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JP6989005B2 - 飛行時間型質量分析装置 - Google Patents
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JP6989005B2 - 飛行時間型質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は飛行時間型質量分析装置に関する。
飛行時間型質量分析装置(以下、TOFMSと称すことがある)では、分析対象のイオンに一定の運動エネルギを付与し、フライトチューブ内に形成される飛行空間に導入して該飛行空間中を飛行させる。そして、各イオンが一定の距離を飛行するのに要する時間を測定し、その飛行時間に基づいて各イオンの質量電荷比(m/z)を算出する。そのため、フライトチューブが温度変化により膨張または収縮するとイオンの飛行距離が変化し、飛行時間も変動して質量電荷比の測定値に誤差をもたらす。
フライトのチューブの温度変動による膨張、収縮に起因する測定誤差を回避して高い測定精度を達成するために、フライトチューブを恒温槽内に設置するなどの提案がなされている(特許文献1参照)。
日本国特開2012−64437号公報
飛行時間型質量分析装置には、加熱ガスを使用したエレクトロスプレーイオン化源(ESI)等のイオン源が使用される。また、該イオン源で生成されたイオンを真空内に導入するための真空隔壁であるキャピラリやオリフィスも、脱溶媒の促進を目的として加熱されていることが多い。この場合、イオン源や真空隔壁のキャピラリやオリフィスは熱源となる。このような熱源で生じた熱は、該熱源からフライトチューブまでのイオン経路を構成する構造物を伝導して、フライトチューブ伝わる。イオン源や加熱キャピラリの発熱状態は、測定条件に応じて設定される温度条件等の動作条件により変動する。このため、フライトチューブを恒温槽内に設置しただけでは、イオン源や加熱キャピラリの温度変化に伴うフライトチューブの温度変化を完全には防止できず、フライトチューブの膨張および収縮を完全には防止できないという課題があった。
また、装置周囲温度が変化すると、その温度変化は、装置筐体を介したフライトチューブまでの伝熱経路を伝搬してフライトチューブの温度変化を引き起こす。この温度変化は、フライトチューブを真空チャンバに支持する支持部材等を通じてフライトチューブに伝導するため、仮にフライトチューブを恒温槽内に配置したとしても、装置周囲温度変化に伴うフライトチューブの温度変化を完全には防止できず、フライトチューブの膨張および収縮を完全には防止できないという課題があった。
また、飛行時間型質量分析装置には、装置筐体内に熱源となり得る種々の電源が配置されており、一部電源は真空チャンバに直接接続されていることも多い。電源由来の熱は該電源からフライトチューブまでの経路を構成する構造物を伝搬して、フライトチューブに伝わる。電源の発熱量は、分析条件などの動作条件により変動する。このため、フライトチューブを恒温槽内に設置しただけでは、電源の発熱量変化に伴うフライトチューブの温度変化を完全には防止できず、フライトチューブの膨張および収縮を完全には防止できないという課題があった。
本発明の第1の態様によると、飛行時間型質量分析装置は、イオン導入部と、前記イオン導入部に接続されている真空チャンバと、前記真空チャンバの内部に設けられた支持部材と、外面の一部が前記支持部材に支持され、前記真空チャンバの内部に設けられているフライトチューブと、前記真空チャンバの前記支持部材との接続部の近傍に設けられている温度センサと、前記接続部の近傍に設けられている温調部と、前記温度センサの計測結果に基づいて前記温調部を制御する温度制御部と、を備える。
本発明の第2の態様によると、第1の態様の飛行時間型質量分析装置において、前記支持部材を複数有し、前記温度センサおよび前記温調部は、前記真空チャンバの複数の前記支持部材との複数の前記接続部のうちの複数個所の近傍に設けられていることが好ましい。
本発明の第3の態様によると、第2の態様の飛行時間型質量分析装置において、複数の前記支持部材は、前記フライトチューブの長手方向に直交する平面上または前記平面の近傍に配置されていることが好ましい。
本発明の第4の態様によると、第3の態様の飛行時間型質量分析装置において、前記真空チャンバの外面であって、前記温度センサから少なくとも前記フライトチューブの長手方向に離れた位置に、第2の温度センサおよび第2の温調部を有し、前記温度制御部は、前記第2の温度センサの計測結果に基づいて前記第2の温調部を制御することが好ましい。
本発明の第5の態様によると、第4の態様の飛行時間型質量分析装置において、前記真空チャンバの外面であって、前記第2の温度センサから少なくとも前記フライトチューブの前記長手方向に離れた位置に、第3の温度センサおよび第3の温調部を有し、前記温度制御部は、前記第3の温度センサの計測結果に基づいて前記第3の温調部を制御することが好ましい。
本発明の第6の態様によると、第1から第5までのいずれかの態様の飛行時間型質量分析装置において、前記真空チャンバの内壁面であって前記フライトチューブに対面する内壁面に、輻射率向上処理が施されていることが好ましい。
本発明の第7の態様によると、第6の態様の飛行時間型質量分析装置において、前記イオン導入部は装置筐体との接触部を有するとともに、前記イオン導入部は前記接触部の少なくとも一部において、高熱伝導部材を介して装置筐体と熱接触していることが好ましい。
本発明の第8の態様によると、第1から第5までのいずれかの態様の飛行時間型質量分析装置において、前記イオン導入部は装置筐体との接触部を有するとともに、前記イオン導入部は前記接触部の少なくとも一部において、高熱伝導部材を介して装置筐体と熱接触していることが好ましい。
本発明の第9の態様によると、第8の態様の飛行時間型質量分析装置において、前記接触部は、前記フライトチューブからの距離が相互に異なる複数個所であり、前記高熱伝導部材は、複数の前記接触部のうちの前記フライトチューブからの距離が遠い接触部に設けられていることが好ましい。
本発明の第10の態様によると、第1から第5までのいずれかの態様の飛行時間型質量分析装置において、前記真空チャンバは、装置筐体と接触する第2の接触部を有するとともに,前記真空チャンバは前記第2の接触部の少なくとも一部において、低熱伝導部材を介して装置筐体と熱接触していることが好ましい。
本発明の第11の態様によると、第6の態様の飛行時間型質量分析装置において、前記真空チャンバは、装置筐体と接触する第2の接触部を有するとともに,前記真空チャンバは前記第2の接触部の少なくとも一部において、低熱伝導部材を介して装置筐体と熱接触していることが好ましい。
本発明の第12の態様によると、第7の態様の飛行時間型質量分析装置において、前記真空チャンバは、装置筐体と接触する第2の接触部を有するとともに,前記真空チャンバは前記第2の接触部の少なくとも一部において、低熱伝導部材を介して装置筐体と熱接触していることが好ましい。
本発明の第13の態様によると、第8の態様の飛行時間型質量分析装置において、前記真空チャンバは、装置筐体と接触する第2の接触部を有するとともに,前記真空チャンバは前記第2の接触部の少なくとも一部において、低熱伝導部材を介して装置筐体と熱接触していることが好ましい。
本発明によれば、フライトチューブの温度変化および温度変化による膨張および収縮を防止し、測定精度の高い飛行時間型質量分析装置を実現できる。
図1は、一実施形態の飛行時間型質量分析装置の構成を示す概略図である。 図2は、一実施形態の飛行時間型質量分析装置においてフライトチューブを支持する支持部材の近傍を示す概略図である。 図3は、第2の温調部の変形例を示す概略図である。
(飛行時間型質量分析装置の一実施形態)
図1は、本実施形態の飛行時間型質量分析装置100の構成を示す概念図である。飛行時間型質量分析装置100は、イオン導入部1と、イオン導入部1に接続されている真空チャンバと15と、真空チャンバ15の内部に設けられているフライトチューブ21とを備える。
イオン導入部1内のイオン化室2には、イオン源としてのエレクトロスプレイイオン化(ESI)を行うためのESIスプレー3が設けられ、分析対象成分を含む試料液がESIスプレー3に供給されると、ESIスプレー3から試料液が静電噴霧されることで該試料液中の試料由来のイオンが生成される。なお、イオン化法はこれに限るものではない。ただし、いずれのイオン化法を採用しても、イオン源は熱源であり、かつ動作状態によってその温度は変動する。
生成された各種イオンは加熱キャピラリ4を通過し、イオンガイド5により収束されてスキマー6を通じて、オクタポール型のイオンガイド7に至る。イオンガイド7により収束されたイオンは四重極マスフィルタ8に導入され、四重極マスフィルタ8に印加されている電圧に応じた特定の質量電荷比を有するイオンのみが四重極マスフィルタ8を通り抜ける。このイオンはプリカーサイオンとしてコリジョンセル10に導入され、コリジョンセル10内に外部から供給されるCIDガスとの衝突によってプリカーサイオンは解離し、各種のプロダクトイオンが生成される。
コリジョンセル10内の多重極型のイオンガイド11は、入口レンズ電極9a及び出口レンズ電極9bと共に一種のリニアイオントラップとして機能し、生成されたプロダクトイオンは一時的に蓄積される。そして、蓄積されたイオンは所定のタイミングでコリジョンセル10から排出され、イオン輸送光学系12により案内され、イオン導入部1と接続されている真空チャンバ15内に導入される。
不図示であるが、イオン導入部1および真空チャンバ15には、真空ポンプが接続されており、それらの内部は減圧状態に保たれている。
真空チャンバ15の内部には、絶縁性で且つ振動吸収性能の高い支持部材22a,22b(22a,22bを併せて、支持部材22と呼ぶ)が設けられている。そして、略角筒形状または略円筒形状のフライトチューブ21は、その外側面の少なくとも一部が支持部材22に支持され、支持部材22を介して真空チャンバ15に支持されている。
また、図示しない支持部材を介して、このフライトチューブ21に対し直交加速部16及びイオン検出器20がそれぞれ固定されている。フライトチューブ21の内部の下側には、多数の円環状又は矩形環状の反射電極から成るリフレクタ19が配置されている。これにより、フライトチューブ21の内部には、このリフレクタにより形成される反射電場でイオンが折り返されるリフレクトロン型の飛行空間FAが設けられている。
フライトチューブ21はステンレス等の金属製であり、所定の直流電圧がフライトチューブ21に印加される。また、リフレクタを構成する複数の反射電極には、フライトチューブ21に印加される電圧を基準としてそれぞれ異なる直流電圧が印加される。これによりリフレクタ中には反射電場が形成され、それ以外の飛行空間FAは無電場および無磁場で且つ高真空となる。
+X方向に進行して直交加速部16に導入されたイオンは、所定のタイミングで押出電極17および引出電極18間に所定の電場が形成されることにより−Z方向に加速されることで飛行を開始する。直交加速部16から射出されたイオンは、破線の飛行経路FPに示すとおり、まず飛行空間FA中を自由飛行した後、リフレクタ19により形成される反射電場で+Z方向に折り返され、飛行空間FA中を再び自由飛行してイオン検出器20に到達する。飛行空間中のイオンの速度は該イオンの質量電荷比に依存する。そのため、略同時に飛行空間FAに導入された異なる質量電荷比を有するイオンは、飛行する間に質量電荷比に応じて分離され、時間差を有してイオン検出器20に到達する。イオン検出器20による検出信号は図示しない信号処理部に入力され、各イオンの飛行時間が質量電荷比に換算されることでマススペクトルが作成され、質量分析がなされる。
フライトチューブ21が熱によって膨張すると、飛行距離が変化するために質量電荷比の測定値の誤差の原因となる。そこで、本実施例のTOFMSでは、フライトチューブ21は支持部材22を介して真空チャンバ15の内部に設けられ、真空チャンバ15の支持部材22との接続部の近傍には、温調部H1a、H1bが設けられている。
より具体的には、図1に示したとおり、真空チャンバ15の内部にはフライトチューブ21を支持する支持部材22a,22bが設けられており、支持部材22はフライトチューブ21の直交加速部16およびイオン検出器20に近い側を、部分的に保持している。
真空チャンバ15のうち、支持部材22が接続されている接続部の近傍には、温度センサT1a、T1bが設けられている。接続部の近傍の真空チャンバ15および支持部材22a、22bの温度は、温度センサT1a、T1bにより計測され、温度計測結果は温度計測信号S1aおよび温度計測信号S1bとして温度制御部30に送られる。
真空チャンバ15のうち、支持部材22が接続されている接続部の近傍には、電気ヒータ等の温調部H1a、H1bが設けられており、温度制御部30からの温度制御信号C1a、C1bに基づいて、支持部材22が接続されている接続部の温度を、例えば35℃以上、50℃以下の所定の温度に制御する。
図2は、支持部材22が設けられた部分における、真空チャンバ15、フライトチューブ21および支持部材22の、図1中のXY面内での断面図を表す。
XY面内において四角形状の断面形状を持つ真空チャンバ15の内面の四隅の4箇所に、それぞれ支持部材22a〜22dが設けられ、支持部材22a〜22dにより、XY面内において四角形状の断面形状を持つフライトチューブ21が支持されている。換言すれば、複数の支持部材22a,22bは、フライトチューブ21の長手方向(図1中のZ方向)に直交する平面(図1中のXY平面)の上、またはこの平面の近傍に配置されている。このように、複数の支持部材22a,22bをフライトチューブ21の長手方向について概ね同一の位置に配置することにより、フライトチューブ21を、変形を防止しつつ保持することができる。
真空チャンバ15の外側の面であって、支持部材22a〜22dと真空チャンバ15が接続する接続部の近傍には、それぞれ温度センサT1a〜T1d、および温調部H1a〜H1dが設けられている。図1では省略されている温度センサT1c、T1dによる温度計測結果も温度制御部30に送られ、温度制御部30は温調部H1c、H1dに対して、温度制御信号を送る。
以下、温度センサT1a〜T1dを合わせて、またはその中のいずれか1つを、温度センサT1と呼ぶことがある。また、温調部H1a〜H1dを合わせて、またはその中のいずれか1つを、温調部H1と呼ぶことがある。
支持部材22a〜22dの取り付け位置は、図2に示したように真空チャンバ15のXY断面の四隅に限られるものではなく、他の4箇所あるいは、6箇所、5箇所等の任意の位置に、任意の数が設けられていてもよい。
あるいは、支持部材22は、フライトチューブ21を取り囲む連続した部材であってもよい。この場合であっても、温度センサT1および温調部H1は、連続した支持部材22と真空チャンバ15との接続部の近傍に、上記と同様に複数個配置することもできる。あるいは、温度センサT1および温調部H1をそれぞれ1つのみ配置することもできる。
温度センサT1および温調部H1を複数配置することにより、真空チャンバ15およびフライトチューブ21の図1中のXY平面内の温度分布を一層均一にできる。例えば、真空チャンバ15、フライトチューブ21および支持部材22のうち、イオン導入部1に近い側は、イオン導入部1からの熱の変動を受け易く、従って温度変動が生じ易い。しかし、温度センサT1および温調部H1を複数配置することにより、イオン導入部1に近い、または遠いことにより生じる温度の不均一性も、これを測定して補正することができる。
この場合、温度制御部30は、温度センサT1a〜T1dの計測結果により、温調部H1a〜H1dをそれぞれ独立して制御することが好ましい。
あるいは、温調部H1a〜H1dの制御は、それぞれに最も近い温度センサT1a〜T1dの計測結果に最大の重みを掛けつつ、他の温度センサT1a〜T1dの計測結果についてもある程度の重みを掛けて制御するものであっても良い。
なお、複数の温度センサT1a〜T1dの計測結果の平均値や中央値等の代表値を用いて、複数の温調部H1a〜H1dの制御を行うこともできる。
図2の例の様に支持部材22が複数に分離している場合には、温度センサT1および温調部H1は、それぞれが真空チャンバ15と接合する複数の接続部のすべてに設けられていることが好ましい。
ただし、比較的近接して配置される2つの接続部においては、それぞれの計測対象および温度制御対象である2つの支持部材22が相互に近いことから、配置されるべき温度センサT1および温調部H1の各2個のうちの少なくとも1個を省略することもできる。従って、温度センサT1および温調部H1の数は、それぞれ、支持部材22の数よりも少なくても良い。
温度センサT1および温調部H1の設置位置は、それぞれの支持部材22と真空チャンバ15との接続部からの間隔(両者の最近接距離)として100mm以内であることが望ましい。
温度センサT1の設置位置が上記の接続部から100mmよりも離れると、接続部および支持部材22の温度を正確に測ることが難しくなり、フライトチューブ21に温度変化が生じてしまう恐れがある。
また、温調部H1の設置位置が上記の接続部から100mmよりも離れると、接続部および支持部材22の温度を正確に制御することが難しくなり、フライトチューブ21に温度変化が生じてしまう恐れがある。
なお、より高精度にフライトチューブ21の温度を制御するには、温度センサT1および温調部H1の設置位置は、真空チャンバ15の支持部材22との接続部から60mm以内であることが、さらに好ましい。
フライトチューブ21のほぼ全体には、数kVの高電圧が印加されるので、支持部材22は、例えば、絶縁性に優れかつ機械的な安定性の高いPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂で製造することが好ましい。
また、フライトチューブ21は剛性の高いステンレスで製造され、真空チャンバ15はステンレスまたは軽量なアルミニウム等の金属で製造されることが好ましい。
温度センサT1a、T1bとしては、一例として、サーミスタや、白金合金等の抵抗温度センサを使用する。また、温調部H1a、H1bとしては、上述の電気ヒータ以外に、ペルチェ素子等の加熱および冷却が可能な部材を使用することもできる。
イオン導入部1および真空チャンバ(TOF部)15には、それぞれ真空内電極に電圧印加するための電源部40a、40bが接続されている。なお、電源部40a、40bを、まとめて電源部40とも呼ぶ。電源部40は、直流電圧を印加するDC電源や、交流電圧を印加するRF電源や、押出電極17および引出電極18にパルス電圧を印加するためのスイッチング基板であるパルサー基板や、検出器20からの電気信号をデジタル化するためのデジタイザ基板などを含む。これらは熱源であり、動作条件によって発熱量が変化し、イオン導入部1やTOFチャンバ15の温度が変動する。
本実施例のTOFMSでは、上述の構成により支持部材22の温度が一定温度に保たれるので、イオン導入部1の温度や真空チャンバ15の温度や装置周囲温度が変動しても、それによりフライトチューブ21の温度が変動することを防止できる。これにより、フライトチューブ21の伸縮を防止でき、測定精度の高い飛行時間型質量分析装置を実現できる。
熱源であるイオン導入部1や加熱キャピラリ4からフライトチューブ21への熱の流入をさらに抑えるために、図1に示したように、イオン導入部1の少なくとも一部を、接触部13a、13bにおいて装置筐体14と接触させ、接触部13a、13bを高熱伝導部材で形成することもできる。すなわち、接触部13a、13bをアルミニウム等の金属の様に熱伝導率が高い部材で形成することにより、イオン化室2側内のイオン源(ESIスプレー)3の熱を装置筐体14に放熱することができ、フライトチューブ21への熱の流入をさらに抑えることができる。
さらに、図1に示したように、イオン導入部1や加熱キャピラリ4が、フライトチューブ21からの距離が相互に異なる複数個所の接触部13a、13bで装置筐体14と接触している場合には、前記フライトチューブからの距離が遠い側、すなわちイオン化室2に近い側の接触部13aに、高熱伝導部材を設けることが好ましい。この場合には、フライトチューブ21に近い側、すなわちイオン化室2から遠い側の接触部13bは、高熱伝導部材ではなく、熱伝導率の低い部材(例えば、PEEK樹脂)で形成することが好ましい。
一般に、イオン導入部1および真空チャンバ15は複数の接続部13により装置筐体14に接続することで装置全体の機械的強度を向上させるように構成される。本実施例のTOFMSのように、その複数の接続部13の中で、フライトチューブ21が内包された真空チャンバ15に対して熱源に近い位置にある接続部を相対的に熱伝導率が高い高熱伝導部材とし、該真空チャンバ15に対して熱源に遠い位置(すなわち真空チャンバ15に近い位置)にある接続部を相対的に熱伝導率が低い熱伝導部材とすることで、所望の機械的強度を担保しつつ、フライトチューブの温度安定性を向上させることができる。
装置筐体14は、イオン導入部1や真空チャンバ15の少なくとも一部を支持する筐体であり、機械的強度やEMC(Electro Magnetic Compatibility)や熱伝導の点から金属製であることが好ましい。ところで、接触部13a、13bを高熱伝導部材で形成しない場合、すなわち、イオン導入部1の熱を装置筐体14に積極的に放熱しない場合であっても、真空チャンバ15の温度は、装置周囲の温度の変動により変動する。そこで、装置筐体14の真空チャンバ15との接触部13cは、熱伝導度が上述の高熱伝導部材よりも低い部材(例えば、PEEK樹脂)で形成されていることが好ましい。これにより、真空チャンバ15と筐体14との熱抵抗が大きくなり、装置周囲の温度の変動やイオン導入部1からの熱により真空チャンバ15の温度が変動してもその影響が真空チャンバ15に伝搬しづらくなり、フライトチューブの温度変動を抑制できる。
フライトチューブ21をより高精度に温調するために、真空チャンバ15の外側面には、上述の温度センサT1および温調部H1以外に、さらに温度センサおよび温調部を設けることもできる。
一例として、図1に示したように、フライトチューブ21のZ方向の中程の位置に対応する真空チャンバ15の外側面に、第2の温度センサT2a、T2bおよび第2の温調部H2a、H2bを設けることができる。同様に、フライトチューブ21のZ方向の下端近傍位置に対応する真空チャンバ15の外側面に、第3の温度センサT3a、T3bおよび第3の温調部H3a、H3bを設けることができる。
第2の温度センサT2a、T2bは、それぞれ第2の温調部H2a、H2bの近傍に設けることが好ましい。同じく、第3の温度センサT3a、T3bは、それぞれ第3の温調部H3a、H3bの近傍に設けることが好ましい。
以下、温度センサT2a、T2bを合わせて、またはその一方を温度センサT2と呼ぶことがある。また、温調部H2a、H2bを合わせて、またはその一方を温調部H2と呼ぶことがある。
同様に、温度センサT3a、T3bを合わせて、またはその一方を温度センサT3と呼ぶことがある。また、温調部H3a、H3bを合わせて、またはその一方を温調部H3と呼ぶことがある。
なお、これらの例では、第2の温度センサT2a、T2b、第2の温調部H2a、H2b、第3の温度センサT3a、T3b、および第3の温調部H3a、H3bは、上述の温度センサT1から少なくともフライトチューブ21の長手方向に離れた位置に、設けられている。
第2の温度センサT2a、T2bおよび第3の温度センサT3a、T3bが測定した温度は、温度計測信号S2a、S2b、S3a、S3bとして温度制御部30に送られる。温度制御部30は、温度制御信号C2a、C2b、C3a、C3bを、第2の温調部H2a、H2bおよび第3の温調部H3a、H3bに送り、各温度センサが設置された真空チャンバ15の各部が、例えば上述の35℃以上、50℃以下の所定の温度となるように制御する。
第2の温度センサT2、第2の温調部H2、第3の温度センサT3、第3の温調部H3の個数も、図1に示した2個に限らず、4個、6個、あるいは1個等の任意の個数であっても良い。また、各温度センサと各温調部は、1対1に対応していなくても良い。
また、第2の温調部H2、あるいは第3の温調部H3の少なくとも一方は、図3に示すように、真空チャンバ15の外周を取り巻く連続的な温調部H20とすることもできる。
温度制御部30は、温度センサT1、第2の温度センサT2、および第3の温度センサT3の計測結果に基づいて、温調部H1、第2の温調部H2、および第3の温調部H3を、各温調部の設置された真空チャンバ15の各部が、それぞれ所定の温度となるように制御する。
真空チャンバ15内は高真空に維持されているため、真空チャンバ15からフライトチューブ21への熱の伝達は、主に、支持部材22による熱伝導か、真空チャンバ15からフライトチューブ21への輻射伝熱に限られる。従って、真空チャンバ15を温度制御した結果としてフライトチューブ21を高精度に温度制御するためには、真空チャンバ15からフライトチューブ21への輻射伝熱の効率を向上させることが好ましい。
この輻射伝熱の効率が高くなるように、真空チャンバ15の内壁面には輻射率が高まるような表面処理加工を施すことができる。具体的には、真空チャンバ15の材料としてはアルミニウムが用いられ、そのアルミニウム製の真空チャンバ15の内壁面の少なくともフライトチューブ21に対面する範囲に、黒ニッケルメッキ加工処理による被膜層15sを形成することができる。
よく知られているように黒ニッケルメッキは反射防止や装飾を目的としてごく一般に利用されているメッキの一つであり、比較的、加工コストが安価である。黒ニッケルメッキによる被膜層15sを形成すると、表面が黒色になり輻射率が向上する。本発明者の実験によれば、アルミニウム製の真空チャンバ15の内壁面に黒ニッケルメッキによる被膜層15sを形成することで、輻射率を10倍程度高められることが確認されている。これにより、真空チャンバ15とフライトチューブ21との間の輻射伝熱の経路における熱抵抗を従来(黒ニッケルメッキによる被膜層15sを形成しない場合)に比べて大幅に低下させ、フライトチューブ21の温度安定性を向上させることができる。
なお、真空チャンバ15の内壁面の処理は、通常のニッケルメッキでもよく、アルマイト加工処理による被膜層を形成してもよい。或いは、カーボン被膜形成処理やセラミック溶射処理、さらにはそれ以外のメッキ加工処理、塗装又は塗布加工処理、溶射処理などによって表面に輻射率の改善が可能な被膜層を形成してもよい。
また、真空チャンバ15の材料とは異なる材料から成る被膜層を形成するのではなく、真空チャンバ15そのものの表面を化学的に又は物理的に削ることで凹凸を形成するようにしてもよい。
あるいは、真空チャンバ15の内壁面に、その真空チャンバ15の材料に比べて輻射率が高い別の材料の薄板又は薄箔を貼り付けてもよい。具体的には、上述したようなアルミニウム製である真空チャンバ15の内壁面にステンレス製の薄板を貼り付ければよい。これによっても、真空チャンバ15の内壁面の輻射率が高くなるため、上記実施例と同様の効果を達成することができる。
上述の一実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)一実施形態の飛行時間型質量分析装置は、イオン導入部1と、イオン導入部1に接続されている真空チャンバ15と、真空チャンバ15の内部に設けられた支持部材22と、外面の一部が支持部材22に支持され、真空チャンバ15の内部に設けられているフライトチューブ21と、真空チャンバ15の支持部材22との接続部の近傍に設けられている温度センサT1と、接続部の近傍に設けられている温調部H1と、温度センサT1の計測結果に基づいて温調部H1を制御する温度制御部30と、を備えている。
この構成により、イオン導入部1の温度や真空チャンバ15の温度や装置周囲温度や電源部40の発熱量が変動しても、フライトチューブ21の温度の変動を防止することができ、これにより、フライトチューブ21の温度変化による膨張および収縮を防止し、測定精度の高い飛行時間型質量分析装置を実現できる。
(2)上述の一実施の形態において、さらに、支持部材22を複数有し、温度センサT1および温調部H1を、真空チャンバ15の複数の支持部材22との複数の接続部のうちの複数個所の近傍に設ける構成とすることにより、フライトチューブ21の温度変動を一層防止し、さらに測定精度の高い飛行時間型質量分析装置を実現できる。
(3)(2)において、さらに複数の支持部材22は、フライトチューブ21の長手方向に直交する平面上または前記平面の近傍に配置される構成とすることにより、フライトチューブ21の変動を一層防止し、一層測定精度の高い飛行時間型質量分析装置を実現できる。
(4)(3)において、さらに真空チャンバ15の外面であって、温度センサT1から少なくともフライトチューブ21の長手方向に離れた位置に、第2の温度センサT2および第2の温調部H2を有し、温度制御部30は、第2の温度センサT2の計測結果に基づいて第2の温調部H2を制御する構成とすることにより、フライトチューブ21の温度変動を一層防止し、一層測定精度の高い飛行時間型質量分析装置を実現できる。なお、第2の温度センサT2と第1の温度センサT1の両方の計測結果に基づいて、第1の温調部H1または第2の温調部H2を制御する構成をとっても良い。
(5)(4)において、さらに真空チャンバ15の外面であって、第2の温度センサT2から少なくともフライトチューブ21の長手方向に離れた位置に、第3の温度センサT3および第3の温調部H3を有し、温度制御部30は、第3の温度T3センサの計測結果に基づいて第3の温調部H3を制御する構成とすることで、フライトチューブ21の温度変動を一層防止し、一層測定精度の高い飛行時間型質量分析装置を実現できる。なお、第1の温度センサT1、第2の温度センサT2、第3の温度センサT3のうちの複数センサの計測結果に基づいて第1の温調部H1、第2の温調部H2または第3の温調部H3のいずれかを制御する構成をとっても良い。
(6)上述の一実施の形態において、さらに、真空チャンバ15の内壁面であってフライトチューブ21に対面する内壁面に、輻射率向上処理が施されている構成とすることで、フライトチューブ21の温度変動を一層防止し、一層測定精度の高い飛行時間型質量分析装置を実現できる。さらに、フライトチューブの温度安定化時間を短縮し、装置起動時に測定を開始できるまでの時間を短縮し、測定効率が高い飛行時間型質量分析装置を実現できる。
(7)上述の一実施の形態において、さらに、イオン導入部1は装置筐体14との接触部13a,13bを有するとともに、イオン導入部1は接触部13a,13bの少なくとも一部において、高熱伝導部材13a,13bを介して装置筐体14と熱接触している構成とすることで、イオン導入部1からフライトチューブ21に伝導する熱を減らすことができ、フライトチューブ21の温度変動を一層防止できる。
(8)(7)において、さらに、接触部13a,13bは、フライトチューブ21からの距離が相互に異なる複数個所であり、高熱伝導部材13aは、複数の接触部13a,13bのうちのフライトチューブ21からの距離が遠い接触部13aに設けられている構成とすることで、イオン導入部1からフライトチューブ21に伝導する熱を減らすことができ、フライトチューブ21の温度変動を一層防止できる。
(9)上述の(1)から(8)において、さらに、真空チャンバ15は装置筐体14との第2の接触部13cを有すると共に、真空チャンバ15は低熱伝導部材13cを介して装置筐体14と熱接触している構成とすることで、装置筐体14からフライトチューブ21に伝導する熱を減らすことができ、フライトチューブ21の温度変動を一層防止できる。
本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
例えば、上記実施例は直交加速式のリフレクトロン型TOFMSであるが、直交加速式である必要はなく、例えばイオントラップから射出したイオンを飛行空間に投入する構成やMALDlイオン源などにより試料から生成したイオンを加速して飛行空間に投入する構成であってもよい。また、リフレクトロン型でなくリニア型のTOFMSでもよい。
100…飛行時間型質量分析装置、1…イオン導入部、2…イオン化室、3…ESIスプレー、4…加熱キャピラリ、5,7,11…イオンガイド、6…スキマー、8…四重極マスフィルタ、9a…入口レンズ電極、9b…出口レンズ電極、10…コリジョンセル、12…イオン輸送光学系、13a、13b…接触部、13c…第2の接触部、14…筐体、15…真空チャンバ(TOF部)、16…直交加速部、17…押出電極、18…引出電極、FA…飛行空間、FP…飛行経路、19…リフレクタ、20…イオン検出器、21…フライトチューブ、22…支持部材、30…温度制御部、H1a,H1b,H1c,H1d…温調部、H2a,H2b…第2の温調部、H3a,H3b…第3の温調部、T1a,T1b,T1c,T1d…温度センサ、T2a,T2b…第2の温度センサ、T3a,T3b…第3の温度センサ、40…電源部

Claims (13)

  1. イオン導入部と、
    前記イオン導入部に接続されている真空チャンバと、
    前記真空チャンバの内部に設けられた支持部材と、
    外面の一部が前記支持部材に支持され、前記真空チャンバの内部に設けられているフライトチューブと、
    前記真空チャンバの前記支持部材との接続部の近傍に設けられている温度センサと、
    前記接続部の近傍に設けられている温調部と、
    前記温度センサの計測結果に基づいて前記温調部を制御する温度制御部と、を備える飛行時間型質量分析装置。
  2. 請求項1に記載の飛行時間型質量分析装置において、
    前記支持部材を複数有し、
    前記温度センサおよび前記温調部は、前記真空チャンバの複数の前記支持部材との複数の前記接続部のうちの複数個所の近傍に設けられている飛行時間型質量分析装置。
  3. 請求項2に記載の飛行時間型質量分析装置において、
    複数の前記支持部材は、前記フライトチューブの長手方向に直交する平面上または前記平面の近傍に配置されている飛行時間型質量分析装置。
  4. 請求項3に記載の飛行時間型質量分析装置において、
    前記真空チャンバの外面であって、前記温度センサから少なくとも前記フライトチューブの長手方向に離れた位置に、第2の温度センサおよび第2の温調部を有し、
    前記温度制御部は、前記第2の温度センサの計測結果に基づいて前記第2の温調部を制御する、飛行時間型質量分析装置。
  5. 請求項4に記載の飛行時間型質量分析装置において、
    前記真空チャンバの外面であって、前記第2の温度センサから少なくとも前記フライトチューブの前記長手方向に離れた位置に、第3の温度センサおよび第3の温調部を有し、
    前記温度制御部は、前記第3の温度センサの計測結果に基づいて前記第3の温調部を制御する、飛行時間型質量分析装置。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析装置において、
    前記真空チャンバの内壁面であって前記フライトチューブに対面する内壁面に、輻射率向上処理が施されている、飛行時間型質量分析装置。
  7. 請求項6に記載の飛行時間型質量分析装置において、
    前記イオン導入部は装置筐体との接触部を有するとともに、前記イオン導入部は前記接触部の少なくとも一部において、高熱伝導部材を介して装置筐体と熱接触している飛行時間型質量分析装置。
  8. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析装置において、
    前記イオン導入部は装置筐体との接触部を有するとともに、前記イオン導入部は前記接触部の少なくとも一部において、高熱伝導部材を介して装置筐体と熱接触している飛行時間型質量分析装置。
  9. 請求項8に記載の飛行時間型質量分析装置において、
    前記接触部は、前記フライトチューブからの距離が相互に異なる複数個所であり、
    前記高熱伝導部材は、複数の前記接触部のうちの前記フライトチューブからの距離が遠い接触部に設けられている飛行時間型質量分析装置。
  10. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析装置において、
    前記真空チャンバは、装置筐体と接触する第2の接触部を有するとともに,前記真空チャンバは前記第2の接触部の少なくとも一部において、低熱伝導部材を介して装置筐体と熱接触している飛行時間型質量分析装置。
  11. 請求項6に記載の飛行時間型質量分析装置において、
    前記真空チャンバは、装置筐体と接触する第2の接触部を有するとともに,前記真空チャンバは前記第2の接触部の少なくとも一部において、低熱伝導部材を介して装置筐体と熱接触している飛行時間型質量分析装置。
  12. 請求項7に記載の飛行時間型質量分析装置において、
    前記真空チャンバは、装置筐体と接触する第2の接触部を有するとともに,前記真空チャンバは前記第2の接触部の少なくとも一部において、低熱伝導部材を介して装置筐体と熱接触している飛行時間型質量分析装置。
  13. 請求項8に記載の飛行時間型質量分析装置において、
    前記真空チャンバは、装置筐体と接触する第2の接触部を有するとともに,前記真空チャンバは前記第2の接触部の少なくとも一部において、低熱伝導部材を介して装置筐体と熱接触している飛行時間型質量分析装置。
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