本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形品(「成形品」という場合がある)および繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(「成形材料」という場合がある)は、少なくとも熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、有機繊維(C)、ならびに、(D)窒化ホウ素および/または黒鉛(D)を含む。
本発明において熱可塑性樹脂(A)は、成形品および成形材料を構成するマトリックス樹脂である。熱可塑性樹脂(A)としては、成形温度(溶融温度)が200〜450℃であるものが好ましく、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリールスルホン樹脂、ポリアリールケトン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリーレンサルファイドスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、これらはいずれも、電気絶縁体に相当する。これらを2種以上用いることもできる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
前記熱可塑性樹脂(A)の中でも、軽量、かつ、力学特性や成形性のバランスに優れるポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂がより好ましく、汎用性に優れることから、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂がさらに好ましい。
ポリプロピレン樹脂は、無変性のものであっても、変性されたものであってもよい。無変性のポリプロピレン樹脂としては、具体的には、プロピレンの単独重合体や、プロピレンとα−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンおよび他の熱可塑性単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体との共重合体などが挙げられる。共重合体としては、ランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等の、プロピレンを除く炭素数2〜12のα−オレフィンなどが挙げられる。共役ジエンまたは非共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。例えば、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体などが好適なものとして挙げられる。プロピレンの単独重合体は、成形品の剛性を向上させる観点から好ましい。プロピレンとα−オレフィン、共役ジエンおよび非共役ジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体とのランダムまたはブロック共重合体は、成形品の衝撃強度をより向上させる観点から好ましい。
また、変性ポリプロピレン樹脂としては、酸変性ポリプロピレン樹脂が好ましく、重合体鎖に結合したカルボン酸および/またはカルボン酸塩基を有する、酸変性ポリプロピレン樹脂がより好ましい。上記酸変性ポリプロピレン樹脂は、種々の方法で得ることができる。例えば、無変性のポリプロピレン樹脂に、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、および/または、ケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体を、グラフト重合することにより得ることができる。
ここで、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、または、ケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体としては、例えば、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物、エチレン系不飽和カルボン酸エステルなどが挙げられる。
エチレン系不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが例示される。その無水物としては、ナジック酸TM(エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが例示できる。
エチレン系不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
これらを2種以上用いることもできる。これらの中でも、エチレン系不飽和カルボン酸無水物類が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
成形品の曲げ強度および引張強度をより向上させるためには、無変性ポリプロピレン樹脂と変性ポリプロピレン樹脂を共に用いることが好ましい。特に、難燃性と、曲げ強度および引張強度とのバランスの観点から、無変性ポリプロピレン樹脂と変性ポリプロピレン樹脂の重量比が95/5〜75/25となるように用いることが好ましい。より好ましくは95/5〜80/20、さらに好ましくは90/10〜80/20である。
ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタム、あるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とする樹脂である。その主要原料としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
耐熱性や強度に優れるという点から、200℃以上の融点を有するポリアミド樹脂が特に有用である。その具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリラウリルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン12T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、ナイロン6、ナイロン66がより好ましい。
ポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、成形時の流動性に優れ、薄肉の成形品が容易に得られることから、98%濃硫酸25mlにポリアミド樹脂0.25gを溶解した溶液の25℃で測定した相対粘度が1.5〜5.0の範囲であることが好ましく、2.0〜3.5の範囲であることがより好ましい。
ポリカーボネート樹脂とは、二価フェノール類とカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。2種以上の二価フェノール類または2種以上のカーボネート前駆体を用いて得られる共重合体であってもよい。反応方法の一例として、界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。かかるポリカーボネート樹脂はそれ自体公知であり、例えば、特開2002−129027号公報に記載のポリカーボネート樹脂を使用できる。
二価フェノールとしては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン(ビスフェノールAなど)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールAが好ましく、衝撃強度により優れたポリカーボネート樹脂を得ることができる。一方、ビスフェノールAと他の二価フェノール類を用いて得られる共重合体は、高耐熱性または低吸水率の点で優れている。
カーボネート前駆体としては、例えば、カルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが挙げられる。具体的には、ホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノール類のジハロホルメートなどが挙げられる。
上記二価フェノール類とカーボネート前駆体からポリカーボネート樹脂を製造するにあたっては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノール類の酸化を防止する酸化防止剤などを使用してもよい。
また、ポリカーボネート樹脂は、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であってもよいし、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよいし、二官能性脂肪族アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂であってもよいし、二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよい。また、これらのポリカーボネート樹脂を2種以上用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量は、特に限定されないが、粘度平均分子量が10,000〜50,000のものが好ましい。粘度平均分子量が10,000以上であれば、成形品の強度をより向上させることができる。粘度平均分子量は、15,000以上がより好ましく、18,000以上がさらに好ましい。一方、粘度平均分子量が50,000以下であれば、成形加工性が向上する。粘度平均分子量は、40,000以下がより好ましく、30,000以下がさらに好ましい。ポリカーボネート樹脂を2種以上用いる場合、少なくとも1種の粘度平均分子量が上記範囲にあることが好ましい。この場合、他のポリカーボネート樹脂として、粘度平均分子量が50,000を超える、好ましくは80,000を超えるポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。かかるポリカーボネート樹脂は、エントロピー弾性が高く、ガスアシスト成形等を併用する場合に有利となる他、高いエントロピー弾性に由来する特性(ドリップ防止特性、ドローダウン特性、およびジェッティング改良などの溶融特性を改良する特性)を発揮する。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7 。
ポリカーボネート樹脂の溶融粘度は、限定されないが、200℃における溶融粘度が10〜25000Pa・sであることが好ましい。200℃における溶融粘度が10Pa・s以上であれば、成形品の強度をより向上させることができる。溶融粘度は20Pa・s以上がより好ましく、50Pa・s以上がさらに好ましい。一方、200℃における溶融粘度が25,000Pa・s以下であれば、成形加工性が向上する。溶融粘度は20,000Pa・s以下がより好ましく、15,000Pa・s以下がさらに好ましい。
ポリカーボネート樹脂として、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製“ユーピロン”(登録商標)、“ノバレックス”(登録商標)、帝人化成(株)製“パンライト”(登録商標)、出光石油化学(株)製“タフロン”(登録商標)などとして上市されているものを用いることもできる。
ポリアリーレンサルファイド樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリフェニレンサルファイドスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイドケトン樹脂、これらのランダムまたはブロック共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。中でもポリフェニレンサルファイド樹脂が特に好ましく使用される。
ポリアリーレンサルファイド樹脂は、例えば、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法など、任意の方法によって製造することができる。
得られたポリアリーレンサルファイド樹脂に、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施してもよい。
ポリアリーレンサルファイド樹脂を加熱により架橋/高分子量化する方法としては、例えば、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において、希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。加熱処理温度は200〜270℃の範囲が好ましく、加熱処理時間は2〜50時間の範囲が好ましい。処理温度と処理時間を調整することによって、得られるポリマーの粘度を所望の範囲に調整することができる。加熱処理装置としては、通常の熱風乾燥機、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置などが挙げられる。効率よく、より均一に加熱処理する観点から、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いることが好ましい。
ポリアリーレンサルファイド樹脂を減圧下で処理する場合、圧力は7,000Nm−2以下が好ましい。加熱処理装置としては、通常の熱風乾燥機、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置などが挙げられる。効率よく、より均一に加熱処理する観点から、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いることが好ましい。
ポリアリーレンサルファイド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合、有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒;ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコールもしくはフェノール系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの有機溶媒のなかでも、N−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどが好ましく使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、例えば、有機溶媒中にポリアリーレンサルファイド樹脂を浸漬せしめる方法などが挙げられる。必要により、適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒中でポリアリーレンサルファイド樹脂を洗浄する際の洗浄温度は、常温〜150℃が好ましい。なお、有機溶媒洗浄を施されたポリアリーレンサルファイド樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
ポリアリーレンサルファイド樹脂を熱水で洗浄する場合、熱水洗浄によるポリアリーレンサルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水洗浄は、通常、所定量の水に所定量のポリアリーレンサルファイド樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリアリーレンサルファイド樹脂と水との割合は、好ましくは水1リットルに対し、ポリアリーレンサルファイド樹脂200g以下の浴比が選択される。
ポリアリーレンサルファイド樹脂を酸処理する方法としては、例えば、酸または酸の水溶液にポリアリーレンサルファイド樹脂を浸漬せしめる方法などが挙げられる。必要により、適宜撹拌または加熱することも可能である。酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸;クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸;安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸;および硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。これらの酸のなかでも、酢酸または塩酸が好ましく用いられる。酸処理を施されたポリアリーレンサルファイド樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
ポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度は、310℃、剪断速度1000/秒の条件下で80Pa・s以下であることが好ましく、20Pa・s以下であることがより好ましい。溶融粘度の下限については特に制限はないが、5Pa・s以上であることが好ましい。溶融粘度の異なる2種以上のポリアリーレンサルファイド樹脂を併用してもよい。なお、溶融粘度は、キャピログラフ(東洋精機(株)社製)装置を用い、ダイス長10mm、ダイス孔直径0.5〜1.0mmの条件により測定することができる。
ポリアリーレンサルファイド樹脂として、東レ(株)製“トレリナ”(登録商標)、DIC(株)製“DIC.PPS”(登録商標)、ポリプラスチックス(株)製“ジュラファイド”(登録商標)などとして上市されているものを用いることもできる。
本発明の成形品および成形材料における熱可塑性樹脂(A)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、有機繊維(C)、ならびに、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の合計100重量部に対して、20〜93重量部である。熱可塑性樹脂(A)の含有量が20重量部未満の場合、成形品における炭素繊維(B)および有機繊維(C)の繊維分散性が低下し、衝撃強度が低下する。熱可塑性樹脂(A)の含有量は30重量部以上が好ましい。一方、熱可塑性樹脂(A)の含有量が93重量部を超える場合、相対的に炭素繊維(B)、有機繊維(C)の含有量が少なくなるため、繊維による補強効果が低くなり、衝撃強度が低下する。熱可塑性樹脂(A)の含有量は85重量部以下が好ましく、75重量部以下がより好ましい。
本発明における炭素繊維(B)は、連続した強化繊維束であり、強化材として成形品に高い力学特性を付与するものである。炭素繊維(B)は、比強度に優れるため、成形品の曲げ強度に寄与する。また、熱可塑性樹脂(A)に比べて高い熱伝導率を有しており、後述する窒化ホウ素および/または黒鉛(D)と併用することにより、熱伝導のパスが形成されやすくなることから、熱伝導率を大幅に向上させることができる。
炭素繊維(B)としては、特に制限はないが、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、気相成長系炭素繊維、これらの黒鉛化繊維などが例示される。PAN系炭素繊維はポリアクリロニトリル繊維を原料とする炭素繊維である。ピッチ系炭素繊維は石油タールや石油ピッチを原料とする炭素繊維である。セルロース系炭素繊維はビスコースレーヨンや酢酸セルロースなどを原料とする炭素繊維である。気相成長系炭素繊維は炭化水素などを原料とする炭素繊維である。これらのうち、強度と弾性率のバランスに優れる点で、PAN系炭素繊維が好ましい。また、導電性をより向上させるために、ニッケル、銅またはイッテルビウムなどの金属を被覆した炭素繊維を用いることもできる。
さらに、炭素繊維(B)としては、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が、0.05〜0.5であるものが好ましい。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面に十分な官能基量を確保でき、熱可塑性樹脂(A)とより強固な接着性を得ることができることから、成形品の曲げ強度および引張強度がより向上する。表面酸素濃度比は、0.08以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましい。また、表面酸素濃度比の上限には特に制限はないが、炭素繊維の取り扱い性、生産性のバランスから、一般的に0.5以下が好ましい。表面酸素濃度比は、0.4以下がより好ましく、0.3以下がさらに好ましい。
炭素繊維(B)の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めるものである。まず、溶剤で炭素繊維表面にサイジング剤などが付着している場合には、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去する。炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積を、K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積を、K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
ここで、表面酸素濃度比[O/C]は、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とする。
表面酸素濃度比[O/C]を0.05〜0.5に調整する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法を挙げることができる。中でも電解酸化処理が好ましい。
炭素繊維(B)の平均繊維径は特に限定されないが、成形品の力学特性と表面外観の観点から、1〜20μmが好ましく、3〜15μmがより好ましい。炭素繊維束とした場合の単繊維数は、特に制限はないが、100〜350,000本が好ましく、生産性の観点から、20,000〜100,000本がより好ましい。
炭素繊維(B)と熱可塑性樹脂(A)の接着性を向上する等の目的で、炭素繊維(B)は表面処理されたものであってもかまわない。表面処理の方法としては、例えば、電解処理、オゾン処理、紫外線処理等を挙げることができる。
炭素繊維(B)の毛羽立ちを防止したり、炭素繊維(A)と熱可塑性樹脂(A)との接着性を向上する等の目的で、炭素繊維はサイジング剤が付与されたものであってもかまわない。サイジング剤を付与することにより、炭素繊維表面の官能基等の表面特性を向上させ、接着性およびコンポジット総合特性を向上させることができる。
サイジング剤としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル、乳化剤あるいは界面活性剤などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。サイジング剤は、水溶性もしくは水分散性であることが好ましい。炭素繊維(B)との濡れ性に優れるエポキシ樹脂が好ましく、多官能エポキシ樹脂がより好ましい。
多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂(A)との接着性を発揮しやすい脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。脂肪族エポキシ樹脂は、柔軟な骨格のため、架橋密度が高くとも靭性の高い構造になりやすい。また、脂肪族エポキシ樹脂は、炭素繊維/熱可塑性樹脂間に存在させた場合、柔軟で剥離しにくくさせるため、成形品の強度をより向上させることができる。
多官能の脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。ジグリシジルエーテル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル類、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。また、ポリグリシジルエーテル化合物としては、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、アラビトールポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパングリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
上記脂肪族エポキシ樹脂の中でも、3官能以上の脂肪族エポキシ樹脂が好ましく、反応性の高いグリシジル基を3個以上有する脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物がより好ましい。脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物は、柔軟性、架橋密度、熱可塑性樹脂(A)との相溶性のバランスがよく、接着性をより向上させることができる。この中でも、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル類がさらに好ましい。
サイジング剤の付着量は、サイジング剤と炭素繊維(B)を含む炭素繊維束の合計100重量%中、0.01〜10重量%が好ましい。サイジング剤付着量が0.01重量%以上であれば、熱可塑性樹脂(A)との接着性をより向上させることができる。サイジング剤付着量は、0.05重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましい。一方、サイジング剤付着量が10重量%以下であれば、熱可塑性樹脂(A)の物性をより高いレベルで維持することができる。サイジング剤付着量は、5重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましい。
サイジング剤の付与手段としては特に限定されるものではないが、例えば、サイジング剤を溶媒(分散させる場合の分散媒を含む)中に溶解(分散も含む)したサイジング処理液を調製し、該サイジング処理液を炭素繊維に付与した後に、溶媒を乾燥・気化させ、除去する方法が挙げられる。サイジング処理液を炭素繊維に付与する方法としては、例えば、ローラーを介して炭素繊維をサイジング処理液に浸漬する方法、サイジング処理液の付着したローラーに炭素繊維を接する方法、サイジング処理液を霧状にして炭素繊維に吹き付ける方法などが挙げられる。また、サイジング剤の付与手段は、バッチ式および連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましい。この際、炭素繊維(B)に対するサイジング剤の付着量が適正範囲内で均一になるように、サイジング処理液濃度、温度、糸条張力などを調整することが好ましい。また、サイジング処理剤付与時に炭素繊維を超音波で加振させることがより好ましい。
乾燥温度と乾燥時間は、化合物の付着量によって調整すべきであるが、サイジング処理液に用いる溶媒を完全に除去し、乾燥に要する時間を短くし、かつ、サイジング剤の熱劣化を防止し、サイジング処理された炭素繊維(B)が固くなって拡がり性が悪化することを防止する観点から、乾燥温度は、150℃以上350℃以下が好ましく、180℃以上250℃以下がより好ましい。
サイジング処理液に使用する溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン等が挙げられる。取扱いが容易であることおよび防災の観点から、水が好ましい。従って、水に不溶または難溶の化合物をサイジング剤として用いる場合には、乳化剤、界面活性剤を添加し、水分散して用いることが好ましい。具体的な乳化剤または界面活性剤としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体、オレフィン−無水マレイン酸共重合体、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ソーダ等のアニオン系乳化剤、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾリン等のカチオン系乳化剤、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンエーテルエステル共重合体、ソルビタンエステルエチルオキサイド付加物等のノニオン系乳化剤等を用いることができる。相互作用の小さいノニオン系乳化剤が、サイジング剤に含まれる官能基の接着性効果を阻害しにくく好ましい。
本発明の成形品および成形材料における炭素繊維(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、有機繊維(C)、ならびに、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の合計100重量部に対して、5〜40重量部である。炭素繊維(B)の含有量が5重量部未満であると、成形品の曲げ強度および衝撃強度が低下する。炭素繊維(B)の含有量は、10重量部以上が好ましい。一方、炭素繊維(B)の含有量が40重量部を超えると、繊維の分散性が低下するため、繊維同士の絡み合いが増加する。その結果、繊維折損が起きるため、繊維長が短くなり、衝撃強度が低下する。炭素繊維(B)の含有量は30重量部以下が好ましい。
本発明の成形品および成形材料は、前述した炭素繊維(B)に加えて、有機繊維(C)を含有する。炭素繊維(B)などの無機繊維は剛直で脆いため、絡まりにくく折れやすい。そのため、無機繊維だけからなる繊維束は、成形品の製造中に切れ易かったり、成形品から脱落しやすいという課題がある。そこで、柔軟で折れにくい有機繊維(C)を含むことにより、成形品の衝撃強度を大幅に向上させることができる。
有機繊維(C)の引張破断伸度は、10〜50%が好ましい。有機繊維の引張破断伸度が10%以上であると、成形品の衝撃強度をより向上させることができる。一方、有機繊維の引張破断伸度が50%以下であると、繊維強度および成形品の剛性をより向上させることができる。40%以下がより好ましい。
有機繊維(C)の引張破断伸度(%)は、次の方法により求めることができる。標準状態(20℃、65%RH)の室内で、つかみ間隔250mm、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、繊維切断時の長さを測定し(ただし、チャック近傍で切断した場合はチャック切れとしてデータから除く)、次式により小数点2桁まで算出し、小数点2桁目を四捨五入する。データn3の平均値を求め、本発明における引張破断伸度とする。
引張破断伸度(%)=[(切断時の長さ(mm)−250)/250]×100 。
有機繊維(C)の単繊維繊度は、0.1〜10dtexが好ましい。
有機繊維(C)は、成形品の力学特性を大きく低下させない範囲で適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエチレン・プロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマーなどのフッ素樹脂、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミドなどの液晶ポリマー、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド、ポリアクリロニトリル等の樹脂を紡糸して得られる繊維を挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。これらの有機繊維(C)の中から、引張破断伸度や熱可塑性樹脂(A)との組み合わせにより適宜選択して用いることが好ましい。特に、熱可塑性樹脂(A)の成形温度(溶融温度)に対して、有機繊維(C)の溶融温度が30℃〜150℃高いことが好ましく、50〜100℃高いことがより好ましい。あるいは、熱可塑性樹脂(A)と非相溶性である樹脂を用いてなる有機繊維(C)は、成形品内に繊維状態を保ったまま存在するため、成形品の衝撃強度をより向上できるため好ましい。溶融温度の高い有機繊維(C)として、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、フッ素樹脂繊維などが挙げられる。本発明における有機繊維(C)としては、これらからなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維を用いることが好ましい。
本発明において、成形品および成形材料中の有機繊維(C)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、有機繊維(C)、ならびに、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の合計100重量部に対して、1〜30重量部である。有機繊維(C)の含有量が1重量部未満である場合、成形品の衝撃強度が低下する。有機繊維(C)の含有量は5重量部以上が好ましい。一方、有機繊維(C)の含有量が30重量部を超える場合、繊維同士の絡み合いが増加し、成形品中における有機繊維(C)の分散性が低下し、成形品の衝撃強度の低下を引き起こすことが多い。有機繊維(C)の含有量は20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましい。
本発明の成形品および成形材料は、さらに窒化ホウ素および/または黒鉛(D)を含有する。本発明において、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)は、成形品の熱伝導率を向上させる効果を奏する。さらに、興味深いことに、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)を含有することにより、前述した炭素繊維(B)および有機繊維(C)の成形品における重量平均繊維長を長くすることができ、曲げ強度を大幅に向上させることができる。また、成形品の厚み方向の熱伝導率を高くすることができる。この理由については断定できないが、おそらく、炭素繊維(B)および有機繊維(C)の周囲に、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)が存在することにより、成形時に窒化ホウ素および/または黒鉛(D)が剪断力を受けて剪断力を分散するため、炭素繊維(B)および有機繊維(C)の折損を抑制し、炭素繊維(B)および有機繊維(C)の重量平均繊維長を長くすることができるものと推定される。かかる効果は、窒化ホウ素または黒鉛のいずれによっても奏されるが、炭素繊維(B)および有機繊維(C)の重量平均繊維長を長くする効果および熱伝導率のバランスの観点から、黒鉛を含有することが好ましい。
黒鉛としては、特に限定されないが、天然黒鉛、各種の人工黒鉛などが挙げられる。天然黒鉛としては、例えば、土状黒鉛、塊状黒鉛、鱗片状黒鉛などが挙げられる。人工黒鉛とは、無定形炭素を熱処理することにより不規則な配列の微小黒鉛結晶を人工的に配向させたものであり、一般炭素材料に使用される人工黒鉛の他、キッシュ黒鉛、分解黒鉛、熱分解黒鉛などが挙げられる。一般炭素材料に使用される人工黒鉛は、石油コークスや石炭系ピッチコークスを主原料として、黒鉛化処理により製造することができる。これらの中でも、曲げ強度、衝撃強度および熱伝導率をより向上させる観点から、鱗片状黒鉛が好ましい。
鱗片状黒鉛とは、魚の鱗のような薄く平たい形状を示す。鱗片状の黒鉛は、比表面積が大きいため、良好な導電パスを形成しやすい。鱗片状黒鉛のアスペクト比が2.5以上のものが好ましい。鱗片状黒鉛のアスペクト比は、鱗片状黒鉛の長軸方向の長さ(鱗片状黒鉛の最も長い径)をA、鱗片状黒鉛の短軸方向の長さ(鱗片状黒鉛の厚み方向の長さ)をBとしたときに、Bに対するAの比率(A/B)で表される。アスペクト比は、例えば走査型電子顕微鏡を用いて、粒子を拡大観察(例えば倍率1000倍)にすることにより、測定することができる。
また、本発明の成形品における窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の最大粒径は、10〜100μmであることが好ましい。成形品中に含まれる窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の最大粒径を10μm以上とすることにより、熱伝導のパス形成を効率的に進めることができ、熱伝導率をより向上させることができる。一方、成形品中に含まれる窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の最大粒径を100μm以下とすることにより、成形品の外観を向上させることができる。
ここで、本発明における窒化ホウ素および/または黒鉛(D)黒鉛の最大粒径とは、成形品の断面を、倍率を200〜2000倍として写真撮影し、写真上に観察される窒化ホウ素および/または黒鉛のうち、粒径の大きいものから50個選択し、50個の粒径を測定した平均値をいう。ここでいう平均値は相加平均のことであり、粒径の総和を粒径数である50で除した値をいう。なお、写真上に観察される窒化ホウ素および/または黒鉛が円形でない場合には、最大径を粒径として測定する。
なお、成形品における窒化ホウ素および/または黒鉛の粒径を前記範囲にするための方法としては、例えば、窒化ホウ素および/または黒鉛の粒径が後述する好ましい範囲にある繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を成形する方法などが挙げられる。
また、本発明の成形品における窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、有機繊維(C)、ならびに、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の合計100重量部に対して、1〜30重量部である。ここで、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の含有量とは、窒化ホウ素または黒鉛のいずれか一方のみを含む場合にはその含有量を指し、両方を含む場合にはその合計含有量を指す。窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の含有量が1重量部未満では、得られる成形品の熱伝導率が低下する。また、前述した炭素繊維(B)および有機繊維(C)の成形品における重量平均繊維長を長くする効果が低減するためことができ、曲げ強度が低下する。窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の含有量は、5重量部以上が好ましい。一方、黒鉛の含有量が30重量部を越えると、衝撃強度が低下する。窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の含有量は25重量部以下が好ましい。
本発明の成形品および成形材料は、熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、有機繊維(C)、ならびに、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)に加えて、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(A)より低い化合物(E)(以下、「化合物(E)」と記載する場合がある)を含むことが好ましい。化合物(E)は、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(A)より低いことにより、成形時における化合物(E)の流動性が高く、炭素繊維(B)と有機繊維(C)の熱可塑性樹脂(A)内への分散効果を高めることができる。化合物(E)としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、環状ポリアリーレンスルフィド樹脂などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。化合物(E)としては、熱可塑性樹脂(A)との親和性の高いものが好ましい。熱可塑性樹脂(A)との親和性の高い化合物(E)を選択することにより、成形材料の製造時や成形時に、熱可塑性樹脂(A)と効率良く相溶するため、炭素繊維(B)および有機繊維(C)の分散性をより向上させることができる。
化合物(E)は、熱可塑性樹脂(A)との組み合わせに応じて適宜選択される。例えば、成形温度が150℃〜270℃の範囲であれば、テルペン樹脂が好適に用いられる。成形温度が270℃〜320℃の範囲であれば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、環状ポリアリーレンサルファイド樹脂が好適に用いられる。具体的には、熱可塑性樹脂(A)がポリプロピレン樹脂である場合は、化合物(E)はテルペン樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂やポリアリーレンサルファイド樹脂である場合は、化合物(E)はエポキシ樹脂、フェノール樹脂、環状ポリアリーレンスルフィド樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂(A)がポリアミド樹脂である場合は、化合物(E)はテルペンフェノール樹脂が好ましい。
化合物(E)の200℃における溶融粘度は、0.01〜10Pa・sが好ましい。200℃における溶融粘度が0.01Pa・s以上であれば、化合物(E)を起点とする破壊をより抑制し、成形品の衝撃強度をより向上させることができる。溶融粘度は、0.05Pa・s以上がより好ましく、0.1Pa・s以上がさらに好ましい。一方、200℃における溶融粘度が10Pa・s以下であれば、化合物(E)を炭素繊維(B)および有機繊維(C)の内部まで含浸させやすい。このため、本発明の成形材料を成形する際、炭素繊維(B)および有機繊維(C)の分散性をより向上させることができる。溶融粘度は、5Pa・s以下が好ましく、2Pa・s以下がより好ましい。ここで、熱可塑性樹脂(A)および化合物(E)の200℃における溶融粘度は、40mmのパラレルプレートを用いて、0.5Hzにて、粘弾性測定器により測定することができる。
なお、後述のとおり、炭素繊維(B)および有機繊維(C)に化合物(E)を付着させて(F)複合繊維束を得るに際し、化合物(E)を供給する際の溶融温度(溶融バス内の温度)は100〜300℃が好ましい。そこで、化合物(E)の炭素繊維(B)および有機繊維(C)への含浸性の指標として、化合物(E)の200℃における溶融粘度に着目した。200℃における溶融粘度が上記の好ましい範囲であれば、かかる好ましい溶融温度範囲において、炭素繊維(B)および有機繊維(C)への含浸性に優れるため、炭素繊維(B)および有機繊維(C)の分散性をより向上させ、成形品の曲げ強度、引張強度をより向上させることができる。
化合物(E)の数平均分子量は、200〜50,000が好ましい。数平均分子量が200以上であれば、成形品の曲げ強度および引張強度をより向上させることができる。数平均分子量は1,000以上がより好ましい。また、数平均分子量が50,000以下であれば、化合物(E)の粘度が適度に低いことから、成形品中に含まれる炭素繊維(B)および有機繊維(C)への含浸性に優れ、成形品中における炭素繊維(B)および有機繊維(C)の分散性をより向上させることができる。数平均分子量は3,000以下がより好ましい。なお、かかる化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
化合物(E)は、成形温度における10℃/分昇温(空気中)における加熱減量が5重量%以下であることが好ましい。より好ましくは3重量%以下である。かかる加熱減量が5重量%以下の場合、炭素繊維(B)および有機繊維(C)へ含浸した際に分解ガスの発生を抑制することができ、成形した際にボイドの発生を抑制することができる。また、特に高温における成形において、発生ガスを抑制することができる。
なお、本発明における加熱減量とは、加熱前の化合物(E)の重量を100%とし、前記加熱条件における加熱前後での化合物(E)の重量減量率を表し、下記式により求めることができる。なお、加熱前後の重量は、白金サンプルパンを用いて、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件にて、成形温度における重量を熱重量分析(TGA)により測定することにより求めることができる。
(加熱減量)[重量%]={(加熱前重量−加熱後重量)/加熱前重量}×100 。
また、化合物(E)の200℃における2時間加熱後の溶融粘度変化率は、2%以下であることが好ましい。溶融粘度変化率を2%以下にすることで、長時間にわたり複合繊維束(F)を製造する場合においても、付着ムラなどを抑制し、複合繊維束(F)を安定して製造することができる。溶融粘度変化率は、1.5%以下がより好ましく、1.3%以下がさらに好ましい。
ここで、化合物(E)の溶融粘度変化率は、次の方法により求めることができる。まず、40mmのパラレルプレートを用いて、0.5Hzにて、粘弾性測定器により200℃における溶融粘度を測定する。また、化合物(E)を200℃の熱風乾燥機に2時間静置した後、同様に200℃における溶融粘度を測定し、下記式により粘度変化率を算出する。
(溶融粘度変化率[%])={|(200℃にて2時間加熱前の200℃における溶融粘度−200℃にて2時間加熱後の200℃における溶融粘度)|/(200℃にて2時間加熱前の200℃における溶融粘度)}×100 。
本発明において、化合物(E)として好ましく用いられるエポキシ樹脂とは、2つ以上のエポキシ基を有する化合物であって、実質的に硬化剤が含まれておらず、加熱しても、いわゆる三次元架橋による硬化をしないものをいう。エポキシ樹脂は、エポキシ基を有することにより、炭素繊維(B)および有機繊維(C)と相互作用しやすくなり、含浸時に複合繊維束(F)と馴染みやすく、含浸しやすい。また、成形加工時の炭素繊維(B)および有機繊維(C)の分散性がより向上する。
ここで、エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エーテル結合を有する脂肪族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、アミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート等が挙げられる。
中でも、粘度と耐熱性のバランスに優れるため、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
また、化合物(E)として用いられるエポキシ樹脂の数平均分子量は、200〜5000であることが好ましい。エポキシ樹脂の数平均分子量が200以上であれば、成形品の力学特性をより向上させることができる。800以上がより好ましく、1000以上がさらに好ましい。一方、エポキシ樹脂の数平均分子量が5000以下であれば、複合繊維束(F)への含浸性に優れ、炭素繊維(B)および有機繊維(C)の分散性をより向上させることができる。4000以下がより好ましく、3000以下がさらに好ましい。なお、エポキシ樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
また、テルペン樹脂としては、例えば、有機溶媒中でフリーデルクラフツ型触媒存在下、テルペン単量体を、必要に応じて芳香族単量体等と重合して得られる重合体または共重合体などが挙げられる。
テルペン単量体としては、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノーレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類などが挙げられる。また、芳香族単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。中でも、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネンが熱可塑性樹脂(A)との相溶性に優れるため好ましく、さらに、これらのテルペン単量体の単独重合体がより好ましい。
また、これらテルペン樹脂を水素添加処理して得られる水素化テルペン樹脂や、テルペン単量体とフェノール類を、触媒存在下で反応させて得られるテルペンフェノール樹脂を用いることもできる。ここで、フェノール類としては、フェノールのベンゼン環上に、アルキル基、ハロゲン原子および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を1〜3個有するものが好ましく用いられる。その具体例としては、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、クロロクレゾール、ヒドロキノン、レゾルシノール、オルシノールなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、フェノールおよびクレゾールが好ましい。これらの中でも、水素化テルペン樹脂が、熱可塑性樹脂(A)、特にポリプロピレン樹脂との相溶性により優れるため好ましい。
また、テルペン樹脂のガラス転移温度は、特に限定しないが、30〜100℃であることが好ましい。ガラス転移温度が30℃以上であると、成形加工時に化合物(E)の取扱性に優れる。また、ガラス転移温度が100℃以下であると、成形加工時の化合物(E)の流動性を適度に抑制し、成形性を向上させることができる。
また、テルペン樹脂の数平均分子量は、200〜5000であることが好ましい。数平均分子量が200以上であれば、成形品の曲げ強度および引張強度をより向上させることができる。また、数平均分子量が5000以下であれば、テルペン樹脂の粘度が適度に低いことから含浸性に優れ、成形品中における炭素繊維(B)および有機繊維(C)の分散性をより向上させることができる。なお、テルペン樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
本発明の成形品および成形材料における化合物(E)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、有機繊維(C)、ならびに、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の合計100重量部に対して、1〜20重量部が好ましい。化合物(E)の含有量が1重量部以上であれば、成形品内での炭素繊維(B)および有機繊維(C)の流動性がより向上し、分散性がより向上する。化合物(E)の含有量は、2重量部以上が好ましく、4重量部以上が好ましい。一方、化合物(E)の含有量が20重量部以下であれば、成形品の曲げ強度、引張強度および衝撃強度をより向上させることができる。15重量部以下が好ましく、12重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
本発明の成形品および成形材料は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記(A)〜(E)に加えて他の成分を含んでもよい。他の成分の例としては、熱硬化性樹脂、炭素繊維以外の無機充填材、難燃剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、あるいは、カップリング剤などが挙げられる。
本発明の成形品は、成形品中における前記炭素繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)が0.7〜2mmである。炭素繊維(B)の平均繊維長(Lwb)が0.7mm未満の場合、成形品の曲げ強度および衝撃強度向上効果が奏しにくい。Lwbは1.0mm以上が好ましい。一方、重量平均繊維長(Lwb)が2.0mmを超える場合、炭素繊維(B)同士の単糸間での絡み合いが抑制されにくくなり、分散性が向上しにくいため、成形品の曲げ強度向上効果が奏しにくい。Lwbは1.7mm以下がより好ましい。
また、本発明の成形品は、成形品中における前記有機繊維(C)の重量平均繊維長(Lwc)が2.5〜5mmである。有機繊維(C)の重量平均繊維長(Lwc)が2.5mm未満の場合、成形品における有機繊維(C)の補強効果が奏しにくく、衝撃強度に劣る。Lwcは2.7mm以上が好ましい。一方で、平均繊維長(Lwb)が5mmを超える場合、有機繊維(C)同士の単糸間での絡み合いが抑制されにくく分散性が向上しにくいため、成形品の衝撃強度に劣る。Lwcは4mm以下がより好ましい。
ここで、本発明における「重量平均繊維長」とは、重量平均分子量の算出方法を繊維長の算出に適用し、単純に数平均を取るのではなく、繊維長の寄与を考慮した下記の式から算出される平均繊維長を指す。ただし、下記の式は、炭素繊維(B)や有機繊維(C)の繊維径および密度が一定の場合に適用される。
重量平均繊維長=Σ(Mi2×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの強化繊維の個数。
上記重量平均繊維長の測定は、次の方法により行うことができる。成形品を200〜300℃に設定したホットステージの上にガラス板間に挟んだ状態で加熱し、フィルム状にして均一分散させる。繊維が均一分散したフィルムを、光学顕微鏡(50〜200倍)にて観察する。無作為に選んだ1000本の炭素繊維(B)および有機繊維(C)の繊維長を計測して、上記式から炭素繊維(B)の重量平均繊維長(Lwb)および有機繊維(C)の重量平均繊維長(Lwc)を算出する。
なお、成形品中における炭素繊維(B)および有機繊維(C)の重量平均繊維長は、例えば、成形条件などにより調整することができる。成形条件としては、例えば、射出成形の場合、背圧や保圧力などの圧力条件、射出時間や保圧時間などの時間条件、シリンダー温度や金型温度などの温度条件などが挙げられる。具体的には、背圧などの圧力条件を増加させることで、シリンダー内での剪断力を高めることができるため、炭素繊維(A)の平均繊維長を短くすることができる。また、射出時間を短くすることでも射出時の剪断力を高くすることができ、炭素繊維(A)の平均繊維長を短くすることができる。さらにシリンダー温度や金型温度などの温度を下げることで、流動する樹脂粘度を上げることができ剪断力を高めることができるため、炭素繊維(A)の平均繊維長を短くすることができる。本発明においては、上記のように条件を適宜変更することにより、成形品中における炭素繊維(A)の平均繊維長を所望の範囲とすることができる。
また、後述する好ましい形態の成形材料を成形することによっても、前述の好ましい範囲に容易に調整することができる。
本発明の成形品は、成形品の厚み方向における定常法により測定される熱伝導率が0.5〜4W/m・Kであることが好ましい。熱伝導率が0.5W/m・K以上であると、成形品内で発生した熱を効率よく放熱することが可能となる。熱伝導率は0.6W/m・K以上がより好ましい。一方、熱伝導率が4W/m・K以下であると、放熱する前に他部品へ熱を伝えてしまうことによる電子機器の誤作動を抑制することができる。熱伝導率は3.5W/m・K以下がより好ましく、3W/m・K以下がさらに好ましい。 ここで、本発明における成形品の熱伝導率は、80℃における熱伝導率を指し、アルバック理工製GH−1Sを用いて測定することができる。
なお、成形品の厚み方向は、射出成形時の流れ方向に対して直角の方向となる。厚み方向の熱伝導率を高めることにより、発熱する部品の筐体などで用いた場合に、より効果的に放熱することができる。成形品の厚み方向における熱伝導率を前述の範囲にする方法として、例えば、成形品中の炭素繊維(B)の重量平均繊維長を前述の好ましい範囲にする方法などが挙げられる。
本発明の成形品は、曲げ強度が150〜300MPaであることが好ましい。曲げ強度が150MPa以上であると、成形品の耐久性を向上させることができる。180MPa以上がより好ましく、200MPa以上がさらに好ましい。ここで、成形品の曲げ強度は、ISO 178に準拠して測定することができる。成形品の曲げ強度を前述した範囲にする方法として、例えば、成形品内部に存在する(B)炭素繊維の重量平均繊維長を前述の好ましい範囲にする方法などが挙げられる。
次に、本発明の成形材料の形態について説明する。なお、本発明において「成形材料」とは、成形品を射出成形などで成形する際に用いる原材料を意味する。
本発明においては、熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、有機繊維(C)、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)、ならびに、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(A)より低い化合物(E)を含む繊維強化熱可塑性樹脂成形材料であって、熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、有機繊維(C)、ならびに、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の合計100重量部に対して、熱可塑性樹脂(A)を20〜93重量部、炭素繊維(B)を5〜40重量部、有機繊維(C)を1〜30重量部ならびに窒化ホウ素および/または黒鉛(D)を1〜30重量部、ならびに、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(A)より低い化合物(E)を1〜20重量部含む、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を、本発明の成形品を得るための成形材料として好適に用いることができる。
成形材料における、熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、有機繊維(C)、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)、化合物(E)としては、本発明の成形品について先に説明した(A)〜(E)を用いることができ、本発明の成形品について他の成分として例示したものを含有することもできる。また、それらの効果も先に説明したとおりである。
本発明の成形材料は、熱可塑性樹脂(A)内に、連続繊維束である炭素繊維(B)および有機繊維(C)を含む繊維束を有することが好ましい。繊維束の各単繊維間に化合物(E)が満たされている複合繊維束(F)を有してもよい。複合繊維束(F)は、繊維束に化合物(E)を含浸させてなり、化合物(E)の海に、炭素繊維(B)および有機繊維(C)が島のように分散している状態である。
本発明の成形材料において、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)は、原材料の中のいずれかに含まれていればよい。繊維束または複合繊維束(F)内に含まれていてもよいし、熱可塑性樹脂(A)中に含まれていてもよいし、その両方に含まれていてもよい。繊維束または複合繊維束(F)内に含まれる態様としては、例えば、熱可塑性樹脂(A)と窒化ホウ素および/または黒鉛(D)が、化合物(E)とともに繊維束(F)に含浸されてなる態様や、炭素繊維(B)や有機繊維(C)の表面に付着または単繊維内部に含まれる態様などが挙げられる。窒化ホウ素および/または黒鉛(D)は、熱可塑性樹脂(A)中に含まれることが好ましい。
本発明の成形材料は、前記繊維束または複合繊維束(F)が、前記熱可塑性樹脂(A)と、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)とを含有する組成物によって被覆された構造を有することが好ましい。組成物は、必要により更に他の成分を含有してもよい。ここで、「被覆された構造」とは、前記熱可塑性樹脂(A)と、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)とを含有する組成物が、繊維束または複合繊維束(F)の表面に配置されて接着している構造を指す。
本発明の成形材料化合物(E)を含有が、化合物(E)は低分子量である場合が多く、常温においては通常比較的脆く破砕しやすい固体であったり、液体であることが多い。複合繊維束(F)の外側に、熱可塑性樹脂(A)を含む構成とすることにより、高分子量の熱可塑性樹脂(A)が複合繊維束(F)を保護し、成形材料の運搬や取り扱い時の衝撃、擦過などによる化合物(E)の破砕、飛散などを抑制し、成形材料の形状を保持することができる。本発明の成形材料は、取り扱い性の観点から、成形に供されるまで前述の形状を保持することが好ましい。
複合繊維束(F)と熱可塑性樹脂(A)と、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)とを含有する組成物は、境界付近で部分的に組成物が複合繊維束(F)の一部に入り込み、相溶しているような状態であってもよいし、複合繊維束(F)に組成物が含浸しているような状態になっていてもよい。
本発明の成形材料は、繊維束断面において炭素繊維(B)と有機繊維(C)が偏在することが好ましい。ここで、繊維束断面とは、繊維束の繊維長手方向に対して垂直な断面を指す。繊維束断面において、炭素繊維(B)と有機繊維(C)が偏在することにより、成形時の炭素繊維(B)および有機繊維(C)の絡み合いを抑制し、炭素繊維(B)および有機繊維(C)が均一に分散した成形品を得ることができる。このため、成形品の衝撃強度をより向上させることができる。ここで、本発明において「偏在」とは、繊維束断面において、炭素繊維(B)と有機繊維(C)がそれぞれ全ての領域において均等に存在するのではなく、部分的に偏って存在することを言う。例えば、図1に示すような、繊維束断面において、炭素繊維(B)1が有機繊維(C)2を内包している形態や、図2に示すような、有機繊維(C)2が炭素繊維(B)1を内包している形態などのいわゆる芯鞘型構造や、図3に示すような、繊維束断面において、炭素繊維(B)1の束と有機繊維(C)2の束がある境界部によって分けられた状態でそれぞれ存在している構造などが、本発明における「偏在」の態様として挙げられる。なお、本発明において「内包」とは、炭素繊維(B)を芯部、有機繊維(C)を鞘部に配する態様や、有機繊維(C)を芯部、炭素繊維(B)を鞘部に配する態様などを指す。図3に示す態様の場合、繊維束(F)断面において炭素繊維(B)と有機繊維(C)のそれぞれ少なくとも一部がいずれも外層の熱可塑性樹脂(A)と、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)を含む組成物3に接している。このとき、炭素繊維(B)または有機繊維(C)が組成物に接している態様には、炭素繊維(B)または有機繊維(C)が化合物(E)を介して組成物に接している態様も含むものとする。
なお、本発明において、繊維束中において炭素繊維(B)、有機繊維(C)が偏在していることを確認する方法としては、例えば、成形材料の繊維長手方向に対して垂直な断面を倍率300倍に設定した光学顕微鏡にて観察し、得られた顕微鏡像の画像処理を行い解析する手法が挙げられる。
繊維束の断面において炭素繊維(B)、有機繊維(C)を偏在させる方法としては、炭素繊維(B)の束と有機繊維(C)の束とを引き揃えて上記成形材料を作製する方法が挙げられる。それぞれの束同士を引き揃えて成形材料を作製することで、炭素繊維(B)と有機繊維(C)とが独立した繊維束として存在することになり、偏在させることができる。使用する炭素繊維(B)の束と有機繊維(C)の束の単繊維数を多くすると束を大きくでき、単繊維数を少なくすると束を小さくでき、束の大きさを変えて偏在させることが可能である。
本発明の成形材料は、繊維束の長さと成形材料の長さが実質的に同じであることが好ましい。繊維束の長さが成形材料の長さと実質的に同じであることにより、成形品における炭素繊維(B)と有機繊維(C)の繊維長を長くすることができるため、より優れた力学特性を得ることができる。なお、成形材料の長さとは、成形材料中の繊維束配向方向の長さである。また、「実質的に同じ長さ」とは、成形材料内部で繊維束が意図的に切断されていたり、成形材料全長よりも有意に短い繊維束が実質的に含まれたりしないことである。特に、成形材料全長よりも短い繊維束の量について限定するわけではないが、成形材料全長の50%以下の長さの繊維束の含有量が、全繊維束中30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。成形材料は、長手方向にほぼ同一の断面形状を保ち連続であることが好ましい。
成形材料の長さは、通常3mm〜15mmの範囲である。成形材料の長さは、成形材料を倍率10〜100倍で写真撮影し、写真上に観察される成形材料のうち、成形材料の繊維束配向方向の長さを測定したものである。成形材料の測定方法は、無作為に100個選択し、100個の長さを測定して、その平均値を求めることで算出することができる。
本発明の成形材料における、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の最大粒径は、50〜500μmが好ましい。成形材料における窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の最大粒径が50μm以上であると、炭素繊維(B)および有機繊維(C)の折損をより抑制することができる。窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の粒径は、60μm以上がより好ましく、70μm以上がさらに好ましい。一方、成形材料中における窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の最大粒径が500μm以下であると、成形品における分散性を向上させ、外観を向上させることができる。窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の最大粒径は、400μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。また、成形材料における窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の最大粒径を前述の好ましい範囲にすることにより、成形品中の窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の最大粒径を前述の好ましい範囲に容易に調整することができる。
ここで、成形材料における窒化ホウ素および/または黒鉛の最大粒径は、成形品中の窒化ホウ素および/または黒鉛の最大粒径と同様に測定することができる。
上記成形材料を成形することにより、炭素繊維(B)および有機繊維(C)の分散性に優れ、曲げ強度、衝撃強度および熱伝導率に優れる成形品を得ることができる。
続いて、本発明の成形材料の製造方法について説明する。本発明の成形材料は、例えば、次の方法により得ることができる。
まず、炭素繊維(B)のロービングおよび有機繊維(C)のロービングを繊維長手方向に対して並列に合糸し、炭素繊維(B)と有機繊維(C)を有する繊維束を作製する。次いで、溶融させた化合物(E)を繊維束に含浸させて複合繊維束(F)を作製する。さらに、溶融した熱可塑性樹脂(A)と窒化ホウ素および/または黒鉛(D)を含む組成物で満たした含浸ダイに繊維束または複合繊維束(F)を導き、熱可塑性樹脂(A)と窒化ホウ素および/または黒鉛(D)を含む組成物を繊維束または複合繊維束(F)の外側に被覆させ、ノズルを通して引き抜く。冷却固化後に所定の長さにペレタイズして、成形材料を得る方法が挙げられる。熱可塑性樹脂(A)と窒化ホウ素および/または黒鉛(D)は、複合繊維束(F)の外側に含まれていれば、繊維束中に含浸されていてもよい。
また、前記方法により作製した複合繊維束(F)を熱可塑性樹脂(A)と窒化ホウ素および/または黒鉛(D)を含む組成物で被覆した成形材料と、熱可塑性樹脂(A)をペレットブレンドして、成形材料混合物を得てもよい。この場合、成形品中における炭素繊維(B)、有機繊維(C)や窒化ホウ素および/または黒鉛(D)の含有量を容易に調整することができる。また、炭素繊維(B)を熱可塑性樹脂(A)および必要により窒化ホウ素および/または黒鉛(D)と溶融混練した組成物で被覆した成形材料と、有機繊維(C)を熱可塑性樹脂(A)と必要により窒化ホウ素および/または黒鉛(D)とを溶融混練した組成物で被覆した成形材料とを、ペレットブレンドして成形材料混合物を得てもよい。化合物(E)は、炭素繊維(B)および/または有機繊維(C)に含浸させることが好ましい。また化合物(E)は炭素繊維(B)に、後述する化合物(I)を有機繊維(C)に含浸させることがより好ましい。この時、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)は、いずれの成形材料中に含まれていてもよく、また、一方の成形材料のみに含まれていてもよい。ここで、ペレットブレンドとは、溶融混練とは異なり、複数の材料(ペレット)を樹脂成分が溶融しない温度で撹拌・混合し、実質的に均一な状態とすることを指し、主に射出成形や押出成形など、ペレット形状の成形材料を用いる場合に好ましく用いられる。
成形材料混合物について、更に詳細に説明する。成形材料混合物としては、少なくとも熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)、ならびに、化合物(E)を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)(「炭素繊維強化成形材料(X)」という場合がある)と、少なくとも熱可塑性樹脂(H)、有機繊維(C)、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)、ならびに、200℃における溶融粘度が熱可塑性樹脂(H)より低い化合物(I)(「化合物(I)」という場合がある)を含む有機繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)(「有機繊維強化成形材料(Y)」という場合がある)を含むものが好ましい。炭素繊維強化成形材料(X)は、炭素繊維(B)に化合物(E)を含浸させてなる複合繊維束(G)を含み、複合繊維束(G)の外側に熱可塑性樹脂(A)と窒化ホウ素および/または黒鉛(D)を含む構成を有することが好ましく、炭素繊維(B)の長さと炭素繊維強化成形材料の長さが実質的に同じであることが好ましい。また、有機繊維強化成形材料(Y)は、有機繊維(C)に化合物(I)を含浸させてなる複合繊維束(J)を含み、複合繊維束(J)の外側に熱可塑性樹脂(H)を含む構成を有することが好ましい。なお、化合物(I)は、先に説明した化合物(E)において例示した化合物を用いることができ、化合物(E)と化合物(I)は同一の化合物であっても、異なる化合物であってもよい。熱可塑性樹脂(H)は、先に説明した熱可塑性樹脂(A)において例示した樹脂を用いることができ、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(H)は同一の化合物であっても、異なる化合物であってもよい。
炭素繊維強化成形材料(X)は、熱可塑性樹脂(A)、炭素繊維(B)、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)、ならびに、化合物(E)の合計100重量部に対して、熱可塑性樹脂(A)を20〜93重量部、炭素繊維(B)を5〜40重量部、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)を1〜30重量部、化合物(E)を1〜20重量部含むことが好ましい。有機繊維強化成形材料(Y)は、有機繊維(C)、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)、熱可塑性樹脂(H)および化合物(I)の合計100重量部に対し、有機繊維(C)を1〜30重量部、窒化ホウ素および/または黒鉛(D)を1〜30重量部、熱可塑性樹脂(H)を20〜93重量部、化合物(I)を1〜20重量部含むことが好ましい。
炭素繊維強化成形材料(X)と有機繊維強化成形材料(Y)の合計100重量部に対して、炭素繊維強化成形材料(X)を50〜80重量部、有機繊維強化成形材料(Y)を20〜50重量部配合することが好ましい。
次に本発明の成形品の製造方法について説明する。前述の本発明の成形材料を成形することにより、炭素繊維(B)および有機繊維(C)の分散性に優れ、曲げ強度、衝撃強度および熱伝導性に優れる成形品を得ることができる。成形方法としては、金型を用いた成形方法が好ましく、射出成形、押出成形、プレス成形など、種々の成形方法を用いることができる。特に射出成形機を用いた成形方法により、連続的に安定した成形品を得ることができる。射出成形の条件としては、特に規定はないが、例えば、射出時間:0.5秒〜10秒、より好ましくは2秒〜10秒、背圧:0.1MPa〜10MPa、より好ましくは2MPa〜8MPa、保圧力:1MPa〜50MPa、より好ましくは1MPa〜30MPa、保圧時間:1秒〜20秒、より好ましくは5秒〜20秒、シリンダー温度:200℃〜320℃、金型温度:20℃〜100℃の条件が好ましい。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。これらの条件、特に射出時間、背圧および金型温度を適宜選択することにより、成形品中の炭素繊維および有機繊維の繊維長を容易に調整することができる。
本発明の成形品は、力学特性、特に曲げ強度や衝撃強度および熱伝導性に優れる。本発明の成形品および成形材料の用途としては、インストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、スペアタイヤカバー、フロントエンド、構造用部材、内部部品などの自動車部品や、電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、レーザーディスク(登録商標)、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品、パーソナルコンピューター、携帯電話などに使用される筐体や、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持するキーボード支持体に代表される電気・電子機器用部材などが挙げられる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。まず、本実施例で用いる各種特性の評価方法について説明する。
(1)溶融粘度測定
各実施例および比較例に用いた熱可塑性樹脂(A)、化合物(E)について、40mmのパラレルプレートを用いて、0.5Hzにて、粘弾性測定器により200℃における溶融粘度を測定した。また、化合物(E)を200℃の熱風乾燥機に2時間静置した後、同様に200℃における溶融粘度を測定し、乾燥前後の溶融粘度変化率を測定した。
(2)重量平均繊維長の測定
成形品を200〜300℃に設定したホットステージの上にガラス板間に挟んだ状態で加熱し、フィルム状にして均一分散させた。炭素繊維(B)および有機繊維(C)が均一分散したフィルムを、光学顕微鏡(50〜200倍)にて観察した。無作為に選んだ1000本の炭素繊維(B)と、同様に無作為に選んだ1000本の有機繊維(C)について、それぞれ繊維長を計測して、下記式から重量平均繊維長を算出した。
平均繊維長=Σ(Mi2×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの繊維の個数
(3)成形品の曲げ強度測定
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片について、ISO 178に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子半径5mm)を用いて支点距離を64mmに設定し、試験速度2mm/分の試験条件にて曲げ強度を測定した。試験機として、“インストロン(登録商標)”万能試験機5566型(インストロン社製)を用いた。
(4)成形品のシャルピー衝撃強度測定
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片の平行部を切り出し、株式会社東京試験機製C1−4−01型試験機を用い、ISO179に準拠してVノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施し、衝撃強度(kJ/cm2)を算出した。
(5)成形品の熱伝導率測定
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片から、20mm×20mm×4mm厚の試験片を切り出し、アルバック理工製GH−1Sを用いて、80℃における厚み方向の熱伝導率を測定した。また、前記ISO型ダンベル試験片から20mm×4mm×4mm厚の試験片を5枚切り出し、流れ方向を垂直にして、試験片5枚を横に並べ、アルバック理工製GH−1Sを用いて、80℃における流れ方向の熱伝導率を測定した。
(6)成形品の繊維分散性評価
各実施例および比較例により得られた、80mm×80mm×3mm厚の試験片表裏それぞれの面に存在する未分散CF束の個数を目視でカウントした。評価は50枚の成形品について行い、その合計個数について繊維分散性の判定を以下の基準で行い、Aを合格とした。
A:未分散CF束が1個未満
B:未分散CF束が1個以上。
(7)成形品および成形材料の(D)黒鉛の粒径測定
各実施例および比較例により得られた80mm×10mm×4mm厚の試験片の中央部、または成形材料の断面を、倍率を200〜2000倍として写真撮影し、写真上に観察される(D)黒鉛のうち、粒径の大きいものから50個選択し、50個の粒径を測定してその平均値を求めた。なお、写真上に観察される黒鉛円形でない場合には、最大径を粒径として測定した。
(8)成形材料の長さ
成形材料を倍率10〜100倍で写真撮影し、写真上に観察される成形材料のうち、成形材料の繊維束配向方向の長さを測定した。成形材料を無作為に100個選択し、100個の長さを測定して、その平均値を求めることで算出した。
参考例1.炭素繊維(B)の作製
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm3、表面酸素濃度比[O/C]0.2の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維のストランド引張強度は4,880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。続いて、多官能性化合物としてグリセロールポリグリシジルエーテルを2重量%になるように水に溶解させたサイジング剤母液を調製し、浸漬法により炭素繊維にサイジング剤を付与し、230℃で乾燥を行った。こうして得られた炭素繊維のサイジング剤付着量は1.0重量%であった。
熱可塑性樹脂(A)
(A−1)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)を重量比85/15でペレットブレンドしたものを用いた。200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、50Pa・sであった。
(A−2)
ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、“パンライト”(登録商標)L−1225L)を用いた。200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、14000Pa・sであった。
(A−3)
ポリフェニレンサルファイド樹脂(東レ(株)製“トレリナ(登録商標)”M2888)を用いた。測定温度を310℃とした以外は、上記(1)に記載の方法により溶融粘度を測定した結果、50Pa・sであった。
有機繊維(C)
(C−1)
ポリエステル繊維(東レ(株)製、“テトロン(登録商標)”2200T−480−705M、単繊維繊度:4.6dtex、融点:260℃)を用いた。熱伝導率は、0.15W/m・Kであった。
(C−2)
ポリフェニレンサルファイド繊維(東レ(株)製“トルコン”(登録商標)400T−100−190、単繊維繊度4.0dtex、融点285℃)を用いた。熱伝導率は、0.29W/m・Kであった。
(C−3)
ポリテトラフルオロエチレン繊維(東レ(株)製“トヨフロン”(登録商標)440T−60F−S290−M190、単繊維繊度7.3dtex、融点327℃)を用いた。熱伝導率は、0.25W/m/Kであった。
(C−4)
液晶ポリエステル繊維(KBセーレン(株)製“ゼクシオン”(登録商標)220T−48f、単繊維繊度4.0dtex、融点330℃)を用いた。熱伝導率は、0.60W/m・Kであった。
黒鉛(D)
(D−1)
黒鉛:鱗片状黒鉛CFW−50A((株)中越黒鉛工業所製)を用いた。
(D−2)
窒化ホウ素:鱗片状窒化ホウ素SGP(デンカ株式会社製)を用いた。
化合物(E)
(E−1)
固体の水添テルペン樹脂(ヤスハラケミカル(株)製“クリアロン”(登録商標)P125、軟化点125℃)を用いた。これを含浸助剤塗布装置内のタンク内に投入し、タンク内の温度を200℃に設定し、1時間加熱して溶融状態にした。この時の、200℃における溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、1Pa・sであり、また、溶融粘度変化率を算出した結果、1.2%であった
(E−2)
固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製 jER1004AF(E−2)、軟化点97℃)を、熱可塑性樹脂(A)にポリカーボネート樹脂を用いた際の化合物(E)に用いた。これを、前述したP125と同様にして、溶融粘度を上記(1)に記載の方法により測定した結果、1Pa・sであり、また、溶融粘度変化率を算出した結果、1.1%であった。
(実施例1)
(株)日本製鋼所製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイを設置した長繊維強化樹脂ペレット製造装置を使用し、押出機シリンダー温度を220℃に設定し、上記に示した熱可塑性樹脂(A−1)と黒鉛(D−1)をメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。黒鉛(D−1)は、(A)〜(D)の合計100重量部に対し、20重量部とした。200℃にて加熱溶融させた化合物(E)を、(A)〜(D)の合計100重量部に対し、8.7重量部となるように吐出量を調整し、炭素繊維(B)および有機繊維(C−1)からなる繊維束に付与して複合繊維束(F)とした後、溶融した熱可塑性樹脂(A−1)と黒鉛(D−1)を含む組成物を吐出するダイス口(直径3mm)へ供給して、炭素繊維(B)および有機繊維(C−1)の周囲を被覆するように連続的に配置した。この時の複合繊維束(F)内部断面は、炭素繊維(B)および有機繊維(C−1)が偏在していた。偏在状態は、炭素繊維(B)、有機繊維(C−1)のそれぞれ少なくとも一部が、熱可塑性樹脂(A−1)と黒鉛(D−1)とを含む組成物に接していた。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断し、長繊維ペレットとした。この時、(A)〜(D)の合計100重量部に対し、炭素繊維(B)が20重量部、有機繊維(C−1)が10重量部となるように、引取速度を調整した。得られた長繊維ペレットの炭素繊維(B)および有機繊維(C)の長さと、ペレット長さは実質的に同じであった。なお、偏在状態は、得られた長繊維ペレットの繊維長手方向に対して垂直な断面を倍率300倍に設定した光学顕微鏡にて観察し、得られた顕微鏡像の画像処理を行い解析した。
こうして得られた長繊維ペレットを、射出成形機((株)日本製鋼所製J110AD)を用いて、射出時間:5秒、背圧5MPa、保圧力:20MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:230℃、金型温度:60℃の条件で射出成形することにより、成形品としてのISO型ダンベル試験片を作製した。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。得られた試験片(成形品)を、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間静置後に特性評価に供した。前述の方法により評価した評価結果をまとめて表1に示した。
(実施例2)
(A)〜(D)の合計100重量部に対し、黒鉛(D−1)が10重量部、熱可塑性樹脂(A−1)が60重量部となるようにした以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(実施例3)
有機繊維(C)を(C−2)に変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(実施例4)
熱可塑性樹脂(A)を(A−2)に、有機繊維(C)を(C−3)に、化合物(E)を(E−2)に変更し、さらに、シリンダー温度を300℃、金型温度を80℃に変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(実施例5)
熱可塑性樹脂(A)を(A−2)に、有機繊維(C)を(C−4)に、化合物(E)を(E−2)に変更し、さらに、シリンダー温度を300℃、金型温度を80℃に変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(実施例6)
(A)〜(D)の合計100重量部に対し、有機繊維(C−4)を20重量部、黒鉛(D−1)を10重量部となるように変更した以外は、実施例5と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(実施例7)
熱可塑性樹脂(A)を(A−3)に、有機繊維(C)を(C−3)に、化合物(E)を(E−2)に変更し、さらに、シリンダー温度を330℃、金型温度を130℃に変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(比較例5)
黒鉛(D)を窒化ホウ素(D−2)に変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(比較例1)
(A)〜(D)の合計100重量部に対し、熱可塑性樹脂(A−1)が60重量部、有機繊維(C)が0重量部、化合物(E)が6.4重量部となるようにした以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表2に示した。
(比較例2)
(A)〜(D)の合計100重量部に対し、熱可塑性樹脂(A−1)が35重量部、炭素繊維(B)が45重量部、有機繊維(C−1)が0重量部、化合物(E)が12.4重量部となるようにした以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表2に示した。
(比較例3)
(A)〜(D)の合計100重量部に対し、熱可塑性樹脂(A−1)が70重量部、炭素繊維(B)が0重量部、化合物(E)が4.3重量部となるようにした以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表2に示した。
(比較例4)
(A)〜(D)の合計100重量部に対し、熱可塑性樹脂(A)が70重量部、黒鉛(D−1)が0重量部となるようにした以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表2に示した。
実施例1〜4および実施例8いずれの材料も、炭素繊維(B)、有機繊維(C)および黒鉛または窒化ホウ素(D)が成形品内に存在しており、高い曲げ強度や衝撃強度を示し、加えて高い熱伝導性を示した。また、有機繊維(C)にLCP繊維を用いた、実施例5および6は、より高い熱伝導性を示した。さらに、実施例6は、実施例5と比較して黒鉛量を減らすことができるため、衝撃強度が高い結果となった。
一方、比較例1では、有機繊維(C)を含まなかったため、繊維補強効果が弱く、衝撃強度が低い結果となった。有機繊維(C)を含まず、炭素繊維(B)の含有量を多くした比較例2では、熱伝導率は発現したが、比較例1と同様に繊維補強効果が弱く、さらに、炭素繊維(B)同士が絡み合い、成形品内で繊維破断が起きたため、衝撃強度が低い結果となった。比較例3では、炭素繊維(B)を含まないため、衝撃強度、曲げ強度が低い結果となった。比較例4では、黒鉛(D)を含まないため、熱伝導性が低い結果となった。