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JP6925517B2 - 円周溶接方法及び円周溶接装置 - Google Patents
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JP6925517B2 - 円周溶接方法及び円周溶接装置 - Google Patents

円周溶接方法及び円周溶接装置 Download PDF

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Description

本発明は、密閉型圧縮機における円筒形状の容器の円周溶接方法及び円周溶接装置に関するものである。
空調用及び給湯用に使用される密閉型圧縮機は、冷媒ガスを圧縮する圧縮機構部と圧縮機構部を駆動するモータ部とが収容された圧力容器を有している。圧力容器は、円筒部と、円筒部の両端の開口部を閉塞する2つの蓋部とを有しており、全体として円筒形状を呈している。2つの蓋部には、それぞれ円筒部に挿入されている環状部分が形成されている。そして、円筒部の端面と蓋部の環状部分の外周面とが、円周溶接により接合されている。
例えば、特許文献1に記載の密閉型圧縮機の溶接においては、溶接開始前にシールドガスのプリフロー時間を設け、溶接開始時にワークを回転走行させず、初期プールを形成させる時間が設けられている。特許文献1では、これにより、溶接開始時のアーク切れ、スパッタの発生、及び溶接不良等が防止され、良好なアークスタート及び溶接ビード始端部を得ることができる、とされている。
特開2003−33872号公報
しかしながら、密閉型圧縮機の組立工程では、円周溶接の開始の前に、部品固定のための仮溶接、及び加熱工程を経ることが一般的である。そのため、密閉型圧縮機の円周溶接を開始する際のワークの初期温度には、加熱工程からの経過時間に応じて、例えば、室温から100℃までの温度差がある。ワークの初期温度が低く、予熱が十分ではない場合、初期ビードの母材への溶け込みが得られにくい。従って、特許文献1の溶接方法では、ワークの初期温度に応じて初期ビードの母材への溶け込みにばらつきが生じ、密閉型圧縮機としての強度信頼性が得られないという問題がある。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、強度信頼性の高い密閉型圧縮機が得られる円周溶接方法及び円周溶接装置を提供することを目的とする。
本発明に係る円周溶接方法は、円筒容器と、前記円筒容器の両端に設けられている一対の蓋キャップとを有する密閉型圧縮機の円周溶接方法であって、前記円筒容器の端面と前記蓋キャップの外周面とで形成されている重ねすみ肉継手部の溶接開始前の温度を取得するワーク温度取得ステップと、前記ワーク温度取得ステップで取得された前記温度に基づいて、前記重ねすみ肉継手部の溶接条件を決定する溶接条件決定ステップと、前記溶接条件決定ステップで決定された溶接条件に基づいて、前記重ねすみ肉継手部の溶接を実行する溶接ステップとを含み、前記溶接条件決定ステップにおいて、前記重ねすみ肉継手部の定常溶接が開始される前の初期溶接に供給される溶接電流の電流値が、前記定常溶接における溶接電流より小さい条件下で決定されるものである
また、本発明に係る円周溶接装置は、円筒容器と、前記円筒容器の両端に設けられている一対の蓋キャップとを有する密閉型圧縮機の円周溶接装置であって、前記円筒容器の端面と前記蓋キャップの外周面とで形成されている重ねすみ肉継手部の温度を測定する温度センサと、制御盤とを備え、前記制御盤は、前記温度センサにより、前記重ねすみ肉継手部の溶接開始前の温度を取得するワーク温度取得部と、前記ワーク温度取得部により取得された前記温度に基づいて、前記重ねすみ肉継手部の溶接条件を決定する溶接条件決定部と、前記溶接条件決定部により選択された溶接条件に基づいて、前記重ねすみ肉継手部の溶接を制御する溶接制御部とを有し、前記溶接条件決定部は、前記重ねすみ肉継手部の定常溶接が開始される前の初期溶接に供給される溶接電流の電流値を、前記定常溶接における溶接電流より小さい条件下で決定するものである。
本発明に係る円周溶接方法及び円周溶接装置によれば、溶融プールが凝固した初期ビードの母材への溶け込みにばらつきが生じることがない。従って、重ねすみ肉継手部に形成されるすみ肉円周溶接部の強度に個体間でばらつきが生じることはなく、密閉型圧縮機の強度信頼性を向上させることができる。
本発明の実施の形態に係る円周溶接装置の概略構成図である。 密閉型圧縮機の縦断面を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態に係る円周溶接装置の機能ブロック図である。 本発明の実施の形態に係る円周溶接方法における溶接電流の電流パターンをワークの回転角度と共に示す図である。 ワーク温度と初期ビードの母材への溶け込みに適した溶接電流との関係を示すグラフである。 本発明の実施の形態に係る圧縮機の溶接工程の手順を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態に係る圧縮機の円周溶接の処理手順を示すフローチャートである。
以下に、本発明における円周溶接方法及び円周溶接装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の図面においては各構成部材の大きさ及び形状は実際の装置とは異なる場合がある。
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係る円周溶接装置の概略構成図である。円周溶接装置1は、制御盤10、回転装置11、溶接ワイヤ送給装置12、溶接ワイヤ13、溶接ワイヤ送給ケーブル14、溶接電源15、給電ケーブル16A、給電ケーブル16Bを備えている。また、円周溶接装置1は、ガス供給元17、温度センサ18、センサケーブル19、溶接トーチ25、及びガスホース26を備えている。制御盤10は円周溶接装置1を全体的に制御するものである。
回転装置11には、円筒容器20が装着されている。回転装置11は、円筒容器20を任意の姿勢で位置決め固定及び回転走行させることが可能な装置であり、制御盤10の指令で動作するようになっている。円筒容器20は、後述する密閉型圧縮機の圧縮機構部の部品、及びモータ部の部品等が収容される部材である。円筒容器20の両端部は開口しており、一対の上蓋キャップ21及び下蓋キャップ22が設けられている。上蓋キャップ21は、円筒容器20の両端部のうちの一方の端部に圧入され、下蓋キャップ22は、円筒容器20の両端部のうちの他方の端部に圧入されている。円筒容器20、上蓋キャップ21、及び下蓋キャップ22は、鋼板材を成型加工したものである。円筒容器20の一方の端部の端面と上蓋キャップ21の外周面とで、重ねすみ肉継手部23が形成されている。円筒容器20の他方の端部の端面と下蓋キャップ22の外周面とで、重ねすみ肉継手部24が形成されている。
溶接トーチ25は、溶接ワイヤ送給ケーブル14を介して、溶接ワイヤ送給装置12に接続されている。図1において、溶接トーチ25は、重ねすみ肉継手部23に配置されている。
溶接電源15は、臨界電流より高いパルス電流と臨界電流より低いベース電流を交互に繰り返し出力する溶接ワイヤ溶融式の溶接電源である。溶接電源15は、定電流制御方式、又は定電圧制御方式、又は定電流制御と定電圧制御とを併用する制御方式の直流パルス溶接電源である。溶接電源15には、給電ケーブル16Aを介して溶接トーチ25が接続され、給電ケーブル16Bを介して回転装置11が接続されている。パルスアーク溶接に必要な溶接電流の供給は、制御盤10の指令で行うよう構成されている。
ガス供給元17は、溶接トーチ25の先端部にガスホース26を介してシールドガスを供給するものである。ガス供給元17は、鋼鉄材の溶接で用いられるArガスを主成分とし、COガスが10〜20%程度混合されているMAGガスを供給する。ガス供給元17は、例えば、ガスボンベ又はガスタンクである。
回転装置11で円筒容器20を回転させながら、ガス供給元17から供給されるシールドガスの雰囲気内で、溶接ワイヤ13と重ねすみ肉継手部23との間、若しくは溶接ワイヤ13と重ねすみ肉継手部24との間でパルスアーク溶接が行われる。
温度センサ18は、重ねすみ肉継手部23及び重ねすみ肉継手部24の温度を測定するためのセンサである。温度センサ18により測定された重ねすみ肉継手部23及び重ねすみ肉継手部24の温度は、センサケーブル19を介して制御盤10へ送信される。温度センサ18は、接触式のセンサでもよく、若しくは非接触式のセンサでもよい。
図2は、密閉型圧縮機の縦断面を模式的に示す図である。密閉型圧縮機100は、上述の円筒容器20、上蓋キャップ21、及び下蓋キャップ22を備えている。また、密閉型圧縮機100は、冷媒を圧縮する圧縮機構部110と、圧縮機構部110を駆動するモータ部120とを有している。上蓋キャップ21は、円筒容器20の両端部のうち図2中の上側の開口部に設けられている。下蓋キャップ22は、円筒容器20の両端部のうち図2中の下側の端部の開口部に設けられている。圧縮機構部110及びモータ部120は円筒容器20に収容されている。圧縮機構部110は円筒容器20の下部に位置し、モータ部120は円筒容器20の上部に位置している。
モータ部120は、例えばDCモータで構成される。モータ部120は、固定子121と回転子122を有する。固定子121は、円筒容器20の内周面に固定されている。回転子122は、固定子121の内部に配設されている。固定子121には、上蓋キャップ21に固定されているガラス端子101から電力が供給される。
圧縮機構部110は、シリンダ111と、クランク軸112とを有している。シリンダ111は円筒状の中空の部材であり、軸方向の両端部は開口している。シリンダ111の軸方向の両端部のうち図2中の上側の端部側に、ベアリング113が設けられている。シリンダ111の軸方向の両端部のうち図2中の下側の端部側に、ベアリング114が設けられている。
クランク軸112は、シリンダ111を挿通している。クランク軸112は、モータ部120の回転子122の駆動力により回転する。シリンダ111内には、不図示のローリングピストンが設けられている。ローリングピストンは、クランク軸112の偏芯軸に嵌合しており、シリンダ111の内周面に沿って偏芯回転する。シリンダ111内には、シリンダ111の内周面とローリングピストンの外周面とで、不図示の圧縮室が形成されている。
さらに、密閉型圧縮機100は、吸入管102と、気液分離器103と、吐出管104を有している。吸入管102は、密閉型圧縮機100が構成要素となる冷凍サイクルの不図示の蒸発器に接続される。蒸発器から流出する冷媒は、吸入管102を介して気液分離器103に流入し、気液分離器103からシリンダ111へ導かれる。吐出管104は、密閉型圧縮機100が構成要素となる冷凍サイクルの不図示の凝縮器に接続される。円筒容器20内の高圧冷媒は、吐出管104を介して冷凍サイクルへ送り出される。
円筒容器20の上側の端部と上蓋キャップ21の外周面とで形成される、上述の重ねすみ肉継手部23には、重ねすみ肉円周溶接部105が形成されている。円筒容器20の下型の端部と下蓋キャップ22の外周面とで形成される、上述の重ねすみ肉継手部24には、重ねすみ肉円周溶接部106が形成されている。
図3は、本発明の実施の形態に係る円周溶接装置の機能ブロック図である。制御盤10は、ワーク温度取得部30と、溶接条件決定部31と、溶接制御部32とを有している。ワーク温度取得部30、溶接条件決定部31、及び溶接制御部32の各機能は、制御盤10により実現される。
ワーク温度取得部30は、パルスアーク溶接のワーク、すなわち溶接対象である円筒容器20の温度を取得する。より詳細には、温度センサ18により測定された重ねすみ肉継手部23の温度及び重ねすみ肉継手部24の温度のデータがワーク温度取得部30に入力される。溶接条件決定部31では、ワーク温度取得部30により取得された重ねすみ肉継手部23の温度及び重ねすみ肉継手部24の温度のデータに基づいて、パルスアーク溶接の溶接条件を決定する。溶接制御部32は、溶接条件決定部31で決定された溶接条件に基づいて、溶接電源15の制御信号を出力する。
本実施の形態において、制御盤10は専用のハードウェアであっても、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)であってもよい。尚、CPUは、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、若しくはDSP(Digital Signal Processor)とも称される。
制御盤10が専用のハードウェアである場合、制御盤10は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。ワーク温度取得部30、溶接条件決定部31、及び溶接制御部32の各部の機能それぞれを処理回路で実現してもよいし、各部の機能をまとめて処理回路で実現してもよい。
制御盤10がCPUの場合、ワーク温度取得部30、溶接条件決定部31、及び溶接制御部32の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリに格納される。制御盤10は、メモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、制御盤10は、制御盤10により実行されるときに、各部の機能に対応するステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリを備える。各部の機能に対応するステップについては後述する。また、これらのプログラムは、ワーク温度取得部30、溶接条件決定部31、及び溶接制御部32の手順及び方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここでメモリとは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、及びEEPROM等の不揮発性若しくは揮発性の半導体メモリ、又は磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、及びDVD等が該当する。
尚、ワーク温度取得部30、溶接条件決定部31、及び溶接制御部32の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。
このように、制御盤10は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、ワーク温度取得部30、溶接条件決定部31、及び溶接制御部32の各機能を実現することができる。
図4は、本発明の実施の形態に係る円周溶接方法における溶接電流の電流パターンをワークの回転角度と共に示す図である。図4の上のグラフ及び下のグラフは横軸に時間経過をとっており、図4の上のグラフは縦軸に円周溶接におけるワークの回転角度をとり、図4の下のグラフは縦軸に溶接電源15から供給される電流値をとっている。
t0において溶接電源15からの電流供給が開始され、パルスアーク溶接が開始される。t0〜t1は初期溶接時であり溶融プールが形成される期間である。ワークの回転角度は0°に維持されて回転せず、かつ、定常溶接時の溶接電流より小さい溶接電流が溶接電源15から供給され、溶融プールが形成される。
t1〜t2は初期溶接から定常溶接への移行期間である。ワークは回転角r1まで回転させられ、溶接電源15から供給される溶接電流の電流値は、定常溶接時の電流値a2まで上昇される。
t2〜t3は定常溶接が実行される期間である。t2〜t3の期間中、電流値a2の電流が溶接電源15から供給され、ワークは回転角r2まで回転される。r2は約360°である。このようにして、ワークが1回転し、初期溶接で形成された溶融プールが凝固した初期ビードが、溶接ワイヤ13に位置づけられる。
t3〜t4は、初期ビードに、ラップ処理が実行される期間である。t3〜t4の期間中、ワークは回転角r2から回転角r3まで回転される。r3は約375°である。この間、溶接電源15から供給される電流は、定常溶接時の電流値a2から、電流値a3まで下げられ、初期ビードがラップされる。
t4において、ワークの回転は停止され、溶接電源15からの電流供給が停止され、パルスアークが停止される。
本実施の形態において、重ねすみ肉継手部23及び重ねすみ肉継手部24を一周溶接する間に溶接電源15から供給される溶接電流のパターンは3つある。第1パターンでは、t0からt1までの電流値は第3電流値a1−1に設定され、t1からt2までの間に電流値は第3電流値a1−1から定常溶接の電流値a2へ上昇する。そして、t2からt3までの電流値は電流値a2に維持され、t3において電流値は電流値a3まで下がり、t3からt4までの電流値は電流値a3に維持され、t4で電流供給が停止されるパターンである。第2パターンでは、t0からt1までの電流値は第2電流値a1−2に設定され、t1からt2までの間に電流値は第2電流値a1−2から定常溶接の電流値a2へ上昇する。そして、t2からt3までの電流値は電流値a2に維持され、t3において電流値は電流値a3まで下がり、t3からt4までの電流値は電流値a3に維持され、t4で電流供給が停止されるパターンである。第3パターンでは、t0からt1までの電流値は第1電流値a1−3に設定され、t1からt2までの間に電流値は第1電流値a1−3から定常溶接の電流値a2へ上昇する。そして、t2からt3までの電流値は電流値a2に維持され、t3において電流値は電流値a3まで下がり、t3からt4までの電流値は電流値a3に維持され、t4で電流供給が停止されるパターンである。第1電流値a1−3、第2電流値a1−2、及び第3電流値a1−1は、第3電流値a1−1<第2電流値a1−2<第1電流値a1−3の関係にある。
ここで、パルスアーク溶接における初期ビードの母材への溶け込みに適した溶接電流について説明する。図5は、ワーク温度と初期ビードの母材への溶け込みに適した溶接電流との関係示すグラフである。図5に示すように、初期ビードの母材への溶け込みには、ワーク温度が相対的に低いとき、相対的に高い溶接電流が適しており、ワーク温度が相対的に高いとき、相対的に低い溶接電流が適している。ワーク温度が第1閾値T1未満の場合、初期ビードを形成するための溶接電流の電流値は、図4に示す最も高い第1電流値a1−3が適している。ワーク温度が第2閾値T2以上の場合、初期ビードを形成するための溶接電流の電流値は、図4に示す最も低い第3電流値a1−1が適している。ワーク温度が第1閾値T1以上かつ第2閾値T2未満の場合、初期ビードを形成するための溶接電流の電流値は、第3電流値a1−1よりも高く、かつ第1電流値a1−3よりも低い、図4に示す第2電流値a1−2が適している。
本実施の形態では、第1閾値T1は、ワークがそれまでの加熱工程から時間が経過し、室温に近づいている場合として、例えば30℃に設定され、第2閾値T2は、加熱工程からの時間経過が短く、ワーク温度が高い場合として、例えば60℃に設定される。ワークがそれまでの加熱工程から時間が経過し、室温に近づいている場合としては、例えば、溶接ラインの立ち上げ時、段替えによる溶接ラインの再開時、及びライントラブルからの溶接ラインの復帰時等が想定される。本実施の形態では、円周溶接が開始される前のワークの温度に基づいて、図4に示す第1パターン、第2パターン、及び第3パターンのいずれかが選択される。
図6は、本発明の実施の形態に係る圧縮機の溶接工程の手順を示すフローチャートである。ステップS1で、本実施の形態の円周溶接のワークである、上蓋キャップ21及び下蓋キャップ22が両端部に圧入されている円筒容器20が搬入される。ステップS2で、円筒容器20が円周溶接装置1の回転装置11に固定される。ステップS3で、円周溶接装置1による円周溶接処理が実行される。ステップS4で、回転装置11による円筒容器20の固定が解除され、円周溶接装置1から取り外され、ステップS5で、上蓋キャップ21及び下蓋キャップ22が溶接された円筒容器20は搬出される。
図7は、本発明の実施の形態に係る圧縮機の円周溶接の処理手順を示すフローチャートである。図7に示す円周溶接処理は、図6のステップS3において制御盤10により実行される処理である。
ステップS10はワーク温度取得ステップである。ステップS10において、ワーク温度取得部30は、温度センサ18から入力されるデータに基づいて、円周溶接のワークの温度、すなわち上蓋キャップ21の外周面と円筒容器20の端部とで形成されている重ねすみ肉継手部23の温度を取得する。
ステップS11〜ステップS15において、溶接条件決定部31は、ワーク温度取得部30により取得されたワーク温度に基づいて、溶接条件を決定する。溶接条件とは、図4に示す、溶接電源15から供給される電流の電流パターンである。ステップS11で、溶接条件決定部31は、重ねすみ肉継手部23の温度が第1閾値T1未満であるかチェックする。重ねすみ肉継手部23の温度が第1閾値T1未満の場合、処理はステップS12へ進む。ステップS12において、溶接条件決定部31は、溶接条件として、図4を参照して説明した第3パターンを選択する。
重ねすみ肉継手部23の温度が第1閾値T1以上の場合、処理はステップS13へ進む。ステップS13では、溶接条件決定部31は、重ねすみ肉継手部23の温度が第2閾値T2以上かチェックする。重ねすみ肉継手部23の温度が第2閾値T2以上の場合、処理はステップS14へ進む。ステップS14では、溶接条件決定部31は、溶接条件として、図4を参照して説明した第1パターンを選択する。重ねすみ肉継手部23の温度が第2閾値T2未満の場合、処理はステップS15へ進む。処理がステップS15へ進む場合とは、重ねすみ肉継手部23の温度が第1閾値T1以上、かつ第2閾値T2未満の場合である。ステップS15では、溶接条件決定部31は、溶接条件として、図4を参照して説明した第2パターンを選択する。
このように、円周溶接開始前の重ねすみ肉継手部23の温度が第1閾値T1及び第2閾値T2と比較され、重ねすみ肉継手部23の温度に適した溶接条件が選択される。
ステップS11〜ステップS15における溶接条件の選択が実行され、溶接条件が決定されたら、処理はステップS16へ進む。ステップS16において、溶接制御部32は、溶接電源15からの電流の供給を開始し、ガス供給元17によるガスの出力を開始することを指示する制御信号を、溶接電源15に出力する。これにより、溶接アークが開始され、円筒容器20と上蓋キャップ21の円周溶接が開始される。ステップS17〜ステップS20までは、溶接条件決定部31が決定した溶接条件に基づいて、溶接制御部32による円周溶接の制御が実行される。
ステップS17では、図4に示すt0〜t1の処理が実行される。溶接条件決定部31が第1パターンを選択している場合、溶接制御部32は、第3電流値a1−1で電流を供給することを指示する制御信号を溶接電源15に出力する。溶接条件決定部31が第2パターンを選択している場合、溶接制御部32は、第2電流値a1−2で電流を供給することを指示する制御信号を溶接電源15に出力する。溶接条件決定部31が第3パターンを選択している場合、溶接制御部32は、第1電流値a1−3で電流を供給することを指示する制御信号を溶接電源15に出力する。これにより、溶融プールが形成される。
ステップS18では、図4に示すt1〜t2の処理が実行される。ステップS18において、溶接制御部32は、供給する電流を電流値a2まで上昇させ、かつ、回転装置11により円筒容器20を回転角r1まで回転させることを指示する制御信号を、溶接電源15に出力する。第1パターンが選択されている場合、溶接電源15から供給される電流は、第3電流値a1−1から電流値a2まで上昇する。第2パターンが選択されている場合、溶接電源15から供給される電流は、第2電流値a1−2から電流値a2まで上昇する。第3パターンが選択されている場合、溶接電源15から供給される電流は、第1電流値a1−3から電流値a2まで上昇する。これにより、円周溶接は定常溶接へ移行する。
ステップS19では、図4に示すt2〜t3の処理が実行される。ステップS19において、溶接制御部32は、供給する電流を電流値a2で維持し、かつ、回転装置11により円筒容器20を回転角r2まで回転させることを指示する制御信号を、溶接電源15に出力する。これにより、定常溶接が継続される。
ステップS20では、図4に示すt3〜t4の処理が実行される。ステップS20において、溶接制御部32は、供給する電流を電流値a2から電流値a3まで下げ、かつ、回転装置11により円筒容器20を回転角r3まで回転させることを指示する制御信号を、溶接電源15に出力する。これにより、ステップS17で形成された溶融プールが凝固して形成された初期ビードに対するラップ処理が行われる。
そして、ステップS21において、溶接制御部32は、電流の供給を停止し、ガス供給元17によるガスの出力を停止することを指示する制御信号を、溶接電源15に出力する。これにより、溶接アークが停止され、円筒容器20と上蓋キャップ21の円周溶接が終了する。これにより、図1に示す、重ねすみ肉継手部23に、図2に示す、すみ肉円周溶接部105が形成される。
尚、上述の説明では、重ねすみ肉継手部23にすみ肉円周溶接部105を形成する場合を例にとって説明した。円筒容器20の端部と下蓋キャップ22の外周面により形成されている重ねすみ肉継手部24にすみ肉円周溶接部106を形成する場合も、同様の手順で円周溶接が実行される。
一般に、円周溶接において、溶接開始点からワークの周方向へ10mm未満の範囲では、予熱が不十分である。また、この範囲の予熱の状態は、円周溶接装置の立ち上げからの経過時間に応じてばらつきがある。そのため、円筒容器20と上蓋キャップ21及び下蓋キャップ22との溶接開始から溶融プールを形成するまで、供給する溶接電流を単一の既定値で制御すると、溶融プールが凝固する初期ビードの母材への溶け込みに個体間でばらつきが生じる。従って、すみ肉円周溶接部105及びすみ肉円周溶接部106の強度にばらつきが生じ、密閉型圧縮機100の強度信頼性を得ることはできない。
これに対し、本実施の形態によれば、円周溶接を開始する前のワーク温度、すなわち重ねすみ肉継手部23及び重ねすみ肉継手部24の温度に基づいて、溶接開始から溶融プールを形成するまでの、供給する電流の電流値を変化させている。そのため、溶融プールが凝固した初期ビードの母材への溶け込みにばらつきが生じることがない。従って、すみ肉円周溶接部105及びすみ肉円周溶接部106の強度に個体間でばらつきが生じることはない。すなわち、本実施の形態によれば、密閉型圧縮機100の強度信頼性を向上させることができる。
本実施の形態では、溶接電流のパターンは3つだが、これに限るものではない。溶接電流のパターンは2つ以上であれば、必要に応じて増減してよい。
本実施の形態では、事前に設定したパターンを選択して溶接電流の電流値を決定するようになっているがこれに限るものではない。ワーク温度と最適な溶接電流に関する式を設定し、その式の演算結果に基づいて、溶接電源15から供給する電流の電流値を決定してもよい。
本実施の形態では、円筒容器20と上蓋キャップ21の継手形状及び円筒容器20と下蓋キャップ22の継手形状は重ねすみ肉継手の構造を有しているが、これに限るものではない。他の突合せ継手の構造の場合であっても、同様に初期ビードの溶接条件が選択される。
1 円周溶接装置、10 制御盤、11 回転装置、12 溶接ワイヤ送給装置、13 溶接ワイヤ、14 溶接ワイヤ送給ケーブル、15 溶接電源、16A 給電ケーブル、16B 給電ケーブル、17 ガス供給元、18 温度センサ、19 センサケーブル、20 円筒容器、21 上蓋キャップ、22 下蓋キャップ、23 重ねすみ肉継手部、24 重ねすみ肉継手部、25 溶接トーチ、26 ガスホース、30 ワーク温度取得部、31 溶接条件決定部、32 溶接制御部、100 密閉型圧縮機、101 ガラス端子、102 吸入管、103 気液分離器、104 吐出管、105 重ねすみ肉円周溶接部、106 重ねすみ肉円周溶接部、110 圧縮機構部、111 シリンダ、112 クランク軸、113 ベアリング、114 ベアリング、120 モータ部、121 固定子、122 回転子、T1 第1閾値、T2 第2閾値、a1−1 第3電流値、a1−2 第2電流値、a1−3 第1電流値、a2 電流値、a3 電流値、r1 回転角、r2 回転角、r3 回転角。

Claims (4)

  1. 円筒容器と、前記円筒容器の両端に設けられている一対の蓋キャップとを有する密閉型圧縮機の円周溶接方法であって、
    前記円筒容器の端面と前記蓋キャップの外周面とで形成されている重ねすみ肉継手部の溶接開始前の温度を取得するワーク温度取得ステップと、
    前記ワーク温度取得ステップで取得された前記温度に基づいて、前記重ねすみ肉継手部の溶接条件を決定する溶接条件決定ステップと、
    前記溶接条件決定ステップで決定された溶接条件に基づいて、前記重ねすみ肉継手部の溶接を実行する溶接ステップとを含み、
    前記溶接条件決定ステップにおいて、前記重ねすみ肉継手部の定常溶接が開始される前の初期溶接に供給される溶接電流の電流値が、前記定常溶接における溶接電流より小さい条件下で決定される円周溶接方法。
  2. 前記溶接条件決定ステップにおいて、前記重ねすみ肉継手部の前記温度が、第1閾値、及び前記第1閾値より高い第2閾値と比較され、前記温度が前記第1閾値未満のとき前記初期溶接において供給する前記溶接電流の電流値として設定されている第1電流値、前記温度が前記第1閾値以上前記第2閾値未満のとき前記初期溶接において供給する前記溶接電流の電流値として設定されている第2電流値、及び、前記第2閾値以上の場合のとき前記初期溶接において供給する前記溶接電流の電流値として設定されている第3電流値の中から、前記溶接電流の電流値が選択される請求項に記載の円周溶接方法。
  3. 円筒容器と、前記円筒容器の両端に設けられている一対の蓋キャップとを有する密閉型圧縮機の円周溶接装置であって、
    前記円筒容器の端面と前記蓋キャップの外周面とで形成されている重ねすみ肉継手部の温度を測定する温度センサと、
    制御盤とを備え、
    前記制御盤は、
    前記温度センサにより、前記重ねすみ肉継手部の溶接開始前の温度を取得するワーク温度取得部と、
    前記ワーク温度取得部により取得された前記温度に基づいて、前記重ねすみ肉継手部の溶接条件を決定する溶接条件決定部と、
    前記溶接条件決定部により選択された溶接条件に基づいて、前記重ねすみ肉継手部の溶接を制御する溶接制御部とを有し、
    前記溶接条件決定部は、前記重ねすみ肉継手部の定常溶接が開始される前の初期溶接に供給される溶接電流の電流値を、前記定常溶接における溶接電流より小さい条件下で決定する円周溶接装置。
  4. 前記溶接条件決定部は、前記重ねすみ肉継手部の前記温度が、第1閾値、及び前記第1閾値より高い第2閾値と比較し、前記温度が前記第1閾値未満のとき前記初期溶接において供給する前記溶接電流の電流値として設定されている第1電流値、前記温度が前記第1閾値以上前記第2閾値未満のとき前記初期溶接において供給する前記溶接電流の電流値として設定されている第2電流値、及び、前記第2閾値以上の場合にとき前記初期溶接において供給する前記溶接電流の電流値として設定されている第3電流値の中から、前記溶接電流の電流値を選択する請求項に記載の円周溶接装置。
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