JP6966802B2 - 液体挙動抑制デバイス - Google Patents
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Description
本願は、2017年10月26日に、日本に出願された特願2017−207427号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
例えば、一例として、微小重力環境下を航行する宇宙機では、液体燃料および液体酸化剤といった液体推進薬をエンジン又はスラスターに円滑に供給するために、液体推進薬の挙動を抑制し、液体収容器の内部の気体が、エンジン又はスラスターに供給されるのを防ぐことが求められている。
液体推進薬の挙動抑制としては、例えば、弾性を備えた隔壁により、液体推進薬と気体とを隔てる構成が採用されている(下記特許文献1参照)。
また例えば、液体収容器のうち、エンジン又はスラスターにつながる配管の付近に液体推進薬を留めるために、液体推進薬の表面張力により液体推進薬を保持するチャネル(下記特許文献2参照)、やベーン(下記非特許文献1参照)といった構造物を、液体収容器の内部に配置する構成が採用されている。
また例えば、微小加速度を補助スラスターから宇宙機に与えることで、液体推進薬と気体との気液分離を行うセトリング方式が採用されている(下記特許文献3参照)。
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成では、極低温環境に耐えられる隔壁の素材の選定が困難であるとともに、隔壁を搭載することで、液体収容器の重量が増加するという問題があった。また、上記特許文献2および上記非特許文献1に記載の構成では、液体収容器の内部にチャネルやベーンといった構造物を配置することで、液体収容器の重量が増加するという問題があった。
また、上記特許文献3に記載の構成では、宇宙機に微小加速度を与えるための液体推進薬が別途必要になるとともに、宇宙機の機体重量が大きい場合には、微小加速度を与えるために大きな推力が必要になるため、必要な液体推進薬が更に多くなり、液体推進薬の重量が増加するという問題があった。
本発明に係る液体挙動抑制デバイスは、液体収容器の内部を中心軸線に直交する方向に仕切り、前記液体収容器の底部側に液体を保持し、前記軸方向に貫通した孔部が複数形成されている。
以下、図1および図2を参照し、本発明の第1実施形態に係る液体挙動抑制デバイス1について説明する。以下の説明では、微小重力環境下を航行する宇宙機において、液体推進薬(液体)50を収容する液体収容器100に用いられる液体挙動抑制デバイス1を例に挙げて説明する。
本実施形態に係る液体挙動抑制デバイス1は、図1および図2に示すように、液体収容器100の内部を中心軸線Oに直交する方向に仕切り、液体収容器100の軸方向に沿う底部側(以下単に底部側という)に液体を保持する。本実施形態に係る液体挙動抑制デバイス1は、「液体収容器100に付与される加速度方向と交差する方向に、気液界面を分画する」かつ「分画された気液界面で表面張力を生じさせる」部材である。
液体挙動抑制デバイス1は平面視で円環状を呈する。液体挙動抑制デバイス1における径方向の中央部には、開口部11が形成されている。開口部11は、液体収容器100の軸方向に沿う頂部側(底部の反対側、以下単に頂部側という)と、底部側とを連通している。開口部11は、液体推進薬50を底部からスラスター等に供給するときに必要となる液体収容器100内における圧送抵抗が低い部分となっている。
なお、液体収容器100を搭載した宇宙機が、微小重力環境下を航行している状態での作用を説明する。
微小重力環境下では、液体推進薬50に作用する慣性力が小さくなることで、液体推進薬50に作用する表面張力の影響が大きくなる。これにより、図2(a)に示すように、液体収容器100の内面に対する液体推進薬50の濡れ性が大きくなり、液体推進薬50が液体収容器100の内面をつたって、頂部側に向けて移動する。この際、液体挙動抑制デバイス1における複数の孔部10は、液体推進薬50を頂部側に向けて流出させる。
P1−P2=σ/A…(1)
ここで、P1:頂部側の圧力(N/mm2)、P2:底部側の圧力(N/mm2)、σ:表面張力(N)、A:孔部10における中心軸線Oと直交する断面積(開口面積)(mm2)
この際、前述した表面張力σが孔部10内に位置する気液界面に生じているので、スラスターが発生した推力の加速度に起因する慣性力により、液体推進薬50を孔部10内を通して頂部側に流出させようとする力と、孔部10内の気液界面に生じる表面張力σと、が対抗する。このため、液体収容器100の内部において、底部側の液体推進薬50が、孔部10を頂部側に向けて通過したり、頂部側の気体が、孔部10を底部側に向けて通過したりすることが妨げられる。
また、このような液体挙動抑制デバイス1は、一定の剛性を具備する素材により形成することが可能であり、ダイヤフラムのような弾性を必要とする素材により形成する必要が無い。したがって、液体挙動抑制デバイス1に極低温環境での耐久性を容易に具備させることができる。
次に、図3を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、本実施形態においては、第1実施形態に係る構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。また、同一の作用についてもその説明を省略する。
図3に示すように、液体挙動抑制デバイス2は、外周縁部に配置され、外周縁部に沿って延びる環部(環状部材)21と、環部21の内周縁部に接続された格子部22と、を備えている。
環部21は全周にわたって延びている。格子部22は平面視で互いに直交して延びており、平面視で矩形状をなす孔部20を画成している。
微小重力環境下において、液体推進薬50が液体収容器100の内面をつたって、液体収容器100の頂部側に向けて移動すると、環部21に液体推進薬50が干渉することで、液体推進薬50の頂部側への移動が部分的に遮られる。これにより、大量の液体推進薬50が頂部側に向けて移動するのを抑え、頂部側の気体が底部側に向けて孔部20を通過するのを抑制することができる。
これにより、孔部20の開口面積を大きくして軽量化を実現した液体挙動抑制デバイス2において、開口面積が大きいことで孔部20を通過する液体推進薬50の量が多くなりすぎるのを効果的に抑制することができる。
また、環部21をバッフル板として設けることで、外部から加えられた加速度に起因する慣性力により、液体推進薬50の気液界面が径方向に周期的に揺動するのを抑えることが可能になり、液体推進薬50の挙動をより一層効果的に抑制することができる。
図4は、液体挙動抑制デバイス2の変形例の平面図である。
図4に示すように、本変形例に係る液体挙動抑制デバイス2Bは環部21を備えていない。このため、環部21を備えている構成と比較して、液体挙動抑制デバイス2Bの重量を低減することができる。これにより、液体挙動抑制デバイス2Bを配置することによる液体収容器100の重量の増加を、より一層効果的に抑制することができる。
また、環部21を備えていないことにより、環部21に液体推進薬50が干渉することがなく、液体収容器100の内面をつたって流出する液体推進薬50の流出量を多くすることができる。その結果として、孔部20を通過する液体推進薬50の量を調整することができる。
次に、図5および図6を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。
なお、本実施形態においては、第2実施形態に係る構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。また、同一の作用についてもその説明を省略する。
このような場合には、図5(b)から図5(c)に示すように、下段ロケット300の液体収容器100内の液体推進薬50に、例えば軸方向と交差する方向の加速度に起因する慣性力が作用することがある。
そこで、本実施形態では、軸方向の加速度に起因する慣性力のみならず、軸方向と交差する方向の加速度に起因する慣性力に対しても効果的に液体推進薬50の挙動を抑制するための構成について説明する。
図6(a)に示すように、液体挙動抑制デバイス3は、外周縁部に配置され、外周縁部に沿って延びる環部31と、径方向の中央部に配置され、平面視で円形状をなす中央板32と、中央板32に接続され、径方向に延びる連結部33と、連結部33に接続され、周方向の全域にわたって延びる隔壁部35と、を備えている。
環部31は液体収容器100の内面に接続される。なお、環部31の径方向の大きさは任意に変更することができる。環部31の径方向の大きさを大きくすることで、前述したスロッシングを抑制するためのバッフル板としての機能を高めることができる。
連結部33は周方向に間隔をあけて複数配置されている。連結部33は、環部31と中央板32とを径方向に連結している。複数の連結部33は中心軸線Oを中心とする放射状に配置されている。隔壁部35は径方向に間隔をあけて複数配置されている。複数の連結部33および複数の隔壁部35により、複数の孔部30が画成されている。複数の孔部30は、中心軸線Oを中心として放射状をなすように配置されている。
複数の連結部33は、図6(b)に示すような、中央板32と環部31の内周縁部とを連結する第1連結部33Aと、図6(c)に示すような、中央板32と環部31の外周縁部とを連結する第2連結部33Bと、を備えている。第1連結部33Aと第2連結部33Bとは、周方向に交互に配置されている。連結部33が第1連結部33Aを備えていることにより、液体挙動抑制デバイス3全体の重量を抑えることができる。
液体挙動抑制デバイス3は、周方向に延びる補助隔壁部36を備えている。補助隔壁部36は転回方向Tの一方側T1に配置されている。補助隔壁部36における周方向の両端部同士の中心軸線Oを中心とする中心角は、180°以下となっている。
2つの補助隔壁部36は、径方向に互いに隣り合う隔壁部35同士の間、および隔壁部35と環部31の内周縁部との間に各別に配置されている。
言い換えると、複数の孔部30のうち、転回方向Tの一方側T1に位置する孔部30の開口面積は、転回方向Tの他方側T2に位置する孔部30の開口面積よりも小さくなっている。
なお、例えば互いに周方向に隣り合う連結部33同士の間に、径方向に延びる補助連結部を配置することにより、複数の孔部30における周方向の大きさを互いに異ならせることで、複数の孔部30の開口面積を互いに異ならせてもよい。
まず、液体推進薬50に頂部側を向く加速度に起因する慣性力が作用すると、放射状をなすように配置された孔部30それぞれにおいて、第1実施形態において前述した液体推進薬50の通過および通過の妨げを作用させることができる。
そして、液体推進薬50に転回方向Tの一方側T1から他方側T2に向かい、軸方向と交差する方向の加速度に起因する慣性力が作用すると、液体推進薬50は転回方向Tの他方側T2に向かう力を受けて、転回方向Tの他方側T2に位置する孔部30内を、液体収容器100の頂部側に向けて通過しようとする。
このため、前述した式(1)により、転回方向Tの一方側T1に位置する孔部30内の気液界面に作用する表面張力σを大きくすることが可能になり、転回方向Tの一方側T1に位置する孔部30内を、気体が底部側に向けて通過するのを妨げることができる。これにより、転回方向Tの他方側T2に位置する孔部30内を、液体推進薬50が頂部側に向けて通過するのを妨げることができる。
また、孔部30における周方向の大きさを互いに異ならせた場合には、軸方向だけではなく、軸方向に加えて周方向を向く加速度に起因する慣性力が液体推進薬50に作用した場合においても、前述した孔部30の周縁部に生じる表面張力σにより、液体収容器100の内部の気体が、底部側に向けて流入することを効果的に妨げることができる。
また、前述した作用効果は、スラスターからの推力により発生する加速度に起因する慣性力が小さい場合に更に有効性が増すと考えられ、月着陸船等の探査に向けた宇宙輸送機への採用も期待できる。さらに、宇宙機の姿勢変化の自由度を挙げる点で、これまでの宇宙機において不可能であった航行経路やオペレーションの採用に資することができる。
次に、前述した第1実施形態および第2実施形態に係る作用効果の検証結果について説明する。
検証試験では、実施例1として第1実施形態に係る液体挙動抑制デバイス1を配置した液体収容器100を、実施例2として第2実施形態に係る液体挙動抑制デバイス2を配置した液体収容器100を、それぞれ採用した。また比較例1として、液体挙動抑制デバイスを配置しない液体収容器100を採用した。
具体的には、液体推進薬50における径方向の中央部が、頂部側に向けて大きく盛り上がるとともに、液体推進薬50における外周部分が液体収容器100の内面をつたって頂部側に向けて移動していることが確認された。また、液体推進薬50の気液界面は径方向の位置により、軸方向の位置が大きく異なることが確認された。そして、検証試験と数値解析の双方の結果は互いに同等となっていることが確認された。
具体的には、液体推進薬50のうち、液体挙動抑制デバイス1における開口部11と同等の位置に位置する気液界面が、底部側に向けて表面張力により窪んでいるとともに、液体推進薬50における外周部分が頂部側に向けて表面張力により盛り上がっていることが確認された。
具体的には、液体推進薬50における径方向の中央部が底部側に向けて僅かに窪んでいるとともに、液体推進薬50における外周部分が液体収容器100の内面をつたって頂部側に向けて移動していることが確認された。
なお、液体推進薬50における径方向の中央部が底部側に向けて窪んでいるが、孔部30内の表面張力σにより曲面状に形成された気液界面が窪んでいる状態であり、本願発明の作用としての表面張力σが生じていることにより、液体推進薬50の挙動が抑制されていると判断できる。そして、検証試験と数値解析の双方の結果は互いに同等となっていることが確認された。
以上より、第1実施形態に係る液体挙動抑制デバイス1、および第2実施形態に係る液体挙動抑制デバイス2の双方において、液体の挙動を抑制する効果が確認された。
この検証試験では、実施例3として第3実施形態に係る液体挙動抑制デバイス3を配置した液体収容器100を採用した。
そして、CFDシミュレーションを用いて、微小重力環境下において、液体収容器100を搭載した宇宙機が転回して軸方向と交差する方向からの加速度に起因する慣性力を受けることを想定し、転回方向Tの一方側T1から他方側T2に向く加速度に起因する慣性力が、液体収容器100に作用した際の液体推進薬50の挙動の解析を行った。
具体的には、図10(a)から図10(d)にそれぞれ示すように、転回動作の開始[0秒]からt11秒後、t12秒後、t13秒後、およびt14秒後それぞれにおいて、液体収容器100の頂部側に移動した液体推進薬50の状態は時々刻々と変化しているが、液体収容器100の底部側に位置する液体収容器100は、常に底部側に保持された状態を維持している。これはすなわち、前述した孔部30の作用効果によって、孔部30の内側に位置する気液界面に作用する表面張力σにより、気体が底部側に流入するのを妨げられているものと認められる。
以上より、第3実施形態に係る液体挙動抑制デバイス3においては、軸方向のみならず、軸方向と交差する方向の加速度に起因する慣性力に対しても液体の挙動を抑制する効果が確認された。
例えば、上記各実施形態では、宇宙機の液体推進薬50を収容する液体収容器100に配置される液体挙動抑制デバイス1〜3を例に挙げて説明したが、このような態様に限られない。
10、20、30 孔部
21、31 環部
50 液体推進薬
100 液体収容器
Claims (3)
- 液体収容器の内部を中心軸線に直交する方向に仕切り、前記液体収容器の底部側に液体を保持し、
前記中心軸線方向に貫通した孔部が、前記中心軸線を中心として放射状をなすように複数形成され、
複数形成された前記孔部における径方向及び周方向の大きさは互いに異なっているとともに、
複数の前記孔部のうち、径方向のうちの一方向である転回方向の一方側に位置する前記孔部の開口面積は、前記転回方向の他方側に位置する前記孔部の開口面積よりも小さくなっている、
液体挙動抑制デバイス。 - 複数の前記孔部は、前記液体収容器における径方向にメッシュ状に配置されている、請求項1に記載の液体挙動抑制デバイス。
- この液体挙動抑制デバイスの外周縁部に配置され、外周縁部に沿って延びる環部を備えている、請求項1又は2に記載の液体挙動抑制デバイス。
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