以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1〜3には、本発明の第1の実施形態としてのステント10が示されている。このステント10は、自己拡張型のステントとされており、例えば縮径状態でステントデリバリカテーテルに設けられたシースに挿入されて血管などの体内管腔における狭窄部までデリバリされた後、当該シースから露出されて体温に曝されることで、自動的に拡径変形して、狭窄部を押し広げるようになっている。なお、図1〜3では、ステント10が、縮径も拡径もされていない状態で示されている。また、以下の説明において、軸方向とは、ステント10の中心軸方向となる図1中の左右方向をいう。
より詳細には、ステント10の軸方向中間部分は、全体として単一層の周壁12を備える略筒状または略管状とされており、直線状に延びている。この周壁12は、拡張力の異なる複数種類の素線14を、互いに織成または編組した複合構造として構成されている。なお、拡張力とは、ステントを縮径させてカテーテルに装着した状態で拡径方向に弾性的に復元変形しようとする応力と解釈される。
本実施形態では、素線14の太さを異ならせることによって拡張力を異ならせており、拡張力の大きな素線として外径寸法の大きい大径素線16を採用する一方、拡張力の小さな素線として外径寸法の小さい小径素線18を採用している。すなわち、周壁12を形成する素線14が、これら大径素線16と小径素線18とから構成されている。
なお、これら大径素線16および小径素線18は、何れも略円形の断面形状とされており、略一定の太さで長さ方向に延びている。因みに、血管用ステントとしては、例えば大径素線16の外径寸法が150μm〜300μmとされる一方、小径素線18の外径寸法が20μm〜60μmとされることが好適である。また、これら大径素線16と小径素線18は、後述するようにリード角を略等しくされた本実施形態では略等しい長さ寸法とされており、周壁12の軸方向全長に亘って大径素線16と小径素線18が一体的に織成された単一構造体とされている。そして、大径素線16の軸方向両端部と小径素線18の軸方向両端部とが略等しい軸方向位置に設定されている。
なお、拡張力の大きい素線と拡張力の小さい素線は、織成や編組される以前の単体状態では拡張力を発揮する必要はなく、織成や編組されて周壁を構成し、使用時に縮径状態とされることで、大きいまたは小さい拡張力が発揮されるようになっていればよい。尤も、周壁構造での拡張力は、一般に単線状態での曲げ強さ又は曲げ弾性に対応することから、単線状態において、曲げ強さ又は曲げ弾性の大きい素線と小さい素線を採用することも可能である。
そして、かかる大径素線16が複数設けられており、それぞれ螺旋形状をもって軸方向に延びている。すなわち、ステント10の軸方向における投影(例えば図1中の左方から右方を見た状態)において、周方向の一方向(例えば時計回り)に螺旋状に巻回する大径素線16aと、周方向の他方向(例えば反時計回り)に螺旋状に巻回する大径素線16bとが、それぞれ複数本ずつ設けられている。本実施形態では、周方向一方向に巻回する大径素線16aと周方向他方向に巻回する大径素線16bとが、それぞれ同一本(6本)ずつ設けられている。
一方、小径素線18も複数設けられており、それぞれ螺旋形状をもって軸方向に延びている。すなわち、ステント10の軸方向の投影において、周方向の一方向に螺旋状に巻回する小径素線18aと、周方向の他方向に螺旋状に巻回する小径素線18bとが、それぞれ複数本ずつ設けられている。これら小径素線18a,18bの本数はそれぞれ大径素線16a,16bの本数より多くされており、本実施形態では、小径素線18a,18bがそれぞれ同一本(18本)ずつ設けられている。
そして、これら互いに逆方向の螺旋形状を有する大径素線16a,16bと小径素線18a,18bとが相互に織成されることにより、単一層の周壁12が構成されている。なお、本実施形態では、これら大径素線16a,16bと小径素線18a,18bとが、例えば自動織機などにより機械的に同時に織成されている。
特に、本実施形態では、軸方向で隣接する大径素線16a,16a(16b,16b)のピッチ(軸方向間隔)A1 (図1参照)がそれぞれ略等しくされているとともに、軸方向で隣接する小径素線18a,18a(18b,18b)のピッチB1 (図2参照)がそれぞれ略等しくされている。なお、大径素線16a,16bの本数に比して小径素線18a,18bの本数が多くされていることから、大径素線16a,16a(16b,16b)のピッチA1 よりも小径素線18a,18a(18b,18b)のピッチB1 の方が小さくされている(B1 <A1 )。
また、上述のようにB1 <A1 とされていることから、本実施形態のステントでは、周壁の単位長さ当たりにおいて、配索された大径素線16a(16b)の総長さに比して、配索された小径素線18a(18b)の総長さの方が長くされている。
そして、軸方向で隣接する小径素線18a,18a(18b,18b)のピッチB1 と、軸方向で隣接する大径素線16a(16b)と小径素線18a(18b)とのピッチC1 (図2参照)とが、略等しくされている(B1 =C1 )。したがって、本実施形態では、周壁12を構成する素線14(大径素線16a,16bおよび小径素線18a,18b)が、軸方向の略全長に亘って、全体として略等間隔(等ピッチ)で織成されている。
また、周方向の一方向に巻回する大径素線16aのそれぞれのリード角αa (図2参照)が相互に略等しくされているとともに、周方向の他方向に巻回する大径素線16bのそれぞれのリード角αb (図2参照)も相互に略等しくされている。そして、これらのリード角αa の大きさとαb の大きさが略等しくされている(|αa |=|αb |)。
さらに、周方向の一方向に巻回する小径素線18aのそれぞれのリード角βa (図2参照)が相互に略等しくされているとともに、周方向の他方向に巻回する小径素線18bのそれぞれのリード角βb (図2参照)が相互に略等しくされている。そして、これらのリード角βa の大きさとβb の大きさが略等しくされている(|βa |=|βb |)。
更にまた、本実施形態では、これら大径素線16a,16bと小径素線18a,18bのそれぞれのリード角αa ,αb ,βa ,βb の大きさが略等しくされている(|αa |=|αb |=|βa |=|βb |)。したがって、本実施形態では、周壁12を構成する素線14(大径素線16a,16bおよび小径素線18a,18b)が、軸方向の略全長に亘って、全体として略同じリード角をもって織成されている。
なお、本実施形態では、これら大径素線16a,16bおよび小径素線18a,18bが平織により織成されている。すなわち、例えば周方向の一方向に巻回する大径素線16aが、周方向の他方向に巻回する大径素線16bおよび小径素線18a,18bに対して、外周側と内周側で、即ち周壁12を構成する層の内外で交互に織り重なるように織成されている。同様に、例えば周方向の一方向に巻回する小径素線18aが、周方向の他方向に巻回する小径素線18bおよび大径素線16a,16bに対して、周壁12を構成する層の内外で交互に織り重なるように織成されている。尤も、これら大径素線および小径素線の織成方法は何等限定されるものではなく、例えば綾織や朱子織など従来公知の織成方法が採用され得る。
ここにおいて、これら互いに逆方向に巻回する大径素線16a,16bが相互に織成されることで、大径素線16a,16bによりメッシュ状の気孔20が形成されている。一方、互いに逆方向に巻回する小径素線18a,18bが相互に織成されることで、小径素線18a,18bによりメッシュ状の気孔22が形成されている。ここで、大径素線16a,16a(16b,16b)のピッチA1 よりも小径素線18a,18a(18b,18b)のピッチB1 の方が小さくされており、且つ大径素線16a,16bのリード角αa ,αb の大きさと小径素線18a,18bのリード角βa ,βb の大きさが略等しくされている。それ故、大径素線16a,16bのみにより形成される周壁のメッシュの目よりも小径素線18a,18bのみにより形成される周壁のメッシュの目の方が細かく、即ち大径素線16a,16bにより形成される気孔20よりも小径素線18a,18bにより形成される気孔22の方が小さくされている。なお、拡張力の小さい素線により形成される気孔22は、大径素線16a(16b)の存在下で小径素線18a(18b)により形成される気孔をいうものであり、例えば小径素線18a,18bのみにより形成される気孔だけでなく、大径素線16a(16b)と小径素線18a(18b)とにより形成される気孔も含まれる。
一方、ステント10の軸方向両端部24,24は、図3にも示されるように、軸方向外方になるにつれて外周側に広がるフレア構造とされている。
すなわち、周壁12の軸方向両端部付近では、周方向の一方向に巻回する大径素線16aと周方向の他方向に巻回する大径素線16bとが、交点26をもって交差するようにして、周壁の内外で重ね合わされている。本実施形態では、周方向の一方向に巻回する大径素線16aと周方向の他方向に巻回する大径素線16bとがそれぞれ6本ずつ設けられていることから、かかる交点26が、周壁12の軸方向両端部付近で、同一円周上で略等間隔に6つ設けられている。
そして、かかる6つの交点26において、周方向で1つおきに隣り合う交点26,26を構成する大径素線16a,16bの端部同士が、大径素線16と同様な線材からなる端部部材28により相互に連結されている。要するに、本実施形態では、ステント10の軸方向両端部24,24において、それぞれ6つの端部部材28が設けられて、大径素線16に連結されている。
これらの端部部材28は、軸方向外方端部に位置する長さ方向の中間部分に折返部30を有している。これにより、ステント10の軸方向両端部24,24が、大径素線16a,16bの端部同士を互いに連結されてループ状に折り返される端部構造とされているとともに、端部部材28の折返部30が周壁12よりも外周側に位置することで、軸方向外方になるにつれて外周側に広がるフレア構造となっている。
なお、大径素線16a,16bと端部部材28とは筒状の連結部材32によって連結されている。すなわち、筒状の連結部材32の両端開口部に大径素線16a,16bと端部部材28の端部を嵌入することにより、大径素線16a,16bと端部部材28とが相互に連結されるようになっている。なお、大径素線16a,16bと端部部材28とは、かかる連結部材32に代えて、接着や溶着などにより連結されるようになっていてもよいし、または連結部材32により連結された後に、必要に応じて、接着や溶着などが施されるようになっていてもよい。
かかるフレア状およびループ状の端部構造は、大径素線16a,16bと小径素線18a,18bとを織成して周壁12を形成した後に、大径素線16a,16bの端部に対して端部部材28を連結部材32により連結することで形成され得る。なお、小径素線18a,18bの端部は、周壁12の形成後に別途端部処理を行わなくてもよいし、溶着や接着などにより小径素線18a,18bの端部同士を相互に固着するなどの端部処理を行ってもよい。
ここにおいて、かかるステント10を構成する大径素線16a,16bや小径素線18a,18b、端部部材28は、形状記憶能を有するNi−Ti合金などにより形成され得る。
以上の如きステント10は、例えば機械的に縮径されて、かかる縮径状態でステントデリバリカテーテルに設けられるシース内に収容される。そして、かかるステントデリバリカテーテルにより体内管腔における狭窄部にデリバリされた後、ステント10をシースから露出させて体温に曝すことにより、ステント10が超弾性(擬弾性)を示して自動的に拡径するようになっている。これにより、体内管腔における狭窄部を押し広げて、血流などを回復することができる。
本実施形態のステント10では、小径素線18a,18bにより形成される気孔22の大きさが十分に小さくされることから、狭窄部を構成する組織が気孔を通じてステント10の内部に突出して体内管腔が再狭窄してしまうことが防止され得る。特に、ステント10の周壁12を構成する素線14として小径のものを採用することで、素線14の本数を増やすことができて、気孔22の大きさを効率的に小さくすることができる。
また、素線14として小径のものを採用することで拡張時の拡張力が低下するおそれがあるが、素線14として大径素線16a,16bも併せて採用して、大径素線16a,16bと小径素線18a,18bとを相互に織成することで周壁12が構成されている。それ故、大径素線16a,16bにより拡張力が補われて、ステント10を安定して拡張させることができる。
特に、周壁12が単一層構造とされていることから、従来構造のステントのように、層間分離が発生するおそれが回避されて、例えば内層に血栓などが付着することに伴う血管などの管腔の再狭窄も効果的に防止され得る。
また、本実施形態では、小径素線18a,18bの本数に比して大径素線16a,16bの本数が少なくされていることから、小径素線18a,18bの本数を十分に確保して、気孔22の大きさを安定して小さくすることができる。さらに、大径素線の本数が多すぎてステントが硬くなり、拡縮や曲げ等の変形を阻害されるなどのおそれも回避され得る。
更にまた、大径素線16a,16bおよび小径素線18a,18bが、それぞれ互いに逆方向の螺旋状をもって複数本設けられていることから、周壁12がメッシュ状とされて、気孔20,22の大きさを十分に小さくしつつ、ステント10の強度も安定して得ることができる。即ち、大径素線を一方向だけに螺旋状に巻回させた構造に比して、両方向に螺旋状に巻回させて、大径素線だけで格子状の気孔を構成するようになっていることから、拡縮変形時の形状の安定化が図られると共に、拡径力もより効果的に確保することが可能になる。また、小径素線を一方向だけに螺旋状に巻回させた構造に比して、両方向に螺旋状に巻回させて、小径素線だけでも格子状の気孔を構成するようになっていることから、より小さなメッシュ径の気孔を実現することが可能になる。
特に、これら大径素線16a,16bと小径素線18a,18bとが、全体として等間隔、且つ略同じリード角で織成されていることから、ステント10の縮径時に、例えばステント10から素線14が部分的に突出するなどしてステントデリバリカテーテルやシースなどに引っ掛かるおそれがより一層効果的に低減され得る。
また、本実施形態では、ステント10の軸方向両端部24,24がフレア構造とされていることから、体内管腔への留置時に、管腔壁面に軸方向両端部24,24が安定して押し付けられて、ステント10が管腔内の所望の位置に安定して留置される。特に、軸方向両端部24,24がループ構造も有していることから、ステント10の軸方向両端部24,24が管腔壁面に刺さったりするおそれも低減され得る。
次に、図4,5には、本発明の第2の実施形態としてのステント40が示されている。本実施形態においても、ステント40における周壁42が、拡張力の異なる複数種類の素線44が互いに織成されることで構成されている。なお、ステント40の軸方向両端部の構造は、前記第1の実施形態と同様のものが採用され得ることから、図4では、ステント40の軸方向中間部分である周壁42のみを示す。また、前記実施形態と実質的に同一の部材または部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことで、詳細な説明を省略する。
すなわち、周壁42を形成する素線44が、拡張力の大きな素線としての周方向の一方向に巻回する大径素線46aおよび周方向の他方向に巻回する大径素線46bと、拡張力の小さな素線としての周方向の一方向に巻回する小径素線48aおよび周方向の他方向に巻回する小径素線48bとから構成されている。本実施形態では、周方向の一方向に巻回する大径素線46aと周方向の他方向に巻回する大径素線46bとがそれぞれ6本ずつ設けられている一方、周方向の一方向に巻回する小径素線48aと周方向の他方向に巻回する小径素線48bとがそれぞれ24本ずつ設けられている。
本実施形態では、周方向の一方向に巻回する大径素線46aのそれぞれのリード角γa (図5参照)が相互に略等しくされているとともに、周方向の他方向に巻回する大径素線46bのそれぞれのリード角γb (図5参照)も相互に略等しくされている。そして、これらのリード角γa の大きさとγb の大きさが略等しくされている(|γa |=|γb |)。
また、周方向の一方向に巻回する小径素線48aのそれぞれのリード角δa (図5参照)が相互に略等しくされているとともに、周方向の他方向に巻回する小径素線48bのそれぞれのリード角δb (図5参照)が相互に略等しくされている。そして、これらのリード角δa の大きさとδb の大きさが略等しくされている(|δa |=|δb |)。
そして、これら大径素線46a,46bと小径素線48a,48bのリード角の大きさが異ならされている。すなわち、大径素線46a,46bのリード角γa ,γb の方が、小径素線48a,48bのリード角δa ,δb よりも大きくされている(|δa |=|δb |<|γa |=|γb |)。
また、本実施形態においても、大径素線46a,46a(46b,46b)のピッチよりも小径素線48a,48a(48b,48b)のピッチの方が小さくされており、かかるピッチとリード角から、大径素線46a,46bにより形成された気孔50に比べて、小径素線48a,48bにより形成された気孔52、または大径素線46a(46b)と小径素線48a(48b)とにより形成された気孔52の方が小さくされている。それ故、本実施形態のステント40においても、前記第1の実施形態のステント10と同様の効果が発揮され得る。
なお、本実施形態のステント40は、例えば小径素線48a,48bのみで形成したステント(周壁)に対して、大径素線46a,46bを、製造者が手技により直接織り込むことなどで形成され得る。また、かかる小径素線48a,48bのみで形成したステント(周壁)の製造方法は、何等限定されるものではなく、例えば自動織機により形成したり、手技により織成することで形成され得る。
次に、図6,7には、本発明の第3の実施形態としてのステント60が示されている。本実施形態においても、ステント60における周壁62が、拡張力の異なる複数種類の素線64により形成されており、拡張力の大きい素線としての周方向の一方向に巻回する大径素線66aおよび周方向の他方向に巻回する大径素線66bと、拡張力の小さい素線としての周方向の一方向に巻回する小径素線68aおよび周方向の他方向に巻回する小径素線68bとが互いに織成されることで構成されている。本実施形態では、周方向の一方向に巻回する大径素線66aと周方向の他方向に巻回する大径素線66bとがそれぞれ6本ずつ設けられている一方、周方向の一方向に巻回する小径素線68aと周方向の他方向に巻回する小径素線68bとがそれぞれ46本ずつ設けられている。なお、ステント60の軸方向両端部の構造は、前記第1の実施形態と同様のものが採用され得ることから、図6では、ステント60の軸方向中間部分である周壁62のみを示す。
本実施形態では、軸方向で隣接する大径素線66a,66a(66b,66b)のピッチ(軸方向間隔)A2 (図6参照)がそれぞれ略等しくされているとともに、軸方向で隣接する小径素線68a,68a(68b,68b)のピッチB2 (図7参照)がそれぞれ略等しくされている。なお、小径素線68a,68a(68b,68b)のピッチB2 は、大径素線66a,66a(68a,68a)のピッチA2 よりも小さくされている(B2 <A2 )。
そして、小径素線68a,68a(68b,68b)に対して、大径素線66a,66a(66b,66b)が織り込まれており、本実施形態では、大径素線66a(66b)が、その配設位置に存在する小径素線68a(68b)に対して外周面から重なるようにして織り込まれている。それ故、図7では、大径素線66a(66b)の下に重なった小径素線68a(68b)は図面に現れていない。
上記の如き形状とされた本実施形態のステント60においても、大径素線66a,66bにより形成される気孔70に比べて、小径素線68a,68bにより形成される気孔72の方が小さくされることから、前記第1の実施形態のステント10と同様の効果が発揮され得る。
なお、本実施形態のステント60も、前記第2の実施形態のステント40と同様に、例えば小径素線68a,68bにより形成されたステント(周壁)に対して、大径素線66a,66bを、製造者が手技により直接織り込むことなどで形成され得る。
次に、図8,9には、本発明の第4の実施形態としてのステント80が示されている。本実施形態においても、ステント80における周壁82が、拡張力の異なる複数種類の素線84により形成されており、拡張力の大きい素線としての周方向の一方向に巻回する大径素線86aおよび周方向の他方向に巻回する大径素線86bと、拡張力の小さい素線としての周方向の一方向に巻回する小径素線88aおよび周方向の他方向に巻回する小径素線88bとが互いに織成されることで構成されている。なお、ステント80の軸方向両端部の構造は、前記第1の実施形態と同様のものが採用され得ることから、図8では、ステント80の軸方向中間部分である周壁82のみを示す。
本実施形態では、周方向の一方向に巻回する大径素線86aと周方向の他方向に巻回する大径素線86bとがそれぞれ12本ずつ設けられている一方、周方向の一方向に巻回する小径素線88aと周方向の他方向に巻回する小径素線88bもそれぞれ12本ずつ設けられている。
なお、本実施形態のステント80は、大径素線86a,86bと小径素線88a,88bとから構成される素線84の全体が、略等間隔で且つ略同じリード角で織成されていることから、大径素線86a,86bと小径素線88a,88bとが、例えば自動織機などにより機械的に同時に織成されている。
また、本実施形態のステント80は、周方向の一方向に巻回する大径素線86aと周方向の他方向に巻回する大径素線86bとがそれぞれ12本ずつ設けられていることから、ステント80の軸方向両端部(24,24)に設けられる両大径素線86a,86bの交点(26)は、周上で等間隔に12個形成される。そして、かかる12個の交点(26)において、周方向で1つおきに隣り合う交点(26,26)を構成する大径素線86a,86bの端部同士が端部部材(28)により相互に連結される。要するに、本実施形態では、ステント80の軸方向両端部(24,24)において、前記第1の実施形態と同様の端部部材(28)が、それぞれ12個設けられている。
かかる形状とされた本実施形態のステント80においても、大径素線86a,86bにより形成された気孔90に比べて、大径素線86a(86b)と小径素線88a(88b)により形成された気孔92の方が小さくされている。それ故、本実施形態のように、大径素線86a,86bの数と小径素線88a,88bの数が同数とされる場合であっても、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
たとえば、ステントの軸方向端部の形状は、前記第1の実施形態のものに限定されるものではない。すなわち、前記第1の実施形態では、6つの交点26のうち周方向で1つおきに隣接する交点26,26を構成する大径素線16a,16bの端部同士が、それぞれ端部部材28により接続されていたが、例えば図10に示される形状も採用可能である。図10に示されるステント100では、軸方向両端部102,102において、周上の6つの交点26のうち周方向で隣接する交点26,26を繋ぐように大径素線16a,16bの端部同士が連結部材32を介して端部部材28により相互に接続されている。なお、ステント100の周壁12における軸方向中央部分は、前記第1の実施形態と同様の構造であるため図示を省略する。また、図10の紙面奥側の3つの交点(26)においても大径素線16a,16b同士の端部が紙面手前側の3つの交点26,26,26と同様に接続されている。
あるいは、図11に示されるステント110の如き端部形状であってもよい。図11に示されるステント110における軸方向一方(図11中左方)の端部112では、図11の紙面手前側の3つの交点26のうち2つずつを繋ぐように、交点26を構成する大径素線16a,16bの端部同士が、それぞれ連結部材32を介して端部部材28により接続されている。なお、ステント110における軸方向他方の端部112は、前記第1の実施形態と同様の構造とされている。また、図11の紙面奥側の3つの交点(26)においても大径素線16a,16b同士の端部が紙面手前側の3つの交点26,26,26と同様に接続されている。
尤も、ステントの端部形状として前記実施形態および図10,11に記載したものは単なる例示であって、ステントの端部形状は何等限定されるものではなく、例えば大径素線の軸方向端部は、小径素線と同様に端部処理が行われなくてもよい。
なお、前記実施形態および図10,11に示される態様では、複数本の大径素線16a,16bが採用されていたが、大径素線を1本とすることも可能である。すなわち、1本の大径素線を、小径素線により予め形成されたステント(周壁)に編み込みつつ周方向に巻回させるとともに、軸方向の端部でループ状に折り返して更に周方向に巻回させて、これを繰り返して、1本の大径素線と小径素線とによりメッシュ状の周壁を構成することも可能である。なお、大径素線の長さ方向端部同士は、ステントの軸方向中間部分でそれぞれ自由端とされてもよいが、相互に接着や溶着することが好適である。このように大径素線を1本として手技で織り込むことで、端部部材などを周壁の形成後に後固着する手間などが回避され得る。
また、前記第2,3の実施形態では、予め小径素線18a,18bからなるステント(周壁)を形成した後、当該ステント(周壁)に大径素線16a,16bを手技により織成していたが、例えば予め大径素線からなるステント(周壁)を形成した後、当該ステント(周壁)に小径素線を手技により織成してもよい。そして、これら予め形成するステント(周壁)の製造方法は何等限定されるものではない。すなわち、素線を自動織機や手技で織成する他、レーザーカットや電鋳、エッチングなどで形成されてもよい。このように、手技により大径素線や小径素線を織り込む場合には、ベースとなるステント(周壁)は、例えば素線状の周壁からなる従来公知のステントであってもよい。
さらに、前記実施形態では、大径素線16a,46a,66a,86aと大径素線16b,46b,66b,86bとが互いに逆方向の螺旋形状をもっていたが、例えば大径素線は周方向の一方向のみに巻回する螺旋形状とされてもよい。また、同様に、小径素線も周方向の一方向のみに巻回する螺旋形状とされてもよい。かかる場合には、大径素線および小径素線のそれぞれのピッチに相当する隙間が拡張力の大きいまたは小さい素線により形成される気孔とされる。尤も、大径素線または小径素線、あるいはその両方は、螺旋状に延びていなくてもよい。
また、前記実施形態では、大径素線16a,16b,46a,46b,66a,66b,86a,86bおよび小径素線18a,18b,48a,48b,68a,68b,88a,88bがそれぞれ平織により織成されることで周壁12,42,62,82を構成していたが、大径素線と小径素線はそれぞれ編組されることで周壁を構成してもよい。かかる大径素線と小径素線の編組方法は何等限定されるものではなく、メリヤス編、ゴム編、パール編など従来公知の編組方法が何れも採用され得る。
さらに、前記実施形態では、拡張力の異なる複数の素線として、素線の太さを異ならせた大径素線16a,16b,46a,46b,66a,66b,86a,86bおよび小径素線18a,18b,48a,48b,68a,68b,88a,88bを採用していたが、例えば素線の材質を異ならせることで拡張力を異ならせてもよい。すなわち、例えば拡張力の大きい素線の材質としてある程度の強度を有するNi−Ti合金を採用するとともに、拡張力の小さい素線の材質としてある程度柔軟なポリノルボルネンやトランスポリイソプレンなどの形状記憶ポリマーなどが採用されてもよい。
なお、本発明では、ステントの全体が、拡張力の大きい素線と拡張力の小さい素線との複合構造とされている必要はなく、例えばステントの軸方向や周方向の一部が、拡張力の大きい素線と拡張力の小さい素線との複合構造とされていればよい。
また、前記実施形態では、大径素線16a,16b,46a,46b,66a,66b,86a,86bおよび小径素線18a,18b,48a,48b,68a,68b,88a,88bは、軸方向の略全長に亘って、そのピッチとリード角、即ちこれらにより形成される気孔20,22,50,52,70,72,90,92の大きさが略等しくされていたが、これらは軸方向で異ならされていてもよい。したがって、本発明では、軸方向の全長に亘って、拡張力の大きい素線により形成される気孔に比べて、拡張力の小さい素線により形成される気孔が小さくされる必要はなく、拡張力の大きい素線により形成される気孔よりも小さい、拡張力の小さい素線により形成される気孔が1つでもあればよい。
さらに、前記実施形態では、拡張力の異なる素線として、大径素線16a,16b,46a,46b,66a,66b,86a,86bと小径素線18a,18b,48a,48b,68a,68b,88a,88bとの2種類が採用されていたが、例えば太さや材質を異ならせるなどして、3種類以上の拡張力の異なる素線を採用してもよい。かかる場合には、拡張力が大きくなるにつれて、その素線により形成される気孔の大きさが順に大きくなる必要はなく、例えば最も拡張力が小さい素線により形成される気孔に比べて、中程度の拡張力を有する素線により形成される気孔の方が大きい際には、最も拡張力が大きい素線により形成される気孔は、上記最も拡張力の小さい素線や中程度の拡張力を有する素線により形成される気孔よりも小さくされてもよい。
本明細書等に記載された発明はもともと以下に記載の態様を含むものであり、その構成および作用効果等に関して、付記しておく。
態様(i)は、複数種類の素線が互いに織成又は編組された複合構造からなる単一層の周壁が構成されていると共に、該周壁において拡張力の大きい該素線によって形成された気孔に比して拡張力の小さい該素線によって形成された気孔の方が小さくされていることを特徴とするステントである。
本態様に従う構造とされたステントによれば、拡張力の小さい素線によって形成された小さい気孔により、狭窄を形成している組織がステント内に突出することなどが効果的に防止される。また、拡張力の小さい素線に対して拡張力の大きい素線が織成または編組されていることから、かかる拡張力の大きい素線によってステントの拡張力も十分に確保される。
特に、これら拡張力の大きい素線と拡張力の小さい素線により単一層の周壁が構成されていることから、前記特許文献1に記載のステントのように、管腔の湾曲部位に留置した際に内層と外層とで分離することもない。また、拡張力の大きい素線と拡張力の小さい素線とが互いに織成または編組されることで固定されることから、両素線を相互に接続する部材などを別途設ける必要もない。
態様(ii)は、前記態様(i)に係るステントにおいて、前記拡張力の大きい素線と前記拡張力の小さい素線とが、素材と太さとの少なくとも一方が異なっているものである。
本態様に従う構造とされたステントによれば、拡張力の大きい素線が、拡張力の小さい素線に比べて、例えば太径の素線を採用したり、素線の素材として硬い素材を採用することで、容易に形成され得る。
態様(iii)は、前記態様(i)又は(ii)の態様に係るステントにおいて、前記拡張力の大きい素線が、前記拡張力の小さい素線に比して、本数が少なくされているものである。
本態様に従う構造とされたステントによれば、拡張力の大きい素線の本数を拡張力の小さい素線に比べて少なくすることで、例えば拡張力の大きい素線間の間隔を大きくすることができて、拡張力の大きい素線により形成された気孔を、拡張力の小さい素線により形成された気孔よりも安定して大きくすることができる。また、拡張力の大きい素線の本数が多すぎる場合にはステントが硬くなり過ぎるおそれがあることから、拡張力の大きい素線の本数を拡張力の小さい素線に比べて少なくすることで、適度な柔軟性を得ることができる。
態様(iv)は、前記態様(i)〜(iii)の何れかの態様に係るステントにおいて、前記素線が、互いに逆方向の螺旋状をもって複数本配されており、且つ互いに逆方向の螺旋状とされた該素線同士が前記周壁を構成する層の内外で織り重なるように織成されて単一層を構成しているものである。
本態様に従う構造とされたステントによれば、例えば拡張力の大きい素線と拡張力の小さい素線とが互いに逆方向の螺旋状をもって織成されることから、ステントの周壁がメッシュ状とされて、気孔の大きさをより小さくすることができる。
態様(v)は、前記態様(i)〜(iv)の何れかの態様に係るステントにおいて、前記拡張力の小さい素線が、互いに逆方向の螺旋状をもって複数本配されており、且つ互いに逆方向の螺旋状とされた該拡張力の小さい素線同士が前記周壁を構成する層の内外で織り重なるように織成されている一方、前記拡張力の大きい素線が、少なくとも一方向に螺旋状をもって少なくとも1本配設されており、且つ該拡張力の小さい素線に対して該拡張力の大きい素線が前記周壁を構成する層の内外で織り重なるように織成されて単一層を構成しているものである。
本態様に従う構造とされたステントによれば、互いに逆方向の螺旋状とされた拡張力の小さい素線同士も織成されていることから、これら複数の拡張力の小さい素線により気孔の小さいメッシュ状の周壁が安定して形成され得る。
態様(vi)は、前記態様(iv)又は(v)の態様に係るステントにおいて、前記素線のうち、前記拡張力の大きい素線のリード角が、前記拡張力の小さい素線のリード角よりも大きいものである。
本態様に従う構造とされたステントによれば、拡張力の大きい素線のリード角が拡張力の小さい素線のリード角とは異ならされていることから、例えば拡張力の小さい素線により螺旋状に周壁を形成した後に、拡張力の大きい素線を、製造者の手技により拡張力の小さい素線により形成された周壁に逆方向の螺旋状をもって織成することも可能となる。特に、拡張力の大きい素線のリード角を拡張力の小さい素線のリード角よりも大きくすることで、拡張力の小さい素線によって形成された気孔よりも拡張力の大きい素線によって形成された気孔の大きさをより容易に大きくすることができる。
態様(vii)は、前記態様(iv)又は(v)の態様に係るステントにおいて、前記拡張力の大きい素線と前記拡張力の小さい素線とを含む前記素線が全体として等間隔で且つ同じリード角で織成されているものである。
本態様に従う構造とされたステントによれば、拡張力の大きい素線と拡張力の小さい素線とが、全体として等間隔且つ同じリード角で織成されていることから、例えば拡張力の大きい素線と拡張力の小さい素線とを、同時に機械により織成することも可能となる。特に、拡張力の大きい素線と拡張力の小さい素線とが同じリード角で織成されていることから、ステントの縮径時においてステントを全周に亘って略均等に収縮させることができて、シースなどに挿入した際にステントの一部が外周側に突出してシースなどに引っ掛かったりするおそれが低減され得る。
態様(viii)は、前記態様(i)〜(vii)の何れかの態様に係るステントにおいて、前記周壁における長さ方向の少なくとも一方の端部において、複数本の前記拡張力の大きい素線の端部同士が互いに連結されてループ状に折り返した端部構造となっているものである。
本態様に従う構造とされたステントによれば、端部がループ構造とされていることから、ステントが管腔内に留置された際に、端部が管腔の壁面に突き刺さったりするおそれが低減され得る。