JP6989451B2 - ブリ属養殖魚の飼育方法及びブリ属養殖魚 - Google Patents
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Description
一般にブリは、成熟して産卵期を迎えると、その前後において栄養分を卵に取られ、痩せが生じることが知られている。このため、天然ブリの場合2〜4月の産卵期又はその後、養殖ブリの場合には5〜6月の産卵期又はその後に、多くの場合、成長の停滞などが生じたり、脂ののりが悪くなって、商品価値が下がる。このために、ブリ養殖魚における成長の停滞、痩せ等の影響を低減させる技術が種々検討されている。
また、養殖魚としての良好な形質を維持して継続的な養殖を目的とする場合には、生殖器官の成熟は欠かせないため、生殖器官の成熟を完全に抑制された養殖魚では、養殖の持続性が失われる。
<1> 調節飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚を用いて飼育を開始し、ブリ属魚類を成育させること、
生殖器官成熟期に、生殖腺体指数(GSI)が0.5%以上10.0%以下の雄個体、又は、GSIが0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上及び体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚を得ること、
得られた成熟期ブリ属養殖魚から、生殖器官成熟期後に、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が、生殖器官成熟期での数値よりも低い、ブリ属養殖魚を得ること
を含むブリ属養殖魚の飼育方法。
<2> 生殖器官成熟期後のブリ属養殖魚のGSIが、雄個体で2.5%以下であり、雌個体で1.0%以下である前記<1>記載の飼育方法。
<3> ブリ属魚類の仔魚の飼育開始時から、ブリ属魚類の飼育環境下の水温を、15℃〜28℃に調整する前記<1>又は<2>記載の飼育方法。
<4> 前記成育における飼育中に、形態異常及び/又は成長不良の個体の除去を行い、ブリ属魚類の個体を選抜することを含む、前記<1>〜<3>のいずれか1つ記載の飼育方法。
<5> 前記成育における飼育が、少なくとも5ヶ月間の水面下10m〜18mでの海中養殖を含み、15ヶ月以上行われる、前記<1>〜<4>のいずれか1つ記載の飼育方法。
<6> 前記成育における飼育中に、ブリ属魚類の計量管理を行う前記<1>〜<5>のいずれか1つ記載の飼育方法。
<7> 前記成育における飼育中に、飼料100重量部に対して0.1重量部〜0.3重量部のトウガラシを含む飼料を、少なくとも1ヶ月間、ブリ属魚類に給餌することを含む前記<1>〜<6>のいずれか1つ記載の飼育方法。
<8> 生殖器官成熟期において、肥満度18以上及び体重3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が雄の場合で0.5%以上10.0%以下、雌の場合で0.5%以上4.5%以下であり、
生殖器官成熟期後において、肥満度17以上及び体重が3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が、生殖器官成熟期の数値よりも低い、
ブリ属養殖魚。
<9> 生殖器官成熟期後のブリ属養殖魚のGSIが、雄個体で2.5%以下であり、雌個体で1.0%以下である前記<8>記載のブリ属養殖魚。
<10> 生殖器官成熟期の個体であって、肥満度18以上及び体重3.5kg以上であり、生殖腺体指数(GSI)が雄の場合で0.5%以上10.0%以下、雌の場合で0.5%以上4.5%以下であるブリ属養殖魚。
<11> 生殖器官成熟期後の個体であって、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であり、生殖腺体指数(GSI)が雄の場合で0.5%未満、雌の場合で0.5%未満であるブリ属養殖魚。
<12> 生殖器官成熟期の雄個体のブリ属養殖魚が、以下の(1)〜(3)の少なくともひとつを満たす前記<8>又は<10>記載のブリ属養殖魚:
(1) 11−ケトテストステロン(11−KT)の血中濃度が、1800pg/mL〜4500pg/mL、
(2) 17α,20β−ジヒドロキシ−4−プレグネン−3−オン(DHP)の血中濃度が、100pg/mL〜450pg/mL、及び、
(3) エストラジオール(E2)の血中濃度が、130pg/mL〜400pg/mL。
<13> 生殖器官成熟期の雌個体のブリ属養殖魚が、以下の(4)〜(6)の少なくともひとつを満たす前記<8>又は<10>記載のブリ属養殖魚:
(4) 11−ケトテストステロン(11−KT)の血中濃度が、20pg/mL〜175pg/mL、
(5) 17α,20β−ジヒドロキシ−4−プレグネン−3−オン(DHP)の血中濃度が、100pg/mL〜350pg/mL、及び、
(6) エストラジオール(E2)の血中濃度が、300pg/mL〜10000pg/mL。
<14> 尾叉長が50cm以上である前記<8>〜<13>のいずれか1つ記載のブリ属養殖魚。
<15> ブリ、ヒラマサ、カンパチ、又はヒレナガカンパチである前記<8>〜<14>のいずれか1つ記載のブリ属養殖魚。
<16> 前記<1>〜<7>のいずれか1つ記載の飼育方法で得られたブリ属養殖魚。<17> 調節飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚を用いて飼育を開始し、ブリ属魚類を成育させること、
生殖器官成熟期に、生殖腺体指数(GSI)が0.5%以上10.0%以下の雄個体、又は、GSIが0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚を得ること、
を含む成熟期ブリ属養殖魚の飼育方法。
また本開示の他の一態様に係るブリ属養殖魚は、生殖器官成熟期において、肥満度18以上及び体重3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が雄の場合で0.5%以上10.0%以下、雌の場合で0.5%以上4.5%以下であり、生殖器官成熟期後において、肥満度17以上及び体重が3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が、生殖器官成熟期の数値よりも低い、ブリ属養殖魚である。
したがって、本開示のブリ属養殖魚の飼育方法によれば、生殖器官の成熟期後であっても、「成熟期間後に痩せた個体」ではない体重3.5kg以上及び肥満度17以上のブリ属養殖魚を得ることができる。
したがって、生殖器官成熟期において機能的な精子又は卵を提供でき、養殖の持続性に優れ、生殖器官成熟期後で、充分に高い肥満度と体重3.5kg以上の個体であるため、栄養価が高く、可食部の割合も充分に高いので、商品価値が高いという利点も有する。
本開示の他の態様に係る生殖器官成熟期のブリ属養殖魚は、高い肥満度と充分な体重を有すると共に、天然ブリと比較してGSIが低すぎない個体である。この生殖器官成熟期のブリ属養殖魚は、上述した態様に係る生殖器官成熟期後のブリ属養殖魚を、効率よく提供することができる。
本態様に係る生殖期ブリ属養殖魚の飼育方法によれば、上述した有用な生殖器官成熟期のブリ属養殖魚を提供することができる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示すものとする。
本明細書において、パーセントに関して「以下」又は「未満」との用語は、下限値を特に記載しない限り0%、即ち「含有しない」場合を含み、又は、現状の手段では検出不可の値を含む範囲を意味する。
以下、本開示について説明する。
「配合飼料」とは、魚類の成育に必要なタンパク質、ビタミン、ミネラル等の栄養素を満たすように素材を組み合わせた飼料を意味する。「飼育管理」とは、特定の目的を達成するために選択された餌料を用いて飼育されていることを意味する。
本明細書において、「生殖器官成熟期後」とは、生殖器官成熟期の後の時期を意味し、雄個体の場合には放精してから後、雌個体の場合には産卵してから後、あるいは、放精又は産卵しない場合には、生殖器官重量が上記生殖器官成熟期に最大となって減少に転じてから後の時期を意味する。ブリの場合、一般に28ヶ月目以降の年齢の時期にあたることが多く、通常、水温が20℃以上になる5月〜9月の時期に該当する。
本明細書において、「生殖器官成熟期」を単に「成熟期」と称する場合があり、「生殖器官成熟期後」を単に「成熟期後」と称する場合がある。
以下、体重が3.5kg以上であって、成熟期におけるGSIが雄の場合で0.5%以上10.0%以下、雌の場合で0.5%以上4.5%以下であるブリ養殖魚を「低GSIブリ属養殖魚」と称する場合がある。
本明細書における生殖腺体指数(GSI,Gonad Somatic Index)とは、内臓込みの魚体重に対する生殖腺重量の比率であり、以下の式に基づいて算出される:
GSI(%)=生殖腺重量(kg)/内臓込み体重(kg)×100
成熟期におけるGSIの下限値としては、0.7%以上、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、4.0%以上、5.0%以上、6.0%以上、7.0%以上、7.2%以上、7.5%以上、7.7%以上、8.0%以上、又は8.2%以上とすることができる。成熟期におけるGSIの上限値としては、9.5%以下、9.0%以下、又は8.8%以下とすることができる。
成熟期におけるGSIの下限値としては、0.7%以上、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、又は3.5%以上とすることができる。成熟期におけるGSIの上限値としては、4.5%以下、4.3%以下、4.2%以下、又は4.0%以下とすることができる。
成熟期の低GSIブリ属養殖魚におけるDHPの血中濃度は、雄個体の場合、100pg/mL以上、110pg/mL以上、130pg/mL以上、150pg/mL以上、又は200pg/mL以上であってもよく、450pg/mL以下、400pg/mL以下、又は350pg/mLであってもよい。低GSIブリ属養殖魚におけるDHPの血中濃度は、雌個体の場合、100pg/mL以上、120pg/mL以上、150pg/mL以上、又は200pg/mL以上であってもよく、350pg/mL以下、320pg/mL以下、又は300pg/mL以下であってもよい。
血中DHPの測定方法については、特に制限はなく、公知の測定方法のいずれかを用いればよい。例えば、時間分解蛍光免疫測定法(time resolved fluoroimmunoassay:TR−FIA)により測定することができる。TR−FIAを用いた測定方法は、例えば、Gen. Comp. Endocrinol. 106, 181-188に記載された方法を適用することができる。
血中E2の測定方法については、特に制限はなく、公知の測定方法のいずれかを用いればよい。例えば、ラジオイムノアッセイ法(Radioimmunoassay;RIA)により測定することができる。RIAを用いた測定方法は、例えば、Cell Tissue Res., 218, 315-329に記載されている。
ブリ属養殖魚が雄個体の場合、以下の(1)〜(3)の少なくともひとつ:
(1) 11−ケトテストステロン(11−KT)の血中濃度が、1800pg/mL〜4500pg/mL、
(2) 17α,20β−ジヒドロキシ−4−プレグネン−3−オン(DHP)の血中濃度が、100pg/mL〜450pg/mL、及び、
(3) エストラジオール(E2)の血中濃度が、130pg/mL〜400pg/mL。
ブリ属養殖魚が雌個体の場合、以下の(4)〜(6)の少なくともひとつ:
(4) 11−ケトテストステロン(11−KT)の血中濃度が、20pg/mL〜175pg/mL、
(5) 17α,20β−ジヒドロキシ−4−プレグネン−3−オン(DHP)の血中濃度が、100pg/mL〜350pg/mL、及び、
(6) エストラジオール(E2)の血中濃度が、300pg/mL〜10000pg/mL。
雌の個体の場合、上記(4)〜(6)の少なくともひとつを満たすことができ、例えば(4)及び(5)の組み合わせ、(4)及び(6)の組み合わせ、(5)及び(6)の組み合わせ、(4)〜(6)の組み合わせとすることができる。
雄個体の成熟期後のGSIは、成熟期のGSI値未満であって、雄個体の場合で、2.5%以下、2.0%以下、1.8%以下、1.5%以下、1.3%以下、1.0%以下、0.8%以下、0.5%以下、又は0.3%以下であってもよい。雌個体の成熟期後のGSIは、成熟期のGSIよりも低いGSIであって、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、又は0.1%以下であってもよい。
また、低GSIブリ属養殖魚の肥満度は、成熟期後で17以上であり、好ましくは18以上、より好ましくは19以上の肥満度を有することができる。成熟期後で肥満度が17以上の低GSIブリ属養殖魚は、天然魚と比較して、いわゆる脂がのっている可食部をより多く提供することができる。成熟期後の肥満度の上限値は特に制限はなく、例えば29以下、又は28以下とすることができる。
肥満度=
重量(g)/{尾叉長(cm)×尾叉長(cm)×尾叉長(cm)}×1000 ・・・ [1]
(A1−1)体重が3.5kg以上かつ肥満度が20以上であって、GSIが2.5%以上10.0%以下である雄個体、
(A1−2)体重が4.0kg以上かつ肥満度が20以上であって、GSIが5.0%以上9.0%以下である雄個体、
(B1−1)体重が3.5kg以上かつ肥満度が19以上であって、GSIが1.0%以上4.5%以下である雌個体、
(B1−2)体重が4.0kg以上かつ肥満度が19以上であって、GSIが2.0%以上4.0%以下である雌個体。
(A2−1)体重が3.5kg以上かつ肥満度が20以上であって、成熟期でのGSIが2.5%以上10.0%以下であり、成熟期後でのGSIが2.5%未満である雄個体、
(A2−2)体重が4.0kg以上かつ肥満度が20以上であって、成熟期でのGSIが5.0%以上9.0%以下であり、成熟期後でのGSIが5.0%未満である雄個体、
(B2−1)体重が3.5kg以上かつ肥満度が19以上であって、成熟期でのGSIが1.0%以上4.5%以下であり、成熟期後でのGSIが1.0%未満である雄個体、
(B2−2)体重が4.0kg以上かつ肥満度が19以上であって、成熟期でのGSIが2.0%以上4.0%以下であり、成熟期後でのGSIが2.0%未満である雄個体。
成熟期低GSIブリ属養殖魚は、成熟期後の低GSIブリ属養殖魚を効率よく得るために好ましい。
本開示に係るブリ属養殖魚は、本明細書に記載のブリ属養殖魚の飼育方法により得られたものであることできる。
本開示に係る低GSIブリ属養殖魚の飼育方法は、調節飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚を用いて飼育を開始し、ブリ属魚類を成育させること、(以下、「飼育工程」ということがある)、生殖器官成熟期に、GSIが0.5%以上10.0%以下の雄個体、又は、GSIが0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上及び体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚を得ること(以下、「成熟期個体獲得工程」と称することがある)、得られた成熟期ブリ属養殖魚から、生殖器官成熟期後に、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であって、GSIが、生殖器官成熟期での数値よりも低いブリ属養殖魚を得ること(以下、「成熟期後個体獲得工程」と称することがある)を含み、必要に応じて他の工程を含む。
本飼育方法では、ブリ属養殖魚の飼育方法によれば、生殖器官の成熟期後に痩せにくく、かつ持続性に優れたブリ属養殖魚を得ることができる。
なお、「飼育方法」とは、本開示の低GSIブリ属養殖魚を生産するための方法として捉えることができ、「生産方法」、「作製方法」等のいずれの用語とも互換的に用いることができる。
また、「調節飼育」とは、日長条件及び水温条件を適宜調節しながら飼育することをいう。
飼育工程においては、調節飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚が用いられる。
上記仔魚としては、調節飼育環境下で2か月間飼育されたブリ属魚類から、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚を購入等の手段により入手したものを用いてもよいし、上記飼育工程を行う者が、上記調節飼育環境下における少なくとも2ヵ月間の飼育、及び、上記採卵よりなる群から選ばれた少なくとも一方を行うことにより入手したものを用いてもよい。
また、採卵された卵は、仔魚を得るために採卵後に受精処理に供されるが、上記飼育工程を行う者が上記受精処理を行ってもよいし、上記飼育工程を行う者は上記受精処理後に得られた仔魚を購入等の手段により入手して飼育工程における生育に用いてもよい。
調節飼育における日長条件とは、9時間〜15時間の明期と、9時間〜15時間の暗期とを適宜組み合わせることを意味する。例えば、短日条件では、明期10時間及び暗期14時間を30日間行い、長日条件では、明期14時間及び暗期10時間を60日間行うことができる。水温条件とは、15℃〜30℃、又は16℃〜28℃の範囲内で水温を調整することを意味する。
調節飼育における日長条件及び水温条件は飼育に併せて適宜調整することができる。例えば、天然環境下で、好ましい明暗サイクル、又は水温が達成できれば、その条件をそのまま適用すればよい。
採卵された卵は、その後、受精処理に供される。受精後の受精卵を、所定の環境下で保持することによってブリ属魚類の仔魚が得られる。ブリ属魚類の仔魚は、成育に供される。
本明細書において、「ブリ属魚類の仔魚」は、孵化後から尾叉長が5cm程度よりも小さい個体を意味し、それ以降の稚魚及び成魚をまとめて「ブリ属魚類」と称する。
飼育工程における水温の調整は、飼育段階に応じて変更することができる。例えば、ブリ属魚類の仔魚の飼育には、18℃〜22℃に調整し、仔魚が成長してブリ属魚類となってから15℃〜28℃に調整することができる。水温の調整には、加水、加温、周囲温度の調整、遮光、日照時間の調整、海面養殖場の選択、飼育魚の移槽等を挙げることができる。
飼育工程では、28℃を超える高水温の時期を含んでもよい。例えば30℃以上の高水温を成熟過程のブリ属魚類に経験させることは、適度なストレスを個体に負荷して成熟調整に有効であり得る。飼育工程において「高水温」となる水温は、例えば、29℃、30℃、又は31℃とすることができる。高水温の期間は、1日以上、2日以上、3日以上、又は5日以上とすることができる。高水温の期間は、連続した期間であってもよく、断続的であってもよい。
選抜率(%)=正常魚の個体数/(形態異常又は成長不良の個体数+正常魚の個体数)×100
本開示において、養殖に用いられる生簀の上限が海面以上の位置にある場合を海面養殖といい、生簀の上限が海面よりも下の位置にある場合を海中養殖という。
トウガラシ含有飼料による給餌の期間については特に制限はなく、例えば少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、又は少なくとも3ヶ月間、給餌することができる。
成熟期個体獲得工程では、生殖器官成熟期に、GSIが0.5%以上10.0%以下の雄個体、又は、GSIが0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚が得られる。
ここで得られる成熟期ブリ属養殖魚は、3.5kg以上の体重及び18以上の肥満度を有する成熟期個体であると共に、成熟期個体の天然又は他の養殖魚よりも低いGSIを有する。このような成熟期ブリ属養殖魚を得ることによって、後続の成熟期後個体獲得工程における成熟後低GSIブリ属養殖魚を得ることができる。
成熟期個体獲得工程では、目的とするGSI、体重及び肥満度を有する個体を、サイズの測定、血中ホルモン濃度の測定等を行うことによって選抜することができる。サイズの測定には、計量管理に関して既述した方法を適用することができる。血中ホルモンとしては、11−KT、DHP、E2等を挙げることができる。11−KT、DHP及びE2の測定は、上述した方法を適用することができる。
成熟期ブリ属養殖魚について、上述した事項をそのまま適用することができる。
成熟期個体獲得工程までを含む飼育方法によって、成熟期ブリ属養殖魚を得ることができる。ここで得られた成熟期ブリ属養殖魚の生殖器官は充分に成熟しているため、この個体から卵又は精子を得ることができる。ここで得られた成熟期ブリ属養殖魚からの卵又は精子は、有用な形質を有するブリ属養仔魚を得るための種苗として使用することができる。すなわち、本開示に係るブリ属養殖魚の飼育方法は養殖の持続性に優れるといえる。また成熟期ブリ属養殖魚は、次の成熟期後個体獲得工程へ供給されてもよい。
成熟期後個体獲得工程では、得られた成熟期ブリ属養殖魚から、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であって、GSIが、生殖器官成熟期での数値よりも低いブリ属養殖魚、すなわち成熟期後ブリ属養殖魚が得られる。成熟期後のブリ属養殖魚については、成熟期後低GSIブリ属養殖魚に関して上述した事項をそのまま適用することができる。
得られた成熟期後ブリ属養殖魚は、体重3.5kg未満又は肥満度17未満まで痩せることが回避されたブリ属養殖魚であり、このような有用な形質を次世代に継続させることができる。
目的とするGSI、体重及び肥満度を有する個体は、成熟期ブリ属養殖魚と同様に、サイズ、血中ホルモン濃度等の値によって選抜することができ、または水揚げして生殖器官の重量を計測することによって選抜することもできる。
また本開示に係るブリ属養殖魚の飼育方法を用いることによって、良好な形質を有するブリ属養殖魚の提供時期を調整することができる。本開示に係る成熟期後ブリ属養殖魚は、養殖魚の状態等に応じて適切な時期に提供することができ、たとえは、成熟期から半年以内、4カ月以内、3カ月以内、又は2カ月以内に提供することができる。例えば、3歳の成熟期ブリ属養殖魚を、4月〜5月に得る場合には、成熟期後ブリ属養殖魚は、5月〜9月に提供することができる。これにより、例えば、赤潮が発生しやすい夏前に良好な肥満度及び体重を示すブリ属養殖魚を安定して提供することができる。
ブリ属養殖魚の可食部は、加工食品、例えば以下の加熱食品及び非加熱食品として好ましく用いられるほか、動物用飼料としても適用できる。一実施形態にかかる加工食品及び動物用飼料は、低GSIブリ属養殖魚の可食部を含むことができる。
非加熱品とは、加熱調理に付していない可食部を意味し、すり身、さしみ、さく、ブロック及び切り身、並びに、これらの冷凍品、チルド品、フリーズドライ品、干物、漬けなどを挙げることができる。加熱調理に付していないことは、可食部表面の色調で判断することができる。本明細書において「加熱」とは、視認できる程度にアクトミオシンが変性する状態にまで、熱が付与されることを意味する。養殖魚の可食部に対して加熱処理を行うと、アクトミオシンの変性によって可食部が変色するため、可食部の変色に基づいて判断することができる。
加熱品とは、加熱調理に付された可食部を意味し、煮物、焼き物、蒸し物、揚げ物、練り製品などを挙げることができる。
ブリの仔魚を、天然環境下で24ヶ月間飼育し、その後、29ヶ月目から、日長条件及び水温を調整して飼育を開始した。給餌は、通常1日1回飽食給餌、冬季2日1回飽食給餌とした。日長条件としては、短日条件と長日条件を採用した。その他、飼育条件は特開2007−300837号公報に記載の条件に準じて調整した。
また、稚魚が2g〜20gとなった際、陸上水槽より取り上げ、海面生け簀に移動した。上記操作を「沖出し」ともいう。飼育期間中沖出し後は、随時、体長、大きさ、形態等を確認し、1ヶ月おきに体重測定を行った。体重測定には、AM−100(AQ1 system)を使用した体重測定方法を採用した。これらの結果に基づいて、形態異常(頭部陥没、脊椎湾曲、短躯、顎部異常)がなく、成育速度が良好と思われる個体のみを飼育した。形態異常等での選抜率は50〜95%だった。
11−KTの量については、Testosterone, 11-Keto-, EIA Kit(Strip Plate)(Cayman Chemicals社)を使用して測定した。DHPの量については、Maturation-Inducing Steroid (salmonid) AChE Tracer、Maturation-Inducing Steroid (salmonid) EIA Antiserum、Precoated (Mouse Anti-Rabbit IgG) EIA 96well Strip Plate を使用して、Gen. Comp. Endocrinol. 106, 181-188に記載された方法に従って、時間分解蛍光免疫測定法(Time Resolved Fluoroimmunoassay:TR−FIA)により測定した。E2の量については、Estradiol, EIA Kit (Strip Plate)(Cayman Chemicals社)を使用して測定した。
結果を表1に示す。
得られた成熟期のブリ養殖魚は、成熟期後となる2ヶ月後の6月に、体重3.5kg以上及び肥満度17以上であって、雄個体及び雌個体とも0.5未満のGSIであることが確認できた。
実施例1と同様にして、早期採卵により得られた仔魚から飼育を行い、2歳魚の雌個体としての成熟期ブリ養殖魚と、成熟期から74日後の4月の雌個体としての成熟期後ブリ養殖魚を得た。これらの成熟期ブリ養殖魚と成熟期後ブリ養殖魚について、実施例1と同様にして体重、肥満度及びGSIを測定した。結果を表2に示す。
表2に示されるように、成熟期後であっても体重は3.5kg以上、肥満度17以上を有する個体であった。
Claims (14)
- 調節飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚を用いて飼育を開始し、ブリ属魚類を成育させること、
生殖器官成熟期に、生殖腺体指数(GSI)が0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上及び体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚を得ること、
得られた成熟期ブリ属養殖魚から、生殖器官成熟期後に、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が、生殖器官成熟期での数値よりも低い、ブリ属養殖魚を得ること
を含むブリ属養殖魚の飼育方法。 - 生殖器官成熟期後のブリ属養殖魚のGSIが1.0%以下である請求項1記載の飼育方法。
- ブリ属魚類の仔魚の飼育開始時から、ブリ属魚類の飼育環境下の水温を、15℃〜28℃に調整する請求項1又は請求項2記載の飼育方法。
- 前記成育における飼育中に、形態異常及び/又は成長不良の個体の除去を行い、ブリ属魚類の個体を選抜することを含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の飼育方法。
- 前記成育における飼育が、少なくとも5ヶ月間の水面下10m〜18mでの海中養殖を含み、15ヶ月以上行われる、請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の飼育方法。
- 前記成育における飼育中に、ブリ属魚類の計量管理を行う請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の飼育方法。
- 前記成育における飼育中に、飼料100重量部に対して0.1重量部〜0.3重量部のトウガラシを含む飼料を、少なくとも1ヶ月間、ブリ属魚類に給餌することを含む請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の飼育方法。
- 雌のブリ属養殖魚であって、
生殖器官成熟期において、肥満度18以上及び体重3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が0.5%以上4.5%以下であり、
生殖器官成熟期後において、肥満度17以上及び体重が3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が、生殖器官成熟期の数値よりも低い、
ブリ属養殖魚。 - 生殖器官成熟期後のブリ属養殖魚のGSIが雌個体で1.0%以下である請求項8記載のブリ属養殖魚。
- 生殖器官成熟期後の雌個体であって、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であり、生殖腺体指数(GSI)が0.5%未満であるブリ属養殖魚。
- 生殖器官成熟期の雌個体のブリ属養殖魚が、以下の(4)〜(6)の少なくともひとつを満たす請求項8記載のブリ属養殖魚:
(4) 11−ケトテストステロン(11−KT)の血中濃度が、20pg/mL〜175pg/mL、
(5) 17α,20β−ジヒドロキシ−4−プレグネン−3−オン(DHP)の血中濃度が、100pg/mL〜350pg/mL、及び、
(6) エストラジオール(E2)の血中濃度が、300pg/mL〜10000pg/mL。 - 尾叉長が50cm以上である請求項8〜請求項11のいずれか1項記載のブリ属養殖魚。
- ブリ、ヒラマサ、カンパチ、又はヒレナガカンパチである請求項8〜請求項12のいずれか1項記載のブリ属養殖魚。
- 請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の飼育方法で得られたブリ属養殖魚。
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