JP6944342B2 - 四塩化チタンの製造方法 - Google Patents
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Description
その反応が行われる流動塩化炉の流動層内の温度は、チタン鉱石の塩素化による反応熱により950〜1200℃に維持される。そして、この反応は発熱反応であるため、四塩化チタンの生産速度により流動層内の温度は変化する。生産速度が増加し流動層内の温度が高くなると、流動層内のガスの体積が膨張して大きくなり、流動塩化炉の流動層部およびフリーボード部内のガス流速が増加する。その結果、原料として投入したチタン鉱石や還元材が、反応に関与することなく、反応ガスとともに流動塩化炉外へキャリーオーバーする原料鉱石の損失量が増加してしまう。
これに関連し、特許文献1は、液体の四塩化チタンを流動塩化炉内に供給し、その気化熱で流動塩化炉内の温度を低下させる技術を開示している。この技術は、チタン鉱石の塩素化による発熱反応の進行により流動塩化炉の流動層内温度が上昇すると、還元材として供給するコークスの消費が進んでコークス原単位の低下につながること、及び、チタン鉱石に含まれている鉄、珪素、アルミニウムといった主要不純物の塩素化反応も同時に進行してしまい、生産される四塩化チタン中のこれら主要不純物濃度が上昇してしまうという問題を解決するために開発された技術である。
しかし、特許文献1に記載された技術では、流動塩化炉の流動層内の温度を下げることはできるものの、塩化炉の炉頂部から供給される液体の四塩化チタンのガス化(気化)により、ガス体積が増加するので、依然として、流動塩化炉内のガス流速は変化しない。
このため、この技術では、キャリーオーバーに伴う原料損失を低減するという、本発明の課題を解決することはできない。
[1]流動塩化炉を用いた四塩化チタンの製造方法において、前記流動塩化炉に第一の還元剤を投入して流動層を形成後、流動層内の温度を所定の温度範囲に制御するために、前記第一の還元剤のカルシウム濃度より高いカルシウム濃度を有する第二の還元剤を前記流動塩化炉に投入することを特徴とする四塩化チタンの製造方法。
[2]第二の還元剤のカルシウム濃度が0.10〜0.50質量%であることを特徴とする[1]に記載の四塩化チタンの製造方法。
[3]第二の還元剤がか焼無煙炭を10質量%〜100質量%の割合で含有する還元材であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の四塩化チタンの製造方法。
[4]流動層内の温度を950℃〜1170℃の温度範囲に制御することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の四塩化チタンの製造方法。
[5]カルシウム濃度が0.10〜0.50質量%であることを特徴とする四塩化チタンの製造用の流動層内の温度調整用還元剤。
本発明が、どのようなメカニズムで流動層内の温度を調整しているのか、その理論的な説明は明らかではないが、本発明の発明者らは、現時点で以下のような事象が生じているものと想定している。
そして、本発明者らが検討した結果、還元材に存在するカルシウム成分は、式(3)の反応の触媒として作用することが分かった。すなわち、還元材表面のカルシウムが触媒として作用し、式(3)の吸熱反応を促進させる。
このようなメカニズムによるとすれば、還元材に添加するカルシウム濃度を微調整することにより、四塩化チタンの生産速度を低下させることなく、流動塩化炉の流動層内の温度を下げることができるのである。
TiO2 + 2C + Cl2 → TiCl4 + 2CO +54kJ/mol・・・(2)
C + CO2 → 2CO−167kJ/mol ・・・・・・・・(3)
通常の四塩化チタン製造において使用する還元材は、還元材として作用するためには炭素を90質量%以上含んでいることが好ましい。更に炭素を95質量%以上含有しているものが還元材として有効に使用できる成分が多いため、四塩化チタンの製造には、より好ましい。また、不純物含有量の少ないコークスが使用される。高純度の還元材を使用することで、流動層内への不純物の蓄積を防ぐことができるからである。
このような還元材としては、本発明の実施例で使用しているカルサインドオイルコークスやピッチコークス等を使用するのが一般的である。
そして、本発明では、流動塩化炉内の流動層内の温度を950℃〜1170℃の範囲と成るように、還元材としてカルシウム濃度を0.10〜0.50質量%に高めた炉内温度調整用の還元材を投入する。
ここで、か焼無煙炭とは、無煙炭を、か焼(仮焼)して高炭素で揮発分を少なくした炭素製品である。実施例にその特性データを示すが、通常の還元材として使用されるカルサインドオイルコークス(生石油コークスをロータリーキルン等により加熱処理を行い揮発分と水分を除去して製造される。)に比較して、高濃度のカルシウムを含有することが好ましい。
本発明では、還元材に添加・混合する、か焼無煙炭の配合比を変えることにより、炉内温度を低下する能力の異なる炉内温度調整用の還元材を調整することができる。
また、炉内温度調整用の還元材は、石炭とカルシウム化合物を所定割合で混合し、その混合物をコークス炉で乾留してコークスとすることによっても調整することができる。
還元材中のカルシウム濃度が0.10質量%未満の場合、流動層内の温度低下効果が小さい点で好ましくない。また、カルシウム濃度が0.50質量%より多い場合、流動塩化炉内で塩素ガスと反応して生成する塩化カルシウムが増加し、流動塩化炉内に滞留して流動塩化炉内の流動の悪化を招く恐れがあり、定期的に流動塩化炉内からチタン鉱石や還元材と共に塩化カルシウムを抜出す必要が発生するので好ましくない。
すなわち、流動塩化炉に投入する還元材1gを大気中で一定の保持温度と保持時間で強熱灰化した後に、灰分をアルカリ試薬と共に加熱して溶融し、溶融物を酸に溶解してICP発光分光法で測定する。
測定条件は以下の通りである。
試料:1g
強熱灰化の保持温度:815℃
強熱灰化の保持時間:2時間
アルカリ試薬:NaOH 1g+Na2O2 5g
酸:HCl(1+1) 100mL
最終液量:250mL
装置:(SPS3100:(株)日立ハイテクサイエンス製)
一般に流動層反応炉の内部は、流動層部とフリーボード部(流動層の上部から上で塩化炉配管までの炉内空間)とに分けられる。本発明で問題となるキャリーオーバーは、フリーボード部での空塔速度が速いために発生するが、流動層内の温度を調整すると、それに伴いフリーボード部の温度も下がるので、フリーボード部の空塔速度を下げることができる。
なお、本発明で用いる空塔速度は、蒸留塔や吸収塔、反応器など,多相流装置や充填層型装置に用いられる、その場所を流れる流体の流れの速さの記法の一つであり,次式で定義されるものである。
空塔速度(m/s) =体積流量(m3/s)/断面積(m2)
流動層内の温度1180℃で流動層内温度調整用の還元材を投入することで、上記反応メカニズムによる吸熱反応で、流動層内の温度が下がり、空塔速度が低下し、キャリーオーバーによる原料損失量を低減できる。950℃より低い温度で流動層内温度調整用の還元材を投入した場合、チタン鉱石の塩素化反応の反応性が悪化して好ましくない。
流動層内温度調整用の還元材を流動塩化炉内に投入する温度は、
流動層内の温度を、950℃〜1170℃の範囲と成るように調整できる温度であれば、如何なる温度でも良く、流動層内の温度を、950℃〜1170℃の範囲とすることで、キャリーオーバーによる原料損失量を低減できる。
なお、本発明のキャリーオーバーによる原料損失量とは、流動塩化炉の流動層内に投入したチタン鉱石の量から、反応に使用された量と意図的に塩化炉内から抜き出した量を差し引いた量のことであり、チタン鉱石の塩素化反応に寄与せず、流動塩化炉の外に排出された未反応のままの鉱石のことである。
前記第二の還元材の投入方法は、通常の還元材の投入と同じで、流動塩化炉内の流動層上部もしくは流動層中へ流動層内温度調整用の還元材を投入する方法などが挙げられる。これにより、流動層で前記(1)(2)式の反応が進み、かつ、還元材中のカルシウムが前記(3)式の反応の触媒として機能し、流動層内の温度を低下させることができる。
前記第二の還元材は、か焼無煙炭などの、前記第一の還元材のカルシウム濃度より高いカルシウム濃度を有する還元材をそのまま使用しても良いが、カルシウム濃度が0.10〜0.50質量%となるように第一の還元材と併用して使用してもよい。
四塩化チタン製造装置は、図1に記載された型式の四塩化チタンの製造装置を使用した。この製造装置内に原料となるチタン鉱石、還元材及び塩素ガスが投入される。当初、還元材として通常使用される第一の還元材であるカルサインドオイルコークスを投入し、その後、流動層内の温度が1180℃になった時に下記の流動層内温度調整用の第二の還元材を投入した。
1 流動層内温度調整用の第二の還元材
実施例で流動層内の温度調整に使用する第二の還元材は、か焼無煙炭と第一の還元材であるカルサインドオイルコークスとの合計が100質量%になるようにし、か焼無煙炭を25質量%〜100質量%まで25質量%毎に添加して増加させたものである。
なお、使用した、か焼無煙炭とカルサインドオイルコークスの特性は次のとおりである。
a)か焼無煙炭
1)Ca濃度:0.36質量%
2)平均粒径: 1.6mm
3)嵩比重:1.0グラム/cm3
4)C濃度:92質量%、Si濃度:2.1質量%、Fe濃度:
0.5質量%、Mg濃度:0.1質量%、その他不純物
b)カルサインドオイルコークス
1)Ca濃度:0.08質量%
2)平均粒径: 1.5mm
3)嵩比重:0.7グラム/cm3
4)C濃度:98質量%、Si濃度:0.02質量%、Fe濃度:
0.05質量%、Mg濃度:0.02質量%、その他不純物
2 流動塩化炉の操業条件
1)流動層内温度:950〜1170℃
2)塩素ガスの投入量:約30,000Nm3
3)チタン鉱石の投入量:約60t/日
4)コークスおよびか焼無煙炭の投入量:約20t/日
5)チタン鉱石および還元材の投入方法:流動層上部から投入
3 流動塩化炉内温度とフリーボード部の温度とフリーボード部の空塔速度の測定
流動塩化炉内の温度およびフリーボード部の空塔速度は、次のとおり測定して算出した。
1)流動層内の温度
セラミックス製の保護管に入れた(株)チノー製のB熱電対を、流動塩化炉の流動層部(分散盤最上部から1mの高さ)の側部から、流動塩化炉内壁の約20cm奥まで挿入して温度を測定した。
2)フリーボード部の温度
リーボード部のガス流速がキャリーオーバーによる原料損失に関係する。フリーボード部の温度は、セラミックス製の保護管に入れた(株)チノー製のB熱電対を、流動塩化炉のフリーボード部にあたる高さ(流動層最上部から2mの高さ)の側部から、流動塩化炉内壁の約20cm奥まで挿入して温度を測定した。
3)フリーボード部の空塔速度
フリーボード部を流れるガスはTiCl4およびその他のガス(CO2、CO、主要不純物の塩化物:SiCl4,FeCl2,AlCl3等)である。このうちTiCl4は生産量からガス流量(L/min)を算出した。その他のガスについては、後工程の排ガス処理工程に送られ、そこで流量(L/min)を測定した。TiCl4のガス流量とその他のガスの流量の合算値を、塩化炉フリーボード部の条件(温度、内径)に合わせることで、フリーボード部の空塔速度を算出した。
流動層内温度調整用の第二の還元材の構成比を、か焼無煙炭を25質量%、カルサインドオイルコークスを75質量%とした。チタン鉱石と還元材を流動塩化炉に投入し操業をし、流動層内の温度が1180℃に達したときに、第二の還元材として上記流動層内温度調整用還元材の投入を開始した。各種温度、キャリーオーバーによる原料損失量、生産速度の結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1における流動層内温度調整用の第二の還元材の構成比を、か焼無煙炭を50質量%、カルサインドオイルコークスを50質量%として試験を行なった。各種温度、キャリーオーバーによる原料損失量、生産速度の結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1における流動層内温度調整用の第二の還元材の構成比を、か焼無煙炭を75質量%、カルサインドオイルコークスを25質量%として試験を行なった。各種温度、キャリーオーバーによる原料損失量、生産速度の結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1における流動層内温度調整用の第二の還元材の構成比を、か焼無煙炭を100質量%とした。各種温度、キャリーオーバーによる原料損失量、生産速度の結果を表1に示す。
(比較例1)
還元材として、上記カルサインドオイルコークスを100質量%使用した以外は実施例1と同じ条件で試験を行った。その結果を表1に示す。
Claims (5)
- 流動塩化炉を用いた四塩化チタンの製造方法において、前記流動塩化炉に第一の還元材を投入して流動層を形成後、流動層内の温度を所定の温度範囲に制御するために、前記第一の還元材のカルシウム濃度より高いカルシウム濃度を有する第二の還元材を前記流動塩化炉に投入することを特徴とする四塩化チタンの製造方法であって、
前記第二の還元材の炭素含有量が、90質量%以上である、四塩化チタンの製造方法。 - 第二の還元材のカルシウム濃度が0.10質量%〜0.50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の四塩化チタンの製造方法。
- 第二の還元材がか焼無煙炭を10質量%〜100質量%の割合で含有する還元材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の四塩化チタンの製造方法。
- 流動層内の温度を950℃〜1170℃の温度範囲に制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の四塩化チタンの製造方法。
- カルシウム濃度が0.10質量%〜0.50質量%であること、及び
炭素含有量が、90質量%以上であること
を特徴とする四塩化チタンの製造用の流動層内の温度調整用還元材。
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