以下に、一実施形態の画像表示装置としてのHUD装置100について図面を参照して説明する。なお、「HUD」は「ヘッドアップディスプレイ」の略称である。
図1には、本実施形態のHUD装置100の全体構成が概略的に示されている。
《HUD装置の全体構成》
ところで、ヘッドアップディスプレイの投射方式は、画像形成素子としての液晶パネル、DMDパネル(デジタルミラーデバイスパネル)、蛍光表示管(VFD)のようなイメージングデバイスで中間像を形成する「パネル方式」と、レーザ光源から出射されたレーザビームを画像形成素子としての2次元走査デバイスで走査し中間像を形成する「レーザ走査方式」がある。特に後者のレーザ走査方式は、全画面発光の部分的遮光で画像を形成するパネル方式とは違い、各画素に対して発光/非発光を割り当てることができるため、一般に高コントラストの画像を形成することができる。
そこで、HUD装置100では「レーザ走査方式」を採用している。無論、投射方式として上記「パネル方式」を用いることもできる。
HUD装置100は、一例として、車両、航空機、船舶、産業用ロボット等の移動体に搭載され、該移動体のフロントウインドシールド50(図1参照)を介して該移動体の操縦に必要なナビゲーション情報(例えば移動体の速度、進行方向、目的地までの距離、現在地名称、移動体前方における物体の有無や位置、制限速度等の標識、渋滞情報などの情報)を視認可能にする。この場合、フロントウインドシールド50は、入射された光の一部を透過させ、残部の少なくとも一部を反射させる透過反射部材としても機能する。以下では、HUD装置がフロントウインドシールド50を備える車両(例えば自動車)に搭載される例を、主に説明する。
HUD装置100は、図1に示されるように、光源装置11、光偏向器15及び走査ミラー20(例えば凹面鏡)を含む光走査手段10と、スクリーン30と、凹面ミラー40とを備え、フロントウインドシールド50に対して画像を形成する光を照射することにより、視認者A(ここでは自動車の乗員である運転者)の視点位置から虚像Iを視認可能にする。つまり、視認者Aは、光走査手段10によりスクリーンに形成(描画)される画像(中間像)を、フロントウインドシールド50を介して虚像Iとして視認することができる。
HUD装置100は、一例として、自動車のダッシュボードの下方に配置されており、視認者Aの視点位置からフロントウインドシールド50までの距離は、数十cmから精々1m程度である。
ここでは、凹面ミラー40は、虚像Iの結像位置が所望の位置になるように、一定の集光パワーを有するように既存の光学設計シミュレーションソフトを用いて設計されている。
HUD装置100では、虚像Iが視認者Aの視点位置から1m以上かつ10m以下(好ましくは6m以下)の位置(奥行位置)に表示されるように、凹面ミラー40の集光パワーが設定されている。
なお、通常、フロントウインドシールドは、平面でなく、僅かに湾曲している。このため、凹面ミラー40とフロントウインドシールド50の曲面により、虚像Iの結像位置が決定される。
光源装置11では、画像データに応じて変調されたR,G,Bの3色のレーザ光が合成される。3色のレーザ光が合成された合成光の一部は、光偏向器15の反射面に導かれる。光偏向器15は、半導体製造プロセス等で作製されたMEMSスキャナであり、直交する2軸周りに独立に揺動可能な単一の微小ミラーを含む。なお、光偏向器15は、1軸周りに揺動可能な微小ミラーを含むMEMSスキャナを2つ組み合わせたものであっても良い。また、スキャナとして、MEMSスキャナに限らず、例えばガルバノスキャナやポリゴンスキャナを用いても良い。光源装置11、光偏向器15の詳細は、後述する。
光源装置11からの画像データに応じた光(上記合成光の一部)は、光偏向器15で偏向され、走査ミラー20で広がりを抑制されつつ折り返されてスクリーン30に照射される。そこで、スクリーン30が光走査され該スクリーン30上に中間像が形成される。なお、凹面ミラー40は、フロントウインドシールド50の影響で中間像の水平線が上または下に凸形状となる光学歪み要素を補正するように設計、配置されることが好ましい。
スクリーン30を介した光は、凹面ミラー40でフロントウインドシールド50に向けて反射される。フロントウインドシールド50への入射光束の一部はフロントウインドシールド50を透過し、残部の少なくとも一部は視認者Aの視点位置に向けて反射される。この結果、視認者Aはフロントウインドシールド50を介して中間像の拡大された虚像Iを視認可能となる、すなわち、視認者から見て虚像Iがフロントウインドシールド50越しに拡大表示される。
なお、フロントウインドシールド50よりも視認者Aの視点位置側に透過反射部材としてコンバイナを配置し、該コンバイナに凹面ミラー40からの光を照射するようにしても、フロントウインドシールド50のみの場合と同様に虚像表示を行うことができる。
《HUD装置の制御系のハードウェア構成》
図2には、HUD装置100の制御系のハードウェア構成を示すブロック図が示されている。HUD装置100の制御系は、図2に示されるように、FPGA600、CPU602、ROM604、I/F608、バスライン610、LDドライバ6111、MEMSコントローラ615を備えている。
FPGA600は、画像データ及び後述する光検出器120の出力信号に応じてLDドライバ6111を介して後述するLDを動作させ、MEMSコントローラ615を介して光偏向器15を動作させる。CPU602は、HUD装置100の各機能を制御する。ROM604は、CPU602がHUD装置の各機能を制御するために実行する画像処理用プログラムを記憶している。RAM606は、CPU602のワークエリアとして使用される。I/F608は、外部コントローラ等と通信するためのインターフェイスであり、例えば、自動車のCAN(Controller Area Network)等に接続される。
《HUD装置の機能ブロック》
図3には、HUD装置100の機能を示すブロック図が示されている。HUD装置100は、図3に示されるように、車両情報入力部800、外部情報入力部802、画像データ生成部804及び画像描画部806を備えている。車両情報入力部800には、CAN等から車両の情報(速度、走行距離、対象物までの距離、外界の明るさ等の情報)が入力される。外部情報入力部802には、外部ネットワークから車両外部の情報(GPSからのナビ情報等)が入力される。画像データ生成部804は、車両情報入力部800及び外部情報入力部802から入力される情報に基づいて、描画すべき画像の画像データを生成し、FPGA600に送る。画像描画部806は、制御部8060を備え、該制御部8060は、FPGA600に画像描画を開始もしくは終了させるための制御信号を送信する。
《光偏向器の構成》
図4には、光偏向器15の構成が示されている。光偏向器15は、半導体プロセスにて製造されたMEMSスキャナであり、図4に示されるように、反射面を有するミラー150と、X軸方向に並ぶ複数の梁を含み、隣り合う2つの梁が折り返し部を介して蛇行するように接続された一対の蛇行部152とを有する。各蛇行部152の隣り合う2つの梁は、梁A(152a)、梁B(152b)とされ、枠部材154に支持されている。複数の梁には、複数の圧電部材156(例えばPZT)が個別に設けられている。各蛇行部の隣り合う2つの梁の圧電部材に異なる電圧を印加することで、該蛇行部の隣り合う2つの梁が異なる方向に撓み、それが蓄積されて、ミラー150がX軸周り(=垂直方向)に大きな角度で回転することになる。このような構成により、X軸を中心とした垂直方向の光走査が、低電圧で可能となる。一方、Y軸を中心とした水平方向では、ミラー150に接続されたトーションバーなどを利用した共振による光走査が行われる。
以上のように構成される光偏向器15によって、スクリーン30の画像描画領域に対してレーザビームが2次元的に走査(例えばラスタースキャン)されるとともに(図5参照)、レーザビームの走査位置に応じてLDの発光制御を行うことで画素毎の描画、虚像の表示を行うことができる。なお、図5において、Psは、走査線ピッチである。
HUD装置100からは、瞬間的にはレーザビーム径に相当する点像しか投射されないが、非常に高速に走査させるため、一フレーム画像内では十分に人間の目に残像が残っている。この残像現象を利用することで、運転者には、あたかも「表示エリア」に像を投射させているように知覚される。実際には、スクリーン30に映った像が、凹面ミラー40とフロントウインドシールド50によって反射されて運転者に「表示エリア」において虚像として知覚される。このような仕組みであるので、像を表示させない場合は、LDの発光を停止すれば良い。つまり、「表示エリア」において虚像が表示される箇所以外の箇所の輝度を実質0にすることが可能となる。
すなわち、HUD装置100による虚像の結像位置は、該虚像を結像可能な所定の「表示エリア」内の任意の位置となる。この「表示エリア」は、HUD装置の設計時の仕様で決まる。
このように、「レーザ走査方式」を採用したことにより、表示したい部分以外では、表示の必要がないためLDを消灯したり、光量を低下させたりするなどの措置を取ることができる。
これに対して、例えば液晶パネル及びDMDパネルのようなイメージングデバイスで中間像を表現する「パネル方式」では、パネル全体を照明する必要があるため、画像信号としては非表示とするために黒表示であったとしても、液晶パネルやDMDパネルの特性上、完全には0にし難いため、黒部が浮き上がって見えることがあったが、レーザ走査方式ではその黒浮きを無くすことが可能となる。
《スクリーンの構成》
スクリーン30は、図6に示されるように、マイクロレンズ300が隙間なく配列されたマイクロレンズアレイ構造を有し、光源装置11からのレーザ光を所望の発散角で発散させる(図7(a)参照)。
マイクロレンズ300は、幅が200um程度の六角形の外形を有している。マイクロレンズ300は、外形が六角形であることにより、最密に配列することができる。なお、マイクロレンズ300の外形として、六角形に限らず、四角形や三角形を採用することもできる。また、本実施形態においては、レンズが規則正しく並んだ構造の例を示しているが、これに限らず、各レンズ中心を互いに偏心させ不規則な配列とした偏心配列とすることもできる。偏心配列を採用した場合は、各レンズは互いに異なる形状となる。
より詳細には、スクリーン30は、図7に示されるように、マイクロレンズ300が2次元配置された光学板301からなる。光学板301上を入射光束302が走査するとき、光束はマイクロレンズ300により発散され、発散光303となる。マイクロレンズ300の構造により、入射光束を所望の発散角304で発散させることが可能とある。通常、マイクロレンズの周期305は、入射光束の径306よりも大きくなるように設計され、これによりレンズ間での干渉が起きず、スペックルは生じない。
図7(b)は、入射光束の径311が、マイクロレンズアレイ周期312の2倍大きい場合の発散光の光路を示す。入射光束311は二つのレンズ313、314に同時入射し、それぞれ発散光束315、316を生じる。このとき、領域317においては、2つの発散光束が同時に存在するため、光の干渉を生じうる。この干渉光束が観察者の目に入ると、スペックルとして視認される。
以上を考慮し、スペックルを低減するため、マイクロレンズアレイのレンズ配列周期306は入射光束の径307よりも大きく設計される。
なお、図7は凸面レンズの形態で記述しているが、凹面においても同様の効果があるものとする。
《光源装置》
以下に、光源装置11について詳細に説明する。図8には、光源装置11の構成が概略的に示されている。以下では、図8等に示されるαβγ3次元直交座標系を適宜用いて説明する。
光源装置11は、図8に示されるように、単数あるいは複数の発光点を有する複数(例えば3つ)の発光素子111R、111G、111B、複数(例えば3つ)のカップリングレンズ112R、112G、112B、複数(例えば3つ)のアパーチャ部材113R、113G、113B、光路折り返し素子114(例えば反射ミラー)、例えば2つの光路合成素子115、116、光路分岐素子118、集光レンズ119、光検出器120などを備えている。光源装置11の上記各構成部材は、不図示の支持体に対して位置決め固定されている。
3つの発光素子111R、111G、111Bは、例えばLD(レーザダイオード)であり、互いに異なる波長λR、λG、λBの光束を出射する。例えばλR=640nm、λG=530nm、λB=445nmである。ここでは、3つの発光素子111R、111G、111Bはβ軸方向に並び、各発光素子の出射方向は+α方向である。各発光素子は、FPGA600によりLDドライバ6111を介して画像データに応じて変調駆動される。以下では、発光素子111R、発光素子111B、発光素子111Gを、それぞれLD111R、LD111B、LD111Gとも表記する。また、波長λR、λG、λBの光束を、それぞれ光束λR、光束λG、光束λBとも表記する。
LD111R、111G、111Bから出射された波長λR、λG、λBの光束は、対応するカップリングレンズ112R、112G、112Bにより後続の光学系にカップリングされる。
カップリングされた光束は、対応するアパーチャ部材113R、113G、113Bにより整形される。各アパーチャ部材の開口形状は、光束の発散角等に応じて円形、楕円形、長方形、正方形等、様々な形状とすることができる。
アパーチャ部材113Bを介した波長λBの光束は、光路折り返し素子114で−β方向に反射される。
光路折り返し素子114を介した波長λBの光束とアパーチャ部材113Gを介した波長λGの光束は、光路合成素子115(例えばダイクロイックミラー)で光路合成される。詳述すると、光路折り返し素子114を介した波長λBの光束は光路合成素子115の中心を−β方向に透過し、アパーチャ部材113Gを介した波長λGの光束は光路合成素子115の中心で−β方向に反射される。
そして、波長λB、λGの光束が合成された合成光束λGBと、アパーチャ部材113Rを介した波長λRの光束とが光路合成素子116(例えばダイクロイックミラー)で光路合成される。なお、ここでは、2つの光路合成素子115、116は、別体とされているが、一体的に設けられても良い。
詳述すると、合成光束λGBは、光路合成素子116の中心を−β方向に透過する。アパーチャ部材113Rを介した波長λRの光束は、光路合成素子115の中心で−β方向に反射される。
すなわち、光路合成素子116から、合成光束λGBと光束λRが合成された合成光束λRGBが−β方向に出射される。
光路合成素子116からの合成光束λRGBは、光路分岐素子118に入射する。その入射光は一部(合成光束λRGB1)が光路分岐素子118を−β方向に透過し、他の一部すなわち残部の少なくとも一部(合成光束λRGB2)が光路分岐素子118で+α方向に反射される。すなわち、合成光束λRGBは、光路分岐素子118で合成光束λRGB1と合成光束λRGB2に分岐される。
合成光束λRGB1は、集光レンズ117を介して光偏向器15に照射され、スクリーン30上での画像描画、ひいては虚像表示に用いられる。すなわち、合成光束λRGB1は、画像光として用いられる。
合成光束λRGB2は、集光レンズ119を介して光検出器120に照射され、虚像の色や明るさを調整するためのモニタ光として利用される。
詳述すると、光検出器120は、受光した合成光束λRGB2の光量に応じた信号を、FPGA600に出力する。FPGA600は、光検出器120の出力信号に基づいて、合成光束λRBG1の光量が所望の光量になり、かつ合成光束λRGB1のR、G、Bの光量の比が表示すべき色に応じた比となるように各発光素子の発光パワー(光出力)を設定し、その設定値をLDドライバ6111に送る。LDドライバ6111は、発光素子毎に設定された発光パワーの設定値に応じた駆動電流を該発光素子に印加する。また、FPGA600は、例えば画像描画領域の周辺領域を走査するときに、各発光素子を順次発光させ、発光素子毎の光検出器120の出力信号に基づいて該発光素子の発光パワーを制御しても良い。
光検出器120としては、例えばフォトダイオード(PD)、フォトトランジスタ等を用いることができる。
なお、光路分岐素子118は、光路合成素子116とスクリーン30との間の合成光束λRGBの光路上に配置されれば良い。
また、集光レンズ119は、設置されなくても良い。また、集光レンズ119に代えて、光を発散する素子を設置しても良い。
また、光検出器は光源の数に応じて複数設置されても良く、この場合には、後段回路でのゲイン切り替えなど、回路の簡便化を図ることができる。光検出器を複数設置する場合の設置箇所としては、光路分岐素子118で反射された光の光路上の他、例えば光路折り返し素子114と光路合成素子115との間の光路上や、光路合成素子115、116間の光路上が挙げられる。
ここで、各発光素子から光路合成素子116までの光路長は互いに異なる。具体的には、発光素子111Bから光路合成素子116までの光路長が最長であり、発光素子111Rから光路合成素子116までの光路長が最短である。これは、虚像で白を構成する際、RGBの合成比率は約2.5:1:0.5であり、赤の光量が多く必要であり、逆に青の光量は小さくてよいことに由来しており、発光素子による光利用効率の低下を抑制するためである。
図9には、比較例において、偏光光源であるLD(レーザダイオード)からの光を板状の光路分岐素子118´によって画像光(透過光)とモニタ光(反射光)に分岐する構成が示されている。
比較例では、LDの偏光方向はγ軸方向であり、該LDの出射光は電場がγ軸方向に振動する直線偏光である。すなわち、LDは、出射光の偏光方向がγ軸方向に一致するように配置されている。光路分岐素子118´は、αβ平面に垂直に、かつLDからの光(入射光)の入射角が45°になるように配置されている。
ここで、仮に光路分岐素子118´が光学ガラス板118a(光学ガラス製の板状部材、屈折率1.5)である場合、LDから出射され該光学ガラス板118aに入射する直線偏光(入射光)は、その電場の振動方向(γ軸方向)が入射面(αβ平面)に垂直であり光学ガラス板118aに対してS偏光入射するため、その反射率が略10%になってしまう(図12の破線Rs(入射角変化に対するS偏光の反射率変化を示す線)参照)。
このため、光学ガラス板118aを透過する光(画像光)は、入射光の略90%に留まってしまう。
ここで、画像光は車両の運転環境の変化に応じて高い輝度を実現することが求められる。また、光検出器120での受光量が大きいと光検出器120が高温になり、その検出結果においてノイズや誤差が発生したり、光検出器120の劣化が早まること等により、検出精度が低下する。
このため、画像光(透過光)の光量を極力大きくすること、すなわちモニタ光(反射光)の光量を極力小さくすることが望まれる。
そこで、比較例では、光路分岐素子118´として、光学ガラス板118aの入射側の面(表面)に多層構成の光学薄膜118Aを成膜したものを用いて、反射率を略10%程度に抑えている。
さらに、比較例では、光学ガラス板118aの出射側の面(裏面)に裏面反射を防止するための光学薄膜118B(反射防止膜)を成膜している。なお、「反射防止」とは、光学ガラス板に光学薄膜が成膜されている場合に、成膜されていない場合に比べ、反射率が低減されることをいう。
光学ガラス板の裏面に光学薄膜を成膜する理由は2つある。1つ目は、光学ガラス板の裏面に光学薄膜を成膜しない場合には、光学ガラス板の裏面で反射され光検出器120に入射する光が多くなり、該光の進行方向のズレなどによるモニタ光量(モニタ光の光量)の変化が大きくなるからである。2つ目は、透過光(画像光)を多くして画像の輝度を向上させることができ、かつ反射光(モニタ光)を少なくして光検出器120が高温になるのを抑制できるからである。
以上説明したように、光路分岐素子118´が入射端に光学薄膜118Aを有することにより、画像光を入射光の90%以上にすること(モニタ光を入射光の10%以下にすること)が可能である。
しかしながら、実際には、LDは発光による自己発熱を起こし、発振波長のシフトが起こる。また、光学薄膜118Aは、図10に示されるように、入射光の波長変化により反射率が急峻に変化する分光特性(透過反射特性)を有している。
すなわち、光学薄膜118Aは、図10の分光特性により、LDの発振波長の変化に応じて反射率が所望のパーセンテージから大きく変化する。この反射率の変化は、モニタ光と画像光で独立して起こり、さらに光学薄膜118Aの製造ばらつきが影響するため、制御が困難である。
図11には、本実施形態の光源装置11(図8参照)において、偏光光源である3つのLD111B、111G、111Rからの光束λB、λG、λRが合成された合成光束λRGBを板状の光路分岐素子118によって画像光(透過光)とモニタ光(反射光)に分岐する構成が示されている。
光源装置11では、出射方向を+α方向とする各LDは、偏光方向がβ軸方向であり、該LDの出射光は電場がβ軸方向に振動する直線偏光である。すなわち、各LDは、出射光における偏光方向がβ軸方向に一致するようにα軸周り(出射方向周り)の位置が設定されている。そして、各LDからの光は進行方向が+α方向から−β方向に曲げられたときに偏光方向がα軸方向となる。結果として、光路分岐素子118への入射光(−β方向に進行する光)である合成光束λRGBの偏光方向は、α軸方向に一致する。
光路分岐素子118は、αβ平面に垂直に、かつ合成光λRGBの入射角θが例えば45°になるように配置された光学ガラス板118a(屈折率1.5)を含む。光学ガラス板118aの一面(表面)が、光路分岐素子118の入射端であり光路分岐面として機能する。
この場合、合成光束λRGB(直線偏光)は、偏光方向(α軸方向)が入射面(αβ平面)に平行であり、光学ガラス板118aに対して(より正確には光路分岐面に対して)P偏光入射するため、反射率を略1%にすることができる(図12の実線Rp参照)。なお、図12の実線Rp、破線Rsは、それぞれ光が空気(屈折率1)からガラス(屈折率1.5)に入射するときの入射角変化に対するP偏光、S偏光の反射率変化を示している。
この結果、光学ガラス板118aを透過する光(画像光)を、入射光の略99%にすることができる。
本実施形態の光路分岐素子118は、光学ガラス板118aの一面を入射端としているため、入射光の波長変化に対して、比較例の光路分岐素子118´のような急峻に変化する分光特性ではなく、光学ガラス板118aの一面に依存する比較的緩やかに概ね線形に変化する分光特性を有する。
このため、本実施形態の光路分岐素子118では、LDが発光による自己発熱を起こし、発振波長のシフトが起こっても、反射率が大きく変化することはない。すなわち、光路分岐素子118での反射率の変動を該反射率の所望値の±5%程度の範囲に抑えることができる。例えば光路分岐素子118での反射率の所望値が1%である場合には、該反射率の変動を±0.05%程度の範囲に抑えることができる。
よって、画像光の色や明るさの制御を優位に行うことが可能である。
また、光路分岐素子118においても、光学ガラス板118aの出射面側(裏面側)に裏面反射を防止するための光学薄膜118B(反射防止膜)を成膜することが望ましい。その理由は前述の通りである。
以上の説明では、入射光が光路分岐素子118に対して完全なP偏光であることを前提とした。しかしながら、実際には、光路分岐素子118に入射する光束は、LDの製造ばらつきや組付け、その他素子のばらつきに起因する偏光の楕円化、方位角の回転が生じ、光路分岐素子118に対して完全なP偏光ではなく、P偏光とS偏光が混在する光束であることが多いと考えられる。LDの出射光も、実際には、偏光方向が互いに直交する2つの偏光が混在する光束であることが多いと考えられる。そこで、本明細書において「P偏光入射」を「入射光の光路分岐面に対するP偏光成分がS偏光成分よりも多いこと」と定義する。
入射光において、光路分岐素子118に対するP偏光成分の割合がS偏光成分の割合よりも多い場合には、S偏光成分の割合がP偏光成分の割合以上の場合よりも、光路分岐素子118での反射率を全体として低減することが可能である(図12参照)。
そこで、光源装置11において、上述のように光路分岐素子118をαβ平面に垂直に配置する場合(光学ガラス板118aの表面(光路分岐面)の法線がαβ平面に平行な場合)には、偏光の楕円率、方位各を考慮して、光路分岐素子118への入射光(合成光束λRGB)においてα軸方向を偏光方向とする偏光(光路分岐面に対してP偏光成分)がγ軸方向を偏光方向とする偏光(光路分岐面に対してS偏光成分)よりも多くなるように各LDの出射方向周り(例えばα軸周り)の位置を設定することが好ましい。
一方、光源装置11において、例えば光路分岐素子118をβγ平面に垂直に配置する場合(光学ガラス板118aの表面(光路分岐面)の法線がβγ平面に平行な場合)には、偏光の楕円率、方位各を考慮して、光路分岐素子118への入射光(合成光束λRGB)においてγ軸方向を偏光方向とする偏光(光路分岐面に対してP偏光成分)がα軸方向を偏光方向とする偏光(光路分岐面に対してS偏光成分)よりも多くなるように各LDの出射方向周りの位置を設定することが好ましい。
すなわち、互いに直交する2つの偏光が混在する光を出射するLDの姿勢(配置)と、光路分岐素子118の姿勢(配置)の組み合わせによって、光路分岐素子118への入射光におけるP偏光成分とS偏光成分の大小関係が決まる。LDの出射光における互いに直交する2つの偏光の比は、LDの設計によって決まる。
なお、以上の説明では、光路分岐素子118の姿勢を基準に各LDの姿勢を設定しているが、逆に各LDの姿勢を基準に光路分岐素子118の姿勢を設定しても良く、要は、入射光における光路分岐素子118に対するP偏光成分がS偏光成分よりも多くなるように各LDと光路分岐素子118が配置されれば良い。
ここで、光路分岐素子118への入射光の入射角θでのP偏光成分の反射率Rpに入射光に占めるP偏光成分の割合rpを乗じた値と、入射角θでのS偏光成分の反射率Rsに入射光に占めるS偏光成分の割合rsを乗じた値の和Rtが10%以下となることが好ましい。すなわち、Rt=Rp×rp+Rs×rs≦10%が成立することが好ましい。Rtは、実質的に光路分岐面での反射率となるため、画像光(透過光)を多くするために、かつモニタ光(反射光)を少なくするために、低いほど好ましい。
図13は、rp:rsとθをパラメータとしたRt(%)を示す表である。なお、図13では、rp:rsの整数比を代表的に示している。すなわち、rp:rsは、当然ながら整数比以外の比にも成り得る。
ここで、図12において、
θ=30°のとき、Rp=2.5%、Rs=5.8%である。
θ=45°のとき、Rp=0.8%、Rs=9.2%である。
θ=60°のとき、Rp=0.2%、Rs=17.7%である。
θ=62°のとき、Rp=0.5%、Rs=19.5%である。
θ=70°のとき、Rp=4.2%、Rs=30.0%である。
θ=74°のとき、Rp=9.0%、Rs=37.7%である。
図13から分かるように、Rtは、θによらずrpが大きくなりrsが小さくなるほど、低くなる。逆に言うと、Rtは、θによらずrsが大きくなりrpが小さくなるほど、高くなる
以上の説明から明らかなように、θが同一の条件下では、rp>rsの場合には、rp≦rsの場合に比べて、Rtを低くすることができる。また、Rtを10%以下にするためのθの上限は、rp>rsの場合の方が、rp≦rsの場合よりも大きくなる。
結果として、rp>rsの場合には、rp≦rsの場合に比べて、入射光に占める画像光(透過光)の割合を大きくしモニタ光(反射光)の割合を小さくすることができ、かつθの選択の自由度を大きくすることができる。
例えば、rp>rsの場合に、74°以下の任意のθに対して、Rt≦10%とすることが可能なrp:rsが存在する(図13参照)。この場合には、予め設定されたrp:rsに応じてRt≦10%を満たすθを選択するか、もしくは予め設定されたθに応じてRt≦10%を満たすrp:rsとなるようにLDを設計、配置することが好ましい。
また、rp>rsの場合に、62°以下の任意のθに対して、概ねrp:rsによらず、Rt≦10%とすることが可能である(図13参照)。この場合には、Rt≦10%とするためのLDの設計や選択の自由度を大きくできる。
なお、LDへの戻り光が発生する可能性や各構成部材のレイアウト上の制約を考慮すると、θの下限値は5°〜25°の範囲内の所定の値が適正であると考えられる。
以上説明した本実施形態の光源装置11は、光源(LD)と、該光源からの光が入射され、入射光を透過光と反射光に分岐する分岐面(光路分岐面)を有する光学素子(光路分岐素子118)と、反射光を受光する光検出器120と、を備え、入射光の分岐面に対するP偏光成分がS偏光成分よりも多くなるように光源と光学素子が配置されている。
この場合、分岐面での入射光の反射率を低減させ、光検出器120での受光量を低減させることができる。
このため、光検出器120での受光量を低減させるために、特許文献1に開示されている複雑な意匠を持つ筒状素子を設ける必要がない。
すなわち、上記筒状素子を設けることなく、光検出器120が高温になるのを抑制できる。
結果として、高コスト化を抑制しつつ検出精度の低下を抑制できる。
また、光源装置11では、例えば画像表示に用いられる透過光を多くすることができ、画像(虚像)の輝度を向上させることができる。
また、LDの偏光方向及びLDの出射方向を含む面(例えばαβ平面)と、分岐面(光路分岐面)とが、略直交することが好ましい。この場合、入射光の一部を分岐面で確実にP偏光反射させることができ、かつ光源装置11の薄型化(例えばγ軸方向の薄型化)を図ることができる。本明細書において「LDの偏光方向」は「LDの出射光に占める偏光成分の割合が50%よりも大きい方向」と広義に定義することができる。
例えば、LDの出射光が、偏光方向が互いに直交する2つの偏光成分(例えばβ軸方向を偏光方向とする偏光成分とγ軸方向を偏光方向とする偏光成分)を異なる割合で含む場合には、該2つの偏光成分のうち出射光に占める割合が大きい方の偏光成分の偏光方向(例えばβ軸方向)及びLDの出射方向(例えばα軸方向)を含む面(例えばαβ平面)と、分岐面(光路分岐面)とが、略直交することが好ましい(図8、図11参照)。
また、光検出器の受光面と、LDの偏光方向及びLDの出射方向を含む面とが、略直交することが好ましい。この場合、光源装置11の薄型化(例えばγ軸方向の薄型化)に寄与するとともに、光検出器120に入射されるモニタ光の光量が微量であっても検出し易くなる。
例えば、LDの出射光が、偏光方向が互いに直交する2つの偏光成分(例えばβ軸方向を偏光方向とする偏光成分とγ軸方向を偏光方向とする偏光成分)を異なる割合で含む場合には、光検出器120の受光面と、出射光に占める割合が大きい方の偏光成分の偏光方向(例えばβ軸方向)及びLDの出射方向(例えばα軸方向)を含む面(例えばαβ平面)とが、略直交することが好ましい(図8、図11参照)。
また、分岐面は光学素子の入射端であり、光学素子は、分岐面を一面(表面)とする、光学ガラスから成る光学部材(光学ガラス板118a)を含む。
この場合、例えば光学素子が光源からの出射光の波長変化に依存する分光特性を有する膜(光学薄膜118A)を入射端に有する場合に比べて、光学素子の入射端での反射率の変化を小さくでき、ひいては検出精度の低下を抑制できる。
また、光学素子が、光学部材の一面(表面)の反対側の面(裏面)に設けられ該面よりも光の反射率が低い膜(光学薄膜118B)を含む場合には、裏面反射を抑制でき、検出精度の低下を抑制できる。
また、分岐面に対する入射角θが74°以下である場合には、分岐面での反射率を10%以下に抑えることが可能である。
更に、入射角θが62°以下である場合には、概ねP偏光成分とS偏光成分の比(rp:rs)によらず、分岐面での反射率を10%以下に抑えることが可能である。
また、光源が半導体レーザ(例えばLD)である場合には、透過光(例えば画像光)の高輝度化を実現できる。なお、半導体レーザとして、LDの代わりにVCSEL(面発光レーザ)を用いても良い。
また、HUD装置100は、光源装置11と、光源装置11からの光により画像を形成する光偏向器15(画像形成素子)と、を備えているため、高コスト化を抑制しつつ視認性の良い画像(所望の輝度、色の画像)を安定して表示できる。
また、HUD装置100は、光源装置11の光検出器120からの信号に基づいて各光源(発光素子)の出力を制御する、FPGA600及びLDドライバ6111を含む制御系を更に備えるため、該光源の出力を安定して精度良く制御できる。この結果、画像光の制御を優位に行うことができ、色や明るさに関する画像品質を向上させることができる。
また、HUD装置100は、画像を形成した光が照射されるスクリーン30を更に備えるため、該スクリーン30に中間像を形成できる。
また、スクリーン30を介した光を透過反射部材(例えばフロントウインドシールド50)に向けて投射する凹面ミラー40(投射部)を更に備えるため、スクリーン30を介した光をフロントウインドシールド50の所望の領域に照射することができる。
また、HUD装置100と、該HUD装置100が搭載される移動体(例えば自動車)と、を備える移動体装置によれば、移動体の操縦者に視認性の良い画像(虚像)を安定して提供することができる。
なお、上記実施形態において、光路分岐素子の出射端を光学ガラス板の他面(裏面)とし、該他面を光路分岐面としても良い。この場合、光学ガラス板の一面(表面)に反射防止膜を成膜しても良い。
また、上記実施形態において、光路折り返し素子114を設けずに、発光素子111B、カップリングレンズ112B、アパーチャ部材113Bを、光路合成素子115の+β側に配置し、アパーチャ部材113Bを介した光を光路合成素子115に直接入射させても良い。この場合は、発光素子111Bの出射光の偏光方向を調整する際、出射方向周りであるβ軸周りの位置を調整すれば良い。
また、上記実施形態において、光路折り返し素子114、光路合成素子115と光路合成素子116、光路分岐素子118の少なくとも2つを一体的に設けても良い。
また、例えば光路折り返し素子114に代えて、光路分岐素子118と同様の光路分岐素子を設け、該光路分岐素子で反射された青色光の光路上に光検出器を追加的に設けても良い。
《変形例》
図14には、変形例の光源装置11Tの構成が示されている。光源装置11Tは、光路折り返し機能、光路合成機能及び光路分岐機能を有する光学素子121を備えている。なお、光源装置11Tにおいて、発光素子、カップリングレンズ、アパーチャ部材の配置は、上記実施形態の光源装置11と同様である。光源装置11Tも、光源装置11と同様に、上記実施形態のHUD装置100の光源装置として利用できる。
すなわち、光学素子121は、図14に示されるように、一例として、αβ断面がβ軸方向に細長い四角形であり、+β側の端面がαγ平面に対して例えば45°傾斜している。
詳述すると、光学素子121は、+β側の端面が光路折り返し面121A(反射面)として機能し、−β側の端面が光路分岐面121Dとして機能し、+β側及び−β側の端面間に位置する+β側の端面に平行な+β側及び−β側の境界部がそれぞれ光路合成部121B、121Cとして機能する。
より詳細には、光学素子121は、β軸方向に並ぶ3つの光学ガラス部材121a、121b、121cを有している。+β側の光学ガラス部材121a及び中間の光学ガラス部材121bはαβ断面が平行四辺形であり、−β側の光学ガラス部材121cはαβ断面が四角形である。+β側の光学ガラス部材121aの+β側の端面には鏡面加工が施されている。+β側の光学ガラス部材121aの−β側の端面と中間の光学ガラス部材121bの+β側の端面とが、青色光を透過させ緑色光を反射させる光路合成部121B(例えばダイクロイック膜)を介して接合されている。中間の光学ガラス部材121bの−β側の端面と−β側の光学ガラス部材121cの+β側の端面とが、青色光及び緑色光を透過させ赤色光を反射させる光路合成部121C(例えばダイクロイック膜)を介して接合されている。−β側の光学ガラス部材121cの−β側の端面が光路分岐面121Dである。光路分岐面121Dは、αγ平面に対して傾斜している。
このように、変形例の光源装置11Tでは、光学素子121は、光路折り返し、2回の光路合成、光路分岐を順次行うための3つの光学ガラス部材121a、121b、121cが予め精度良く位置決めされた構成を有しているため、光路折り返し、2回の光路合成、光路分岐を互いに別体の4つの素子で行う上記実施形態の光源装置11に比べて、装置製造時の素子の組み付けが容易であり、かつ素子を構成する部材間の経時の位置ずれが生じ難い。以下に、光学素子121の各面について説明する。
光路折り返し面121Aは、発光素子111Bから出射された光束の偏向や白を合成する光量調整に用いることが可能である。
光路合成部121Bは、発光素子111B、111Gから出射された光束の合成、白を合成する光量調整などに用いることが可能である。
光路合成部121Cは、発光素子111B、111G、111Rから出射された光束の合成、白を合成する光量調整に用いることが可能である。
光路分岐面121Dは、入射光の一部を透過させ他の一部(残部の少なくとも一部)を反射させる。すなわち、光路分岐面121Dは、入射光を画像光(透過光)とモニタ光(反射光)に分岐する。
発光素子111Bから+α方向に出射された光束λBは、カップリングレンズ112B、アパーチャ部材113Bを介して光路折り返し面121Aに入射し、光路折り返し素子121Aで光路が90°曲げられ光路合成部121Bへ向けて−β方向に進行する。ここで、発光素子111Bの偏光方向はβ軸方向であり、光路折り返し面121Aはαβ平面に対して垂直である。すなわち、光路折り返し面121Aへの光束入射λBの入射はP偏光入射である。そして、光路折り返し面121Aで反射された光束λBの偏光方向はα軸方向となる。
発光素子111Gから出射された光束λGは、カップリングレンズ112G、アパーチャ部材113Gを介して光路合成部121Bに入射し、光路合成部121Bで光路が90°曲げられ光路合成部121Cへ向けて−β方向に進行する。ここで、発光素子111Gの偏光方向はβ軸方向であり、光路合成部121Bはαβ平面に対して垂直である。この場合、光路合成部121Bで反射された光束λGの偏光方向はα軸方向となる。
光路折り返し面121Aからの光束λBは、光路合成部121Bで光束λGと光路合成され、光路合成部121Cへ向けて−β方向に進行する。
発光素子111Rから出射された光束λRは、カップリングレンズ112R、アパーチャ部材113Rを介して光路合成部121Cに入射し、光路合成部121Cで光路が90°曲げられ光路分岐面121Dへ向けて−β方向に進行する。発光素子111Rの偏光方向はβ軸方向であり、光路合成部121Cはαβ平面に対して垂直である。この場合、光路合成部121Cで反射された光束λRの偏光方向はα軸方向となる。
光路合成部121Bからの光束λG、λBは、光路合成部121Cで光束λRと合成され、光路分岐面121Dへ向けて−β方向に進行する。
光路分岐面121Dに入射された光束λR、λG、λBは、それぞれ光路分岐面121Dで画像光(透過光)とモニタ光(反射光)に分岐される。光路分岐面121Dに入射される光束λR、λG、λBの偏光方向はいずれもα軸方向であり、光路分岐面121Dはαβ平面に対して垂直である。この場合、光路分岐面121Dへ入射する各光束は、光路分岐面121Dに対してP偏光入射となる。なお、P偏光入射の利点は前述した通りである。
図15には、入射光の入射角変化による光路分岐面121Dに対するP偏光、S偏光の反射率変化がそれぞれ実線Rp、破線Rsで示されている。変形例では、光路分岐面121Dへの入射は、上記実施形態とは逆に、ガラス(屈折率1.5)から空気(屈折率1)への入射となるため、図15は図12とは異なるグラフとなる。
変形例でも、光路分岐面121Dへの入射光の入射角θでのP偏光成分の反射率Rpに入射光に占めるP偏光成分の割合rpを乗じた値と、該入射角でのS偏光成分の反射率Rsに入射光に占めるS偏光成分の割合rsを乗じた値の和Rtが10%以下となることが好ましい。すなわち、Rt=Rp×rp+Rs×rs≦10%が成立することが好ましい。Rtは、実質的に光路分岐面121Dの反射率となり、画像光(透過光)を多くしモニタ光(反射光)を少なくするために、低いほど好ましい。
図16は、rp:rsとθをパラメータとしたRt(%)を示す表である。なお、図16では、rp:rsの整数比を代表的に示している。すなわち、rp:rsは、当然ながら整数比以外の比にも成り得る。
図16において、
θ=10°のとき、Rp=3.6%、Rs=4.4%である。
θ=20°のとき、Rp=2.4%、Rs=5.9%である。
θ=27°のとき、Rp=1.1%、Rs=8.5%である。
θ=35°のとき、Rp=0.1%、Rs=17.1%である。
θ=37°のとき、Rp=1.1%、Rs=22.2%である。
θ=40°のとき、Rp=10.0%、Rs=39.1%である。
図15及び図16から分かるように、Rtは、θによらずrpが大きくなりrsが小さくなるほど、低くなる。逆に言うと、Rtは、θによらずrsが大きくなりrpが小さくなるほど、高くなる
以上の説明から明らかなように、θが同じ条件下では、rp>rsの場合には、rp≦rsの場合に比べて、Rtを低くすることができる。また、Rtを10%以下にするためのθの上限は、rp>rsの場合の方が、rp≦rsの場合よりも大きくなる。
結果として、rp>rsの場合には、rp≦rsの場合に比べて、入射光に占める画像光(透過光)の割合を大きくしモニタ光(反射光)の割合を小さくすることができ、かつθの選択の自由度を大きくすることができる。
例えば、rp>rsの場合に、40°以下の任意のθに対して、Rt≦10%とすることが可能なrp:rsが存在する(図16参照)。この場合には、予め設定されたrp:rsに応じてRt≦10%を満たすθを選択するか、もしくは予め設定されたθに応じてRt≦10%を満たすrp:rsとなるようにLDを設計、配置することができる。
また、rp>rsの場合に、37°以下の任意のθに対して、概ねrp:rsによらず、Rt≦10%とすることが可能である。この場合には、Rt≦10%とするためのLDの設計、選択の自由度を高くできる。
なお、LDへの戻り光が発生する可能性や各構成部材のレイアウト上の制約を考慮すると、θの下限値は5°〜25°の範囲内の所定の値が適正であると考えられる。
以上説明した変形例の光源装置11Tは、光源(LD)と、該光源からの光が入射され、入射光を透過光と反射光に分岐する分岐面(光路分岐面121D)を有する光学素子121と、反射光を受光する光検出器120と、を備え、入射光の分岐面に対するP偏光成分がS偏光成分よりも多くなるように光源と光学素子121が配置されている。
この場合、分岐面での入射光の反射率を低減させ、光検出器120での受光量を低減させることができる。
このため、光検出器120での受光量を低減させるために、特許文献1に開示されている複雑な意匠を持つ筒状素子を設ける必要がない。
すなわち、上記筒状素子を設けることなく光検出器120が高温になるのを抑制できる。
結果として、高コスト化を抑制しつつ検出精度の低下を抑制できる。
また、分岐面は光学素子121の出射端であり、光学素子121は、分岐面を一面とする、光学ガラスから成る光学ガラス部材(光学部材)を含む。
この場合、例えば光学素子が光源からの出射光の波長変化に依存する分光特性を有する光学薄膜を出射端に有する場合に比べて、光学素子の出射端での反射率の変化を小さくでき、ひいては検出精度の低下を抑制できる。
また、光源装置11Tにおいて、分岐面に対する入射角θが40°以下である場合には、分岐面での反射率を10%以下に抑えることが可能である。
更に、光源装置11Tにおいて、入射角θが37°以下である場合には、概ねP偏光成分とS偏光成分の比(rp:rs)によらず、分岐面での反射率を10%以下に抑えることが可能である。
また、光源(LD)は複数あり、光学素子121が、複数の光源と分岐面との間の複数の光の光路上に配置され、該複数の光を合成する、2つの光路合成部121B、121Cを含む合成手段を更に含む場合には、分岐面での合成光束の反射率を低減させることができ、合成光束の検出精度の低下を抑制できる。
また、合成手段と光学部材(−β側の光学ガラス部材121c)が一体的に設けられている場合には、装置製造時の組み付けを容易にすることができる。
また、変形例においても、入射角θでのP偏光成分の反射率Rpに入射光に占めるP偏光成分の割合rpを乗じた値と、入射角θでのS偏光成分の反射率Rsに入射光に占めるS偏光成分の割合rsを乗じた値の和は、10%以下となることが好ましい。
この場合、検出精度の低下をより確実に抑制できる。
なお、上記変形例において、3つの光学ガラス部材121a、121b、121cと2つの光路合成部121B、121Cのうち、必ずしも全ての部材を一体化する必要はなく、要は、少なくとも1つの光学ガラス部材と少なくとも1つの光路合成部(例えばダイクロイック膜)を一体化することが好ましい。この場合であっても、全ての部材が互いに別体の場合に比べて、組み付けを容易にできる。
なお、光学素子の製造を容易にするためには構成部材を極力別体とすることが好ましく、光学素子の組み付けを容易にするためには構成部材を極力一体とすることが好ましい。
なお、上記実施形態及び変形例では、光路分岐面、すなわち光路分岐素子118の入射端や光学素子121の出射端を、光学ガラス板や光学ガラス部材の一面としているが、該一面に層構成が単純な少層構成(単層構成を含む)の光学薄膜(単独では反射率を10%以下に抑えられない膜)を成膜しても良い。この場合、多層構成の光学薄膜に比べて分光特性が緩やかな変化となる少層構成の光学薄膜の反射率低減機能とP偏光入射を併用することで、モニタ光を入射光の例えば10%以下にし、画像光を入射光の例えば90%以上にすることができる。
なお、上記実施形態及び変形例では、光学素子の構成部材として、光学ガラス製の部材を用いているが、これに代えて、光学樹脂製の部材を用いても良い。
また、光学素子の構成部材としての光学ガラス製や光学樹脂製の部材の形状は、適宜変更可能である。
なお、上記実施形態及び変形例では、集光素子として集光レンズ117、119を用いているが、集光ミラーであっても良い。また、集光素子は、複数のレンズの組み合わせでも良いし、複数のミラーの組み合わせでも良いし、レンズとミラーの組み合わせでも良い。
また、上記実施形態及び変形例では、投光部は、凹面ミラー40から構成されているが、これに限らず、例えば、凸面鏡から構成されても良い。
また、上記実施形態及び変形例では、走査ミラー20を有しているが、有していなくても良い。すなわち、光偏向器15で偏向された光を、光路を折り返さずに、スクリーン30に直接照射もしくは凸面レンズを介して照射するようにしても良い。また、走査ミラー20として平面鏡を用いても良い。
また、上記実施形態及び変形例では、光源としてLDを用いているが、例えばVCSEL等の他のレーザ等を用いても良い。
また、透過反射部材は、移動体のフロントウインドシールドに限らず、例えばサイドウインドシールド、リアウインドシールド等であっても良く、要は、透過反射部材は、移動体に設けられ、移動体の搭乗者が該移動体の外部を視認するための窓部材(ウインドシールド)であることが好ましい。
また、上記実施形態及び変形例では、画像表示装置(HUD)は、例えば車両、航空機、船舶、産業用ロボット等の移動体に搭載用のものとして説明したが、要は、物体に搭載されるものであれば良い。なお、「物体」は、移動体の他、恒常的に設置されるものや運搬可能なものを含む。
また、本発明の画像表示装置は、HUD装置のみならず、例えばヘッドマウントディスプレイ装置、プロンプタ装置、プロジェクタ装置への適用も可能である。
例えば、プロジェクタ装置に適用する場合には、該プロジェクタ装置をHUD装置100と同様に構成することができる。すなわち、凹面ミラー40を介した画像光を映写幕や壁面等に投影すれば良い。なお、凹面ミラー40を設けずにスクリーン30を介した画像光を映写幕や壁面等に投影しても良い。また、凹面ミラー40の代わりに自由曲面ミラーを用いても良い。
また、上記実施形態及び変形例に記載した具体的な数値、形状等は、一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更である。
以下に、発明者らが上記実施形態及び変形例を発案するに至った思考プロセスを説明する。
<開発背景>
運転者が少ない視線移動で警報・情報を認知できるアプリケーションとして市場の期待が高まっており、車両に搭載するHUD(ヘッドアップディスプレイ)の技術開発が進んでいる。特に、ADAS(Advanced Driving Assistance System)という言葉に代表される車載センシング技術の進展に伴い、車両はさまざまな走行環境情報および車内乗員の情報を取り込むことができるようになっており、それらの情報を運転者に伝える「ADASの出口」としてもHUDが注目されている。
<投射方式説明>
HUDの投射方式は、液晶及びDMDのようなイメージングデバイスで中間像を表現する「パネル方式」と、レーザダイオードから出射したレーザビームを2次元走査デバイスで走査し中間像を形成する「レーザ走査方式」がある。特に後者のレーザ走査方式は、全画面発光の部分的遮光で画像を形成するパネル方式とは違い、各画素に対して発光/非発光を割り当てることができるため、一般に高コントラストの画像を形成することができる。
<課題の概要説明>
市場のHUDに対する要求は、大きく下記3点に集約される。
(1)コンパクト性
(2)視認ストレスの低さ
(3)低コスト
「コンパクト性」に関しては、ダッシュボードに収納されているダクト・メータ・デフロスタ・車体構造などになるべく干渉しないサイズが求められている。HUD搭載のためにダクト・メータ・デフロスタ・車体構造を退避させてしまうと、エアコン性能・デフロスタ性能・車体強度性能の低下を招くためである。
「視認ストレスの低さ」に関しては、HUDの映像は常に運転者の視界周辺に情報を表示されるため、運転環境・ドライバの状態によってストレスのない映像表現が求められている。上記ADAS技術の発展はHUDに投射するコンテンツ量の増加をもたらす。人間の認知処理には限界があるため、増加したセンシング情報をそのままHUDに表示すると、運転者はわずらわしさを感じてしまい、情報表示装置であるHUDが返って運転視界の阻害要因となってしまう。
また、「視認ストレスの低さ」は、画質という要素も関係がある。画質が低ければ、運転者は表示コンテンツに対してストレスを感じやすく、画質が良好な場合運転者はストレスなく、または最小限のストスで運転を行うことができる。今回の発明は、画質を良好に保つという概要の中で、HUD制御側が狙う色表現を正確に行い、さらに「低コスト」を実現し快適な運転を支援するという内容である。
<問題点>
HUDでは虚像の色または明るさを制御するために、レーザ光をイメージャ光路内で、虚像表示に用いる光(画像光)と、虚像の色または明るさ制御に用いる光(モニタ光)に分岐している。そのモニタ光の情報を基にして、画像光の虚像の色や明るさ制御を行っているが、HUDを取り巻く環境の変化(温度変化や経時変化)によって、初期で調整されたモニタ光と画像光の関係が変化し、狙いの制御を行うことができないという問題が発生する。
この問題の一例を、以下に述べる。
HUDの光源は発光を行うことで自己発熱する。この自己発熱によって光源の発振波長はシフトする。画像光とモニタ光の光路中の素子は分光特性(透過率/反射率の波長依存性)を持っており、波長が変化すれば透過率/反射率は変化する。一般に画像光の明るさを最大限に引き出すために、画像光に用いる光量に比べモニタ光に用いる光量は極端に小さい(画像光:モニタ光=90%〜:〜10%)。このことにより、モニタ光において検出光量が上記変化により仮に50%変化したとすると、制御側はその50%の変化を画像光側にフィードバックしようとする。しかしながら、実際には画像光側とモニタ光側に配置される素子の分光特性は異なるため、画像光の色や明るさは制御側が狙う色や明るさからは大きく逸脱したものとなる。
また、この分光特性の差異は主に、入射光を画像光とモニタ光に分岐する光路分岐素子における分光特性に起因することがわかっている。これは、画像光とモニタ光を所望の比率で分岐し、さらにそれを多色の光で行うために光路分岐素子は複雑な多層構成の光学薄膜を有しているからである。このため、光路分岐素子の分光特性は、光源の温度変化による波長変化特性にも敏感な構造となってしまう。
また、特許文献1(特開2015−108555号公報)には、集光により検出素子が高温になることで、検出素子の検出結果においてノイズ又は誤差が発生したり、検出素子の劣化が早まること等により、検出精度が低下する問題を解決するために、検出素子の手前に筒状素子を設け、筒状素子内で光を繰り返し反射させることで筒状素子から適度に光を放出させて検出素子に入射させることで、検出素子での受光量を低減させている。
しかしながら、特許文献1では、筒状素子は複雑な意匠を持っているため、コストが増大するという問題があった。
そこで、発明者らは、高コスト化を抑制しつつ検出精度の低下を抑制するために、上記実施形態及び変形例を発案した。