は、第1フィルム保持部151から回転軸部123を介して、上部に配置されているブレード122の表面に係っている。また、第1フィルム155は、ブレード122から回転軸部123を経て、図示しないモータ等の駆動源により回転駆動されるフィルム巻取部153に至っている。第2フィルム156は、第2フィルム保持部152から回転軸部123を介して、下部に配置されている2つのブレード122に係っている。また、第2フィルム156は、回転軸部123を経て、フィルム巻取部153に至っている。これらにより、バルーン30が挿通されるプリーティング部120の中心位置は、第1フィルム155と第2フィルム156に囲まれた状態となっている。
第1フィルム155と第2フィルム156は、バルーン30がプリーティング部120に挿入され、ブレード122が回動してバルーン30に羽根部32を形成する際に、バルーン30がブレード122の表面に直接接触しないように保護する機能を有する。バルーン30の羽根部32を形成した後、第1フィルム155と第2フィルム156はフィルム巻取部153に所定長さが巻き取られる。すなわち、第1フィルム155および第2フィルム156のバルーン30に一度接触した部分は、再度バルーン30に接触せず、バルーン30が挿入される度に新しい部分がプリーティング部120の中心位置に供給される。
図11に示すように、バルーン30の挿入前の状態において、3つのブレード122の第1形状形成部122b及び第2形状形成部122cは、それぞれ離隔した状態となっている。ブレード122間の中心領域は、それぞれ略弧状の第1形状形成部122bに囲まれており、折り畳み前のバルーン30を挿入することができる。
次に、フォールディング部130の構造について説明する。図12に示すように、フォールディング部130は、内部に10個のブレード132(畳み用部材)を有している。各ブレード132は、挿入されるバルーンカテーテル10の軸心方向に沿う各位置における断面形状が、同形状で形成される板状の部材である。ブレード132は、バルーンが挿通される中心位置を基準として、それぞれが36度の角度をなすように配置されている。すなわち、各ブレード132は、周方向において等角度毎に配置されている。ブレード132は、略中央付近に回動中心部132aを有し、この回動中心部132aを中心として回動することができる。また、各ブレード132は、略外周端部付近に、軸方向に延びる移動ピン132cを有している。移動ピン132cは、フォールディング部130内で回転可能な回転部材133に形成される嵌合溝133aに嵌合している。回転部材133は、略水平方向に延びる梁135に連結されている。回転部材133は、油圧シリンダーやモータ等の駆動源134から力を受けて傾く梁135から回転力を受けて回動可能である。回転部材133が回転すると、嵌合溝133aに嵌合する移動ピン132cが周方向へ移動し、これにより、各々のブレード132が回動中心部132aを中心として回動する。10個のブレード132が回動することにより、ブレード132に囲まれた中心部の空間領域を狭めることができる。なお、ブレード132の数は、10個に限定されない。
ブレード132は、先端側が屈曲すると共に、先端部132bは尖った形状を有している。先端部132bは、ブレード132が回動するのに伴い、フォールディング部130内に挿通されるバルーン30の表面に当接して、バルーン30に形成された羽根部32を周方向に寝かせるように畳むことができる。また、フォールディング部130は、ブレード132を加熱するためのヒーター(図示しない)を有している。
ブレード132には、フィルム供給部180から樹脂製の第1フィルム181および第2フィルム182が供給される。各フィルムの供給構造は、プリーティング部120の場合と同様である。第1フィルム181と第2フィルム182は、ブレード132によって囲まれた中央の空間領域を挟むように対向配置される。これら第1フィルム181と第2フィルム182により、フォールディング部130に挿入されたバルーン30は、ブレード132の表面に直接接触しないようにすることができる。第1フィルム181と第2フィルム182は、ブレード132を経て、図示しないモータ等の駆動源により回転駆動されるフィルム巻取部183に至っている。
図13に示すように、バルーン30の挿入前の状態において、各ブレード132の先端部132bは、それぞれ周方向に離隔した状態となっている。ブレード132に囲まれた中心領域であって第1フィルム181と第2フィルム182の間には、羽根部32を形成されたバルーン30を挿入することができる。
次に、バルーン折り畳み装置100を用いて、バルーンコーティング装置60により薬剤の結晶が外表面に形成されたバルーン30を折り畳む方法を説明する。
まず、バルーン30に羽根部32を形成するために、カテーテル本体20を、支持台140の載置部142aに載置して保持部143により保持する。バルーン30には、ハブ26に取り付けられる三方活栓、ハブ26および内管22を通じて拡張用流体が注入され、バルーン30はある程度拡張した状態とされる。また、プリーティング部120のブレード122が加熱される。ガイドワイヤルーメン24には、芯材62が挿入される。この芯材62によって、カテーテル本体20の自重による撓みが抑制される。
次に、図14に示すように、保持台部142を基部141上でスライド移動させて、バルーンカテーテル10を挿入孔121aからプリーティング部120に挿入する。
次に、駆動源125を作動させて回転部材124(図12を参照)を回転させると、図15に示すように、ブレード122が回動し、各ブレード122の第1形状形成部122bが互いに近づき、ブレード122間の中心領域が狭まる。これに伴い、ブレード122間の中心領域に挿入されたバルーン30は、第1形状形成部122bによって内管22に対し押し付けられる。バルーン30のうち第1形状形成部122bによって押圧されない部分は、ブレード122の先端部と、当該ブレード122に隣接するブレード122の第2形状形成部122cとの間の隙間に押し出され、一方に湾曲した羽根部32が形成される。ブレード122によりバルーン30は約50〜60度に加熱されるので、形成された羽根部32はそのままの形を維持することができる。このようにして、バルーン30に周方向3枚の羽根部32が形成される。
このとき、各ブレード122のバルーン30と接触する表面は、第1フィルム155および第2フィルム156によって覆われており、バルーン30はブレード122の表面に直接接触することはない。バルーン30に羽根部32を形成した後、ブレード122を元の位置に戻すように回動させ、バルーン30はプリーティング部120から引き抜かれる。なお、プリーティングの過程において、バルーン30の内部の体積が減少するため、それに合わせて、三方活栓を調節して拡張用流体を外部に排出してバルーン30を収縮(deflate)させることが好ましい。これにより、バルーン30に過剰な力が作用することを抑制できる。
バルーン30は、図18(A)に示すように、内部に拡張用流体が注入された状態で断面略円形状を有する。この状態から、バルーン30は、突出する羽根部32が形成されることで、図15、18(B)に示すように、第2形状形成部122cに押圧されて羽根部32の外側面を構成する羽根外側部34aと、ブレード122の先端部に押圧されて羽根部32の内側面を構成する羽根内側部34bと、第1形状形成部122bに押圧されてコート層羽根外側部34aと羽根内側部34bの間に位置する中間部34cとが形成される。なお、プリーティングの過程では、羽根部32を形成するためにバルーン30を収縮させつつブレード122で押圧するため、ブレード122による強い押圧力は必要としない。したがって、ブレード122によりバルーン30が押圧されても、バルーン30の表面に形成された結晶の構造はほとんど変化しない。
次に、保持台部142を基部141の上面で移動させてプリーティング部120から離間させ、バルーンカテーテル10をプリーティング部120から引き抜く。次に、支持台140を基台110の上面でスライド移動させ、フォールディング部130の前面板131に対向する位置に、支持台140を位置決めする。この後、保持台部142を基部141の上面で移動させて、図16に示すように、バルーンカテーテル10を挿入孔131aからフォールディング部130内に挿入する。フォールディング部130のブレード132は既に50〜60度程度に加熱されている。
羽根部32が形成されたバルーン30をフォールディング部130に挿入した後、図17に示すように、駆動源134を作動させて回転部材133を回転させると、ブレード132が回動し、各ブレード132の先端部132bが互いに近づき、ブレード132間の中心領域が狭まる。これに伴い、ブレード132間の中心領域に挿入されたバルーン30は、各ブレード132の先端部132bによって羽根部32が周方向に寝かされた状態となる。ブレード132は、バルーン30の挿入前に予め加熱されており、ブレード132によってバルーン30が加熱されるので、ブレード132により周方向に寝かされた羽根部32は、そのままの形を維持することができる。このとき、各ブレード132のバルーン30と接触する表面は、第1フィルム181および第2フィルム182によって覆われており、バルーン30はブレード132の表面に直接接触することはない。
バルーン30の羽根部32が折り畳まれると、図17、18(C)に示すように、羽根内側部34bと中間部34cが重なって接触し、バルーンの外表面同士が対向して重なる重複部35が形成される。そして、中間部34cの一部および羽根外側部34aは、羽根内側部34bに覆われず、外側に露出する。また、バルーン30が折り畳まれた状態では、羽根部32の根元部と中間部34cとの間に、根元側空間部36が形成される。根元側空間部36の領域では、羽根部32と中間部34cとの間に、微小な隙間が形成される。一方、羽根部32の根元側空間部36よりも先端側の領域は、中間部34cに対して密接した状態となっている。羽根部32の周方向長さに対する根元側空間部36の周方向長さの割合は、1〜95%の範囲である。バルーン30の羽根外側部34aは、ブレード132に押圧される第1フィルム181と第2フィルム182から周方向に擦れるような押圧力を受け、さらに加熱される。これにより、羽根外側部34aに設けられる薬剤結晶の長尺体42は、周方向に沿って折り曲げられて屈曲部43が形成されやすい(図3を参照)。
また、バルーン30の重複部35において重なる外表面は、外部に露出しないため、ブレード132から押圧力が間接的に作用する。このため、バルーン30の重複部35において重なる外表面に設けられる長尺体42に作用する力を、強くなり過ぎないように調節することが容易である。したがって、バルーン30の重複部35において重なる外表面に設けられる長尺体42を折り曲げて屈曲部43を形成するために望ましい力を作用させることができる。このため、バルーン30の重複部35において重なる外表面に、望ましい屈曲部43を有する長尺体42が形成される。また、互いに対向する羽根内側部34bと中間部34cの領域のうち、根元側空間部36に面する領域、すなわち羽根内側部34bと中間部34cとが密接しない領域では、長尺体42は押圧力を受け難い。したがって、この領域では、長尺体42に屈曲部43が形成され難い。また、互いに対向する羽根内側部34bと中間部34cの領域のうち、根元側空間部36に面しない領域、すなわち羽根内側部34bと中間部34cとが密接している領域では、長尺体42は押圧力を受けやすい。したがって、この領域では、長尺体42に屈曲部43が形成されやすい。なお、重複部35において長尺体42に屈曲部43が形成されやすいように押圧力、押圧時間および温度を調節することで、羽根外側部34aに作用する押圧力が強くなり、羽根外側部34aにおいては屈曲部43が形成されずに、長軸を有する長尺な結晶が根元から倒れる形態となることがあり得る。
バルーン30の羽根部32を畳んだ後、ブレード132を元の位置に戻すように回動させる。次に、バルーン30をフォールディング部130から引き抜く。次に、保持部143によるカテーテル本体20の保持を解除し、バルーン30を筒状の保護シース15(図1を参照)で覆って、バルーンカテーテル10におけるバルーン30の折り畳みが完了する。保護シース15は、バルーン30からの薬剤の脱落を抑制する部材であり、バルーンカテーテル10を使用する前に取り除かれる。
次に、本実施形態に係るバルーンカテーテル10の使用方法を、血管内の狭窄部を治療する場合を例として説明する。
まず、術者は、セルジンガー法等の公知の方法により、皮膚から血管を穿刺し、イントロデューサ(図示せず)を留置する。次に、バルーンカテーテル10の保護シース15を外し、プライミングを行った後、ガイドワイヤルーメン24内にガイドワイヤ200(図19を参照)を挿入する。この状態で、ガイドワイヤ200およびバルーンカテーテル10をイントロデューサの内部より血管内へ挿入する。続いて、ガイドワイヤ200を先行させつつバルーンカテーテル10を進行させ、バルーン30を狭窄部へ到達させる。なお、バルーンカテーテル10を狭窄部300まで到達させるために、ガイディングカテーテルを用いてもよい。
バルーン30を血管内で移動させる際には、バルーン30の外表面同士が重なる重複部35は、血液に接触し難い。このため、重複部35に位置する薬剤結晶である長尺体42は、血液に晒されず、血液への流出が抑制されて、目的の位置まで効果的に送達される。
バルーン30を狭窄部300に配置した後には、ハブ26の基端開口部27より、インデフレーターまたはシリンジ等を用いて拡張用流体を所定量注入し、拡張ルーメン23を通じてバルーン30の内部に拡張用流体を送り込む。これにより、図19に示すように、折り畳まれたバルーン30が拡張し、狭窄部300が、バルーン30によって押し広げられる。このとき、バルーン30の外表面に設けられる薬剤結晶を含むコート層40が、狭窄部300に接触する。コート層40に含まれる薬剤結晶である長尺体42は、図4に示すように、屈曲部43で折れ曲がっているため、折れ曲がっていない場合と比較して、バルーン30の外表面における結晶の密度が高い。このため、狭窄部300へ接触する結晶の表面積が大きくなり、バルーン30の外表面から狭窄部300へ薬剤が効果的に送達される。したがって、狭窄部300の再狭窄が、効果的に抑制される。
バルーン30を拡張させてコート層40を生体組織に押し付けると、コート層40に含まれる水溶性の低分子化合物である基材41が徐々にまたは速やかに溶けつつ、薬剤が生体へ送達される。薬剤の結晶である長尺体42a、42b、42cは、基材41に対する基部45の位置が異なるため、基材41が徐々にまたは速やかに溶けることで、生体組織への送達性が異なる。また、バルーン30が拡張することで基材41に亀裂が入って溶けやすくなり、基材41から薬剤結晶である長尺体42が放出されやすくなる。このため、長尺体42の基部45の位置を調節して溶出性の異なる長尺体42a、42b、42cを設けることで、薬剤の送達性を任意に設定することが可能である。
この後、拡張用流体をハブ26の基端開口部27より吸引して排出し、バルーン30を収縮させて折り畳まれた状態とする。この後、イントロデューサを介して血管よりガイドワイヤ200およびバルーンカテーテル10を抜去し、手技が終了する。
以上のように、本実施形態に係るバルーンカテーテル10は、複数の長尺に延在する独立した水不溶性薬剤の結晶である長尺体42がバルーン30の外表面に設けられるカテーテルであって、長尺体42は、延在方向に対して折れ曲がる屈曲部43を有する。このように構成したバルーンカテーテル10は、水不溶性薬剤の結晶である長尺体42が屈曲部43で折れ曲がっているため、バルーン30の外表面における結晶の密度が高くなり、生体組織へ接触する結晶の表面積が大きくなる。このため、バルーン30の外表面からの薬剤の放出性や生体組織への移行性を高めることができ、薬剤を生体組織へ効果的に送達できる。
また、バルーン30は、収縮した状態において折り畳まれてバルーン30の外表面同士が重なる重複部35を有し、屈曲部43を有する長尺体42は、重複部35にて重なるバルーン30の外表面に設けられる。これにより、屈曲部43を有する長尺体42は、収縮した状態において外部に露出しないため、バルーン30が目的の位置へ到達するまで屈曲部43を有する長尺体42を保護できる。したがって、薬剤が送達時にバルーン30の外表面から剥がれ落ちたり血流等に流出することを抑制でき、薬剤を生体組織へより効果的に送達できる。
また、水不溶性薬剤は、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、またはエベロリムスであってもよい。これにより、屈曲部43を有する長尺体42により、血管内の狭窄部の再狭窄を良好に抑制できる。
また、本実施形態に係るバルーンカテーテル10の製造方法は、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶である複数の長尺体42をバルーン30の外表面に有するバルーンカテーテル10の製造方法であって、バルーン30の外表面に長尺体42を形成するステップと、バルーン30に径方向に突出する羽根部32を形成するステップと、バルーン30に形成された羽根部32を周方向に沿って折り畳むステップと、を有し、羽根部32を形成するステップおよび折り畳むステップの少なくとも一方において、バルーン30を変形させるために作用させる力によって長尺体42を延在方向に対して折り曲げる。上記のように構成したバルーンカテーテル10の製造方法は、バルーン30に羽根部32を形成するステップ、または羽根部32を折り畳むステップにおいてバルーン30に作用する力を利用して、長尺体42に屈曲部43を効率よく形成できる。
また、羽根部32を折り畳むステップにおいて、バルーン30の外表面同士が対向して重なる重複部35を形成し、当該重複部35の対向する外表面に設けられる長尺体42を当該長尺体42の延在方向に対して折り曲げて屈曲部43を形成できる。これにより、羽根部32を折り畳むためにバルーン30に作用させる力が、重複部35には間接的に作用するため、長尺体42に作用する力を調節することが可能となる。すなわち、重複部35に位置するバルーン30の外表面は、外力が作用する状態のみならず、外力がほとんど作用しない状態をも実現できる。このため、長尺体42を折り曲げるために望ましい力をバルーン30に作用させることが容易となる。
また、本発明は、上述のバルーンカテーテル10を用いて生体管腔内の病変部に薬剤を送達する処置方法(治療)方法をも含む。当該処置方法は、バルーン30を生体管腔内に挿入して病変部へ到達させるステップと、バルーン30を拡張させて屈曲部43が設けられた長尺体42を生体組織に押し付けるステップと、バルーン30を収縮させて生体管腔から抜去するステップと、を有する。このように構成した処置方法は、長尺体42が屈曲部43を有することで外表面の結晶の密度が高いバルーン30を生体組織へ押し付けるため、生体組織へ接触する結晶の表面積が大きくなる。このため、バルーン30の外表面からの薬剤の放出性や生体組織への移行性を高めることができ、薬剤を生体組織へ効果的に送達できる。
なお、本実施形態では、バルーン30のフォールディングの過程において、バルーン30の外表面に形成された長尺体42を折り曲げているが、プリーティングの過程において、ブレード122による押圧により長尺体42を折り曲げてもよい(図15を参照)。
また、前述のように、基材41は、アモルファス、結晶粒子、または、その混合物として存在する。図4の基材41は、結晶粒子及び/または粒子状アモルファスの状態であるが、図20に示すように、基材41がフィルム状アモルファスの状態であってもよい。図22に示すように、第1の長尺体42aは、基材41の外表面から面外方向へ延在する。図23に示すように、第2の長尺体42bは、バルーン30の外表面から基材41を貫通して基材41の外部へ延在する。図24に示すように、第3の長尺体42cは、基材41の内部から基材41の外部へ延在する。
また、本実施形態において、折り畳まれたバルーン30の羽根部32は、先端が隣接する羽根部32に達しないが、図21に示す2つの例のように、先端が隣接する羽根部32に達していてもよい。図21(A)の例では、羽根部32の根元側と中間部34cとの間に根元側空間部36が形成され、羽根部32の先端側と中間部34cとの間に先端側空間部37が形成される。この場合に、羽根内側部34bと中間部34cの領域のうち、根元側空間部36と先端側空間部37に面する領域、すなわち羽根内側部34bと中間部34cとが密接しない領域では、長尺体42は押圧力を受け難い。したがって、この領域では、長尺体42に屈曲部43が形成され難い。また、羽根内側部34bと中間部34cの領域のうち、根元側空間部36と先端側空間部37に面していない領域、すなわち羽根内側部34bと中間部34cとが密接している領域では、長尺体42は押圧力を受けやすい。したがって、この領域では、長尺体42に屈曲部43が形成されやすい。
図21(B)の例では、羽根部32の根元側から隣接する羽根部32までの領域の全体において、羽根部32と中間部34cとの間に空間部38が形成されている。この場合に、互いに対向する羽根内側部34bと中間部34cの領域の全体において、長尺体42は押圧力を受け難い。したがって、この領域では、長尺体42に屈曲部43が形成され難い。
また、バルーン30を折り畳むために、バルーン折り畳み装置100も用いなくてもよい。
また、バルーン30の外表面のコート層に、賦形剤である基材が設けられなくてもよい。
また、図25に示すように、添加剤層である基材41は、凹凸を有してもよい。凹凸の高さは、0.1μm〜5μmである。結晶である長尺体42は、基材41の凹凸を形成する凸状部48から突出している。すなわち、基材41の凸状部48が、結晶である長尺体42を支持している。なお、基材41は、長尺体42が突出していない凸状部48を有してもよい。結晶である長尺体42は、基材41の凹凸を形成する凹状部49から突出してもよい。基材41は、長尺体42を支持する凸状部48と、長尺体42を支持しない凸状部48の両方を有してもよい。基材41は、長尺体42を支持する凹状部49と、長尺体42を支持しない凹状部49の両方を有してもよい。また、基材41は、長尺体42を支持する凸状部48と、長尺体42を支持する凹状部49の両方を有してもよい。長尺体42は、バルーン30の外表面に対して傾斜するように、基材41から斜めに突出してもよい。基材41は、バルーン30の外表面に対して略垂直な長尺体42と、バルーン30の外表面に対して傾斜する長尺体42の両方を有してもよい。長尺体42の基部45は、バルーン30の外表面と直接接触してもよい。または、長尺体42の基部45は、バルーン30の外表面と接触せずに、基材41の内部に位置してもよい。基材41は、バルーン30の外表面と直接接触する長尺体42と、バルーン30の外表面と接触しない長尺体42の両方を有してもよい。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るバルーンカテーテルは、水不溶性薬剤の結晶である複数の長尺体52の構造のみが、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
バルーン30のコート層40に設けられる長尺体52は、図26〜28に示すように、基材41の外表面から面外方向へ延在する第1の長尺体52aと、バルーン30の外表面から基材41を貫通して基材41の外部へ延在する第2の長尺体52bと、基材41の内部から基材41の外部へ延在する第3の長尺体52cとを有している。すなわち、長尺体52の基部55は、バルーン30の外表面と直接接触してもよいが、直接接触せずに、バルーン30の外表面との間に基材41(賦形剤)が存在してもよい。長尺体52a、52b、52cは、薬剤の生体への送達性が異なるため、薬剤の結晶の基部55の位置を調節することで、薬剤の送達性を任意に調節することが可能となる。
また、長尺体52a、52b、52cの各々は、コート層40側に固定される固定側長尺体53(バルーン基材接触結晶粒子)と、長軸を有する結晶が折れて固定側長尺体53から分離した頂部側長尺体54(バルーン基材非接触結晶粒子)とを有している。頂部側長尺体54は、固定側長尺体53から連続せずに物理的に独立している。頂部側長尺体54は、林立する複数の固定側長尺体53の間(隙間)に入り込んで保持される。したがって、バルーン30の外表面における結晶の密度が高くなり、生体組織へ接触する結晶の表面積が大きくなる。このため、バルーン30の外表面からの薬剤の放出性や生体組織への移行性を高めることができ、薬剤を生体組織へより効果的に送達できる。頂部側長尺体54は、長尺な結晶が折れることで形成される端部54aが、バルーン30の表面側(コート層40に向かう側)に向かって配置されてもよく、バルーン30の径方向外側(コート層40に向かう側の反対側)へ向かって配置されてもよい。各々の頂部側長尺体54の向き(長軸の方向)は、異なってもよく、したがって、規則的であっても不規則であってもよい。また、頂部側長尺体54は、固定側長尺体53から分離して複数に分裂してもよい。固定側長尺体53の頂部側長尺体54が分断されて形成される端部53aおよび頂部側長尺体54の端部54aは、長軸を有する結晶が折れることで鋭利に形成され得る。したがって、固定側長尺体53の端部53aおよび頂部側長尺体54の端部54aが鋭利であるため、固定側長尺体53および頂部側長尺体54が生体組織に突き刺さりやすくなり、薬剤の生体組織への送達性を高めることができる。バルーン30の表面にほぼ長尺体52bのみが存在するように調製してもよい。バルーン30の表面にほぼ長尺体52cが存在するように調製してもよい。また、バルーン30の表面には、複数の長尺体の組み合わせが存在するように調製してもよい。例えば、長尺体52aと長尺体52bの組み合わせ、長尺体52bと長尺体52cの組み合わせ、長尺体52cと長尺体52aの組み合わせ、が挙げられる。バルーン30の表面に、全ての長尺体52a、52B、52cが存在するように調製してもよい。
頂部側長尺体54の端部54aは、バルーン30の外表面に位置するコート層40の基材41に接触してもよく、または接触しなくてもよい。頂部側長尺体54の端部54aが基材41に接触する場合、頂部側長尺体54の位置が安定する。
複数の固定側長尺体53および頂部側長尺体54は、バルーン30の外表面に規則的に配置されてもよいが、不規則に配置されてもよい。また、固定側長尺体53および頂部側長尺体54は、コート層40の全体に設けられてもよいが、一部にのみ設けられてもよい。独立した長軸を有する長尺体52の全てが固定側長尺体53および頂部側長尺体54に分離されている必要はなく、したがって、固定側長尺体53および頂部側長尺体54に分離されない長尺体52も同時に存在し得る。
固定側長尺体53のバルーン30または基材41の外表面に対する傾斜角度αは、特に限定されないが45度〜135度であり、好ましくは60度〜120度であり、より好ましくは75度〜105度であり、さらに好ましくは90度である。
コート層40に含まれる薬剤量は、特に限定されないが、0.1μg/mm2〜10μg/mm2、好ましくは0.5μg/mm2〜5μg/mm2の密度で、より好ましくは0.5μg/mm2〜3.5μg/mm2、さらに好ましくは1.0μg/mm2〜3μg/mm2の密度で含まれる。コート層40の結晶の量は、特に限定されないが、好ましくは5〜500、000[crystal/(10μm2)](10μm2当たりの結晶の数)、より好ましくは50〜50、000[crystal/(10μm2)]、さらに好ましくは500〜5、000[crystal/(10μm2)]である。
結晶が各々独立した長軸を有する複数の長尺体52は、これらが組み合された状態で存在していてもよいし、隣接する複数の長尺体52同士が異なる角度を形成した状態で接触して存在してもよい。複数の長尺体52はバルーン表面上で空間(結晶を含まない空間)をおいて位置していてもよい。複数の長尺体52は、異なる長軸方向を有して円周状にブラシ状として配置されてもよい。各々の前記長尺体52は独立して存在しており、ある長さを有し、その長さ部分の一端(基端)が、基材41またはバルーン30に固定されている。長尺体52は隣接する長尺体52と複合的な構造を形成せず、連結していない。前記結晶の長軸は、ほぼ直線状である。長尺体52はその長軸が交わる基部55が接する表面に対して所定の角度を形成している。
長尺体52は、中空である場合と、中実である場合がある。長尺体52は、中空である場合、少なくともその先端付近が中空である。長尺体52の長軸に直角な(垂直な)面における長尺体52の断面は中空を有する。当該中空を有する長尺体52は長軸に直角な(垂直な)面における長尺体52の断面が多角形である。当該多角形は、例えば3角形、4角形、5角形、6角形などである。したがって、長尺体52は先端(または先端面)と基端(または基端面)とを有し、先端(または先端面)と基端(または基端面)との間の側面が複数のほぼ平面で構成された長尺多面体として形成される。この結晶形態型(中空長尺体結晶形態型)は基部55が接する表面において、ある平面の全体または少なくとも一部を構成する。
長軸を有する長尺体52の長軸方向の長さは5μm〜20μmが好ましく、9μm〜11μmがより好ましく、10μm前後であるのがさらに好ましい。長軸を有する長尺体52の径は、0.01μm〜5μmであるのが好ましく、0.05μm〜4μmであるのがより好ましく、0.1μm〜3μmであるのがさらに好ましい。長軸を有する長尺体52の長軸方向の長さと径の組み合わせの例として、長さが5μm〜20μmのときに径が0.01〜5μmである組み合わせ、長さが5〜20μmのときに径が0.05〜4μmである組み合わせ、長さが5〜20μmのときに径が0.1〜3μmである組み合わせが挙げられる。長軸を有する長尺体52は、長軸方向に直線状であるが、曲線状に湾曲してもよい。
上述した長軸を有する結晶粒子を有する結晶形態型は、バルーン30の外表面の薬剤結晶全体に対して50体積%以上、より好ましくは70体積%以上である。
コート層40のコーティング後であって長尺体52が固定側長尺体53および頂部側長尺体54に分離する前の長軸を有する結晶粒子は、バルーン30の外表面に対して寝ておらず立っているように形成される。この際の結晶粒子は、バルーン30のプリーティング(バルーンに羽根部32を形成するステップ)やフォールディング(羽根部32を折り畳むステップ)により結晶粒子の角度が変わり、バルーン30の外表面に対する結晶粒子の長軸の角度が変化することができる。したがって、最初からバルーン30の外表面に寝たように形成される結晶は、バルーン30の外表面や隣接する結晶粒子に固着(固定)されるのに対し、立っている結晶粒子は、バルーン30の外表面や隣接する結晶粒子と物理的に固定されて形成されていない。このため、立っている結晶粒子は、例えばバルーン30の外表面や隣接する結晶粒子に接触するように位置付けられている(配置されている)だけであり、三次元的に位置を変更可能である。したがって、コーティング後の結晶粒子は、バルーン30のプリーティングやフォールディングの前後で角度や位置が変わり得るように形成されている。結晶粒子の一部は、バルーン30の表面に埋め込まれていてもよい。
長尺体52を含むコート層40は、第1実施形態と同様の方法によって形成される。したがって、まず、バルーンコーティング装置60(図7を参照)によって、固定側長尺体53および頂部側長尺体54に分離する前の長尺体52が形成される。この後、バルーン折り畳み装置100(図9を参照)によりバルーン30の羽根部32が折り畳むことにより、長尺体52を固定側長尺体53および頂部側長尺体54に分離する。
バルーン30の羽根部32が折り畳まれると、図17、18(C)に示すように、羽根内側部34bと中間部34cが重なって接触し、バルーンの外表面同士が対向して重なる重複部35が形成される。そして、中間部34cの一部および羽根外側部34aは、羽根内側部34bに覆われず、外側に露出する。また、バルーン30が折り畳まれた状態では、羽根部32の根元部と中間部34cとの間に、根元側空間部36が形成される。根元側空間部36の領域では、羽根部32と中間部34cとの間に、微小な隙間が形成される。一方、羽根部32の根元側空間部36よりも先端側の領域は、中間部34cに対して密接した状態となっている。羽根部32の周方向長さに対する根元側空間部36の周方向長さの割合は、1〜95%の範囲である。バルーン30の羽根外側部34aは、ブレード132に押圧される第1フィルム181と第2フィルム182から周方向に擦れるような押圧力を受け、さらに加熱される。これにより、羽根外側部34aに設けられる薬剤結晶の長尺体52が折れて、固定側長尺体53および頂部側長尺体54が形成される(図26を参照)。なお、長尺体52の全てが折れる必要はない。
また、バルーン30の重複部35において重なる外表面は、外部に露出しないため、ブレード132から押圧力が間接的に作用する。このため、バルーン30の重複部35において重なる外表面に設けられる長尺体52に作用する力を、強くなり過ぎないように調節することが容易である。したがって、バルーン30の重複部35において重なる外表面に設けられる長尺体52を折って固定側長尺体53および頂部側長尺体54を形成するために望ましい力を作用させることができる。このため、バルーン30の重複部35において重なる外表面に、望ましい固定側長尺体53および頂部側長尺体54が形成される。また、互いに対向する羽根内側部34bと中間部34cの領域のうち、根元側空間部36に面する領域、すなわち羽根内側部34bと中間部34cとが密接しない領域では、長尺体52は押圧力を受け難い。したがって、この領域では、長尺体52が折れ難く固定側長尺体53および頂部側長尺体54が形成され難い。また、互いに対向する羽根内側部34bと中間部34cの領域のうち、根元側空間部36に面しない領域、すなわち羽根内側部34bと中間部34cとが密接している領域では、長尺体52は押圧力を受けやすい。したがって、この領域では、長尺体52が折れやすく固定側長尺体53および頂部側長尺体54が形成されやすい。
次に、第2実施形態に係るバルーンカテーテルの使用方法を、血管内の狭窄部を治療する場合を例として説明する。バルーン30を血管内に挿入し、狭窄部300で拡張させるまでは、第1実施形態と同様である。
折り畳まれたバルーン30が拡張すると、狭窄部300が、バルーン30によって押し広げられる。このとき、バルーン30の外表面に設けられる薬剤結晶を含むコート層40が、狭窄部300に接触する。コート層40に含まれる薬剤結晶である長尺体52は、固定側長尺体53および頂部側長尺体54を有しているため、固定側長尺体53および頂部側長尺体54を有しない場合と比較して、バルーン30の外表面における結晶の密度が高い。また、固定側長尺体53および頂部側長尺体54の端部は鋭利であるため、狭窄部300に刺さりやすく、さらに、頂部側長尺体54は、固定側長尺体53から独立しているために狭窄部300へ移動しやすい。このため、狭窄部300へ接触する結晶の表面積が大きくなり、バルーン30の外表面から狭窄部300へ薬剤が効果的に送達される。したがって、狭窄部300の再狭窄が、効果的に抑制される。
バルーン30を拡張させてコート層40を生体組織に押し付けると、コート層40に含まれる水溶性の低分子化合物である基材41が徐々にまたは速やかに溶けつつ、薬剤が生体へ送達される。薬剤の結晶である長尺体52a、52b、52cは、基材41に対する基部55の位置が異なるため、基材41が徐々にまたは速やかに溶けることで、生体組織への送達性が異なる。また、バルーン30が拡張することで基材41に亀裂が入って溶けやすくなり、基材41から薬剤結晶である長尺体52が放出されやすくなる。このため、長尺体52の基部55の位置を調節して溶出性の異なる長尺体52a、52b、52cを設けることで、薬剤の送達性を任意に設定することが可能である。
この後、拡張用流体をハブ26の基端開口部27より吸引して排出し、バルーン30を収縮させて折り畳まれた状態とする。この後、イントロデューサを介して血管よりガイドワイヤ200およびバルーンカテーテル10を抜去し、手技が終了する。
以上のように、第2実施形態に係るバルーンカテーテル10は、複数の長尺に延在する独立した水不溶性薬剤の結晶である長尺体52がバルーン30の外表面に設けられるカテーテルであって、長尺体52は、バルーン30の外表面側に固定されている固定側長尺体53と、固定側長尺体53から独立し、バルーン30の外表面側に固定されずに複数の固定側長尺体53の間に保持された頂部側長尺体54と、を有する。固定側長尺体53の量は、頂部側長尺体54よりも多い。このように構成したバルーンカテーテル10は、水不溶性薬剤の結晶である長尺体52が固定側長尺体53と頂部側長尺体54に分離され、頂部側長尺体54が固定側長尺体53の間に保持さているため、バルーン30の外表面における薬剤の結晶の密度が高くなり、生体組織へ接触する結晶の表面積が大きくなる。また、固定側長尺体53および頂部側長尺体54の端部は生体組織に刺さりやすく、さらに、頂部側長尺体54は、固定側長尺体53から独立しているために生体組織へ移動しやすい。このため、バルーン30の外表面からの薬剤の放出性や生体組織への移行性を高めることができ、薬剤を生体組織へ効果的に送達できる。
また、バルーン30は、収縮した状態において折り畳まれてバルーン30の外表面同士が重なる重複部35を有し、固定側長尺体53および頂部側長尺体54は、重複部35にて重なるバルーン30の外表面に設けられる。これにより、固定側長尺体53および頂部側長尺体54は、収縮した状態において外部に露出しないため、バルーン30が目的の位置へ到達するまで固定側長尺体53および頂部側長尺体54を保護できる。したがって、薬剤が送達時にバルーン30の外表面から剥がれ落ちたり血流等に流出することを抑制でき、薬剤を生体組織へより効果的に送達できる。
また、頂部側長尺体54は、端部がバルーン30側の外表面に接触してもよい。これにより、頂部側長尺体54がバルーン30の外表面から脱落せずに良好に保持され、頂部側長尺体54を良好に搬送できる。
また、水不溶性薬剤は、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、またはエベロリムスであってもよい。これにより、固定側長尺体53および頂部側長尺体54により、血管内の狭窄部の再狭窄を良好に抑制できる。
また、第2実施形態に係るバルーンカテーテル10の製造方法は、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶である複数の長尺体52をバルーン30の外表面に有するバルーンカテーテル10の製造方法であって、バルーン30の外表面に長尺体52を形成するステップと、バルーン30に径方向に突出する羽根部32を形成するステップと、バルーン30に形成された羽根部32を周方向に沿って折り畳むステップと、を有し、羽根部32を形成するステップおよび折り畳むステップの少なくとも一方において、バルーン30を変形させるために作用させる力によって長尺体52の先端側を折り、バルーン30の外表面側に固定された固定側長尺体53と、当該固定側長尺体53から独立した頂部側長尺体54とに分離し、当該頂部側長尺体54を複数の固定側長尺体53の間に保持する。上記のように構成したバルーンカテーテル10の製造方法は、バルーン30に羽根部32を形成するステップ、または羽根部32を折り畳むステップにおいてバルーン30に作用する力を利用して、固定側長尺体53および頂部側長尺体54を効率よく形成し、かつ分離した頂部側長尺体54を複数の固定側長尺体53の間に押し込んで、頂部側長尺体54を複数の固定側長尺体53の間に保持した状態とすることが容易である。
また、羽根部32を折り畳むステップにおいて、バルーン30の外表面同士が対向して重なる重複部35を形成し、当該重複部35の対向する外表面に設けられる長尺体52を折って固定側長尺体53および頂部側長尺体54を形成できる。これにより、羽根部32を折り畳むためにバルーン30に作用させる力が、重複部35には間接的に作用するため、長尺体52に作用する力を調節することが可能となり、長尺体52を固定側長尺体53および頂部側長尺体54に分離するために望ましい力を作用させることが容易となる。すなわち、重複部35に位置するバルーン30の外表面は、外力が作用する状態のみならず、外力がほとんど作用しない状態をも実現できる。このため、効率よく固定側長尺体53および頂部側長尺体54を形成できる。
また、本発明は、上述のバルーンカテーテル10を用いて生体管腔内の病変部に薬剤を送達する処置方法(治療)方法をも含む。当該処置方法は、バルーン30を生体管腔内に挿入して病変部へ到達させるステップと、バルーン30を拡張させて固定側長尺体53および頂部側長尺体54を生体組織に押し付けるステップと、バルーン30を収縮させて生体管腔から抜去するステップと、を有する。このように構成した処置方法は、固定側長尺体53の間に頂部側長尺体54が保持されていることで外表面の結晶の密度が高いバルーン30を、生体組織へ押し付けるため、生体組織へ接触する結晶の表面積が大きくなる。また、固定側長尺体53および頂部側長尺体54は、折れて分離した端部が鋭利となりやすいために生体組織に刺さりやすく、さらに、頂部側長尺体54は、固定側長尺体53から独立しているために生体組織へ移動しやすい。このため、バルーン30の外表面からの薬剤の放出性や生体組織への移行性を高めることができ、薬剤を生体組織へ効果的に送達できる。
なお、第2実施形態では、バルーン30のフォールディングの過程において、バルーン30の外表面に形成された長尺体52を固定側長尺体53および頂部側長尺体54に分離しているが、プリーティングの過程において、ブレード122による押圧により長尺体52を分離してもよい(図15を参照)。
前述のように、基材41は、アモルファス、結晶粒子、または、その混合物として存在する。図27の基材41は、結晶粒子及び/または粒子状アモルファスの状態であるが、図29に示すように、基材41がフィルム状アモルファスの状態であってもよい。図30に示すように、第1の長尺体52aは、基材41の外表面から面外方向へ延在する。図31に示すように、第2の長尺体52bは、バルーン30の外表面から基材41を貫通して基材41の外部へ延在する。図32に示すように、第3の長尺体52cは、基材41の内部から基材41の外部へ延在する。
また、図33に示すように、添加剤層である基材41は、凹凸を有してもよい。凹凸の高さは、0.1μm〜5μmである。結晶である長尺体52は、基材41の凹凸を形成する凸状部48から突出している。すなわち、基材41の凸状部48が、結晶である長尺体52を支持している。なお、基材41は、長尺体52が突出していない凸状部48を有してもよい。結晶である長尺体52は、基材41の凹凸を形成する凹状部49から突出してもよい。基材41は、長尺体52を支持する凸状部48と、長尺体52を支持しない凸状部48の両方を有してもよい。基材41は、長尺体52を支持する凹状部49と、長尺体52を支持しない凹状部49の両方を有してもよい。また、基材41は、長尺体52を支持する凸状部48と、長尺体52を支持する凹状部49の両方を有してもよい。長尺体52は、バルーン30の外表面に対して傾斜するように、基材41から斜めに突出してもよい。基材41は、バルーン30の外表面に対して略垂直な長尺体52と、バルーン30の外表面に対して傾斜する長尺体52の両方を有してもよい。長尺体52の基部55は、バルーン30の外表面と直接接触してもよい。または、長尺体52の基部55は、バルーン30の外表面と接触せずに、基材41の内部に位置してもよい。基材41は、バルーン30の外表面と直接接触する長尺体52と、バルーン30の外表面と接触しない長尺体52の両方を有してもよい。
また、図34に示すように、頂部側長尺体54の先端部、基端部、先端部と基端部の間の部位の少なくとも一部が、基材41と接触してもよい。頂部側長尺体54の一部は、基材41に埋め込まれてもよい。基材41があることで、固定側長尺体53および頂部側長尺体54は、基材41との相互作用により、搬送時にバルーン30から脱落し難い。固定側長尺体53および頂部側長尺体54は、バルーン30が拡張して水(血液)と接触することで基材41が溶解し、放出されやすくなる。形態が異なる固定側長尺体53および頂部側長尺体54は、放出性に違いがあるため、生体に作用させる上で好ましい。固定側長尺体53は、結晶が折れて形成される場合と、結晶が折れずに形成される場合がある。基材41は、結晶が折れて形成される固定側長尺体53と、結晶が折れずに形成される固定側長尺体53の両方が固定されてもよい。固定側長尺体53は、基材41から立っている場合と、基材41に沿って寝ている場合がある。基材41は、基材41から立っている固定側長尺体53と、基材41に沿って寝ている固定側長尺体53の両方を有してもよい。また、第1実施形態の長尺体42と、第2実施形態の長尺体52は、共存してもよい。
折れる前の基材41に固定された結晶の長さは、例えば5μm〜20μmである。折れた結晶の長さは、例えば3μm〜20μmである。折れて形成される固定側長尺体53の長さは、例えば5μm〜20μmである。頂部側長尺体54の長さは、例えば3μm〜10μmである。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述の実施形態に係るバルーンカテーテル10は、ラピッドエクスチェンジ型(Rapid exchange type)であるが、オーバーザワイヤ型(Over−the−wire type)であってもよい。
なお、本出願は、2016年3月23日に出願された日本特許出願番号2016−058031号および日本特許出願番号2016−058032号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。