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JP6972683B2 - 多孔質炭素シートの製造方法 - Google Patents
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JP6972683B2 - 多孔質炭素シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、固体高分子型燃料電池のガス拡散体の材料として好適に用いることができる、多孔質炭素シートおよびその製造方法に関するものである。
固体高分子型燃料電池は、膜−電極接合体(MEA)の両側にガスケットを介してセパレータで挟んだものを複数枚重ね合わせたものである。MEAは、発電を担う反応の起こるアノード及びカソードの電極と、両電極に挟まれた固体高分子電解質膜とからなる。電極は、触媒層及びガス拡散電極基材からなる。また、ガス拡散電極基材はガス拡散層及びマイクロポーラス層からなる。
固体高分子型燃料電池は、水素を含む燃料ガスをアノードに供給し、酸素を含む酸化ガスをカソードに供給して、両極で起こる電気化学反応によって起電力を得ている。固体高分子型燃料電池のガス拡散層として使用される多孔質炭素シートにはセパレータから供給されるガスを触媒層へ拡散するための高いガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すための高い導電性が必要であり、炭素繊維からなる多孔質炭素シートが広く用いられている。
これらガス拡散層に用いられる多孔質炭素シートにおいては、製造の間に発生するさまざまな欠点が電極基材としたときに悪影響を及ぼし本来要求される機能を十分に発揮できなくなるという問題がある。ここでいう欠点は、例えば、原材料に含まれる不純物が混入したり、製造工程に浮遊する不純物などが付着したり、炭素短繊維が分散せずに束となって固まったりすることで発生する。
そこで、多孔質炭素シートに発生したさまざまな欠点を検出するために検査を行い、欠点部分を識別できるようにマーキングを施している。しかしながら、従来、多孔質炭素シートの製造工程で繰り返し行われるマーキングは、人によって行われており、作業者の負担が大きく、マーキングミスが発生するなど、定量的かつ精度よくマーキングを行うことができないという問題があった。
そのため、省人化、精度向上を目的とした多孔質炭素シートへの識別用の自動マーキング技術の導入が求められている。例えば、特許文献1には、導電性炭素粒子と高分子樹脂を主成分としたガス拡散層へのレーザーマーキング技術が提案されている。
特開2014−191867号公報
しかしながら炭素繊維主体のガス拡散層は、1000℃以上の高温で炭化、黒鉛化処理されており、導電性炭素粒子と高分子樹脂を主成分としたガス拡散層に比べて形態加工が難しいため、前述の特許文献1に記載の方法ではマーキングの検出性を高めることが極めて困難であった。
そこで本発明は、従来の技術における上述した問題点に鑑みてなされたものであり、検出性に優れた識別用のマーキングが形成された多孔質炭素シート及びその製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明の多孔質炭素シートは、次の構成を有する。すなわち、マーキングが形成された多孔質炭素シートであって、前記マーキングが形成された箇所(以下、マーキング部という)の酸素原子と炭素原子の数比率(酸素原子の数/炭素原子の数)が、0.046以上である多孔質炭素シートである。
さらに本発明の多孔質炭素シートの製造方法は、次の構成を有する。すなわち、以下である。
マーキングが形成された多孔質炭素シートの製造方法であって、
前記多孔質炭素シートに対して、ファイバーレーザを照射してマーキングを形成する(以下、マーキング工程という、)、多孔質炭素シートの製造方法。
本発明の多孔質炭素シートは、検出性の良好な識別用のマーキングが形成されているので、欠点部分を検査装置で自動的に、誤検知及び未検知を少なく、検出することが可能であり、効率的にガス拡散電極及びその接合体を製造することができる。
本発明の一形態に係る多孔質炭素シートの表面をカメラで撮影した写真である。 本発明の一形態に係る多孔質炭素シートのマーキング部表面をマイクロスコープで撮影した写真(倍率100倍)である。
(マーキングについて)
本発明の多孔質炭素シートは、マーキングが形成されており、前記マーキングが形成された箇所(マーキング部)の酸素原子と炭素原子の数比率(酸素原子の数/炭素原子の数)が、0.046以上である多孔質炭素シートである。
マーキング部は、識別のために用いられるが、その識別の目的としては、特に限定されず、例えば多孔質炭素シートの欠点位置の識別、製品番号の識別、製品の向きの識別などをあげることができる。また、マーキング部の形状も特に限定されない。
マーキング部は、欠点位置の識別、製品番号の識別、製品の向きの識別などを目的として用いられる。そのためマーキング部の形状は特に限定されないが、欠点位置を識別できるような線、円、楕円、多角形、各種の記号としてもいいし、製品番号を識別できるような数字やアルファベットを記しても良いし、製品の向きを識別できるような矢印などとしてもよい。また後述するように、線、円、楕円、多角形、記号、数字、アルファベット、矢印などのマーキング部は、多重線からなることが好ましい。
多孔質炭素シートに対してマーキングを形成する方法は特に限定されず、多孔質炭素シートに対してファイバーレーザやCOレーザなどのレーザを照射してマーキングを形成することができる。以下、多孔質炭素シートに対して、レーザを照射してマーキングを形成する工程を、単にマーキング工程という。レーザを照射することで、多孔質炭素シートを切削し、彫り込む又は熱で酸化させ、変色させることができるので、検出性のよいマーキング部を形成することが可能である。中でも焦点を絞って照射することで、多孔質炭素シートが変形して剃ることを防ぐことができることから、マーキングを形成する方法としてはファイバーレーザを用いることが好ましい。
本発明においては、図1に示したように、多孔質炭素シートにおいて、識別用のマーキングが形成された箇所をマーキング部とし、マーキング部以外を非マーキング部とする。また、図2に示したようにマーキング部はレーザが照射され切削された部分だけでなく、レーザの照射熱により変色している部分(熱変色部)も含む。
本発明においては、マーキング部の酸素原子と炭素原子の数比率(酸素原子の数/炭素原子の数)が0.046以上であることが重要である。また、マーキング部の酸素原子と炭素原子の数比率(酸素原子の数/炭素原子の数)は高いほど検出性が良好になるが、多孔質炭素シートの曲げ強度の低下を抑制する観点から、上限としては0.07以下であることが好ましい。
一方で本発明の多孔質炭素シートは、1000℃以上の高温で黒鉛化処理されていることが好ましく、そのような多孔質炭素シートの場合、非マーキング部の組成は炭素原子だけで形成されることとなるため、非マーキング部の組成は炭素原子100%(数基準)であることが好ましい。そして、非マーキング部の組成が炭素原子100%(数基準)の多孔質炭素シートに対して高出力のレーザを照射することで、多孔質炭素シートが酸化され酸素原子の数比率が大きくなる。マーキング部の酸素原子と炭素原子の数比率(酸素原子の数/炭素原子の数)が0.046以上であれば、マーキング部と非マーキング部の色濃度の差が大きくなり、検出性の良好なマーキング部となる。
酸素原子と炭素原子の数比率(酸素原子の数/炭素原子の数)は、X線光電子分析法(XPS)により測定できる。Quantera SXM(PKI社製)あるいはその同等品で測定できる。測定条件は、励起X線をMonochromatic Al Kα1,2線(1486.6eV)、X線径を200μm、光電子脱出角度を45°とする。データ処理はスムージングを9point smoothing、横軸補正はC1sメインピーク(CHx、C−C、C=C)を284.6eVとした。
XPS測定から得られた酸素原子の数比率の値(%)と炭素原子の数比率の値(%)を用いて、酸素原子と炭素原子の数比率(以下、数比率(酸素原子の数/炭素原子の数)は、O/Cとも略する)を下記の式に従って算出できる。
O/C=酸素原子の数比率の値/炭素原子の数比率の値
非マーキング部の組成が炭素原子100%(数基準)となっているか否かの測定は、酸素原子と炭素原子の数比率(酸素原子の数/炭素原子の数)と同様に、X線光電子分析法(XPS)により測定できる。つまり、XPS測定から得られた炭素原子の数比率の値(%)が100%となるか否かで判断する。
本発明の多孔質炭素シートは、マーキング部の形成された箇所の反り高さが1cm以下であることが好ましい。マーキング部の反り高さはマーキングが形成された箇所を含む多孔質炭素シートを10cm各に切り出し、平面板上に置いた際の、多孔質炭素シートの最も浮き上がった位置の平面板からの高さを反り高さとする。反り高さは小さい程好ましく、0cmであることが特に好ましい。マーキング部の形成された箇所の反り高さを1cm以下とした多孔質炭素シートとするためには、多孔質炭素シートに対して、レーザを照射してマーキングを形成する工程において、レーザとしてファイバーレーザを用いる方法を挙げることができる。
本発明の多孔質炭素シートは、マーキング部と非マーキング部の色濃度の差(マーキング部の色濃度−非マーキング部の色濃度)が0.15以上であることが好ましい。マーキング部と非マーキング部の色濃度の差が0.15以上であれば、検出性の良好なマーキングとなる。色濃度の差は高いほど検出性が良好となるが、多孔質炭素シートの曲げ強度が低下することを抑制する観点から、上限として0.26以下であることが好ましく、0.24以下であることがさらに好ましい。
色濃度は照射される光の光量と反射もしくは透過される光の光量の比から算出される値であり、下記式3で定義される。
色濃度=log10 (入射光強度/反射光強度) ・・・式3
色濃度は、式差計(DensiEye100、エックスライト社)あるいはその同等品を使って測定することができる。
(多孔質炭素シート)
多孔質炭素シートとしては、例えば、炭素繊維織物または、炭素繊維抄紙体などの炭素繊維不織布をそのまま用いてもよいが、本発明の多孔質炭素シートは、分散している炭素短繊維を結着炭化物で結着してなるシートであることが好ましい。ここで、炭素短繊維が分散した状態とは、炭素短繊維がシート面内において顕著な配向を持たず概ねランダムに、例えば、無作為な方向に存在している状態であることが多い。炭素短繊維が分散した状態について、具体的には、後述する抄造法により短繊維が分散した状態である。結着炭化物とは、多孔質炭素シートにおいて炭素短繊維同士を結着している炭化物であり、後述する樹脂炭化物やパルプ炭化物などを含む。
本発明の多孔質炭素シートを構成する炭素短繊維の平均繊維径は、3〜20μmであることが好ましく、4〜16μmであることがより好ましく、5〜13μmであることが更に好ましい。ここで、炭素短繊維における単繊維の平均繊維径は、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、炭素繊維を1,000倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる30本の単繊維を選び、その直径を計測し、その平均値を求めたものである。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。
炭素短繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系等の炭素短繊維を用いることができる。なかでも、機械的強度に優れ、しかも、適度な柔軟性を有するハンドリング性に優れた多孔質炭素シートが得られることから、PAN系やピッチ系、特にPAN系の炭素短繊維を用いるのが好ましい。
本発明の多孔質炭素シートは、炭素質粒子を含むことが好ましい。炭素質粒子を含むことにより、多孔質炭素シート自体の導電性が向上する。炭素質粒子の平均粒子径は0.01〜10μmであることが好ましく、1〜8μmがより好ましく、3〜6μmがさらに好ましい。また、炭素質粒子は、黒鉛またはカーボンブラックの粉末であることが好ましく、黒鉛粉末であることがさらに好ましい。炭素質粒子の平均粒子径は、動的光散乱測定を行い、求めた粒径分布の数平均から求めることができる。
密度が低いとマーキング部の強度が低下しやすくなるので、本発明の多孔質炭素シートは、検出性と曲げ強度を両立するために、密度が0.2〜0.4g/cmであることが好ましく、0.25〜0.35g/cmであることがより好ましい。
ここで、上述の多孔質炭素シートの密度とは、見かけ密度のことを指し、多孔質炭素シートの厚さと目付(単位面積当たりの質量)とから算出する。多孔質炭素シートの厚さは、マイクロメーターを用いて、シートの厚さ方向に0.15MPaの面圧を付与して測定する。
本発明の多孔質炭素シートは、非マーキング部の曲げ強度が18MPa以上60MPa以下であることが好ましく、20MPa以上60MPa以下であることがより好ましい。非マーキング部の曲げ強度が18MPa未満の場合、燃料電池スタックとして組み付けた際にセパレータから受ける曲げの力により多孔質炭素シートが破壊されたり、また、固体高分子型燃料電池用多孔質炭素シートの製造や高次加工の際のハンドリング性が低下したりする。曲げ強度は、大きいほどより好ましいが、多孔質炭素シートの密度が0.2〜0.4g/cmと小さい場合には、通常、60MPa程度が限界である。
本発明の多孔質炭素シートにおいて、マーキング部はファイバーレーザによる切削や熱による酸化の影響で曲げ強度が低下する。マーキング部は通常欠点位置を識別するためのものであり、最終製品である燃料電池スタック中に組み付けることはないが、曲げ強度が低い場合、多孔質炭素シートの製造や高次加工の際に多孔質炭素シートが破壊される可能性がある。そのため本発明の多孔質炭素シートは、マーキング部における曲げ強度が18MPa以上であることが好ましく、20MPa以上40MPa以下であることがより好ましい。
多孔質炭素シートの曲げ強度は3点曲げ試験により得られるものであり、JIS K 7074−1988に規定される方法に準拠して行う。このとき、試験片の幅は12.7mm、長さは70mm、支点間距離は30mmとする。また、支点の半径は3R、圧子の半径は1/8インチR、荷重印加速度は5mm/分とする。なお、最大荷重や曲げ弾性率について多孔質炭素シートが異方性を有している場合には、縦方向と横方向について各2回の試験を行い、それらの平均を多孔質炭素シートの曲げ強度とする。
マーキング部の曲げ強度を測定する際は、試験片の幅方向をマーキングの線が横切るようにサンプリングする。試験片の幅方向をマーキングの線が横切るようにサンプリングすることで、マーキングにより最も強度が低下した箇所の曲げ強度を測定することが可能である。
本発明の多孔質炭素シートは、厚さが100〜250μmであることが好ましく、120〜230μmであることがより好ましく、140〜210μmであることがさらに好ましい。厚さが100μm未満の場合、燃料電池スタックとして組み付けた際にセパレータから受ける力により多孔質炭素シートが破壊されたり、また、多孔質炭素シートの製造や高次加工の際のハンドリング性が低下したりすることがある。厚さが250μmを超える場合、多孔質炭素シートの柔軟性が大きく低下し、多孔質炭素シートをロール状に巻き取ることが難しくなることがある。また、厚さが薄いほど、マーキング部の強度が低下しやすくなり、検出性と曲げ強度を両立することが困難となる。
本発明の多孔質炭素シートは、炭素短繊維及び樹脂を含む前駆体繊維シートの、炭素短繊維および樹脂の目付を適切な範囲とし、高温で焼成することで、製造することができる。次に、本発明の多孔質炭素シートを製造するに好適な方法を、具体的に説明する。
多孔質炭素シートとして、分散している炭素短繊維を結着炭化物で結着してなるシートを用いる場合には、本発明の多孔質炭素シートの製造方法は、炭素短繊維及び樹脂を含む前駆体繊維シートを、加圧処理する圧縮工程と、加圧処理された前駆体繊維シートを加熱し、樹脂を結着炭化物に転換する炭化工程とを有する。
前駆体繊維シートには、パルプが含まれていてもよい。その場合、含まれるパルプの含有量は、炭素短繊維100質量部に対して5〜100質量部であることが好ましく、20〜80質量部がより好ましく、30〜60質量部が特に好ましい。
前駆体繊維シートは、炭素短繊維およびパルプを用いて抄紙して炭素繊維紙とする抄紙工程および炭素繊維紙に熱硬化性樹脂を含浸する樹脂含浸工程を経て製造することができる。
抄紙工程では、たとえば前述した平均繊維長を有する炭素短繊維およびパルプを水中に均一に分散させ、分散している炭素短繊維およびパルプを網上に抄造し、抄造したシートをポリビニルアルコールの水系分散液に浸漬し、浸漬したシートを引き上げて乾燥させる。 前駆体繊維シートにおいて、炭素短繊維の目付は10〜35g/mであることが好ましい。
樹脂含浸工程では、樹脂の溶液中に、炭素繊維紙を浸漬し、浸漬された炭素繊維紙を引き上げて、乾燥させることにより前駆体繊維シートが製造される。
前駆体繊維シートに含まれる樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。通常は、熱硬化性樹脂が用いられ、炭化工程での樹脂の炭化収率が高い熱硬化性樹脂を用いるのがより好ましく、中でもフェノール樹脂を用いるのが更に好ましい。
前駆体繊維シートにおいて、樹脂の目付は20〜35g/mであり、22〜34g/mであることが好ましく、25〜33g/mであることがより好ましい。
樹脂含浸工程では、熱硬化性樹脂の溶液中に炭素質粒子を添加するのが好ましい。炭素質粒子は、熱硬化性樹脂100質量部に対して5〜100質量部が好ましく、10〜80質量部がより好ましく、20〜50質量部がさらに好ましい。
圧縮工程では、前駆体繊維シートを、通常は加熱しつつ、加圧処理する。圧縮工程には、互いに平行に位置する一対の熱板を備えた間欠プレス装置、一対のエンドレスベルトを備えた連続式加熱プレス装置、あるいは、連続式ロールプレス装置を用いることができる。
次に、圧縮工程を経た前駆体繊維シートを炭化工程に供し、窒素などの不活性ガス雰囲気で炭化して、前駆体繊維シートに含まれる、パルプをパルプ炭化物に、樹脂を樹脂炭化物に転換することにより多孔質炭素シートを得る。
本発明の多孔質炭素シートの製造方法において、炭化工程における加熱温度の最高温度を、2200〜2700℃の範囲内とすることが好ましい。
本発明の多孔質炭素シートの製造方法は、マーキング工程の前に、欠点を検出する工程(欠点検出工程)を有し、検出された欠点箇所に応じて、多孔質炭素シートに対してファイバーレーザを照射してマーキングを形成することが好ましい。欠点検出工程において検出される欠点としては、炭素短繊維束、穴、異物、および焦げによる欠点などがある。また、欠点の検出方法としは、目視検査やX線、紫外線、赤外線、可視光を照射することにより欠点を検出できる自動検査がある。自動検査であれば、検出された異物位置情報をマーキング装置に送ることにより、欠点の自動マーキングが可能であるため好ましい。いずれにしても、欠点検出工程において検出された欠点箇所を識別できるように、マーキング工程においてマーキングを形成することが好ましい。
次に識別用のマーキングの形成について説明する。本発明の多孔質炭素シートにマーキングを形成する方法は特に限定されないが、本発明の多孔質炭素シートの製造方法においては、レーザを照射してマーキングを形成すること(マーキング工程)が重要である。前述のとおり、マーキング工程で用いるレーザとしては、ファイバーレーザを用いることが好ましい。そしてファイバーレーザは特に限定されないが、例えば、VideoJet社製ファイバーレーザマーカー 7510(出力50W、レンズf420)あるいはその同等品を使って、形成できる。
本発明の多孔質炭素シートは、マーキング部が多重線からなることが好ましい。マーキング部を多重線とする場合、隣り合う線の熱変色部が重なることで、マーキング部の検出性が高めることができるために好ましい。また、単線で検出性を高める場合には、多孔質炭素シートをより深く切削することで可能であるが、この場合には曲げ強度が低下しやすいものの、マーキング部を多重線とすれば、曲げ強度を低下させることなく、検出性を高めることが可能であるために、マーキング部が多重線からなることが好ましい。
また、マーキングの形成は、同じ箇所を複数回重ねて印字してもよい。つまりマーキング工程においては、ファイバーレーザを同じ箇所に複数回重なるように照射してもよい。
マーキング工程におけるファイバーレーザの照射条件としては、出力パーセント、印字速度、線のピッチ、周波数があり、以下に詳細を説明する。
マーキング工程におけるファイバーレーザの出力パーセントは、装置出力に対してどれくらいのパーセンテージのファイバーレーザを照射するかというパラメータであり、高い数値ほど印字が濃く、低い数値ほど印字が薄くなる。
マーキング工程におけるファイバーレーザの印字速度は、ファイバーレーザのレーザースキャンの移動速度であり、数値が大きいほど印字が薄く、数値が小さいほど印字が濃くなる。
マーキング工程におけるファイバーレーザの線のピッチは、多重線で印字する場合の隣り合う線の間隔であり、数値が高いほど、隣り合う線の熱変色部が重なりにくい。一方、ファイバーレーザの線のピッチの数値が低いほど、隣り合う線の熱変色部が重なりやすいが、数値が小さすぎると、多孔質炭素シートを切削しやすくなり、曲げ強度を低下させやすくなる。上記の理由から、ファイバーレーザの線のピッチは0.3〜0.7mmであることが好ましい。
マーキング工程におけるファイバーレーザの周波数は、パルスで照射されるファイバーレーザの周期であり、数値が大きいほど濃い印字となり、数値が低いほど薄い印字となる。本発明の製造方法においては、ファイバーレーザの周波数は20〜90kHzであることが好ましい。マーキング工程において、ファイバーレーザの周波数を20〜90kHzとすることで、多孔質炭素シートの変形を抑え、検出性の良好なマーキング部を形成することが可能である。
本発明において、ファイバーレーザの照射条件を組合せたパラメータXを下記式1で定義する。
パラメータX=ファイバーレーザの出力(W)÷線のピッチ(mm) ・・・式1
ここで、ファイバーレーザの出力(W)は、装置の出力(W)とその装置の出力に対してどのくらいパーセンテージのファイバーレーザを照射するかを設定する「出力パーセント」をかけて、100で割ったものである。本発明の多孔質炭素シートの製造方法において、マーキング部が多重線からなる場合、式1で表されるパラメータXの値が50以上であることが好ましい。パラメータXの値を50以上にすることで、印字が濃く検出性の良好なマーキングを形成することが可能である。パラメータXは、大きいほどより好ましいが、多孔質炭素シートの強度低下を考慮すると通常、400程度が限界である。
本発明において、ファイバーレーザの照射条件を組合せたパラメータYを下記式2で定義する。
パラメータY=ファイバーレーザの出力(W)÷印字速度(mm/sec)÷線のピッチ(mm) ・・・式2
本発明の多孔質炭素シートの製造方法において、マーキング部が多重線からなる場合、式2で表されるパラメータYの値が0.04以上であることが好ましい。パラメータYの値を0.04以上にすることで、印字が濃く検出性が良好、且つ多孔質炭素シートの強度低下が少ないマーキングを形成することが可能である。パラメータYは、大きいほどより好ましいが、多孔質炭素シートの強度低下を考慮すると通常、0.6程度が限界である。
本発明において、多孔質炭素シートは、撥水性樹脂を含んでいることが好ましい。撥水性樹脂は特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、などのフッ素樹脂が挙げられる。撥水性樹脂の付与量は、撥水性樹脂を付与する前の多孔質炭素シート100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましい。
本発明のガス拡散電極基材は、本発明の多孔質炭素シート及びマイクロポーラス層とを有する。本発明のガス拡散電極基材を得るためには、前述の本発明の多孔質炭素シート上に炭素質粒子を含むマイクロポーラス層が形成することで可能である。マイクロポーラス層には通常、炭素質粒子がマイクロポーラス層100質量%に対して5〜95質量%含まれることが好ましい。
以下、実施例を用いて、本発明について、さらに具体的に説明する。
(実施例1)
東レ(株)製ポリアクリロニトリル系炭素繊維“トレカ (登録商標) ”T300−6K(平均単繊維径:7μm、単繊維数:6,000本)を6mmの長さにカットし、日本製紙(株)製広葉樹サルファイトパルプ(LDPT)と共に、水を抄造媒体として連続的に抄造し、さらにポリビニルアルコールの10質量%水溶液に浸漬し、乾燥する抄紙工程を経て、ロール状に巻き取って、炭素短繊維の目付が30g/mの長尺の炭素繊維紙を得た。炭素繊維紙100質量部に対して、添加したパルプの量は40質量部、ポリビニルアルコールの付着量は20質量部に相当する。
(株)中越黒鉛工業所製鱗片状黒鉛BF−5A(平均粒径5μm)、フェノール樹脂およびメタノールを2:3:25の質量比で混合した分散液を用意した。上記炭素繊維紙に、炭素短繊維100質量部に対してフェノール樹脂が96質量部である樹脂含浸量になるように、上記分散液を連続的に含浸し、90℃の温度で3分間乾燥する樹脂含浸工程を経た後、ロール状に巻き取って樹脂含浸炭素繊維紙を得た。フェノール樹脂には、荒川化学工業(株)製レゾール型フェノール樹脂KP−743Kと、荒川化学工業(株)製ノボラック型フェノール樹脂タマノル(登録商標)759とを1:1の質量比で混合した樹脂を用いた。
(株)カワジリ製100tプレスに熱板が互いに平行となるようセットし、下熱板上にスペーサーを配置して、熱板温度170℃、面圧0.8MPaで、プレスの開閉を繰り返しながら上下から離型紙で挟み込んだ樹脂含浸炭素繊維紙を間欠的に搬送しつつ、同じ箇所がのべ6分間加熱加圧されるよう圧縮処理した。また、熱板の有効加圧長LPは1200mmで、間欠的に搬送する際の前駆体繊維シートの送り量LFを100mmとし、LF/LP=0.08とした。すなわち、30秒の加熱加圧、型開き、炭素繊維紙の送り(100mm)、を繰り返すことによって圧縮処理を行い、ロール状に巻き取った。
圧縮処理をした炭素繊維紙を前駆体繊維シートとして、窒素ガス雰囲気に保たれた、最高温度が2400℃の加熱炉に導入し、加熱炉内を連続的に走行させながら、約500℃/分(650℃までは400℃/分、650℃を超える温度では550℃/分)の昇温速度で焼成する炭化工程を経た後、ロール状に巻き取って多孔質炭素シートを得た。
VideoJet社製ファイバーレーザマーカー 7510(出力50W、レンズf420)を用いて、出力パーセント95%、印字スピード1200mm/sec、周波数75KHz、線のピッチ0.5mm、線の本数10本、重ね印字回数1回で上記多孔質炭素シートにレーザを照射し、外径54mmの円を識別用のマーキングとして形成した。デフォーカスはなく、焦点を合わせた状態で照射した。このようにして、識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例2)
出力パーセントを85%に変更した以外は実施例1と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例3)
出力パーセントを75%に変更した以外は実施例1と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例4)
出力パーセントを65%に変更した以外は実施例1と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例5)
出力パーセントを55%に変更した以外は実施例1と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例6)
印字スピードを500mm/secに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例7)
印字スピードを750mm/secに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例8)
印字スピードを1000mm/secに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例9)
印字スピードを1500mm/secに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例10)
印字スピードを1750mm/secに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例11)
線のピッチを0.2mmに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例12)
線のピッチを0.3mmに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例13)
線のピッチを0.4mmに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例14)
線のピッチを0.6mmに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例15)
周波数を25kHzに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例16)
周波数を50kHzに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例17)
出力パーセントを45%に変更した以外は実施例1と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例18)
印字スピードを3000mm/secに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例19)
線のピッチを0.8mmに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例20)
線のピッチを1.0mmに変更した以外は実施例3と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
(実施例21)
レーザをVideoJet社製COレーザマーカー 7310(出力20W)に変更し、出力パーセント100%、印字スピード100mm/sec、周波数5KHz、線のピッチ1.0mm、線の本数10本、重ね印字回数1回に変更した以外は実施例1と同様にして識別用マーキングの形成された多孔質炭素シートを得た。
以上の実施例及び比較例の照射条件及び評価結果を表1に示した。
〔検出性〕
検出性は以下の基準で目視による評価を行った。
◎:非常に濃いマーキングである
○:濃いマーキングである
△:薄いマーキングである
反り高さ〕
マーキング部の形成された箇所の反り高さは、以下の基準で評価を行った。
○:1cm以下
×:1cmより大きい
Figure 0006972683
Figure 0006972683
なお、表において「O/C」とは、「数比率(酸素原子の数/炭素原子の数)」を意味する。
MDとは長手方向を意味し、TDとは幅方向を意味する。
XPS(C)とはXPS測定から得られた炭素原子の数比率の値(%)を、XPS(O)とは、XPS測定から得られた酸素原子の数比率の値(%)を意味する。
1 非マーキング部
2 マーキング部
3 熱変色部
4 レーザ照射(切削)部

Claims (4)

  1. マーキングが形成された多孔質炭素シートの製造方法であって、
    前記多孔質炭素シートに対して、レーザを照射してマーキングを形成する工程(以下、マーキング工程という、)を有し前記マーキングが形成された箇所をマーキング部とすると、マーキング部が多重線からなり、前記レーザとしてファイバーレーザを用い、且つ式1で表されるパラメータXの値が50以上である多孔質炭素シートの製造方法。
    パラメータX=ファイバーレーザの出力(W)÷線のピッチ(mm) ・・・式1
  2. 2で表されるパラメータYの値が0.04以上である、請求項に記載の多孔質炭素シートの製造方法。
    パラメータY=ファイバーレーザの出力(W)÷印字速度(mm/sec)÷線のピッチ(mm) ・・・式2
  3. 前記ファイバーレーザの周波数が20〜90kHzである、請求項1または2に記載の多孔質炭素シートの製造方法。
  4. 前記マーキング工程の前に、欠点を検出する工程を有し、
    検出された欠点箇所に応じて多孔質炭素シートに対してレーザを照射してマーキングを形成する、請求項のいずれかに記載の多孔質炭素シートの製造方法。
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