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JP6981666B2 - レーザーを用いた細胞内への外来物質の導入方法 - Google Patents
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JP6981666B2 - レーザーを用いた細胞内への外来物質の導入方法 - Google Patents

レーザーを用いた細胞内への外来物質の導入方法 Download PDF

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Description

本発明は、レーザー光照射によって細胞膜に細孔を形成することにより、細胞内へ外来物質を導入する方法に関する。
細胞内に外来遺伝子等を導入することで、新たな形質を有する細胞又は生物の作製や、細胞内に蛍光色素を導入して細胞内の機能を蛍光測定するバイオイメージング解析が行われている。近年研究が進んでいるiPS(人工多能幹)細胞も任意の分化形質を有する細胞に分化させるために、細胞内への物質導入技術が必須である。
従来、細胞へ遺伝子やタンパク質を導入する方法として、トランスフェクション試薬を用いる方法、ウイルスを用いる方法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、ソノポレーション法、リポソーム融合法、マイクロマニピュレーターを用いる方法等が用いられてきた。
トランスフェクション試薬を用いる方法は、脂溶性の試薬で親水性の遺伝子やタンパク質を覆い、遺伝子やタンパク質が脂質からなる細胞膜を通過できるようにする方法である。導入効率は高いが、すべての細胞に適用できるわけではなく、例えばプライマリー培養細胞、神経細胞、血球細胞、粘菌細胞等には適用することができないという問題があった。また、トランスフェクション試薬は細胞に残ることから細胞毒性や発がん性が危惧されていること、加えて市販のトランスフェクション試薬は導入剤の成分が公開されていないことから、ガン医療や再生医療等の治療目的でヒトに使うことができないし、このようなトランスフェクション試薬を用いて導入改変した植物を使った食品をヒトが摂取するには安全性を確認する必要があるという問題があった。
ウイルスを用いる方法は、ウイルスに遺伝子を持たせ、細胞に感染させることで細胞内に導入する方法である。すべての細胞種に応用できず、ウイルスが感染できる細胞だけに使用が限定されるという問題や、ウイルスの一部が細胞に残るので、この方法で改変した細胞を医療又は食品に用いることができないという問題があった。
エレクトロポレーション法は、細胞に一過的に電流を流すことで細胞膜に細孔を形成し、細胞膜に接触させた液体中の遺伝子やタンパク質を細胞内に導入する方法である。操作は比較的簡単であるが、専用の装置が必要であること、細胞の生存率が10〜50%と低いこと、多量の細胞と多量の外来物質が必要となること、さらに導入効率が1×10−4%以下と低いこと等の問題があった。
パーティクルガン法は主に植物細胞に用いられており、金属粒子に遺伝子などを付着させ、専用の銃によって高速で細胞を通過させる間に導入する方法である。導入効率が1×10−7%以下程度と低く、また生存率も20%以下と低いという問題があった。
ソノポレーション法は超音波で細胞膜に穴をあけ、外液にある遺伝子などを穴が閉じるまでの間に導入する方法である。導入効率が1×10−7%以下程度と低く、また生存率も20%以下と低いという問題があった。
リポソーム融合法は、脂質からなるリポソーム(小胞)内部に遺伝子やタンパク質を入れ、細胞とリポソームを膜融合させることで、リポソーム内部の遺伝子やタンパク質を細胞に導入する方法である。汎用性及び簡便性が高いが、リポソームの調製が難しく、準備に時間がかかるという問題があった。
マイクロマニピュレーターを用いる方法は、マイクロマニピュレーターを用いて細胞に直接微小注射して外来物質を導入する方法である。ねらった1細胞への古典的な物理的導入方法であり卵細胞のような比較的サイズの大きな細胞で利用されている。しかしながら、高度な操作技術が要求されると共に導入に時間がかるという問題や、導入効率及び生存率はその導入作業を行う人の技術次第という問題や、多数の細胞(例えば10個の細胞)への導入は極めて時間と労力がかかるという問題があった。
また、細胞へ遺伝子やタンパク質を導入する方法として、レーザー光照射により細胞膜に孔を形成する方法も用いられている。
例えば、細胞あるいは生組織に光ファイバーを通してレーザー光を照射し、照射された細胞の、細胞壁及び/又は細胞膜あるいは細胞全体を、切断、除去又は開孔し、該照射部位を通して前記細胞及び/又は生組織内へ外来物質を導入する方法(特許文献1参照)や、生細胞の細胞表面の一部に外来物質を担持した小粒子を置き、該細胞表面の一部にレーザー光を照射し加工することにより細胞壁及び/又は細胞膜に穿孔を設けると同時に外来物質を前記生細胞内へ導入する方法(特許文献2参照)が開示されているが、細胞壁及び/又は細胞膜に穿孔が生じる程の強いレーザーを細胞に直接照射するために、レーザー光を照射した細胞における損傷が大きくなるおそれがあった。さらに、細胞は立体的で複雑な3次元構造を有し、しかも常に刻々と形態を変化させており、細胞膜の一定の場所を狙ってレーザー光を照射することは難しいため、特定のシングル細胞をねらって物質を導入することが難しいという問題があった。
また、細胞を、導入目的物質の存在する液中、ゲル中若しくはゲル表面に配置し、前記液若しくはゲル又は前記細胞にパルスレーザー光を集光させて照射し、それにより生じた衝撃波により前記細胞の細胞膜の構造を一時的に変化させ、前記物質を細胞内に導入する方法(特許文献3参照)が開示されている。しかしながら、微粒子又は微粒子の近くを狙ってレーザー光を照射することは高度な技術を要するほか、導入効率が低く、さらに大型で高価なフェムト秒レーザーを用いる必要があるという問題があった。
さらに、生体組織において、薬剤を導入する細胞の近傍に該薬剤を定位させ、該細胞の近傍に存在する光吸収体に吸収される波長のレーザー光を照射して、ヒト以外の生物の細胞に薬剤を導入することを特徴とする薬剤導入方法(特許文献4参照)が開示されている。しかしながら、生体組織に直接レーザー光を照射する方法であり、シリンジにより導入する薬剤をレーザー光照射前に生体組織へ注入する必要があるという問題があった。
このほか、上面に集光剤からなる薄膜がコーティングされたカバースリップの前記薄膜上に細胞を静置し、導入する外来物質を含有する液体を前記細胞に接触させ、前記細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射して細胞膜に細孔を形成し、前記細孔から前記外来物質を前記細胞内へ導入する方法(特許文献5、非特許文献1参照)が開示されている。しかしながら、例えば集光剤としてカーボンを用いた場合には、透過光のおよそ10%はカーボンが吸収してしまい、蛍光観察するにあたって蛍光のロスが生じるという問題があった。
また、a)一つ以上の細胞を固体表面から有効な距離内の実質的に静止した位置に維持し、及びb)前記固体表面に、上記一つ以上の特定の3次元的な位置は前もって認識することなく、該一つ以上の細胞の膜の透過化を誘導するに十分な電磁放射線を指向させ、ここで前記一つ以上の細胞を前記電磁放射線の経路に一致させることを備える一つ以上の細胞を一時的に透過性にする方法(特許文献6参照)が開示されている。しかしながら、細胞膜だけでなく細胞自体に損傷を与えるという問題や、一つの細胞だけを狙って外来物質を導入できないという問題があった。
ところで、近年は共鳴プラズモン効果を利用したバイオ系解析技術が進められている。例えば、試料中の被検物質を標識物質により標識するとともに捕捉物質により固定化して検出するイムノクロマト分析法において、2種の標識試薬を共鳴プラズモン効果によって発色を増感する方法(特許文献6参照)や、基板と、前記基板の表面上に互いに独立して多数の金属微粒子が分散配置された増強電磁場形成層と、前記基板及び前記増強電磁場形成層の上層に形成された保護層とを有する光増強素子を構成するセンサチップを備えたセンサ(特許文献7参照)が開示されている。
特開2002−281970号公報 特開2002−325572号公報 特開2005−168495号公報 特開2005−330194号公報 特開2015−167551号公報 特開2009−162558号公報 特開2014−228322号公報
Yumura, S., A novel low-power laser-mediated transfer of foreign molecules into cells. Scientific Reports, 6:22055(2016)
バイオイメージング解析においては、シングル細胞レベルでの観察が必要となるが、従来の細胞内に外来遺伝子等を導入する方法では、特定のシングル細胞をねらって細胞膜に細孔を形成し、細胞に対して損傷による影響を与えずに物質を高効率、且つ、容易に細胞内へ導入することが困難であった。そこで、本発明の課題は、外来物質を高効率、且つ、容易にシングル細胞内へ導入でき、さらに細胞への損傷による影響が少ない方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討する中で、カバースリップの表面を金又は白金の薄膜でコーティングし、前記薄膜上に細胞を静置し、前記細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射して、前記薄膜にレーザー光を吸収させることで、細胞への損傷による影響が少なく、細胞膜に細孔を形成可能であることを見いだした。さらに、細胞内に導入したい外来物質を含有する液体を細胞に接触させておくことにより、形成した細孔から導入したい外来物質が細胞内に導入されることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのものである。
(1)細胞内への外来物質の導入方法であって、上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属の薄膜がコーティングされたカバースリップの前記薄膜上に細胞を静置し、導入する外来物質を含有する液体を前記細胞に接触させ、前記細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射して前記薄膜にレーザー光を吸収させることにより前記細胞膜に細孔を形成し、前記細孔から前記外来物質を前記細胞内へ導入することを特徴とする細胞内への外来物質の導入方法。
(2)カバースリップの下面から細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射することを特徴とする上記(1)記載の細胞内への外来物質の導入方法。
(3)薄膜に対して対物レンズを通してレーザー光を照射することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の細胞内への外来物質の導入方法。
(4)レーザー光のスポット径が0.2μm〜2μmであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法。
(5)上面に金又は白金の薄膜がコーティングされたカバースリップを用いることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法。
(6)薄膜をスパッタ法により形成することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法。
(7)外来物質がDNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸、糖類、脂質、薬剤、蛍光色素のいずれか1以上の物質であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法によって得られた形質転換細胞。
(9)上記(1)〜(7)のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法に用いるための、上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属からなる薄膜がコーティングされたカバースリップ。
本発明の細胞内への外来物質の導入方法によれば、細胞への損傷による影響が少なく、外来物質を高効率、且つ、容易にシングル細胞内へ導入することが可能となる。
(a)カバースリップの下面から細胞膜に近接した薄膜に対してレーザー光を照射する方法の説明図である。(b)細胞膜に細孔が形成した様子を示す図である。(c)細孔から外来物質が細胞内に導入した様子を示す図である。 ガラスボトムディッシュに静置した細胞にレーザーを照射する概略図である。 パルスレーザー光照射装置によるパルスレーザー光照射の概略図である。 (a)実施例1における蛍光色素を導入した細胞のコンピューター画像による細胞の観察結果(金の薄膜をコーティングしたカバースリップを用いた場合)を示す図である。(b)実施例1における蛍光色素を導入した細胞の相対蛍光量を示す図である。(c)実施例1における蛍光色素を導入した細胞のコンピューター画像による細胞の観察結果(白金の薄膜をコーティングしたカバースリップを用いた場合)を示す図である。 実施例2における蛍光色素を導入した細胞のコンピューター画像による細胞の観察結果(金の薄膜をコーティングしたカバースリップを用いた場合)を示す図である。 実施例3におけるプラスミドを導入した細胞の顕微鏡による蛍光観察結果を示す図である。(a)は位相差顕微鏡写真、(b)は同視野の蛍光顕微鏡写真を示す。 参考例におけるカバースリップの観察結果を示す図である。
本発明の細胞内への外来物質の導入方法としては、細胞内への外来物質の導入方法であって、上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属の薄膜がコーティングされたカバースリップの前記薄膜上に細胞を静置し、導入する外来物質を含有する液体を前記細胞に接触させ、前記細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射して前記薄膜にレーザー光を吸収させることにより前記細胞膜に細孔を形成し、前記細孔から前記外来物質を前記細胞内へ導入することを特徴とする細胞内への外来物質の導入方法であれば特に制限されず、かかる方法により、細胞への損傷による影響が少なく、外来物質を高効率、且つ、容易にシングル細胞内へ導入することが可能となる。
本発明において、細胞としては、単一の細胞であっても、組織の細胞であっても、培養した複数の細胞でもよく、細胞の種類としては原生生物、動物細胞、植物細胞、細菌、酵母を例示することができる。
原生生物としては、細胞性粘菌、アメーバ、藻類、繊毛虫を例示することができ、細胞性粘菌としては、キイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)の細胞を好適に例示することがでる。動物細胞を用いる場合、由来としてはヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、イヌ等の哺乳動物由来を例示することができ、細胞の種類としてはプライマリー細胞、細胞株、受精卵、神経細胞等の哺乳動物細胞を例示することができる。動物細胞を用いる場合には、接着性細胞でも浮遊性細胞でもよいが、接着性細胞を好適に例示することができる。また、植物細胞としては、ニコチアナ・タバカム、シロイヌナズナ由来の細胞を例示することができる。細菌としては、大腸菌、古細菌、マイコプラズマを例示することができる。
本発明において、外来物質としては特に制限されないが、DNA、RNA、ペプチド、アミノ酸、糖類、脂質、薬剤、蛍光色素のいずれか1以上の物質であることが好ましく、DNA、RNA、蛍光色素のいずれか1以上の物質であることがより好ましい。また、外来物質としてこれらの物質を単独でも、組み合わせてもよく、また、これらの物質を金属、無機物、有機高分子等の微粒子の表面に結合させて用いてもよい。
本発明における薄膜は、金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属で形成されていればよく、金又は白金で形成されていることが好ましく、透過性の観点から金で形成されていることがより好ましい。上記金属で形成される薄膜は上記金属の粒子から形成されていてもよい。照射したレーザー光を金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属が吸収することにより、細胞に損傷の影響を与えずに、低い出力のレーザー光で、吸収した位置に近接した細胞膜に細孔を形成することが可能となる。細孔は、細胞が本来持っている細胞膜修復機構によって速やかに閉じられる。金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属のコーティング方法としては、スパッタリングや真空蒸着によりコーティングする方法や、上記金属粒子を塗布してコーティングする方法を例示することができるが、薄膜作製工程の容易性の観点からスパッタリング法であることが好ましい。
本発明において、上記薄膜の厚さとしては、5nm〜200nm、好ましくは8nm〜50nm、より好ましくは10nm〜20nmを例示することができる。薄膜の厚さが200nmを超えれば、カバースリップの透明性が低下し、外来物質を導入した細胞の顕微鏡観察を妨げることとなり、5nm未満であれば、レーザー光を吸収する能力が不十分で、外来物質を導入するために十分な細孔が細胞膜に形成されないこととなる。なお、薄膜の厚さと細胞に細孔を形成するレーザー光の出力とは反比例の関係にあり、薄膜の厚さを薄くすると出力を高める必要があるため、薄膜の厚さは用いるレーザー光の出力に応じて調整することができる。
本発明において、上記薄膜は分光光度計によって測定(532nm)した場合のOD値として、0.005〜0.1、好ましくは0.01〜0.08である。
また、金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属の粒子の平均粒径としては特に制限されないが、2nm〜200nm、好ましくは5nm〜100nmを挙げることができる。
上記薄膜上には、細胞増殖のために必要に応じてコラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、エラスチン、その他の細胞外マトリックスをコーティングしてもよい。また、細胞として浮遊性細胞を用いる場合には、ポリリジン、ポリエチレンイミン、スペルミジン、スペルミン、その他のポリカチオンで薄膜の上面をコーティングすることが好ましい。
本発明において、カバースリップの材質としては特に制限されないが、顕微鏡観察をする上で透過性の観点から、ガラス、ポリスチレン、ポリメタクリルアクリルアミドを例示することができる。また、カバースリップの厚さとしては特に制限されないが、0.05mm〜0.3mmを例示することができる。
本発明において、薄膜上に細胞を静置するとは、静止した薄膜上に細胞が置かれた状態にすることを意味する。細胞は立体的で複雑な3次元構造を有し、しかも常に形態を変化させているが、上述のように薄膜上に細胞を静置すると、細胞膜の一部は薄膜と接する状態となる。その結果、薄膜に接する面の細胞膜は平坦となり形態変化がほとんどない状態となり、細胞膜の一定の場所を狙ってレーザー光照射を行うことが容易となる。
本発明において、細胞を静置し、導入する外来物質を含有する液体を細胞に接触させる方法としては、薄膜上で細胞を培養し、その後上清の培養液を除き、外来物質を含有する培養液を加える方法を例示することができる。多くの動物培養細胞では酵素処理やEDTA等の2価カチオンキレート剤を加えることで細胞を培養している基盤から引きはがして懸濁細胞を作製することが一般的であるが、この作業は手間を要する。そのため、上記作業を不要とするため、例えば後述するガラスボトムディッシュに細胞をあらかじめ培養しておき、上清の培養液を除いて外来物質を含む培養液を少量加えればよい。
このほか、細胞を液体に懸濁し、かかる懸濁液を薄膜上に加え、重力により細胞が薄膜に接着若しくは接触した後、外来物質を含有する液体を懸濁液に滴下若しくは注入し、細胞が外来物質を含有する液体で覆われる状態とする方法や、外来物質を含有する液体に細胞を前もって懸濁し、かかる懸濁液を薄膜上に加え、細胞を薄膜に接着若しくは接触させ、細胞が外来物質を含有する液体で覆われる状態とする方法を例示することができる。かかる方法は、基盤から簡単にはがしやすく、懸濁する方が容易な細胞、例えば粘菌細胞や血球系の細胞の場合に好ましい。さらに、かかる方法においては、細胞数が少ない場合において外来物質を含有する液体が10μl〜30μl程度の少量でよいため、高価若しくは希少な外来物質を用いる場合には好ましい。
導入する外来物質を含有する液体における外来物質の濃度は、導入する外来物質量や細胞の数により適宜調整することができるが、1ng/ml〜10mg/ml、好ましくは0.1μg/ml〜100μg/mlである。
本発明に用いるレーザー光の光源としては特に制限されず、パルスレーザーや、連続波(CW)レーザーを例示することができるが、パルスレーザーであることが好ましい。
本発明に用いる、薄膜に対して照射するレーザー光の波長としては特に制限されないが、380nm〜1100nm、好ましくは450nm〜700nmを例示することができる。レーザー光を照射することにより熱やプラズモン効果によって細胞膜に細孔が形成されるが、450nm〜700nmとすることで、プラズモン効果を生じやすくさせることが可能となり、レーザー光をより低出力で照射しても細胞膜に細孔が形成される。また、レーザー光の周波数としては0.1KHz〜100KHz、好ましくは1KHz〜10KHzを例示することができ、レーザー光の出力としては、細胞が損傷による影響を受けずに細孔が形成できる範囲であればよく、好ましくは0.1mW〜20mW、より好ましくは0.5mW〜5mW、さらに好ましくは0.8mW〜1.8mWを例示することができる。なお、上述のように薄膜の厚さと細胞に細孔を形成するレーザー光の出力は反比例の関係にあり、薄膜の厚さに応じてレーザー光の出力を調整することができる。
レーザー光の照射回数は特に制限されず、導入したい外来物質の量、外来物質の種類に応じて1回でも複数回でもよい。また、複数の外来物質を細胞内に導入する場合は、導入する複数の外来物質を含有する液体を細胞膜に接触させて1回のレーザー光照射で細胞内に導入してもよく、レーザー光照射ごとに導入する外来物質を含有する液体を置換して、それぞれ細胞膜に接触させて、複数回のレーザー光照射で細胞内に順に導入してもよい。
本発明において、レーザー光の照射は、カバースリップの上面から細胞に近接した薄膜に対して照射しても、カバースリップの下面から細胞に近接した薄膜に対して照射してもよいが、カバースリップの下面から細胞に近接した薄膜に対して照射することがより細胞の損傷を低減させる観点から好ましい。なお、本発明において、前記細胞に近接した薄膜に対してカバースリップの下面から照射レーザー光を照射するとは、細胞が近接している領域の薄膜の一部に対してカバースリップの下面からレーザー光を照射することをいう。また、レーザー光を照射する際には、予めレーザー光照射の焦点を薄膜に合わせることが好ましい。図1(a)に、カバースリップ1の下面から、細胞7が近接している領域4の薄膜2の一部に対してレーザー光を照射する方法を示す。
上記照射により、薄膜2及び/又は細胞7の細胞膜3がレーザー光を吸収し、薄膜2及び/又は細胞膜3にレーザー光のエネルギーが集中することで、図1(b)の矢印で示すように細胞膜3に細孔5が形成し、図1(c)に示すように細孔5から受動拡散により外来物質6を細胞内に導入することができる。なお、形成した細孔は短時間で修復されて閉じるため、細孔の形成による細胞の生育への影響はほとんどない。また、本発明において、細胞膜に細孔が形成されることは、細胞の損傷に含まれない。
本発明において、レーザー光の照射は、薄膜に対して対物レンズを通して行うことが好ましい。対物レンズを通す場合のレーザー光の瞳径は、3mm〜18mを例示することができ、好ましくは5mm〜15mmを例示することができ、より好ましくは11mm〜13mmを例示することができる。
本発明において、細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射する場合のレーザー光のスポット(焦点)径としては特に制限されないが、0.2μm〜2μmを例示することができ、より好ましくは0.5μm〜1.5μmを例示することができる。
本発明の上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属の薄膜がコーティングされたカバースリップとしては、当該カバースリップの前記薄膜上に細胞を静置し、導入する外来物質を含有する液体を前記細胞に接触させ、前記細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射して前記薄膜にレーザー光を吸収させることにより前記細胞膜に細孔を形成し、前記細孔から前記外来物質を前記細胞内へ導入する方法に用いるためのカバースリップであって、上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属の薄膜がコーティングされてあれば特に制限されない。本発明の上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属の薄膜がコーティングされたカバースリップを用いることで、本発明の細胞内への外来物質の導入方法を高効率、且つ、容易に行うことが可能となる。
本発明の上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属の薄膜がコーティングされたカバースリップの使用としては、上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属の薄膜がコーティングされたカバースリップの前記薄膜上に細胞を静置し、導入する外来物質を含有する液体を前記細胞に接触させ、前記細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射して前記薄膜にレーザー光を吸収させることにより前記細胞膜に細孔を形成し、前記細孔から前記外来物質を前記細胞内へ導入する方法に用いるための、上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属の薄膜がコーティングされたカバースリップの使用であれば特に制限されないが、金又は白金がコーティングされたカバースリップであることが好ましい。
本発明の細胞内への外来物質の導入方法によって得られた形質転換細胞としては、上面に金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属からなる薄膜がコーティングされたカバースリップの前記薄膜上に細胞を静置し、導入する外来物質を含有する液体を前記細胞に接触させ、前記細胞に近接した薄膜に対してレーザー光を照射して前記薄膜にレーザー光を吸収させることにより前記細胞膜に細孔を形成し、前記細孔から前記外来物質を前記細胞内へ導入することによって得られた形質転換細胞であれば特に制限されず、かかる形質転換細胞は、外来物質による新たな形質を有する細胞として有用であるほか、バイオイメージングによる細胞の機能解析に有用である。
[細胞(細胞性粘菌)内への蛍光色素の導入]
(金の薄膜がコーティングされたカバースリップの作製)
イオンスパッタリング装置(サンユー電子社製)を用いて、金(Au)をターゲットとして、14mA、20、30、35、40、50、又は60秒の条件で厚さ0.17mmのカバースリップNo.1(松浪硝子工業社製)の上面に金の薄膜がコーティングされたカバースリップを作製した。作製した金の薄膜の厚さは20、30、35、40、50、60秒の場合でそれぞれ順に6.6、10、11.6、13.3、16.6、20nmであった。また、分光光度計により透過光の吸収度を調べたところ、いずれも532nmで測定限界以下であった。一方、上記特許文献5の方法で作製したカーボンからなる薄膜がコーティングされたカバースリップの場合はOD532nmに基づく透過光の吸収度は10%であった。したがって、金の薄膜がコーティングされたカバースリップはより蛍光のロスが少なく、蛍光観察においてより蛍光シグナルを失わず、SN(シグナル/ノイズ)比を上げることができることが明らかとなった。
(白金の薄膜がコーティングされたカバースリップの作製)
マグネトロンスパッタリング装置(JFC−1600:日本電子社製)を用いて、白金(Pt)をターゲットとして、20mA−10秒、20mA−20秒、30mA−20秒、30mA−30秒、40mA−20秒、又は40mA−30秒の条件で厚さ0.17mmのカバースリップNo.1(松浪硝子工業社製)の上面に白金粒子をスパッタリングし、白金の薄膜がコーティングされたカバースリップを6種類作製した。作製したカバースリップを分光光度計(532nm)で測定したところ、OD値はそれぞれ0.002,0.018,0.026,0.039,0.058,0.062であった。
(ガラスボトムディッシュの作製)
図2に示すように、プラスチックディッシュ8の底に直径12mmの穴をあけ、カバースリップ1の薄膜2をコーティングした側を内側(上側)になるように接着剤で貼付け、ガラスボトムディッシュ9を作製した。
(細胞の静置)
細胞性粘菌の一種であるキイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)の細胞を含む培養液を滅菌したガラスボトムディッシュ9に加えることによって、キイロタマホコリカビの細胞を金の薄膜上に静置した。なお、静置されたキイロタマホコリカビの細胞の周りには培養液があるため、キイロタマホコリカビの細胞は生育可能な状態にある。
(カバースリップの下面からの薄膜に対するパルスレーザー光の照射)
FDSS532-Qパルスレーザー光照射装置(Crylas社製)を用いて、カバースリップの下面から薄膜に対してパルスレーザー光を照射する方法を図3に示す。レーザー10から導入したパルスレーザー光11は透過率可変のNDフィルター12、レンズ13、シャッター14、ダイクロミックミラー15、対物レンズ16を通過してガラスボトムディッシュ9に貼付けたカバースリップ1の下面から薄膜2に対して照射する。細胞7に細孔5を形成する場合は、細胞7の直下に近接している領域の薄膜2に対してレーザー光11をカバースリップ1の下面から照射し、細胞7に細孔を形成しない場合は、カバースリップ1の下面から細胞が近接していない領域の薄膜2に対してレーザー光11を照射する。ガラスボトムディッシュ9は倒立顕微鏡のステージを動かすことで水平方向にスライドさせることでき、細胞7の位置とパルスレーザー光11の吸収の位置を調整することや、細胞7を観察しながらパルスレーザー光11を照射することが可能である。照射時間はシャッター14によって制御し、パルスレーザー光11の出力は透過率可変のNDフィルター12で制御した。細胞7に細孔5を形成する場合は、透過率可変のNDフィルターを用い、焦点の調整の際には、透過率可変のNDフィルターを除いて照射した。1回のレーザー照射時間は1/125秒とした。なお、倒立顕微鏡の代わりに正立顕微鏡を用いる場合には、カバースリップの上面から、上記と同様の流れでパルスレーザー光を照射すればよい。
(パルスレーザー光照射の焦点の調整)
倒立顕微鏡(IX70I オリンパス社製)のステージに、上述のキイロタマホコリカビを静置し、培養したガラスボトムディッシュ9を設置し、対物レンズ16(ApoN 60×:オリンパス社製)の焦点をスポット(焦点)径が0.5μmとなるようにカバースリップ1の表面に合わせた。次に、細胞膜が近接していない領域の薄膜2に対してカバースリップ1の下面からパルスレーザー光11(532nm,15mW, 1nsec pulse, 4.8 KHz)を照射し、薄膜2が剥がれる位置を指標として、パルスレーザー光11の照射の焦点をスポット(焦点)径が1μmとなるように薄膜2に合わせた。対物レンズを通したレーザー光の瞳径は、12mmであった。なお、カバースリップは、以下の実施例で、金の薄膜をコーティングしたカバースリップとしては14mA−35秒の条件でコーティングしたもの、白金の薄膜をコーティングしたカバースリップとしては30mA−20秒の条件でコーティングしたものを用いた。
(パルスレーザー光照射)
ガラスボトムディッシュ9中の培養液に外来物質として蛍光色素17(PI(propidium iodide:同仁化学社製)を0.1mg/mlとなるように加えて、細胞膜3に蛍光色素17を含有する液体を接触させ、細胞7に近接している領域の薄膜2の一部に対して図3に示す方法でパルスレーザー光11(532nm, 15mW, 1nsec pulse, 4.8 KHz)を照射した。また、パルスレーザー光を照射した細胞数は100であった。照射の際には透過率可変のNDフィルターを用いて出力を1.5mWに減光させ、1回の照射時間は1/125秒とした。コントロールとして、薄膜をコーティングしていないカバースリップ1を貼付けたプラスチックディッシュ9を用い、上記と同様にキイロタマホコリカビのカバースリップ1上への静置から、細胞7に近接している領域の一部に対するパルスレーザー光11の照射までの工程を行った。細胞7の観察やパルスレーザー光11の照射の観察は、接眼レンズ18を通して肉眼で行なうか、別ポートにカメラ(ORCA-ER 浜松ホトニクス社製)を接続してコンピューターに画像を取得して行なった。
パルスレーザー光を照射した細胞の下面方向からのコンピューター画像による観察結果の代表例を図4(a)、(c)に示す。(a)は金の薄膜をコーティングしたカバースリップを用いた場合、(c)は白金の薄膜をコーティングしたカバースリップを用いた場合である。図4(a)、(c)における写真中の数値は、パルスレーザー光を照射した時間を0.0秒とした時の経過時間(秒)を示す。また、図4(a)の細胞写真から相対蛍光量を求めたグラフを図4(b)に示す。図4(b)において、横軸はレーザー光を照射した時間を0.0秒とした時の経過時間(秒)を示し、縦軸は相対蛍光量を示す。相対蛍光量は、ImageJソフトウエア(アメリカ国立衛生研究所:NIH)を用いて定量した。
(結果)
図4に示すように、レーザー光を照射した後に細胞内の蛍光量が増加していた。また、レーザー光を照射した100細胞中、99細胞において細胞内での蛍光が観察された。さらに、レーザー光照射の前後の細胞の動きを顕微鏡で観察した結果、レーザー光照射後の細胞の形態変化はレーザー光照射前の正常な細胞の形態変化と差はみられなかった。また、導入した蛍光色素はそのまま維持され数時間後でも細胞から出ることはなかった。なお、図に示していないが、薄膜をコーティングしていない上記コントロールのカバースリップを用いた場合は細胞膜に細孔が全く形成されず、細胞内での蛍光量に変化はなかった。
したがって、本発明の細胞内への外来物質の導入方法により、細胞膜に細孔が形成され、非常に高い効率で蛍光色素が細胞内に導入していることが明らかとなった。さらに、本発明の細胞内への外来物質の導入方法においては、細胞への損傷による影響が少ないことが明らかとなった。
このほか、本発明の細胞内への外来物質の導入方法では、細胞が薄膜上に静置されており、薄膜に近接する細胞膜は大きな形態の変化がなく薄膜上に位置するため、細胞の一定の場所を狙ってパルスレーザー光照射を行うことが容易であった。
[細胞(Cos−1)内への蛍光色素の導入]
細胞性粘菌の代わりにアフリカミドリザル由来のCos−1細胞を用い、外来物質としての蛍光色素としてPIの代わりにFM4‐64を10μMとなるように加えた以外は実施例1と同様の方法で細胞内に蛍光色素を導入した。カバースリップは金の薄膜がコーティングされたカバースリップを用いた。結果を図5に示す。図5の写真中の数値は、パルスレーザー光を照射した時間を0.0秒とした時の経過時間(秒)を示し、矢印はレーザーをスポットした位置を示す。
図5に示すように、Cos−1細胞を用いても細胞内に蛍光色素FM4‐64が取り込まれていることが確認された。したがって、本発明の細胞内への外来物質の導入方法は、哺乳動物細胞でも利用可能であることが明らかとなった。
[細胞内へのプラスミドの導入]
(パルスレーザー光照射)
実施例1に記載の方法と同様で、倒立顕微鏡(IX70I オリンパス社製)のステージにキイロタマホコリカビの細胞を静置し、次いで培養したガラスボトムディッシュを設置し、対物レンズ(ApoN 60×:オリンパス社製)の焦点をスポット(焦点)径が0.5μmとなるようにカバースリップの表面に合わせ、パルスレーザー光照射の焦点を金の薄膜に合わせた。次に、ガラスボトムディッシュ中の培養液に外来物質として本発明者らがpBIG expression vector(Ruppel et al., Journal of Biological Chemistry, 269:18773-187780, 1994)をバックボーンとして作製したGFP-lifeactプラスミド(Yumura, S. Scientific Reports, 6:22055(2016))を0.05mg/mlとなるように加えて細胞膜にGFP-lifeactプラスミドを含有する液体を接触させ、その後、細胞に近接している領域の金の薄膜の一部に対して図3に示す方法でパルスレーザー光(532nm, 15mW, 1nsec pulse, 4.8 KHz)を照射した。対物レンズを通したレーザー光の瞳径は、12mmであった。また、パルスレーザー光を照射した細胞数は12であった。照射の際には透過率可変のNDフィルターを用いて出力を1.5mWに減光させ、1回の照射時間は1/125秒とした。パルスレーザー光照射によりGFP-lifeactプラスミドを細胞内に導入して1週間後に、GFP-lifeactの発現を蛍光顕微鏡IX71(オリンパス社製)で観察した。GFP-actinプラスミドを導入した12細胞のうち1細胞の1週間後の観察結果を図6に示す。図6中、(a)は位相差顕微鏡写真、(b)は同視野の蛍光顕微鏡写真である。
(結果)
図6に示すように、1つの細胞が10細胞以上まで分裂しており、また、蛍光顕微鏡写真においてすべての細胞で蛍光が観察された。図に示していないが、GFP-lifeactプラスミドを細胞内に導入した他の11細胞も同様の結果であった。したがって、本発明の細胞内への外来物質の導入方法により細胞内に遺伝子が高効率で導入でき、受精卵や分裂増殖がほとんどないため多量の細胞を利用できない細胞種(例えば,神経細胞など)のような1細胞が非常に貴重な細胞に外来物質を導入する場合に特に効果的である。また、1つの細胞が10細胞以上にまで分裂していたことや、図6の矢印で示した細胞のように細胞分裂が観察されたことから、本発明の細胞内への外来物質の導入方法においては正常細胞と同様に細胞分裂能力を有し、細胞への損傷による影響が少ないことが確認された。
[参考例]
1細胞レベルで外来物質を導入するためには、細胞の大きさと比較して非常に狭い範囲にパルスレーザー光を吸収する必要がある。そこで、上面に金薄膜がコーティングされたカバースリップの下面から薄膜に対してパルスレーザー光を照射した場合の吸収レベルを調べた。
(パルスレーザー光の吸収レベルの確認)
実施例1に記載の方法と同様でガラスボトムディッシュを作製し、キイロタマホコリカビをカバースリップの金の薄膜上に静置した後、倒立顕微鏡(IX70I オリンパス社製)のステージにガラスボトムディッシュを設置した。次に、対物レンズ(ApoN 60×:オリンパス社製)の焦点をカバースリップの表面に合わせ、パルスレーザー光照射の焦点を金の薄膜に合わせた後、倒立顕微鏡に設置したガラスボトムディッシュをスライドしてパルスレーザー光照射の焦点付近に細胞を近づけた。その後、透過率可変のNDフィルターを用いずに図3に示す方法でパルスレーザー光(532nm, 15mW, 1nsec pulse, 4.8 KHz)を1/125秒間照射した。レーザー光照射後の倒立顕微鏡によるカバースリップの観察結果を図7に示す。図7中、矢印はパルスレーザー光を吸収させた位置を表す。
(結果)
図7において、矢印で示すパルスレーザー光を吸収させた位置(スポット(焦点)径0.5μm)のみに金の薄膜が剥がれ、近接する細胞には何ら損傷はみられなかった。したがって、上面に金の薄膜がコーティングされたカバースリップの薄膜に対してパルスレーザー光を照射した場合には、非常に狭い範囲にパルスレーザー光が吸収しており、吸収レベルが高いことが明らかとなった。
上記結果から、本発明を用いると、隣り合う2つの細胞に異なる外来物質を導入して、それらの細胞間の反応を調べることや、プライマリーカルチャーのように2種類以上の細胞が混じり合う中で、特定の種類の細胞だけに目的の外来物質を導入することも可能となる。
また、レーザー光の照射時間や照射回数を変えることにより、外来物質の導入量を調整することや、複数の外来物質を同一の細胞内に段階的に導入し、各段階での外来物質導入による影響を観察することが可能となる。
さらに、従来の細胞内へ外来物質を導入する方法では、外来物質を導入した細胞の増殖を前提とし、外来物質を導入した細胞が増殖した後に細胞を観察して外来物質導入による影響を調べていたが、本発明の細胞内への外来物質の導入方法によれば、シングル細胞への外来物質の導入が可能であることにより、増殖が非常に遅い、あるいは神経細胞のような増殖しないシングル細胞に外来物質を導入し、かかるシングル細胞をそのまま観察して外来物質導入による影響を調べることが可能となる。
このほか、細胞として植物細胞を用いれば、本発明の細胞内への外来物質の導入方法で作製したシングル細胞からカルスを形成させて、外来物質により改変した植物体を作製することも可能となる。
加えて、金や白金の薄膜がコーティングされたカバースリップの作製は、スパッタリング装置により1分以内という短時間で作製可能であると共に、スパッタリング装置の清掃が容易である。そのため、カーボンの薄膜がコーティングされたカバースリップの作製と比べて製造工程が簡易であり、かつ低コストというメリットも有している。
本発明の細胞内への外来物質の導入方法によれば、細胞に損傷を与えることなく外来物質を高効率、且つ、容易にシングル細胞内へ導入することが可能となることから、バイオイメージング、再生医療、有用植物作製等の分野において有用である。
1 カバースリップ
2 薄膜
3 細胞膜
4 細胞膜が近接している領域
5 細孔
6 外来物質
7 細胞
8 プラスチックディッシュ
9 ガラスボトムディッシュ
10 レーザー
11 パルスレーザー光
12 透過率可変のNDフィルター
13 レンズ
14 シャッター
15 ダイクロミックミラー
16 対物レンズ
17 蛍光色素
18 接眼レンズ

Claims (7)

  1. 細胞内への外来物質の導入方法であって、上面に厚さが5nm〜200nmであって金、白金、銀及びアルミニウムから選択されるいずれかの金属の薄膜がコーティングされたカバースリップの前記薄膜上に細胞を静置し、導入する外来物質を含有する液体を前記細胞に接触させ、前記カバースリップの下面から前記細胞に近接した薄膜に対して、予めレーザー光照射の焦点を薄膜に合わせたうえで出力が0.1mW〜20mWのレーザー光を照射して前記薄膜にレーザー光を吸収させることにより前記細胞膜に細孔を形成し、前記細孔から前記外来物質を前記細胞内へ導入することを特徴とする細胞内への外来物質の導入方法。
  2. 細胞が接着性細胞であることを特徴とする請求項1記載の細胞内への外来物質の導入方法。
  3. 薄膜に対して対物レンズを通してレーザー光を照射することを特徴とする請求項1又は2記載の細胞内への外来物質の導入方法。
  4. レーザー光のスポット径が0.2μm〜2μmであり、瞳径が3mm〜15mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法。
  5. 上面に金又は白金の薄膜がコーティングされたカバースリップを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法。
  6. 薄膜をスパッタ法により形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法。
  7. 外来物質がDNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸、糖類、脂質、薬剤、蛍光色素のいずれか1以上の物質であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の細胞内への外来物質の導入方法。
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