JP6958153B2 - ガスシールドアーク溶接方法および溶接継手の製造方法 - Google Patents
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(1)質量%で、
C:0.05〜0.13%、
Si:0.35〜1.20%、
Mn:1.60〜3.40%、及び
Cu:0.10〜0.50%
を含有し、
P:0.030%以下、及び
S:0.020%以下、
に制限し、残部が、Fe及び不純物からなり、溶着金属の拡散性水素量が2.0ml/100g以下であるワイヤを用いて、溶融プールとコンタクトチップ間で前記ワイヤの進退動及び通電制御をしてアークを断続的に発生させて溶接を行うことを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。
(2)前記ワイヤが、質量%で、
Ni:3.40%以下、
Cr:1.20%以下、
Mo:1.00%以下、及び
Ti:0.25%以下、
からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有することを特徴とする、前記(1)に記載のガスシールドアーク溶接方法。
(3)前記ワイヤの化学成分から計算されるPcmが、鋼材の化学成分で計算されるPcmより低いことを特徴とし、
前記Pcmは、下記(1)式:
Pcm = C + Si/30 + Mn/20 + Cu/20 + Ni/60 + Cr/20 + Mo/15 + V/10 + 5B (1)
で計算され、式中、元素記号は、含有する添加元素の質量%である、前記(1)または(2)に記載のガスシールドアーク溶接方法。
(4)前記ワイヤが、ソリッドワイヤであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接方法。
(5)多層盛溶接の少なくとも初層に、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接を行うことを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接方法を用いて鋼板をガスシールドアーク溶接することを特徴とする溶接継手の製造方法。
本開示の方法において用いられるワイヤの化学組成を上述のように規定した理由を説明する。以下の説明において、各元素の含有量を表す「%」は特に断りがない限り、ワイヤの全質量に対する質量%を意味する。
Cは、溶接金属の強度を向上するために必要な元素である。しかし、Cが0.05%未満であるとこの効果が得られない。一方、0.13%を超えると、溶接割れ感受性が高くなる。したがって、Cは0.05〜0.13%とする。
Siは、溶接金属の主脱酸剤として不可欠であると共に、低電流域でのアークを安定にする効果がある。また、溶融金属中にSiおよびOの微細介在物を生成することで、溶融金属表面のO量を減少させて溶融金属の表面張力を増大させる元素である。これによってワイヤ先端からの溶融金属の離脱が防止でき、アークが安定する。しかし、Siが0.35%未満では、前記効果が十分ではなく、低電流域のアークが不安定になりアーク切れによるビード形成不良が発生する。また、溶融金属の表面張力が低くなりワイヤ先端から溶融金属が離脱しやすくなりスパッタ発生量が多くなる。一方、Siが1.20%を超えると、溶融金属の表面張力が過度に上昇するため溶融金属がワイヤ先端から離脱し難く、溶滴が大きくなりスパッタが発生する。したがって、Siは0.35〜1.20%とする。
Mnは、Siと同様に主要な脱酸剤であると共に、強度の確保のために添加する。また、FeSなどの低融点化合物が生成される前にMnSとしてSを固定することで高温割れ防止効果がある。Mnが1.60%未満であると、溶接金属の強度および靭性を十分に確保できなくなる。また、アークが不安定になる。一方、Mnが3.40%を超えると、溶融金属の表面張力が過度に低下するため溶融金属がワイヤ先端から不規則に離脱してスパッタが発生する。したがって、Mnは1.60〜3.40%とする。
Cuは、溶接金属の強度を向上する効果がある。また、ワイヤ表面のCuめっきにより溶接時の通電性およびワイヤ送給性が向上してアークが安定する。Cuが0.10%未満では、アークが不安定になりスパッタが発生する。一方、Cuが0.50%を超えると、溶接金属中で偏析して高温割れが発生しやすくなる。したがって、Cuは0.10〜0.50%とする。なお、Cuはワイヤ表面の銅めっき分も含む。
Pは不純物であり、本開示の方法に用いられるワイヤがPを過剰に含有すると、溶接金属の耐凝固割れ性が劣化する。したがって、P含有量の上限を0.030%以下に制限する。
Sは不純物であり、溶融金属の表面張力と粘性に影響を与える元素であり、本開示の方法に用いられるワイヤがSを過剰に含有すると、溶融金属の表面張力が過度に低下してワイヤ先端から溶融金属が不規則に離脱してアークが不安定でスパッタが発生し、また、耐凝固割れ性が劣化する。したがって、S含有量の上限を0.020%以下に制限する。
Niは、本開示の方法に用いられるワイヤに必須の元素ではないが、Niは、変態温度を低下させて溶接金属の組織を微細化し、溶接金属中に固溶して低温靭性を低下させることなく強度を高める作用を有する。一方、Niが3.40%を超えると、耐凝固割れ性が劣化する。したがって、ワイヤは、好ましくは3.40%以下のNiを含み、より好ましくは2.70%以下のNiを含む。Niを添加する場合、0.50%以上とすることでより効果が得られ好ましい。
Crは、本開示の方法に用いられるワイヤに必須の元素ではないが、Crは、変態温度を低下させ、組織を微細化し、強度と靭性を向上させる作用を有する。Crが1.20%を超えると、溶接金属の硬化が著しくなり靭性と低温割れ感受性が低下する。したがって、ワイヤは、好ましくは1.20%以下のCrを含み、より好ましくは1.10%以下のCrを含む。Crを添加する場合、0.05%以上とすることで、より効果が得られ好ましい。
Moは、本開示の方法に用いられるワイヤに必須の元素ではないが、Moは、変態温度を低下させて溶接金属の組織を微細化し、強度と低温靭性を向上させる効果を有する。Moが1.00%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり、低温靭性が安定して得られない。また低温割れ感受性が増加する。したがって、ワイヤは、好ましくは1.00%以下のMoを含み、より好ましくは0.68%以下のMoを含む。Moを添加する場合、0.30%以上とすることで、より効果が得られ好ましい。
Tiは、本開示の方法に用いられるワイヤに必須の元素ではないが、Tiは、脱酸剤として作用するとともに溶接金属中にTiの微細酸化物を生成し溶接金属の靭性を向上させる。Tiが0.25%を超えると、靭性が低下する。したがって、ワイヤは、好ましくは0.25%以下のTiを含み、より好ましくは0.21%以下のTiを含む。Tiを添加する場合、0.09%以上とすることで、より効果が得られ好ましい。
Pcm = C + Si/30 + Mn/20 + Cu/20 + Ni/60 + Cr/20 + Mo/15 + V/10 + 5B (1)
で表される。(1)式中の元素記号には、含有する元素の質量%を代入し、無添加の元素は、ゼロを代入する。
溶着金属に含まれる拡散性水素量は、2.0mL/100g以下、好ましくは1.9mL/100g以下、より好ましくは1.7mL/100g以下である。拡散性水素量は、主にワイヤの脂分に起因する。溶着金属の拡散性水素量の測定は、JIS Z 3118(2007年)に準拠して行われる。シールドガスは100%CO2ガスを用いることとする。溶接法は本開示のガスシールドアーク溶接ではなく、通常の溶接法を用いて行なう。拡散性水素量が上記範囲であることにより、低温割れの抑制効果を得ることができる。溶着金属に含まれる拡散性水素量は、例えば、ワイヤ表面に塗付する送給潤滑油の種類と塗付量を調整することで、制御できる。送給潤滑油は、動植物油、鉱物油あるいは合成油の何れでもよい。動植物油としてはパーム油、菜種油、ひまし油、豚油、牛油、魚油等を、鉱物油としてはマシン油、タービン油、スピンドル油等を用いることができる。合成油としては炭化水素系、エステル系、ポリグリコール系、ポリフェノール系、シリコーン系、フロロカーボン系を用いることができる。さらに、油脂またはエステルの1種以上の基油に硫黄を含有する硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンの1種または2種以上である硫黄含有の潤滑油を用いることもできる。
次に、本開示のガスシールドアーク溶接方法で用いる溶接について説明する。
(拡散性水素量の測定)
表2に示す化学成分(空欄は無添加を意味する)を有し、残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのソリッドワイヤ(溶材)を用いた。溶着金属の拡散性水素量は、ソリッドワイヤへの送給潤滑油(パーム油)の塗布量を変化させて調整した。JIS Z 3118に準拠し、シールドガスとしてCO2ガスを用いて通常の溶接を行って溶着金属の拡散性水素量を測定した。表3−1に、測定した拡散性水素量(Hd)を示す。
板厚25mmのSM400(JIS G 3106)を2枚突合せ、図4のようにV字開先形状を形成して、低温割れ防止のため100℃の予熱を行い、表2に示す化学成分を有し残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのソリッドワイヤ(溶材)のそれぞれについて、通常のCO2溶接で12パスの多層溶接を行った。溶接条件は、チップ母材間距離:20mm、電流:270A、溶接速度:0.35m/分とした。JIS Z3111に準拠して、多層溶接した溶着金属から引張試験片を採取し、溶着金属の機械的特性を評価した。表3−2に、溶着金属の降伏応力(YS)、引張強さ(TS)、及び伸び(EL)を示す。
低温割れの評価をy形溶接割れ試験により行った。表1に示すHRC400及びHRC500クラスの2種類の耐摩耗鋼板(板厚25mm)、並びに表2に示す化学成分を有し残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのソリッドワイヤ(溶材)を用いて、図1に示すJIS Z3158に準拠するy形溶接割れ試験に定める形状の試験体を作製した。
(拡散性水素量の測定)
表6に示す化学成分(空欄は無添加を意味する)を有し、残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのソリッドワイヤ(溶材)を用いた。溶着金属の拡散性水素量は、ソリッドワイヤへの送給潤滑油(パーム油)の塗布量を変化させて調整した。JIS Z 3118に準拠し、シールドガスとしてCO2ガスを用いて通常の溶接を行って溶着金属の拡散性水素量を測定した。表7−1に、測定した拡散性水素量(Hd)を示す。
板厚25mmのSM400(JIS G 3106)を2枚突合せ、図4に示すようにV字開先形状を形成して、低温割れ防止のため100℃の予熱を行い、表6に示す化学成分を有し残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのソリッドワイヤ(溶材)のそれぞれについて、通常のCO2溶接で12パスの多層溶接を行った。溶接条件は、チップ母材間距離:20mm、電流:260A、溶接速度:0.30m/分とした。JIS Z3111に準拠して、多層溶接した溶着金属から引張試験片を採取し、溶着金属の機械的特性を評価した。表7−2に、溶着金属の降伏応力(YS)、引張強さ(TS)、及び伸び(EL)を示す。
低温割れの評価をy形溶接割れ試験により行った。表5に示す鋼板(板厚25mm)、及び表6に示す化学成分を有し残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのソリッドワイヤ(溶材)を用いて、図1に示すJIS Z3158に準拠するy形溶接割れ試験に定める形状の試験体を作製した。
(拡散性水素量の測定)
表10に示す化学成分(空欄は無添加を意味する)を有し残部が鉄および不純物からなる、引張り強度クラスが800MPa級及び950MPa級の3種類の高強度ソリッドワイヤ(3−1〜3−3)(ワイヤ径:φ1.2mm)並びにフラックス入りワイヤ(3−4)(ワイヤ径:φ1.2mm)を用いた。表10のフラックス入りワイヤ(3−4)には、表に記載の合金成分以外に、TiO2:5.5%、SiO2:0.3%、Al2O3:0.1%、及びF換算値:0.06%の弗化物のスラグ成分が含まれる。フラックス入りワイヤの場合の%は、外皮も含めたワイヤ全質量に対する質量%で表す。
板厚25mmのSM400(JIS G 3106)を2枚突合せ、図4のようにV字開先形状を形成して、低温割れ防止のため100℃の予熱を行い、表10に示す化学成分を有し残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのワイヤ(溶材)のそれぞれについて、通常のCO2溶接で12パスの多層溶接を実施した。溶接条件は、チップ母材間距離:20mm、電流:270A、溶接速度:0.35m/分とした。JIS Z3111に準拠して、多層溶接した溶着金属から引張試験片を採取し、溶着金属の機械的特性を評価した。表11−2に、溶着金属の降伏応力(YS)、引張強さ(TS)、及び伸び(EL)を示す。
表9に示す引張強さが1180〜1800MPa級の3種類の自動車用薄鋼板、及び表10に示す化学成分を有し残部が鉄および不純物からなるワイヤ径がφ1.2mmのワイヤ(溶材)を用いた。鋼板は、防錆油が付着したままとした。図5に示すように、長さが150mmで幅が60mmと40mmの2枚の自動車用薄鋼板の片側端部10mmを重ね、板厚12mmの厚板上に置き、重ね部とは反対側の端部を長さ150mmにわたって拘束溶接した後、重ねた側を110mmにわたって、1パスにて重ねすみ肉溶接を実施した。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.05〜0.13%、
Si:0.35〜1.20%、
Mn:1.60〜3.40%、及び
Cu:0.10〜0.50%
を含有し、
P:0.030%以下、及び
S:0.020%以下、
に制限し、
Ni:3.40%以下、
Cr:1.20%以下、
Mo:1.00%以下、及び
Ti:0.25%以下、
からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有し、
残部が、Fe及び不純物からなり、溶着金属の拡散性水素量が2.0ml/100g以下であるワイヤを用いて、溶融プールとコンタクトチップ間で前記ワイヤの進退動及び通電制御をしてアークを断続的に発生させて溶接を行うことを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。 - 前記ワイヤの化学成分から計算されるPcmが、母材である鋼材の化学成分で計算されるPcmより低いことを特徴とし、
前記Pcmは、(1)式:
Pcm = C + Si/30 + Mn/20 + Cu/20 + Ni/60 + Cr/20 + Mo/15 + V/10 + 5B (1)
で計算され、式中、元素記号は、含有する添加元素の質量%である、
請求項1に記載のガスシールドアーク溶接方法。 - 前記ワイヤが、ソリッドワイヤであることを特徴とする
請求項1または2に記載のガスシールドアーク溶接方法。 - 多層盛溶接の少なくとも初層に、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接を行うことを特徴とする溶接方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接方法を用いて鋼板をガスシールドアーク溶接することを特徴とする溶接継手の製造方法。
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