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JP6958153B2 - ガスシールドアーク溶接方法および溶接継手の製造方法 - Google Patents
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ガスシールドアーク溶接方法および溶接継手の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、ガスシールドアーク溶接方法および溶接継手の製造方法に関する。
近年における耐摩耗鋼、高強度厚鋼板、及び高強度薄鋼板の構造物への適用は、構造の合理化や軽量化をもたらし、多くの利点を有するため、その適用範囲が拡大されている。例えば、自動車分野では低燃費化やCO排出量削減を目的とした車体の軽量化のため、高強度薄鋼板を使用するニーズが高まっている。
一方で、耐摩耗鋼、高強度厚鋼板、高強度薄鋼板等のPcmの高い鋼板を溶接すると低温割れが発生しやすく、特に、溶接の初層に低温割れが発生しやすいという問題がある。例えば、自動車用鋼板の溶接において、引張強さ980MPa級を超える高強度薄鋼板を高強度ワイヤを用いて溶接すると、溶接金属に低温割れが発生するケースが認められている。そのため、低温割れ抑制のための方法がいくつか提案されている(特許文献1)。
特開2016−137518号公報
しかしながら、特許文献1の従来技術においては、未だ、耐摩耗鋼、高強度厚鋼板、高強度薄鋼板等のPcmの高い鋼板の低温割れの抑制が十分ではなかったり、溶接ビード形状が不良になることがあるという問題があった。
上記従来技術に鑑みて、本発明者は、所定の化学成分及び所定の拡散性水素量を有するワイヤ(溶材ともいう)を使用し、ワイヤを溶融池に対して進退動させることにより、アークを断続的に発生させる溶接を行うことを見出した。
本開示の方法の要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、
C:0.05〜0.13%、
Si:0.35〜1.20%、
Mn:1.60〜3.40%、及び
Cu:0.10〜0.50%
を含有し、
P:0.030%以下、及び
S:0.020%以下、
に制限し、残部が、Fe及び不純物からなり、溶着金属の拡散性水素量が2.0ml/100g以下であるワイヤを用いて、溶融プールとコンタクトチップ間で前記ワイヤの進退動及び通電制御をしてアークを断続的に発生させて溶接を行うことを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。
(2)前記ワイヤが、質量%で、
Ni:3.40%以下、
Cr:1.20%以下、
Mo:1.00%以下、及び
Ti:0.25%以下、
からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有することを特徴とする、前記(1)に記載のガスシールドアーク溶接方法。
(3)前記ワイヤの化学成分から計算されるPcmが、鋼材の化学成分で計算されるPcmより低いことを特徴とし、
前記Pcmは、下記(1)式:
Pcm = C + Si/30 + Mn/20 + Cu/20 + Ni/60 + Cr/20 + Mo/15 + V/10 + 5B (1)
で計算され、式中、元素記号は、含有する添加元素の質量%である、前記(1)または(2)に記載のガスシールドアーク溶接方法。
(4)前記ワイヤが、ソリッドワイヤであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接方法。
(5)多層盛溶接の少なくとも初層に、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接を行うことを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接方法を用いて鋼板をガスシールドアーク溶接することを特徴とする溶接継手の製造方法。
本発明によれば、溶接継手における低温割れを抑制し、かつ良好な溶接ビード形状を得ることができる。
図1は、JIS Z3158に準拠するy形溶接割れ試験に定める継手形状の模式図である。 図2は、本発明例で得られた溶接継手の断面写真である。 図3は、比較例で得られた溶接継手の断面写真である。 図4は、多層盛溶接の継手形状の模式図である。 図5は、本発明例で用いた重ねすみ肉溶接の模式図である。 図6は、重ねすみ肉溶接部の低温割れの観察個所を説明する模式図及び断面観察写真である。
本発明によれば、特定の化学成分を有するワイヤとワイヤを溶融池に対して進退動させることによりアークを断続的に発生させる溶接とにより、低温割れを抑制して、かつビード形状の良い、良好な溶接を行うことができる。低温割れは、高強度鋼板、引張りの残留応力、及び侵入水素が原因で発生し得るが、特定の化学成分を有するワイヤを用いることにより、低温割れやビード形成不良を起こりにくくし、さらに上記溶接のアーク発生の断続化により、水分や油等の水素源の原子状水素への乖離が抑制され、低温割れを抑制することができる。
また、溶接時に母材希釈で溶接金属の合金成分が増加すると、凝固割れ及び低温割れがおこりやすくなるが、アークを断続的に発生させる上記溶接は、母材への入熱が低く、母材に起因するC、Ni等の合金成分が溶接金属に侵入する量が減少する。これにより溶接金属の硬さ上昇が抑制され、低温割れを抑制することができる。また、ビード形状は、ワイヤ中のSi量を特定量とすることで良好にできる。ワイヤを溶融池に対して進退動させることによりアークを断続的に発生させる溶接には、CMT(Cold Metal Transfer)(登録商標)溶接、シンクロフィード(登録商標)GMA溶接、及びAWP(Active Wire Feed Process)溶接がある。これらは溶接機メーカにより名称が異なるもの、同等の溶接法である。
以下、本開示の方法の実施形態の例を説明する。
1.化学組成
本開示の方法において用いられるワイヤの化学組成を上述のように規定した理由を説明する。以下の説明において、各元素の含有量を表す「%」は特に断りがない限り、ワイヤの全質量に対する質量%を意味する。
[C:0.05%以上0.13%以下]
Cは、溶接金属の強度を向上するために必要な元素である。しかし、Cが0.05%未満であるとこの効果が得られない。一方、0.13%を超えると、溶接割れ感受性が高くなる。したがって、Cは0.05〜0.13%とする。
C含有量の下限値は、好ましくは0.07%以上、より好ましくは0.08%以上である。C含有量の下限値を上記範囲にすることによって、溶接金属の強度をさらに向上することができる。C含有量の上限値は、好ましくは0.12%以下、より好ましくは0.11%以下であり、C含有量の上限値を上記範囲にすることによって、溶接割れ感受性をより低減することができる。
[Si:0.35%以上1.20%以下]
Siは、溶接金属の主脱酸剤として不可欠であると共に、低電流域でのアークを安定にする効果がある。また、溶融金属中にSiおよびOの微細介在物を生成することで、溶融金属表面のO量を減少させて溶融金属の表面張力を増大させる元素である。これによってワイヤ先端からの溶融金属の離脱が防止でき、アークが安定する。しかし、Siが0.35%未満では、前記効果が十分ではなく、低電流域のアークが不安定になりアーク切れによるビード形成不良が発生する。また、溶融金属の表面張力が低くなりワイヤ先端から溶融金属が離脱しやすくなりスパッタ発生量が多くなる。一方、Siが1.20%を超えると、溶融金属の表面張力が過度に上昇するため溶融金属がワイヤ先端から離脱し難く、溶滴が大きくなりスパッタが発生する。したがって、Siは0.35〜1.20%とする。
Si含有量の下限値は、好ましくは0.50%以上、より好ましくは0.60%以上、さらに好ましくは0.70%以上である。Si含有量の下限値を上記範囲にすることによって、脱酸効果及びアークの安定効果をさらに向上することができる。Si含有量の上限値は、好ましくは1.10%以下、より好ましくは1.00%以下である。
[Mn:1.60%以上3.40%以下]
Mnは、Siと同様に主要な脱酸剤であると共に、強度の確保のために添加する。また、FeSなどの低融点化合物が生成される前にMnSとしてSを固定することで高温割れ防止効果がある。Mnが1.60%未満であると、溶接金属の強度および靭性を十分に確保できなくなる。また、アークが不安定になる。一方、Mnが3.40%を超えると、溶融金属の表面張力が過度に低下するため溶融金属がワイヤ先端から不規則に離脱してスパッタが発生する。したがって、Mnは1.60〜3.40%とする。
Mn含有量の下限値は、好ましくは1.70%以上、より好ましくは1.75%以上である。Mn含有量の下限値を上記範囲にすることによって、脱酸効果、強度及び靭性向上効果、高温割れ防止効果をより安定して得ることができる。Mn含有量の上限値は、好ましくは3.00%以下、より好ましくは2.60%以下である。Mn含有量の上限値を上記範囲にすることによって、スパッタ発生をより安定して抑制することができる。
[Cu:0.10%以上0.50%以下]
Cuは、溶接金属の強度を向上する効果がある。また、ワイヤ表面のCuめっきにより溶接時の通電性およびワイヤ送給性が向上してアークが安定する。Cuが0.10%未満では、アークが不安定になりスパッタが発生する。一方、Cuが0.50%を超えると、溶接金属中で偏析して高温割れが発生しやすくなる。したがって、Cuは0.10〜0.50%とする。なお、Cuはワイヤ表面の銅めっき分も含む。
Cu含有量の下限値は、好ましくは0.15%以上、より好ましくは0.20%以上である。Cu含有量の下限値を上記範囲にすることによって、強度向上効果及びアーク安定効果をより安定して得ることができる。Cu含有量の上限値は、好ましくは0.40%以下、より好ましくは0.30%以下である。Cu含有量の上限値を上記範囲にすることによって、高温割れをより安定して抑制することができる。
[P:0.030%以下]
Pは不純物であり、本開示の方法に用いられるワイヤがPを過剰に含有すると、溶接金属の耐凝固割れ性が劣化する。したがって、P含有量の上限を0.030%以下に制限する。
[S:0.020%以下]
Sは不純物であり、溶融金属の表面張力と粘性に影響を与える元素であり、本開示の方法に用いられるワイヤがSを過剰に含有すると、溶融金属の表面張力が過度に低下してワイヤ先端から溶融金属が不規則に離脱してアークが不安定でスパッタが発生し、また、耐凝固割れ性が劣化する。したがって、S含有量の上限を0.020%以下に制限する。
[Ni:3.40%以下]
Niは、本開示の方法に用いられるワイヤに必須の元素ではないが、Niは、変態温度を低下させて溶接金属の組織を微細化し、溶接金属中に固溶して低温靭性を低下させることなく強度を高める作用を有する。一方、Niが3.40%を超えると、耐凝固割れ性が劣化する。したがって、ワイヤは、好ましくは3.40%以下のNiを含み、より好ましくは2.70%以下のNiを含む。Niを添加する場合、0.50%以上とすることでより効果が得られ好ましい。
[Cr:1.20%以下]
Crは、本開示の方法に用いられるワイヤに必須の元素ではないが、Crは、変態温度を低下させ、組織を微細化し、強度と靭性を向上させる作用を有する。Crが1.20%を超えると、溶接金属の硬化が著しくなり靭性と低温割れ感受性が低下する。したがって、ワイヤは、好ましくは1.20%以下のCrを含み、より好ましくは1.10%以下のCrを含む。Crを添加する場合、0.05%以上とすることで、より効果が得られ好ましい。
[Mo:1.00%以下]
Moは、本開示の方法に用いられるワイヤに必須の元素ではないが、Moは、変態温度を低下させて溶接金属の組織を微細化し、強度と低温靭性を向上させる効果を有する。Moが1.00%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり、低温靭性が安定して得られない。また低温割れ感受性が増加する。したがって、ワイヤは、好ましくは1.00%以下のMoを含み、より好ましくは0.68%以下のMoを含む。Moを添加する場合、0.30%以上とすることで、より効果が得られ好ましい。
[Ti:0.25%以下]
Tiは、本開示の方法に用いられるワイヤに必須の元素ではないが、Tiは、脱酸剤として作用するとともに溶接金属中にTiの微細酸化物を生成し溶接金属の靭性を向上させる。Tiが0.25%を超えると、靭性が低下する。したがって、ワイヤは、好ましくは0.25%以下のTiを含み、より好ましくは0.21%以下のTiを含む。Tiを添加する場合、0.09%以上とすることで、より効果が得られ好ましい。
本発明で用いるワイヤはソリッドワイヤであることが好ましい。鋼製外皮でフラックスを包んだ、いわゆるフラックス入りワイヤを用いると、フラックスから生成したスラグがビードの下に残存し溶接欠陥となる可能性があるためである。フラックス入りワイヤを用いる場合は、スラグ成分が極力少ないメタル系のフラックス入りワイヤを用いることが好ましい。
ワイヤと母材である鋼材との組み合わせは、特に限定されないが、ワイヤのPcmが鋼材のPcmより低いことが好ましい。Pcmは、溶接学会編、溶接・接合技術概論、1998年、産報出版、東京、P.118に記載される次の(1)式:
Pcm = C + Si/30 + Mn/20 + Cu/20 + Ni/60 + Cr/20 + Mo/15 + V/10 + 5B (1)
で表される。(1)式中の元素記号には、含有する元素の質量%を代入し、無添加の元素は、ゼロを代入する。
ワイヤのPcmを鋼材のPcmよりも小さくして溶接金属側を軟質にすることで、溶接金属での低温割れ感受性を下げることができる。ワイヤのPcmは、鋼材のPcmよりも、好ましくは0.01小さく、より好ましくは0.03小さく、さらに好ましくは0.05小さい。
ワイヤのPcmは、好ましくは0.10〜0.50、より好ましくは0.15〜0.40、さらに好ましくは0.20〜0.35である。鋼材のPcmは、好ましくは0.20〜0.50、より好ましくは0.25〜0.45、さらに好ましくは0.28〜0.39である。
[拡散性水素量:2.0mL/100g以下]
溶着金属に含まれる拡散性水素量は、2.0mL/100g以下、好ましくは1.9mL/100g以下、より好ましくは1.7mL/100g以下である。拡散性水素量は、主にワイヤの脂分に起因する。溶着金属の拡散性水素量の測定は、JIS Z 3118(2007年)に準拠して行われる。シールドガスは100%COガスを用いることとする。溶接法は本開示のガスシールドアーク溶接ではなく、通常の溶接法を用いて行なう。拡散性水素量が上記範囲であることにより、低温割れの抑制効果を得ることができる。溶着金属に含まれる拡散性水素量は、例えば、ワイヤ表面に塗付する送給潤滑油の種類と塗付量を調整することで、制御できる。送給潤滑油は、動植物油、鉱物油あるいは合成油の何れでもよい。動植物油としてはパーム油、菜種油、ひまし油、豚油、牛油、魚油等を、鉱物油としてはマシン油、タービン油、スピンドル油等を用いることができる。合成油としては炭化水素系、エステル系、ポリグリコール系、ポリフェノール系、シリコーン系、フロロカーボン系を用いることができる。さらに、油脂またはエステルの1種以上の基油に硫黄を含有する硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンの1種または2種以上である硫黄含有の潤滑油を用いることもできる。
2.製造方法
次に、本開示のガスシールドアーク溶接方法で用いる溶接について説明する。
溶融プールとコンタクトチップ間でワイヤの進退動及び通電制御をしてアークを断続的に発生させて溶接する方法として、CMT溶接が挙げられる。CMT溶接には、Fronius社製のCMT方式溶接電源を用いることができる。このCMT方式溶接電源は、アークの短絡を感知して、ワイヤを毎秒50〜130回送給制御して溶滴を移行することができる。ワイヤを引き戻すことにより溶滴の引き離しを促進し、また短絡時に電流を最小限に制御してスパッタを低減した溶滴移行を行うことができる。そして、ワイヤの送給及び引き戻しと同期させて電流値を制御し、アーク発生時、ワイヤを溶融プールに向かって送給し短絡を検知したらすぐにワイヤを引き戻すプロセスで、溶融プールを冷却し入熱を低減することができる。
CMT溶接によるアーク発生の断続化により、水分、油等の水素源の原子状水素への乖離を抑制することができ、低温割れが発生しにくくなる。シールドガス及びガス流量は特に限定されないが、COガス、Ar+COの2元系混合ガス、Ar+CO+Oの3元系混合ガス等であることができる。溶接条件については、特に限定されないが、例えば、電流値は約130A〜290Aであり、溶接速度は約0.1〜1.5m/分である。
シンクロフィードGMA溶接及びAWP溶接でも、上記CMT溶接と同等の溶接を行うことができる。
本開示の方法において、パス回数は1回または2回以上であることができる。パスとは溶接しようとしている継手に沿って行う1回の溶接操作をいう。パス回数が2回以上である場合、多層盛溶接の少なくとも初層に、本開示のガスシールドアーク溶接を行うことが好ましい。溶接の初層(1層目)に低温割れが発生しやすいが、初層に本開示のガスシールドアーク溶接を行うことにより、初層の低温割れを抑制することができる。パス回数が2回以上である場合、2層目以降に、本開示のガスシールドアーク溶接を使わない従来の溶接を行ってもよい。
本開示の方法で用いられるワイヤは、通常の方法で製造できる。すなわち、ソリッドワイヤの場合は、成分を調整した鋼を溶解し、原線をつくり、縮径、焼鈍、めっきをして素線をつくり、素線を伸線して、所望の直径のワイヤとして製造することができる。また、フラックス入りワイヤの場合は、外皮となる鋼帯を、長手方向に送りながら成形ロールによりオープン管(U字型)に成形して鋼製外皮とする。この成形途中で、オープン管の開口部からフラックスを供給する。開口部の相対するエッジ面を突合せて管形状とする。管を伸線し、伸線途中又は伸線工程完了後に適宜焼鈍処理して、フラックス入りワイヤを得る。エッジ面をシーム溶接して、いわゆるシームレスワイヤとすると好ましい。
本発明によれば、溶接前に鋼材を暖める予熱を行わなくても低温割れを防止することができる。したがって、サイクルタイムの向上、コスト低減、及び溶接作業性の向上を図ることができる。また、溶接時の外気温が低い場合、鋼材の板厚が厚い場合、あるいは、溶着金属のPcmが高い場合、従来技術においては、100℃を越える高温の予熱が必要なケースがあるが、本発明によれば、必要に応じてわずかな予熱を組み合わせることで、低温割れの発生を確実に抑制することができる。予熱は、例えば15〜35℃または20〜30℃で行うことができるため予熱温度を低減でき、生産性を向上できるメリットがある。
(実施例1)
(拡散性水素量の測定)
表2に示す化学成分(空欄は無添加を意味する)を有し、残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのソリッドワイヤ(溶材)を用いた。溶着金属の拡散性水素量は、ソリッドワイヤへの送給潤滑油(パーム油)の塗布量を変化させて調整した。JIS Z 3118に準拠し、シールドガスとしてCOガスを用いて通常の溶接を行って溶着金属の拡散性水素量を測定した。表3−1に、測定した拡散性水素量(Hd)を示す。
(機械的特性の評価)
板厚25mmのSM400(JIS G 3106)を2枚突合せ、図4のようにV字開先形状を形成して、低温割れ防止のため100℃の予熱を行い、表2に示す化学成分を有し残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのソリッドワイヤ(溶材)のそれぞれについて、通常のCO溶接で12パスの多層溶接を行った。溶接条件は、チップ母材間距離:20mm、電流:270A、溶接速度:0.35m/分とした。JIS Z3111に準拠して、多層溶接した溶着金属から引張試験片を採取し、溶着金属の機械的特性を評価した。表3−2に、溶着金属の降伏応力(YS)、引張強さ(TS)、及び伸び(EL)を示す。
(低温割れ、ビード形状の評価)
低温割れの評価をy形溶接割れ試験により行った。表1に示すHRC400及びHRC500クラスの2種類の耐摩耗鋼板(板厚25mm)、並びに表2に示す化学成分を有し残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのソリッドワイヤ(溶材)を用いて、図1に示すJIS Z3158に準拠するy形溶接割れ試験に定める形状の試験体を作製した。
溶接においてはシールドガスとしてCOガスを用い流量を25L/分とした。溶接電源はFronius製TPS5000CMTを用いた。溶接法を、CMT溶接または通常のCO溶接として、両者を比較した。溶接条件は、チップ母材間距離:20mm、電流:190A、溶接速度:0.20m/分とした。CMT溶接及び通常溶接とも1パスで溶接した。5℃の環境下で上記溶接を行った後、48時間以上経過してから断面調査を行い、低温割れの発生有無及びビード形状を目視にて評価した。試験条件および試験結果を表4に示す。表4の評価結果において、割れが観察された部位を括弧内に記載した。すべての試料でビード形状は良好であった。
図2及び図3に、例番号1及び6で得られたy形溶接割れ試験の溶接継手の長手方向に垂直に切断した断面写真を示す。本発明例で得られた溶接継手には割れは認められなかった。他方、比較例で得られた溶接継手には、HAZ(熱影響部)または溶接金属の少なくとも一方に低温割れが観察された。
Figure 0006958153
Figure 0006958153
Figure 0006958153
Figure 0006958153
Figure 0006958153
(実施例2)
(拡散性水素量の測定)
表6に示す化学成分(空欄は無添加を意味する)を有し、残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのソリッドワイヤ(溶材)を用いた。溶着金属の拡散性水素量は、ソリッドワイヤへの送給潤滑油(パーム油)の塗布量を変化させて調整した。JIS Z 3118に準拠し、シールドガスとしてCOガスを用いて通常の溶接を行って溶着金属の拡散性水素量を測定した。表7−1に、測定した拡散性水素量(Hd)を示す。
(機械的特性の評価)
板厚25mmのSM400(JIS G 3106)を2枚突合せ、図4に示すようにV字開先形状を形成して、低温割れ防止のため100℃の予熱を行い、表6に示す化学成分を有し残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのソリッドワイヤ(溶材)のそれぞれについて、通常のCO溶接で12パスの多層溶接を行った。溶接条件は、チップ母材間距離:20mm、電流:260A、溶接速度:0.30m/分とした。JIS Z3111に準拠して、多層溶接した溶着金属から引張試験片を採取し、溶着金属の機械的特性を評価した。表7−2に、溶着金属の降伏応力(YS)、引張強さ(TS)、及び伸び(EL)を示す。
(低温割れ、ビード形状の評価)
低温割れの評価をy形溶接割れ試験により行った。表5に示す鋼板(板厚25mm)、及び表6に示す化学成分を有し残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのソリッドワイヤ(溶材)を用いて、図1に示すJIS Z3158に準拠するy形溶接割れ試験に定める形状の試験体を作製した。
溶接においては、シールドガスとしてCOガスを用い流量を25L/分とした。溶接電源はFronius製TPS5000CMTを用いた。溶接法を、CMT溶接または通常のCO溶接として、両者を比較した。溶接条件は、チップ母材間距離:20mm、電流:190A、溶接速度:0.20m/分とした。CMT溶接及び通常溶接とも1パスで溶接した。室温の環境下で上記溶接を行った後、48時間以上経過してから断面調査を行い、低温割れの発生有無及びビード形状を目視にて評価した。試験条件および試験結果を表8に示す。表8の評価結果において、割れが観察された部位を括弧内に記載した。すべての試料でビード形状は良好であった。
本発明例で得られた溶接継手には割れは認められなかった。他方、比較例で得られた溶接継手には、溶接金属に横割れが観察された。
Figure 0006958153
Figure 0006958153
Figure 0006958153
Figure 0006958153
Figure 0006958153
(実施例3)
(拡散性水素量の測定)
表10に示す化学成分(空欄は無添加を意味する)を有し残部が鉄および不純物からなる、引張り強度クラスが800MPa級及び950MPa級の3種類の高強度ソリッドワイヤ(3−1〜3−3)(ワイヤ径:φ1.2mm)並びにフラックス入りワイヤ(3−4)(ワイヤ径:φ1.2mm)を用いた。表10のフラックス入りワイヤ(3−4)には、表に記載の合金成分以外に、TiO:5.5%、SiO:0.3%、Al:0.1%、及びF換算値:0.06%の弗化物のスラグ成分が含まれる。フラックス入りワイヤの場合の%は、外皮も含めたワイヤ全質量に対する質量%で表す。
溶着金属の拡散性水素量は、ワイヤへの送給潤滑油(パーム油)の塗布量を変化させて調整した。JIS Z 3118に準拠し、シールドガスとしてCOガスを用いて通常の溶接を行って溶着金属の拡散性水素量を測定した。表11−1に、測定した拡散性水素量(Hd)を示す。
(機械的特性の評価)
板厚25mmのSM400(JIS G 3106)を2枚突合せ、図4のようにV字開先形状を形成して、低温割れ防止のため100℃の予熱を行い、表10に示す化学成分を有し残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのワイヤ(溶材)のそれぞれについて、通常のCO溶接で12パスの多層溶接を実施した。溶接条件は、チップ母材間距離:20mm、電流:270A、溶接速度:0.35m/分とした。JIS Z3111に準拠して、多層溶接した溶着金属から引張試験片を採取し、溶着金属の機械的特性を評価した。表11−2に、溶着金属の降伏応力(YS)、引張強さ(TS)、及び伸び(EL)を示す。
(低温割れ、ビード形状の評価)
表9に示す引張強さが1180〜1800MPa級の3種類の自動車用薄鋼板、及び表10に示す化学成分を有し残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのワイヤ(溶材)を用いた。鋼板は、防錆油が付着したままとした。図5に示すように、長さが150mmで幅が60mmと40mmの2枚の自動車用薄鋼板の片側端部10mmを重ね、板厚12mmの厚板上に置き、重ね部とは反対側の端部を長さ150mmにわたって拘束溶接した後、重ねた側を110mmにわたって、1パスにて重ねすみ肉溶接を実施した。
溶接においては、シールドガスとしてAr+20%COガスを用い流量を20L/分とした。溶接電源はFronius製TPS5000CMTを用いた。溶接法を、CMT溶接またはCMTを用いないパルスMAG溶接として、両者を比較した。溶接条件は、チップ母材間距離:20mm、電流:170〜230A、溶接速度:0.80m/分とした。
室温環境下で上記溶接を行った後、48時間以上経過してから、図6に示すように溶接線に直交する方向で断面調査を行い、低温割れの発生有無及びビード形状を目視にて評価した。試験条件および試験結果を表12に示す。表12の評価結果において、割れが観察された部位を括弧内に記載した。
本発明例で得られた溶接継手には割れは観察されなかった。他方、比較例22、23、26、27、30、及び31で得られた溶接継手には、溶接金属に低温割れが認められた。比較例32は、低温割れは観察されなかったが、ワイヤ中のSi量が本発明範囲以下のため、溶接ビード形状が不良であった。比較例32以外は、ビード形状は良好であった。なお、本発明例33のみ、溶接後、継手の断面を目視観察した結果、スラグの巻き込みが少し観察された。
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Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.05〜0.13%、
    Si:0.35〜1.20%、
    Mn:1.60〜3.40%、及び
    Cu:0.10〜0.50%
    を含有し、
    P:0.030%以下、及び
    S:0.020%以下、
    に制限し、
    Ni:3.40%以下、
    Cr:1.20%以下、
    Mo:1.00%以下、及び
    Ti:0.25%以下、
    からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有し、
    残部が、Fe及び不純物からなり、溶着金属の拡散性水素量が2.0ml/100g以下であるワイヤを用いて、溶融プールとコンタクトチップ間で前記ワイヤの進退動及び通電制御をしてアークを断続的に発生させて溶接を行うことを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。
  2. 前記ワイヤの化学成分から計算されるPcmが、母材である鋼材の化学成分で計算されるPcmより低いことを特徴とし、
    前記Pcmは、(1)式:
    Pcm = C + Si/30 + Mn/20 + Cu/20 + Ni/60 + Cr/20 + Mo/15 + V/10 + 5B (1)
    で計算され、式中、元素記号は、含有する添加元素の質量%である、
    請求項1に記載のガスシールドアーク溶接方法。
  3. 前記ワイヤが、ソリッドワイヤであることを特徴とする
    請求項1または2に記載のガスシールドアーク溶接方法。
  4. 多層盛溶接の少なくとも初層に、請求項1〜のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接を行うことを特徴とする溶接方法。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接方法を用いて鋼板をガスシールドアーク溶接することを特徴とする溶接継手の製造方法。
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