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JP6965866B2 - 車両の制御装置 - Google Patents
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JP6965866B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、駆動源の駆動力を摩擦締結要素を介して駆動輪に伝達する車両の制御装置に関する。
自動車等の車両が、登坂路において、ブレーキペダル操作によらず、運転者がアクセルペダルを踏み込むことによる要求駆動力を用いて停車状態を保つ、アクセルヒルホールドを行う場合がある。アクセルヒルホールドでは、登坂路における車両の自重によるずり下がりトルク(以下、「勾配負荷トルク」ともいう)と、要求駆動力に対応する要求駆動トルクとがバランスして制動状態が維持されているので、駆動源と駆動輪との間には差回転が生じる。自動変速機を搭載した車両においては、この差回転によって、駆動源と駆動輪との間の発進用摩擦締結要素がすべることで、発進用摩擦締結要素に過大な熱負荷がかかり、これにより、発進用摩擦締結要素の耐久性が低下しやすくなる。
一方で、車両には、通常のブレーキペダルの操作に応じて制動を行うフットブレーキ装置に加えて、これとは独立して制動を行う第2のブレーキ装置が設けられることがある。この種の車両では、登坂路でアクセルヒルホールドが行われる場合において要求駆動トルクが勾配負荷トルクよりも小さいときに、第2のブレーキ装置の作動により制動状態を維持させつつ発進用摩擦締結要素を解放する制動制御(以下、「登坂路制動制御」ともいう)が行われることがある。これにより、車両の後退を防止しつつ、発進用摩擦締結要素のすべりによる耐久性の低下を抑制することが可能になる。
登坂路制動制御の実行中において、要求駆動トルクが勾配負荷トルクよりも大きくなると、登坂路制動制御が終了して車両が発進する。この発進の際には、発進用摩擦締結要素を締結するとともに第2のブレーキ装置を解除することが必要となる。そのため、これらの動作に要する時間の分、発進が遅れる場合がある。
これに対して、特許文献1には、まず、駆動源と駆動輪との間の差回転に基づいて、発進用摩擦締結要素のすべりが生じているかを判定し、すべりが生じている場合において、発進用摩擦締結要素の熱負荷(例えば、すべりまたは発熱の度合い)に応じて、登坂路制動制御の実行の有無を決定する車両の制御装置が開示されている。
具体的に、特許文献1に開示された車両の制御装置では、アクセル開度に基づいて目標駆動トルクを算出し、目標駆動トルクが0よりも大きく、かつ車両の速度がほぼ0であるときに駆動源と駆動輪との間の差回転に基づいて、発進用摩擦要素にすべりが生じる車両のストール状態か否かを判定する。
そして、ストール状態である場合、発進用摩擦締結要素の熱負荷の度合いに応じて、登坂路制動制御を実施するか否かが決定される。例えば、勾配の緩やかな登坂路において所定の熱負荷未満であれば、登坂路制動制御を実行しないことで、良好な発進応答性の確保が図られる。逆に、急勾配の登坂路において所定の熱負荷以上であれば、登坂路制動制御を実行することで、発進用摩擦締結要素での発熱が抑制される。このように、特許文献1の技術では、状況に応じて登坂路制動制御の実行の有無が決定されることにより、発進用摩擦締結要素の保護と発進応答性能の確保との均衡が図られている。
特開2015−33903号公報
ところで、登坂路における車両の発進応答性能は、緩やかな登坂路に比して、急勾配の登坂路においてより求められる傾向にある。しかしながら、特許文献1の車両の制御装置では、アクセルヒルホールドの実行中における発進用摩擦締結要素のすべりが大きくなる急勾配の登坂路においては、登坂路制動制御を実施するので、要求駆動トルクの増大により登坂路制動制御が終了して車両が発進する際には、前述のように、発進用摩擦締結要素の締結と第2のブレーキ装置の解除とに時間を要することから、発進応答性能の向上を果たせない。したがって、アクセルヒルホールドからの発進応答性を畝に向上させる上で改善の余地がある。
また、特許文献1の車両の制御装置では、登坂路制動制御が実行されない緩やかな登坂路でのストール状態において、スリップ状態の発進用摩擦締結要素での発熱量が完全解放状態に比して大きくなりやすい。したがって、アクセルヒルホールドの実行中において発進用摩擦締結要素の保護を常に図る上でも改善の余地がある。
そこで、本発明は、登坂路においてアクセルヒルホールド状態から車両が発進する場合に、発進用摩擦締結要素の保護と発進応答性の向上との両立を効果的に図ることができる車両の制御装置を提供することを課題とする。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
動力源と駆動輪との間に介装され前記動力源と前記駆動輪とを断接する発進用摩擦締結要素と、
前記発進用摩擦締結要素の締結力を制御する締結力制御手段と、
ブレーキペダル操作にかかわらずブレーキ装置を作動させるブレーキ制御手段と、
路面勾配を検知する路面勾配検知手段と、
前記路面勾配に基づいて車輪に作用する勾配負荷トルクを算出する勾配負荷トルク算出手段と、
アクセル開度を検知するアクセル開度検知手段と、
前記アクセル開度に基づいて要求駆動トルクを算出する要求駆動トルク算出手段と、
路面が上り勾配であり、前記要求駆動トルクがゼロよりも大きく且つ前記勾配負荷トルク以下である場合に、前記発進用摩擦締結要素の熱負荷を抑制しつつ車両の制動状態を維持するための登坂路制動制御を実行する登坂路制動制御手段と、を備えた車両の制御装置であって、
前記登坂路制動制御手段は、前記登坂路制動制御において、前記ブレーキ制御手段によって前記ブレーキ装置を作動させつつ、前記締結力制御手段によって、前記要求駆動トルクに対する所定の割合の伝達トルクが前記発進用摩擦締結要素で発生するように前記発進用摩擦締結要素の締結力を制限する締結力制限制御を行うことを特徴とする。
なお、ここでいう「所定の割合」は、0%よりも大きく且つ100%よりも小さい割合である。
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記登坂路制動制御手段は、前記勾配負荷トルクよりも小さな所定の下側基準値まで前記要求駆動トルクが増大したとき、前記締結力制御手段によって、前記締結力制限制御を終了させ、且つ、前記発進用摩擦締結要素を完全に締結させる完全締結制御を開始させることを特徴とする。
ここでいう「下側基準値」は、例えば、まもなく車両が発進すること、または、運転者が車両を発進させる意図でアクセルペダルを踏み増したことが確実であると妥当に判断し得る程度まで要求駆動トルクが増大したときの該要求駆動トルクの大きさ、すなわち、勾配負荷トルクよりも僅かに小さな値に設定される。
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または前記請求項2に記載の発明において、
前記登坂路制動制御手段は、前記勾配負荷トルクよりも大きな所定の上側基準値まで前記発進用摩擦締結要素での伝達トルクが増大したとき、前記ブレーキ制御手段によって前記ブレーキ装置の作動を解除させることを特徴とする。
ここでいう「上側基準値」は、例えば、発進用摩擦締結要素での伝達トルクが勾配負荷トルクを上回った直後のタイミングでの伝達トルクの大きさ、すなわち、勾配負荷トルクよりも僅かに大きな値に設定される。
なお、発進用摩擦締結要素での伝達トルクが「上側基準値」に到達するタイミングは、発進用摩擦締結要素が完全に締結されるタイミング、すなわち、発進用摩擦締結要素での伝達トルクが要求駆動トルクに一致するまで上昇するタイミングに一致してもよい。
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から前記請求項3のいずれか1項に記載の発明において、
前記発進用摩擦締結要素の温度に関連する温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段による検出温度が高いほど、前記所定の割合を低く設定する割合設定手段と、を備えていることを特徴とする。
ここでいう「発進用摩擦締結要素の温度に関連する温度」としては、例えば、発進用摩擦締結要素の周辺におけるオイルの温度、変速機ケース内に貯留されたオイルの温度、および、発進用摩擦締結要素の部品自体の温度などが挙げられる。
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項4に記載の発明において、
前記締結力制限制御の実行中において、前記発進用摩擦締結要素の伝達トルクが前記所定の割合のトルクに維持される時間を制限して、該制限時間の経過時に、前記締結力制御手段によって前記発進用摩擦締結要素の締結力を更に低下させる時間制限手段と、
前記温度検出手段による検出温度が高いほど、前記時間制限手段による制限時間を短く設定する制限時間設定手段と、を備えていることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から前記請求項3のいずれか1項に記載の発明において、
前記発進用摩擦締結要素の入力側回転数と出力側回転数との差を検出する回転数差検出手段と、
前記回転数差検出手段による検出値が大きいほど、前記所定の割合を低く設定する割合設定手段とを備えていることを特徴とする。
なお、請求項6に記載の「割合設定手段」は、請求項4に記載の「割合設定手段」とは異なるものであってもよいし、同じものであってもよい。前者の場合、本発明に係る車両の制御装置において、両方の「割合設定手段」が設けられることはなく、いずれか一方の「割合設定手段」のみが選択的に設けられ得る。後者の場合、「割合設定手段」は、「温度検出手段による検出温度」および「回転数差検出手段による検出値」のうちいずれか一方または両方に基づいて、所定の割合を設定する。
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項6に記載の発明において、
前記締結力制限制御の実行中において、前記発進用摩擦締結要素の伝達トルクが前記所定の割合のトルクに維持される時間を制限して、該制限時間の経過時に、前記締結力制御手段によって前記発進用摩擦締結要素の締結力を更に低下させる時間制限手段と、
前記回転数差検出手段による検出値が大きいほど、前記時間制限手段による制限時間を短く設定する制限時間設定手段とを備えていることを特徴とする。
なお、請求項7に記載の「制限時間設定手段」は、請求項5に記載の「制限時間設定手段」とは異なるものであり、本発明に係る車両の制動装置において、両方の「制限時間設定手段」が設けられることはなく、いずれか一方の「制限時間設定手段」のみが選択的に設けられ得る。
請求項1に記載の発明によれば、登坂路制動制御の実行中において、発進用摩擦締結要素の締結力が、要求駆動トルクに対する所定の割合の伝達トルクが発生するように制御される。そのため、登坂路制動制御の実行中において、仮に発進用摩擦締結要素が完全に解放される場合に比べ、登坂路制動制御終了時に良好な発進応答性が得られるとともに、仮に要求駆動トルクと一致する伝達トルクが発進用摩擦締結要素において発生する場合に比べて、発進用摩擦締結要素での発熱を抑制することができる。したがって、本発明によれば、登坂路の勾配(緩やかな登坂路〜急勾配の登坂路)および発進用摩擦締結要素の負荷に依らず、発進応答性の向上と発進用摩擦締結要素の保護との両立を常に効果的に図ることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、要求駆動トルクが勾配負荷トルクに到達する前、すなわち車両の発進が開始される前において、例えば、発進直前の適切なタイミングで、所定の割合で締結された発進用摩擦締結要素の完全締結制御が開始される。この完全締結制御は、仮に完全解放状態で開始される場合に比べて、速やかに完了するので、登坂路制動制御によって発進応答性能が阻害されることが抑制される。
また、請求項3に記載の発明によれば、伝達トルクが勾配負荷トルクを上回ってから、例えば、車両の発進が開始されるタイミングで、ブレーキ装置を解除するので、登坂路でのアクセルヒルホールドの実行中において、車両のずり下がりが確実に防止され得る。
請求項4に記載の発明によれば、登坂路制動制御における締結力制限制御の実行中において、発進用摩擦締結要素の温度が高くなるほど、発進用摩擦締結要素の締結力が低く制限される。具体的には、発進用摩擦締結要素の温度が高く発熱による劣化が進みやすい状況では、発進用摩擦締結要素の締結割合が低減(解放側へ制御)されるので、発進用摩擦締結要素の劣化抑制を優先的に果たすことができる。一方、発進用摩擦要素の温度が比較的低く劣化が比較的進みにくい状況では、発進用摩擦締結要素の締結割合が高められることで、発進応答性の向上を優先的に果たすことができる。
したがって、発進用摩擦締結要素の温度に応じて、締結の割合が適切に制御されるので、発進応答性能の犠牲を最低限に抑制しつつ、発進用摩擦締結要素の劣化を効果的に抑制することができる。
また、請求項5に記載の発明によれば、時間制限手段は、発進用摩擦締結要素の温度が高く発熱による劣化が進みやすい場合には、発進用摩擦締結要素の温度が比較的低く発熱による劣化が比較的進み難い場合に比して、発進用摩擦締結要素の伝達トルクを要求駆動トルクに対する所定の割合のトルクに維持する時間が短く制限される。そのため、発進用摩擦締結要素の高温時には、比較的早く発進用摩擦締結要素の締結力が低下されることで、発進用摩擦要素の更なる発熱が抑制され、これにより、発進用摩擦締結要素の劣化を効果的に抑制することができる。
また、請求項6に記載の発明によれば、登坂路制動制御における締結力制限制御の実行中において、発進用摩擦締結要素の入力側回転数と出力側回転数と差が大きくなるほど、発進用摩擦締結要素の締結力が低く制限される。具体的には、発進用摩擦締結要素の入力側回転数と出力側回転数との差が大きいことにより、発進用摩擦締結要素のすべりが大きく、発熱による劣化が進みやすい状況では、発進用摩擦締結要素が解放側へ制御されるので、発進用摩擦締結要素の劣化抑制を効果的に果たすことができる。一方、発進用摩擦締結要素の入力側回転数と出力側回転数との差が比較的小さく劣化が比較的進みにくい状況では、発進用摩擦締結要素の締結割合が高められることで、発進応答性の向上を優先的に果たすことができる。
したがって、発進用摩擦締結要素の入出力回転数の差に応じて、締結力の割合が適切に制御されるので、発進応答性能の犠牲を最低限に抑制しつつ、発進用摩擦締結要素の劣化を効果的に抑制することができる。
また、請求項7に記載の発明によれば、時間制限手段は、発進用摩擦締結要素の入出力回転数の差が大きく発熱による劣化が進みやすい場合には、発進用摩擦締結要素の入出力回転数の差が小さく発熱による劣化が比較的進み難い場合に比して、発進用摩擦締結要素の伝達トルクを要求駆動トルクに対する所定の割合のトルクに維持する時間が短く制限される。そのため、発進用摩擦締結要素の入出力回転数の差が比較的大きいときには、比較的早く発進用摩擦締結要素の締結力が低下されることで、発進用摩擦締結要素の更なる発熱が抑制され、これにより、発進用摩擦締結要素の劣化を効果的に抑制することができる。
本発明の実施形態に係る車両の制御装置を備えた車両の概略構成図である。 本発明の実施形態に係る車両の制御装置のシステム図である。 登坂路における車両の制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。 登坂路におけるアクセルヒルホールドから発進するときの各種要素の経時的変化の一例を示すタイムチャートである。 油温と所定の割合(要求駆動トルクに対する伝達トルクの割合)との関係の一例を示す制御マップである。 油温と制限時間との関係の一例を示す制御マップである。 発進用摩擦締結要素の入出力回転差と所定の割合との関係の一例を示す制御マップである。 発進用摩擦締結要素の入出力回転差と制限時間との関係の一例を示す制御マップである。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態による車両の制御装置を備えた車両1の概略構成図である。車両1は、駆動源としてのエンジン2と、エンジン2の出力回転を変速する自動変速機3と、駆動輪4a、4aを含む車輪4…4と、車両1を制動するための制動装置5とを備えている。なお、図1には、エンジン2および自動変速機3が車体前後方向に並べて配置された所謂縦置き式のパワートレインが図示されているが、車両1のパワートレインは、エンジンおよび自動変速機が車体幅方向に並べて配置された横置き式であってもよい。また、駆動源には、エンジンに代えてモータが採用されてもよく、さらに、エンジンとモータの両方を備えたハイブリッド車両であってもよい。
自動変速機3は、有段式の変速機構を備え、変速機構は、複数の摩擦締結要素を有する。変速機構は、複数の摩擦締結要素が選択的に締結されることで所望の変速段を形成するように構成されている。変速機構の出力回転は、図示しないプロペラシャフトおよび差動装置を介して左右の駆動輪4a、4aに伝達される。
本実施形態において、自動変速機3は、複数(例えば2つ)の摩擦締結要素が締結されることで各変速段が形成されるように構成されている。以下の説明において、発進変速段である1速を形成する2つの摩擦締結要素のうち、停車中は解放されていて発進時に締結される摩擦締結要素を発進用摩擦締結要素CLという。
なお、発進変速段である1速は、1つの摩擦締結要素の締結と、ワンウェイクラッチのロックとによって形成されてもよく、この場合は、上記1つの摩擦締結要素が発進用摩擦締結要素CLとなる。
各摩擦締結要素には締結油圧室(図示せず)が設けられており、該締結油圧室に供給される油圧は、油圧制御装置6(図2参照)によって制御される。油圧制御装置6は、オイルポンプ(図示せず)から油圧供給回路に供給された作動油の流れおよび油圧を、油圧供給回路に設けられた油圧制御弁および切換弁等によって制御する。これにより、各摩擦締結要素の締結油圧室の油圧が制御されることで、摩擦締結要素の締結、解放、およびスリップ、並びにスリップ状態における締結の度合い(締結割合)が制御される。
制動装置5は、ブレーキペダル51と、ブレーキペダル51の踏力を増幅するブースタ52と、ブレーキペダル51の踏込操作に応じてブレーキ液圧を上昇させるマスタシリンダ53と、上昇したブレーキ液圧によって各車輪4…4に対して制動力を作用させるブレーキ装置54…54と、マスタシリンダ53とブレーキ装置54…54とを接続する液圧回路55とを備えている。
制動装置5は、更に第2のブレーキ装置60を備えている。第2のブレーキ装置60は、マスタシリンダ53とブレーキ装置54…54との間の液圧回路55上に設けられている。第2のブレーキ装置60は、例えば、電動モータを駆動源とした液圧ポンプ(図示せず)等で構成されており、第2のブレーキ装置60は、液圧ポンプを駆動することによって液圧回路55の液圧を高めることができる。これにより、ブレーキペダル51の操作が解除されてもブレーキ装置54…54の液圧が維持され、車輪4…4に付与される制動力が保持される。なお、第2のブレーキ装置60としては、DSC(Dynamic Stability Control)装置を用いてもよい。
図2に示すように、本実施形態に係る車両1の制御装置は、車両1の各種制御を行うコントロールユニット100を備えている。コントロールユニット100は、例えばマイクロプロセッサを主要部として構成されている。コントロールユニット100は、中央演算装置(CPU)、例えばRAMおよびROMを含むメモリ、並びに、入出力インターフェース回路を備えている。
コントロールユニット100には、車両1の制御に用いられる種々の外部信号が入力される。コントロールユニット100への入力信号の具体例としては、車両1の走行速度を検出する車速センサ71、アクセル開度(アクセルペダルの踏込量)を検出するアクセル開度センサ72、エンジン2の回転数を検出するエンジン回転数センサ73、自動変速機3の変速機構の出力回転数を検出する出力回転数センサ74、発進用摩擦締結要素CLの潤滑油の温度を検出する油温センサ75、車両1が位置する路面の勾配を検出する勾配センサ76、ブレーキペダル51の踏込を検出するブレーキペダルセンサ77による検出信号が挙げられる。
なお、油温センサ75は、自動変速機3の変速機ケース内の任意の位置、例えば、発進用摩擦締結要素CLの周辺部、または、変速機ケース底部のオイル貯留部に設けられる。
コントロールユニット100は、アクセル開度センサ72およびエンジン回転数センサ73を含む各種センサからの検出値に基づいてエンジン2を制御するエンジン制御手段110と、車速センサ71とアクセル開度センサ72とエンジン回転数センサ73と変速機3の出力回転数センサ74を含む各種センサからの検出値に基づいて変速機3の油圧制御装置6に制御信号を出力することで変速を制御する変速制御手段120と、後述の登坂路制動制御手段130を備えている。
登坂路制動制御手段130は、車速センサ71、アクセル開度センサ72、エンジン回転数センサ73、変速機3の出力回転数センサ74、油温センサ75、勾配センサ76、ブレーキペダルセンサ77からの入力信号に基づいて、油圧制御装置6および第2のブレーキ装置60に制御信号を出力することで、次のような登坂路制動制御を行う。
登坂路制動制御は、上り勾配の路面において乗員がアクセル操作によって車両1の制動を図っているアクセルヒルホールド状態(要求駆動トルクT1がゼロよりも大きく且つ勾配負荷トルクT2以下である状態)で、発進用摩擦締結要素CLの熱負荷を抑制しつつ車両1の制動状態を維持する制御である。登坂路制動制御が行われているとき、発進用摩擦締結要素CLは、駆動トルクを出力側に伝達しつつエンジンストールを回避するように、スリップ状態に保持される。
本実施形態における登坂路制動制御では、第2のブレーキ装置60の作動によって、ブレーキペダル51が踏み込まれなくても登坂路における車両1のずり下がりの防止が図られつつ、発進用摩擦締結要素CLの発熱による劣化を抑制するために、発進用摩擦締結要素CLのスリップ量の低減が図られる。
登坂路制動制御は、所定の登坂路制動制御条件が成立したときに実行される。登坂路制動制御条件は、例えば、車両1が位置する路面が0%よりも大きな勾配を有する登坂路であること、車速がゼロであること、発進用摩擦締結要素CLが解放状態(例えば完全解放状態)であること、ブレーキペダル51がオフ操作されること、アクセルペダル70がオン操作されること等の諸条件を全て満たすことである。
登坂路制動制御手段130は、ブレーキ制御手段131と、要求駆動トルク算出手段132と、勾配負荷トルク算出手段133と、締結力制御手段134と、第1の割合設定手段135と、第2の割合設定手段136と、時間制限手段137と、制限時間設定手段138とを備えている。
ブレーキ制御手段131は、ブレーキペダル51の操作にかかわらず、第2のブレーキ装置60を自動的に作動させる。具体的に、ブレーキ制御手段131は、例えば、登坂路に停車した時点で第2のブレーキ装置60を作動させてもよいし、登坂路での停車状態でブレーキペダル51がオフ操作された直後にアクセルペダル70がオン操作され且つ要求駆動トルクT1が勾配負荷トルクT2以下であるとき(運転者にアクセルヒルホールドの意図があるとき)に第2のブレーキ装置60を作動させてもよいし、登坂路制動制御が開始された時点で第2のブレーキ装置60を作動させてもよい。登坂路制動制御が終了するとき、ブレーキ制御手段131は、第2のブレーキ装置60の作動を解除する。
要求駆動トルク算出手段132は、アクセル開度センサ72で検出されたアクセル開度に基づいて運転者による要求駆動トルクT1を算出する。
勾配負荷トルク算出手段133は、勾配センサ76で検出された路面の勾配に基づいて勾配負荷トルクT2を算出する。
締結力制御手段134は、登坂路制動制御の実行中において、スリップ状態の発進用摩擦締結要素CLの締結力を制御する。具体的に、締結力制御手段134は、登坂路制動制御において、発進用摩擦締結要素CLの締結力を制限する締結力制限制御を行う。締結力制限制御は、登坂路制動制御が開始されたときから所定の制限時間tmaxが経過するまでの間、要求駆動トルクT1に対する所定の割合R1の伝達トルクTCL(T1×R1)が発進摩擦締結要素CLで発生するように締結力を制御する第1制限制御と、上記の制限時間tmax経過後に締結力を更に低下させる第2制限制御とを備えている。
第1の割合設定手段135および第2の割合設定手段136は、発進用摩擦締結要素CLの熱負荷に応じて上記の所定の割合R1を設定する。具体的に、第1の割合設定手段135は、油温センサ75によって検出された油温Teに応じて、例えば図5に示す制御マップに基づいて所定の割合R1aを設定し、第2の割合設定手段136は、発進用摩擦締結要素CLにおける入力側(エンジン2側)の回転要素の回転数と出力側(駆動輪4a側)の回転要素の回転数との差(入出力回転差)ΔNに応じて、例えば図7に示す制御マップに基づいて所定の割合R1bを設定する。
なお、第1の割合設定手段135および第2の割合設定手段136は、これらのうちいずれか一方のみが設けられてもよいし、両方が設けられてもよい。また、図5および図7に示す制御マップは、コントロールユニット100の記憶部(図示せず)に予め記憶されている。さらに、入出力回転差ΔNは、例えば、タービン回転数(またはエンジン回転数)と変速機3の出力回転数との差に基づいて算出され得る。
所定の割合R1(R1a、R1b)は、発進用摩擦締結要素CLの発熱の度合いが高いほど低く設定される。具体的に、第1の割合設定手段135は、油温Teが高い程所定の割合R1aを低く設定し、第2の割合設定手段136は、入出力回転差ΔNが大きいほど所定の割合R1bを低く設定する。第1の割合設定手段135によって設定される所定の割合R1aと、第2の割合設定手段136によって設定される所定の割合R1bとは、上記の締結力制御手段134によっていずれか一方が選択的に、または両方が組み合わされて採用される。
所定の割合R1(R1a、R1b)としては、登坂路制動制御の開始時点において初期値が設定された後、登坂路制動制御の実行中における油温Teの上昇の程度または入出力回転差ΔNの増大の程度に応じて適宜補正されてもよい。
時間制限手段137は、締結力制限制御の第1制限制御の実行時間(発進用摩擦締結要素CLの伝達トルクTCLが所定の割合R1のトルク(T1×R1)に維持される時間)を、所定の制限時間tmaxに制限する。該制限時間tmaxの経過時に、時間制限手段137は、第2制限制御(締結力制御手段134によって発進用摩擦締結要素CLの締結力を更に低下させる制御)を実行することで、発進用摩擦締結要素CLの更なる発熱を抑制する。
制限時間設定手段138は、上記の制限時間tmaxを設定する。制限時間設定手段138は、例えば図6に示す制御マップと、登坂路制動制御の開始時点における油温Teとに基づいて、油温Teが高いほど制限時間tmaxを短く設定する。ただし、制限時間設定手段138は、油温Teに代えて、入出力回転差ΔNに応じて制限時間tmaxを設定してもよく、この場合、例えば、図8に示す制御マップと、登坂路制動制御の開始時点における入出力回転差ΔNとに基づいて、入出力回転差ΔNが大きいほど制限時間tmaxを短く設定する。
なお、図6および図8に示す制御マップは、コントロールユニット100の記憶部(図示せず)に予め記憶されている。
図3のフローチャートを参照しながら、上記の登坂路制動制御の動作の一例について、より具体的に説明する。
図3に示す制御動作は、登坂路での停車中において、エンジン2がアイドル回転数で駆動され、自動変速機3のシフトレンジがDレンジ(走行レンジ)であり、発進用摩擦締結要素CLが解放されており、ブレーキペダル51がオンであり、アクセルペダル70がオフであり、第2のブレーキ装置60が作動している状態で開始される(図4の時点t0参照)。
図3のステップS1において、ブレーキペダル51が解除状態(オフ状態)かを判定する。ブレーキペダル51が踏み込み操作されている場合(オン状態の場合)は、フローが最初に戻され、ブレーキペダル51がオフ状態と判定された場合、ステップS2に処理を進める。
ステップS2では、ブレーキペダル51がオフ状態になってからの時間(以下、「ブレーキオフ継続時間」という)が、所定時間Δt1以下かどうかを判定する。
ブレーキオフ継続時間が、所定時間Δt1よりも大きい場合、ステップS3に進むとともに、第2のブレーキ装置60を解除する。続くステップS4においてアクセルペダル70の状態が判定される。ステップS4でアクセルオン状態と判定されるまで(アクセルペダル70がオフ状態の間)、勾配が0%よりも大きい登坂路において変速機3がニュートラル状態であり且つブレーキ装置54…54が作動していないため、車両はずり下がる(後退する)。
ステップS4でアクセルペダル70がオン状態であると判定されると、ステップS5に処理を進め、発進用摩擦締結要素CLが完全締結されて、車両は発進する。
一方、ステップS2において、ブレーキオフ継続時間が所定時間Δt1以下の場合は、ステップS6に処理を進め、アクセルペダル70が踏み込まれるオン状態か(アクセル開度がゼロより大きいか)どうかを判定する。ステップS6において、アクセルペダル70がオフであると判定された場合、ステップS1にリターンされて、ブレーキオフ継続時間がΔt1を経過せず(ステップS2)、かつアクセルオン状態と判定されるまで(ステップS6)、ステップS1、ステップS2、および、ステップS6を繰り返す。
ステップS6で、アクセルペダル70が踏み込まれてアクセル開度がゼロよりも大きくなったと判定された場合、すなわち、ブレーキペダル51がオフ操作されてから所定時間Δt1が経過するまでにアクセルペダル70がオン操作された場合、ステップS7〜ステップS18において、登坂路制動制御が実行される。
ステップS7では、登坂路制動制御に必要な各種情報を検出する。ステップS7では、例えば、アクセル開度、油温Te、勾配などの各種検出値が読み込まれる。
続くステップS8では、アクセル開度に基づいて、運転者による要求駆動トルクT1を算出する。ステップS9では、ステップS7で検出された油温Teと、図5に示す制御マップとに基づいて、所定の割合(要求駆動トルクT1に対する発止尿摩擦締結要素CLでの伝達トルクTClの割合)R1(R1a)の初期値(例えば、30%〜50%)を算出する。このとき、発進用摩擦締結要素CLでの伝達トルクTCLに関して、要求駆動トルクT1に対する所定の割合R1となるような値(T1×R1)、および、当該伝達トルクTCL(T1×R1)に対応する発進用摩擦締結要素CLの締結力も併せて算出される。
続くステップS10では、ステップS7で検出された油温Teと、図6に示す制御マップとに基づいて、上述の締結力制限制御の第1制限制御に関する制限時間tmaxを算出する。
ステップS11では、勾配センサ76から得られた路面の勾配に基づいて、勾配負荷トルクT2を算出する。勾配負荷トルクT2は、車両1が上り坂に停車中のときに、重力の作用によって車両を後退させようとするトルクである。
また、ステップS11では、勾配負荷トルクT2よりも所定の微少量ΔT1だけ小さな下側基準値としての発進確定トルクT3(T3=T2−ΔT1)(図4の矢印A1参照)が併せて算出される。発進確定トルクT3は、例えば、運転者が車両を発進させる意図でアクセルペダル70を踏みましたことが確実であると妥当に判断し得る程度まで要求駆動トルクT1が増大したときの該要求駆動トルクT1の大きさに設定される。
さらに、ステップS11では、勾配負荷トルクT2よりも所定の微少量ΔT2だけ大きな上側基準値としての発進可能トルクT4(T4=T2+ΔT2)(図4の矢印A2参照)も併せて算出される。発進可能トルクT4は、例えば、発進用摩擦締結要素CLでの伝達トルクTCLが勾配負荷トルクT2を上回った直後のタイミングでの伝達トルクTCLの大きさに設定される。
ステップS12では、要求駆動トルクT1が、発進確定トルクT3(T3=T2−ΔT1)未満であるかどうかを判定し、要求駆動トルクT1が発進確定トルクT3未満の場合は、ステップS13に処理を進め、締結力制限制御の第1制限制御が実行される。第1制限制御におけるステップS13の処理は、ステップS10で設定された制限時間tmaxが経過するまでの間に複数回繰り返し実行される。
最初に実行されるステップS13では、ステップS9で算出した所定の割合R1の初期値に従って、発進用摩擦締結要素CLでの伝達トルクTCLが要求駆動トルクT1に対する所定の割合R1のトルク(T1×R1)になるように、発進用摩擦締結要素CLの締結力が制御される(図4の矢印a参照)。
ステップS14では、第1制限制御が開始されたとき(最初のステップS13が実行されたとき)からの経過時間tCLが、ステップS10で算出した制限時間tmax以上かどうかを判定する。経過時間tCLが制限時間tmax未満の場合は、ステップS15に処理を進める。
ステップS15では、ステップS9で算出された所定の割合R1が補正される。ステップS15の補正は、例えば、油温Teの上昇度合い、および、入出力回転差ΔNの増大度合いのいずれか一方または両方に基づいて行われてもよい。なお、本実施形態においては、所定の割合R1の補正は、登坂路制動制御の開始時点(図4の時点t1)後に検出された発進用摩擦締結要素CLの油温Teの上昇度合いに基づいて行われる。
そして、ステップS15の補正の後、ステップS12に戻る。ステップS15を経由したステップS12では、要求駆動トルクT1が発進確定トルクT3以下かどうかを再び判定し、要求駆動トルクT1が発進確定トルクT3以下の場合は、再びステップS13に処理を進める。
2回目以降のステップS13では、ステップS15で補正された所定の割合R1(R1a、R1b)に従って、発進用摩擦締結要素CLの締結力が制御される。
ステップS12の判定により要求駆動トルクT1が発進確定トルクT3以上に上昇するまで、或いは、ステップS14の判定により、ステップS10で算出した制限時間tmaxが経過するまで、ステップS12〜ステップS15を繰り返しながら第1制限制御が継続される。
ステップS12で要求駆動トルクT1が発進確定トルクT3以上となった場合は、ステップS16に処理を進め、発進用摩擦締結要素CLの完全締結制御を実行する(図4の矢印b参照)。
続くステップS17では、発進用摩擦締結要素CLの伝達トルクTCLが発進可能トルクT4(T4=T2+ΔT2)以上かどうかを判定し、伝達トルクTCLが発進可能トルクT4より小さい場合は、ステップS16に戻って完全締結制御を継続する。
ステップS17で、発進用摩擦締結要素CLの伝達トルクTCLが、発進可能トルクT4以上の場合は、ステップS18に進み、第2のブレーキ装置60の作動を解除する。これにより、発進用摩擦締結要素CLが完全締結(図4の矢印c)されるとともに、第2のブレーキ装置60が解除されるので車両1は発進する(図4の矢印c、d参照)。
一方、ステップS14で、第1制限制御が開始されてからの経過時間tCLが、ステップS10で算出した制限時間tmax以上となった場合(要求駆動トルクT1が発進確定トルクT3に達する以前に制限時間tmaxを経過した場合)(図4の時点t21参照)、ステップS19に処理を進め、締結力制限制御の第2制限制御が実行される。すなわち、ステップS19では、締結力制限制御が、第1制限制御から第2制限制御に切り換えられる。
具体的に、ステップS19の第2制限制御では、発進用摩擦締結要素CLの締結力が、第1制限制御の終了時点よりも更に低減されるように制御される。すなわち、第2制限制御が行われているとき、発進用摩擦締結要素CLの伝達トルクTCLは、ステップS9またはステップS15で設定された最新の所定の割合R1に対応するトルク(T1×R1)よりも低減される(図4の矢印e参照)。
続くステップS20では、要求駆動トルクT1が発進確定トルクT3以上であるか否かが判定される。ステップS20の判定結果、要求駆動トルクT1が発進確定トルクT3以上に増大するまで、ステップS19〜ステップS20の処理を繰り返して、第2制限制御を継続する。第2制限制御が継続されている間、発進用摩擦締結要素CLの締結力および締結割合を低減した状態に維持する(図4の矢印e参照)。
そして、ステップS20の判定の結果、要求駆動トルクT1が発進確定トルクT3以上に達した場合、ステップS16の完全締結制御を実行するとともに(図4の矢印f参照)、ステップS17の判定の結果、発進用摩擦締結要素CLの伝達トルクTCLが発進可能トルクT4以上に達すると、ステップS18に進み、第2のブレーキ装置60を解除する(図4の矢印g参照)。これにより、発進用摩擦締結要素CLが完全締結されるとともに、第2のブレーキ装置60が解除されるので車両1は発進する。
図4に示すタイムチャートは、本実施形態に係る制御装置を備えた車両1が、アクセルヒルホールド状態から発進する場合における、各種要素の経時的変化の一例を示している。
図4に示すように、時点t0では、勾配が0%よりも大きな登坂路での停車状態であり、ブレーキペダル51が踏み込まれ(ブレーキオン)、ブレーキペダル51操作によらない第2のブレーキ装置60が作動状態(オン状態)であり、および、アクセル操作がなされておらず(アクセル開度ゼロ)、エンジン2がアイドル回転数で駆動されているものとする。
時点t0において、登坂路に位置する車両1には、勾配負荷トルクT2が作用し、ずり下がる方向にあるが、ブレーキペダル51および第2のブレーキ装置60のブレーキトルクTBによって、車両1の停車状態が維持されている。
時点t1において、ブレーキペダル51が解除(オフ状態に)され、時点t1から所定時間Δt1が経過するまでの時点t2に、アクセルペダル70がオン操作されると、登坂路制動制御が開始される。登坂路制動制御では、まず、締結力制限制御の第1制限制御(図3のステップS13)が実行される。
時点t2においてアクセルペダル70のオン操作が開始されると、アクセル開度の増大に従って、要求駆動トルクT1が増大する。締結力制限制御が行われているとき、勾配負荷トルクT2は、要求駆動トルクT1よりも上回っている。
締結力制限制御中において、発進用摩擦締結要素CLの伝達トルクTCLは、図4の矢印aに示すように、要求駆動トルクT1に対する所定の割合R1のトルク(T1×R1)となるように制御される。
ここで、締結力制限制御が開始されたときから制限時間tmaxが経過するまでに、要求駆動トルクT1が発進確定トルクT3に達するまで増大する場合について説明する。
締結力制限制御中が実行されているとき、上記のように発進用摩擦締結要素CLの伝達トルクTCLおよび締結力が制限されることにより、発進用摩擦締結要素CLの劣化を招くような過度の発熱が抑制され得る。
また、所定の割合R1は、発進用摩擦締結要素CLの実際の熱負荷の度合い(油温Teまたは入出力回転差ΔN)に基づいて高精度に設定されるため、予測に基づいて設定される場合に比べて、発進用摩擦締結要素CLの伝達トルクTCLおよび締結力が過剰に低減されることを抑制しやすくなり、これにより、発進応答性の不要な低下を抑制しやすい。
締結力瀬源制御の第1制限制御が開始されてから制限時間tmaxが経過するまでの時間t3において、要求駆動トルクT1が、発進確定トルクT3に達すると(図4のA1参照)、第1制限制御から第2制限制御に切り換えられることなく締結力制限制御が終了し、完全締結制御に移行する(図4の矢印b参照)。
(完全締結の傾きの作用)
なお、完全締結制御において、発進用摩擦締結要素CLの伝達トルクTCLを、所定の割合のトルク(T1×R1)から要求駆動トルクT1に一致させるまでの時間は、締結(ニュートラルから1速への変速)によるショックを抑制しつつ、車両の発進応答性を阻害しない程度の時間に設定されるのが好ましい。
このように、本実施形態において、発進用摩擦締結要素CLは、要求駆動トルクT1に対する所定の割合R1の伝達トルクTCLが生じるようにある程度締結された状態(時点t3)から、完全に締結されることになる(時点t4)。したがって、仮にt3時点において、発進用摩擦締結要素CLが完全に解放されている状態から、完全締結制御に以降する場合に比して、速やかで円滑な完全締結を実現でき、これにより、発進応答性を向上させることができる。
さらに、締結制限制御から完全締結制御に移行するときの基準となる発進確定トルクT3は、勾配負荷トルクT2よりも小さな値T3(T3=T2−ΔT1)であるので、仮に要求駆動トルクT1が勾配負荷トルクT2に達する時点(図4のA3参照)まで完全締結制御に移行しない場合に比して、発進応答性を向上させることができる。
完全締結制御中において、発進用摩擦締結要素CLの伝達トルクTCLが、勾配負荷トルクT2よりも大きな発進可能トルクT4(T4=T2+ΔT2)に到達すると(時点t4)、第2のブレーキ装置60の作動が解除される。
発進可能トルクT4は、勾配負荷トルクT2を確実に上回る値であることが好ましく、ΔT2の値はゼロを含まない。このように、実際の伝達トルクTCLが勾配負荷トルクT2を確実に上回ってから、ブレーキ装置54…54の作動が解除されるので、車両1の確実なずり下がり防止が図られる。
第2のブレーキ装置60の解除にともなってブレーキ油圧が解放され、ブレーキトルクTBが十分に減少した時点t5で、変速機3の出力回転数および車速が立ち上がり、車両が発進する(図4の矢印d参照)。なお、ブレーキトルクTBはt5時点で僅かに残っているが、ブレーキ油圧の解放をt5時点でゆるやかに実行することで、トルクの掛け替えを滑らかにしている。
次に、締結力制限制御が開始されたときから、要求駆動トルクT1が発進確定トルクT3に達する以前に制限時間tmaxを迎える場合について説明する。
この場合、制限時間tmaxを迎えた時点t21において、締結力制限制御は、第1制限制御から第2制限制御に移行する。これにより、発進用摩擦締結要素CLの締結力は、要求駆動トルクT1に対する所定の割合R1の伝達トルクTCLを生じさせていたときよりも更に低減される。そのため、制限時間tmaxを経過した時点t21から完全締結制御が開始される時点t3迄の間、第2制限制御が行われることで、発進用摩擦締結要素CLの発熱をより効果的に抑制することができる。
その後は、上記と同様、要求駆動トルクT1が発進確定トルクT3に到達した時点t3から完全締結制御に移行し、さらに、発進用摩擦締結要素CLの伝達トルクTCLが発進可能トルクT4以上となった時点gに、第2のブレーキ装置60を解除する。これにより、発進用摩擦締結要素CLが完全締結されるとともに、第2のブレーキ装置60が解除されるので車両1は発進する。
以上の構成によれば、登坂路の勾配の程度および発進用摩擦締結要素CLの熱負荷の程度に応じて、所定の割合R1および制限時間tmaxが適宜設定差あれることで、発進用摩擦締結要素CLの迅速な締結と熱負荷の軽減との均衡が図られる。したがって、発進応答性の向上と発進用摩擦締結要素CLの保護との両立を常に効果的に図ることができる。
なお、以上の実施形態においては、図3のステップS9における所定の割合R1の算出、およびステップS10における制限時間tmaxの算出が油温Teに基づいて行われる例を説明したが、発進用摩擦締結要素CLの熱負荷に関連する他のパラメータに基づく算出が行われてもよい。例えば、油温Teに代えて、発進用摩擦締結要素CLの入出力回転差ΔNを用いて算出を行ってもよい。また、所定の割合R1および制限時間tmaxの算出は、複数のパラメータ(例えば油温Teと入出力回転差ΔN)に基づいて行われてもよい。
以上のように、本発明によれば、車両の制御装置において、登坂路においてアクセルヒルホールド状態から車両が発進する場合に、発進用摩擦締結要素の保護と発進応答性の向上との両立を効果的に図ることができるので、発進用摩擦締結要素を有する変速機を備えた車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
1 車両
2 エンジン(動力源)
4…4 車輪
4a、4a 駆動輪
51 ブレーキペダル
54…54 ブレーキ装置
60 第2のブレーキ装置
72 アクセル開度センサ(アクセル開度検知手段)
73、74 エンジン回転数センサ、変速機の出力回転数センサ(回転数差検出手段)
75 油温センサ(温度検出手段)
76 勾配センサ(路面勾配検知手段)
130 登坂路制動制御手段
131 ブレーキ制御手段
132 要求駆動トルク算出手段
133 勾配負荷トルク算出手段
134 締結力制御手段
135、136 第1の割合設定手段、第2の割合設定手段(割合設定手段)
137 時間制限手段
138 制限時間設定手段
CL 発進用摩擦締結要素
R1 所定の割合
T1 要求駆動トルク
T2 勾配負荷トルク
T3 発進確定トルク(下側基準値)
T4 発進可能トルク(上側基準値)
TCL 伝達トルク
tmax 制限時間

Claims (7)

  1. 動力源と駆動輪との間に介装され前記動力源と前記駆動輪とを断接する発進用摩擦締結要素と、
    前記発進用摩擦締結要素の締結力を制御する締結力制御手段と、
    ブレーキペダル操作にかかわらずブレーキ装置を作動させるブレーキ制御手段と、
    路面勾配を検知する路面勾配検知手段と、
    前記路面勾配に基づいて車輪に作用する勾配負荷トルクを算出する勾配負荷トルク算出手段と、
    アクセル開度を検知するアクセル開度検知手段と、
    前記アクセル開度に基づいて要求駆動トルクを算出する要求駆動トルク算出手段と、
    路面が上り勾配であり、前記要求駆動トルクがゼロよりも大きく且つ前記勾配負荷トルク以下である場合に、前記発進用摩擦締結要素の熱負荷を抑制しつつ車両の制動状態を維持するための登坂路制動制御を実行する登坂路制動制御手段と、を備えた車両の制御装置であって、
    前記登坂路制動制御手段は、前記登坂路制動制御において、前記ブレーキ制御手段によって前記ブレーキ装置を作動させつつ、前記締結力制御手段によって、前記要求駆動トルクに対する所定の割合の伝達トルクが前記発進用摩擦締結要素で発生するように前記発進用摩擦締結要素の締結力を制限する締結力制限制御を行うことを特徴とする車両の制御装置。
  2. 前記登坂路制動制御手段は、前記勾配負荷トルクよりも小さな所定の下側基準値まで前記要求駆動トルクが増大したとき、前記締結力制御手段によって、前記締結力制限制御を終了させ、且つ、前記発進用摩擦締結要素を完全に締結させる完全締結制御を開始させることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
  3. 前記登坂路制動制御手段は、前記勾配負荷トルクよりも大きな所定の上側基準値まで前記発進用摩擦締結要素での伝達トルクが増大したとき、前記ブレーキ制御手段によって前記ブレーキ装置の作動を解除させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の制御装置。
  4. 前記発進用摩擦締結要素の温度に関連する温度を検出する温度検出手段と、
    前記温度検出手段による検出温度が高いほど、前記所定の割合を低く設定する割合設定手段と、を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
  5. 前記締結力制限制御の実行中において、前記発進用摩擦締結要素の伝達トルクが前記所定の割合のトルクに維持される時間を制限して、該制限時間の経過時に、前記締結力制御手段によって前記発進用摩擦締結要素の締結力を更に低下させる時間制限手段と、
    前記温度検出手段による検出温度が高いほど、前記時間制限手段による制限時間を短く設定する制限時間設定手段と、を備えていることを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
  6. 前記発進用摩擦締結要素の入力側回転数と出力側回転数との差を検出する回転数差検出手段と、
    前記回転数差検出手段による検出値が大きいほど、前記所定の割合を低く設定する割合設定手段とを備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
  7. 前記締結力制限制御の実行中において、前記発進用摩擦締結要素の伝達トルクが前記所定の割合のトルクに維持される時間を制限して、該制限時間の経過時に、前記締結力制御手段によって前記発進用摩擦締結要素の締結力を更に低下させる時間制限手段と、
    前記回転数差検出手段による検出値が大きいほど、前記時間制限手段による制限時間を短く設定する制限時間設定手段とを備えていることを特徴とする請求項6に記載の車両の制御装置。
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