JP6917040B2 - 破骨細胞の形成または活性化抑制剤 - Google Patents
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Description
本発明の目的は、歯槽骨の吸収抑制剤として有用な破骨細胞の形成または活性化抑制剤、さらには、歯周病を予防または治療するために有効な口腔用組成物を提供することにある。
[1]N−アシル分岐鎖アミノ酸またはその塩を含有する、破骨細胞の形成または活性化抑制剤。
[2]アシル基の炭素数が8〜16である、[1]に記載の抑制剤。
[3]N−アシル分岐鎖アミノ酸がN−アシルバリンである、[1]または[2]に記載の抑制剤。
[4]N−アシルバリンがN−デカノイルバリンまたはN−ラウロイルバリンである、[3]に記載の抑制剤。
[5]歯槽骨の吸収抑制剤である、[1]〜[4]のいずれか一つに記載の抑制剤。
[6]N−アシル分岐鎖アミノ酸またはその塩を含有する、歯周病の予防または治療用口腔用組成物。
[7]アシル基の炭素数が8〜16である、[6]に記載の組成物。
[8]N−アシル分岐鎖アミノ酸がN−アシルバリンである、[6]または[7]に記載の組成物。
[9]N−アシルバリンがN−デカノイルバリンまたはN−ラウロイルバリンである、[8]に記載の組成物。
[10]歯磨剤、洗口剤、口腔用軟膏剤、口腔用ゲル剤、口中清涼剤、口腔用パスタまたは含嗽剤である、[6]〜[9]のいずれか一つに記載の組成物。
従って、本発明の破骨細胞の形成または活性化抑制剤は、歯槽骨の吸収抑制剤として特に有用である。
また、本発明の歯周病の予防または治療用口腔用組成物は、有効成分であるN−アシル分岐鎖アミノ酸またはその塩が、歯槽骨における骨吸収活性を有意に低減する作用と界面活性作用とを併せ持つことにより、歯周病の予防または治療を目的としたオーラルケア製品として優れる。
本発明の破骨細胞の形成または活性化抑制剤(以下、本明細書において「本発明の剤」ともいう)は、N−アシル分岐鎖アミノ酸またはその塩を有効成分として含有する。
薬理上許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩等の低級アルコールアミン塩等が挙げられる。
本発明の剤の摂取または投与量は、適用対象、年齢、症状等により適宜決定される。本発明の剤の1日あたりの摂取または投与量は、1回で摂取させまたは投与してもよく、数回に分けて摂取させまたは投与してもよい。
従って、本発明の剤は、歯槽骨の吸収抑制剤として有用である。
本発明はまた、N−アシル分岐鎖アミノ酸またはその塩を有効成分として含む、歯周病の予防または治療用口腔用組成物(以下、本明細書において「本発明の組成物」ともいう)を提供する。
たとえば、歯磨剤等のペースト状の組成物は、有効成分であるN−アシル分岐鎖アミノ酸またはその塩と、賦形剤、基剤等の担体または添加剤とを混合し、水を加えて混練して調製することができる。
また、洗口剤、口中清涼剤、含嗽剤等の液状の組成物は、有効成分であるN−アシル分岐鎖アミノ酸またはその塩を、必要に応じて各種添加剤とともに水、エタノール等の適切な溶剤に溶解し、または乳化もしくは懸濁し、必要に応じてろ過して調製することができる。
口腔用ゲル剤は、有効成分であるN−アシル分岐鎖アミノ酸またはその塩を、増粘剤等の添加剤とともに水等の溶剤に加えて混合し、加熱して溶解させた後、冷却して調製することができる。
口腔用軟膏剤および口腔用パスタは、油脂性基剤を加温して融解し、有効成分であるN−アシル分岐鎖アミノ酸またはその塩を加え、混和して溶解または分散させ、均質になるまで練り合わせる、または、水溶性基剤を加温して融解し、有効成分であるN−アシル分岐鎖アミノ酸またはその塩を加え、均質になるまで練り合わせることにより、調製することができる。
本発明の組成物は、ヒト成人の場合、通常1日に1〜10回程度、好ましくは1日に1〜5回口腔内に適用することができる。
また、N−アシル分岐鎖アミノ酸またはその塩が本来有する界面活性作用により、オーラルケア製品としても優れる。
また、比較例としてN−オレオイルセリン(O−Ser)を用いて、骨髄細胞および骨芽細胞共存培養系における破骨細胞の形成、分化に対する作用を、N−アシルバリンの作用と比較検討した。
アミノ酸(ValおよびSer)は東京化成工業株式会社製を使用した。N−アシルアミノ酸は、下記参考例の通り合成したものを使用した。
使用した試薬および培地は、フナコシ株式会社、シグマ−アルドリッチ社およびコスモ・バイオ株式会社の各社より購入した。
マウスは、日本エスエルシー株式会社より購入して使用した。
50mLビーカーにバリン(29.29g、250.02mmol)、水78.6g、アセトン36.3gを加え溶解させた。氷冷下、27重量%水酸化ナトリウムを加え、pHを12に調整した。この溶液にpH12を保持するように、カプリノイルクロリド(46.42g、243.42mmol)と25重量%水酸化ナトリウムを70分間かけて同時に滴下し、室温で1.5時間撹拌した。反応混合物に75重量%硫酸を加え、pHを1.3に低下させ結晶を析出させて、ろ取し、水、ヘキサンで洗浄し、終夜減圧乾燥した。
50mLビーカーにバリン(29.30g、250.11mmol)、水78.6g、アセトン36.3gを加え溶解させた。氷冷下、25重量%水酸化ナトリウムを加え、pHを12に調整した。この溶液にpH12を保持するように、ラウロイルクロリド(53.25g、241.42mmol)と25重量%水酸化ナトリウムを45分間かけて同時に滴下し、室温で1.5時間撹拌した。反応混合物に75重量%硫酸を加え、pHを2.01に低下させ結晶を析出させて、ろ取し、水、ヘキサンで洗浄し、終夜減圧乾燥した。
また、鎖長の異なるアシル基を有するN−アシルバリンは、該当する炭素鎖長の酸クロリドを用い、同様の反応を行うことで容易に合成可能である。
50mLビーカーにセリン(2.13g、20.27mmol)、水12.9g、イソプロパノール 3.7gを加え、溶解させた。氷冷下、25重量%水酸化ナトリウムを加え、pHを10に調整した。この溶液にpH10を保持するように、オレオイルクロリド(5.54g、18.41mmol)と25重量%水酸化ナトリウムを30分間かけて同時に滴下し、室温で2.5時間撹拌した。反応混合物に75重量%硫酸を加え、pHを1.48に低下させ結晶を析出させて、ろ取し、室温にて終夜減圧乾燥した。得られた結晶を酢酸エチルから再結晶し、目的物を得た。
得られたデータは平均値±標準誤差で表し、スチューデントのt検定を用いて、有意差検定を行った。
(1)ddyマウス(雄、6週齢)より骨髄細胞を常法により採取し、骨髄細胞を2×106個/well及び初代骨芽細胞を1×104個/wellの細胞濃度で播種し、終濃度2ng/mLのインターロイキン−1(IL−1)を含む10(v/v)%ウシ胎仔血清(FBS)/フェノールレッド(PR)(−)α改変イーグル最小必須培地(αMEM)を用いて、5%CO2−95%Air気相下、37℃にて7日間共存培養した。この培養系に、バリンおよびN−アシルバリン各150μMをIL−1と共に添加した。
なお、IL−1およびバリン類の双方を添加せずに培養した場合を対照とした。
(2)破骨細胞検定染色 (TRAP染色)
培養後、細胞をTRAP染色キット(コスモ・バイオ株式会社製)を用いて染色後、室温で乾燥し、破骨細胞のマーカー酵素である酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)を検出した。3核以上のTRAP陽性多核細胞を破骨細胞として計測し、破骨細胞形成数として評価した。
染色した細胞の顕微鏡観察(「倒立型顕微鏡 CKX41」、オリンパス株式会社製、倍率=40倍)像と、破骨細胞形成数の評価結果を図1に示した。
図1に示されるように、IL−1添加により、破骨細胞の分化が誘導される(p<0.001で有意)。150μMのValの添加により、IL−1誘導性の破骨細胞の分化が抑制される傾向が見られた。150μMのC8−Val添加群で有意(p<0.01)な抑制が認められ、C10−ValおよびC12−Valの各添加群では、コントロールレベルまで破骨細胞の分化が抑制された(p<0.001)。
(1)ddy系仔マウス(哺乳5日齢)より頭頂骨を採取し、BGJb培地(ペニシリン(50mg/L)およびストレプトマイシン(100mg/L)含有)にて37℃で24時間培養した。その後、前記培地にIL−1(2ng/mL)を添加した培地および、IL−1と共にバリンおよびN−アシルバリンのそれぞれを0.2mM〜1mM添加した培地に交換して、培養を継続した。6日間培養後、培養上清中のカルシウム濃度を、o-Cresolphthalein Complexone(OCPC)法により測定した。測定結果から、培養液のみで培養した場合(対照)のカルシウム濃度を差引いたカルシウム濃度の上昇分(ΔCa)を頭頂骨から遊出したカルシウムと判定し、骨吸収活性の指標とした。
培養上清中に遊出したカルシウムを指標とした骨吸収活性についての評価結果を、図2に示した。
図2に示されるように、IL−1により、骨吸収活性の有意な(p<0.001)上昇が認められるが、Val添加群では骨吸収活性に対する抑制作用は見られず、C8−Val添加群では軽度の抑制作用が見られた(p<0.05)。また、C10−ValおよびC12−Val添加群において、IL−1により惹起される骨吸収活性が濃度依存的に抑制された。C10−Val添加群では、0.75mM以上の濃度で顕著に抑制され(p<0.001)、C12−Val添加群では、0.2mMの濃度で有意に抑制され(p<0.05)、0.3mM以上の濃度で顕著に抑制された(P<0.001)。
(1)特許第4662043号公報等に記載の公知の手法に従い、歯槽骨器官培養におけるリポポリサッカライド(LPS)誘導性骨吸収活性に及ぼすバリンおよびN−アシルバリンの影響を検討した。
歯槽骨にLPSを添加すると、炎症性の歯槽骨破壊が発症する。具体的には、特許第4662043号公報に記載された方法に従ってマウスから歯槽骨を採取して器官培養し、Toll様受容体4(TLR4)リガンドであるLPSにより惹起される歯槽骨破壊(歯槽骨の炎症性骨吸収)に対するバリンおよびN−アシルバリンの抑制作用を、LPSとともにバリン類を添加し、骨吸収活性に対する作用を比較検討して解析した。LPSの濃度は1μg/mL、バリン類の濃度はそれぞれ0.5mMとした。骨吸収活性は、実施例2と同様に、培養上清中のカルシウム濃度の測定結果から算出したカルシウム濃度の上昇分(ΔCa)を、歯槽骨から遊出したカルシウムとして評価した。
評価結果を図3に示した。
図3に示されるように、Val添加群ではLPSにより惹起された歯槽骨の炎症性骨吸収が抑制される傾向が見られ、C8−Val添加群では軽度な抑制作用が見られた(p<0.01)。C10−ValおよびC12−Val添加群では、それぞれより顕著な抑制作用が認められた(p<0.001)。
IL−1誘導性の骨吸収活性化に対するバリンおよびN−アシルバリンの作用を検討した結果、C10−ValおよびC12−Valに強い抑制作用が観察され、N−アシルバリンが骨吸収の抑制作用を有する可能性が示唆された。
また、歯周病原性細菌の内毒素であるLPSを用いた歯周病のEx vivo 評価系である歯槽骨器官培養において、C10−ValとC12−ValがLPS による炎症性骨吸収を阻害することが明らかとなり、歯周病に対するN−アシルバリンの改善作用が示唆された。
本試験系により、C10−ValおよびC12−Valが、骨吸収因子による骨の破壊に対し、有効な治療効果を有する可能性が示された。
(1)実施例1と同様の手順で、骨髄細胞とマウス骨芽細胞の共存培養系において、N−アシルバリンおよび、比較例としてオレオイルセリンをそれぞれ5μM〜300μMの各濃度で培地に添加し、培養後、破骨細胞の検出、計測を行った。
N−アシルバリンとしてはC12−Valを用い、共存培養系における破骨細胞分化に対する抑制作用を比較検討した。
TRAP染色した細胞の顕微鏡による観察像を図4に示した。
図4に示されるように、IL−1刺激によりTRAP陽性の多核破骨細胞形成が誘導された。C12−ValおよびO−Ser添加群の双方において、多核破骨細胞数の減少が濃度依存的に認められたが、C12−Val添加群では150μM、O−Ser添加群では300μMの濃度で破骨細胞分化が完全に抑制されることが認められた。前記破骨細胞分化の抑制は、破骨細胞の形態学的な縮小を伴っていた。
また、破骨細胞形成数の計測結果を図5に示した。
図5に示される結果からも同様に、C12−Val添加群では150μMの濃度で破骨細胞の分化が完全に抑制され(p<0.001)、O−Ser添加群では300μMの濃度で破骨細胞の分化が完全に抑制された(p<0.001)。
以上の結果より、破骨細胞の分化に対し、C12−Valは、非特許文献1に記載されたオレオイルセリンよりもが強い抑制作用を有することが示唆された。
IL−1誘導性の骨吸収活性に対するN−アシルアミノ酸類の作用を検討した結果、C12−Valにおいて強度な破骨細胞の分化抑制が観察され、効果的な骨吸収抑制作用を有する可能性が示唆された。本試験により、C12−Valは骨吸収因子による骨の破壊を改善する効果を有する可能性が示唆された。
また、本発明により、歯周病の予防または改善を目的としたオーラルケア製品として優れる歯周病の予防または治療用口腔用組成物を提供することができる。
Claims (4)
- 炭素数が8〜16の飽和または不飽和のアシル基を有するN−アシル分岐鎖アミノ酸またはその塩を含有する、破骨細胞の形成または活性化抑制剤。
- 炭素数が8〜16の飽和または不飽和のアシル基を有するN−アシル分岐鎖アミノ酸が、炭素数が8〜16の飽和または不飽和のアシル基を有するN−アシルバリンである、請求項1に記載の抑制剤。
- 炭素数が8〜16の飽和または不飽和のアシル基を有するN−アシルバリンが、N−デカノイルバリンまたはN−ラウロイルバリンである、請求項2に記載の抑制剤。
- 歯槽骨の吸収抑制剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抑制剤。
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