JP6936293B2 - アルミニウム合金箔 - Google Patents
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Description
アルミニウム合金箔は一方向に変形されず、いわゆる張り出し成形が行われて複数の方向において変形が行われることが多いため、伸び特性については、一般的に伸び値として用いられる圧延方向の伸びの他に、圧延方向に対して45°、90°の伸びも高いことが求められている。
例えば、特許文献1では、平均結晶粒を7〜20μmに規定することで高い成形性を得ようとしている。
また、特許文献2では、粒径12μm以下という非常に微細な結晶粒径を規定することで高い成形性を得ようとしている。
さらに、特許文献3では、平均結晶粒径7.0〜12.0μmの微細な結晶粒組織を規定している。
Fe:1.2質量%以上1.6質量%以下、Si:0.05質量%以上0.15質量%以下、Cu:0.005質量%以上0.1質量%以下を含有し、Mn:0.01質量%以下に規制し、残部がAl及びその他の不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金の鋳塊に480〜540℃で6時間以上保持する均質化処理を行い、均質化処理後に圧延仕上り温度が230℃以上300℃未満となるように熱間圧延を行い、冷間圧延の途中で、300〜400℃の温度で3時間以上保持する中間焼鈍を1回以上行い、最後の中間焼鈍後、最終厚みまでの最終冷間圧延率が90%以上95%未満であることを特徴とする。
・Fe:1.2質量%以上1.8質量%以下
Feは、鋳造時にAl−Fe系金属間化合物として晶出し、サイズが大きい場合は焼鈍時に再結晶のサイトとなって再結晶粒を微細化する効果がある。1.2質量%未満では粗大な金属間化合物の分布密度が低くなり、その微細化の効果が低く、最終的な結晶粒径分布も不均一となる。1.8質量%超では結晶粒微細化の効果が飽和もしくは低下し、さらに鋳造時に生成されるAl−Fe系金属間化合物のサイズが非常に大きくなり、箔の伸びや成形性、そして圧延性が低下する。特に好ましい範囲は、下限で1.2質量%、上限で1.6質量%である。
SiはFeと共に金属間化合物を形成する。0.15質量%を超えると粗大な金属間化合物生成による圧延性、伸び特性の低下、さらには最終焼鈍後の再結晶粒サイズの均一性が低下する懸念がある。0.05質量%未満ではFeの析出が抑制され、固溶Fe量が多くなり中間焼鈍や最終焼鈍時に連続再結晶の割合が多くなる。連続再結晶の割合が増えると、再結晶後でもCu方位が発達し、また結晶粒サイズの均一性も低下する。以上の理由で、Siの下限は0.07%、上限は0.13%とするのが好ましい。
Cuはアルミニウム箔の強度を増加させ、伸びを低下させる元素である。一方ではAl−Fe系合金で報告されている冷間圧延中の過度な加工軟化を抑制する効果がある。0.005質量%未満の場合、加工軟化抑制の効果が低く、0.1質量%を超えると材料が硬くなり伸びや成形性が明瞭に低下する。好ましくは、下限が0.005%、上限が0.005%以下である。
Mnはアルミニウム母相中に固溶する、あるいは非常に微細な化合物を形成し、アルミニウムの再結晶を抑制する働きがある。微量であればCuと同様に加工軟化の抑制が期待できるが、添加量が多いと中間焼鈍、及び最終焼鈍時の再結晶を遅延させ、微細で均一な結晶粒を得る事が困難となり、またCu方位やR方位の過度な発達を招く。その為0.01%以下に規制する。より好ましくは、上限が0.005%である。
軟質アルミニウム箔は結晶粒が微細になる事で、変形した際の箔表面の肌荒れを抑制する事が出来、高い伸びとそれに伴う高い成形性が期待できる。しかし結晶粒が微細になりすぎると材料が硬くなり、またn値(加工硬化指数)が低下する事で逆に伸びが低下する懸念がある。またAl−Fe系合金における微細な再結晶粒は連続再結晶で得られる場合が多く、その場合は最終焼鈍後でもCu方位密度が非常に高くなり、また結晶粒サイズも不均一化する為成形性が低下する懸念がある。平均結晶粒径が20μm未満では、前述の結晶粒微細化による悪影響が懸念される。30μmを超えると成形時に箔表面に肌荒れを生じ、この事が成形性低下をもたらす。
なお、n値が限定されるものではないが、0.23以上が望ましい。
平均結晶粒径が同じであっても、結晶粒の粒径分布が不均一である場合、局所的な変形を生じ易くなり箔の伸びや成形性は低下する。その為、平均結晶粒だけでなく最大粒径/平均粒径≦3.0とすることで高い成型性を得る事が出来る。
集合組織は箔の伸びに大きな影響を及ぼす。Cube方位密度が10未満、Cu方位密度20を超え、且つR方位密度も15を超えると、箔の伸びに顕著な異方性が生じ、圧延方向に対し45°方向の伸びは上昇するが、逆に0、90°方向の伸び値が低下してしまう。伸びに異方性が生じると、成型時に均一な変形が出来ず成形性が低下する。その為Cube方位密度10以上、Cu方位密度20以下、そしてR方位密度15以下に保つことで3方向の伸びのバランスを保つ事が出来る。
Al−Fe系合金に限った事ではないが、焼鈍時の再結晶挙動によっては総結晶粒界に占めるHAGBとであるLAGBの長さの比率が変化する。最終焼鈍後にLAGBの割合が多い場合は、連続再結晶の割合が高い場合に良く見られ、たとえ平均結晶粒が微細であったとしても、HAGB長/LAGB長≦2.0の場合は局所的な変形を生じやすくなり伸びが低下する。HAGB長/LAGB長>2.0とするのが望ましく、これにより成形性向上が期待できる。
例えば、特許文献2では、結晶粒界はEBSDで得られた方位差5°以上の方位差を有する粒界と定義されている。5°以上という事はLAGBとHAGBが混在しており、HAGBで囲まれた再結晶粒が本当に微細であるかどうかは不明確となる。
1.0μm以上とは一般的に再結晶時に核生成サイトとして作用すると言われている粒径であり、このような金属間化合物が高密度に分布する事で焼鈍時に微細な再結晶粒を得やすくなる。粒子径が1.0μm未満の場合は、再結晶時に核生成サイトとして有効に働きにくく、3.0μmを超えるとピンホール発生や伸びの低下につながり易くなる。ただし、このような粗大な化合物が高密度に存在する場合、成型時のピンホールの起点ともなり成形性を悪化させる原因となる。そのため分布密度は6.0×103個/mm2以下とすることが好ましい。
ただし、上記した金属間化合物は、粒子密度が極端に低くなると、結晶粒の粗大化につながるため、粒子密度は2.0×103個/mm2以上とするのが望ましい。
なお、粒子径は円相当径で示される。
一般には再結晶の核となりにくいと言われているサイズだが、結晶粒の微細化及び再結晶挙動に大きな影響を与えていると示唆される結果が得られている。詳細なメカニズムは未だ明らかでないが、粒子径1.0〜3.0μmの粗大な金属間化合物に加え、1.0μm未満の微細な化合物がある程度存在する事で最終焼鈍後のHAGB長/LAGB長の低下抑制が確認されている。冷間圧延中の結晶粒の分断(Grain subdivision機構)を促進している可能性もある。このため上記粒子径範囲のAl−Fe系金属間化合物の密度は、上記範囲とするのが好ましい。
得られた鋳塊に対しては、480〜540℃で6時間以上保持する均質化処理を行う。480℃以下ではFe析出が少なく、また金属間化合物の成長が不十分となる一方540℃以上では金属間化合物の成長が著しく、粒子径0.1μm以上1μm未満の微細な金属間化合物の密度が大きく低下してしまう。このような500℃付近の均質化処理において微細な金属間化合物を高密度に析出させるには長時間の熱処理が必要であり、最低6時間以上は確保する必要がある。6時間未満では析出が十分でなく、微細な金属間化合物の密度が低下してしまう。
熱間圧延においては仕上がり温度を300℃未満とし、再結晶を抑制する事が望ましい。熱間圧延仕上がり温度を300℃以下とする事で、熱間圧延板は均一なファイバー組織となる。このように熱間圧延後の再結晶を抑制する事で、その後の中間焼鈍板厚までに蓄積されるひずみ量が大きくなり、中間焼鈍時に粒径の均一な再結晶粒組織を得る事が出来る。この事は最終的な結晶粒径の均一性にも繋がる。300℃を超えると熱間圧延板の一部で再結晶を生じ、ファイバー組織と再結晶粒組織が混在する事になり、中間焼鈍時の再結晶粒径が不均一化し、それはそのまま最終的な結晶粒径の不均一化に繋がる。230℃未満で仕上げるには熱間圧延中の温度も極めて低温となる為、板のサイドにクラックが発生し生産性が大幅に低下する懸念がある。
中間焼鈍は冷間圧延を繰り返す事で硬化した材料を軟化させ圧延性を回復させ、またFeの析出を促進し固溶Fe量を低下させる。300℃未満では再結晶が完了せず結晶粒組織が不均一になるリスクがある、また400℃を超える高温では再結晶粒の粗大化を生じ、最終的な結晶粒サイズも大きくなる。さらに高温ではFeの析出量が低下し、固溶Fe量が多くなる。固溶Fe量が多いと最終焼鈍時の不連続再結晶が抑制され、小傾角粒界の割合が多くなる。その為中間焼鈍温度は380℃未満が望ましい
中間焼鈍の保持時間は3時間以上が望ましい。3時間未満では再結晶が不完全となり、またFeの析出も不十分となる恐れがある。上限は特に定めないが、生産性を踏まえると15時間以下が望ましい。
中間焼鈍後から最終厚みまでの最終冷間圧延率が高い程、材料に蓄積されるひずみ量が多くなり最終焼鈍後の再結晶粒が微細化され、同時にCu方位の発達が顕著になる。逆に最終冷間圧延率が低すぎる場合は再結晶粒の粗大化や不均一化の原因となる。具体的には最終冷間圧延率を90〜95%に制御する事が望ましく、90%未満では蓄積ひずみ量の低下により、最終焼鈍後の結晶粒サイズの粗大化や不均一化を招く。またその場合、再結晶の割合も増え、方位差15°未満のLAGBが増加しHAGB長/LAGB長が小さくなる。一方95%を超えると冷間圧延におけるCu方位の発達が顕著になり、最終焼鈍後でもCu方位密度が顕著に大きくなる。
アルミニウム合金として、Fe:1.2質量%以上1.6質量%以下、Si:0.05質量%以上0.15質量%以下、Cu:0.005質量%以上0.1質量%以下を含有し、Mn:0.01質量%以下に規制し、残部がAl及びその他の不可避不純物からなる組成に調製してアルミニウム合金鋳塊を製造した。鋳塊の製造方法は特に限定されず、半連続鋳造などの常法により行うことが可能である。得られた鋳塊に対しては、480〜540℃で6時間以上保持する均質化処理を行う。
最後の中間焼鈍以降の冷間圧延は最終冷間圧延に相当し、その際の最終冷間圧延率を90〜95%未満とする。箔の最終厚さは特に限定されないが、例えば10μm〜40μmとすることができる。
アルミニウム合金箔は、Cube密度が10以上、Cu方位密度20以下、R方位密度15以下であるのが好ましい。
アルミニウム箔は、優れた伸び特性と強度のバランスに優れており、例えば、圧延方向に対して、0°、45°、90°の各方向における伸びが25%以上、0°、45°、90°の各方向における強度が90MPa以上となり、3方向の伸びと強度のバランスをよりよく保つことができる。
・粒子径1.0〜3.0μmのAl−Fe系金属間化合物の数密度が6.0×103個/mm2以下であり、そして粒子径0.1μm以上1.0μm未満の同数密度が1.0×104個/mm2以上
箔の厚さは30μmとした。
・引張強度、伸び
いずれも引張試験にて測定した。引張試験は、JIS Z2241に準拠し、圧延方向に対して0、45、90°の各方向の伸びを測定できるように、JIS5号試験片を試料から採取し、万能引張試験機(島津製作所社製 AGS−X 10kN)で引張り速度2mm/minにて試験を行った。伸び率の算出について以下の通りである。まず試験前に試験片長手中央に試験片垂直方向に2本の線を標点距離である50mm間隔でマークする。試験後にアルミニウム合金箔の破断面をつき合わせてマーク間距離を測定し、そこから標点距離(50mm)を引いた伸び量(mm)を、標点間距離(50mm)で除して伸び率(%)を求めた。
各アルミニウム合金箔を20体積%過塩素酸+80体積%エタノール混合溶液に浸漬し、電圧20Vで電解研磨を行った後、水洗し、5体積%ホウフッ化水素酸水溶液中で電圧30Vで陽極酸化皮膜を生成させた後、偏光光学顕微鏡にて結晶粒の観察と撮影を実施した。平均結晶粒径は結晶粒写真から切断法にて測定した。
箔表面を電解研磨した後、SEM−EBSDにて結晶方位解析を行い、結晶粒間の方位差が15°以上の大角粒界(HAGB)と、方位差2°以上15°未満の小角粒界(LAGB)を観察した。倍率×1000で視野サイズ45×90μmを3視野測定し、視野内のHAGBとLAGBの長さを求め、比を算出した。
成形高さは角筒成形試験にて評価した。試験は万能薄板成形試験器(ERICHSEN社製 モデル142/20)にて行い、厚さ30μmのアルミ箔を図1に示す形状を有する角型ポンチ(一辺の長さL=37mm、角部の面取り径R=4.5mm)を用いて行った。試験条件として、シワ抑え力は10kN、ポンチの上昇速度(成形速度)の目盛は1とし、そして箔の片面(ポンチが当たる面)に鉱物油を潤滑剤として塗布した。箔に対し装置の下部から上昇するポンチが当たり、箔が成形されるが、3回連続成形した際に割れやピンホールがなく成形できた最大のポンチの上昇高さをその材料の限界成形高さ(mm)と規定した。ポンチの高さは0.5mm間隔で変化させた。本発明品においては成形高さ8.0mm以上を合格とした。
金属間化合物は箔の平行断面(RD−ND面)をCP(Cross section polisher)にて切断し、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM:Carl Zeiss社製 NVision40)にて観察を行った。「粒子径1μm以上〜3μm未満のAl−Fe系金属間化合物」については、倍率×2000倍にて観察した5視野を画像解析し、密度を算出した。「粒子径0.1μm以上〜1μm未満のAl−Fe系金属間化合物」については、倍率×10000倍にて観察した10視野を画像解析し、密度を算出した。粒子径は円相当径により求めた。
Cube方位は{001}<100>、Cu方位は{112}<111>、R方位は{123}<634>を代表方位とした。それぞれの方位密度はX線回折法において、{200}、{220}、{111}の不完全極点図を測定し、その結果を用いて3次元方位分布関数(ODF;Orientation Distribution Function)を計算し、評価を行った。
R 面取り径
Claims (3)
- Fe:1.2質量%以上1.6質量%以下、Si:0.05質量%以上0.14質量%以下、Cu:0.005質量%以上0.1質量%以下を含有し、Mn:0.01質量%以下に規制し、残部がAl及びその他の不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金箔であり、前記アルミニウム合金箔の平均結晶粒径が20〜30μmであり、最大結晶粒径/平均結晶粒径≦3.0であり、Cube方位密度が10以上、Cu方位密度が20以下、そしてR方位密度が15以下であることを特徴とするアルミニウム合金箔。
- 後方散乱電子回折(EBSD)による単位面積当たりの結晶方位解析において、方位差15°以上の大傾角粒界(HAGB)と、方位差2°以上15°未満の小傾角粒界(LAGB)の長さの比「HAGB長/LAGB長>2.0」であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金箔。
- 粒子径(円相当径、以下同様)1.0〜3.0μmのAl−Fe系金属間化合物の数密度が6.0×103個/mm2以下であり、そして粒子径0.1μm以上1.0μm未満の同数密度が1.0×104個/mm2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム合金箔。
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