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JP6960764B2 - 建物の健全性評価システム - Google Patents
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Description

本発明は、画像処理技術を活用した建物の健全性評価システムに関するものである。
従来、建物の構造などをモニタリングする技術が知られている(例えば、特許文献1〜5を参照)。例えば特許文献1に記載の技術は、建物に設置された加速度センサ情報から建物応答を推定し、地震時における建物躯体の健全性評価や、天井・仕上げ材の損傷度評価などを行うようにしたものである。より具体的には、この特許文献1では、加速度センサで計測された加速度時刻歴を数値積分して変位時刻歴を求め、各階の差分を求めることで層間変位時刻歴を算出し、建物健全性を評価する。また、最大加速度と損傷度を関係づけるクライテリアから天井・仕上げ材の損傷度を評価する。
なお、このようなモニタリング技術に関連して、本特許出願人は、特許文献6に示すような構造物変位モニタリングシステムを既に提案している。これは、画像処理技術を活用して構造物の変位を計測するようにしたものである。
特開2013−195354号公報 特開平11−006878号公報 特開2007−272558号公報 特開2009−258036号公報 特開2006−072411号公報 特願2015−221513号(現時点で未公開)
佐々木仁志,岡田敬一,森井雄史,黒瀬行信,渡辺泰志:地震時における建物の健全性判定支援システムの開発,日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),構造II,pp.1023-1024,2016.8.
しかしながら、上記の特許文献1の加速度センサを用いた方法では、変位量を加速度記録の数値積分によって間接的に求めるため、残留変位が生じる場合などには積分誤差の影響により過小評価されるおそれがあった。
このため、建物の健全性評価を行う上で重要となる変形量を直接的に計測できる技術が求められていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、建物の健全性評価を行う上で重要となる変形量を直接的に計測できる建物の健全性評価システムを提供することを目的とする。
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る建物の健全性評価システムは、建物を構成する部材に固定された既知形状の1個または複数個の標識を含む領域を撮影して、撮影した画像を取得する撮像手段と、前記撮像手段により取得した画像を画像解析処理して前記画像中に含まれる前記標識の位置および形状を求める画像解析手段と、前記画像解析手段により求めた前記標識の位置および形状に基づいて前記部材の変形量を計測する変形量計測手段と、計測した前記部材の変形量に基づいて建物の健全性を評価する健全性評価手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムは、上述した発明において、建物の室内の所定の領域を撮影して、撮影した画像を取得する室内撮像手段と、室内撮像手段により取得した地震前後の画像を差分解析する室内画像解析手段と、室内画像解析手段による差分解析結果と、前記変形量計測手段により計測した前記部材の変形量とに基づいて、室内の散乱度を評価する室内散乱度評価手段をさらに備えることを特徴とする。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムは、上述した発明において、前記標識は、前記部材の外観デザインに含まれる既知形状を利用したものであることを特徴とする。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムは、上述した発明において、前記標識は二次元形状であり、前記変形量計測手段は、前記標識の位置および形状に基づいて前記標識の変位量と回転角度を求め、求めた変位量と回転角度に基づいて前記部材の変形量を計測することを特徴とする。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムは、上述した発明において、前記撮像手段は、前記画像解析手段および前記変形量計測手段が格納されたサーバとネットワーク接続されており、前記変形量計測手段による計測結果は、前記サーバに接続された出力手段から出力されるように構成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムは、上述した発明において、前記撮像手段を収容するための筐体に、前記画像解析手段、前記変形量計測手段、前記変形量計測手段による計測結果を格納する格納手段、前記各手段に電源を供給する電源供給手段が収容されていることを特徴とする。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムは、上述した発明において、前記撮像手段を収容するための筐体に、前記変形量計測手段による計測結果を出力する出力手段がさらに収容されていることを特徴とする。
本発明に係る建物の健全性評価システムによれば、建物を構成する部材に固定された既知形状の1個または複数個の標識を含む領域を撮影して、撮影した画像を取得する撮像手段と、前記撮像手段により取得した画像を画像解析処理して前記画像中に含まれる前記標識の位置および形状を求める画像解析手段と、前記画像解析手段により求めた前記標識の位置および形状に基づいて前記部材の変形量を計測する変形量計測手段と、計測した前記部材の変形量に基づいて建物の健全性を評価する健全性評価手段とを備えるので、建物の健全性評価を行う上で重要となる変形量を直接的に計測することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムによれば、建物の室内の所定の領域を撮影して、撮影した画像を取得する室内撮像手段と、室内撮像手段により取得した地震前後の画像を差分解析する室内画像解析手段と、室内画像解析手段による差分解析結果と、前記変形量計測手段により計測した前記部材の変形量とに基づいて、室内の散乱度を評価する室内散乱度評価手段をさらに備えるので、家具や什器の転倒などの室内の散乱状況を把握することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムによれば、前記標識は、前記部材の外観デザインに含まれる既知形状を利用したものであるので、構造体への計測器の取り付けなどの大掛かりな作業を必要としない簡素で安価な建物の健全性評価システムを提供することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムによれば、前記標識は二次元形状であり、前記変形量計測手段は、前記標識の位置および形状に基づいて前記標識の変位量と回転角度を求め、求めた変位量と回転角度に基づいて前記部材の変形量を計測するので、部材の変形量を簡易かつ迅速に計測することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムによれば、前記撮像手段は、前記画像解析手段および前記変形量計測手段が格納されたサーバとネットワーク接続されており、前記変形量計測手段による計測結果は、前記サーバに接続された出力手段から出力されるように構成されているので、人間が計測やデータ集計をする手間を省くことができ、迅速に変形量を把握可能であるため、構造物の安全性をリアルタイムで判定することが可能になるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムによれば、前記撮像手段を収容するための筐体に、前記画像解析手段、前記変形量計測手段、前記変形量計測手段による計測結果を格納する格納手段、前記各手段に電源を供給する電源供給手段が収容されているので、地震等でシステム用の電源が失われたり、システム間のデータを送受信する通信ネットワークの機能が失われたとしても、電源供給手段を電源として変形量を計測し、その結果を格納手段に記録することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムによれば、前記撮像手段を収容するための筐体に、前記変形量計測手段による計測結果を出力する出力手段がさらに収容されているので、撮像手段に備わる出力手段から変形量を把握することができるという効果を奏する。
図1は、本発明に係る建物の健全性評価システムの実施の形態1を示す概念図である。 図2は、振動台実験の概要を示す図である。 図3は、振動台実験時の時刻歴変位波形を示す図である。 図4は、最大変位と残留変位の最大値の比較図であり、(a)は最大変位、(b)は残留変位である。 図5は、最大変位の補正効果と、健全性判定のクライテリアを示す図である。 図6は、本発明に係る建物の健全性評価システムの実施の形態2を示す概念図である。
本発明は、建物の健全性評価を行う上で重要となる層間変位を直接的に計測することのできるシステムである。
以下に、本発明に係る建物の健全性評価システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
まず、本発明に係る実施の形態1の建物の健全性評価システムについて説明する。本実施の形態1は、建物の各階に取り付けたカメラと既知形状の標識との相対変位を、画像処理技術を利用して直接的に計測し、この計測結果を基に建物の地震時における健全性評価を行うものである。なお、以下の説明では、画像処理技術を利用して直接的に変位を計測する変位計測システムとして、上記の特許文献6に記載の構造物変位モニタリングシステムを適用した場合を例にとり説明する。
図1(1)に示すように、本実施の形態1に係る建物の健全性評価システム10は、ビルのような層状建物12に適用されるものである。以下では、層状建物12が階層1F〜4Fからなる4階建ての場合を例にとり説明するが、これ以外の階層数の建物であってもよい。この健全性評価システム10は、撮像手段としての複数のカメラ14A〜14Dを備える。
カメラ14A〜14Dは、それぞれ階層1F〜4Fの天井1A〜4Aと側壁1C〜4Cの交差部に固定される。カメラ14A〜14Dの固定場所はこれに限るものではなく、建物12の構成部材に設けた標識を撮影可能な場所であればいかなる場所でもよく、例えば室内の床1B〜4Bや側壁1C〜4Cに設定してもよいし、建物12の外に設定してもよい。
一方、各カメラ14A〜14Dから斜め下方の床1B〜4B(構成部材)には、既知形状の1個または複数個からなる標識16A〜16Dが固定される。標識16A〜16Dの固定位置は床に限るものではなく、カメラ14A〜14Dの撮影画角に収まる位置であれば室内の天井や側壁であってもよい。また、カメラを建物12の外に設置した場合には、建物12の外壁等に標識を固定してもよい。
標識16A〜16Dは、二次元平面に描画可能な二次元形状で構成することができ、例えば、マーカーや星形などの形状特徴物を有する図形や模様で構成してもよい。
各カメラ14A〜14Dは、床1B〜4Bに固定された標識16A〜16Dを含む領域を所定のサンプリング周期で撮影して、画像を取得する。各カメラ14A〜14Dの向きは固定されている。したがって、カメラの画角すなわち撮影範囲は固定され、同じ領域の画像が常に取得される。カメラとしては、数十〜百万画素程度の安価なカメラを用いて構成することができる。また、このカメラとして、監視カメラ等で身近に存在するものを流用してもよい。こうすることで導入コストを下げることが可能となる。
カメラ14A〜14Dは、層状建物12内に配線された図示しない有線ネットワーク、または無線ネットワークおよびアンテナにより、階層1Fに設置されたサーバ18に接続されている。各カメラ14A〜14Dで撮影された画像は、これらのネットワークを介してリアルタイムでサーバ18に送られるようになっている。
サーバ18は、画像解析手段20と、変形量計測手段22と、健全性評価手段24と、出力手段26と、格納手段28とを有している。
画像解析手段20は、カメラ14A〜14Dにより取得した画像を画像解析処理して画像中に含まれる既知形状の標識16A〜16Dの三次元位置および形状をそれぞれ求めるものである。この画像解析手段20としては、こうした画像処理が可能な市販の画像解析ソフトを用いて構成することができる。また、画像中の既知形状の標識16A〜16Dの位置および形状を求める画像解析手法としては、例えば、格納手段28などのデータベース中に予め登録された既知形状およびその変形形状と照合して、画像中の相関度の高いドットの組み合わせを抽出するなどの周知の手法を利用することが可能である。
変形量計測手段22は、画像解析手段20により求めた標識16A〜16Dの位置および形状に基づいて計測対象箇所である床1B〜4Bの変形量を計測するものである。
次に、上記の画像解析手段20および変形量計測手段22による画像処理の概念について説明する。便宜上、各標識16A〜16Dは二次元平面に描かれた二次元の星形状の標識16で代表されるものとする。取得した画像中における層状建物12の変形前の標識16の位置と、変形後に取得した画像中における標識16の位置は変化する。このとき、星形状の重心位置は所定の方向に変位するとともに、星形状は重心位置の周りに所定方向に回転する。
そこで、まず画像解析手段20がこれら変形前後の標識16の位置および形状を求める。次に、求めた標識16の位置および形状から、変形量計測手段22が標識16の変形量(変位量と回転角度)を求める。ここで、標識16の変形量はそれが固定されている箇所の構成部材(天井、側壁、床等)の変形量と強い相関があり、構成部材の変形量を代表すると考えられる。そこで、例えば、求めた標識16の変形量と標識16が固定されている構成部材の変形量が等価であるとして、構成部材の変形量を計測する。このようにすることで、建物12の健全性評価を行う上で重要となる変形量を直接的に計測することができる。
健全性評価手段24は、変形量計測手段22で計測した変形量と、所定の健全性判定基準に基づいて建物12の健全性を評価するものである。この健全性判定基準をなすクライテリアの一例としては、例えば、最大層間変形角1/200未満は「安全・継続使用可」、1/200以上は「注意・(継続使用可)」、1/100rad以上は「危険・一時避難」、1/75rad以上は「危険・避難」がある(例えば、上記の非特許文献1を参照)。このような健全性判定基準を用いて健全性を評価する場合には、健全性評価手段24は、変形量計測手段22で計測した変形量から最大層間変形量を求め、求めた最大層間変形量と健全性判定基準に基づいて健全性を判定することによって評価する。
出力手段26は、変形量計測手段22により計測された構成部材の変形量、健全性評価手段24による評価結果などの情報を出力するためのものであり、例えばこうした情報を印刷出力するプリンタや表示出力するモニタなどにより構成することができる。
格納手段28は、カメラ14A〜14Dによる標識16A〜16Dの画像データ、標識16A〜16Dの既知形状データ、画像解析結果データ、計測結果データ、健全性判定のためのクライテリアに関するデータ、評価結果データなどを格納するものであり、例えばハードディスクやメモリなどにより構成することができる。
上記構成の動作および作用について説明する。
図1(1)に示すように、カメラ14A〜14Dで標識16A〜16Dを所定のサンプリング間隔で撮影し、有線または無線ネットワークを介してサーバ18に画像データを送信する。画像データは画像解析手段20で画像解析処理され、画像中の標識16A〜16Dの位置および形状が求められる。変形量計測手段22は、求められた標識16A〜16Dの位置および形状に基づいて、構成部材(図の例では床1B〜4B)の変形量を計測する。計測された変形量は、例えば図1(2)に示すような層間変位時刻歴として出力手段26により出力され、利用者に提供されることとなる。これにより、地震で被災した層状建物12の全体の形状変化を簡易かつ迅速に計測することができる。
また、健全性評価手段24は、変形量計測手段22で計測した変形量と、所定の健全性判定基準に基づいて建物12の健全性を判定して評価する。この結果は、例えば図1(3)に示すような判定結果として出力手段26により出力され、利用者に提供されることとなる。なお、図の例では、階層1Fと4Fが「安全」と判定され、階層3Fが「注意」、階層2Fが「危険」と判定された場合を示している。このようにして、地震時の層状建物12の健全性評価を行うことができる。
本実施の形態によれば、建物の健全性評価を行う上で重要となる層間変位を直接的に計測することができる。
なお、従来の上記の特許文献1等の方法では、計測された加速度時刻歴を数値積分して変位時刻歴を求め、各階の差分を求めることで、建物健全性評価を行うための層間変位時刻歴を算出していた。そのため、各階の時刻歴加速度記録は、時刻同期をとる必要があった。また、加速度記録を数値積分するため、残留変位が生じる場合など、積分誤差の影響により、過小評価される場合があった。
これに対し、本実施の形態では、カメラ14A等と既知形状の標識16A等との相対変位を、画像処理技術を基に直接的に計測できることから、従来の方法のように、各加速度センサについて時刻同期のとれた計測システムとする必要はない上、加速度記録では評価できなかった残留変位も計測することができ、建物12の残留変位を含めて建物健全性を評価することができる。
また、高価なシステムや、梁、ブレース等の構造体への計測器の取り付けなどの大掛かり作業を必要とせず、カメラと標識、既存のネットワークやサーバのみの安価なシステムが構築可能である。さらに、カメラが直接ネットワークへ接続することで、人間が計測やデータ集計をする手間を省くことができ、迅速に全体の変形量を演算可能であるため、建物の健全性をリアルタイムで判定可能である。
また、既存の監視カメラシステムを使ったシステム構築が可能であり、建物の健全性評価のためだけに構築せずに済むことから、システムの導入コストを大幅に削減することができる。
また、本実施の形態によれば、安価なカメラと標識のみで各計測対象箇所の変形量を計測することができる。また、変形量の要求精度に応じて、取得画像中の標識を認識可能な範囲内で、標識の形状や大きさ、配置位置や個数を自由に選定することができる。
例えば、上記の標識16A〜16Dは、構成部材(天井、床、側壁等)に新規に描画したものを用いてもよいし、あるいは構成部材の外観デザインに既に含まれる既知形状や模様を利用したものであってもよい。また、標識16A〜16Dは、同一の既知形状ではなく互いに異なる形状を用いてもよい。このように、本発明に用いられる標識は、デザインの自由度が高く、環境中のデザインの一部として組み込むことが可能であるので、構造体への計測器の取り付けなどの大掛かりな作業を必要としない簡素で安価なシステムを提供することができる。
上記の実施の形態において、カメラ(撮像手段)と標識の組数が4組である場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、これ以外の組数でもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
また、上記の実施の形態において、各カメラ14A等をそれぞれ収容する筐体が、画像解析手段20、変形量計測手段22、健全性評価手段24、出力手段26、格納手段28、バッテリ(電源供給手段)を収容するユニット構成であってもよい。このようにすれば、地震等でシステム用の電源が失われたり、サーバ18間のデータを送受信する有線ネットワークや無線ネットワークの機能が失われたとしても、各カメラ14A等にはバッテリが備わっているので、各バッテリを電源として継続して撮影を行うことができる。また、各カメラ14A等に備わる画像解析手段20、変形量計測手段22を使って変形量を継続して計測し、その結果を自身の格納手段28に記録し、さらに自身の出力手段26で出力することができる。したがって、地震等でシステム用の電源やネットワーク機能が失われた場合でも、地震で被災した層状建物12の全体の形状変化を確実に計測することができる。
<本発明の効果の検証>
本発明の効果を検証するために、カメラと既知形状の標識を用いた振動台実験を行い、上記の画像処理技術を利用した変位計測システムの計測精度を調べた。振動台実験の概要を図2に示す。この図に示すように、一般的な建物の階高を意識して、カメラと壁に設けた既知形状の標識との視点間距離を3m(=3000mm)とし、カメラを振動台上に載せて振動させた。なお、カメラと標識の高さは同程度とし、カメラの撮影方向は水平方向に設定した。
カメラのフレームレートを5fpsとし、カメラを周期1秒のサイン波で加振させた実験結果を図3に示す。図3は、上記の画像処理技術を利用した変位計測システムで計測した時間波形(画像変位)と、計測精度の高いレーザー変位計により計測した時間波形(変位計)を比較したものとなっている。この図に示すように、画像処理技術を利用した変位計測システムによる変位の最大振幅値(画像変位)は、レーザー変位計による結果の7割程度となっているが、フレームレートを5fpsとした場合でも、サイン波の形状を捉えることができており、画像処理技術を利用した変位計測システムで、変位波形を計測できていることがわかる。なお、フレームレートを上げることや、カメラレンズの歪み補正を行うことで、計測精度を高めることは可能である。さらに、残留変位が2mm程度残っているが、加速度センサでは計測できない残留変位も計測できていることがわかる。
次に、加振波をサイン波の周期を変化させた場合や、地震波形を用いた場合の結果を図4に示す。図4(a)は最大変位、(b)は残留変位であり、それぞれ画像処理技術を利用した変位計測システムによる結果(画像計測AR)と、レーザー変位計による結果(変位計)とを比較している。これらの図に示すように、画像処理技術を利用した変位計測システムは、加振波の特性を変えた場合でも、最大変位、残留変位ともに、3mm程度以上で変位を計測できている。画像処理技術を利用した変位計測システムの最大変位、残留変位の振幅値については、7割程度過小評価する傾向にあるが、その傾向は振幅の大きさや加振波の特性に関わらず安定している。そのため、画像処理技術を利用した変位計測システムによる変位値を補正することで、精度を確保することが可能である。
本実験では、カメラと既知形状の標識との視点間距離を3000mmとしていることから、建物の層間変形角に換算すると、1/1000rad以上の建物変形を計測することが可能である。したがって、上記の画像処理技術を利用した変位計測システムは、地震時における建物の健全性判定に活用することができる。
上記の振動実験結果と建物の健全性判定のクライテリアの例を図5に示す。上述したように、最大値については、7割程度過小評価する傾向にあることから、画像処理技術を利用した変位計測システムにより得られた結果(画像変位)と、これを補正した結果(画像変位+補正)を併せて示している。補正することで、計測精度が高まることがわかる。また、建物の健全性判定で重要となる層間変形角1/200rad以上において、精度良く判定できることがわかる。
以上より、本発明によれば、画像処理技術を利用した変位計測システムを適用することで、これまで加速度センサを用いて行われている地震時における建物の健全性判定と同様のことが、画像処理技術を利用した変位計測システムにより実施可能となる。
(実施の形態2)
次に、本発明に係る実施の形態2の建物の健全性評価システムについて説明する。本実施の形態2は、上記の実施の形態1で説明した画像処理技術を活用して、既知形状の標識を基にした相対変位情報と、地震前後の室内空間の差分情報から、家具・什器の転倒などの室内の散乱度を評価するものである。なお、以下では、3階建ての層状建物12に適用する場合を例にとり説明する。
図6(1)に示すように、本実施の形態2に係る建物の健全性評価システム100は、建物12の各階に固定されたカメラ14A〜14Cと、床1B〜3Bに固定された標識16A〜16Cと、1Fに設置されたサーバ18とを備える。サーバ18には、画像解析手段20と、変形量計測手段22と、室内散乱度評価手段30と、出力手段26と、格納手段28が格納されている。なお、上記の実施の形態1と同様に、サーバ18に健全性評価手段24が格納されていてもよい。これら各構成要素は、室内散乱度評価手段30を除いて、上記の実施の形態1で説明したものと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
階層1F〜3Fの側壁1D〜3Dには、家具等1E〜3E(家具や什器)がそれぞれ配置されている。カメラ14A〜14Cは、標識16A〜16Cを撮影する標識撮影部と、家具等1E〜3Eの置かれた領域を撮影する家具撮影部(室内撮像手段)を備えている。
画像解析手段20は、標識画像解析部と、室内画像解析部(室内画像解析手段)を備えている。標識画像解析部は、上記の実施の形態1で説明した画像解析手段20の作用および機能を有する。一方、室内画像解析部は、カメラ14A〜14Cの家具撮影部により取得した地震前後の家具等1E〜3Eの画像を差分解析するものである。
室内散乱度評価手段30は、画像解析手段20の室内画像解析部による差分解析結果と、変形量計測手段22により計測した変形量とに基づいて、室内の散乱度を評価するものである。
上記構成の動作および作用について説明する。
図6(1)に示すように、カメラ14A〜14Cの標識撮影部で標識16A〜16Cを所定のサンプリング間隔で撮影し、有線または無線ネットワークを介してサーバ18に画像データを送信する。画像データは画像解析手段20の標識画像解析部で画像解析処理され、画像中の標識16A〜16Cの位置および形状が求められる。変形量計測手段22は、求められた標識16A〜16Cの位置および形状に基づいて、構成部材(図の例では床1B〜3B)の変形量を計測する。計測された変形量は、例えば図6(2)に示すような層間変位時刻歴として出力手段26により出力され、利用者に提供されることとなる。これにより、地震で被災した層状建物12の全体の形状変化を簡易かつ迅速に計測することができる。
一方、カメラ14A〜14Cの家具撮影部で家具等1E〜3Eを含む領域を地震前後に撮影し、有線または無線ネットワークを介してサーバ18に画像データを送信する。地震前後の家具等1E〜3Eの画像データは画像解析手段20の室内画像解析部で差分解析される。この差分解析は周知の画像処理技術を用いて実行することができる。この差分解析の結果、例えば、図6(2)に示すような地震前のカメラ画像を基準として、地震後のカメラ画像の変化部分が抽出される。図の例では、地震後において階層3Fで「家具の転倒」が、階層2Fで「本の散乱」が、階層1Fで「散乱無」が抽出されている。
室内散乱度評価手段30は、上記の差分解析の結果と、変形量計測手段22により計測した変形量とに基づいて、室内の散乱度を評価する。この結果は、例えば図6(3)に示すような判定結果として出力手段26により出力され、利用者に提供されることとなる。これにより、利用者は、家具等1E〜3Eの転倒などの室内の散乱状況を容易に把握することができる。なお、図の例では、階層1Fが「安全」と判定され、階層2Fが「注意」、階層3Fが「危険」と判定された場合を示している。このようにして、地震時の室内の散乱度の評価を行うことができる。
したがって、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1と同様に、各階での変形量を直接的に計測できるとともに、地震前後の室内画像の差分解析の結果から、室内の散乱度状況を容易に把握することができる。
以上説明したように、本発明に係る建物の健全性評価システムによれば、建物を構成する部材に固定された既知形状の1個または複数個の標識を含む領域を撮影して、撮影した画像を取得する撮像手段と、前記撮像手段により取得した画像を画像解析処理して前記画像中に含まれる前記標識の位置および形状を求める画像解析手段と、前記画像解析手段により求めた前記標識の位置および形状に基づいて前記部材の変形量を計測する変形量計測手段と、計測した前記部材の変形量に基づいて建物の健全性を評価する健全性評価手段とを備えるので、建物の健全性評価を行う上で重要となる変形量を直接的に計測することができる。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムによれば、建物の室内の所定の領域を撮影して、撮影した画像を取得する室内撮像手段と、室内撮像手段により取得した地震前後の画像を差分解析する室内画像解析手段と、室内画像解析手段による差分解析結果と、前記変形量計測手段により計測した前記部材の変形量とに基づいて、室内の散乱度を評価する室内散乱度評価手段をさらに備えるので、家具や什器の転倒などの室内の散乱状況を把握することができる。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムによれば、前記標識は、前記部材の外観デザインに含まれる既知形状を利用したものであるので、構造体への計測器の取り付けなどの大掛かりな作業を必要としない簡素で安価な建物の健全性評価システムを提供することができる。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムによれば、前記標識は二次元形状であり、前記変形量計測手段は、前記標識の位置および形状に基づいて前記標識の変位量と回転角度を求め、求めた変位量と回転角度に基づいて前記部材の変形量を計測するので、部材の変形量を簡易かつ迅速に計測することができる。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムによれば、前記撮像手段は、前記画像解析手段および前記変形量計測手段が格納されたサーバとネットワーク接続されており、前記変形量計測手段による計測結果は、前記サーバに接続された出力手段から出力されるように構成されているので、人間が計測やデータ集計をする手間を省くことができ、迅速に変形量を把握可能であるため、構造物の安全性をリアルタイムで判定することが可能になる。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムによれば、前記撮像手段を収容するための筐体に、前記画像解析手段、前記変形量計測手段、前記変形量計測手段による計測結果を格納する格納手段、前記各手段に電源を供給する電源供給手段が収容されているので、地震等でシステム用の電源が失われたり、システム間のデータを送受信する通信ネットワークの機能が失われたとしても、電源供給手段を電源として変形量を計測し、その結果を格納手段に記録することができる。
また、本発明に係る他の建物の健全性評価システムによれば、前記撮像手段を収容するための筐体に、前記変形量計測手段による計測結果を出力する出力手段がさらに収容されているので、撮像手段に備わる出力手段から変形量を把握することができる。
以上のように、本発明に係る建物の健全性評価システムは、地震時などにおける建物の健全性を評価するのに有用であり、特に、建物の健全性評価を行う上で重要となる層間変位を直接的に計測するのに適している。
1A〜4A 天井(部材)
1B〜4B 床(部材)
1C〜4C 側壁(部材)
1D〜3D 側壁
1E〜3E 家具等
1F〜4F 階層
10,100 建物の健全性評価システム
12 層状建物(建物)
14A〜14D カメラ(撮像手段)
16A〜16D 標識
18 サーバ
20 画像解析手段
22 変形量計測手段
24 健全性評価手段
26 出力手段
28 格納手段
30 室内散乱度評価手段

Claims (6)

  1. 建物を構成する部材に固定された既知形状の1個または複数個の標識を含む領域を撮影して、撮影した画像を取得する撮像手段と、前記撮像手段により取得した画像を画像解析処理して前記画像中に含まれる前記標識の位置および形状を求める画像解析手段と、前記画像解析手段により求めた前記標識の位置および形状に基づいて前記部材の変形量を計測する変形量計測手段と、計測した前記部材の変形量に基づいて建物の健全性を評価する健全性評価手段と、建物の室内の所定の領域を撮影して、撮影した画像を取得する室内撮像手段と、前記室内撮像手段により取得した地震前後の画像を差分解析する室内画像解析手段と、前記室内画像解析手段による差分解析結果と、前記変形量計測手段により計測した前記部材の変形量とに基づいて、室内の散乱度を評価する室内散乱度評価手段を備えることを特徴とする建物の健全性評価システム。
  2. 前記標識は、前記部材の外観デザインに含まれる既知形状を利用したものであることを特徴とする請求項に記載の建物の健全性評価システム。
  3. 前記標識は二次元形状であり、前記変形量計測手段は、前記標識の位置および形状に基づいて前記標識の変位量と回転角度を求め、求めた変位量と回転角度に基づいて前記部材の変形量を計測することを特徴とする請求項1または2に記載の建物の健全性評価システム。
  4. 前記撮像手段は、前記画像解析手段および前記変形量計測手段が格納されたサーバとネットワーク接続されており、前記変形量計測手段による計測結果は、前記サーバに接続された出力手段から出力されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の建物の健全性評価システム。
  5. 前記撮像手段を収容するための筐体に、前記画像解析手段、前記変形量計測手段、前記変形量計測手段による計測結果を格納する格納手段、前記各手段に電源を供給する電源供給手段が収容されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の建物の健全性評価システム。
  6. 前記撮像手段を収容するための筐体に、前記変形量計測手段による計測結果を出力する出力手段がさらに収容されていることを特徴とする請求項に記載の建物の健全性評価システム。
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