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JP6953258B2 - 金の浸出方法および、金の回収方法 - Google Patents
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JP6953258B2 - 金の浸出方法および、金の回収方法 - Google Patents

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Description

この発明は、硫化鉱物や製錬中間物に含まれ得る金の浸出方法および、それを用いる金の回収方法に関するものであり、特には、金の回収率向上に資する技術を提案するものである。
たとえば、黄銅鉱その他の硫化鉱物や珪酸鉱等の鉱石に含まれる金や、硫化銅鉱中の銅を浸出し又は黄鉄鉱中の鉄を浸出すること等で得られた浸出残渣である製錬中間物に含まれる金を回収するための金回収技術としては、湿式製錬法を利用したものが知られている。
このような湿式製錬法に関し、硫化鉱物や製錬中間物中の金を溶液中に浸出させるに当って以前は、シアン、チオ尿素、チオ硫酸、ハロゲンガスといった薬品を使用していた。しかしながら、特にシアンはその毒性の故に使用が制限されることが多いことから、このような薬品を用いることは望ましくない。
これに対し、近年は、たとえば特許文献1、2に記載されているように、カチオンとして銅イオン等を含むとともに、アニオンとして塩化物イオン及び臭化物イオンを含む酸性水溶液によるハロゲン浴を用いて、硫化鉱物等に含まれる金を浸出させることが提案されている。この提案技術の金浸出工程によれば、毒性のあるシアンを用いることなしに、金をポリスルフィド型錯体等として容易に浸出させることができる。なお、酸性水溶液に浸出した金は、活性炭に吸着させた後、苛性ソーダで溶離させて回収することができる。
ここで、硫化鉱物に含まれる金は一般に、表面に露出しているものや、硫化物により覆われているもの、SiO2等の脈石成分により覆われているもの等がある。
このうち、硫化鉱物等における露出している金は、上記の金浸出工程でハロゲン錯体を形成して溶解させることができる。
硫化物に覆われた金については、特許文献1に記載されているように、金浸出工程に先立ち、非酸化雰囲気下で硫化鉱物等を加熱する焙焼工程を行って、二硫化鉄を硫化鉄(II)及び硫黄に熱分解すること、ならびに、その焙焼工程の後に金浸出工程とほぼ同様の浸出条件による脱鉄工程を行い、硫化鉄(II)を浸出させて除去することにより、その後の金浸出工程で当該金を溶解させることができる。なお、硫化鉱物中のSiO2等により覆われた金は微量で存在するが、これを浸出させることは困難であると考えられている。
国際公開第2014/038236号 特表2009−526912号公報
ところで、上述したような焙焼工程、脱鉄工程および金浸出工程等を経て実際に浸出される金の浸出率は、硫化鉱物や製錬中間物等の原料中の金存在形態を分析して得られる理論上の浸出率よりも低いことが解かった。つまり、これまでの金の浸出方法では、硫化鉱物中のSiO2等の脈石成分により覆われた金だけでなく、それ以外の存在形態の金もまた十分に浸出されていないと考えられる。したがって、従来技術は、金の更なる浸出の点で改善の余地があった。
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、その目的は、硫化鉱物や製錬中間物に含まれる金の浸出率を高めて、金の回収率向上に寄与することのできる金の浸出方法および、それを用いる金の回収方法を提供することにある。
発明者は、浸出できるはずの金が浸出されない原因について鋭意検討した結果、金の浸出方法の工程の途中で、硫化鉱物や製錬中間物に含まれる硫化物の硫黄分が元素状硫黄等の所定の形態となって残留し、酸への溶解速度の遅いこの硫黄が金の周囲に存在することによって当該金の浸出を阻害することを見出した。このことは、そのような硫黄の発生量が多ければ多いほど金が浸出され難くなるので大きな問題となる。但し、この発明は、このような理論に限定されるものではない。
このような知見に基き、この発明の金の浸出方法は、硫化鉱物もしくは、当該硫化鉱物に対して製錬処理を施して得られた製錬中間物としての、金及び硫黄を含む原料に含まれる金を浸出させる方法であって、前記原料中の金の一部を浸出させ、金が残留するとともに硫黄が含まれる浸出残渣を得る第一浸出工程と、前記浸出残渣中の硫黄を除去する硫黄除去工程と、硫黄除去工程を経た浸出残渣中の金の残部の少なくとも一部を浸出させる第二浸出工程とを含み、硫黄除去工程で、浸出残渣をアルカリ溶液と接触させて、浸出残渣中の硫黄を除去するというものである。
この発明の金の浸出方法では、硫黄除去工程で、浸出残渣中の硫黄が除去されることにより、浸出残渣中の金が露出することが好ましい。
この発明の金の浸出方法は、第一浸出工程で、少なくとも一部が元素状硫黄の形態をなす硫黄が含まれる浸出残渣が得られる場合に特に有効である。
この発明の金の浸出方法では、硫黄除去工程で、浸出残渣と接触させるアルカリ溶液のpHを10以上とすることが好ましい。
この発明の金の浸出方法では、硫黄除去工程での硫黄の除去率を10%以上とすることが好ましく、さらに25%以上とすることがより一層好ましい。
この発明の金の浸出方法では、第一浸出工程にて、原料を、銅イオン、鉄イオンおよびハロゲン化物イオンを含む酸性水溶液と酸化剤の供給下で接触させることが好適である。
この発明の金の回収方法は、上記のいずれかの金の浸出方法を用いて、原料から金を回収することにある。
この発明によれば、第一浸出工程の後、その浸出残渣中の硫黄を除去する硫黄除去工程を行い、その後さらに、硫黄除去工程を経た浸出残渣中の金の残部の少なくとも一部を浸出させる第二浸出工程を行うことにより、硫黄除去工程で周囲の硫黄が除去された金を、第二浸出工程で有効に浸出させることができる。その結果として、硫化鉱物や製錬中間物に含まれる金の浸出率がさらに高まるので、金の回収率の向上に寄与することができる。
この発明の一の実施形態に係る金の浸出工程を示すフロー図である。 実施例における非酸化焙焼工程後に浸出工程を行った際の、時間の経過に伴う残渣中の金の品位及び金の浸出率の変化を示すグラフである。 発明例及び比較例の結果に基く硫黄除去率と金回収率の関係を示すグラフである。
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の一の実施形態に係る金の浸出方法は、図1に示すように、硫化鉱物もしくは、当該硫化鉱物に対して製錬処理を施して得られた製錬中間物としての原料であって、金及び硫黄を含むものを対象とし、その原料から、そこに含まれる金を浸出させる方法である。そしてこの方法は、少なくとも、原料中の金の一部を浸出させ、金が残留するとともに硫黄が含まれる浸出残渣を得る第一浸出工程と、前記浸出残渣中の硫黄を除去する硫黄除去工程と、硫黄除去工程を経た浸出残渣中の金の残部の少なくとも一部を浸出させる第二浸出工程とを含み、それにより、金を含有する浸出後液を得る。
この実施形態の金の浸出方法は、所定の金の回収方法に適用することが可能である。たとえば、このような金の回収方法としては、硫化鉱物や製錬中間物から得られた金及び硫黄を含む原料に対し、前処理工程、第一浸出工程、硫黄除去工程、第二浸出工程、吸着工程、洗浄工程および溶離工程を順次に行い、濃厚金溶液を得るものがある。これに従って以下に詳説する。
(金及び硫黄を含む原料)
硫化鉱物や製錬中間物は、たとえば、輝銅鉱、斑銅鉱、銅藍、黄銅鉱、黄鉄鉱、硫砒銅鉱、硫砒鉄鉱、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、硫砒鉄鉱、輝安鉱、磁硫鉄鉱から選択される少なくとも一種を含む硫化鉱物や珪酸鉱等の金及び硫黄を含有する硫化鉱物、または、それら硫化鉱物を製錬処理した後に得られる中間物(ここでは「製錬中間物」ともいう。)とすることができる。
なおここで、製錬処理とは、たとえば、硫化銅鉱の場合は所定の浸出液で銅を浸出させる処理、または、黄鉄鉱の場合は所定の浸出液で鉄を浸出させる処理等をいい、このような処理により得られる浸出残渣を製錬中間物とすることができる。
硫化鉱物や製錬中間物は、必要に応じて、浮遊選鉱や鉱や比重選別といった慣用の選鉱処理を経た精鉱とすることができる。また、金浸出工程等における酸性水溶液が鉱物内部の金に接触しやすいように、粉砕摩鉱して鉱石の粒径を小さくしたものとすることもできる。
上記の硫化鉱物や製錬中間物は、この発明で浸出の対象とする金及び硫黄を含む原料とすることができる。具体的には、金及び硫黄を含む原料は、たとえば、硫化鉱物それ自体や、上述したように所定の製錬処理を施して得られる製錬中間物である。
このようにして得られる金を含む原料中の金濃度は、典型的には1〜500質量ppm程度であり、より典型的には10〜50質量ppm程度である。
(前処理工程)
前処理工程として焙焼工程を行う場合、この焙焼工程では、金及び硫黄を含む原料を、アンモニア、一酸化炭素、硫化水素などの還元性雰囲気、アルゴンやヘリウムのような希ガス雰囲気、窒素雰囲気や二酸化炭素雰囲気等の不活性雰囲気その他の非酸化性雰囲気の下、450℃〜800℃程度でおよそ30分〜120分にわたって加熱し、当該原料中の黄鉄鉱を硫化鉄(II)及び単体硫黄に熱分解する。このときの化学反応はFeS2→FeS+Sで表される。
非酸化性雰囲気は、実質的に酸化硫黄が発生しても実質的な悪影響を与えない程度の酸素が含まれていてもよく、たとえば、原料に対する酸素供給量のモル比が酸素:黄鉄鉱=1/5以下であれば許容され、1/10以下であれば好ましい。
ここでは、たとえば管状炉、ロータリーキルン炉等の種々の炉を使用することができる。
前処理工程は任意の工程であり、省略することもできる。
(第一浸出工程)
第一浸出工程では、上述した原料を、前処理工程なしでそのまま又は前処理工程後に、所定の酸性水溶液と酸化剤の供給下で接触させて、鉄および金を浸出させる。ここでは、銅イオン及び鉄イオンならびに、塩化物イオンや臭化物イオンなどのハロゲン化物イオンを含む酸性水溶液を用いることが好ましい。先述の焙焼工程で二硫化鉄から変換された硫化鉄(II)を、FeS→Fe+Sの反応により浸出させて除去することができる。それにより、原料中の硫化物に覆われた金を露出させることができ、これを浸出することが可能になる。
第一浸出工程では、原料中の硫化物に覆われた金が露出することにより、所定の硫化鉱物を対象とした場合、理論上は、原料中のSiO2等の脈石成分により覆われた金を除いて99.9%の金浸出率が得られるはずである。なお原料の金存在形態分析結果によれば、残りの0.1%は脈石成分により覆われた金に相当し、この金を浸出させることは困難である。しかしながら、実際の金浸出率は94%であり、6%近くの金が浸出されていないことが解かった。
発明者は鋭意検討の結果、浸出できるはずの金が浸出残渣に残る要因について次のことを見出した。すなわち、第一浸出工程で金の浸出を阻害する硫化物(硫化鉄等)を浸出すると、その硫化物の金属成分は溶解するが、硫黄成分は一般に元素状硫黄(単体硫黄)等として浸出残渣に残留する。この元素状硫黄等の硫黄は、多くは金粒子上にその周囲を取り囲んで存在し、酸への溶解速度が遅いことによって金の浸出を阻害する。
そこで、発明者は、第一浸出工程の後に、その浸出残渣中の硫黄を除去する硫黄除去工程及び、硫黄除去工程を経た浸出残渣中の金の残部の少なくとも一部を浸出させる第二浸出工程を行うことにより、残りの金を有効に浸出させることができると考えた。これらの硫黄除去工程及び第二浸出工程の詳細については後述する。
第一浸出工程での金の浸出は、溶出した金が塩化物イオン又は臭化物イオンと反応し、金の塩化錯体又は金の臭化錯体を生成することにより進行する。特に臭化物イオンを用いることで、より低電位の状態で錯体を形成するため、金の浸出効率の向上を図ることができる。また、鉄イオンは酸化剤の供給下で酸化した三価の鉄イオン又は当初より三価の鉄イオンが、金を酸化する働きをする。酸性水溶液は銅イオンを含有することが好ましい。銅イオンは直接反応に関与しないが、銅イオンが存在することで鉄イオンの酸化速度が速くなるからである。
酸性水溶液中のハロゲン化物イオンとしては、臭化物イオンのみとすることができる。あるいは、臭化物イオンの他にさらに塩化物イオンを含むことも可能であるが、この場合、塩化物イオン濃度は低いほうが好適である。
臭化物イオンの濃度は、50g/L以上、さらには80g/L以上、特に150g/L以上とすることが、金の浸出率をさらに向上させるとの観点から好ましい。臭化物イオン濃度の特に好ましい上限値はないが、添加する臭化金属の溶解度以下とすることが望ましい。一方、塩化物イオンの濃度は、たとえば40g/L以下とすることができ、特に25g/L以下とすることが一層好適である。さらには、酸性水溶液中のハロゲン化物イオンを臭化物イオンのみとして、酸性水溶液中に塩化物イオンを存在させないことがより一層好ましい。
酸性水溶液中の鉄イオン濃度は50g/L以下とすることができ、0.01g/L〜10g/Lであることが好ましい。また、銅イオン濃度は、1g/L以上であることが好ましく、さらに5g/L以上であることがより好ましいが、経済性を考慮すると、過度に高濃度にする必要はなく、酸性水溶液中の銅イオンの濃度は一般には30g/L以下であり、好ましくは20g/L以下である。
なお、上記の臭化物イオン、塩化物イオン、銅イオン及び鉄イオンの各濃度は、酸性水溶液を原料に接触させる前の酸性水溶液中の濃度を意味する。
臭化物イオンの供給源としては、特に制限はないが、例えば臭化水素、臭化水素酸、臭化金属及び臭素ガス等が挙げられ、経済性や安全性を考慮すれば臭化金属の形態で供給することが好ましい。臭化金属としては、例えば臭化銅(臭化第一銅、臭化第二銅)、臭化鉄(臭化第一鉄、臭化第二鉄)、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム)の臭化物、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム)の臭化物が挙げられ、経済性や入手容易性の観点から、臭化ナトリウムが好ましい。また、銅イオン及び鉄イオンの供給源としても利用できることから、臭化銅及び臭化鉄を利用することも好ましい。
塩化物イオンを含むものとする場合、その供給源としては、特に制限はないが、例えば塩化水素、塩酸、塩化金属及び塩素ガス等が挙げられ、経済性や安全性を考慮すれば塩化金属の形態で供給することが好ましい。塩化金属としては、例えば塩化銅(塩化第一銅、塩化第二銅)、塩化鉄(塩化第一鉄、塩化第二鉄)、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム)の塩化物、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム)の塩化物が挙げられ、経済性や入手容易性の観点から、塩化ナトリウムが好ましい。また、銅イオン及び鉄イオンの供給源としても利用できることから、塩化銅及び塩化鉄を利用することも可能である。
銅イオン及び鉄イオンは、これらの塩の形態で供給することが通常であり、例えばハロゲン化塩の形態で供給することができる。塩化物イオン及び/又は臭化物イオンの供給源としても利用できる観点から、銅イオンは臭化銅及び/又は塩化銅、鉄イオンは臭化鉄及び/又は塩化鉄として供給されることが好ましい。塩化銅及び塩化鉄としては塩化第二銅(CuCl2)、塩化第一銅(CuCl)、塩化第二鉄(FeCl3)、塩化第一鉄(FeCl2)等が使用される。臭化銅及び臭化鉄としては臭化第二銅(CuBr2)、臭化第一銅(CuBr)、臭化第二鉄(FeBr3)、臭化第一鉄(FeBr2)等が使用される。
たとえば、酸性水溶液としては、塩酸及び臭素酸の少なくとも一方と、塩化第二銅及び臭化第二銅の少なくとも一方と、塩化第二鉄及び臭化第二鉄の少なくとも一方と、塩化ナトリウム及び臭化ナトリウムの少なくとも一方とを含む混合液を使用することができる。
酸性水溶液と原料との接触方法としては特に制限はなく、撒布や浸漬などの方法があるが、反応効率の観点から、酸性水溶液中に原料を浸漬し、撹拌する方法が好ましい。
第一浸出工程の開始時における酸性水溶液の酸化還元電位(vs Ag/AgCl)は、金浸出を促進する観点から500mV以上とすることが好ましく、600mV以上とすることがより好ましい。また、金の浸出速度を高める観点から、酸性水溶液のpHは2.0以下に維持することが好ましいが、鉄の酸化速度は高いpHの方が促進されるため、酸性水溶液のpHは0.5〜1.9に維持することがより好ましい。
第一浸出工程は酸化剤を供給しながら実施することで、酸化還元電位を管理する。酸化剤を添加しなければ途中で酸化還元電位が低下してしまい、浸出反応が進行しない。酸化剤としては特に制限はないが、例えば酸素、空気、塩素、臭素、及び過酸化水素などが挙げられる。極端に高い酸化還元電位をもつ酸化剤は必要なく、空気で十分である。
なお原料を添加した酸性水溶液のパルプ濃度は、高くすると銅の浸出を抑制できるので好ましいが、高くし過ぎると金の浸出速度の低下を招く。この観点から、パルプ濃度は200g/L以下とすることが好ましく、特に15g/L〜50g/Lとすることがより好ましい。パルプ濃度は、酸性水溶液の体積(L)に対する原料の乾燥重量(g)の比を意味する。
金浸出時の酸化還元電位は特に調整しないが、金浸出を十分に行った後の浸出後液の酸化還元電位はおおむね450〜600mV程度、典型的には500〜580mV程度となる。
酸化還元電位の上昇は、金浸出後液中の一価の銅イオンの減少を示す。一価銅は非常にソフトな元素として知られ活性炭に対する親和性が高く、金錯体の吸着と競合する。この一価銅の減少により活性炭中の吸着活性点は金に対する選択性が増すことで金の効率的な回収を実現することができる。
このような第一浸出工程は、鉱石の種類にもよるが、原料からの鉄の浸出率が、たとえば5%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは30%以上となったときに終了とすることができる。また、第一浸出工程は、原料からの鉄の浸出率が上記の割合になり、かつ、原料からの銅の浸出率が、たとえば5%以上、好ましくは15%以上となったときに終了としてもよい。
この際に原料からの金の浸出率は、85%以上、さらには90%以下、特に95%以下であることが好ましい。
なお、上述した浸出条件の他、特表2005−523992号公報等に記載されているような条件で浸出を行うこともできる。すなわち、この条件では、大気圧条件で塩化銅(II)−塩化ナトリウム水溶液を用いて、酸素含有ガスを供給しながら浸出することにより、原料中の金を溶解させる。ここでは、酸化還元電位を650mV未満、好ましくは530mV〜620mVとし、pHを1〜3の範囲に維持することができる。この条件による浸出では、原料中の鉄成分及び硫黄成分の大部分は溶解されないが、一定量の硫黄成分は元素状硫黄となって浸出残渣に残留し、先述したところと同様に金の浸出を阻害することがある。したがって、この条件で浸出を行った場合でも、後述の硫黄除去工程及び第二浸出工程を実施することが、金の回収率の更なる向上の観点から有効である。
(硫黄除去工程)
第一浸出工程で得られた浸出残渣に対しては、その浸出残渣に含まれる硫黄を除去するための硫黄除去工程を行う。この硫黄除去工程は、第一浸出工程の浸出とは別の工程として行う。これにより、浸出残渣中の元素状硫黄等の硫黄に覆われた金が露出するので、これを後述の第二浸出工程で有効に浸出させることができるようになる。
硫黄除去工程では、浸出残渣を所定の雰囲気下で加熱し、浸出残渣中の硫黄をガスとして除去すること、または、浸出残渣をアルカリ溶液で洗浄して、硫黄を溶解させて除去すること等を挙げることができる。
加熱による硫黄除去の場合、浸出残渣を加熱し、たとえば硫黄の沸点である450℃以上の温度で保持して、浸出残渣中の硫黄をガスとして除去することができる。加熱時の保持温度が高すぎると、加熱に要するエネルギーが増大するので、処理コストの上昇を抑制する観点から、1000℃以下とすることができる。特に好ましくは、浸出残渣の保持温度を500℃〜700℃とする。また、その温度に保持する時間は、好ましくは30分〜180分、より好ましくは30分〜60分とする。
加熱時の雰囲気は、アルゴンやヘリウムのような希ガス雰囲気や窒素雰囲気、二酸化炭素雰囲気等を含む不活性雰囲気とすることができ、この場合は硫黄が硫黄ガスとして除去される。あるいは空気中などの酸化雰囲気とすることもでき、この場合、SO2ガスとして除去される。
この加熱には、管状炉やロータリーキルン炉などの種々の炉を用いることが可能である。
アルカリ溶液を用いた洗浄による硫黄除去の場合、pHが好ましくは10〜14、より好ましくは10〜12のアルカリ溶液を用いることができ、このアルカリ溶液として具体的には、水酸化ナトリウム溶液、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。アルカリ溶液のpHが高すぎると、それほどまでにpHを上げるために多量のアルカリが必要になるだけでなく、次工程の第二浸出工程や硫黄が溶解した洗浄後液の処理時に多量の酸が必要になって、コストの増大を招くと考えられる。また、金はチオ硫酸錯体等となってアルカリに溶解する可能性があるところ、この場合、当該金は活性炭を用いて回収できるが、pHが高いとナトリウムが多く含まれて活性炭への金の吸着、溶離が阻害されるおそれもある。この一方で、pHが低すぎると、硫黄の溶解や、液中成分の加水分解反応などの影響によってpHがさらに低下し、特にpHが7以下になると、酸化還元電位にもよるが硫化水素ガスが発生するおそれがある。
アルカリ溶液による洗浄時の液温は、20(室温)℃〜90℃とすることができ、特に50℃〜80℃とすることが好ましい。液温が低すぎる場合は、硫黄の溶解速度の低下を招くおそれがあり、液温が高すぎる場合は、加熱コストがかかることが懸念される。
洗浄時間は、たとえば60分〜360分、好ましくは60分〜180分とすることができる。洗浄時間が短すぎると、浸出残渣中の硫黄が十分に除去できないことが懸念され、この一方で、洗浄時間が長すぎると、処理能率が低下する。
なお、加熱による硫黄除去では、上述したように、非酸化雰囲気下で加熱して硫黄ガスとして除去し、または酸化雰囲気下で加熱してSO2ガスとして除去する。
ここで、非酸化雰囲気で加熱する場合は、450℃以上の温度とすることが必要になる他、排ガス中の硫黄をスクラバーを用いてアルカリ性の溶液で溶解回収することになるも、ここでは硫黄が溶けたアルカリ排液が生じる。このようなアルカリ排液は、上述したように浸出残渣を直接的にアルカリ溶液で洗浄した場合と同様であることから、この観点より、高温加熱が不要で低温で行うことのできるアルカリ溶液による洗浄のほうが好ましいといえる。
一方、酸化雰囲気で加熱する場合は、確実に硫酸製造プラントを併設する必要があり、設備規模及びコストが嵩むという欠点がある。
これらの理由から、硫黄除去工程では、浸出残渣をアルカリ溶液で洗浄して硫黄を溶解させて除去することが好適である。
上記のような硫黄除去工程を行って、浸出残渣から硫黄を、好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上除去することができる。ここで少しでも硫黄を除去すれば、後述の第二浸出工程でさらに金を浸出させることができて、金の浸出率の向上につながる。
(第二浸出工程)
硫黄除去工程を経て浸出残渣中の硫黄を除去した後は、その浸出残渣中の金を浸出させるための第二浸出工程を実施し、金の浸出を再度行う。第二浸出工程は、先に述べた第一浸出工程と実質的に同様の条件とすることができるが、ここでは、第一浸出工程後の浸出残渣中に残留した金を覆っていた硫黄が金硫黄除去工程で除去されて、当該金が露出しているので、これを有効に浸出することができる。
第二浸出工程の酸性水溶液の成分、pH、酸化還元電位その他の条件は、第一浸出工程のものとほぼ同様であるので、再度の説明は省略する。
第二浸出工程により、浸出残渣からの金の浸出率は、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上とすることができる。
(吸着工程)
金の浸出後、固液分離によって得られた金浸出後液から、活性炭吸着を利用して金を回収することができる。活性炭への金の接触は、バッチ回分式もしくは活性炭を充填した吸着塔に酸性浸出液を連続通液することで行うことができる。
バッチ式の場合、攪拌速度は特に限定されず、また、添加の活性炭量は金重量の50倍〜10000倍となるように添加する。
連続通液法式の場合、通液速度は特に限定されない(一般的にはSV1〜25)。但し、活性炭の単位重量あたりの金吸着量が20000〜30000g/tとなった時点で、活性炭はその吸着能力の低下が認められることがある。そのため、活性炭からの金のストリップや再生はこの吸着量を目安に行うことができる。活性炭の再生方法は、一般的に知られる硫黄化合物や窒素化合物、もしくは酸等の様々な手法にて行うことができる。
(洗浄工程)
次いで、吸着工程で金を吸着させた活性炭を、洗浄用薬剤としての酸性溶液ないしアルカリ溶液により洗浄する洗浄工程を行うことができる。NaOH等のアルカリ性溶液による洗浄では、活性炭に吸着していることのある硫黄を効果的に除去することができ、また、塩酸等の酸性溶液による洗浄では、活性炭に吸着していることのある銅や鉄を効果的に除去することができる。酸洗浄及びアルカリ洗浄は、そのうちのいずれか一方のみを行うことができ、又は、両方を行うことができる他、いずれも行わずに、この洗浄工程を実施しないことも可能である。
(溶離工程)
活性炭に吸着した金は、アルカリ液、好ましくはNaOH、もしくはNaOHとNa2Sとを混合した液により溶離する。ここで、アルカリ濃度が低いと金の溶離が困難となり、アルカリ濃度が高いと調製時の発熱の危険がある。このような観点から、NaOHを用いる場合、その濃度は0.05〜1Mとすることが好ましく、0.1〜0.5Mとすることがより好ましい。また、Na2Sは価格と取り扱いの難しさから使用量が低いほうが好ましいが、Na2Sの濃度が低ければそれだけ金の溶離効果が低下する。一方、Na2Sの濃度が高すぎてもそれ以上の効果は見込めず、さらにNa2Sの処理負担も大きくなる。このような観点から、NaOHとNa2Sとを混合した溶液を用いる場合は、Na2S添加量はNaOHの0.1〜10モル倍量とすることが好ましく、0.5〜1.5モル倍量とすることがより好ましい。
なお、溶離はバッチ回分式もしくは連続通水式で行うことができるが、酸素によりスルフィドが酸化されることにより電荷を失い、金が活性炭に再吸着することや反応器に沈着することを防ぐため、回分式で溶離を行う場合は激しく攪拌しないことが好ましい。攪拌が必要な場合は空気を非酸化性ガスと置換して攪拌する。あるいは、硫化ナトリウム添加量を多めに設定するか、適時添加を行う。また、溶離は大気圧下で行うことが好ましい。
活性炭からの溶離により濃厚金溶液を得ることができる。この濃厚金溶液とは、金を50〜5000mg/L含む溶液を意味する。濃厚金溶液から還元によって金を作製する方法としては、シュウ酸ナトリウムによる還元や二酸化硫黄による化学還元法、又は、溶媒抽出−電解採取法が知られており、いずれの手段を用いても単体の金を得ることができる。
次に、この発明の金の浸出方法を試験的に実施し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は、単なる例示を目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
(原料中の金形態と金浸出率)
黄鉄鉱を主体とした硫化鉱物中の金の存在形態を、Diagnostic Leach Testにより確認したところ、表1に示す結果を得た。非酸化焙焼工程及び一回の浸出工程を行って硫化物が浸出されると、想定される金の浸出率は99.9%となるはずであるが、実際の試験では、図2にグラフで示すように、金の浸出率は94%止まりであった。
したがって、従来の浸出方法では、残りの6%近くの金が本来は浸出されるはずであるのに浸出されていないことが解かる。
Figure 0006953258
(比較例)
上記の硫化鉱物に対して非酸化焙焼工程及び第一浸出工程を行った後、その浸出残渣に対し、硫黄除去工程を行わずに、第二浸出工程を実施した。ここで、第二浸出工程では、Cu:18g/L、Fe:2g/L、Cl:40g/L、Br:80g/Lの液組成でpH:1の酸性水溶液を用いて、85℃の温度で6時間にわたって浸出を行った。
第二浸出工程前後の各浸出残渣の品位を表2に示す。表2に示す品位は、第二浸出工程に用いた上記の浸出残渣を100gとした場合の各元素の量であり、表2中、「S−0」は元素状硫黄を意味する。また、表3に、第二浸出工程前後の各成分の量の変化から算出した硫黄の除去率及び金の浸出率のそれぞれを百分率で示す。なお各成分の分析は高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)により行った。
Figure 0006953258
Figure 0006953258
表3に示すところから解かるように、第二浸出工程での金の浸出率は12%と低くなった。これは、硫黄の除去率が10%しかなく、金の浸出を阻害している硫黄の溶解速度が遅いことから、金が硫黄に覆われた状態となっていることによるものと考えられる。
(発明例)
第二浸出工程前に、アルカリ溶液を用いた洗浄による硫黄除去工程を行ったことを除いて比較例と同様にして、硫黄除去工程前及び第二浸出工程後の各浸出残渣の品位ならびに、硫黄の除去率及び金の浸出率を測定及び算出した。それらの結果を表4及び5に示す。ここで、硫黄除去工程での洗浄は、アルカリ溶液としてNaOH溶液を用いて、洗浄時間を3時間とし、洗浄時の温度を60℃とした。
Figure 0006953258
Figure 0006953258
表5に示すところから解かるように、硫黄除去工程により硫黄が77%程度除去され、それにより、第二浸出工程での金の浸出率は90%程度となった。
また、上記の比較例および発明例について、金回収率(金浸出率)と硫黄除去率の関係をプロットしたグラフを図3に示す。図3より、金回収率と硫黄除去率の関係は、ほぼ傾きが1で切片が0の線形になることが解かる。そうすると、硫黄を少しでも除去すれば金の回収率が上昇し、硫黄を除去すれば除去したぶんだけ金の回収率が高くなるといえる。
以上より、この発明によれば、硫黄を除去することにより、それにより浸出が阻害されていた金を有効に浸出できることが解かった。

Claims (8)

  1. 硫化鉱物もしくは、当該硫化鉱物に対して製錬処理を施して得られた製錬中間物としての、金及び硫黄を含む原料に含まれる金を浸出させる方法であって、
    前記原料中の金の一部を浸出させ、金が残留するとともに硫黄が含まれる浸出残渣を得る第一浸出工程と、前記浸出残渣中の硫黄を除去する硫黄除去工程と、硫黄除去工程を経た浸出残渣中の金の残部の少なくとも一部を浸出させる第二浸出工程とを含み、
    硫黄除去工程で、浸出残渣をアルカリ溶液と接触させて、浸出残渣中の硫黄を除去する、金の浸出方法。
  2. 硫黄除去工程で、浸出残渣中の硫黄が除去されることにより、浸出残渣中の金が露出する、請求項1に記載の金の浸出方法。
  3. 第一浸出工程で、少なくとも一部が元素状硫黄の形態をなす硫黄が含まれる浸出残渣を得る、請求項1又は2に記載の金の浸出方法。
  4. 硫黄除去工程で、浸出残渣と接触させるアルカリ溶液のpHを10以上とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金の浸出方法。
  5. 硫黄除去工程での硫黄の除去率を10%以上とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の金の浸出方法。
  6. 硫黄除去工程での硫黄の除去率を25%以上とする、請求項に記載の金の浸出方法。
  7. 第一浸出工程にて、原料を、銅イオン、鉄イオンおよびハロゲン化物イオンを含む酸性水溶液と酸化剤の供給下で接触させる、請求項1〜のいずれか一項に記載の金の浸出方法。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載の金の浸出方法を用いて、原料から金を回収する、金の回収方法。
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