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JP6910639B2 - アンジオテンシン変換酵素阻害剤、組成物およびその製造方法 - Google Patents
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アンジオテンシン変換酵素阻害剤、組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤を含有する組成物およびその製造方法に関する。
2015年の国民健康・栄養調査によると、日本人男性の約7割、女性の約5割(年齢40〜74才)が高血圧(140/90mmHg以上)であると報告されている。現在、日本高血圧学会などでの高血圧改善の食事指導として減塩が進められていて、塩分を多く含む食品の摂取を抑制する指導がされる場合がある。
血圧上昇を抑制する方法の一つに、血圧上昇に関与するアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することが挙げられる。食品中には、ACE阻害活性を有するペプチドが含有されていることが知られ、これらの食品は特定保健用食品として認定され、商品化されているものもある。ラクトトリペプチドを産生する乳酸菌を用いて発酵させた血圧降下活性を有する成分を含む発酵乳製品が特許文献1:特開平11−100328号公報に開示されている。かつお節由来であるアンギオテンシン変換酵素阻害ペプチドを含む血圧降下剤または血圧降下食品が特許文献2:特開2001−240600号公報に開示されている。
特開平11−100328号公報 特開2001−240600号公報
食品には多くの栄養分が含まれているため、様々な有益な効果を期待して日常的に食べられている。中には塩分を多く含む食品もあり、高血圧の改善のためにこのような食品を摂取することを制限することは、食生活を大きく変えることになるため困難である。そこで、塩分を含む食品を継続して食べ続けても血圧が上昇しないよう、ACE阻害などを示す血圧上昇抑制物質を摂取することが考えられ、血圧上昇抑制物質が含まれる食品を継続して食べるためにも食品の品質を低下させないようにする必要がある。このため、化合物の新たな作用を見出して、ACE阻害活性を示す化合物が含まれる組成物を摂取することができるようにするという課題がある。
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、新たなアンジオテンシン変換酵素阻害剤およびその製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害剤は次の構成を備える。すなわち本発明は、下記化学式(1)で示される、(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−5−オキソ−2,5−ジヒドロ−2−フラニル)酢酸メチルにゲンチオビオースが配位した配糖体である化合物を有効成分として含有することを特徴とする。この構成によれば、ACE阻害活性を示し、新たなアンジオテンシン変換酵素阻害剤として利用できる。
Figure 0006910639
また、本発明において、前記化合物が、味噌の抽出物由来であってもよい。これによれば、味噌から抽出される物質であるため、人に対して安全性は問題ない。
上記の目的を達成するため、本発明の上記アンジオテンシン変換酵素阻害剤の製造方法は次の構成を備える。すなわち本発明は、米に麹菌を接種して製麹する製麹工程と、前記製麹工程により得られた麹と、大豆とを混合して発酵・熟成する熟成工程と、前記熟成工程により得られた味噌に遠心分離を実施して味噌水抽出液を得る工程と、得られた前記味噌水抽出液に濾過を実施して3kDa以下の画分を得る工程と、を含むことを特徴とする。この構成によれば、大豆と米麹を用いた発酵物から新たなACE阻害活性を示す物質が得られる
また、本発明において、前記麹菌が、焼酎製造に用いられる焼酎用の麹菌であってもよい。これによれば、大豆発酵物中から新たなACE阻害活性を示す物質がより多く得られる
また、本発明において、前記麹菌が、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)であってもよい。これによれば、アスペルギルス・カワチを用いて製造される大豆発酵物中から新たなACE阻害活性を示す物質がより多く得られる
また、本発明において、前記製麹工程において、前記麹菌が接種された米、40℃以上45℃以下の温度範囲で保持して製麹してもよい。
また、本発明において、前記熟成工程において、40℃以上50℃以下の温度範囲で発酵・熟成してもよい。これによれば、一般的な大豆発酵物よりも高温で発酵・熟成されるため、新たなACE阻害活性を示す物質がより多く得られる
本発明によれば、新たなアンジオテンシン変換酵素阻害剤を提供できる。
各味噌の限外濾過画分のACE阻害活性の測定結果である。 10倍希釈における各分画の逆相クロマトグラフィー画分のACE阻害率である。 100倍希釈における各分画の逆相クロマトグラフィー画分のACE阻害率である。 実施例1のF5のLC−TOF−MS分析結果である。 実施例1のF5のマススペクトルデータである。 想定される化合物の構造である。 味噌または食塩水の投与による血圧の変化を示すグラフである。
本実施形態のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤は、下記(1)〜(2)の理化学的性質を有し、フラン環およびヒドロキシ基を有する構造である物質を基本骨格とする化合物を有効成分として含有する。
(1)分子量:202
(2)分子式:C10
また、フラン環およびヒドロキシ基を有する基本骨格は、下記式(1)で示される構造式である。この基本骨格は、(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−5−オキソ−2,5−ジヒドロ−2−フラニル)酢酸メチル(Methyl(4−hydroxy−3−methoxy−5−oxo−2,5−dihydro−2−furanyl)acetate)である。
Figure 0006910639
また、フラン環およびヒドロキシ基を有する基本骨格は、下記式(2)で示される構造式である。この基本骨格は、(3‐エトキシ‐4‐ヒドロキシ‐5‐オキソ‐2,5‐ジヒドロフラン‐2‐フラニル)酢酸((3−Ethoxy−4−hydroxy−5−oxo−2,5−dihydro−2−furanyl)acetic acid)である。
Figure 0006910639
また、フラン環およびヒドロキシ基を有する基本骨格は、下記式(3)で示される構造式である。この基本骨格は、5−(ヒドロキシメチル)−3,4−ジメトキシ−2−フランカルボン酸(5−(Hydroxymethyl)−3,4−dimethoxy−2−furoic acid)である。
Figure 0006910639
式(1)〜式(3)に示す構造式を基本骨格とする化合物としては、式(1)〜式(3)に示す構造式内にあるヒドロキシ基の水素が置換基で置換された化合物である。置換基の一例として糖があり、式(1)〜式(3)の化合物をアグリコンとし、アグリコンに糖が結合した配糖体が挙げられる。糖は二糖類であってもよく、糖の一例として、ゲンチオビオース(分子式:C122211)、スクロース(分子式:C122211)がある。
また、本実施形態のACE阻害剤は、味噌の抽出物由来であってもよい。上記の理化学的性質を有し、フラン環およびヒドロキシ基を有する構造である物質を基本骨格とする化合物が含まれる味噌から溶媒を用いて抽出することで、抽出物には上記化合物が含まれる。この抽出物を用いて本実施形態のACE阻害剤が得られる。抽出物をそのまま用いてもよいが、その他の物質も抽出されるため、上記化合物を得るために分離、精製してもよい。味噌の抽出に用いられる溶媒は水を用いるが、溶媒は特に限定されない。また、食べることが可能な味噌から抽出される物質であるため、人に対して安全性は問題ない。
本実施形態のACE阻害剤は、食品、飲料、飼料、食品添加物、医薬品、医薬部外品、サプリメント等の組成物に含められることによって、ACE阻害活性を含有する組成物を提供することができる。ACE阻害剤をそのまま食品や飲料、飼料に混ぜてもよく、カプセルなどに封入して所要量混入させるようにすればよい。また、医薬品、医薬部外品に用いる場合には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、溶解補助剤、コーティング剤等の製剤に用いる公知の補助剤を用いて製剤することが可能である。
また、ACE阻害剤が生成して含有されるように製造した組成物自体を、ACE阻害剤を含む組成物としてもよい。そして、組成物は味噌であってもよい。本実施形態のACE阻害剤を混合したACE阻害剤を含む味噌、もしくは、ACE阻害剤が生成し、含有されるように製造した味噌をそのままACE阻害剤を含む味噌としてもよい。味噌は塩分を含む食品ではあるものの、本実施形態のACE阻害活性を示す物質が含まれるため、味噌自体がACE阻害活性を示し、食品として日常的に摂取し続けることができる。
本実施形態のACE阻害剤を含有する組成物の製造方法は、米に麹菌を接種して製麹する製麹工程と、製麹工程により得られた麹と、大豆とを混合して発酵・熟成する熟成工程とを含む。これにより、ACE阻害活性が高い組成物が得られ、この組成物を用いて抽出した抽出物から本実施形態のACE阻害活性を示す化合物を得ることができる。特に本実施形態の組成物の製造方法により味噌を製造でき、製造される味噌中に本実施形態のACE阻害活性を示す化合物が含まれる。
本実施形態のACE阻害活性を示す化合物が含まれる味噌は、一般的な味噌を製造する際には使用されない麹菌を用いて製造され、焼酎を製造する際に用いられる焼酎用の麹菌を用いて製造される。麹菌のうち、製麹工程における米麹の製造に適したアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)であることが好ましい。製麹工程における製麹温度は一般的な味噌用の麹菌の製麹温度より高く、40℃以上45℃以下の範囲であることが好ましい。この温度範囲において一定時間保持して製麹する。製麹温度を高くすることで、ACE阻害活性を示す上記化合物の量を増加させることができ、味噌中のACE阻害活性が高くなる。
麹と、大豆とを混合して発酵・熟成する熟成工程における発酵・熟成温度の範囲は40℃以上50℃以下である。発酵・熟成温度を一般的な味噌の製造時よりも高い40℃以上50℃以下の範囲にすることで、ACE阻害活性を示す上記化合物の量を増加させることができ、味噌中のACE阻害活性が高くなる。発酵・熟成期間は短期間でも熟成可能であり、5日であってもよい。なお、大豆に対する米麹の仕込割合は特に限定されるものではなく、大豆の重量に対する米の重量は適宜変えられる。
また、本実施形態の製造方法により得られる組成物、味噌は、上記のACE阻害活性を有する化合物の他に、ACE阻害活性を有するペプチドが含有されていてもよい。
以下、実施例を挙げて説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。麹菌、製麹条件、大豆と米麹との仕込割合、発酵・熟成条件を変えて味噌を製造した。主な製造条件を表1に示す。塩の添加量などのその他の条件は同じである。なお、味噌については、食味評価の結果、製法が通常法と異なるものもあるが、食するのに適当である結果であった。
[実施例1](焼酎用の麹菌)
焼酎用の麹菌(株式会社樋口松之助商店製、アスペルギルス・カワチ)を米に接種し、製麹温度は40℃以上、45℃以下の範囲に収まるように保持し、製麹時間は42時間で製麹して米麹を得た。得られた米麹と大豆とを所定の割合で混合した。発酵・熟成は50℃、5日で行い、実施例1の味噌を得た。
[実施例2](味噌用の麹菌)
味噌用の麹菌(株式会社樋口松之助商店製、アスペルギルス・オリゼ)を米に接種し、製麹条件、仕込割合、発酵・熟成条件は実施例1と同じ条件で実施例2の味噌を得た。
[実施例3](味噌用の麹菌、製麹温度28℃以上、40℃未満、5年熟成)
実施例2で使用した味噌用の麹菌を米に接種し、製麹温度は28℃以上、40℃未満の範囲に収まるように保持し、製麹時間は42時間で製麹して米麹を得た。得られた米麹と大豆とを混合した。発酵・熟成は20℃〜30℃の範囲で5年行い、実施例3の味噌を得た。
[実施例4](味噌用の麹菌、発酵・熟成期間)
使用した麹菌の種類、製麹条件は実施例3と同じである。その他の条件について、発酵・熟成は20℃〜30℃の範囲で1か月行い、実施例4の味噌を得た。
Figure 0006910639
[ACE阻害活性を示す物質の精製]
実施例1〜実施例4で得られた各味噌10gを三角フラスコにとり、100mLの蒸留水を添加し、室温1時間で振とうした。振とう後に遠心分離(12000rpm、10分)を実施し、上清を味噌水抽出液とした。味噌水抽出液について、限外濾過フィルター(セントリコンプラス30、10、3、ミリポア社)を用いて高分子側から順番に限外濾過を実施し、各画分(30kDa以上、10〜30kDa、3〜10kDa、3kDa以下)を得た。各画分についてACE阻害活性、タンパク定量を実施し、最もACE阻害活性が高い画分について、凍結乾燥を実施し、逆相クロマトグラフィーによる分離、精製を実施した。逆相クロマトグラフィーの条件を表2に示す。各フラクションを減圧濃縮(Savant社、減圧濃縮装置)後0.1mLの蒸留水に溶解した。
Figure 0006910639
[ACE阻害活性を示す物質の分析]
実験方法は、日本食品工学会に記載の「ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害活性(マイクロプレート法)」に準拠して実施した。実験方法は下記の通りである。
(1)96well black plateに1wellあたり50μLの試料を添加する。blankとしてHEPESバッファーを使用する。
(2)ACE溶液(10mU/mL)を100μL添加する。
(3)プレートミキサーで混和後、37℃、10分間温置する。
(4)ACE基質溶液(25mMHip−His−Leu)を添加する。
(5)プレートミキサーで混和後、37℃で40分間温置(反応)する。
(6)1N NaOHを50μL添加し、反応を停止する。
(7)プレートミキサーで混和後、0.2%o−フタルアルデヒド溶液を添加する。
(8)プレートミキサーで混和後、室温で15分間静置(反応)する。
(9)3.6Mリン酸を添加し、反応を停止する。
(10)プレートミキサーで混和後蛍光強度(励起波長340nm、蛍光波長485nm)を測定する。
ACEの阻害活性(率)(%)は下記の計算式により算出される。
阻害活性(率)(%)=[1−(S−Sb)/(C−Cb)]×100
試料液の蛍光強度をS、試料液の代わりにHEPESバッファーを使用した場合の蛍光強度をCとする。また、SおよびCに対し、ACE溶液の代わりにHEPESバッファーを添加した場合の蛍光強度をSbおよびCbとする。S:試料液+ACE溶液+ACE基質溶液。Sb:試料液+ACE基質溶液。C:HEPESバッファー+ACE溶液+ACE基質溶液。Cb:HEPESバッファー+ACE基質溶液。
図1に各味噌の限外濾過画分のACE阻害活性の測定結果を示す。各味噌における阻害活性は3kDa以下の画分が最も高い活性を示していた。一方、実施例3の味噌は30kDa以上、10〜30kDaの画分の高分子側にも活性が見られた。ACE阻害活性の測定結果から、各味噌の3kDa以下の画分および実施例3の味噌の30kDa以上、10〜30kDa画分について逆相クロマトグラフィーによる分離精製を実施した。
図2、図3に各分画の逆相クロマトグラフィー画分のACE阻害率(図2:画分を10倍希釈してACE阻害率を測定、図3:画分を100倍希釈してACE阻害率を測定)を示す。10倍希釈では各画分とも高いACE阻害率を示していた。しかし、100希釈では各画分のACE阻害率は低下し、実施例1の焼酎用の麹菌を用いた味噌の3kDa以下の画分F5のみ高いACE阻害活性(ACE阻害率80%以上)を示した。実施例3の味噌は、10倍希釈では高いACE阻害活性を示したが、希釈により精製フラクションの活性低下が見られたことから、味噌中のACE阻害物質が単一ではなく複合的に活性を示すことが考えられる。これらのことから、今回精製を試みた味噌の中で、実施例1の味噌が(1)ACE阻害活性、(2)希釈による活性が低下しにくい点で他の味噌に比べて優位であると考えられる。
実施例1〜実施例4の味噌について、タンパク質濃度を測定したところ、実施例1、実施例4は全ての画分でタンパク質が検出されたが、実施例2、実施例3は10kDa以下ではタンパク質が検出されなかった。実施例1は、製麹時間、熟成期間が短いにもかかわらず、実施例4とほぼ同じ分子量分布であった。一方、実施例1と同様の製麹時間、熟成期間であるにもかかわらず実施例2は10kDa以下に分解されなかった。この結果は、実施例1と実施例2〜実施例4における麹菌の違いによるプロテアーゼ活性の差により、タンパク質の濃度に違いが現れたと推測される。
[LC−TOF−MSの分析]
実施例1のF5についてACE阻害物質の同定を実施した。LC−TOF−MSの分析条件を表3に示す。イオン化はESI+で実施し、MS分析モードで実施した。
Figure 0006910639
図4に実施例1のF5のLC−TOF−MS分析結果を示す。A210のデータからF5の化合物はほぼ単一ピークであると示された。図5にF5のマススペクトルデータを示す。F5の化合物には、m/z=203.0525に、質量162、324が付加されたピークである365、527が存在する(単糖の分子量は180、二糖の分子量は342であるが、配糖体結合時にHOが脱離するため、付加される単糖、二糖のm/zはそれぞれ162、324となる)。この結果から本化合物が、m/z=203.0525の化合物に糖が付加された配糖体であることが推測された。この二つの化合物は丁度、二糖に相当する分だけm/z値が異なることからF5のターゲット化合物はm/z=203.0525に二糖が結合した配糖体であると考えられる。
LC−TOF−MSの分析結果から、m/z=203.0525の化合物について、構造式の検索を実施した。検索結果にはフラン環を有する化合物があり、フラン化合物はACE阻害活性を有するという報告があることから、フラン環を有する化合物がACE阻害物質の候補になりうると推測される。式(1)、式(2)、式(3)に示す化合物を選定した。
[NMR分析]
実施例1のF5について乾固し、NMR解析を実施した。解析はプロトンNMRおよびカーボンNMRを実施した。
糖のC−NMRにおいて100ppm付近(アノマー末端1位の糖のシグナル)、70−80ppm付近(糖の2位から5位のシグナル)、60ppm付近(6位のCH2シグナル)のピークが検出された。C−NMRの分析結果から、実施例1のF5は糖であることが示唆された。また、H−NMRにおいてβ結合に寄与するシグナルが4.5ppm付近にタブレットで確認されたことから、本化合物はβ結合を有する二糖類であると推測された。各水素、炭素の結合状況については、TOCSY、COSY、HSQC、HMBCの解析により構造を推定した。これにより、二糖類はβ1、6グルコシド結合を有するゲンチオビオースであることが確認された。
以上の結果から、LC−TOF−MS、NMRの分析結果から、実施例1のF5の候補化合物の一例として、式(1)にゲンチオビオースが配位した配糖体があり、図6のような構造をACE阻害物質として想定した。
[実施例1および実施例4の味噌中のターゲット化合物およびジペプチドの含有量]
ターゲット化合物とジペプチドについてLC−Q−MS/MSを用いて分析を実施した。サンプル1mLに30%トリクロロ酢酸(TCA)を80μL添加、除タンパク後に得られた遠心分離上清を測定試料とし、LCMS分析を実施した。分析条件を表4に示す。
Figure 0006910639
分析結果を表5に示す。ターゲット化合物の標準品は無いが、F5の乾燥重量を基に味噌中の量を推定した。F4、F5におけるターゲット化合物の推定含有量はペプチド量と
比較して100倍程度多いことが確認でき、ターゲット化合物のACE阻害活性を確認できた。
Figure 0006910639
[動物試験]
図7に、実施例1の味噌、実施例4の味噌、食塩水の投与による血圧の変化を示すグラフを示す。9週齢の雄SHRspラット30匹を、実施例1の味噌、実施例4の味噌、比較例の食塩水をそれぞれ投与する3群に分け、3週間成育した。この間毎週tail−cuff法で血圧を測定した。実施例1および実施例4の味噌投与群ではそれぞれの5%味噌水を自由摂取とし、比較例の食塩水投与群には味噌水と同濃度の食塩水(0.6%NaCl、w/v)を与えた。餌は通常食(0.75%NaCl、w/w)を自由摂取とした。
実験期間中、対照群(食塩水投与群)では年齢依存性に血圧が上昇した。実施例1および実施例4の味噌投与群は1週目から全期間比較例の食塩水投与群より有意に血圧が低下した。実施例1の味噌投与群では2週目及び3週目には実施例4の味噌投与群より有意に血圧が低かった(200±8 vs 208±9mmHg、p<0.05; 207±7 vs 216±8mmHg、p<0.01)。

Claims (8)

  1. 化学式(1)で示される、(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−5−オキソ−2,5−ジヒドロ−2−フラニル)酢酸メチルにゲンチオビオースが配位した配糖体である化合物を有効成分として含有すること
    を特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害剤。
    Figure 0006910639
  2. 前記化合物が、味噌の抽出物由来であること
    を特徴とする請求項に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害剤。
  3. 請求項1または請求項2に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害剤の製造方法であって、
    米に麹菌を接種して製麹する製麹工程と、
    前記製麹工程により得られた麹と、大豆とを混合して発酵・熟成する熟成工程と
    前記熟成工程により得られた味噌に遠心分離を実施して味噌水抽出液を得る工程と、
    得られた前記味噌水抽出液に濾過を実施して3kDa以下の画分を得る工程と、を含むこと
    を特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害剤の製造方法。
  4. 前記画分を、10倍以下の濃度で希釈すること
    を特徴とする請求項3に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害剤の製造方法。
  5. 前記麹菌が、焼酎製造に用いられる焼酎用の麹菌であること
    を特徴とする請求項3または請求項4に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害剤の製造方法。
  6. 前記麹菌が、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)であること
    を特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害剤の製造方法。
  7. 前記製麹工程において、前記麹菌が接種された米、40℃以上45℃以下の温度範囲で保持して製麹すること
    を特徴とする請求項3から請求項6のいずれか一項に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害剤の製造方法。
  8. 前記熟成工程において、40℃以上50℃以下の温度範囲で発酵・熟成すること
    を特徴とする請求項3から請求項7のいずれか一項に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害剤の製造方法。
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