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JP6909892B2 - 組織中への流体の拡散を標準化するための材料および方法 - Google Patents
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組織中への流体の拡散を標準化するための材料および方法 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
2015年2月9日に出願した、参照によりその内容全体が組み込まれている米国仮特許出願第62/113,787号の利益がこれにより主張される。
本主題開示は、組織標本中への流体の拡散の監視および制御に関する。より詳細には、本主題開示は、音響学的監視を使用して流体を組織標本中に拡散させるための最適化されたプロトコルの生成に関する。
流体を組織標本中に拡散させることを含む多くの研究室技法が存在している。これらの技法においては、組織中への液体の適切な拡散を保証することは、しばしばその技法の成功のための重要な要素である。
一例は液浸固定であり、収集された組織試料が、組織を保存するのに十分な時間期間の間、液体固定剤に浸される。多くの標準医学試験は、このような固定された組織に頼っており、固定された組織の形態学的特徴および分子特徴の正確な保存を重要な要求事項にしている。したがって組織試料の適切な固定のためのガイドラインが腫瘍学者および病理学者によって確立されている。例えば米国癌治療学会(American Society
of Clinical Oncology:ASCO)によれば、免疫組織化学によって組織のHER2を試験するためには、中性緩衝ホルマリン溶液中で、少なくとも6時間で、かつ、72時間以内にわたって固定されなければならない。このプロトコルは、乳房試料に対してはフォローされても、このプロトコルは幅が広くて役に立たず、最良の実践の解釈のための余地を残している。さらに、このような固定プロトコルは、タンパク質の加リン酸反応などの固定された組織の重要な分子特徴の保存にしばしば失敗している。
最近、これらの問題に対処するために、最初に、第1の時間期間の間、組織が冷たい固定剤溶液に浸され、引き続いて、第2の時間期間の間、組織を加熱する2温度固定方法が開発された。コールドステップにより、実質的に交差結合の原因になることなく、固定剤溶液を組織全体にわたって拡散させることができる。次に、固定剤溶液が組織全体にわたって適切に拡散すると、加熱ステップが固定剤による交差結合をもたらす。コールド拡散とそれに引き続く加熱ステップの組合せは、標準方法を使用することによる固定よりも、より完全に固定される組織試料をもたらす。しかしながら異なる組織試料は、そのサイズおよび形状が著しく変化することがあり、一方、流体は、異なる組織タイプ中に異なる速度で拡散する。したがって骨の折れるプロセスであり得る、満足すべき組織形態学特性および免疫組織化学的特性を有する特定の固定組織を提供する適切な拡散時間および交差結合条件の、経験的事実に基づく決定が残されている。さらに、経験的事実に基づいて決定された条件が最も有効な条件または最適条件であることの保証は存在していない。
さらに、強度が高い超音波は、組織中へのホルマリンの拡散を加速し、一方、局所化された温度上昇を介した交差結合の加速、および遊離基の生成を誘発する、という理論の下に、最初に組織を冷たいホルマリン溶液に浸し、それと同時に組織を強度が高い超音波で衝撃することによって組織を固定するためのプロセスが開発されている。しかしながらこの方法は複雑であり、また、強度が高い超音波は、組織を著しく損傷し、不均一な固定の原因になる潜在性を有している。
本発明者らは、様々な異なる組織タイプ中への所与の流体の最適拡散時間を識別し、それにより、組織の完全性を損ない得る恣意的に長い拡散時間または他の操作を使用することなく、組織中への流体の適切な拡散を保証する単一のプロトコルが開発され得る理由に基づく方法(reason−based methodologies)を知らない。
本開示は、組織試料中への流体の拡散時間を最適化し、かつ、広範囲にわたる様々な異なる組織タイプに適用することができる標準化されたプロトコルを生成するために有用な方法およびシステムを提供する。本明細書において説明されるシステムおよび方法を使用することにより、いくつかの異なる組織試料における拡散の進行が監視され、また、組織中の拡散の程度が、組織に対して実施される後続する評価分析の品質と相関され得る。この情報から、広範囲にわたる様々な異なる組織タイプに及ぶ適切な拡散を保証する、拡散のための時間が決定され、次にこの拡散のための時間を使用して、標準化されたプロトコルが開発され得る。さらに、組織準備システムは、この最短時間の間、すべての組織試料をソークするか、または特定の組織試料の拡散を監視して、ソークのための最適時間を決定するようにプログラムされ、あるいはそれらの任意の組合せでプログラムされ得る。
本主題開示の例示的実施形態による、拡散監視を使用して組織固定を最適化するためのシステムを示す図である。 本主題開示の例示的実施形態による、組織試料を拡散するための最適時間を決定するための方法を示す図である。 本主題開示の例示的実施形態による、組織試料に対する飛行時間曲線を示すグラフである。このグラフは、10%のNBF中でコールドソークされた組織試料から生成されたTOFトレースを表示している。個々の信号は、組織内の異なる空間位置からの信号である(Δy≒1mm)。 本主題開示の例示的実施形態による、組織固定を最適化するための方法を示す図である。 本主題開示の例示的実施形態による、組織固定のための最適化されたプロトコルを示す図である。 例における研究で特性化された、33個の器官に対する一番低い崩壊定数から一番高い崩壊定数まで分類された、器官毎の平均崩壊定数のプロットである。垂直方向の線は、器官タイプを近似四分位数に分割している。すべての試料は、5〜7mmの厚さである。組織は以下の通りである。A:動脈、B:胆嚢、C:直腸、D:卵巣、E:子宮、F:胃、G:腎臓、H:空腸、I:下部胃腸、J:胸郭、K:回腸、L:筋肉、M:甲状腺、N:頸管、O:精巣、P:副腎、Q:結腸、R:垂、S:膀胱、T:肺、U:膵臓、V:食道、W:舌、X:心臓、Y:十二指腸、Z:リンパ節、1:乳房、2:脳、3:扁桃腺、4:肝臓、5:皮膚、6:脾臓、および7:脂肪。 すべての組織の最大崩壊定数に対する確率密度関数を示すグラフである。平均崩壊定数は2時間35分であった。 図6BからのPDFの積分として計算されたすべての組織の崩壊定数に対する累積分布関数を示すグラフである。破線で示されているように、試料の92.8%は、6時間未満、または6時間に等しい最も低い崩壊定数を有している。 本主題開示の例示的実施形態による、従来技術に対する、開示される方法を使用して染色された組織試料間の染色品質比較を示す図である。 本主題開示の例示的実施形態による、従来技術に対する、開示される方法を使用して染色された組織試料間の染色品質比較を示す図である。 本主題開示の例示的実施形態による、従来技術に対する、開示される方法を使用して染色された組織試料間の染色品質比較を示す図である。 本主題開示の例示的実施形態による、従来技術に対する、開示される方法を使用して染色された組織試料間の染色品質比較を示す図である。 本明細書において開示されるプロセスを実施するための修正された組織プロセッサの構成要素を示す図であり、図8Aは、超音波ベース組織監視技術を使用して特注修正されたLynx II商用組織プロセッサを示す図である。 本明細書において開示されるプロセスを実施するための修正された組織プロセッサの構成要素を示す図であり、図8Bは、図8Aに示されているディップ・アンド・ダンク機構に取り付けられた走査ヘッドのSolidworks(登録商標)図面を示す図である。4MHz変換器の対は、緑色で表示されたカセットの両側に空間的に整列されており、また、TOF値は、個々の変換器対から計算される。カセットは、2D空間情報を得るために頂部ガイドレールに沿って垂直方向に平行移動されたカセットホルダ内に固着される。 本明細書において開示されるプロセスを実施するための修正された組織プロセッサの構成要素を示す図であり、図8Cは、受取り変換器を収納する取付け具を示す図である。直交変換器対は、ホルマリン中の一時的な勾配を検出するための基準チャネルとして作用した。 本明細書において開示されるプロセスを実施するための修正された組織プロセッサの構成要素を示す図であり、図8Dは、組織標本を保持するために使用された組織学的カセットの写真である。 試料が走査される様子の例を示す図であり、図9Aは、標準サイズの組織学的カセットを画像化する際のスケールで描かれた超音波走査パターンを示す図である。一対の変換器は、カセットの個々の列を走査する。カセットは、垂直方向に≒1mm平行移動され、また、TOF値は、個々の位置(点で示されている)で計算される。超音波ビームの半値全幅は2.2mmである(円で示されている)。 試料が走査される様子の例を示す図であるり、図9Bは、6片の組織が内部に置かれた標準サイズのカセットの写真である。破線のボックスは走査フィールドを示し、また、暗い線は、走査がなされる離散点を示している。結果として得られるTOFトレースは図3に示されている。 組織形態学に対するコールドソーク時間の効果を示す図である。左側の画像は、コールド+ワームプロトコルを使用して、H&E画像の側に示されているコールドソーク時間で固定されたヒト扁桃腺核のH&E染色切片である。右側は、組織形態学の品質を示すために陰影が付けられた多重時間進行実験を要約したものである。矢印は組織形態学の品質を示し、暗い帯=貧弱な形態学、パターン化された帯=適切な形態学、また、明るい帯=良好な形態学である。 10%ホルマリン中で、3時間(左側)および5時間(右側)にわたってコールドソークされた6mmヒト扁桃腺を使用して収集されたデータセットに対する個々の組織の最も遅い拡散領域に対する崩壊定数のプロットである。平均値は、それぞれ3時間データセットおよび5時間データセットに対して、4時間16分および4時間38分である。2つのデータセット間の22分の平均崩壊定数の差は、統計的には取るに足らないものであり(p=0.45)、この検出機構は、監視された時間の関数として無矛盾の結果を報告していることを示している。 リストに挙げられた33個の異なる器官に対する個々の組織の最も遅い拡散領域からの崩壊定数のプロットである。すべての試料は、5〜7mmの厚さである。組織は以下の通りである。A:副腎、B:垂、C:動脈、D:膀胱、E:脳、F:乳房、G:心臓、H:頸管、I:結腸、J:十二指腸、K:食道、L:脂肪、M:胆嚢、N:回腸、O:空腸、P:腎臓、Q:肝臓、R:下部胃腸、S:肺、T:リンパ節、U:筋肉、V:卵巣、W:膵臓、X:直腸、Y:胸郭、Z:皮膚、1:脾臓、2:胃、3:精巣、4:甲状腺、5:舌、6:扁桃腺、および7:子宮。 標準24時間室温(右側のパネル)と比較した、6+1プロトコル(6時間コールド+1時間ホット;左側のパネル)で固定された代表的な結腸試料および皮膚試料のデジタル画像を示す図である。
本主題開示は、複数の異なるタイプの組織中に流体を拡散させるための静的プロトコルを生成するための方法に関する。予測は、いくつかの同様のサイズの組織試料の拡散の完全性を監視し、かつ、拡散の進行と後続する評価分析の品質とを相関させることによって可能にされる。このことから、拡散のための最短時間は、後続する分析プロセスを実施するための、個々の異なるタイプの組織試料中への流体の適切な拡散が得られる時間が決定され得る。
一実施形態では、複数の異なるタイプの組織試料中への流体の十分な程度の拡散を保証するための標準化されたプロトコルを開発する方法が提供され、前記方法は、
(a)複数の異なるタイプの同様のサイズの組織試料の各々を一定の体積の流体中に浸すステップと、
(b)組織試料を通過した音波の飛行時間(TOF)を測定することによって、個々の複数の異なるタイプの組織試料中への流体の動きを監視するステップと、
(c)複数の異なるタイプの組織試料の各々に対する少なくとも崩壊定数に到達するまでの時間(τ)を決定するステップと、
(d)(c)で決定された最も長いτに基づく時間に対応する、標準化されたプロトコルのための標準化された拡散時間(τslowest)を選択するステップと
を含む。
本明細書において使用されているように、「標準化されたプロトコル」は、異なるタイプの組織試料毎の個々の最適化を必要とすることなく、複数の異なるタイプの組織試料中への流体の適切な拡散が得られる単一のプロトコルである。何をもって「適切な拡散」と見なすかは、特定のプロトコルおよび所望の結果によって決まる。例えば拡散プロセスが液浸固定プロトコルの一部である場合、適切な拡散は、例えば、資格のある病理学者によって決定される、ヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)染色組織中の臨床的に許容可能な形態学、および/または免疫組織化学および/またはインサイチューハイブリッド形成技法によって決定される、組織中のバイオマーカの適切な保存に対して、結果として得られる固定組織を試験することによって決定され得る。好ましいことには、本明細書において説明される方法によって生成される標準化されたプロトコルは、当分野で広く受け入れられているプロトコルと比較すると総処理時間を短くし、その一方で、個々に最適化されるプロトコルと同様の結果を提供する。
組織試料を処理し、および/または分析するための多くのプロトコルには、試薬が組織試料中に拡散されるステップが必要である。
一例示的実施形態では、標準化されたプロトコルは液浸固定プロトコルである。液浸固定は、固定剤を組織中に拡散させるのに十分な時間期間の間、組織試料を液体固定剤溶液中に浸すことによって組織試料を保存するための技法である。それとは対照的に、潅流固定として知られている技法は、固定剤を組織全体に分散させるために主として組織の血管系に頼っている。別の例示的実施形態では、液浸固定プロトコルは、潅流固定ステップを含んでいない。別の例示的実施形態では、液浸固定プロトコルは、グルタルアルデヒド系溶液および/またはホルマリン系溶液などのアルデヒド系固定剤溶液を使用する。別の例示的実施形態では、標準化されたプロトコルは、固定剤拡散組織試料を得るために、固定剤を組織中に拡散させるのに十分な時間期間の間、未固定状態の組織試料を一定の体積の冷たいアルデヒド系固定剤中に浸すステップ、およびそれに引き続く、交差結合を生じさせるのに十分な時間期間の間、より高い温度の一定の体積のアルデヒド系固定剤の存在下で固定剤拡散組織試料を培養するステップを含む(以下、「2温度液浸固定」)。2温度液浸固定方法は、実質的な化学的交差結合が生じる前に、組織中への固定剤の完全な浸透
を保証することにより、標準単一温度固定方法およびマイクロ波固定方法に対する改善を示し、これは、許容可能な固定が生じる速度を改善し、かつ、特定のターゲット分析物(加リン酸反応したタンパク質など)をより良好に保存する。液浸固定のために頻繁に使用されるアルデヒドの例は、
・ホルムアルデヒド(特定の組織に対しては、20%ホルマリン程度の高い濃度が使用されているが、ほとんどの組織に対しては、5〜10%ホルマリンの標準動作濃度)
・グリオキサル(17mMから86mMの標準動作濃度)
・グルタルアルデヒド(200mMの標準動作濃度)
を含む。
アルデヒドは、互いに組み合わせてしばしば使用される。標準的なアルデヒドの組合せには、10%ホルマリン+1%(w/v)グルタルアルデヒドを含む。非定型のアルデヒドは、フマルアルデヒド、12.5%ヒドロキシアジプアルデヒド(pH7.5)、10%クロトンアルデヒド(pH7.4)、5%ピルビンアルデヒド(pH5.5)、10%アセトアルデヒド(pH7.5)、10%アクロレイン(pH7.6)および5%メタクロレイン(pH7.6)を始めとする特定の専用固定アプリケーションに使用されている。免疫組織化学のために使用されるアルデヒド系固定剤溶液の他の特定の例は、表1に示されている。
Figure 0006909892
いくつかの液浸固定プロセスでは、使用されるアルデヒド濃度は、上で言及した標準濃度よりも高い。例えば免疫組織化学のために選択される組織を固定するために使用される標準濃度より少なくとも1.25倍高いアルデヒド濃度を有する、実質的に同様の組成を有する高濃度アルデヒド系固定剤溶液が使用され得る。いくつかの例では、高濃度アルデヒド系固定剤溶液は、20%ホルマリンより高い濃度、約25%ホルマリン以上の濃度、
約27.5%ホルマリン以上の濃度、約30%ホルマリン以上の濃度、約25%から約50%ホルマリンまでの濃度、約27.5%から約50%ホルマリンまでの濃度、約30%から約50%ホルマリンまでの濃度、約25%から約40%ホルマリンまでの濃度、約27.5%から約40%ホルマリンまでの濃度、および約30%から約40%ホルマリンまでの濃度から選択される。この文脈で使用されているように、「約」という用語は、BauerらのDynamic Subnanosecond Time−of−Flight Detection for Ultra−precise Diffusion Monitoring and Optimization of Biomarker
Preservation, Proceedings of SPIE, Vol.
9040, 90400B−1 (2014−Mar−20)によって測定される、4℃での拡散において統計的に重要な差をもたらさない濃度を包含するものとする。
拡散ステップを含む他の例示的標準化プロトコルは、当業者には直ちに明らかであろう。
標準化されたプロトコルを生成するためのこの方法における液浸条件は、標準化されたプロトコルに使用されるであろう条件に匹敵しなければならない。したがって標準化されたプロトコルが特定の温度、流体体積、大気圧、等々を使用する場合、この方法の液浸ステップは、同じ条件を使用しなければならない。したがって例えば標準化されたプロトコルが2温度液浸固定プロトコルである場合、標準化されたプロトコルに使用されるであろう固定剤体積および温度と同じ固定剤体積および温度が使用されなければならない。
試料は、同じようにサイズ設定され、あるいは同じように形作られる必要はない。特定の実施形態では、試料のサイズは、標準化されたプロトコルに使用される試料のタイプと相関させるように選択されることになる。例えば組織固定プロトコルは、しばしば、例えば(1)「標準」組織処理カセット(例えばCellPathカタログ# EAI−0104−10Aを参照されたい)、(2)「生検」組織処理カセット(例えばCellPathカタログ# EAK−0104−03Aを参照されたい)(これらは、通常、より小さいサイズの組織試料のために使用される)、および(3)「切除」組織処理カセット(例えばCellPathカタログ# EAG−0102−02Aを参照されたい)(これらは、通常、前立腺組織、脳組織、乳房組織および眼組織などのより大きい組織試料のために使用される)などの組織処理カセットを使用して実施される。一実施形態では、組織は、これらのタイプの組織処理カセットのうちの1つに適合するようにサイズ設定される(「組織学的にサイズ設定された組織試料」)。
複数の異なるタイプの同様のサイズの組織試料は、理想的には、後続する分析プロセスに使用され得る異なる組織タイプを概ね代表する一定の範囲の拡散特性を有するように選択されなければならない。これには、使用される可能性のある個々のタイプの試料またはそれらのサブセットの選択を含み得る。サブセットが使用される場合、選択される分析プロセスに有用な残りの潜在的組織タイプに対して、より遅い拡散時間を有することが期待され得る1つまたは複数の組織タイプが選択されなければならない。一例では、複数の異なるタイプの同様のサイズの組織は、1つ以上の組織タイプ、2つ以上の組織タイプ、3つ以上の組織タイプ、4つ以上の組織タイプ、5つ以上の組織タイプ、6つ以上の組織タイプ、7つ以上の組織タイプ、8つ以上の組織タイプ、9つ以上の組織タイプ、10個以上の組織タイプ、15個以上の組織タイプ、20個以上の組織タイプ、25個以上の組織タイプを含み、組織タイプの各々は、動脈組織、胆嚢組織、直腸組織、卵巣組織、子宮組織、胃組織、腎臓組織、空腸組織、下部胃腸組織、胸郭組織、回腸組織、筋肉組織、甲状腺組織、頸管組織、精巣組織、副腎組織、結腸組織、垂組織、膀胱組織、肺組織、膵臓組織、食道組織、舌組織、心臓組織、十二指腸組織、リンパ節組織、乳房組織、脳組織、扁桃腺組織、肝臓組織、皮膚組織、脾臓組織および脂肪組織からなるグループから選択される。別の実施形態では、複数の異なるタイプの同様のサイズの組織は、リンパ節組織、乳
房組織、脳組織、扁桃腺組織、肝臓組織、皮膚組織、脾臓組織および脂肪組織からなるグループから選択される組織タイプのうちの少なくとも1つを含む。
組織中への流体の動きは、組織を介して伝達される音波の飛行時間(TOF)を追跡することによって追跡される。この文脈では、TOFは、組織試料に対して固定された位置の音響トランスミッタから、組織試料に対して固定された位置の音響レシーバまで単一の音波が通過するのに要する時間の長さである。組織中のTOFを追跡するための方法は、例えば、参照によりその内容全体が組み込まれているUS 2013−0224791およびUS 2012−0329088に記載されている。これらの方法は、組織中の間質性流体を、その間質性流体の音速とは離散的に異なる音速を有する流体(ホルマリンなど)と置き換えることにより、音が組織を通って移動する速度を変化させることができ、したがってTOFを変化させることができることの観察に基づいている。流体が組織を通過する音の速度を速くするか、または遅くするかどうかに応じて、TOFは、組織中に拡散する流体の増加につれて長くなるか、または短くなるかのいずれかである。
TOFは、超音波を伝達することができる少なくとも1つのプローブ(トランスミッタ)、および超音波を検出することができる少なくとも1つのプローブ(レシーバ)を含む音響プローブのシステムを使用して監視され得る。強度が高い超音波は組織を損傷し得るため、トランスミッタによって伝達される超音波は、組織を著しく加熱することにならない、すなわち組織を損傷することにならない超音波強度を有していることが好ましい。一実施形態では、1W/cm未満の強度などの低い強度で超音波を伝達することができるトランスミッタが使用される。例えばいくつかの実施形態では、0.5W/cm以下、0.2W/cm以下、0.05W/cm以下または0.02W/cm以下の強度が使用される。さらに、超音波は、単一の周波数、例えば0.5〜10MHzから選択される周波数、例えば4MHz+/−1kHzで伝達され得る。トランスミッタおよびレシーバは、いずれも、トランスミッタから伝達される超音波をレシーバによって受け取られる音波に相関させ、かつ、そこからTOFを計算するプロセッサに動作可能に接続され得る。
標準化されたプロトコルを生成するためのこの方法は、TOFの変化を使用して、流体が組織試料中に拡散した程度を指示する。TOFの変化は、一定の時間期間にわたって、複数の異なるタイプの同様のサイズの組織試料の各々に対して追跡され、TOFの変化が拡散の程度と相関され、異なるタイプの同様のサイズの組織試料の各々が定義済みの終了点に到達するのに必要な時間が決定される。TOF測定は離散時間点で実施されてもよく、あるいは連続的に測定され得る。TOF測定は、強度が高い超音波を使用して実施されないことが好ましい。本明細書において使用されているように、「強度が高い超音波」は、1W/cmまたはそれより高い強度で伝達される超音波である。一実施形態では、TOF測定は、0.5W/cm以下、0.2W/cm以下、0.05W/cm以下または0.02W/cm以下の強度で伝達される超音波を使用して実施される。別の実施形態では、TOF測定は、0.5〜10MHzの範囲から選択される単一の周波数、例えば4MHz+/−1kHzで伝達される超音波を使用して実施される。別の実施形態では、TOF測定は、0.5W/cm以下、0.2W/cm以下、0.05W/cm以下または0.02W/cm以下の強度で、かつ、0.5〜10MHzの範囲から選択される単一の周波数、例えば4MHz+/−1kHzで伝達される超音波を使用して実施される。個々の組織タイプが定義済みの終了点に到達するのに必要な時間の長さは、以下、「τ」と呼ばれる。定義済みの終了点は、定義済みの崩壊定数であることが好ましい。試料崩壊定数は、経験的事実に基づいて測定されたデータと、定義済みの式からの変数とを相関させる非線形大域的最適化アルゴリズムを使用して計算される。定義済みの式と記録されたデータとを最も良好に一直線に並べる変数(例えば崩壊定数、振幅、オフセット)は、組織の真の値として返される。
組織試料毎のτが決定されると、標準化されたプロトコルのために、最も長いτ(τslowest)に少なくとも部分的に基づいて時間の長さが選択される。標準化された拡散時間は、個々の異なる組織タイプ中に液体を適切に拡散させるための十分に長い時間が提供されるように選択される。標準化された拡散時間は、必ずしもτslowestのうちの1つに等しくする必要はない。いくつかの状況では、標準化された拡散時間は、τのうちの1つまたは複数より短い時間が選択され得る。例えば標準化されたプロトコルは、流体中への組織試料の液浸を含む複数の処理ステップを含むことが可能であり、適切な拡散を保証することを目的として明示的であるのは、これらのステップのうちの1つのみである(上で説明した2温度固定プロセスなど)。後続する液浸ステップは、組織中への流体のさらなる拡散を許容し得るため、このような場合、完全な拡散が達成される前に、指定された拡散ステップを停止することが可能であり得る。さらに、標準化された拡散時間は、例えば同じ組織タイプの異なる試料の組成、幾何構造、等々の潜在的な変化を補償するために、個々のτよりも長くし得る。したがって特定の例示的実施形態では、標準化された拡散時間は、0.5×τslowestから1.5×τslowestまで、0.75×τslowestから1.25×τslowestまで、0.9×τslowestから1.1×τslowestまで、または0.99×τslowestから1.01×τslowestまでの範囲である。他の範囲も有用であり得る。標準化された拡散時間は、当分野で広く受け入れられているプロトコルと比較して総処理時間を短くし、その一方で、個々に最適化されるプロトコルと同様の結果を提供するように選択されることが好ましい。
特定の一例示的実施形態では、標準化された拡散時間は、2温度液浸固定プロトコルの一部である。上で説明したように、2温度液浸固定プロトコルは、(1)冷たい温度のアルデヒド系固定剤溶液中での拡散ステップと、(2)アルデヒド系固定剤によって誘導される交差結合の速度を加速するために、より高い温度(例えば20℃から55℃まで)で実施される交差結合ステップとを含む。例示的実施形態では、拡散ステップは、20℃未満、15℃未満、12℃未満、10℃未満、0℃から10℃までの範囲、0℃から12℃までの範囲、0℃から15℃までの範囲、2℃から10℃までの範囲、2℃から12℃までの範囲、2℃から15℃までの範囲、5℃から10℃までの範囲、5℃から12℃までの範囲、5℃から15℃までの範囲である固定剤溶液中で実施される。拡散ステップで使用される冷たい温度は、組織の周囲における過度の交差結合(これは、組織中への固定剤の拡散を禁止する)を禁止することによって拡散の速度を速くする利点、および組織中における酵素活性を小さくし、それにより組織(加リン酸反応タンパク質など)の分子詳細をより正確に保存する利点の二重利点を有している。コールドステップおよびホットステップの組合せは、組織の完全な固定のために必要な処理時間の著しい短縮を促進する。したがってこのような実施形態では、プロトコルを標準化する方法は、「ホット」ステップを対象とする追加処理ステップを含み得る。
一例示的実施形態では、標準化された2温度液浸固定プロトコルを開発する方法が提供され、前記方法は、
(a)複数の異なるタイプの同様のサイズの組織試料の各々を、20℃未満、15℃未満、12℃未満、10℃未満、0℃から10℃までの範囲、0℃から12℃までの範囲、0℃から15℃までの範囲、2℃から10℃までの範囲、2℃から12℃までの範囲、2℃から15℃までの範囲、5℃から10℃までの範囲、5℃から12℃までの範囲、5℃から15℃までの範囲から選択される温度の一定の体積のアルデヒド系固定剤中に浸すステップと、
(b)組織試料を通過した音波の飛行時間(TOF)を測定することによって、個々の複数の異なるタイプの組織試料中への固定剤の動きを監視するステップと、
(c)複数の異なるタイプの組織試料の各々に対する少なくとも第1の定義済み崩壊定
数に到達するまでの時間(τ)を決定するステップと、
(d)(c)で決定された最も長いτの少なくとも定義済み百分率の長さである時間に対応する、標準化されたプロトコルのための標準化された拡散時間を選択するステップと、
(e)固定剤拡散組織試料を得るために、複数の異なるタイプの同様のサイズの組織試料の各々を、(d)で選択された標準化された拡散時間の間、(c)で使用された温度と同じ温度の、(c)で使用された一定の体積のアルデヒド系固定剤に浸すステップと、
(f)固定剤拡散組織試料の各々を一定の体積のアルデヒド系固定剤中に浸し、かつ、複数の時間点における固定の妥当性を評価するステップであって、アルデヒド系固定剤の温度が20℃から55℃までの範囲であるステップと、
(g)適切に固定された組織試料を得るために、個々の固定剤拡散組織試料を選択された温度に加熱するのに必要な最短時間(最短固定時間)を決定するステップと、
(h)少なくとも最も長い最短固定時間の長さである標準化された固定時間を選択するステップと
を含み、標準化された液浸固定プロトコルは、(1)固定剤拡散被検体組織試料を得るために、被検体組織試料を、(d)で選択された標準化された拡散時間の間、(c)で使用された温度と同じ温度の、(c)で使用された一定の体積のアルデヒド系固定剤に浸すステップを含む拡散ステップと、(2)固定剤拡散組織試料を、標準化された固定時間の間、(h)で使用された温度と同じ温度の一定の体積の、(f)で使用されたアルデヒド系固定剤と同じアルデヒド系固定剤の存在下で浸すステップとを含む。いくつかの実施形態では、標準化された液浸固定プロトコルは、強度が高い超音波への被検体組織試料の露出を含んでいない。
これらの方法を使用して、7mmまでの厚さの組織試料を固定するための、
(a)固定剤拡散組織試料を得るために、組織試料を0℃から15℃までの温度のアルデヒド系固定剤に浸し、かつ、5時間を超える時間の間、冷たい固定剤を組織中に拡散させるステップと、
(b)交差結合を許容する十分な長さの時間の間、20℃から55℃までの温度のアルデヒド系固定剤の存在下で固定剤拡散組織試料を加熱するステップと
を含む方法が識別された。
特定の実施形態では、組織試料は、1mmの厚さから7mmの厚さになるように選択される。他の実施形態では、冷たい固定剤は、5℃から12℃までの温度である。いくつかの実施形態では、(a)と(b)を組み合わせた時間は8時間以内である。いくつかの実施形態では、組織試料は、(a)または(b)の間、強度が高い超音波に露出されない。いくつかの実施形態では、組織試料は、(a)または(b)の間、1W/cmを超える強度の超音波に露出されない。いくつかの実施形態では、組織試料は、(a)または(b)の間、0.5W/cmを超える強度、0.2W/cmを超える強度、0.05W/cmを超える強度、0.02W/cmを超える強度の超音波に露出されない。
図1は、本主題開示の例示的実施形態による、拡散監視を使用して組織固定を最適化するための組織処理システム100を示したものである。システム100は、コンピュータ101に結合されたプロセッサ105によって実行される複数の処理モジュールまたは論理命令を記憶するためのメモリ110に通信結合された音響監視デバイス102を備えている。音響監視デバイス102は、組織試料を介して移動した音波を検出することができ、また、1つまたは複数のトランスミッタおよび1つまたは複数のレシーバを含み得る。組織試料は、音波の飛行時間(TOF)を検出するためにトランスミッタおよびレシーバが通信している間、液体固定剤に浸され得る。メモリ110内の処理モジュールは、プロセッサ105による、組織試料を介した固定剤の拡散の監視、飛行時間に基づく、組織試料を介して移動する音波の速度の評価、複数の異なるタイプの組織試料の各々に対する少
なくとも崩壊定数に到達するまでの時間の決定、標準化された拡散時間の選択、標準化された拡散時間および最短固定時間を使用した固定プロトコルの実行、訓練を目的とした品質相関の実施、データベースへの標準化された拡散時間および他の結果の記憶を含む操作の実施、および定量的または図形的結果の出力をユーザ操作コンピュータ101に潜在的にもたらす他の操作の実施を可能にするための非一時的論理コンピュータ可読命令を含み得る。したがって図1には示されていないが、コンピュータ101は、キーボード、マウス、スタイラスおよびディスプレイ/タッチスクリーンなどのユーザ入力デバイスおよび出力デバイスを同じく含み得る。
例えば音響監視デバイス102内の音響センサからの測値は、組織試料を介した音響信号のToFの変化を追跡するために、拡散監視モジュール111によって受け取られ得る。これには、拡散状態を決定するための、異なる位置における時間による組織試料の監視を含む。ホルマリンは、組織中に侵入する際に間質性流体を変位させる。間質性流体およびホルマリンは離散音速を有しているため、この流体交換により、組織体積の組成がわずかに変化する。したがって出力超音波パルスは、流体交換が多くなるにつれて大きくなる短い通過時間差を累積する。したがって拡散監視は、組織が完全な浸透平衡になり、それ以上の拡散が生じなくなるまで、ホルマリン拡散の動的追跡および定量化を含む。本明細書において説明されるように、拡散が最適レベル(例えば63%完了)に到達するのにどれほどの時間を要するかは、器官タイプ、組織定数、空間不均質、温度、カセット内における配置、等々によって変化する。これらの要因は、一般に、米国特許公開2013/0224791に記載されている拡散監視システムの記述に基づいて制御される。一般に、ホルマリン拡散は、単一指数傾向と高度に相関され、傾向の時間遷移は、本明細書においてさらに説明されるように、崩壊定数によって完全に特性化され得る。崩壊定数に到達すると、品質の高い染色を保証するための十分なホルムアルデヒドが組織中に存在する。拡散は、組織試料毎の曲線を使用してすべての位置で追跡され、最も長い崩壊定数を有する領域が最適結果または既存の染色結果と相関される。訓練目的のために、または既存の、あるいは既知の染色結果と比較するために、品質相関モジュール113が呼び出され得る。結果に基づいて固定モジュール112は、本明細書において説明されている標準化されたプロトコルなどの固定プロトコルを実行し得る。
上で説明したように、モジュールは、プロセッサ105によって実行される論理を含む。本明細書において、本開示全体を通して使用されている「論理」は、プロセッサの操作に影響を及ぼすべく適用され得る命令信号および/またはデータの形態を有するあらゆる情報を意味している。ソフトウェアは、このような論理の一例である。プロセッサの例は、コンピュータプロセッサ(処理装置)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラおよびマイクロコントローラ、等々である。論理は、例示的実施形態ではランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリ・メモリ(ROM)、消去可能/電気的消去可能プログラマブル・リード・オンリ・メモリ(EPROMS/EEPROMS)、フラッシュメモリ、等々であってもよいメモリ110などのコンピュータ可読媒体上に記憶されている信号から形成され得る。また、論理は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を備えることも可能であり、例えばハードウェア回路は、論理AND、OR、XOR、NAND、NORおよび他の論理演算を含む。論理は、ソフトウェアおよびハードウェアの組合せから形成され得る。ネットワーク上では、論理は、サーバまたはサーバの複合上でプログラムされ得る。特定の論理ユニットは、ネットワーク上の単一の論理位置に限定されない。さらに、モジュールは、特定の順序で実行される必要はない。例えば分類モジュール118は、訓練モジュール111が動作している間、ならびにCNNモジュール116が動作している間、呼び出され得る。個々のモジュールは、実行される必要がある場合、別のモジュールを呼び出し得る。
図2は、本主題開示の例示的実施形態による、組織試料を拡散するための最適時間を決
定するための方法を示したものである。方法は、システムを訓練するために使用され得る組織試料のホルマリン拡散S201で始まる。ソークすると、タイマが起動され(S202)、組織試料の拡散が監視される(S203)。組織が十分に拡散されたか否かについての決定がなされる(S203)。この決定は、ホルマリン拡散と単一指数傾向との相関に基づくことができ、傾向の時間遷移は、崩壊定数によって完全に特性化され得る。例えば組織試料からの基準補償済みToFトレースは、形態
TOF(x,y,t)=C(x,y)+Ae−t/τ(x,y)
の単一指数曲線と高度に相関されるよう、経験的事実に基づいて決定され得る。上式で、Cはナノ秒(ns)単位の定オフセットであり、Aはナノ秒(ns)単位の崩壊の振幅であり、τは時間単位の崩壊定数であり、また、空間依存性(x,y)は明確に記述されている。信号振幅は拡散の大きさを表し、したがって流体交換の量に正比例する。崩壊定数は振幅が63%小さくなる時間を表し、組織中へのホルマリン拡散の速度に反比例する(すなわち大きい崩壊定数=ゆっくり拡散する)。これらのメトリクスを計算するために、非線形回帰を使用してToF拡散傾向が上の式に当てはめられ得る。さらに、音響システムの走査機能は、組織試料のうちの拡散が最も遅い空間体積の計算および追跡を可能にしている。この崩壊定数は、組織が十分に拡散された場合の制限係数を表し、最も遅い崩壊定数(τslowest)と呼ばれている。
崩壊定数に到達しない場合、方法は単純に待機し、その間、測定を継続する(S204)。崩壊定数に到達すると、品質の高い染色を保証するための十分なホルムアルデヒドが組織中に存在し、タイマが停止され(S205)、また、データベース214中の特定の組織タイプおよび他の詳細と結合したデータベース記録に時間が記録され得る。ヒト扁桃腺組織の例では、実験結果によれば、4℃のNBF中に浸され、引き続いて1時間にわたって45℃のNBFに浸された直径6mmのヒト扁桃腺組織の核を使用した時間進行実験に基づいて、6mmのヒト扁桃腺試料には、4.5時間の最適時間を有するために必要な、10%のNBF中におけるコールド拡散時間はせいぜい5時間である。実験結果に基づいて、この決定は、式
Figure 0006909892
によってイネーブルされる。
上式で、tdoneは、冷たいホルマリン中で必要な拡散時間であり、また、τslowestは、組織の最も遅い拡散体積の崩壊定数を表している。したがってこのプロトコルは、試料が最も適切に染色されたことを予測するための分析に基づいて、試料が最適に拡散されたことをより良好に予測することができ、あるいはいくつかのToF拡散曲線を記録し、かつ、それらを使用して、試料に依存する最適固定時間を予測することができる。
例示的ToF拡散曲線は図3に示されている。本明細書において説明されているように、拡散は、組織試料毎にすべての位置で追跡され、最も長い崩壊定数を有する領域が最適結果または既存の染色結果と相関される。図3は、10%のNBF中でコールドソークされたヒト扁桃腺試料から生成されたToFトレース320を示したものである。個々の曲線は、読値毎に1mmシフトする組織内の異なる空間位置からの信号を表している。
図4は、本主題開示の例示的実施形態による、組織固定を最適化するための方法を示したものである。この例示的実施形態では、組織処理システムは、個々の組織試料がシステム中に提供されると、それを実時間監視するための音響センサをボード上に備え得る。方
法は、組織試料のホルマリン拡散(S401)で始まる。ソークすると、タイマが起動され(S402)、組織試料の拡散の閾値拡散が監視される(S403)。組織が十分に拡散されたか否かについての決定がなされる(S403)。これは、時間データベース414に記憶されている1つまたは複数の閾値拡散定数に基づき得る。例えば図2の訓練実施形態を使用して、データベース414中への閾値を準備することができ、同様の特性(組織タイプ、年齢、等々)を有する後続する組織試料は、データベース414中に準備されている崩壊定数または時間期間を使用して処理され得る。したがって閾値は、崩壊定数閾値または時間期間閾値のいずれかを含み得る。
いずれの場合においても、閾値に到達しない場合、方法は単純に待機し、その間、測定を継続する(S404)。閾値時間または崩壊定数に到達すると、品質の高い染色を保証するための十分なホルムアルデヒドが組織中に存在し、タイマが停止され(S405)、また、規定された最短時間期間、例えば1時間にわたって加熱されたホルマリンに切り換えることによって組織が処理される。最短時間期間は、交差結合力学を増すために組織が熱にさらされている間に固定が生じる十分な任意の時間期間であり得る。任意の他のプロセスが引き続いて実施され得る。
本明細書において説明されるように、本出願人らは、組織学的染色結果に基づいて一連の実験を実施して拡散を監視し、それにより、品質の高い染色を保証するために様々な組織タイプ全体にどの程度の拡散が必要であるかについての規則セットを得た。組織試料中へのホルマリンの拡散は、理想的な染色を生成するためにどの程度の交差結合薬品が必要であるかを下流の評価分析から決定するために、試料全体を通して動的に監視された。ヒト扁桃腺の試料セットが音響センサを使用して走査され、次に、プロセスを較正するために形態学用に染色された。一例示的実施形態では、音響センサは、4MHz集束変換器(TA0040104−10,CNIRHurricane Tech (Shenzhen) Co., Ltd.)の対を含むことができ、これらの対は、組織試料がそれらの共通の焦点に置かれ得るよう、空間的に整列される。直径4mmまたは6mmのいずれかの組織パンチを使用することによって正確なサイズの扁桃腺組織の試料が得られた。コールド+ワーム固定の場合、6mmの扁桃腺核が、3時間または5時間のいずれかにわたって予め4℃に冷やされた10%のNBF(100mMリン酸緩衝液を使用してpH6.8〜7.2に緩衝された、Fisher Scientific, Houston, TXからの飽和水性ホルムアルデヒド)中に置かれた。次に試料が除去され、交差結合を開始するためにさらに1時間の間、45℃のNBF中に置かれた。固定後、試料は、商用組織プロセッサセット中で、一晩にわたってさらに処理され、ワックス中に埋め込まれた。商用組織プロセッサは、Electron Microscopy Sciences(RTM)によって製造された、音響センサアセンブリを含むように修正され得るLynx
IIなどの商用ディップ・アンド・ダンク組織プロセッサであってもよい。標準試薬カニスタの周囲に篏合して標準試薬カニスタを密閉するために、Solidworks(登録商標)ソフトウェアを使用して機械式ヘッドが設計された。密閉されると、外部真空システムが、バルク試薬、ならびに組織を含むカセットの内容のガス抜きを開始することになる。実験中、組織を安全に保持して試料のすべりを防止する標準サイズの組織学的カセットと共に使用するためのカセットホルダが設計された。固定に引き続いて、個々のランからの6個の扁桃腺核が縦に分割され、かつ、切断面を下にしてモールド中に埋め込まれた。この多重ブロック配置により、6個の核の各々が同時に染色され得る。これらの試料を使用して良好な組織形態学が観察された。
図5は、本主題開示の例示的実施形態による、組織固定のための最適化されたプロトコルを示したものである。扁桃腺実験に引き続いて、33個の異なるタイプの組織を含む200個を超える試料が分析され、10%のホルマリン中での6時間が、適切な染色結果をもたらす十分な交差結合薬品を保証する結果が得られた。このコールド拡散時間は、次に
、いくつかの異なるタイプの組織に対する染色を使用して検証された。この研究は、冷たいホルマリン中での6時間のプロトコル(S501)は、標準室温固定と比較すると、7mmまでの厚さのすべてのタイプの組織にわたる組織処理を標準化し、かつ、最適化することができ、また、高速プロトコルを使用して理想的なバイオマーカおよび形態学的構造の保存を保証することができることを示している。言い換えると、任意の所与の組織タイプに対して、6時間コールドにわたる4度10%の中性緩衝液ホルマリンソーク(S501)、それに引き続く1時間のワームソーク(S502)は、より正確な診断における品質の高い染色結果を保証する。例示的実施形態では、拡散ステップ(S501)は、20℃未満、15℃未満、12℃未満、10℃未満、0℃から10℃までの範囲、0℃から12℃までの範囲、0℃から15℃までの範囲、2℃から10℃までの範囲、2℃から12℃までの範囲、2℃から15℃までの範囲、5℃から10℃までの範囲、5℃から12℃までの範囲、または5℃から15℃までの範囲のいずれかである固定剤溶液中で実施される。拡散ステップで使用される冷たい温度は、組織の周囲における過度の交差結合(これは、組織中への固定剤の拡散を禁止する)を禁止することによって拡散の速度を速くする利点、および組織中における酵素活性を小さくし、それにより組織(加リン酸反応タンパク質など)の分子詳細をより正確に保存する利点の二重利点を有している。
交差結合ステップ(S502)は、アルデヒド系固定剤によって誘導される交差結合の速度を加速するためにより高い温度(例えば20℃から55℃まで)で実施される。コールドステップおよびホットステップの組合せは、組織の完全な固定のために必要な処理時間の著しい短縮を促進する。
図6A〜Cは、本主題開示の例示的実施形態による、様々な組織試料に対する固定時間および対応する崩壊定数の決定を示したものである。生物学的組織の33個の異なる器官およびタイプを表す合計236個の試料が監視された。図6Aを参照すると、個々のそれぞれの器官タイプからの平均崩壊定数が表示され、最も低い崩壊定数から最も高い崩壊定数まで分類されている。この方法での表示によれば、より速やかに拡散する組織は左側に示され(すなわちより小さい崩壊定数)、また、ゆっくり拡散する組織は右側に示されている(すなわちより大きい崩壊定数)。注目すべきことには、米国癌治療学会および米国臨床病理学者協会(ASCO/CAP)がホルマリン中における余分の時間が必要であると認識している組織タイプのうちのいくつか(例えば乳房、脳、脂肪)は、組織のうちの最も遅い1/4の中でもグラフのはるか右側に位置していることが観察される。したがって開示されるToF拡散プロトコルおよび監視システムは、ゆっくり拡散する組織のASCO/CAPガイドラインを確証した。
既に説明したように、経験的事実に基づいて決定された、冷たいホルマリン中で必要な時間は、
Figure 0006909892
として表され得る。
この一般式から、ほぼ1崩壊定数まで拡散した試料は、適切に染色するための十分な交差結合薬品を全体に有することになることが結論付けられ得る。組織を十分に満たすために必要な時間は拡散の速度の尺度であるため、この一般基本規則は、すべての異なるタイプの組織に適用され得る。言い換えると、ゆっくり拡散する組織は、必然的により長い拡散時間を必要とし、一方、より速く拡散する組織は、ホルマリン中における必要な時間がより短い。さらに、優れた下流側バイオマーカ保存を得るために試料を10%のNBF中
でのコールド拡散にさらすのに必要な時間の長さを決定するべく、図6Aに示されている累積組織データベースからの崩壊定数が分析された。図6Bに確率密度関数(PDF)がプロットされている。試料のほとんどは、約2時間の最も遅い崩壊定数を有している。平均崩壊定数は2時間35分であった。有意な部分は、ほぼ4時間までの値を表示し、他の値からかけ離れた値は、さらに長い崩壊定数を有していることが分かる。さらに、図6Cは、図6Bの積分である累積密度関数(CDF)を示したものである。CDFから、試料の52.5%が2時間未満の最も遅い崩壊定数を有していることが観察される。同様に、試料の84.8%は4時間未満の崩壊定数を有し、また、92.8%は6時間未満である。扁桃腺に基づく実験から、また、経験的事実に基づいて決定された時間式から、データは、組織試料には、それらの最も遅い崩壊定数にほぼ等しい長さの時間の間、冷たいホルマリン中に置く必要があることを示唆している。したがって図6Cは、6時間にわたって10%のNBF中でコールドソークされた試料のほぼ93%が、下流の評価分析できれいに染色することになることを予測していることになる。
1崩壊定数のコールド拡散時間を必要とするこの予測は、その試料全体にわたる完全な染色に基づいており、また、現在の医学実践において診断可能なスライドと見なされているものよりも実質的に説得力がある。さらに、図5に示されている規則セットは、組織の最も遅い拡散部分のホルマリンの量に基づいて決定されたものであり、閾値では、組織のほとんどが、理想的な染色のために必要な臨界量を超える量のホルマリンを既に有していることを意味している。したがって6時間のコールド拡散の後に閾値に到達していない残りの7%の試料が、臨床医が診断を下すために依然として十分適切に染色することは理にかなっている。
しかしながら、拡散時間は組織の厚さの二乗の尺度であるため、5mmより薄い試料は、より厚い組織よりも著しく速く拡散することになる。冷たいホルマリン中における追加時間は、癌バイオマーカまたは組織の形態学的状態に対して悪影響を及ぼさないため、示されているtdoneは、7mmまでの厚さのすべての試料中の癌バイオマーカおよび形態学を良好に保存することになる。いくつかを挙げると、試料組成、厚さ、温度、カセット中における配向および事前分析組織取扱いを始めとする多くの要因が、交差結合薬品ホルマリンが組織中に拡散することになる速度に影響を及ぼし得る。冷たいホルマリン中で必要な示されている時間は、これらの要因のすべてが考慮されるため、とりわけ有力である。さらに、研究で監視された極めて多数の試料、および開示されるシステムの走査機能は、冷たいホルマリン中における6時間により、異なるタイプの組織による可変性(試料間の変化)ならびに組織不均質による寄与(試料内変化)にもかかわらず、組織が理想的に保存されることを保証している。さらに、拡散が最も遅い組織(脂肪、脳、等々)がこの研究に含まれていたため、排他的に監視されなかった他のタイプの組織は、潜在的プロトコルの制限要因ではありえない。したがって7mmまでの厚さのすべての試料は、冷たいホルマリン中における6時間の後、適切に染色することになる。
図7A〜7Dは、本主題開示の例示的実施形態による、従来技術に対する、開示される方法を使用して染色された組織試料間の染色品質比較を示したものである。図7Aおよび7Bは、静的6+1プロトコルを使用して固定された6mmの結腸組織試料(図7A)、および比較として24時間室温プロトコルを使用して固定された6mmの結腸組織試料(図7B)を示したものであり、組織形態学の品質が分析されている。同様に、図7Bおよび7Cは、6+1プロトコルを使用して固定された6mmの皮膚組織試料(図7C)、および24時間プロトコルを使用して固定された6mmの皮膚組織試料(図7D)を示したものである。6+1プロトコルを使用して固定されたすべての試料は、ゴールドスタンダード方法を使用して固定された同じ試料と比較して同じ組織形態学を有していた。これは、飛行時間原理に基づく分析技法を使用してNBFの拡散を実時間で監視し、かつ、結果を最適化することができることを証明している。
実施例
I.方法
A.組織収集
承認されたプロトコルとの契約合意の下で、地方のTucson病院から、新しい未固定のヒト扁桃腺組織が獲得された。外科から扁桃腺全体が、バイオハザードバッグ中のウェットアイス上でVentana Medical Systems Inc.(VMSI)へ輸送された。直径4mmまたは6mmのいずれかの組織パンチ(Miltex #33−36など)を使用することにより、正確なサイズの扁桃腺組織の試料が得られた。コールド+ワーム固定の場合、6mmの扁桃腺核が、3時間または5時間のいずれかにわたって予め4℃に冷やされた10%のNBF(100mMリン酸緩衝液を使用してpH6.8〜7.2に緩衝された、Fisher Scientific, Houston,
TXからの飽和水性ホルムアルデヒド)中に置かれた。次に試料が除去され、交差結合を開始するためにさらに1時間の間、45℃のNBF中に置かれた。固定後、試料は、商用組織プロセッサセット中で、一晩にわたってさらに処理され、ワックス中に埋め込まれた。
同意の任意放棄の下で、University of Washington Institutional Review Boardによって承認された手順を使用して、外科から追加組織試料が収集された。切り取ると、新しい組織は、概ね30〜60分以内の病理学研究所へ運ばれ、診断病理学者が診断に必要な切片を取った後、さらなる実験のために6mmの核が取られた。実験条件を使用して固定された組織と、CLIAおよび米国臨床病理学者協会(CAP)認証研究所の病理学部門の組織科学技術者によって生成された組織との間で組織形態学を比較するために、個々のケース(10〜48時間RTホルマリン固定)で生成された臨床組織ブロックからの未染色スライドが収集された。
B.組織染色
固定後、個々のランからの6個の扁桃腺核が縦に分割され、かつ、切断面を下にしてモールド中に埋め込まれた。この多重ブロック配置により、6個の核の各々を同時に染色することができた。試料は、最初にキシレンを使用して、次にグレード化エタノールを使用して試料からワックスを除去し、かつ、消イオン化水中に浸すことによって手動で染色された。スライドのラックを3分間にわたってGill IIヘマトキシリン(Leica
Microsystems)に浸け、引き続いて消イオン化水中で広範囲にわたって洗浄することによってヘマトキシリンが加えられた。次に、スライドが1分間にわたってScottのOriginal Tap Water(Leica Microsystems)中に浸され、かつ、消イオン化水中で広範囲にわたって洗浄された。Eosinへ移行させるために、スライドのラックが最初に70%のエタノール中に浸され、次に、2分間にわたってEosin Y(Leica Microsystems)中に浸された。スライドは、少なくとも4倍の100%エタノール中で広範囲にわたって洗浄され、キシレンに平衡化され、かつ、コンバースリップされた。
C.TOF実験セットアップ
4MHz集束変換器(TA0040104−10,CNIRHurricane Tech (Shenzhen) Co., Ltd.)の対が空間的に整列され、かつ、試料がそれらの共通の焦点に置かれた。トランスミッタとして指定された1つの変換器は、結合流体(すなわちホルマリン)および組織を横切って、受取り変換器によって検出される音響パルスを送り出す。最初に、数百マイクロ秒にわたって正弦波を伝達するために、波形発生器(AD5930, Analog Devices)を使用して伝達変換器がプログラムされた。そのパルス列は、次に、流体および組織を横切った後、受取り変換器によって検出された。受け取られた超音波正弦波と伝達された正弦波が、デジタル位相比
較器(AD8302, Analog Devices)を使用して電子的に比較された。位相比較器の出力は、一時的な領域が伝達されたパルスと受け取られたパルスの間で重畳している間、有効な読値をもたらした。位相比較器の出力は、その出力がマイクロコントローラ(ATmega2560, Atmel)上の統合されたアナログ−デジタル変換器に照会される前に安定させることができる。プロセスは、次に、周波数範囲全体にわたる入力正弦波と出力正弦波の間の位相関係を構築するために、変換器の帯域幅全体にわたって複数の音響周波数で反復された。この音響位相−周波数掃引は、次に、音響干渉法と同様の、サブナノ秒の精度で通過時間を検出することができる後処理アルゴリズムを使用してTOFを計算するために直接使用された。
流体中の音の速度は大きい温度依存性を有しており(例えば4℃においてΔtwater≒2.3ns/℃・mm)、とりわけTOFは、変換器の経路長にわたって積分された信号であるため、音響通過時間に大いに影響を及ぼし得る。実験の進行中、主として流体全体を通した熱変動の影響による総TOFの比較的大きい変化が典型的に観察されている。これらの環境による変動を補償するために、ホルマリンのみを介して同じくTOFが計算され、基準チャネルと呼ばれるこの収集を使用して、流体中の時空的熱勾配が補償された。しかしながらこの基準補償スキームは、流体中における比較的遅く、かつ、低い振幅の熱遷移で最も良好に働き、したがって試薬温度は、開発されたパルス幅変調(PWM)スキームを冷却ハードウェアに対して使用して正確に制御された。PWM温度制御は、温度に対するわずかな調整を〜400μsの増分にすることによって試薬の温度を設定点を中心として厳密に調整する、比例積分微分(PID)をベースとするアルゴリズムを使用した。PWMアルゴリズムは、設定温度を中心として0.05℃の標準偏差で流体の温度を制御することが分かった。基準補償と共に使用されたこの正確な温度制御は、事実上、計算された信号からすべての環境アーチファクトを除去した。フィルタリングされていないTOFトレースは、1.0ナノ秒未満の典型的な雑音値を有していた。
本出願人らの超音波機器を使用して、高い信頼性でホルマリン拡散を監視するために、商用ディップ・アンド・ダンク組織プロセッサ(図8A、Lynx II, Electron Microscopy Sciences)が、特注開発された音響ハードウェアを使用して改造された。標準試薬カニスタの周囲に篏合して標準試薬カニスタを密閉するために、Solidworks(登録商標)ソフトウェアを使用して機械式ヘッドが設計された。密閉されると、外部真空システムが、バルク試薬、ならびに組織を含むカセットの内容のガス抜きを開始することになる。実験中、組織を安全に保持して試料のすべりを防止する標準サイズの組織学的カセット(図8D、CellSafe 5, CellPath)と共に使用するためのカセットホルダが設計された。カセットホルダは、カセットホルダを一方向にスライドさせることになる垂直平行移動アームに取り付けられた。機械式ヘッドは、組織カセットの両側の2つの金属ブラケットを使用して設計された(図8B)。一方のブラケットは伝達変換器を収納した5。もう一方のブラケットは受取り変換器を収納し5、受取り変換器は、それらのそれぞれの伝達変換器と空間的に整列された。受取りブラケットは、他の変換器の伝搬軸に対して直角に配向された一対の変換器を同じく収納した(図8C)。変換器のこのセットは基準チャネルとして働いた。さらに、個々の2D収集の終了時にカセットが持ち上げられ、第2の基準収集が獲得された。これらの基準TOF値を使用して、ホルマリン中の環境誘導変動が補償された。
個々の収集が終了すると、直交基準センサは、音速に対する強い影響を有する流体の時空変化を検出するために使用されるTOF値を計算することになる。次に、カセットが垂直方向に≒1mm平行移動され、すべての変換器対に対して、新しい位置でTOF値が計算された。このプロセスが反復され、カセット全体がカバーされた。標準サイズのカセット中の組織を走査する場合、第2および第4の変換器対(図8C、一番下の行)がターンオフされた。これは、第1、第3および第5の変換器対(図8C、一番上の行)による、
カセットの中央の3つの小区分のうちの1つの個々の走査を可能にした。次に、2つの組織核が個々の列に置かれ、1つは一番上に、もう1つは一番下に置かれた。このセットアップにより、6個の試料(2行×3列)からのTOFトレースを同時に獲得することができ、ラン毎の変化を著しく小さくし、また、処理能力を高くすることができる。このプロセスは、実験の進行中、組織が浸透平衡に到達して、それ以上の拡散が生じなくなり、一時的に平らなTOF信号がもたらされるまで、数時間にわたって反復された。1つの位置におけるほぼ実時間のデータ収集が可能であるが、すべての空間位置における1つの完全な収集には約90秒を要する(Δt<1秒)。
D.TOFデータ分析
既に言及したように、流体中のTOFは、バルク媒体内の熱変動に高度に依存する。これらの逸脱を補償するために、組織およびホルマリンを介して獲得されたTOF値から基準TOF値が控除され、疑似信号を伴うことなく、組織から位相遅延を隔離された。直交基準センサを使用する場合、スケーリングファクタを使用して、これらの2つのセンサと走査センサの対との間のわずかな幾何学的相違が調整された。以下、単純にTOFと呼ばれる、組織からの基準補償済みToFトレースは、経験的事実に基づいて、式1の形態の単一指数曲線と高度に相関されるように決定された。
TOF(x,y,t)=C(x,y)+Ae−t/τ(x,y)
上式で、Cはns単位の定オフセットであり、Aはns単位の崩壊の振幅であり、τは時間単位の崩壊定数であり、また、空間依存性(x,y)は明確に記述されている。信号振幅は拡散の大きさを表し、したがって流体交換の量に正比例する。崩壊定数は振幅が63%小さくなる時間を表し、組織中へのホルマリン拡散の速度に反比例する(すなわち大きい崩壊定数=ゆっくり拡散する)。これらのメトリクスを計算するために、非線形回帰を使用してToF拡散傾向が上の式に当てはめられた。さらに、本出願人らのシステムの走査機能のため、本出願人らは、組織のうちの拡散が最も遅い空間体積を計算し、かつ、追跡することができる。この崩壊定数は、組織が十分に拡散された場合の制限係数を表し、最も遅い崩壊定数(τslowest)と呼ばれている。例えば図9Bに緑色の破線で示されている試料からのすべてのTOF信号は、図3にグラフ化されている。崩壊速度と空間変化信号の振幅の両方に大きい可変性があることが分かる。基準補償済みTOFデータ中の疑似白色雑音を小さくするために、第3次バターワースフィルタが利用された。このフィルタは、指数拡散崩壊の低周波成分を保存し、その一方で高周波雑音を除去した。単一指数崩壊を参照すると、フィルタリングされていないTOFデータは、約1ナノ秒の典型的な平均二乗誤差を有しており、フィルタリング後、この平均二乗誤差が200〜300ピコ秒に低減された。
E.結果
E1.組織学的保護バンド化拡散時間
NBFを使用したコールド+ワーム固定プロトコルは、活性状態の組織形態学ならびにタンパク質の保存に有利であったことは既に示された。Chafin et al, Rapid two−temperature formalin fixation, PloS One 8, e54138 (2013)。室温固定からのこの逸脱は、4℃および45℃のNBF中への、4mmまでの厚さの組織の2時間の連続する液浸のため、最初は2+2プロトコルと呼ばれた。この高速プロトコルの基礎をなしている科学的主要素は、交差結合(ワームステップ)を開始する前の拡散(コールドステップ)の間に、十分なホルムアルデヒドをすべての組織中に拡散させる能力である。初期の報告では、これは、拡散時間および温度を変え、かつ、組織形態学染色および免疫組織化学染色の品質を調査することによって、ただ単に経験に基づいて達成された。プロトコルを微調整するために、本出願人らは、超音波拡散に基づく検出を使用して、冷たいNBFの拡散を実時間で監視する方法を開発した。
組織切片中へのNBFの拡散は、主としてホルムアルデヒドの濃度および時間によって制御される。NBFは一定の濃度のホルムアルデヒドである(3.7%W/V)ため、本出願人らは、優れた組織形態学をもたらす、冷たいNBFへの最短露出時間が存在するに違いないことを推論した。4℃のNBFに浸され、引き続いて45℃のNBFに1時間にわたって浸されたヒト扁桃腺組織の6mm核を使用して、単純な時間進行実験が実施された(図10)。本出願人らは、十分なホルムアルデヒドが試料中に存在する場合、より短いワームステップが標準化され得ることを予め決定した。複数の実験の分析の結果、良好な組織形態学を得るためには最低3時間のコールドNBF(3+1)が必要である。組織形態学は、5時間(5+1)の後、わずかにより良好であったが、この1つの組織タイプを使用したより長い時間においても、追加利点は見られなかった。次に、検証として、3+1プロトコルおよび5+1プロトコルの両方を使用して複数の核が調査された(図10)。
E2.拡散監視検証および扁桃腺特性化
6mmの扁桃腺に対する必要な拡散時間を特性化すると、本出願人らは、次に、これらの結果を、本出願人らのTOFベース拡散監視技術を使用して検出される標本全体にわたって、交差結合薬品の必要な量と相関させることを模索した。冷たい(7±0.5℃)10%のNBF中のTOFを使用して、合計39個の6mmのヒト扁桃腺試料が画像化された。39個の試料のうちの15個が3時間にわたって監視され、残りの24個の試料は、5時間にわたって走査された。試料毎の最も遅い空間崩壊定数が図11にプロットされた。3時間および5時間にわたって監視された試料は、それぞれ4時間16分および4時間38分の平均拡散崩壊定数を有していた。22分の拡散時間の差は比較的小さく(<10%)、また、統計的には取るに足らないものであり(p=0.45)、2つのデータセットは同じ分散からのものであることを示しており、また、同じ物理的現象を測定している。これは、本出願人らの検出機構が走査時間を少なくとも3時間まで間違いなく短縮することを証明している。累積データセットに対する平均に関しては、個々の組織の最も遅い拡散領域の平均崩壊時間は4.5時間であった。
E3.異なる組織の測定された拡散速度
次に、様々な他の組織試料の数百個の試料の特性が本出願人らのTOF組織監視デバイスを使用して記録された。個々の試料の最も遅い拡散部分の崩壊定数をプロットしているデータは、図12に表示されている。生物学的組織の33個の異なる器官およびタイプを表す合計236個の試料が監視された。この研究では、5〜7mmの厚さの試料のみが考察された。組織は、その性質が本来的にゼラチン状であり、したがって正確な厚さに切断することが困難であるため、この範囲の組織厚さが必要であった。試料化されたすべての組織タイプから信頼性の高い傾向が記録され、本出願人らの拡散監視技術が異なる組織タイプの類別と両立することを示した。ホルマリン拡散の速度には、個々の組織タイプ内においてさえ極端な量の可変性が存在しており、いくつかの組織は、数時間の最大−最小差を示している。組織は、高度に不均質であることが知られているため、これは期待されたことであった。さらに、個々のそれぞれのグループからの平均崩壊定数も著しく変化しており、拡散速度は、異なる器官およびタイプの組織全体にわたって著しく異なることを示している。
個々のそれぞれの器官タイプからの平均崩壊定数は図6Aに表示されており、最も低い崩壊定数から最も高い崩壊定数まで分類されている。この方法での表示によれば、より速やかに拡散する組織は左側に示され(すなわちより小さい崩壊定数)、また、ゆっくり拡散する組織は右側に示されている(すなわちより大きい崩壊定数)。重要なことには、本出願人らは、ASCO/CAPがホルマリン中における余分の時間が必要であると認識している組織タイプのうちのいくつか(例えば乳房、脳、脂肪)は、組織のうちの最も遅い1/4の中でもグラフのはるか右側に位置していることを観察している。したがって本出
願人らのToF拡散監視システムは、ゆっくり拡散する組織のASCO/CAPガイドラインを確証した。
E4.理想的な染色のために必要なコールド拡散時間
本出願人らは、既に節E1で、6mmのヒト扁桃腺試料には、4.5時間の最適時間を有するために必要な、10%のNBF中におけるコールド拡散時間はせいぜい5時間であることを詳細に説明した。したがって本出願人らは、冷たいホルマリン中で必要な、経験的事実に基づいて決定された時間を式2として生成する。
Figure 0006909892
上式で、tdoneは、冷たいホルマリン中で必要な拡散時間であり、また、τslowestは、組織の最も遅い拡散体積の崩壊定数を表している。この一般式から、本出願人らは、ほぼ1崩壊定数まで拡散した試料は、適切に染色するための十分な交差結合薬品を全体に有することになることを観察し、かつ、結論付ける。組織を十分に満たすために必要な時間は拡散の速度の尺度であるため、したがってこの一般基本規則は、すべての異なるタイプの組織に適用することになる。言い換えると、ゆっくり拡散する組織は、必然的により長い拡散時間を必要とし、一方、より速く拡散する組織は、ホルマリン中における必要な時間がより短い。
優れた下流側バイオマーカ保存を得るために試料を10%のNBF中でのコールド拡散にさらすのに必要な時間の長さを決定するべく、累積組織データベースからの崩壊定数が分析された。図6Bに確率密度関数(PDF)がプロットされている。試料のほとんどは、約2時間の最も遅い崩壊定数を有している。有意な部分は、ほぼ4時間までの値を表示し、他の値からかけ離れた値は、さらに長い崩壊定数を有していることが分かる。
図6Cに累積密度関数(CDF)がプロットされており、これは、図6Bの積分を表している。このCDFから、試料の52.5%は、2時間未満の最も遅い崩壊定数を有している。同様に、試料の84.8%は4時間未満の崩壊定数を有し、また、92.8%は6時間未満である。扁桃腺に基づく実験および式2から、データは、組織試料には、それらの最も遅い崩壊定数にほぼ等しい長さの時間の間、冷たいホルマリン中に置く必要があることを示唆している。したがって図6Cは、6時間にわたって10%のNBF中でコールドソークされた試料のほぼ93%が、下流の評価分析できれいに染色することになることを予測していることになる。1崩壊定数のコールド拡散時間を必要とする本出願人らの予測は、その試料全体にわたる完全な染色に基づいている。この閾値は、現在の医学実践において診断可能なスライドと見なされているものよりも実質的に説得力がある。さらに、本出願人らの規則セットは、組織の最も遅い拡散部分のホルマリンの量に基づいて決定されたものであり、閾値では、組織のほとんどが、理想的な染色のために必要な臨界量を超える量のホルマリンを既に有していることを意味している。したがって6時間のコールド拡散の後に閾値に到達していない残りの7%の試料が、臨床医が診断を下すために依然として十分適切に染色することは理にかなっている。
したがって本出願人らは、10%のNBF中でコールドソークされた7mmまでの厚さの試料に対して、
done(すべての組織タイプ)≦6時間、(式3)
を明瞭に示す。このtdoneは、5〜7mmの厚さの試料から排他的に計算されたことに留意することは重要である。しかしながら、拡散時間は組織の厚さの二乗の尺度である
ため、5mmより薄い試料は、より厚い組織よりも著しく速く拡散することになる。冷たいホルマリン中における追加時間は、癌バイオマーカまたは組織の形態学的状態に対して悪影響を及ぼさないため、示されているtdoneは、7mmまでの厚さのすべての試料中の癌バイオマーカおよび形態学を良好に保存することになる。いくつかを挙げると、試料組成、厚さ、温度、カセット中における配向および事前分析組織取扱いを始めとする多くの要因が、交差結合薬品ホルマリンが組織を満たすことになる速度に影響を及ぼすことになる。冷たいホルマリン中で必要な示されている時間は、これらの要因のすべてが考慮されるため、とりわけ有力である。さらに、本出願人らの研究で監視された極めて多数の試料、および本出願人らのシステムの走査機能は、冷たいホルマリン中における6時間により、異なるタイプの組織による可変性(試料間の変化)ならびに組織不均質による寄与(試料内変化)にもかかわらず、組織が理想的に保存されることを保証している。さらに、拡散が最も遅い組織(脂肪、脳、等々)がこの研究に含まれていたため、本出願人らは、排他的に監視されなかった他のタイプの組織は、潜在的プロトコルの制限要因ではないであろうことを確信している。したがって7mmまでの厚さのすべての試料は、冷たいホルマリン中における6時間の後、適切に染色することになる。
E5.6+1汎用プロトコルに対する染色結果
静的6+1固定プロトコルが汎用組織学ワークフローのために使用され得ることを検証するために、いくつかの組織タイプの組織形態学が調査された。組織は、遅いカテゴリ、中間カテゴリおよび速いカテゴリを包含するために、可用性および相対TOF拡散速度に基づいて選択された(図6Aを参照されたい)。ヒト皮膚+脂肪、扁桃腺、結腸および腎臓のいくつかの6mmの核が、静的6+1プロトコルおよび比較として24時間室温プロトコルを使用して固定され、かつ、組織形態学の品質が分析された(図13)。6+1プロトコルを使用して固定されたすべての試料は、ゴールドスタンダード方法を使用して固定された同じ試料と比較して同じ組織形態学を有していた。このささやかな試験的研究は、飛行時間原理に基づく分析技法を使用してNBFの相対拡散を実時間で監視し、かつ、結果を最適化することができることを証明している。
F.考察
組織処理および保存におけるこの最新技術は、個別化医療ワークフローにおける標本取扱いのために準備されていないフリーサイズワークフローである。この方法は、組織全体にわたる、個々の組織によって取り込まれるホルマリンの可変速度によって支配されるホルマリンの濃度に、試料特化変化を考慮することはできない。この研究は、活性試薬が拡散している間に、NBFと間質性流体の交換によって生成されるサブナノ秒の音響飛行時間差に基づく実時間拡散監視システムを詳細に説明した。理想的な染色を保証するために必要な交差結合薬品の必要な量を予測するために、拡散傾向が、形態学的染色結果に基づいて、経験的事実に基づいて必要な拡散時間と相関された。拡散監視は、次に、200個超の個々の試料および33個の異なるヒト器官を含む広範囲にわたる組織収集研究に使用された。結果は合体され、7mmまでの厚さのすべての組織タイプが、冷たい10%のNBF中における6時間の後に、試料全体にわたって診断可能な染色をもたらすこと、および冷たいホルマリン中におけるこの時間の後、圧倒的多数の試料(≒93%)が理想的な染色を有することを示している。6時間のコールド拡散時間は品質の高い染色をもたらすことになるという観察は、次に、6+1プロトコルを使用して処理されたいくつかのタイプの組織を染色することによって確証された。総合すると、この研究は、単純な6+1プロトコルは、標準室温固定と比較して高速のプロトコルを使用して、7mmまでの厚さのすべてのタイプの組織全体にわたる組織処理を標準化し、かつ、最適化し、また、理想的なバイオマーカおよび形態学的構造の保存を保証することができることを示している。

Claims (5)

  1. 7mmまでの厚さの組織試料を固定するための方法であって、
    (a)固定剤拡散組織試料を得るために、前記組織試料を0℃から15℃までの温度の冷たいアルデヒド系固定剤に浸し、かつ、5時間を超える時間の間、前記冷たいアルデヒド系固定剤を前記組織中に拡散させるステップと、
    (b)交差結合を許容する十分な長さの時間の間、20℃から55℃までの温度のアルデヒド系固定剤の存在下で前記固定剤拡散組織試料を加熱するステップと
    0.5W/cm 以下の強度の超音波を用いて前記組織試料を介した前記冷たいアルデヒド系固定剤の拡散を監視するステップと、
    を含む方法。
  2. 前記組織試料が厚さ4mm超である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記冷たい固定剤が5℃から12℃までの温度である、請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. (a)および(b)を組み合わせた時間が8時間以内である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 請求項1からのいずれかに記載の方法によって獲得された固定済み組織試料。
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