以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
まず、本発明の一実施形態によるハイブリッド車両(HV車両)Veについて説明する。図1は、この一実施形態によるHV車両Veを示す。図1に示すように、HV車両Veは、駆動装置1およびECU2を備える。
駆動装置1は、走行用の駆動力源としてのエンジン10を備える。駆動装置1は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース1a内において共通の軸心上に配設された、入力軸11、出力軸12、差動部20、および自動変速機30を備える。入力軸11は、エンジン10のクランクシャフト(図示せず)に連結されている。動力伝達手段としての差動部20は、入力軸11に、直接的またはダンパ装置(図示せず)などを介して間接的に連結されている。変速機としての自動変速機30は、差動部20の出力回転部材である伝達軸24に連結され、差動部20と出力軸12との間の動力伝達経路の一部を構成する。すなわち、差動部20は、エンジン10と自動変速機30との間に配置されている。駆動装置1は、エンジン10からの動力を、差動部20、自動変速機30、出力軸12、およびディファレンシャル装置を介して左右の駆動輪(いずれも図示せず)に伝達する。
差動部20は、動力分配機構21、第1電動機MG1、および第2電動機MG2を備える動力伝達装置を構成する。動力分配機構21は、入力軸11に入力されたエンジン10の出力を機械的に分配または合成する機械的機構である。動力分配機構21は具体的に、エンジン10の出力を第1電動機MG1および伝達軸24に分配したり、エンジン10の出力と第1電動機MG1の出力とを合成して伝達軸24に出力したりする。第1電動機MG1および第2電動機MG2は、駆動力源となる電動機として機能するとともに発電機としても機能する、モータジェネレータ(回転電機)である。第2電動機MG2は、伝達軸24と一体的に回転可能に設けられている。
動力分配機構21は、所定のギヤ比ρを有する例えばシングルピニオン型の遊星歯車装置22、および切替クラッチC0を有する係合手段としての係合装置23を備える。遊星歯車装置22は、回転要素として、サンギヤS、遊星歯車P、遊星歯車Pを自転および公転可能に支持するキャリアC、および遊星歯車Pを介してサンギヤSと噛み合うリングギヤRを備える。上述したギヤ比ρは、サンギヤSの歯数ZS、およびリングギヤRの歯数ZRから、ZS/ZRとして導出される。動力分配機構21において、キャリアCは、入力軸11を介してエンジン10に連結されている。サンギヤSは、第1電動機MG1に連結されている。リングギヤRは伝達軸24に連結されている。係合装置23は、サンギヤSとキャリアCとの間において係合および解放可能に設けられている。
係合装置23は、例えばドグクラッチなどの機械係合装置や、油圧式摩擦係合装置からなる切替クラッチC0を有して構成される。油圧式摩擦係合装置は、複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどから構成される。
係合装置23における切替クラッチC0が解放されると、サンギヤS、キャリアC、およびリングギヤRはそれぞれ、相互に相対回転可能な差動作用が働く差動状態になる。差動状態においては、エンジン10の出力が第1電動機MG1と伝達軸24とに分配される。これとともに、その分配されたエンジン10の出力の一部によって第1電動機MG1から発生した電気エネルギにより、例えばバッテリなどの蓄電装置(図示せず)に充電されたり、第1電動機MG1により発生した電気エネルギによって第2電動機MG2が回転駆動されたりする。これにより、差動部20は例えば無段変速状態になり、エンジン10のエンジン回転数にかかわらず、伝達軸24の回転を連続的に変化できる。すなわち、差動部20は、変速比γ(入力軸11の回転数/伝達軸24の回転数)が最小値γminから最大値γmaxまで連続的に変化可能な電気的な無段変速機として機能する。換言すると、差動部20は、エンジン10からの入力回転数であるキャリアCの回転数と、出力回転数であるリングギヤRの回転数との変速比γを無段階に変更可能である。このようなモードをCVTモードという。
一方、係合装置23における切替クラッチC0が係合されると、サンギヤSとキャリアCとが一体的に係合するため、遊星歯車装置22を構成する3つの回転要素であるサンギヤS、キャリアC、およびリングギヤRが一体回転する非差動状態になる。非差動状態においては、エンジン10のエンジン回転数Neである入力軸11の回転数と、伝達軸24の回転数とが一致する状態になる。すなわち、差動部20は、変速比γが1に固定された変速機として機能する定変速状態(有段変速状態)になる。差動部20が、変速比γが固定された変速機として機能する場合、後段に連結された自動変速機30を自動で変速させる自動変速モード(ATモード)、またはユーザ(運転者)による後述するシフト操作部44の操作に基づいて変速させる手動変速モード(MTモード)が実行可能になる。
係合装置23は、差動部20を、変速比を連続的に変化可能な電気的な無段変速機として作動する無段変速状態と、変速比変化を固定する定変速状態とに選択的に切り替える差動状態切替装置として機能する。差動部20は、係合装置23が解放され、かつ第1電動機MG1が反力を発生しない出力トルクTgが0の自由回転状態にされた場合には、差動部20内の動力伝達経路における動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態になる。一方、第1電動機MG1が所定の出力トルクTgの反力を発生、または係合装置23が係合状態の場合には、差動部20内の動力伝達経路における動力伝達を可能とする動力伝達可能状態となる。
自動変速機30は、例えば従来公知の前進6段・後進1段の有段式自動変速機であり、伝達軸24から入力されたエンジン10の回転が、自動変速機30において変速されて出力軸12を介して駆動輪(図示せず)に伝達される。なお、自動変速機30の構成は必ずしも上述の構成に限定されない。
また、制御手段としてのECU2は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)および入出力等のインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。ECU2の機能は、記録部としてのROMが保持するアプリケーションプログラムを記憶部としてのRAMにロードしてCPUにより実行し、CPUの制御のもとで制御対象を動作させつつ、RAMやROMのデータの読み出しおよび書き込みを行うことで実現される。ECU2は、上述のように構成されたHV車両Ve内における各種センサ類などの情報に基づいて、HV車両Ve内の各構成要素を制御する。
ブレーキペダルセンサ42aは、ユーザによるブレーキペダル42の操作量を検出する。ブレーキペダルセンサ42aは、検出したブレーキペダル42の操作量を示す信号をECU2に出力する。また、アクセルペダルセンサ43aは、ユーザによるアクセルペダル43の操作量(アクセルペダル開度)を検出する。アクセルペダルセンサ43aは、検出したアクセルペダル43の操作量を示す信号をECU2に出力する。ECU2は、入力されたブレーキペダル42やアクセルペダル43の操作量に応じてエンジン10の出力を制御する。
シフトポジションセンサ44aは、例えばシフトレバーやステアリングパドルなどからなるシフト操作部44のシフトポジションを検出する。シフトポジションセンサ44aは、検出したシフトポジションを示す信号をECU2に出力する。ドライブモード切替スイッチ45は、例えば、MTモードと、ATモードと、CVTモードとを切り替えて選択するスイッチである。ドライブモード切替スイッチ45は、モードの選択状態をECU2に出力する。
クラッチペダルストロークセンサ(以下、ストロークセンサ)50aは、ユーザによるクラッチペダル50の操作量(ペダルストローク量L_pdl)を検出する。ストロークセンサ50aは、検出したクラッチペダル50のペダルストローク量L_pdlを示す信号を、ECU2に出力する。ECU2は、入力されたクラッチペダル50のペダルストローク量L_pdlに応じて、エンジン10、係合装置23、および第1電動機MG1を選択的に制御する。
ここで、クラッチペダル50について説明する。図2は、この一実施形態によるクラッチペダル50を示す側面図である。図2に示すように、クラッチペダル50は、車体側の支持部材52に回動可能に支持された支持軸部51と、支持軸部51を介して一体に連結されたL字形のレバー部53とを有して構成されている。支持軸部51は、両端側で車体側の支持部材52に支持され、レバー部53は、支持軸部51を介して車体側の支持部材52に前後方向に揺動可能に支持されたレバーとなっており、その下端側にユーザによって踏込み操作されるペダル部53aが設けられている。レバー部53のペダル部53aとは反対側の端部は、弾性部材54に連結されており、ユーザによって踏込み操作されない場合には、図2中実線に示す位置に復帰するように構成される。ユーザによって踏込み操作された量は、ストロークセンサ50aによりペダルストローク量L_pdlとして検出される。
次に、本発明者による、上述したHV車両Veの構成を案出するに至った鋭意検討について説明する。図3は、従来のHV車両Veの差動部におけるCVTモードでの共線図である。図4は、HV車両Veの差動部におけるキャリアCとリングギヤRとを結合させた場合の共線図である。図5は、リングギヤRにワンウェイクラッチを連結させた場合の共線図である。
まず、従来技術の問題点について説明する。すなわち、図3に示すように、従来のHV車両VeにおけるCVTモードは、差動部における第1電動機MG1によってエンジンの動力に対する反力を発生させて走行する走行モードである。HV車両Veの前進時には、エンジンの正方向のエンジントルクTeに対して、第1電動機MG1が逆方向の出力トルクTgを出力する。これにより、第1電動機MG1は、エンジントルクTeに対する反力受けとして機能し、エンジントルクTeをリングギヤRから出力軸に向けて出力させる。
このように、従来のCVTモードを採用したHV車両Veにおいては、差動部を構成する遊星歯車機構のキャリアに接続されたエンジンから出力するエンジントルクTeに対して、サンギヤSに接続された第1電動機MG1の出力トルクTgを適切に制御することによって、エンジンからの駆動力のトルクを、リングギヤRに接続された第2電動機MG2側の出力軸(伝達軸24に相当)に出力する。
ここで、エンジントルクTeと第1電動機MG1の最大出力トルクTg_maxとの関係が以下の(1)式に示す状態になると、エンジン回転数Neと第1電動機MG1の回転数Nmとが上昇し続けてしまい、第1電動機MG1が過回転になる。この場合、エンジンと第1電動機MG1との動作点を制御できなくなるという問題がある。
Te>−(1+ρ)/ρ×Tg_max …(1)
そのため、第1電動機MG1の性能およびエンジンの性能は、エンジンの最大エンジントルクTe_maxと第1電動機MG1の最大出力トルクTg_maxとの間において、以下の(2)式に示す関係が成立するように決定される。
Te_max≦−(1+ρ)/ρ×Tg_max …(2)
すなわち、動力性能を向上させるためにエンジンの性能のうちの最大エンジントルクTe_maxを増加させる場合、第1電動機MG1の性能を、(2)式を満たすように向上させる必要が生じる。
これに対して本発明者は、図1に示すように、差動部20におけるサンギヤS、リングギヤR、およびキャリアCの相対回転を0にする係合機構を設ける方法を知見した。なお、図1に示す差動部20の構成においては、係合装置23によって、サンギヤSとキャリアCとが係合可能に構成され、サンギヤSとキャリアCとが相対回転不能になる。
一方、図4に示す構成は、キャリアCとリングギヤRとを係合可能にした構成である。この場合、キャリアCとリングギヤRとが相対回転不能になるため、サンギヤS、キャリアC、およびリングギヤRは一体として回転する。すなわち、サンギヤS、キャリアC、およびリングギヤRの3つの回転要素のうちの2つの回転要素を、互いに相対回転不能に係合させることによって、差動部を一体回転させることができる。この場合、上述したように、変速比γは1となる。なお、リングギヤRとサンギヤSとを係合装置23によって、係合させるようにしても良い。
また、図5に示すように、キャリアCとリングギヤRとを結合させる場合、リングギヤRにワンウェイクラッチを連結させて、キャリアCの回転数がリングギヤRの回転数を超えないようにすることも好ましい。
これに対し、本発明者は、図1に示す差動部20の構成、または図4に示す差動部の構成において、エンジントルクTeが以下の(3)式を満たす状態において、3つの回転要素のうちの2つの回転要素を互いに相対回転不能に係合させる構成を知見した。
Te≦−(1+ρ)/ρ×Tg_max …(3)
なお、係合している2つの回転要素を解放すると、図3に示すCVTモードに移行する。そのため、係合している2つの回転要素の解放は、エンジントルクTeが、第1電動機MG1の最大出力トルクTg_maxに対して(3)式が成立する場合に行う必要がある。
以上のような構成において、差動部20における3つの回転要素のうちの2つの回転要素を互いに回転不能に係合させると、差動部20は一体回転するため、エンジン10から出力されるエンジントルクTeは、機械的に差動部20の出力軸である伝達軸24に伝達される。これにより、エンジン10は、以下の(4)式を満たす、第1電動機MG1によって受けられない程度の高いエンジントルクTeを出力可能になる。
Te>−(1+ρ)/ρ×Tg_max …(4)
また、CVTモードで走行するHV車両Veにおいては、車速が低い場合においてもエンジン10の出力を確保する必要がある。そのため、第1電動機MG1は、第1電動機MG1の最高回転数Ng_maxとエンジン10の最高回転数Ne_maxとの間において、以下の(5)式が成立するように設計される。
Ng_max>Ne_max …(5)
上述したように、差動部20における3つの回転要素のうちの2つの回転要素を互いに回転不能に係合させると、第1電動機MG1の回転数Ngとエンジン10のエンジン回転数Neとは等しくなる(Ng=Ne)。そのため、(5)式から2つの回転要素の係合状態における第1電動機MG1の回転数(係合回転数Ng_lock)は、以下の(6)式の関係を満たす。すなわち、2つの回転要素の係合状態においては、第1電動機MG1は、最高回転数Ng_maxの制約を受けないことになる。
Ng_max>Ng_lock …(6)
しかしながら、上述したように、差動部20における2つの回転要素を相対回転不能に係合させると、エンジン10の出力軸である入力軸11と、差動部20の出力軸である伝達軸24との間の変速比γは1に固定される。この場合、車速の広い範囲で、エンジン10を、最大エンジントルクTe_maxおよび最大出力Pe_maxで使用することが困難になる。
これに対し、本発明者は、図1に示すように、差動部20の出力軸(伝達軸24)の後段に、さらに変速機としての自動変速機30を設ける構成を知見した。図1に示すように、差動部20の伝達軸24に自動変速機30を設ける構成は、2つの回転要素を相対回転不能に係合させた状態では、一般的なオートマチック車(AT車)と同様の構成になる。そのため、車速の幅広い範囲において、エンジン10の全負荷領域を使用可能になるという利点を有する。2つの回転要素を相対回転不能に係合させて、自動変速機30をECU2により自動で変速させる構成は、ATモードになる。一方、相互の回転要素を相対回転可能に解放した場合は、有段変速可能なハイブリッドモードとして、燃費や動力に適した動作点とギヤ段とを選択することが可能になる。
さらに、差動部20の後段に自動変速機30を設けた構成において、ユーザが自由にギヤ段を選択したいという要請があった。そこで、ユーザが自由にギヤ段を選択してエンジン回転数Neを選択できるとともに、エンジントルクTeを操作可能な、MTモードを選択可能な構成が追加された。MTモードにおいては、ユーザがシフト操作部44を操作することによって、ユーザが所望するギヤ段を選択することができ、従来のMT車に近い操作が可能になる。
しかしながら、このような構成においても、例えばHV車両Veの発進時に、従来のMT車におけるクラッチペダルの操作に相当する操作はできなかった。すなわち、MTモードを搭載したHV車両Veにおいて、クラッチペダルを操作することによってエンジンの駆動力の大きさとエンジンの駆動力を駆動輪に伝達するタイミングとを調整することはできなかった。さらに、HV車両Veの走行中に、MT車のように、エンジン10と自動変速機30との間において駆動力を自由に遮断することも困難であった。
そこで、本発明者は、図1に示すように、さらに、ペダルストローク量L_pdlを検出可能なストロークセンサ50aが設けられたクラッチペダル50を備え、ペダルストローク量L_pdlに応じてトルク伝達率K_teを変更する方法を案出した。MTモードは、ドライブモード切替スイッチ45によりMTモードが選択された場合に、クラッチペダル50を用いる走行モードとしてECU2により実行される。
MTモードにおいては、アクセルペダルセンサ43aによって検出されるアクセルペダル43のアクセルペダル開度において、エンジン10の出力パワーが最大になる状態を100%とし、エンジン10の出力トルクが0で、出力パワーが0の自立運転の状態を0%とする。アクセルペダルセンサ43aによって検出されたアクセルペダル開度に応じて、ECU2は、エンジン10における出力パワーを制御する。すなわち、MTモードにおいては、アクセルペダル開度によって、HV車両Veにおけるエンジン10の出力パワーを直接的に制御できる。なお、エンジン10の出力パワーを直接的に制御する代わりに、エンジン10のスロットル開度を制御するようにしても良い。この場合、自立運転の状態をアクセルペダル開度の0%に対応させ、スロットル開度が最大の状態をアクセル開度の100%に対応させる。これにより、一般的なMT車と同様にして、アクセルペダル開度によってエンジン10の出力するエンジントルクTeおよび出力パワーを直接的に制御することができる。
また、トルク伝達率K_teは、以下の(7)式で定義される。なお、T_thsoutは、伝達軸24におけるトルクである。
K_te=T_thsout/Te_max …(7)
次に、MTモードにおけるクラッチペダル50による駆動力の伝達タイミングおよび伝達される駆動力の制御について具体的に説明する。まず、CVTモードにおいてエンジン10の反力受けとして用いられる第1電動機MG1について、出力トルクTgの決定方法について以下に説明する。図6および図7は、この一実施形態による第1電動機MG1の出力トルクTgまたはエンジン10のエンジントルクTeの決定方法を説明するためのフローチャートである。図8は、この一実施形態によるクラッチペダルのペダルストローク量L_pdlと差動部20におけるトルク伝達率との相間関係を決定するマップを示すグラフである。なお、ECU2は、図6および図7に示すフローチャートの各処理を、HV車両Veが停止している状態から走行中の間で繰り返し実行する。図6および図7に示すフローチャートの各処理における判定および算出はそれぞれ、ECU2により判定および算出される。
図6に示すように、ステップST1においてECU2は、係合装置23が解放状態であるか否かについて判定を行う。ECU2が、係合装置23は解放状態であると判定した場合(ステップST1:Yes)、ステップST2に移行する。係合装置23が解放されている場合には、差動部20の動力分配機構21の相対回転が許容されているため、HV車両Veの走行モードは、CVTモード(CVT状態)になっている。
ステップST2においてECU2は、クラッチペダル50が踏まれているか否かを判定する。ECU2は、ストロークセンサ50aにより計測されるペダルストローク量L_pdlが0より大きいか否かを判定する。ECU2が、ペダルストローク量L_pdlが0であり、クラッチペダル50が踏まれていないと判定した場合(ステップST2:No)、ステップST1に復帰する。一方、ステップST2においてECU2が、ペダルストローク量L_pdlが0より大きく、クラッチペダル50が踏まれていると判定した場合(ステップST2:Yes)、ステップST3に移行する。
ステップST3においてECU2は、エンジン回転数フィードバック制御移行条件(以下、NeF/B移行条件)が成立しているか否かを判定する。この一実施形態によるNeF/B移行条件の一例を挙げると、以下の(8)式および(9)式の少なくともいずれか一方が成立する条件である。
Ne−Ne_tagsft≦Kne_fbon …(8)
Tg≦Tg_b+Ktg_fbon …(9)
Ne_tagsftは、所定のギヤ段が選択されて固定ギヤ段の状態になっているときにHV車両Veの車速から算出されるエンジン回転数であり、Kne_fbonは、固定ギヤ段の状態のときの算出された目標のエンジン回転数Ne_tagsftに、実際のエンジン回転数Neが十分近づいたことを判定するための所定値である。また、Tg_bは、アクセルペダル43のアクセルペダル開度から算出されるエンジン要求パワーPe_accと、車速およびギヤ段から得られる目標のエンジン回転数Ne_tagsftとから算出される、第1電動機MG1の出力トルクTgであり、その詳細は後述する。Ktg_fbonは、実際の第1電動機MG1の出力トルクTgが、HV車両Veにおける車速、ギヤ段、およびエンジン要求パワーPe_accから算出された出力トルクTg_bより大きくなったことを判定するための所定値である。
上述した(8)式および(9)式のいずれも成立しておらず、ECU2が、NeF/B移行条件が成立していないと判定した場合(ステップST3:No)、ステップST4に移行する。ステップST4においてECU2は、クラッチペダル50のペダルストローク量L_pdlからトルク伝達率K_teを算出する。
ここで、ペダルストローク量L_pdlからトルク伝達率K_teを算出する方法としては種々の方法がある。具体的に、例えば図8に示すように、ペダルストローク量L_pdlが0のときにトルク伝達率K_teを100%とし、ペダルストローク量L_pdlの増加に伴ってトルク伝達率K_teを減少させ、ペダルストローク量L_pdlが最大のときにはトルク伝達率K_teが0%となるマップを作成する。なお、図8において、トルク伝達率K_teを0%にするのは、ペダルストローク量L_pdlが所定値より大きく最大以下の場合である。図8に基づいて、ペダルストローク量L_pdlからトルク伝達率K_teが一意的に決定される。また、図8に示すグラフなどに基づいた単調非増加の関数f(x)を用いて、トルク伝達率K_teをペダルストローク量L_pdlから算出しても良い。その後、ステップST5に移行する。
ステップST5においてECU2は、第1電動機MG1が出力すべき出力トルクTgを算出する。すなわち、ECU2は、ステップST4において算出したトルク伝達率K_teに基づいて、以下の(10)式に従って、第1電動機MG1の出力トルクTg_aを算出する。
Tg_a=−ρ/(1+ρ)×K_te×Te_max …(10)
これとともに、ECU2は、アクセルペダル開度から算出されるエンジン要求パワーPe_accと、車速および選択されたギヤ段から算出されるエンジン回転数Ne_tagsftとから算出されるエンジントルクTe_accに基づいて、以下の(11)式に従って、第1電動機MG1の出力トルクTg_bを算出する。
Tg_b=−ρ/(1+ρ)×Te_acc …(11)
ECU2は、以下の(12)式に示すように、上述のようにして得られた第1電動機MG1の出力トルクTg_a,Tg_bのうち、絶対値が小さい方の出力トルクTg_a,Tg_bを、第1電動機MG1が出力すべき出力トルクTgとして設定する。以上により、第1電動機MG1の出力トルクTgの決定処理ルーチンが終了する。
Tg=−min(|Tg_a|,|Tg_b|) …(12)
ステップST3においてECU2が、NeF/B移行条件が成立していると判定した場合(ステップST3:Yes)、ステップST6に移行する。ステップST6においては、CVTモードにおける従来公知のNeF/B制御によって、第1電動機MG1が出力すべき出力トルクTgが決定される。以上により、第1電動機MG1の出力トルクTgの決定処理ルーチンが終了する。
ステップST1においてECU2が、係合装置23は係合状態であって解放状態ではないと判定した場合(ステップST1:No)、図7におけるステップST7に移行する。ステップST7においてECU2は、ステップST2と同様の判定処理を行う。すなわち、ECU2は、ペダルストローク量L_pdlが0より大きいか否かを判定する。ステップST7においてECU2が、ペダルストローク量L_pdlが0より大きく、クラッチペダル50が踏まれていると判定した場合(ステップST7:Yes)、ステップST8に移行する。
ステップST8においてECU2は、ステップST4と同様の処理を行うことによって、クラッチペダル50のペダルストローク量L_pdlからトルク伝達率K_teを算出する。その後、ステップST9に移行する。
ステップST9においてECU2は、第1電動機MG1が出力すべき出力トルクTgを算出する。すなわち、ECU2は、ステップST8において算出したトルク伝達率K_teに基づいて、上述した(10)式に従って、第1電動機MG1の出力トルクTg_aを算出する。その後、ステップST10に移行する。
ステップST10においてECU2は、ステップST9において算出した第1電動機MG1の出力トルクTg_aが、第1電動機MG1においてエンジン10のエンジントルクTe_tgmaxの反力受けとして許容されるトルクより大きいか否かを判定する。すなわち、ECU2は、ステップST9において算出した出力トルクTg_aが、第1電動機MG1の最大出力トルクTg_maxより大きいか否かを判定する。ECU2が算出した出力トルクTg_aは最大出力トルクTg_maxより大きい(Tg_a>Tg_max)と判定した場合(ステップST10:Yes)、ステップST11に移行する。
ステップST11においてECU2は、係合装置23が係合状態の場合におけるエンジントルクTeの算出を行う。すなわち、以下の(13)式に従って、ステップST8において算出されたトルク伝達率K_teから出力されるエンジントルクTeを算出する。ECU2は、エンジン10が出力するエンジントルクを、算出したエンジントルクTeに制御する。以上により、エンジントルクTeの決定処理ルーチンが終了する。
Te=K_te×Te_max …(13)
一方、ステップST10においてECU2が、算出した出力トルクTg_aが最大出力トルクTg_max以下である(Tg_a≦Tg_max)と判定した場合(ステップST10:No)、ステップST12に移行する。ステップST12においてECU2は、係合装置23に対して、切替クラッチC0を解放する指示を供給して、係合装置23を係合状態から解放状態に切り替える。これにより、HV車両Veの走行モードはMTモードにおいてCVT状態になる。以上により、決定処理ルーチンが終了する。
ステップST7においてECU2が、ペダルストローク量L_pdlが0であり、クラッチペダル50が踏まれていないと判定した場合(ステップST7:No)、ステップST13に移行する。ステップST13においてECU2は、第1電動機MG1の出力トルクTgを0に設定して、第1電動機MG1をシャットダウンさせる。第1電動機MG1の出力トルクTgの決定処理ルーチンが終了する。
次に、MTモードにおけるクラッチペダル50による駆動力の伝達タイミングおよび伝達される駆動力の制御の基本動作の具体例について説明する。図9は、この一実施形態によるHV車両Veの発進時における動作状態を示すタイムチャートである。図10は、この一実施形態によるHV車両Veの走行時における動作状態を示すタイムチャートである。
図9に示すように、HV車両VeのMTモードにおける発進時においては、停車中に係合装置23を解放状態としてTSH状態にする。時点t1において、ユーザがクラッチペダル50を一気に踏み込むと、ペダルストローク量L_pdlが所定値以上最大になる(図10中、フルストローク)。続いて、ユーザがアクセルペダル43を踏み込みはじめる(時点t2)。クラッチペダル50が所定値以上踏み込まれているため、トルク伝達率K_teは0となる(図6、ステップST4、図8参照)。これにより、第1電動機MG1の出力トルクTgは0となる(図6、ステップST5)。差動部20においては、係合装置23が解放状態、かつ第1電動機MG1が反力を発生しない自由回転状態になるので、差動部20内の動力伝達経路が遮断されて動力伝達遮断状態になる。そのため、エンジン回転数Neは大きく増加する(時点t2〜t3)。
その後、ユーザがクラッチペダル50を徐々に戻し始めると、クラッチペダル50は、いわゆる半クラッチ状態(図9中、半クラ状態)に移行する(時点t3)。半クラッチ状態になると、ECU2によって、ペダルストローク量L_pdlに応じてトルク伝達率K_teが0より大きく設定される。これにより、第1電動機MG1は出力トルクTgを反力としてエンジン10の出力するエンジントルクTeを受けられる状態になる(図6、ステップST5)。これに伴って、差動部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態となり、差動部20からトルクの出力が開始されるので、出力軸12の出力トルクTpが増加するとともに、HV車両Veは、車速が増加して発進する(時点t3〜t4)。
ユーザがさらにアクセルペダル43を踏み込む(時点t4)と、アクセルペダル開度の増加に伴って、第1電動機MG1の出力トルクTgの絶対値が負側に増加されるとともに、出力トルクTpが増加し、HV車両Veの車速も増加する。エンジン回転数Neは、車速およびギヤ段から得られる目標のエンジン回転数Ne_tagsftに近づくため、NeF/B制御に移行する条件(図6、ステップST3)が成立する(時点t5)。
時点t5〜t6においては、NeF/B制御が行われ、第1電動機MG1の出力トルクTgは、通常のCVTモードにおけるNeF/B制御に基づいて決定される(図6、ステップST6)。その後、ユーザによってクラッチペダル50が戻されてペダルストローク量L_pdlが0になる(時点t6)と、ECU2は、NeF/B制御をオフにして、係合装置23の切替クラッチC0を係合させる。なお、係合装置23を係合させる場合、ECU2は、エンジン10のエンジン回転数Neを、ユーザにより選択されたギヤ段および車速に応じてあらかじめ設定された目標とするエンジン回転数Ne_tagsft以上に調整した後、係合装置23の係合を行う。
ECU2は、係合装置23を係合させた後、第1電動機MG1をシャットダウンして、第1電動機MG1の出力トルクTgを0にする(時点t6)。なお、蓄電装置(バッテリ)の出力に余裕があり、かつ第2電動機MG2に対するアシスト要求が第2電動機MG2の最大パワーを超える場合、第1電動機MG1を復帰させて、第1電動機MG1および第2電動機MG2をともに駆動に使用しても良い。係合装置23が係合状態になると、差動部20は、変速比γが1に固定された変速機として機能する有段変速状態になる。これにより、ユーザがドライブモード切替スイッチ45によってMTモードを選択している場合、ユーザによるシフト操作部44の操作に基づいて、自動変速機30をユーザが所望するギヤ段に変速可能な状態となる。
続いて、係合装置23が係合状態を維持しつつHV車両Veの走行が継続される。この場合、図10に示すように、第1電動機MG1はシャットダウン状態を維持して、出力トルクTgは0を維持する。ここで、アクセルペダル43のアクセルペダル開度が一定であり、クラッチペダル50が踏み込まれていないとすると、エンジン回転数Ne、エンジントルクTe、出力トルクTp、および車速は略一定を維持する。
この状態で、クラッチペダル50を踏み込み始めると、クラッチペダル50は半クラッチ状態(図10中、半クラ状態)に移行する(時点T1)。半クラッチ状態になると、ECU2によって、ペダルストローク量L_pdlに応じてトルク伝達率K_teは0より大きく設定される(図7、ステップST8)。この場合、ECU2は、(10)式に従って第1電動機MG1の出力トルクTgを設定し、第1電動機MG1からの出力トルクTgは負側に絶対値が出力トルクTg_minまで増加される(図7、ステップST9)。これに伴って、エンジン10から出力されるエンジントルクTeがトルク伝達率K_teに基づいて調整され(図7、ステップST11)、出力軸12の出力トルクTp、およびHV車両Veの車速が低下する(時点T1〜T2)。
エンジントルクTeが第1電動機MG1によって受けられる上限のエンジントルクTe_tgmax以下になる(時点T2)と、ECU2は、係合装置23を解放させる(図7、ステップST12)。クラッチペダル50が踏まれた状態で係合装置23が解放状態になると、ECU2は、第1電動機MG1の出力トルクTgを、上述した(10)式、(11)式、および(12)式に基づいて設定する(図6、ステップST5)。その結果、第1電動機MG1の出力トルクTgは、クラッチペダル50のペダルストローク量L_pdlに基づいて正側に増加(絶対値は減少)する。また、エンジン回転数Neは増加する一方、出力軸12の出力トルクTpおよび車速は低下する(時点T2〜T3)。
ユーザがクラッチペダル50を踏み込み、ペダルストローク量L_pdlが所定値以上最大になる(図10中、フルストローク)と、ECU2は、トルク伝達率K_teを0(図6、ステップST4)に設定する(時点T3)。これにより、第1電動機MG1の出力トルクTgは0に設定される(図6、ステップST5)。差動部20は、係合装置23が解放状態、かつ第1電動機MG1が自由回転状態となるので、動力伝達遮断状態になる(時点T3〜T4)。これにより、出力軸12の出力トルクTpは0になり、HV車両Veは、いわゆる惰性走行状態になる。
その後、係合装置23が解放状態の場合において、ユーザがクラッチペダル50を徐々に戻し始めると、半クラッチ状態(図10中、半クラ状態)に移行する(時点T4)。この場合、ECU2は、ペダルストローク量L_pdlに応じて、トルク伝達率K_teを0より大きく設定し、第1電動機MG1の出力トルクTgを、上述した(10)式〜(12)式に基づいて設定する(図6、ステップST5)。その結果、第1電動機MG1の出力トルクTgは、クラッチペダル50のペダルストローク量L_pdlに基づいて絶対値が負側に増加される。これに伴って、エンジン回転数Neは減少する一方、出力軸12の出力トルクTpは増加する(時点T4〜T5)。
エンジントルクTeが第1電動機MG1によって受けられる上限のエンジントルクTe_tgmaxより大きくなると、ECU2は、係合装置23を係合させる(時点T5)。その後、クラッチペダル50が戻されると、ECU2は、第1電動機MG1をシャットダウンさせて、第1電動機MG1の出力トルクTgを0にする(時点T6)。その後は、時点T1までと同様である。
なお、HV車両Veの車速が低下する減速時においては、クラッチペダル50の操作がない場合、エンジン回転数Neがエンジン10において許容される最低エンジン回転数Ne_min未満になる前の時点において、ECU2は、係合装置23を解放状態に移行させる。これとともに、エンジン10を、停止させるか最低エンジン回転数Ne_minで自立運転させる。車速が低下した場合に、係合装置23を解放状態に移行させることにより、エンジン10の停止、いわゆるエンジンストールを抑制できる。
以上説明した本発明の一実施形態によれば、機械的なマニュアルトランスミッション用のクラッチ機構を設けることなく、発進のタイミング、エンジン回転数、およびトルクをユーザのクラッチペダル50の操作によって調整できる。また、無段変速状態によってCVTモードを実現でき、燃費性能を向上できる。また、係合装置23を係合状態にして、動力分配機構21の回転要素を相対回転不能にすることによって、自動変速機30によって変速可能なATモードまたはMTモードを実現できる。これにより、ATモードおよびMTモードにおいては、CVTモードにおいて第1電動機MG1によって受けられるエンジントルク以上のエンジントルクTeを伝達可能になるので、動力性能を向上できる。さらに、クラッチペダル50の操作によって駆動力の伝達のタイミングと伝達率とを制御できるので、差動部20を電気的なクラッチ(e−クラッチ機能)として機能させることができる。これにより、従来のMT車におけるクラッチ構造を設けることなく、MT車と同様のクラッチ操作による駆動力の遮断や、出力トルクおよびエンジン回転数の制御を行うことができ、従来のMT車に近い操作性を実現できる。例えば、HV車両Veにおいて、特に発進時にクラッチペダル50を踏み込んだままにし、駆動力を遮断させた状態で、アクセルペダル43を踏み込んでエンジン回転数Neを上昇させながら駆動力の伝達を開始する、いわゆる半クラッチ状態が可能になる。また、これらのCVTモード、ATモード、およびMTモードは、ユーザの要求に応じてスイッチ等で簡単に切り替えることができる。
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。