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JP6945210B2 - 熟成魚肉の製造方法 - Google Patents
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本発明は、接種した食用カビの酵素による熟成(発酵)を利用した熟成魚肉の製造方法に関するものである。
熟成魚肉は、生の魚肉を一定期間寝かせることで旨味を引き出した生肉乃至半生肉のことであり、自己消化酵素により魚肉を熟成させて旨味成分としてイノシン酸を増やした塩辛や、塩漬けした魚肉を炊いた米と一緒に漬込み、乳酸発酵させた馴れずしが従来から知られている。
近年の熟成肉ブームにより種類の豊富化が求められており、魚肉についても差別化できる新規な商品の提供が求められている。
それに応えて、特許文献1では、カビ麹を用いた方法が提案されているが、この方法では麹を用いることによる熟成(発酵)のため、熟成(発酵)工程の適温は25〜50℃と高い。このため、熟成魚肉として期待される食感が失われてしまうだけでなく、得られる風味は従来から知られている麹漬け魚肉と類似している。
また、海外の地中海地方や南米の沿岸地域では、伝統的料理としてマグロの塩漬け乾燥魚肉が食されているが、旨味が少ないため、既に国内でも紹介されてはいるが、殆ど普及していない。
ところで、食用カビを利用した熟成(発酵)により旨味を引き出せることは従来から知られており、このときに引き出される旨味成分の正体はタンパク質の分解により増加した遊離アミノ酸になっている。
魚肉については、この食用カビを利用した食品として鰹節があるが、煮熟した後にカビを接種して熟成させており、もはや熟成魚肉とは言えないものとなっている。
その他の食品としては、伝統的な料理として畜肉やチーズがあるが、特許文献2に記載されているように、畜肉については、65〜85℃の高温に曝露する熱風乾燥熟成の後に、風味付けを主眼にカビ付けを行っている。
また、チーズについては、熟成(発酵)を積極的に行っているが、チーズの原料となる乳の固形分の脂肪量が45〜50%程度と既に調整されているため、もともと水分量が少なくカビ付け前には乾燥を殆ど行わない。
特開2000−270763号公報 特開2011−234633号公報
生魚肉は自由水が非常に多いので、急速に乾燥し易く、そして、腐敗も早い。そのため、上記の畜肉のように熱風乾燥してしまうとその時点で加熱魚肉となってしまう。また、チーズのように事前に乾燥せずにそのまま乳にカビ付けしようとすると、雑菌の繁殖が盛んになるため、食用カビのみで魚肉の全面を隙間なく覆わせることができない。
このように、魚肉について、食用カビの利用により熟成(発酵)させて旨味成分を上手く引き出し、生乃至半生の熟成魚肉を得ようとしても、畜肉等に適用されている従来方法では不可能である。
本発明は、上記課題に鑑み、食用カビの酵素により熟成(発酵)させて今までにない新規な熟成魚肉を製造できる方法を提供することをその目的とする。
食用カビを熟成(発酵)に利用するのは、25℃以上の中温が適していると言われているが、生魚肉については、自由水が多いので25℃の下限ぎりぎりにしても、雑菌の繁殖を阻止できない。
本発明者らは、試行錯誤の結果、塩漬けをする前処理工程の後に、従来より低温にしてその温度帯における飽和に近い高湿度雰囲気を作り出し、その雰囲気下でカビ付け工程を実施すると、乾燥が非常に緩慢になり、雑菌の繁殖を抑えつつ食用カビで魚肉の全面を隙間なく覆わせることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
以下に、本発明の熟成魚肉の製造方法を提案する。
請求項の発明は、生魚肉を塩漬けした後に水切りする前処理工程と、その後白カビまたは青カビを接種した上で温度が0〜10℃で、湿度が80%以上100%未満の魚肉専用雰囲気に所定期間おいて前記白カビまたは青カビで前記生魚肉の全面を覆わせるカビ付け工程と、その後熟成させる熟成工程とを有して成り、熟成工程では、湿度が60〜80%の雰囲気下に魚肉中水分量が40〜60%になるまでおくことを特徴とする熟成魚肉の製造方法である。
請求項の発明は、請求項に記載した熟成魚肉の製造方法において、前処理工程における水切りの前に、糖液に漬ける糖分付与工程を加えることを特徴とする製造方法である。
本発明の方法によれば、食用カビの酵素により熟成(発酵)させて、今までにない新規な熟成魚肉を製造できる。
実施例1におけるサンプルのカビ付け状態を示す写真である。 実施例2におけるサンプル等の熟成効果を示すグラフである。 実施例3におけるサンプルの熟成状態を示す写真である。 実施例3における熟成進行中の水分量変化を示すグラフである。 実施例4における白カビと青カビを使用した場合の熟成魚肉の比較写真である。 実施例5における種々の魚種を使用した場合の熟成魚肉の写真である。 実施例5におけるマアジを使用した場合の熟成魚肉の写真である。 実施例5におけるニジマスを使用した場合の熟成魚肉の写真である。
本発明の実施の形態に係る製造方法について、手順に従って説明する。
(原料)
原料の生魚肉としては、キハダ、メバチ、ビンナガ、クロカジキ、カツオ、ニジマス、マアジ等魚類全般を使用でき、更に、魚種だけでなく、脂肪分の多寡は問わない。また、頭や内臓、骨なども事前に除去することは必須にはなっていない。
但し、後述する前処理工程において内部にも塩を十分に浸透させることが好ましいことや販売上の便宜を考慮して、魚種に応じてサイズや形状を、ブロック、切り身、開き等適当なものに整形しておくことが推奨される。
≪前処理工程≫
生魚肉を塩漬けする。
好ましくは、0〜10℃程度に冷やした塩漬け液に、1〜2日程度漬けて、魚肉中の塩分濃度を2%以上になるように調整する。この塩漬けと後述の工程における調整雰囲気との協働作用により、雑菌の繁殖を効果的に阻止することが期待されている。塩漬け液は、食塩水が典型的であるが、これに限定されず、食塩、香辛料、調味料等を混ぜ合わせた調味液を使用して味付けを兼ねても良い。
塩漬けした後には水切りすることで過剰な水分を除く。
≪糖分付与工程≫(任意)
前処理工程の後に、糖分を付与してもよい。この糖分付与は、例えば、スクロースを溶かした糖液に1日程度漬けることで行う。糖液は、塩漬け液と同様に0〜10℃程度に冷やしたものを使用する。糖液は前処理済みの魚体に馴染み易いように、食塩水に糖を加えたものが好ましい。適量の糖分は食用カビのエサになり、食用カビの繁殖を促すので、この工程を実施することにより、後続のカビ付け工程にかかる時間を短縮化できる。この工程を実施する場合には、前処理工程の際には水切りせずに、糖分を付与後に水切りする。
≪カビ付け工程≫
食用カビを使用する。食用カビには、白カビと青カビが知られているが、いずれも使用できる。
先ず、食用カビを前処理済みの魚体に噴霧により接種する。
その後に、0〜10℃の低温且つ80%以上100%未満の魚肉専用雰囲気において、食用カビの繁殖を促す。密閉した庫内で湿度が100%の飽和に達すると、凝縮されて一部が水として外部に放出されるよう構成されており、変動はあるものの概して100%近傍に容易に維持できることから、保存庫の使用が推奨される。但し、温度については、保存庫の内部の全ての箇所において一律に維持することは難しく、±2℃前後の温度ムラはできる。従って、上限の10℃を超えないよう、保存庫を使用する場合には庫内の温度は6℃程度に設定するのが好ましい。
食用カビの繁殖には、20〜25℃程度の中温が向いていると言われているが、この温度帯は雑菌も繁殖し易い。しかしながら、上記した前処理を経て、0〜10℃の低温に調整し、その温度帯における飽和に近い湿度雰囲気においたところ、魚肉の乾燥を阻止しつつ、雑菌の繁殖は抑えられ、結果として、食用カビの優先的な繁殖をスムーズに進行させて、魚体の全面を食用カビで覆わせることができた。この知見に基づいて、上記の数値範囲が設定されている。
なお、魚肉専用雰囲気は、好ましくは、温度が4〜8℃で、湿度が85%以上100%未満となるように調整する。数値範囲が狭められているが、この範囲であれば、魚体の全面にわたってより均一に食用カビを付着させることができる。
保存期間は、魚種や整形の仕方により異なるが、概ね14日間程度であり、前述の糖分付与工程を実施すれば、7日程度は更に短縮化できる。
≪熟成工程≫
カビ付け済みの魚肉を、熟成させる。
カビ付け工程を低温で行っているので、熟成工程に供される魚肉は殆ど生状態である。
この熟成工程は温度をカビ付け工程と同様の低温でそのまま実施することも、上げることも可能であり、その結果として魚肉をそのまま生状態に留めることも、半生状態に変えることもできる。
また、この熟成工程では、食用カビの熟成(発酵)が意図されているが、低温で実施すれば、魚肉によっては自身が本来有する酵素による熟成も併せて期待できる。
(最終製品)
上記の熟成工程で、0〜10℃の低温で湿度が60〜80%の雰囲気において魚肉中水分量が40〜60%になるまで保存すれば、熟成(発酵)だけでなく魚肉が本来有する酵素による熟成も魚種によっては進行し、これらが絡み合うことで独特の香味と旨味が引き出され、且つ半乾燥された生ハムに近い食感が得られる。
一方、0〜10℃程度の低温で湿度が80%を超える雰囲気において魚肉中水分量が60%を超え75%以下になるまで保存すれば、熟成(発酵)による旨味が強く引き出され、且つ生に近い食感が得られる。
いずれも、類似品は無く、新たな水産加工品である。
上述のように魚種は限定されないが、本発明の製造方法によれば、特に、脂肪量の少ない魚肉、例えば赤身のマグロやカツオの高付加価値化を達成できるものと期待される。
(保存庫)
上記の工程で使用する保存庫は、専用品である必要はなく、野菜や米の乾燥を目的として製造された既存の低温乾燥器で代替できる。
[実施例1]
魚肉として、大きさを一定(重量300〜400g)に整形したキハダの魚肉ブロックをサンプルとして使用した。これを魚肉ブロック重量の2倍重量の18%食塩水(4℃)に24時間塩漬けして、魚肉中の塩分濃度を魚肉の塩溶解性の得られる2%以上にした。
次に、塩漬けした魚肉の表面の水分をペーパータオルでふき取り、食用カビ液(白カビ)を噴霧接種した。その後、保存庫に入れて保存した。保存庫は、設定湿度は85%以上100%未満と常時一定だが、設定温度は2℃、4℃、6℃の三種類に分けて設定するようになっており、庫内に入れて7日間経過後と14日間経過後の状態をそれぞれ観察した。
図1はカビ付け状態を示したものであり、時間差はあったが14日経過した時点では、いずれも魚体の全面を食用カビで覆わせることに成功していた。
[実施例2]
[実施例1]において設定温度6℃で7日間保存したサンプル(塩液)と、塩漬け後に糖(スクロース)2%と食塩3%を加えた糖及び食塩溶液に24時間漬け、6日間保存した以外は同様に処理したサンプル(塩・糖液)と、対照(塩漬け(カビなし):塩漬けのみ)について、保存庫の庫内から加湿用に水を入れた棚を取り外し、湿度を60〜80%まで下げた状態で60日間保存して、魚肉を熟成(発酵)させた。
図2は熟成(発酵)状態を示したものであり、塩液に漬けた後カビ付けしたものは、40日経過した時点で、塩・糖液に漬けた後カビ付けしたものは、30日経過した時点で魚肉の全窒素量(T−N)に対する水溶性窒素量(WS−N)の割合が有意に増加し、その熟成効果が確認された。
[実施例3]
[実施例1]において設定温度6℃で7日間保存したサンプルについて、保存庫の庫内から加湿用に水を入れた棚を取り外し、湿度を70%に設定した状態で21日間保存して、魚肉を熟成(発酵)させた。その後、保存庫から取り出してスライスしたところ、図3に示す熟成魚肉(乾燥区)を得た。
魚肉中の水分量は、図4に示すように、約60%になっており、生ハムのような食感の半生であり、独特な香味と旨味が引き出されていた。また、赤身魚肉のため、乾燥により魚肉中水分量が減少することで前処理工程(塩漬け)によって失われた赤色の肉色が戻り、綺麗な赤色を呈していた。モニターからは、高級珍味であり、洋酒と一緒に食してみたいとの感想が寄せられていた。
また、[実施例1]において設定温度6℃で7日間保存したサンプルについて、保存庫の庫内から加湿用に入れた水の量を減らして、湿度を90%に設定した状態で21日間保存して、魚肉を熟成(発酵)させた。その後、保存庫から取り出してスライスしたところ、図3に示す熟成魚肉(乾燥抑制区)を得た。
魚肉中の水分量は、図4に示すように、約65%になっており、生の魚肉に近い食感であった。
[実施例4]
[実施例1]において白カビと、白カビに代えて青カビを使用した以外は同設定温度6℃で7日間保存したサンプルと同様に処理して、別のサンプル(青カビ)を得た。
図5は、これらの比較写真であり、カビの種類を問わずに、いずれも魚体の全面を食用カビで覆わせることに成功した。
[実施例5]
[実施例1]において設定温度6℃で7日間保存したサンプル(キハダ)と同様に、メバチ、クロカジキ、カツオ、マアジ、ニジマスについて処理しても、図6〜図8に示すように、それぞれ熟成魚肉に仕上げることに成功した。
本発明の熟成魚肉の製造方法は、水産加工食品の製造業で実施される技術である。温度や湿度の調整も幅をもってできるので、既存の低温乾燥庫を用いて、安定的に品質の良い熟成魚肉を製造できる。

Claims (2)

  1. 生魚肉を塩漬けした後に水切りする前処理工程と、その後白カビまたは青カビを接種した上で温度が0〜10℃で、湿度が80%以上100%未満の魚肉専用雰囲気に所定期間おいて前記白カビまたは青カビで前記生魚肉の全面を覆わせるカビ付け工程と、その後熟成させる熟成工程とを有して成り、
    熟成工程では、湿度が60〜80%の雰囲気下に魚肉中水分量が40〜60%になるまでおくことを特徴とする熟成魚肉の製造方法。
  2. 請求項1に記載した熟成魚肉の製造方法において、
    前処理工程における水切りの前に、糖液に漬ける糖分付与工程を加えることを特徴とする製造方法。
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