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JP6961925B2 - 酸化物スパッタリングターゲット - Google Patents
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JP6961925B2 - 酸化物スパッタリングターゲット - Google Patents

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Description

本発明は、例えば有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイの陽極として用いられる積層反射電極膜において基材となる透明酸化物膜を形成するための酸化物スパッタリングターゲットに関する。
有機ELディスプレイは、基板の上に積層された陽極、有機EL発光層、陰極を有し、陽極から正孔を、陰極から電子を有機EL発光層に注入し、有機EL発光層で正孔と電子とを再結合させることによって、可視光を発光させる。可視光を陰極側から外部に取り出すトップエミッション方式の有機ELディスプレイでは、有機EL発光層から陰極側に直接放出された可視光だけではなく、陽極側に放出された可視光を陽極で反射させて陰極側で取り出すことによって輝度を向上させる。この陽極として、一般的にITO膜/金属膜/ITO膜を積層した積層構造を有する積層反射電極膜が用いられる。金属膜としては、AgまたはAg合金からなるAg膜が用いられる。
しかし、ITO膜/Ag膜/ITO膜からなる積層反射電極膜は、波長(432.8nm)付近の青色光の反射率が低いことが課題である。有機ELディスプレイに、青色光の反射率が低い積層反射電極膜を使用すると、青色の輝度が低下してしまう。また、青色の輝度を上げるために投入電力を多くすると、青色発光材が劣化し易くなり、寿命が短くなるおそれがある。
また、有機ELディスプレイでは、陽極を特定の配線パターンに形成する必要がある。ITO膜/Ag膜/ITO膜からなる積層反射電極膜において、過酸化水素水やリン酸、硝酸、酢酸の混合液で一括エッチングをするためには、ITO膜を、非晶質膜とする必要があった。非晶質のITO膜を形成するためには、水蒸気または水を含んだ雰囲気でのスパッタが必要である。
一方で、ZnOを主成分とする酸化物スパッタリングターゲットを用いて成膜した透明酸化物膜は、広範囲の可視光に対して光の透過率が高く、この酸化物膜とAg膜と積層した積層反射電極膜は、ITO膜/Ag膜/ITO膜からなる積層反射電極膜と比較して青色光の反射率が高い。また、ZnOを主成分とする酸化物スパッタリングターゲットは、水蒸気または水を含まない通常雰囲気(主にArガス)でのスパッタによって、Ag膜と一括エッチングできる酸化物膜を成膜できる。さらに、Inと比較して安価なZnの酸化物を主成分として用いているため、ITOよりも原料コストが安くなる。
ZnOを主成分とする酸化物スパッタリングターゲットは、下記の文献に記載されている。
特許文献1には、酸化ガリウムが5〜40wt%ドーピングされているZnOからなるスパッタリングターゲットが開示されている。
特許文献2には、60〜87モル%のZnOと10〜25モル%のGaとを含み、更にTiO、SnOから選ばれた少なくとも1種類の酸化物を含有したスパッタリングターゲットが開示されている。
特許文献3には、ZnOを主成分とし、Ti及びGaの両元素を含有し、両元素がTi1.1at%以上又はGa4.5at%以上の範囲で含有されているスパッタリングターゲットが開示されている。
特開2014−5538号公報 特開2016−98396号公報 特開2010−70796号公報
トップエミッション方式の有機ELディスプレイにおいて用いる陽極は、可視光の反射率が高いこと、一括エッチングが可能であることなどに加えて、有機EL発光層に効率よく正孔を注入できるように仕事関数が高いことが望まれる。陽極の仕事関数が低いと、正孔輸送を行うためにより高い電力を必要とする。高い電力を付与すると、有機ELディスプレイの寿命が短くなり、発光効率も低下する。しかしながら、従来のZnOを主成分とする酸化物スパッタリングターゲットを用いて成膜された酸化物膜は、有機ELディスプレイの陽極として用いるには仕事関数が低い場合があった。また、ZnOを主成分とする酸化物膜は、耐環境性(高温高湿環境への耐性)がITO膜と比較して低く、Ag膜を保護する機能が不足するといった問題があった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、AgまたはAg合金からなるAg膜と積層した場合に、反射率と仕事関数が高く、かつ導電性が高く、耐環境性に優れ、Ag膜との一括エッチングが可能な酸化物を安定して成膜することができる酸化物スパッタリングターゲットを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の酸化物スパッタリングターゲットは、ZnOを主成分とし、全金属成分量に対して、Gaを10.0原子%以上20.0原子%以下、Yを0.1原子%以上10.0原子%以下、Tiを0.5原子%以上10.0原子%以下の量にて含有し、相対密度が91.3%以上である酸化物からなることを特徴とする。
本発明の酸化物スパッタリングターゲットにおいては、ZnOを主成分とするので、Ag膜との一括エッチングが可能な酸化物膜を成膜できる。
また、Gaを10.0原子%以上20.0原子%以下の量にて含むので、導電性が高く、耐環境性に優れ、かつAg膜との密着性が高く、Ag膜と積層した場合に反射率が高い酸化物膜を成膜することができる。
さらに、Yを0.1原子%以上10.0原子%以下の量にて含むので、仕事関数が高い酸化物膜を成膜することができる。
またさらに、Tiを0.5原子%以上含有するので、耐環境性と耐アルカリ性とに優れた酸化物膜を成膜することができる。そして、Tiの量が10.0原子%以下とされているので、スパッタ時における異常放電の発生を抑制でき、酸化物膜の成膜を安定して行うことができる。
ここで、本発明の酸化物スパッタリングターゲットにおいては、さらに、全金属成分量に対して、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、B、Al、In、Si、Ge、Pb、Biおよびランタノイド系列の元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加元素を、合計で0.01原子%以上10.0原子%以下の量にて含有していてもよい。
この場合、耐環境性がより向上し、さらに導電性が向上した酸化物膜を成膜することができる。
本発明によれば、Ag膜と積層した場合に反射率と仕事関数が高く、かつ耐環境性に優れ、Ag膜との一括エッチングが可能な酸化物膜を安定して成膜することができる酸化物スパッタリングターゲットを提供することが可能となる。
以下に、本発明の一実施形態である酸化物スパッタリングターゲットについて詳細に説明する。
本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットは、例えば有機ELディスプレイの陽極として用いられる積層反射電極膜において基材となる透明酸化物膜を形成する際に使用されるものである。
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態である酸化物スパッタリングターゲットは、ZnOを主成分とする酸化物からなる。この酸化物は、全金属成分量に対して、Gaを10.0原子%以上20.0原子%以下、Yを0.1原子%以上10.0原子%以下、SnまたはTiを少なくとも1種または2種の合計で0.5原子%以上10.0原子%以下の量にて含有し、残部がZn及び不可避不純物とされている。以下に、本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットを構成する酸化物における金属成分元素の含有割合を上述のように規定した理由について説明する。
(Ga)
Gaは、適量添加することによってZnO(酸化亜鉛)のドーパントとして作用し、電気抵抗を低減させる効果を有する元素であることから、Gaを適量添加することにより、酸化物スパッタリングターゲットの導電性が向上し、また導電性の高い酸化物膜を成膜することが可能となる。また、Gaは、Ag膜に対する濡れ性を向上させる作用効果を有する元素であるから、Gaを添加することによって、Ag膜に対する密着力が高い酸化物膜を成膜することができる。よって、この酸化物膜とAg膜とを積層した積層反射膜は、反射率が高く、高温高湿環境下で使用した場合であっても、Ag膜への水分の侵入が抑制されるので、耐環境性が向上する。さらに、Gaは、耐アルカリ性を向上させる作用効果を有する元素であることから、Gaを添加することにより、エッチング処理の際に使用されるマスキング材を剥離するのに用いるアルカリ処理液に対して劣化が起こりにくい酸化物膜を成膜することができる。よって、この酸化物膜とAg膜とを積層した積層反射膜は、エッチング処理による加工性に優れたものとなる。
ここで、Gaの含有量が10.0原子%未満の場合は、成膜した酸化物膜の導電性が低下するおそれがある。また、成膜した酸化物膜は、Ag膜に対する密着力や耐アルカリ性が低くなるおそれがあり、この酸化物膜とAg膜とを積層した積層反射膜は、耐環境性や耐アルカリ性が低下するおそれがある。一方、Gaの含有量が20.0原子%を超える場合は、かえってターゲットの導電性が低下し、DCスパッタが困難となるおそれがある。また、成膜した酸化物膜の電気抵抗が高くなり、絶縁膜となるおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、Gaの含有量を10.0原子%以上20.0原子%以下の範囲内に設定している。
(Y)
Yは、酸化物膜の仕事関数を向上させる作用効果を有することから、Yを適量添加することにより、仕事関数の高い酸化物膜を成膜することが可能となる。また、Yは、ターゲットの密度を向上させる効果を有する元素であることから、Yを適量含む酸化物スパッタリングターゲットは密度が高くなる。
ここで、Yの含有量が0.1原子%未満の場合は、仕事関数の高い酸化物膜を成膜することが困難となるおそれがある。一方、Yの含有量が10.0原子%を超える場合は、成膜した酸化物膜の電気抵抗が高くなり、絶縁膜となるおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、Yの含有量を0.1原子%以上10.0原子%以下の範囲内に設定している。
(SnまたはTiの少なくとも1種または2種)
Sn及びTiは、酸化物膜の耐環境性や耐アルカリ性を向上させる作用効果を有することから、SnまたはTiを適量添加することにより、耐環境性や耐アルカリ性の高い酸化物膜を成膜することが可能となる。
ここで、SnまたはTiの含有量が0.5原子%未満の場合は、耐環境性や耐アルカリ性が向上した酸化物膜を成膜することが困難となるおそれがある。一方、SnまたはTiの含有量が10.0原子%を超える場合は、異常放電が発生し易くなるおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、SnまたはTiの含有量を少なくとも1種または2種を合計で0.5原子%以上10.0原子%以下の範囲内に設定している。
(Zn)
本実施形態の酸化物スパッタリングターゲットは、ZnOを主成分とするので、過酸化水素水やリン酸、硝酸、酢酸の混合液など、エッチング液として一般に使用されている酸に対する溶解速度が高く、Ag膜との一括エッチングが可能な酸化物膜を成膜できる。
本実施形態の酸化物スパッタリングターゲットにおいて、全金属成分量に対するZnの含有量は60原子%以上である。
(不可避不純物)
不可避不純物は原料由来あるいは製造の過程である程度混入することが避けられない元素であって、上記の発明効果に影響を及ぼさない元素を指す。本実施形態の酸化物スパッタリングターゲットにおいて、不可避不純物の含有量は、一般に合計で100質量ppm以下である。
(酸化物スパッタリングターゲットの製造方法)
次に、本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットの製造方法について説明する。
原料粉末として、酸化ガリウム(Ga)、酸化イットリウム(Y)、酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)の各粉末を用意する。原料粉末は、純度が99.9質量%以上であることが好ましい。
用意した各原料粉末を、金属元素の含有割合が上述の範囲内となるように選択して秤量する。この秤量した酸化物粉末を混合装置によって混合して混合粉末を得る。混合装置としては、ボールミル装置などの粉砕機能を備えた混合装置が好ましい。粉砕機能を備えた混合装置を用いることによって、原料粉末を微細化しながら混合することができるので、組成が均一な混合粉末を得ることができる。混合は、湿式で行ってもよいし、乾式で行ってもよい。
次に、得られた混合粉末を、所望の形状に成形する。成形体の成形方法としては、一軸プレスや冷間静水圧プレス(CIP)などの加圧成形法を用いることができる。
次に、成形体を焼成して焼結させて焼結体を得る。焼成は大気雰囲気下または酸素雰囲気下で行うことが好ましい。大気雰囲気下または酸素雰囲気下で焼成することによって、Yによるターゲットの密度の向上作用が発現し易く、常圧焼結が可能になり、生産性が向上する。また、酸化物の酸素欠損が生じにくくなり、組成が均一で高密度の焼結体を得ることができる。
そして、得られた焼結体に対して切削加工又は研削加工を施すことにより、所定形状の酸化物スパッタリングターゲットに加工する。
(第二の実施形態)
第二の実施形態である酸化物スパッタリングターゲットは、さらに、全金属成分量に対して、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、B、Al、In、Si、Ge、Pb、Biおよびランタノイド系列の元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加元素を、合計で0.01原子%以上10.0原子%以下の量にて含有する。すなわち、第二の実施形態である酸化物スパッタリングターゲットは、全金属成分量に対して、Gaを10.0原子%以上20.0原子%以下、Yを0.1原子%以上10.0原子%以下、SnまたはTiの少なくとも1種または2種を合計で0.5原子%以上10.0原子%以下、そして上記の添加元素を合計で0.01原子%以上10.0原子%以下の量にて含有し、残部がZn及び不可避不純物とされている。本実施形態の酸化物スパッタリングターゲットにおいては、全金属成分量に対するZnの含有量は50原子%以上である。
Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、B、Al、In、Si、Ge、Pb、Biおよびランタノイド系列などの添加元素は、酸化物膜の耐環境性を向上させる作用効果を有することから、これらの元素を適量添加することにより、耐環境性の高い酸化物膜を成膜することが可能となる。また、上記の添加元素は、三価以上の原子価を有する元素であり、ZnOのドーパントとして作用して、酸化物膜の抵抗値をより低くし、Ag膜との反射積層膜とした場合にその反射積層膜の抵抗値を安定化させる作用効果を有する。
ここで、上記添加元素の含有量が0.01原子%未満の場合は、耐環境性が向上した酸化物膜を成膜することが困難となるおそれがある。一方、上記添加元素の含有量が10.0原子%を超える場合は、成膜された酸化物膜の可視光の透過性が低下して、Ag膜との積層膜とした場合にその反射積層膜の可視光の反射率が低くなるおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、上記添加元素の含有量を、合計で0.01原子%以上10.0原子%以下の範囲内に設定している。
本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットは、上記添加元素の酸化物粉末を、上述のGa粉末、Y粉末、TiO粉末、SnO粉末などの原料粉末とともに混合し、得られた混合粉末を所定の形状に成形した後、焼結させることによって製造することができる。上記添加元素の酸化物は、添加元素を三価以上の原子価とされている酸化物であることが好ましい。添加元素の原子価が三価以上とされていることによって、ZnOのドーパントとしての作用効果を発揮することができる。
以上のような構成とされた本実施形態である酸化物スパッタリングターゲットによれば、ZnOを主成分とするので、Ag膜との一括エッチングが可能な酸化物膜を成膜できる。また、Gaを10.0原子%以上20.0原子%以下の量にて含むので、導電性が高く、耐環境性に優れ、かつAg膜との密着性が高く、Ag膜と積層した場合に反射率が高い酸化物膜を成膜することができる。
さらに、Yを0.1原子%以上10.0原子%以下の量にて含むので、Ag膜と積層した場合に仕事関数が高い酸化物膜を成膜することができる。またさらに、SnまたはTiの少なくとも1種または2種を合計で0.5原子%以上含有するので、耐環境性と耐アルカリ性とに優れた酸化物膜を成膜することができる。そして、SnまたはTiの少なくとも1種または2種の合計の量が10.0原子%以下とされているので、スパッタ時における異常放電の発生を抑制でき、酸化物膜の成膜を安定して行うことができる。
またさらに、全金属成分量に対して、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、B、Al、In、Si、Ge、Pb、Biおよびランタノイド系列の元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加元素を、合計で0.01原子%以上10.0原子%以下の量にて含有する場合には、耐環境性がより向上し、さらに導電性が向上した酸化物膜を成膜することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、酸化物スパッタリングターゲットを、有機ELディスプレイの陽極として用いられる積層反射電極膜において基材となる透明酸化物膜を形成する際に使用されるものとして説明したが、タッチパネルの抵抗膜などのその他の用途に用いられる透明酸化物膜を製造する際に使用してもよい。
また、本実施形態では、Ga、Y、SnまたはTiの少なくとも1種または2種を含有し、残部がZn及び不可避不純物とされている酸化物スパッタリングターゲットと、これらの金属元素とともに、さらに、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、B、Al、In、Si、Ge、Pb、Biおよびランタノイド系列の元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加元素を含有する酸化物スパッタリングターゲットとを説明したが、さらに上記以外の添加元素を添加してもよい。但し、この場合、全金属成分量に対するZnの含有量は50原子%以上であることが必要である。
以下に、本発明に係る酸化物スパッタリングターゲットの作用効果について評価した評価試験の結果について説明する。なお、下記の表1の本発明例8、9、10は、参考例である。
<酸化物スパッタリングターゲットの製造>
原料粉末として、酸化ガリウム(Ga)、酸化イットリウム(Y)、酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)、酸化モリブテン(MoO)、酸化鉄(Fe)、酸化ニオブ(Nb)、酸化ジルコニウム(ZrO)の各粉末を用意した。
原料粉末は、全て純度が99.9質量%以上のものを用意した。用意した各原料粉末を、それぞれ表1に示す原子比率となるように秤量した。
秤量した原料粉末を、原料粉末の合計質量に対して4倍の量のZrOボール(5mmφと10mmφを同重量比で含む)および溶媒とともに樹脂製のポットに投入し、ボールミル装置を用いて、85rpm、48時間の条件の下、湿式混合した。溶媒としては、アルコールを用いた。湿式混合後、樹脂製のポットから原料粉末を取り出して、乾燥して混合粉末を得た。
得られた混合粉末を型に充填し、冷間静水圧プレス(CIP)を用いて、175MPaの圧力で1分間プレスして成形体を得た。得られた成形体を焼成炉に投入して、大気雰囲気下で1450℃まで10℃/secで昇温し、昇温後、その温度を3時間維持する条件にて加熱した後、自然冷却して、150mm×200mm×7mmtの焼結体を得た。得られた焼結体を機械加工して、126mm×178mm×6mmtの酸化物スパッタリングターゲットを製造した。
<酸化物スパッタリングターゲットの評価>
本発明例及び比較例で製造した酸化物スパッタリングターゲットについて、組成、相対密度、異常放電試験、比抵抗を、下記の方法により測定した。その結果を表1に示す。
(組成)
成形前の混合粉末の金属含有量をICP分析にて測定し、測定された金属元素の含有量を原子%に換算した。なお、上記の酸化物スパッタリングターゲットの製造条件においては、混合粉末の組成とその混合粉末を用いて製造したターゲットの組成とが一致することは予め確認した。
(相対密度)
酸化物スパッタリングターゲットの実測密度を、ノギスにて測定した酸化物スパッタリングターゲットの寸法と電子天秤にて測定した重量とから算出した。次に、酸化物スパッタリングターゲットの理論密度を、酸化物スパッタリングターゲットに含まれている各酸化物の質量%含有率と密度から算出した。例えば、GaとYとTiを含む酸化物スパッタリングターゲットの場合は、Gaの質量%含有率をC1、密度をρ1とし、Yの質量%含有率をC2、密度をρ2とし、TiOの質量%含有率をC3、密度をρ3とし、ZnOの質量%含有率をC4、密度をρ4とすると、理論密度は下記の式より算出できる。
理論密度=1/[C1/100ρ1+C2/100ρ2+C3/100ρ3+C4/100ρ4]
そして、相対密度を、上記の実測密度と理論密度とから下記の式より算出した。
相対密度(%)=実測密度/理論密度×100
(異常放電試験)
酸化物スパッタリングターゲットを、Cu製のバッキングプレートにはんだ付けし、DCマグネトロンスパッタ装置に装着した。次に、1×10−4Paまで排気した後、Arガス圧:0.3Pa、投入電力:DC500W、ターゲット−基板間距離:70mmの条件で、スパッタを行った。スパッタ時の異常放電回数はMKSインスツルメンツ社製DC電源(型番:RPDG−50A)のアークカウント機能により、放電開始から1時間の異常放電回数として計測した。
(比抵抗)
三菱化学製抵抗測定器ロレスタGPにより、四探針法を用いて酸化物スパッタリングターゲットの比抵抗を測定した。
<酸化物膜の成膜と酸化物膜の評価>
本発明例及び比較例の酸化物スパッタリングターゲットを用いて、ガラス基板上に、500nmの厚さで酸化物膜を成膜した。酸化物膜は、DCマグネトロンスパッタ装置によって成膜した。スパッタの条件は、上記異常放電試験と同じ条件とした。
得られた酸化物膜について、透過率を下記の方法により測定した。その結果を表1に示す。
(透過率)
分光光度計(日立分光光度計U−4100)を用いて、酸化物膜の波長400−800nmの可視光領域の透過率を測定し、その平均値を算出した。
<積層反射膜の成膜と積層反射膜の評価>
ガラス基板上に、酸化物膜10nm/Ag−Cu合金膜100nm/酸化物膜10nmの三層構造の積層反射膜を成膜した。酸化物膜は、本発明例及び比較例の酸化物スパッタリングターゲットを用い、DCマグネトロンスパッタ装置によって成膜した。Ag−Cu合金膜は、Ag−0.5at%Cu合金スパッタリングターゲットを用い、DCマグネトロンスパッタ装置によって成膜した。スパッタの条件は、上記異常放電試験と同じ条件とした。
得られた積層反射膜について、シート抵抗、反射率、仕事関数、耐環境性、エッチング性、耐アルカリ性を下記の方法により測定した。その結果を表1に示す。
(シート抵抗)
三菱化学製抵抗測定器ロレスタGPにより、四探針法を用いて積層反射膜表面のシート抵抗を測定した。
(反射率)
分光光度計(日立分光光度計U−4100)で積層反射膜の反射率を測定した。青色波長付近の波長400−450nmの光の反射率の平均値を算出した。
(仕事関数)
理研計器製の大気中光電子分光装置AC−2にて、積層反射膜表面の仕事関数を測定した。仕事関数が高いほど、有機ELディスプレイの陽極として用いるのに好ましい。仕事関数と積層膜表面の抵抗値は比例関係にあるため、仕事関数が高すぎる積層膜は絶縁膜となっている可能性がある。
(耐環境性)
温度85℃、湿度85%の高温高湿環境中に100時間放置した。放置後の積層反射膜の反射率を上述の方法により測定した。そして、下記の式により高温高湿環境中の放置前後の反射率の変化率を算出して、耐環境性を評価した。反射率の変化率が小さいほど、耐環境性に優れることを意味する。
反射率の変化率=(放置後の反射率−放置前の反射率)/放置前の反射率×100
(エッチング性)
反射積層膜に対して、フォトリソグラフィーによりパターニングを施した後、エッチング液(燐硝酢酸:関東化学SEAシリーズ)でウェットエッチングを行って、配線幅30μmの櫛型パターンを形成した。得られた櫛型パターンをSEMにて観察し、Ag−Cu合金膜と酸化物膜の配線幅を測定した。そして、下記の式により、Ag−Cu合金膜と酸化物膜の配線幅の変動率を算出して、エッチング性を評価した。配線幅の変動率が小さいほど、エッチング液に対するAg−Cu合金膜と酸化物膜の溶解速度が近いことを意味する。
配線幅の変動率
=(Ag−Cu合金膜の配線幅−酸化物膜の配線幅)/Ag−Cu合金膜の配線幅×100
(耐アルカリ性)
反射積層膜を、40℃の5%NaOH水溶液に10分浸漬した。NaOH水溶液浸漬前後の反射積層膜の膜厚を測定した。そして、下記の式より、膜厚の変化率を算出して、耐アルカリ性を評価した。膜厚の変化率が小さいほどアルカリに溶解しにくく、耐アルカリ性に優れることを意味する。
膜厚の変化率=(浸漬前の膜厚−浸漬後の膜厚)/(浸漬前の膜厚)×100
Figure 0006961925
Gaの含有量が10.0原子%未満とされた比較例1においては、酸化物膜/Ag−Cu合金膜/酸化物膜の積層反射膜としたときの耐環境性、耐アルカリ性が低くなった。
Gaの含有量が20.0原子%を超えた比較例2においては、DCスパッタによる成膜が不可であった。
Yの含有量が0.1原子%未満とされた比較例3においては、積層反射膜としたときの仕事関数が低くなった。一般的に、有機ELディスプレイの陽極として用いられているITO10nm/Ag100nm/ITO10nmからなる積層反射膜は、仕事関数が4.6〜4.8eVの範囲にある。このため、比較例3で得られた積層反射膜を、有機ELディスプレイの陽極として用いると性能が低下するおそれがある。
Yの含有量が10.0原子%を超えた比較例4においては、DCスパッタによる成膜が不可であった。
SnまたはTiの少なくとも1種または2種の合計含有量が0.5原子%未満とされた比較例5、7においては、積層反射膜としたときの耐環境性および耐アルカリ性が低くなった。
SnまたはTiの少なくとも1種または2種の合計含有量が10.0原子%を超えた比較例6、8においては、スパッタ時の異常放電の発生数が多くなった。
添加元素(Zr)の合計含有量が10.0原子%を超えた比較例9においては、酸化物膜の単層膜したときの可視光領域の透過率が低下し、積層反射膜としたときの青色光の反反射率が低下した。
これに対して、本発明例1〜14では、酸化物ターゲットの比抵抗が低く、可視光の透過率が高くなった。また、積層反射膜は、シート抵抗が低く、青色光の反射率と仕事関数が高く、かつ耐環境性、エッチング性、耐アルカリ性に優れたものとなった。
一般的に、有機ELディスプレイの陽極として用いられているITO10nm/Ag100nm/ITO10nmからなる積層反射膜は、波長400−450nmの短波長の光(青色光)の平均反射率が79〜80%程度となる。これに対し、本発明例1〜14では、青色光の反射率が2〜4%程高くなるため、有機ELディスプレイの青色発光材の寿命に対する効果が大きい。
以上の評価試験の結果から、本発明例によれば、Ag膜と積層した場合に反射率と仕事関数が高く、かつ耐環境性に優れ、Ag膜との一括エッチングが可能な酸化物膜を安定して成膜することができる酸化物スパッタリングターゲットを提供することが可能となることが確認された。

Claims (2)

  1. ZnOを主成分とし、全金属成分量に対して、Gaを10.0原子%以上20.0原子%以下、Yを0.1原子%以上10.0原子%以下、Tiを0.5原子%以上10.0原子%以下の量にて含有し、相対密度が91.3%以上である酸化物からなることを特徴とする酸化物スパッタリングターゲット。
  2. さらに、全金属成分量に対して、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、B、Al、In、Si、Ge、Pb、Biおよびランタノイド系列の元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加元素を、合計で0.01原子%以上10.0原子%以下の量にて含有することを特徴とする請求項1に記載の酸化物スパッタリングターゲット。
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