以下に図面を用いて本開示に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、乗りかごの平面形状及び天井部の平面形状についていずれも正方形として述べるが、これは説明のための例示である。簡易天井本体部と取付金具とで構成される簡易天井において、簡易天井本体部に対し取付金具がスライドする構成を有すれば、正方形以外の平面形状でもよい。例えば、エレベーターの仕様等で、平面形状が矩形の乗りかご及び天井部でもよい。場合によっては、正方形、矩形以外の平面形状を有する乗りかご及び天井部でもよい。以下では、かご室の側壁部の頂部において天井部に向い合うフランジ部の張出方向をかご室の外側方向として述べる。これは説明のための例示であって、取付金具に簡易天井本体部が押し込まれた状態の押込状態簡易天井、あるいは簡易天井本体部が、かご室で上下方向に移動可能であれば、側壁部の頂部におけるフランジ部の張出方向はかご室の内側方向でもよい。
以下では、乗りかごの天井に取り付けられる要素として照明装置を述べ、それ以外の要素については特に述べないが、これは単に、説明の便宜のためである。天井の上方側のかご上には、例えば、照明制御装置、換気扇、空調装置、かご扉開閉機構、ガイドレールとの案内機構、作業領域を囲む安全柵等の要素が配置されてよい。また、以下では、簡易天井における取付金具として、2つで一対をなす左右取付金具と、2つで一対をなす前後取付金具の合計で4つの取付金具を用いるものとするが、これは説明のための例示である。簡易天井の剛性等のエレベーターの仕様によっては、2つで一対をなす左右取付金具、または、2つで一対をなす前後取付金具のいずれか一方の合計で2つの取付金具を用いるものとしてよい。
以下で述べる形状、材質、締結部材の数等は、説明のための例示であって、エレベーターかご室の簡易天井の仕様等に合わせ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、エレベーターかご室の簡易天井50の取付対象となる従来天井40を有する乗りかご9を示す図である。図2は、エレベーターかご室の簡易天井50を有する乗りかご10を示す図である。以下では、特に断らない限り、エレベーターかご室の従来天井40を、従来天井40と呼び、エレベーターかご室の簡易天井50を、簡易天井50と呼ぶ。図1、図2の各図において、(a)は、上面図であり、(b)は、(a)のB−B線に沿った断面図である。
乗りかご9,10は、図示しない建物を縦方向に縦貫する昇降路内を昇降する乗客運搬装置であるエレベーターにおいて、乗客を乗せるかご部分である。乗りかご9,10は、乗客を収容するかご室体12、かご室体12を下方側から支持する下枠14、かご室体12の頂部に配置される天井部30を含む。乗りかご9における天井部30は、従来天井40であり、乗りかご10における天井部30は、従来天井40と簡易天井50との複合体である。
図1,2において、直交する上下方向と奥行方向と幅方向とを示す。上下方向は、昇降路が延びる方向であり、乗りかご9,10の昇降方向である。建物の上層階に向かう方向が上方側で、下層階に向かう方向が下方側である。上下方向に沿った上下寸法はHを付して示す。奥行方向は、建物の乗場から昇降路へ向かう方向に平行な方向であり、乗りかご9,10においてかご扉が設けられる乗場方向を前側、乗場方向と反対方向を後側と呼ぶ。奥行方向に沿った奥行寸法はLを付して示す。幅方向は、建物の乗場から乗りかご9,10を見て、左方が左側方向で、右方が右側方向である。幅方向に沿った幅寸法はWを付して示す。以下の図においても同様である。
かご室体12は、床部16、側壁部18を含んで構成される。床部16、側壁部18、天井部30とで囲まれた空間が乗客を収容するかご室20の室内空間である。側壁部18は、かご室20の室内空間を囲む複数のパネル体で構成され、頂部外周部において外側に張り出すフランジ部22を備える。フランジ部22と天井部30とは、複数の締結部材で締結される。図1、図2の例では、締結部材の数は12個である。締結部材としては、締結ボルト32及びナット34を用いる。締結ボルト32は、六角形の頭部31と、先端側におねじ部を備える軸部33とを有する。おねじ部の山径である外径をd33と示す。ナット34は、締結ボルト32のおねじ部に噛合うめねじ部を有する。天井部30の左端から測った締結ボルト32の配置位置、及び、右端から測った締結ボルト32の配置位置は、それぞれW32である。天井部30の前端から測った締結ボルト32の配置位置、及び、後端から測った締結ボルト32の配置位置は、それぞれL32である。ここで、W32=L32である。
乗りかご9,10において、かご室20の平面形状は正方形である。すなわち、かご室20の奥行寸法をL20、幅寸法をW20とすると、L20=W20である。フランジ部22は、かご室20から外側に外周方向に沿って一定の張出量で張り出す。乗りかご9,10における平面形状は、正方形である。すなわち、乗りかご9,10における平面形状の奥行寸法は、奥行方向に沿ったフランジ部22の張出量をL22として、(L20+L22+L22)である。同様に、乗りかご9,10における平面形状の幅寸法は、幅方向に沿ったフランジ部22の張出量をW22として、(W20+W22+W22)である。L20=W20であり、L22=W22であるので、(L20+L22+L22)=(W20+W22+W22)である。
従来天井40は、金属板の外周辺を枠状に折り曲げて剛性を高めたパネル板で構成される。金属板としては、鉄板が用いられる。外周辺を枠状に折り曲げる手順の一例は、素材鉄板を正方形に成形し、その四辺のそれぞれを上方側に折り曲げ、折り曲げた部分について所定のパネル高さの位置で、正方形の内側にさらに折り曲げ、枠状に所定の幅のフランジ部分42を成形する。従来天井40の最上面のフランジ部分42の所定の幅寸法は、乗りかご9の側壁部18の頂部におけるフランジ部22の張出量である(W22=L22)と同じでよい。
かご室20に向い合う従来天井40のパネル板の下面には、かご室20の天井の意匠を高めるために、適当な化粧板が張られる。従来天井40は、平面形状の中央部にかご室20用の照明装置44を有する。照明装置44は、従来天井40のパネル板に照明光用の開口部を設け、適当な電気的絶縁材を介して取り付けられる。図1(b)において、かご室20において床部16から従来天井40の下面までの上下寸法である天井高さをH20と示す。従来天井40の下面は、フランジ部22の上面で支持されるので、乗りかご9における天井高さH20は、床部16からフランジ部22の上面までの上下寸法である。
図2に示す乗りかご10においては、側壁部18の頂部外周部におけるフランジ部22と、従来天井40との間に、簡易天井50が挟まれて、これらは、複数の締結部材で互いに固定される。締結部材は、図1の従来天井40をフランジ部22に締結したものと同じである。乗りかご9,10において締結部材を共用するために、締結ボルト32のおねじ部を含む軸部33は、簡易天井50を挟む場合に適した長さに設定される。
[第1の実施形態]簡易天井50は、簡易天井本体部60と、簡易天井本体部60を保持しながら簡易天井本体部60の端部から外側に張り出す4つの取付金具72,74,76,78を含んで構成される。4つの取付金具72,74,76,78は、簡易天井本体部60に対しスライド可能である。このため、簡易天井本体部60と4つの取付金具72,74,76,78の相対関係によって、簡易天井50は3つの状態を取り得る。1つ目の状態は、簡易天井本体部60と4つの取付金具72,74,76,78とが空間的に分離している状態で、これを、分離状態簡易天井52と呼ぶ。2つ目の状態は、4つの取付金具72,74,76,78に簡易天井本体部60が押し込まれ、簡易天井50の平面形状として最も小さくなった状態で、これを押込状態簡易天井54と呼ぶ。3つ目の状態は、4つの取付金具72,74,76,78が簡易天井本体部60を保持しながら簡易天井本体部60の両端側から外側に張り出している状態で、これを張出状態簡易天井56と呼ぶ。
乗りかご10において、フランジ部22と従来天井40との間に挟まれている簡易天井50は、4つの取付金具72,74,76,78が簡易天井本体部60を保持しながら簡易天井本体部60の両端側から外側に張り出している張出状態簡易天井56である。張出状態簡易天井56においては、4つの取付金具72,74,76,78が簡易天井本体部60から張り出している張出部分がフランジ部22の上面に配置される。したがって、乗りかご10における簡易天井50の天井高さは、かご室20における床部16からフランジ部22の上面までの上下寸法となり、乗りかご9における天井高さH20と同じである。
図2(b)に、分離状態簡易天井52と押込状態簡易天井54を参考として二点鎖線で示す。分離状態簡易天井52において、簡易天井本体部60は、かご室20内を上下方向に移動可能な大きさを有する。また、押込状態簡易天井54も、かご室20内を上下方向に移動可能な大きさを有する。
以下において、簡易天井50の3つの状態である分離状態簡易天井52、押込状態簡易天井54、及び、張出状態簡易天井56の構成について、図3から図6を用いて詳細に説明する。
図3は、分離状態簡易天井52の構成図である。簡易天井50は、簡易天井本体部60と、4つの取付金具72,74,76,78で構成されるが、分離状態簡易天井52は、これらが互いに空間的に分離した状態である。図3(a)は、下面図であり、(b)は、(a)におけるB−B線に沿った断面図であり、(c)は、(a)におけるC−C線に沿った断面図である。
簡易天井本体部60は、従来天井40と同様に、金属板の外周辺を枠状に折り曲げて剛性を高めたパネル板で構成される。金属板としては、鉄板が用いられる。外周辺を枠状に折り曲げる手順の一例は、素材鉄板を正方形に成形し、その四辺のそれぞれを上方側に折り曲げ、折り曲げた部分について所定のパネル高さの位置で、正方形の内側にさらに折り曲げ、枠状に所定の幅のフランジ部分61を成形する。簡易天井本体部60の最上面となるフランジ部分61の所定の幅寸法は、取付金具72,74,76,78がスライドするのに適した大きさに設定される。簡易天井本体部60の幅寸法W60は、奥行寸法L60と同じである。簡易天井本体部60のパネル板の板厚をt60、簡易天井本体部60の上下方向の上下寸法をH60と示す。
簡易天井本体部60は、2つの部分天井部62,64に分割される。2つの部分天井部62,64もパネル板で構成される。図3の例では、簡易天井本体部60の奥行方向に沿った中心線であるC−C線を挟んで、左側の部分天井部62と右側の部分天井部64に分割される。乗りかご10に簡易天井50を取付ける方法については後述するが、押込状態簡易天井54または簡易天井本体部60をかご室20で持ち上げる作業が行われる。簡易天井本体部60を2つに分割することで、押込状態簡易天井54または簡易天井本体部60を持ち上げる作業を2回に分けて行うことができ、作業員の負荷が軽減される。
例えば、簡易天井本体部60を持ち上げる作業の場合、作業員は、部分天井部62を持ち上げて所定の取付作業を行い、次に、部分天井部64を持ち上げて所定の取付作業を行う。その後に部分天井部62と部分天井部64を結合する作業を行って、簡易天井本体部60を一体化する。2つの部分天井部62,64を結合する方法としては、ボルトとナットを用いた締結手段を用いる。例えば、パネル板である部分天井部62,64のC−C線上で向い合う側壁をボルトとナットで締結して一体化し、1つの簡易天井本体部60とする。なお、簡易天井本体部60の総質量が作業員一人で容易に持ち上げる程度である場合には、簡易天井本体部60を分割する必要はない。押込状態簡易天井54の場合も同様である。
かご室20に向い合う簡易天井本体部60のパネル板の下面には、かご室20の天井の意匠を高めるために、適当な化粧板が張られる。簡易天井本体部60は、下面側に照明装置65を備える。従来天井40から簡易天井50へのモダニゼーションに伴って、例えば、従来天井40の照明装置44が1つのボックス型の蛍光灯方式であったのが、簡易天井50の照明装置65は複数の照明ブロックに分けられたLED(Light Emitting Device)方式に変更される。これは説明のための例示であって、LED以外の照明方式でもよい。図3の例では、照明装置65は、簡易天井本体部60の中央部に4つの照明ブロック66,67,68,69に分けて配置される。
4つの照明ブロック66,67,68,69は、簡易天井本体部60のパネル板に照明光用の開口部を設け、適当な電気的絶縁材を介して取り付けられる。照明装置65の4つの照明ブロック66,67,68,69からの配線70は、簡易天井本体部60のパネル板の上面上に適当に配置されて右側に沿って延び、パネル板の右端壁に設けられた図示しない引出穴から簡易天井本体部60の外側に引き出される。後述する押込状態簡易天井54、張出状態簡易天井56では、簡易天井本体部60の右端側には取付金具74がスライド可能として配置されるので、取付金具74には、配線70を通す引出穴71が設けられる。配線70は引出穴71から簡易天井50の外側に出て、図示しない照明制御装置に接続される。照明制御装置は、かご上に設置される。照明ブロックの数は説明のための例示であって、4以外の照明ブロック数でもよい。
照明装置65の4つの照明ブロック66,67,68,69は、簡易天井本体部60のパネル板の下面から下方側に突出してもよいが、突出する場合の突出量は、乗りかご10の天井高さH20を守るために小さい値に制限される。すなわち、簡易天井本体部60において下面側に突出した照明装置65の下面位置は、床部16から測って、従来天井40を有する乗りかご9における天井高さH20と同じに設定される。これによって、図2(b)に示される簡易天井50を有する乗りかご10における天井高さは、図1(b)に示される乗りかご9における天井高さH20と同じになる。
分離状態簡易天井52は、4つの取付金具72,74,76,78を備える。後述する押込状態簡易天井54、張出状態簡易天井56において、取付金具72は、簡易天井本体部60の左端側にスライドして配置され、取付金具74は、簡易天井本体部60の右端側にスライドして配置される。また、取付金具76は、簡易天井本体部60の前端側にスライドして配置され、取付金具78は、簡易天井本体部60の後端側にスライドして配置される。4つの取付金具72,74,76,78を用いることで、簡易天井本体部60に対して前後左右の4方向を保持でき、乗りかご10のフランジ部22と従来天井40との間に簡易天井50をしっかりと固定できる。
簡易天井50の剛性が十分大きいときは、4つよりも少ない数の取付金具で済む場合がある。その場合でも、簡易天井本体部60に対して向かい合う一方端側と他方端側とで保持することが好ましい。簡易天井本体部60の一方端側でスライド可能な取付金具を一方取付金具と呼び、他方端側でスライド可能な取付金具を他方取付金具と呼ぶと、一方取付金具と他方取付金具の2つで一対をなす取付金具で簡易天井本体部60を保持することがよい。簡易天井本体部60の両端側としては、幅方向の両端側である左右端側と、奥行方向の両端側である前後端側とがある。そこで、簡易天井本体部60の幅方向の左右端側にスライド可能な2つの取付金具を、2つで一対をなす左右取付金具と呼び、簡易天井本体部60の奥行方向の前後端側にスライド可能な2つの取付金具を、2つで一対をなす前後取付金具と呼ぶ。4つよりも少ない数の取付金具を用いる場合は、2つで一対をなす左右取付金具、または2つで一対をなす前後取付金具を用いることが好ましい。
図3において、2つで一対をなす左右取付金具は、簡易天井本体部60の幅方向の一方端を左端、他方端を右端として、左取付金具72と右取付金具74とで構成される。同様に、2つで一対をなす前後取付金具は、簡易天井本体部60の奥行方向の一方端を前端、他方端を後端として、前取付金具76と後取付金具78とで構成される。
一対をなす左右取付金具72,74は、図3においてC−C線に対し対称に配置され、形状としては同じであるので、右取付金具74について主に説明し、左取付金具72については右取付金具74と異なる箇所を中心に述べる。
右取付金具74は、簡易天井本体部60の板厚t60に比較して薄い板厚t74を有する金属板を用い、断面形状でコの字形状に折り曲げ形成した部材である。図3(b)に示すように、右取付金具74は、上板部90、上板部90と所定の間隔G74を空けて配置された下板部92、及び上板部90の一方端である右端と下板部92の一方端である右端とを一体化して接続する縦板部94を含む。右取付金具74の他方側である左端は、上板部90の下面と下板部92の上面との間の開口部で、開口部の上下寸法である所定の間隔G74は、簡易天井本体部60の上下寸法H60よりも大きめに設定される。これによって簡易天井本体部60は、右取付金具74における上板部90の下面と下板部92の上面との間でスライド可能になる。右取付金具74の上下寸法H74は、(G74+t74+t74)である。
右取付金具74の奥行寸法L74は、簡易天井本体部60の奥行寸法L60と同じに設定される。右取付金具74の幅寸法W74は、かご室20の側壁部18の頂部外周部のフランジ部22の幅寸法W22よりも大きい寸法に設定される。これにより、右取付金具74を簡易天井本体部60に対し左側方向にスライドさせた場合に、右取付金具74は、簡易天井本体部60の右端側を保持しつつ、簡易天井本体部60の右端よりも右側に張り出すことができる。幅寸法W74、保持寸法、スライド移動量の関係の詳細については、図5において後述する。
右取付金具74は、幅方向の右端に溝開口部を有する4つの切欠溝84を有する。切欠溝84は、簡易天井50を取付ける場合において右取付金具74を幅方向に移動させる際に、天井部30の締結部材である締結ボルト32の軸部33を案内する案内溝として働く。切欠溝84の溝幅d84は、右取付金具74が幅方向に沿って移動したときに、締結ボルト32の軸部33と干渉しない寸法に設定される。すなわち、(溝幅d84)>(軸部33の外径d33)である。切欠溝84の溝長さW84は、右取付金具74における幅方向の右端部の開口部から幅方向の左側に延びる平行溝の部分の長さと、その先の{(溝幅d84)/2}の半円部の半径との和である。半円部の中心位置は、右取付金具74の右端から測って、WFである。WFは、図1(a)で述べた締結ボルト32の天井部30の右端から測った配置位置であるW32と同じ寸法に設定される。WF=W32に設定することで、簡易天井50を天井部30に配置する場合に、右取付金具74の切欠溝84の半円部の中心位置に締結ボルト32の軸部33が配置される。
左取付金具72は、右取付金具74と同様に、簡易天井本体部60の板厚t60に比較して薄い板厚t72を有する金属板を断面形状でコの字形状に折り曲げ形成した部材である。板厚t72は右取付金具74の板厚t74と同じである。コの字形状を有する左取付金具72の右端における開口部は、右取付金具74と同じ所定の間隔G74を有する。左取付金具72の上下寸法は、右取付金具74のH74と同じである。左取付金具72の奥行寸法L72は、右取付金具74の奥行寸法L74と同じである。したがって、L60=L72=L74となる。左取付金具72の幅寸法W72は、右取付金具74の幅寸法W74と同じである。左取付金具72は、幅方向の左端に溝開口部を有する4つの切欠溝82を有する。切欠溝82の溝幅は、右取付金具74の切欠溝84の溝幅d84と同じである。切欠溝82の溝長さL82は、右取付金具74の切欠溝84の溝長さW84と同じである。切欠溝82の半円部の中心位置は、左取付金具72の左端から測ってWFである。右取付金具74には、照明装置65からの配線70を通す引出穴71を有するが、左取付金具72には配線70を通す引出穴は設けられない。これは、説明のための例示であって、照明装置65からの配線70を簡易天井本体部60のパネル板上で左側に向かって配置し、左取付金具72に配線70を通す引出穴71を設けてもよい。
一対をなす前後取付金具76,78は、図3においてB−B線に対し対称に配置され、形状としては同じであるので、後取付金具78について主に説明し、前取付金具76については、簡単に述べる。
後取付金具78は、簡易天井本体部60の板厚t60に比較して薄い板厚t78を有する金属板を用い、断面形状でコの字形状に折り曲げ形成した部材である。図3(c)に示すように、後取付金具78は、上板部100、上板部100と所定の間隔G78を空けて配置された下板部102、及び上板部100の一方端である後端と下板部102の一方端である後端とを一体化して接続する縦板部104を含む。後取付金具78の他方端である前端は、上板部100の下面と下板部102の上面との間の開口部で、開口部の上下寸法である所定の間隔G78は、簡易天井本体部60の上下寸法H60よりも大きめに設定される。これによって簡易天井本体部60は、後取付金具78の上板部100の下面と下板部102の上面との間でスライド可能になる。後取付金具78の上下寸法H78は、(G78+t78+t78)である。G78はG74と同じに設定され、板厚t78は、板厚t74と同じに設定されるので、後取付金具78の上下寸法H78は、右取付金具74の上下寸法H74と同じである。
後取付金具78の幅寸法W78は、簡易天井本体部60の幅寸法W60よりも短く設定される。W78の設定については、押込状態簡易天井54に関連させて後述する。後取付金具78の奥行寸法L78は、かご室20の側壁部18の頂部外周部のフランジ部22の奥行寸法L22よりも大きい寸法に設定される。これにより、後取付金具78を簡易天井本体部60に対し奥行方向の前側にスライドさせた場合に、後取付金具78は、簡易天井本体部60の後端側を保持しつつ、簡易天井本体部60の後端よりも後側に張り出すことができる。この働きは、右取付金具74幅方向の左側にスライドさせる働きと同じであるので、後取付金具78の奥行寸法L78は、右取付金具74の幅寸法W74と同じに設定される。
後取付金具78は、奥行方向の後端に溝開口部を有する2つの切欠溝88を有する。切欠溝88は、簡易天井50を取付ける場合において後取付金具78を奥行方向に移動させる際に、天井部30の締結部材である締結ボルト32の軸部33を案内する案内溝として働く。この働きは、右取付金具74で述べた働きと同じであるので、切欠溝88の溝幅d88は、右取付金具74の切欠溝84の溝幅d84と同じであり、切欠溝88の溝長さは、右取付金具74の切欠溝84の溝長さW84と同じである。切欠溝88の半円部の中心位置は、後取付金具78の後端から測って、LFである。LFは、図1(a)で述べた天井部30の後端から測った締結ボルト32の配置位置であるL32と同じ寸法に設定される。LF=L32に設定することで、簡易天井50を天井部30に配置する場合に、後取付金具78の切欠溝88の半円部の中心位置に締結ボルト32の軸部33が配置される。L32=W32であるので、LF=WFである。
前取付金具76は、簡易天井本体部60の板厚t60に比較して薄い板厚t76を有する金属板を用い、断面形状でコの字形状に折り曲げ形成した部材であり、形状としては後取付金具78と同じである。すなわち、板厚t76は、後取付金具78の板厚t78と同じで、前取付金具76の幅寸法W76は、後取付金具78の幅寸法W78と同じで、前取付金具76の奥行寸法L76は、後取付金具78の奥行寸法L78と同じである。前取付金具76は、奥行方向の前端に溝開口部を有する2つの切欠溝86を有する。前取付金具76の前端から測った切欠溝86の半円部の中心位置は、後取付金具78と同じLFである。前取付金具76についてのこれ以上の詳細な説明は省略する。
図4は、押込状態簡易天井54を示す図である。簡易天井50は、簡易天井本体部60と、2つで一対の左右取付金具、及び、2つで一対の前後取付金具の合計4つの取付金具で構成される。押込状態簡易天井54は、左右取付金具について述べれば、左取付金具72をスライドさせてその縦板部94を簡易天井本体部60の左端に当接させ、右取付金具74をスライドさせてその縦板部94を簡易天井本体部60の右端に当接させた状態である。また、前後取付金具について述べると、前取付金具76の縦板部104を簡易天井本体部60の前端に当接させ、後取付金具78の縦板部104を簡易天井本体部60の後端に当接させた状態である。押込状態簡易天井54は、簡易天井50の3つの状態の内で、平面形状が最も小さくなる状態である。図4(a)は、下面図であり、(b)は、(a)におけるB−B線に沿った断面図であり、(c)は、(a)におけるC−C線に沿った断面図である。
図4(b)に示すように、押込状態簡易天井54の幅寸法W54は、{(簡易天井本体部60の幅寸法W60)+(左取付金具72の板厚t72)+(右取付金具74の板厚t74)}である。また、図4(c)に示すように、押込状態簡易天井54の奥行寸法L54は、{(簡易天井本体部60の奥行寸法L60)+(前取付金具76の板厚t76)+(後取付金具78の板厚t78)}である。板厚について、t72=t74=t76=t78であるので、押込状態簡易天井54の幅寸法W54は奥行寸法L54と同じである。押込状態簡易天井54の上下寸法H64は{(簡易天井本体部60の上下寸法H60)+(板厚t72)+(板厚t74)}である。左取付金具72の上下寸法H72、右取付金具74の上下寸法H74、前取付金具76の上下寸法H76、後取付金具78の上下寸法H78は、H64と同じである。
押込状態簡易天井54が、簡易天井本体部60に対し、幅寸法で(t72+t72)だけ大きくて済み、奥行寸法で(t72+t72)だけ大きくて済むためには、図4(a)に示す配置関係が必要である。すなわち、前取付金具76の幅寸法W76、及び、後取付金具78の幅寸法W78は、簡易天井本体部60の幅寸法W60よりも短く設定される。図3で述べたように、W76=W78である。そして、図4(a)に示すように、押込状態簡易天井54の幅寸法W64は、[(左取付金具72の幅寸法W72)+(右取付金具74の幅寸法W74)+(W76またはW78)]よりも、わずかに大きい。その差は、左取付金具72、右取付金具74、前取付金具76、後取付金具78をそれぞれ簡易天井本体部60に対してスライドさせた場合に、互いに干渉せずに押込状態簡易天井54にするための余裕寸法である。一例を挙げると、余裕寸法は数mmである。したがって、前取付金具76の幅寸法W76、及び、後取付金具78の幅寸法W78は、[W64−(W72+W74)−(余裕寸法)]として求められる大きさに設定される。
簡易天井本体部60に照明装置65を設ける場合に、照明装置65は簡易天井本体部60のパネル板の下面から下方側に突出してもよいが、突出させる場合は、スライドする4つの取付金具72,74,76,78と干渉しないようにする必要がある。4つの取付金具72,74,76,78の簡易天井本体部60に対するスライド移動量が最大になる状態は、押込状態簡易天井54の状態である。したがって、押込状態簡易天井54の平面図において、4つの取付金具72,74,76,78に囲まれた領域に、照明装置65の4つの照明ブロック66,67,68,69のすべてを配置すればよい。その意味で、押込状態簡易天井54の平面図において、4つの取付金具72,74,76,78に囲まれた領域は、簡易天井本体部60のパネル板の下面から下方側に突出する部分を有する照明装置65の配置領域である。
このように、押込状態簡易天井54において、4つの取付金具72,74,76,78に囲まれた領域に照明装置65を配置することで、照明装置65と4つの取付金具72,74,76,78との干渉問題は生じない。これに代えて、簡易天井本体部60に対してスライド可能な取付金具に照明装置65を一体化して設けてもよい。照明装置65が少なくとも1つの照明ブロックを含む場合には、すべての照明ブロックを、左取付金具72、右取付金具74、前取付金具76または後取付金具78のいずれかに一体化して設ければよい。この構成によっても照明装置65と4つの取付金具72,74,76,78との干渉問題は生じない。
図5は、張出状態簡易天井56を示す図である。張出状態簡易天井56の状態は、分離状態簡易天井52と押込状態簡易天井54との中間の状態である。すなわち、4つの取付金具72,74,76,78は、簡易天井本体部60の左右端側及び前後端側を保持しながら、簡易天井本体部60の左右端及び前後端から外側に張り出した状態である。図5(a)は、下面図であり、(b)は、(a)におけるB−B線に沿った断面図であり、(c)は、(a)におけるC−C線に沿った断面図である。
広義では、張出状態簡易天井56の幅寸法と奥行寸法は、4つの取付金具72,74,76,78が簡易天井本体部60の左右端及び前後端から外れる限度以内であれば伸ばすことが可能である。ここで、乗りかご10に配置される場合には、従来天井40の幅寸法と奥行寸法に合わせる。すなわち、図2を参照して、張出状態簡易天井56の幅寸法W56は、従来天井40の幅寸法W40=(W20+W22+W22)に設定される。張出状態簡易天井56の奥行寸法L56は、従来天井40の奥行寸法L40=(L20+L22+L22)と同じに設定される。W20=L20,W22=L22であるので、張出状態簡易天井56の幅寸法W56と奥行寸法L56は同じである。
図5(b)には、簡易天井本体部60の左端部に対し左取付金具72を左側にスライドさせ、右端部に対し右取付金具74を右側にスライドさせて、張出状態簡易天井56の幅寸法W56を(W20+W22+W22)とした状態が示される。図5(b)において、左取付金具72のスライド移動量M72と右取付金具74のスライド移動量M74を示す。スライド移動量M72,M74は、押込状態簡易天井54における左取付金具72及び右取付金具74の状態からの幅方向の移動量として計算する。スライド移動量M72,M74は、次のようにして求められる。
簡易天井本体部60の幅寸法W60はかご室20を上下方向に移動可能であるので、かご室20の幅寸法W20と簡易天井本体部60の幅寸法W60の差を(SP0+SP0)とする。SP0は、簡易天井本体部60をかご室20に配置した場合に、かご室20の側壁部18の内壁面と簡易天井本体部60の左右端部との間に生じる隙間である(なお、図2参照)。すなわち、W20=(W60+SP0+SP0)である。したがって、張出状態簡易天井56の幅寸法W56は、W56=(W20+W22+W22)=[W60+(W22+SP0)+(W22+SP0)]となる。図5(b)に示すように、(W22+S0)=(M72+t72)=(M74+t74)である。これらから、W56=W20+W22+W22)={W60+(M72+t72)+(M74+t74)}となる。この関係式から、W20,W22,W60,t72=t74を予め設定することで、スライド移動量M72=M74を求めることができる。
M72=M74が決まれば、図5(b)に示すように、左取付金具72の幅寸法W72は、W72=(C72+M72+t72)から求められ、右取付金具74の幅寸法W74は、W74=(C74+M74+t74)から求められる。ここで、C72は、簡易天井本体部60が左端部で左取付金具72によって保持される幅寸法であり、C74は、簡易天井本体部60が右端部で右取付金具74によって保持される幅寸法である。C72とC74は、簡易天井本体部60を両端部で保持したときの撓み量に関係し、簡易天井本体部60の大きさや剛性によって予め定められる。なお、保持の対称性のために、C72=C74に設定される。(C72=C74)の大きさを予め設定することで、W72,W74が求められる。このようにして、左取付金具72のスライド移動量M72,右取付金具74のスライド移動量M74,左取付金具72の幅寸法W72、右取付金具74の幅寸法W74の設定が行われる。
図5(c)には、簡易天井本体部60に対し前取付金具76を前側にスライドさせ、後取付金具78を後側にスライドさせて、張出状態簡易天井56の奥行寸法L56を(L20+L22+L22)とした状態が示される。図5(c)において、前取付金具76のスライド移動量M76と後取付金具78のスライド移動量M78とを示す。また、簡易天井本体部60が前端部で前取付金具76によって保持される幅寸法C76と、簡易天井本体部60が後端部で後取付金具78によって保持される幅寸法C78を示す。保持の対称性のために、C76=C78に設定される。
前取付金具76のスライド移動量M76と後取付金具78のスライド移動量M78、前取付金具76の奥行寸法L76と後取付金具78の奥行寸法L78も、図5(b)で述べた算出方法を用いて、同様に決定と設定を行うことができる。L76=L78は、W72=W74と同じであり、t76=t78は、t72=t74と同じであるので、M76=M78は、M72=M74と同じになり、C76=C78は、C72=C74と同じになる。
簡易天井本体部60に設ける照明装置65について簡易天井本体部60のパネル板の下面から下方側に突出させるには、押込状態簡易天井54において4つの取付金具72,74,76,78に囲まれた領域に照明装置65を配置する必要がある。照明装置65が簡易天井本体部60のパネル板の下面から下方側に突出しない場合には、押込状態簡易天井54において照明装置65と4つの取付金具72,74,76,78の間の干渉問題が生じない。その場合でも、張出状態簡易天井56において照明装置65が4つの取付金具72,74,76,78の背後に隠れると十分な照明が行われない。したがって、照明装置65が簡易天井本体部60のパネル板の下面から下方側に突出しない場合でも、張出状態簡易天井56において、4つの取付金具72,74,76,78に囲まれた領域内に照明装置65を配置する必要がある。
次に、第1の実施形態の簡易天井50について、エレベーターかご室の簡易天井取付方法を述べる。エレベーターかご室の簡易天井取付方法は、エレベーターかご室のモダニゼーションにおいて、かご室20の天井の改修を行う方法であるが、チェーン等を用いる天井持上げ及び撤去作業を行わずにすむ方法である。図6は、エレベーターかご室の簡易天井取付方法の手順を示すフローチャートである。この方法では、まず、かご室20の頂部外周部のフランジ部22と従来天井40を固定している締結部材を緩める(S10)。締結部材を緩めるにあたっては、従来天井40を取り外さない程度とする。次に、従来天井40を上方側に押し上げる(S20)。押し上げによってフランジ部22と従来天井40との間に隙間が形成されるので、その隙間に簡易天井50を配置し(S30)、緩めた締結部材を締め付けて(S40)、簡易天井50をフランジ部22と従来天井40とで挟んで固定する。
図7は、さらに詳細な手順を示すフローチャートである。図8,9,11,12は、図7の手順の内容を示す乗りかご10の断面図である。図10は、図9のX方向から上方側を見た図を用いて、かご室20、押込状態簡易天井54、及び、締結ボルト32との関係を示す図である。
簡易天井50を取付ける対象は、図1で述べた従来天井40を有する乗りかご9である。図7において最初の手順は、図6におけるS10の締結部材緩め工程である。ここでは、乗りかご9のかご室20を形成する側壁部18の頂部外周部におけるフランジ部22と従来天井40とを締結している締結部材を緩めて(S10)、従来天井40を上方側に移動可能にする。この工程の手順は、乗りかご9のかご上で作業員が行う。図4で述べたように、締結部材としての締結ボルト32とナット34はそれぞれ12個あるので、これらをすべて緩める。締結ボルト32を緩める際に、おねじ部の先端部がナット34から外れないようにする。すなわち、締結ボルト32のおねじ部の先端部をナット34に噛み合わせた状態で緩めることで、フランジ部22に対し、従来天井40を取り外さない状態のまま、上方側に移動可能にする。
図8は、図1(b)と同様の断面図を用い、締結ボルト32をナット34に対し緩めた状態を示す図である。従来天井40は、フランジ部22の上に自重で載っている状態である。かご上の作業員の図示は省略した。以下では、従来天井40が上方側に移動可能になった乗りかご9を、乗りかご10と呼ぶ。
図6におけるS20の従来天井押上工程としては、まず、押込状態簡易天井54を準備し、乗りかご10の前側のかご扉からかご室20内へ搬入する(S21)。図5で述べたように、押込状態簡易天井54の幅寸法W54は、かご室20の幅寸法W20よりも小さく、押込状態簡易天井54の奥行寸法L54は、かご室20の奥行寸法L20よりも小さい。そこで、作業員は、かご室20の前側のかご扉から押込状態簡易天井54をかご室20に搬入し、搬入された押込状態簡易天井54を上方側に持ち上げる(S22)。この工程の作業は、かご室20内において行う。図9は、作業員8が、かご室20に搬入した押込状態簡易天井54を、かご室20内において上方側に押し上げる工程を示す。図9では作業員8は一人であるが、二人以上で持ち上げてもよい。また、簡易天井本体部60を二分割した部分天井部62,64を用いて押込状態簡易天井54を二分割し、二回に分けて以後の作業を行うこともできる。
図10は、図9のX方向、すなわち、かご室20内から上方側である天井側を見た図である。作業員8の図示は省略した。押込状態簡易天井54の平面形状は、図4(a)と同じである。従来天井40、かご室20、押込状態簡易天井54、及び張出状態簡易天井56の平面形状はいずれも左右前後方向について対称形であるので、以下では、幅方向の右側の部分について述べる。
押込状態簡易天井54の平面形状とかご室20の側壁部18の内壁面との間の隙間は、右取付金具74の板厚をt74として、(SP0−t74)である。右取付金具74の切欠溝84の半円部の中心位置は、右取付金具74の右端から測ってWFの位置であり、天井部30における締結ボルト32の配置位置は、従来天井40の右端から測ってW32であり、WF=W32に設定される。これによって、右取付金具74の右端を従来天井40の右端に一致するように右取付金具74を右側にスライドさせて配置した場合に、締結ボルト32の軸部33が切欠溝84に案内されて、切欠溝84の半円部の中心位置に配置される。従来天井40、かご室20、押込状態簡易天井54、及び張出状態簡易天井56の平面形状はいずれも左右前後方向について対称形である。したがって、切欠溝82,86,88のそれぞれの半円部の中心位置と締結ボルト32の配置位置との関係は、切欠溝84の場合と同様である。
図7に戻り、押込状態簡易天井54を上方側に持ち上げて、その上面が従来天井40の下面に接触すると、押込状態簡易天井54を介して従来天井40を上方に押し上げる(S23)。この工程の作業は、S22に引き続き、かご室20内において行う。S10で述べたように、締結ボルト32の軸部33のおねじ部は先端部でナット34に噛み合った状態であるので、ナット34がフランジ部22の下面に当接するまで、従来天井40を持ち上げることができる。締結ボルト32のおねじ部の長さを適切に設定し、S10における緩め量を適切にすることで、フランジ部22の上面からの従来天井40の押上量を、押込状態簡易天井54の上下寸法H54より大きめにできる。
図10は、作業員8が押込状態簡易天井54を介して従来天井40を上方側に押し上げる工程を示す図である。従来天井40の天井高さH20は、作業員8の背丈よりも高いので、作業員8は適当な作業台6を用いる。従来天井40の押し上げによって、フランジ部22の上面と従来天井40の下面との間に形成された隙間SP1は、押込状態簡易天井54の上下寸法H54より大きめである。
図6におけるS30の簡易天井の配置工程としては、まず、2つで一対をなす左右取付金具である左取付金具72と右取付金具74、2つで一対をなす前後取付金具である前取付金具76と後取付金具78のそれぞれについて張出状態とする(S31)。そして、簡易天井本体部60を保持しながら、張出部分をかご室20の頂部外周部におけるフランジ部22と従来天井40との間に配置する(S32)。この工程の作業は、かご室20内及びかご上において行う。かご上の作業員の図示は省略した。図10で述べたように、フランジ部22の上面と従来天井40の下面との間に形成された隙間SP1は、押込状態簡易天井54の上下寸法H54より大きめである。これにより、押込状態簡易天井54を左右前後方向にスライドさせ、隙間SP1に入り込ませて取付金具72,74,76,78をフランジ部22と従来天井40の間に配置できる。
取付金具72,74,76,78の配置の一例を挙げると、まず、押込状態簡易天井54を、かご室20の右端における隙間SP1に入り込ませて右方向にスライドさせ、押込状態簡易天井54の右端を締結ボルト32の軸部33に突き当てる。ここでは簡易天井本体部60の右端が軸部33に突き当たるので、かご上の作業員が右取付金具74をさらに右方向に引っ張る。右取付金具74を右方向に引っ張ると、右取付金具74の切欠溝84の半円部の右端が軸部33に当たって止まる。この状態で、右取付金具74の右端が従来天井40の右端と揃う。その状態から押込状態簡易天井54を下方側に下げると従来天井40も下方に下がるので、右取付金具74がフランジ部22と従来天井40との間に挟まれた状態になる。そこで、従来天井40における右端側の締結ボルト32の1つまたは2つを締付方向に回して、右取付金具74をフランジ部22と従来天井40との間に挟んだ状態で締結ボルト32とナット34で仮止めする。
この状態で押込状態簡易天井54を前方向にスライドさせると、右取付金具74は締結ボルト32のために前方向の移動ができない状態で、押込状態簡易天井54の残りの部分が右取付金具74に保持されながら前方向に移動する。そこで、押込状態簡易天井54の前端側において、上記で述べたと同じ手順を繰り返して、前取付金具76をフランジ部22と従来天井40との間に挟んだ状態で締結ボルト32とナット34で仮止めする。次に、押込状態簡易天井54を左方向にスライドさせると、前取付金具76は締結ボルト32のために左方向の移動ができない状態で、押込状態簡易天井54の残りの部分が前取付金具76に保持されながら左方向に移動する。そこで、押込状態簡易天井54の左端側において、上記で述べたものと同じ手順を繰り返して、左取付金具72をフランジ部22と従来天井40との間に挟んだ状態で締結ボルト32とナット34で仮止めする。そして、押込状態簡易天井54を後方向にスライドさせると、左取付金具72は締結ボルト32によって後方向の移動ができない状態で、押込状態簡易天井54の残りの部分が左取付金具72に保持されながら後方向に移動する。そこで、押込状態簡易天井54の後端側において、上記で述べたものと同じ手順を繰り返して、後取付金具78をフランジ部22と従来天井40との間に挟んだ状態で締結ボルト32とナット34で仮止めする。
次に、図6におけるS40の締結部材の締め付け工程として、かご上の作業員が、4つの取付金具72,74,76,78の左右前後の端部位置が従来天井40の左右前後の端部位置と一致しているか確認する。一致していないときは位置調整を行った上で、すべての締結ボルト32をナット34に対し締め付けて固定する。これによって、フランジ部22と従来天井40の間に張出状態簡易天井56が挟まれて固定された状態の天井部30を有する乗りかご10となる。
上記第1の実施形態の構成によれば、簡易天井50は、簡易天井本体部60と、4つの取付金具72,74,76,78とを備える。そして、4つの取付金具72,74,76,78が簡易天井本体部60の左右前後端に押し込まれている押込状態簡易天井54は、かご室20を上下方向に移動可能な大きさを有する。必要であれば、簡易天井本体部60を2つに分割する等によって、作業員8が手で持ち上げ可能な質量とできるので、チェーンでの作業が不要となる。4つの取付金具72,74,76,78が簡易天井本体部60の左右前後端から張り出している張出状態簡易天井56は、押込状態簡易天井54よりも左右前後に張出部分がある。この張出部分を、かご室20の頂部外周部におけるフランジ部22と従来天井40の間に挟むことが可能である。張出状態簡易天井56をかご室20の頂部外周部におけるフランジ部22の上面に配置し、その上方側に従来天井40を配置することで、かご室20における簡易天井50の天井高さは、従来天井40における天井高さと同じH20にできる。従来天井40は取り外さないので、取り外しのためのチェーンが不要となる。このように、簡易天井50は、かご室20の天井高さを変更せずに、比較的簡単な方法でかご室20の天井を新しくできる。
[第2の実施形態]次に、第2の実施の形態を述べる。最初に、図13、図14を用いて第2の実施形態における分離状態簡易天井53と、張出状態簡易天井57の構成を述べる。その後で、これらを用いる簡易天井の取付方法について述べる。第2の実施形態では、押込状態簡易天井は用いない。
図13は、第2の実施形態における分離状態簡易天井53の構成図で、第1の実施形態における図3に対応する図である。第2実施形態においても、簡易天井50は、簡易天井本体部60と、4つの取付金具112,114,116,118で構成される。図3と異なるのは、4つの取付金具112,114,116,118であり、簡易天井本体部60は、図3の簡易天井本体部60と全く同じものである。図13は、図3(a)の平面図に対応するが、B−B線、C−C線に沿った断面図は、要素の符号を除き、図3(b),(c)全く同じ構成となるので、図13においてはこれらの断面図を省略する。
4つの取付金具112,114,116,118が図3における4つの取付金具72,74,76,78と異なるのは、切欠溝122,124,126,128の部分である。それ以外は、要素の符号が異なるのみで、図3で述べた内容と全く同じである。図13の要素の符号は、図3の符号に「+40」したものである。例えば、右取付金具114の幅寸法W114は図3の右取付金具74の幅寸法W74と同じで、奥行寸法L114は図3の右取付金具74の奥行寸法L74と同じで、板厚t114は図3の右取付金具74の板厚t74と同じである。同様に、図13の左取付金具112の各寸法は、図3の左取付金具72において対応する各寸法と同じである。図13の前取付金具116の各寸法は、図3の前取付金具76において対応する各寸法と同じであり、図13の後取付金具118の各寸法は、図3の後取付金具78において対応する各寸法と同じである。
左取付金具112の切欠溝122は、図3の左取付金具72の切欠溝82と比べ、切欠溝122の溝開口部の配置が異なる。図3の左取付金具72の切欠溝82の溝開口部は、縦板部104の側に配置されるが、切欠溝122は、左取付金具112のコの字形状の開口部側に配置される。切欠溝122の半円部の中心位置は、左取付金具112の右端から測ってWFであり、これは図3の左取付金具72の場合と同じである。同様に、右取付金具114の切欠溝124、前取付金具116の切欠溝126、後取付金具118の切欠溝128は、図3の右取付金具74の切欠溝84、前取付金具76の切欠溝86、後取付金具78の切欠溝88と、溝開口部の配置が異なる。これらについて、図3における右取付金具74の切欠溝84及び後取付金具78の切欠溝88の説明に対応させて、図13における右取付金具114の切欠溝124と、後取付金具118の切欠溝128とについて説明する。
右取付金具114は、幅方向の左端に溝開口部を有する4つの切欠溝124を有する。切欠溝124の溝幅d124は、右取付金具114が幅方向に沿ってスライド移動したときに、締結ボルト32の軸部33と干渉しない寸法に設定される。すなわち、(溝幅d124)>(軸部33の外径d33)である。切欠溝124の溝長さW124は、{(溝幅d124)/2}の半径を有する半円部から右取付金具114の左端までの長さである。{(溝幅d124)/2}の半径を有する半円部の中心位置は、右取付金具114の右端から測ってWFの位置である。この中心位置は、図3の{(溝幅d84)/2}の半径を有する半円部の中心位置と同じである。左取付金具112の切欠溝122も同様の内容であるので、詳細な説明を省略する。
後取付金具118は、奥行方向の前端に溝開口部を有する2つの切欠溝128を有する。切欠溝128の溝幅d128は、後取付金具118が奥行方向に沿ってスライド移動したときに、締結ボルト32の軸部33と干渉しない寸法に設定される。すなわち、(溝幅d128)>(軸部33の外径d33)である。切欠溝128の溝長さL128は、{(溝幅d128)/2}の半径を有する半円部から後取付金具118の奥行方向の前端までの長さである。{(溝幅d128)/2}の半径を有する半円部の中心位置は、後取付金具118の後端から測ってLFの位置である。この中心位置は、図3の{(溝幅d88)/2}の半径を有する半円部の中心位置と同じである。前取付金具116の切欠溝126も同様の内容であるので、詳細な説明を省略する。
図14は、第2の実施形態における張出状態簡易天井57の構成図で、第1の実施形態における図5に対応する図である。図14は、図5(a)の平面図に対応するが、B−B線、C−C線に沿った断面図は、要素の符号を除き、図5(b)、(c)と全く同じ構成であるので、図15においてはこれらの断面図を省略する。
第2の実施形態と第1の実施形態との相違点は、左取付金具112の切欠溝122、右取付金具114の切欠溝124、前取付金具116の切欠溝126、後取付金具118の切欠溝128のみである。張出状態簡易天井57において、これらの切欠溝122,124,126,128は、簡易天井本体部60側の端部から切欠が始まって、反対側の端部からWF=LFの位置に中心位置を有する半円部で終端する。図3の張出状態簡易天井56の場合は、切欠溝82,84,86,88は、簡易天井本体部60側とは反対側の端部から切欠が始まって、その反対側の端部からWF=LFの位置に中心位置を有する半円部で終端する。このように、半円部の配置位置は図13、図5のいずれにおいても同じであるが、半円部から切欠溝の延びる方向が図13と図5とでは互いに逆方向である。また、図13における切欠溝122,124,126,128の溝長さは、図5における切欠溝82,84,86,88の溝長さよりも長い。切欠溝122,124,126,128に関する相違点を除けば、図3で述べたスライド移動量、簡易天井本体部60が取付金具の端部で保持される長さについても、図14の張出状態簡易天井57において同様に適用できる。
以上で、第2の実施形態における分離状態簡易天井53と、張出状態簡易天井57の構成についての説明が終わる。次に、第2の実施形態におけるエレベーターかご室の簡易天井取付方法について、第1の実施の形態におけるエレベーターかご室の簡易天井取付方法との相違点を中心に述べる。図15は、第2の実施形態における簡易天井取付方法の詳細な手順を示すフローチャートである。
締結部材緩めの工程(S10)は、図7のS10、及び図8の内容と同じであるので、詳細な説明を省略する。図6におけるS20の従来天井押上工程については、図7において押込状態簡易天井54を用いるのに対し、簡易天井本体部60を用いることが相違する。押込状態簡易天井54の幅寸法W56は{(簡易天井本体部60の幅寸法W60)+(左取付金具72の板厚t72)+(右取付金具74の板厚t74)}である。また、押込状態簡易天井54の奥行寸法L54は{(簡易天井本体部60の奥行寸法L60)+(前取付金具76の板厚t76)+(後取付金具78の板厚t78)}である。したがって、押込状態簡易天井54がかご室20内を上下方向に移動可能な大きさを有する場合には、簡易天井本体部60もこれよりも小さいので、かご室20内を上下方向に移動可能である。
図15において、従来天井押上工程(S20)としては、まず、簡易天井本体部60をかご室20内に搬入する(S26)。この工程は、図7のS21において、押込状態簡易天井54を簡易天井本体部60に置き換えただけである。次に、簡易天井本体部60をかご室20内で押し上げる(S27)。この工程は、図7のS22、及び図9において、押込状態簡易天井54を簡易天井本体部60に置き換えただけである。そして、簡易天井本体部60を介して、従来天井40を上方側に押し上げる(S28)。この工程は、図7のS23、及び図10において、押込状態簡易天井54を簡易天井本体部60に置き換えただけである。S28においては、対応する図10に示されるように、かご室20の頂部外周部のフランジ部22の上面と、従来天井40の下面との間に隙間SP1が形成される。隙間SP1は、簡易天井50を構成する4つの取付金具112,114,116,118の上下寸法(H112=H114=H116=H118)よりも大きくなるように、従来天井40を押し上げる。
図6におけるS30の簡易天井の配置工程としては、最初に、かご室20の頂部外周部のフランジ部22の上面と従来天井40の下面との間に形成された隙間SP1に、4つの取付金具112,114,116,118を配置する(S36)。この工程の作業は、かご上の作業員が行う。配置の際には、押し上げている簡易天井本体部60との干渉を避けるために、4つの取付金具112,114,116,118がかご室20にはみ出さないようにする。
図16は、図10に対応する図で、S36の工程において、かご室20内から上方側である天井側を見た図である。かご室20の作業員8及びかご上の作業員の図示は省略した。かご室20内において、簡易天井本体部60の平面形状とかご室20の側壁部18の内壁面との間の隙間は、SP0である。4つの取付金具112,114,116,118は、それぞれ、フランジ部22の左右前後の各辺の上面に配置される。配置は、乗りかご10の外側から、隙間SP1にスライドして挿入する。挿入の方向は、切欠溝122,124,126,128の溝開口部が簡易天井本体部60の方を向くようにする。配置位置を決めるために、緩めてある締結ボルト32の軸部33がそれぞれの切欠溝122,124,126,128に入りこむようにする。挿入深さは、取付金具112,114,116,118の簡易天井本体部60側の端部が、かご室20の内壁面の位置に一致するように設定する。
右取付金具114を例として述べると、コの字の開口部と同じ方向にある切欠溝124の溝開口部を、左側を向くようにして、切欠溝124が締結ボルト32の軸部33を案内する位置に配置し、フランジ部22と従来天井40との間の隙間SP1に挿入する。右取付金具114の左端部、図16においてW20と示す範囲にはみ出さないように、かご室20の内壁面の位置で止める。この状態が図16に示される。右取付金具114の幅寸法W114はフランジ部22の幅寸法W22よりも長いので、右取付金具114の右端部は、従来天井40の右側に突き出ている。かご上の作業員は、W20の範囲が従来天井40で隠されていて視認できないので、右取付金具114に適当な目印を付けて、従来天井40から突き出る長さを管理することで、右取付金具114の左端がかご室20にはみ出さないようにできる。このようにして、4つの取付金具112,114,116,118は、それぞれ、フランジ部22の左右前後の各辺の上面に配置される。
再び図15に戻り、フランジ部22と従来天井40との隙間SP1に配置された4つの取付金具112,114,116,118を、かご室20側に移動させる。そして、コの字の開口部に簡易天井本体部60の端部を挿入して、簡易天井本体部60の左右前後の端部側を保持する(S37)。この状態で、かご室20の作業員8は簡易天井本体部60を押し上げる動作をやめてよい。この場合、4つの取付金具112,114,116,118は、フランジ部22と従来天井40の隙間SP1の間に留まっている。換言すれば、簡易天井本体部60の左右前後の端部から4つの取付金具112,114,116,118が張り出した状態であるが、張出部分の長さは、ばらばらである。
そこで、簡易天井本体部60からの4つの取付金具112,114,116,118の張出部分の長さを、図14で述べた状態の長さとなるようにして、張出部分をかご室20の頂部外周部のフランジ部22と従来天井40との間に配置する(S38)。ここでの配置は、図14で述べた張出状態簡易天井57の状態にすることを意味する。かご上の作業員は、4つの取付金具112,114,116,118をさらにかご室20側に移動して、切欠溝122,124,126,128の半円部を締結ボルト32の軸部33に突き当てる。図16に示すように、右取付金具114の切欠溝124の半円部の中心位置は、右取付金具114の右端からWFである。切欠溝124に対応する締結ボルト32の中心位置は、従来天井40の右端からW32である。WF=W32に設定されているので、右取付金具114をかご室20側に移動して、切欠溝124の半円部を締結ボルト32の軸部33に突き当てと、図14で述べた張出状態簡易天井57の右端部の状態になる。他の取付金具114,116,118についても、かご室20側に移動して、切欠溝124,126,128の半円部を締結ボルト32の軸部33に突き当てることで、図14で述べた張出状態簡易天井57の状態になる。
次に行われる締結部材締め付け(S40)の工程は、図7のS40、及び図12の内容と同じであるので、詳細な説明を省略する。
第2の実施形態の構成では、第1の実施形態と比べて、4つの取付金具112,114,116,118における切欠溝122,124,126,128が異なり、その相違に伴い、取付方法における従来天井の押上工程と、簡易天井の配置工程とが異なる。簡易天井50を配置し、締結部材を締め付けた状態では、第1の実施形態と同じ乗りかご10となる。すなわち、簡易天井50は、かご室20の頂部外周部のフランジ部22と従来天井40との間に挟まれて配置される。したがって、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、かご室20における簡易天井50の天井高さは、従来天井40における天井高さと同じH20にできる。また、従来天井40は取り外さないので、取り外しのためのチェーンが不要となる。このように、簡易天井50は、かご室20の天井高さを変更せずに、比較的簡単な方法でかご室20の天井を新しくできる。