JP6989775B2 - 微小電極の製造方法 - Google Patents
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Description
グラフェンは通常、二次元平面構造を有する材料である。グラフェンの実質的なデバイス応用の為には、一次元から三次元までの全次元において、その形状を変化させることができれば、応用用途に応じた設計自由度が高まる。例えば、細胞や生体組織といった生体由来材料は三次元形状をとっており、そのインターフェースとして機能するためには、より微細な三次元構造を取ることが必要となる。
そこで、自己組織的に微小な三次元形状に組み立てられる薄膜素子の上にグラフェンを転写して、その薄膜素子を動力源として微細な三次元状のグラフェンを作製する手法が注目されている(非特許文献2)。
非特許文献3に記載された技術では、グラフェンとの密着性が高いパリレンを用いているため、剥離や横滑り等は生じにくいが、二次元平面構造であるため用途に応じた設計自由度が低いという問題がある。
グラフェンを、微細な三次元形状に設計するためには、グラフェンと密着性の高い高分子薄膜を用い、かつ、グラフェン自身がその薄膜の厚み方向に歪みの勾配を与えることにより、グラフェン自身が自己組織的な三次元組み立ての動力源となることが望ましい。
上記事情に鑑み、本発明は、剥離や横滑り、断線等が抑制された、任意の三次元湾曲形状を有する微小電極の製造方法を提供することを目的としている。
本発明の一態様は、上記の微小電極であって、前記導電性材料が、導電性炭素材料である。
本発明の一態様は、上記の微小電極であって、前記高分子化合物層が、ポリパラキシレン又はその誘導体を含む。
本発明の一態様は、上記の微小電極であって、前記高分子化合物層と、前記導電層とが、隣接して配置されている。
本発明の一態様は、上記の微小電極の製造方法であって、前記工程(a)の後、前記工程(b)の前に、(c)前記積層体の一部又は全部の層を、任意の形状にパターニングする工程をさらに有する。
本発明の一態様に係る微小電極は、積層構造を有する微小電極であって、芳香環を有する高分子化合物を含む層(高分子化合物層)、及び導電性材料を含む層(導電層)を含み、前記高分子化合物層の厚みが10~900nmであり、かつ、前記導電層の厚みが0.3~10nmであり、三次元湾曲形状を有するものである。以下に、本発明の好ましい一態様を示す図面を挙げ、本態様に係る微小電極について説明する。
図1に示す微小電極100では、導電層11と高分子化合物層12とが、隣接して配置されている。本実施態様の微小電極では、導電層11と高分子化合物層12とは、必ずしも隣接している必要はないが、少なくとも3次元湾曲形状を形成する部分では、導電層11と高分子化合物層12とが隣接していることが好ましい。導電層11と高分子化合物層12とは、3次元湾曲形を形成する部分において密着していることがより好ましい。
本実施態様の微小電極では、導電層及び高分子化合物層の厚さ及び形状を変化させることで、様々な三次元湾曲形状を有するものを設計することができる。
導電層11は、導電性材料を含む層である。導電層11に用いられる導電性材料は、導電性を有するものであれば特に限定されないが、薄膜形状に加工が可能なナノマテリアル(少なくとも一次元が100nm以下の材料)であることが好ましい。また、溶液中に浸漬された際に大きな体積変化を誘導しない材料が好ましい。微小電極100が、生体内や生体組織等に適用される場合には、導電性材料は生体適合性材料であることが好ましい。さらに、導電性材料は、高分子化合物層12に含まれる高分子化合物と、π-π相互作用をする物質であることが好ましい。そのような物質を選択することにより、導電層11と高分子化合物層12との密着性を高めることができる。
導電性材料としては、例えば、グラフェンやカーボンナノチューブなどの導電性炭素材料や二硫化モリブデンなどの平面状物質等が挙げられる。その中でも、導電性材料は、導電性炭素材料を含むことが好ましく、グラフェンを含むことがより好ましい。導電層11に含まれる導電性材料は、1種であってもよく、2種以上であってもよいが、1種であることが好ましい。好ましい態様において、導電層11は、グラフェンから構成されてもよく、カーボンナノチューブをシート状に加工したバッキーペーパーから構成されてもよい。
高分子化合物層12は、芳香環を有する高分子化合物を含む層である。高分子化合物層12に用いられる高分子化合物は、分子内に芳香環を多く有し、導電層11に含まれる導電性材料とπ-π相互作用をするものが好ましい。そのような高分子化合物を用いることにより、高分子化合物層12の導電層11に対する密着性が高くなる。また、微小電極100が、生体内や生体組織等に適用される場合には、透明性が高く、細胞毒性のない高分子化合物を用いることが好ましい。そのような高分子化合物としては、例えば、ポリパラキシレン又はその誘導体等が挙げられる。ポリパラキシレンの誘導体としては、例えば、ハロゲン化パラキシレン(クロロパラキシレン、フルオロパラキシレンなど)のポリマー等が挙げられる。中でも、高分子化合物は、ポリパラキシレンがより好ましい。
高分子化合物層12に含まれる高分子化合物は、1種であってもよく、2種以上であってもよいが、1種であることが好ましい。
本実施態様の微小電極は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記導電層11、及び高分子化合物層12に加えて、その他の構成を有していてもよい。
その他の構成としては、例えば金属層等が挙げられる。
金属層は、金属元素を含む層である。微小電極の電気的な特性を評価する際、特にプローブを用いて端点に導通を取る場合に、導電層11としてグラフェン単層膜等を用いると導電層11に直接プローブの先端を密着させられないため、微小電極が金属層を有することで、プローブによる剥離に耐え得る機械的強度を有する金属層により、微小電極の形状を保存することができる。金属層に含まれる金属元素は、金属電極として通常用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属等が挙げられる。金属層の厚みは、特に限定されないが、例えば、10nm~100μmであることが好ましい。本実施態様の微小電極が金属層を含む場合、金属層は、三次元湾曲形状を有しない部分に配置されることが好ましい。
微小電極100の好ましい具体例としては、導電層がグラフェンから構成され、高分子化合物層がポリパラキシレン又はその誘導体から構成されており、かつ導電層と高分子化合物層とが隣接しているものが挙げられる。グラフェンとポリパレキシレン又はその誘導体とは、特に密着性が高いため、前記のような構成とすることで、三次元湾曲形状部分においても、剥離や横滑り、断線等の発生を抑制することができる。
特に、導電材料としてグラフェンを用いて高分子化合物としてポリパラキシレン又はその誘導体を用いる場合、グラフェン及びポリパラキシレン又はその誘導体は、ともに堅牢性の高い材料であるため、長期間にわたって液中に浸漬した状態や液体の温度変化を伴う場合であっても、形状変化や歪みが生じにくい。また、グラフェン及びポリパラキシレン又はその誘導体は、ともに高い透明性を有するため、顕微鏡での観察時に光路を遮断することがなく、正立型、倒立型問わずあらゆる種類の顕微鏡において使用可能である。さらに、超解像度顕微鏡下での観察による高精細な観察を実現することもできる。加えて、ピペット操作により回収や移動などのハンドリングが可能になるだけでなく、ガラスキャピラリを用いて複数の微小電極を組織構造化することも可能である。
また、導電材料及び高分子化合物として生体適合性の高い材料を用いれば、細胞や組織との電極インターフェース等としての応用も可能である。グラフェン及びポリパラキシレン又はその誘導体は、生体適合性が高い材料としても好適である。
本発明の一態様に係る三次元湾曲形状を有する微小電極の製造方法は、(a)厚みが10~900nmである芳香環を有する高分子化合物を含む層(高分子化合物層)と、厚みが0.3~10nmである導電性材料を含む層(導電層)と含む、積層体を形成する工程と、(b)前記積層体の厚み方向の歪みの勾配を駆動力として、前記積層体に、自己組織的に三次元湾曲形状を形成させる工程と、を有する、ものである。以下に、本発明の好ましい一態様を示す図面を挙げ、本発明の微小電極の製造方法について説明する。
まず、導電層11と高分子化合物層12とを含む積層体20を形成する(図2(1)~(2):工程(a))。図1(1)~(2)の例では、導電層11と高分子化合物層12とをそれぞれ形成し(図1(1))、高分子化合物層12に導電層11を転写することにより(図1(2))、積層体20の形成を行っている。
次いで、積層体20の厚み方向の歪みの勾配を駆動力として、積層体20に、自己組織的に三次元湾曲形状を形成させる(図1(3)~(6):工程(b))。図1(3)~(6)の例では、導電層11と高分子化合物層12とが互いに密着、接合することにより(図2(3))、積層体20の厚み方向に応力分布が形成され、面内方向の歪みの勾配が形成される(図2(4))。この歪みの勾配を駆動力として、導電層11及び高分子化合物層12が互いに接合したまま屈曲し(図2(5))、三次元湾曲形状が自己組織的に組み立てられる(図2(6))。
以下、本実施態様に係る微小電極の製造方法の各工程について説明する。
工程(a)は、(a)厚みが10~900nmである高分子化合物層と、厚みが0.3~10nmである導電層と含む、積層体を形成する工程である。
図3(1)~(4)の例では、基板10上に(図3(1))、犠牲層13を形成し(図3(2))、さらにその上に高分子化合物層12(図3(3))、及び導電層11を形成する(図3(4))ことにより、積層体20を形成している。
基板10は、積層体20の形成の便宜のために用いられるものであり、材質は特に限定されない。基板10の材料としては、表面の平坦性が高いものが好ましい。また、本実施態様の方法で製造される微小電極を基板上に保持したまま細胞を内包させて蛍光顕微鏡等による観察を行う場合には、蛍光顕微鏡による細胞の蛍光強度観察を妨げないものや、光学特性として波長の吸収帯が導電層11に重複しないものが好ましい。
基板10の材料としては、例えば、シリコン、ソーダガラス、石英、酸化マグネシウム、又はサファイアなどが挙げられる。
基板10の厚みは、特に限定されないが、50~200μm程度が好ましい。
基板10の具体例としては、例えば、100μm程度の厚みを有するガラス基板等が挙げられる。
犠牲層13は、上記導電層11及び高分子化合物層12からなる積層体20を、基板10から遊離するための一時的な接着層としての役割を有する。犠牲層13を構成する材料は、化学物質、温度変化、及び光照射などの外部からの刺激に応答して溶解する性質を有する材料であれば、特に限定されない。犠牲層13としては、例えば、物理ゲルの1種であるアルギン酸カルシウムゲルなどが利用可能である。アルギン酸カルシウムゲルは、クエン酸ナトリウムやエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤、又はアルギナーゼと呼ばれる酵素などを添加することで、アルギン酸カルシウムゲルがゲルからゾルへ転移して溶解する。犠牲層13が外部刺激に応答して溶解する性質を有することで、後述する工程(b)において、犠牲層13を溶解することにより基板10から積層体20を遊離させ、積層体20に自己組織的に三次元湾曲形状を形成させることができる。前記クエン酸ナトリウムやエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤は、細胞などの生体試料に対して毒性を示さないため、犠牲層13の溶解作業の直前に目的の細胞を懸濁することで細胞の内包化が可能となる。
基板10上に犠牲層13を形成する方法は、特に限定されず、犠牲層13の材料に応じて、薄膜形成に一般的に用いられる方法を適宜選択することができる。犠牲層13の形成方法としては、例えば、化学蒸着(CVD)、スピンコーティング、インクジェットプリンティング、蒸着法、エレクトロスプレイ法等が挙げられる。
導電層11及び高分子化合物層12は、上記「<微小電極>」で記載したものと同様である。
図3(3)及び(4)の例では、犠牲層13上に、高分子化合物層12を形成し、前記高分子化合物層12上に、導電層11を形成しているが、形成順序は逆であってもよい。すなわち、犠牲層13上に、導電層11を形成し、前記導電層11上に高分子化合物層12を形成してもよい。
ここで形成される導電層11の厚みは0.3~10nmであり、高分子化合物層12の厚みは10~900nmである。導電層11及び高分子化合物層12の厚みを前記範囲内とすることにより、積層体20の厚み方向に歪みの勾配を発生させることができる。前記範囲内で導電層11の厚みを大きくすれば、後述の工程(b)で形成される三次元湾曲形状の曲率半径を小さくすることができる。一方。前記範囲内で高分子化合物層12の厚みを大きくすれば、後述の工程(b)で形成される三次元湾曲形状の曲率半径を大きくすることができる。
本工程において形成する積層体20は、前記導電層11及び前記高分子化合物層12に加えて、その他の構成を含んでいてもよい。その他の構成は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。積層体20は、その他の構成として、例えば、導電層11及び高分子化合物層12以外のその他の層を含んでいてもよい。その他の層は、当該層を構成する材料に応じて、適宜、厚み及び形成方法等を選択可能である。例えば、積層体20は、その他の層として金属層を含むことができる。積層体20が金属層を含む場合、金属層の厚みは、例えば、10nm~100μmとすることができる。金属層は、導電層11に隣接して設けることができ、犠牲層13上に導電層11を形成した後、前記導電層11上に金属層を形成してもよい。あるいは、犠牲層13上に高分子化合物層12を形成した後、前記高分子化合物層12上に金属層を形成し、次いで前記金属層上に導電層11を形成してもよい。この場合、後述の工程(b)において三次元湾曲形状を形成させる部分には、金属層を形成しないことが好ましい。
金属層の形成方法は特に限定されず、蒸着法、スパッタ法、直接塗布(例えば、銀ペーストの直接塗布)などの方法が利用可能である。
工程(b)は、積層体の厚み方向の歪みの勾配を駆動力として、前記積層体に、自己組織的に三次元湾曲形状を形成させる工程である。
本実施態様に係る製造方法は、上記工程(a)及び(b)に加えて、他の工程を含んでいてもよい。他の工程は特に限定されないが、他の工程として、例えば、上記工程(a)の後、上記工程(b)の前に、(c)前記積層体の一部又は全部の層を、任意の形状にパターニングする工程をさらに有していてもよい。
パターン形状を長方形状とすれば、筒型形状の微小電極を得ることができる。パターン形状を放射形状とすれば球状のグリッパ構造の微小電極を得ることができる(図8(1)参照)。パターン形状を六角形が隣接してアレイ化された二次元パターンとすれば、より大きく、内部が中空で、かつ物質透過性が高い筒状構造体の微小電極を得ることができる(図8(2)参照)。パターン形状を、長方形パターンの両末端が傾斜を有する平行四辺形の二次元パターン構造とすれば、その傾斜に沿って巻かれたコイル状の構造体の微小電極を得ることができる(図8(3)参照)。このようなコイル構造は長軸方向に柔軟に構造変化でき、かつ断線しにくい伸縮性の高い電極素子としての応用が可能となる。
本発明の一態様に係る集積デバイスは、上記態様の微小電極を含む、集積デバイスである。
上記態様の微小電極は、微細な任意の形状を有することが可能であるため、立体的に電極素子を組み立て、集積化し、集積デバイスを作製することができる。例えば、上記態様の微小電極をマニピュレータなどで操作、載置することにより、組織構造化や回路形成を行うことができる。
微小電極に生体適合性の高い材料を用いることにより、本実施態様の集積デバイスは、例えば、細胞や組織との電極インターフェースとしての応用が可能となる。
三次元湾曲形状を有する微小電極の作製を図3(1)~(6)プロセスに従って行った。
図3(1)に示す基板10として、ガラス基板を用いた。ガラス基板上で、アルギン酸ナトリウム溶液をスピンコーティングし、その後100mMの塩化カルシウム溶液の中に浸漬することでアルギン酸カルシウムゲルの犠牲層13を形成した(図3(2))。犠牲層13の厚みはアルギン酸ナトリウム溶液の濃度とスピンコーティングの速度を変化させることで制御可能である。本実施例では、2wt%のアルギン酸ナトリウム溶液を3000rpmでスピンコーティングすることで40nmのゲル層を形成した。
[実施例1]で作製した基板10上の積層体に、キレート剤であるEDTA溶液を添加することで、犠牲層13を溶解した。EDTA溶液の添加後、犠牲層13が徐々に周囲から剥離され、次第に中心部へ反応が進んだ。その後、60秒後に皺形成と共に薄膜が座屈されることが確認され、同時に軸方向への薄膜の屈曲が誘導されることが観察された。これにより長軸方向の長さを維持した状態の筒状の微小電極が得られた。EDTA溶液を添加してから筒状の微小電極が完成するまでの時間は、添加するEDTA溶液の最終濃度と基板を浸漬している溶液の種類により制御が可能である。本実施例では、縦200μm、横400μm、厚み40nmの犠牲層13のアルギン酸カルシウムゲル層を200μLの純水中に浸漬し、0.5MのEDTA溶液を5μL添加することで、おおよそ20秒以内で除去することが可能であった。一方で、積層体20の座屈はEDTA溶液の濃度に依らずおおよそEDTA溶液添加後から60秒前後に起こる。
EDTA溶液の添加から筒型微小電極が完成するまでの経過を図4に示す。
屈曲現象は積層体の厚み方向の応力分布が起因しているため、積層体の体積変化によって、屈曲の際の曲率が制御可能である。
図5(1)には、縦200μm、横400μmのパターンを有し、導電層11として単層のグラフェンを転写した際の、曲率半径とパリレン層(高分子化合物層12)の厚みとの相関関係を評価した結果を示した。パリレン層(高分子化合物層12)の厚みが増加することによって、一定の応力下において積層構造体の断面二次モーメントが増加し、より屈曲しにくくなることが観察された。
一方で、パリレン層(高分子化合物層12)の厚みが84.5nmで一定である際に、縦200μm、横400μmのパターンのパリレン層(高分子化合物層12)の表面上に転写するグラフェン層(導電層11)の層数を増加することにより、最終的な筒状の微小電極の曲率半径は小さくなることがわかった(図5(2))。このことからグラフェン層をより厚くすることで、より微細な三次元湾曲形状の電極が作製可能であることが確認された。
また、三次元湾曲形状を形成後、筒状の微小電極は、基板10から完全に乖離した状態となる。これにより、ピペット操作により回収や移動などのハンドリングが可能になるだけでなく、ガラスキャピラリを用いて複数の筒状の微小電極を組織構造化することも可能となる。
作製された筒状の微小電極の光学的な特性を評価した。ラマン顕微鏡によって計測したスペクトルの結果を図6(1)~(2)にそれぞれ示した。
三次元湾曲形状に組み立てられる前のグラフェン層(導電層11)では、Gバンド、2Dバンドともに通常のCVDグラフェンと同様のスペクトルを示す(図6(1)、(2)のBefore folding)。一方、パリレン層及びグラフェン層の2層からなる三次元微小電極では、Gバンドが、三次元筒状由来の長波長側へのピーク位置のシフトが観察された(図6(1)After folding)。さらに2Dバンドでも長波長側にピーク位置がシフトすることが確認された(図6(2)After folding)。
図7(1)~(4)に示すプロセスに従って、三次元湾曲形状を有する微小電極を作製した。
基板10上に、犠牲層13を形成し、その表面に導電層11を転写した(図7(1))。基板10、犠牲層13及び導電層11は、実施例1と同様のものを用いた。次に、その導電層11の両末端に金電極(金属層14)を蒸着した(図7(2))。その後、パリレン層(高分子化合物層12)を蒸着し、その表面をパターニングした(図7(3))。そして、EDTA溶液の添加により凹型に構造変化した微小電極200を得た(図7(4))。
図7(1)に示す結果から、構造変化に伴う抵抗の変化は観察されたものの、三次元湾曲形状を形成しても断線することなく、安定した導電性が保持されていることが確認できた。
筒状の微小電極の曲率半径は導電層及び高分子化合物層の厚みによって規定される一方(図5)、二次元パターンを変更することで、曲率半径を一定に維持したまま筒状以外の多様な三次元湾曲形状を作製することができる。
積層体の二次元形状を放射状パターンにした場合、球状のグリッパ構造となった(図8(1))。この際にそれぞれの脚の湾曲する曲率は、筒状の際と同様に導電層の厚み(例えば、グラフェンの層数)及び高分子化合物層の厚みによって規定された。また六角形が隣接してアレイ化された二次元パターンを形成した場合、より大きく、内部が中空で、かつ物質透過性が高い筒状の微小電極を作製することができた(図8(2))。長方形パターンの両末端が傾斜を有する平行四辺形の二次元パターン構造を形成した場合、その傾斜に沿って巻かれたコイル状の構造体を形成した(図8(3))。このようなコイル構造は長軸方向に柔軟に構造変化でき、かつ断線しにくい伸縮性の高い電極素子としての応用が可能となる。
単結晶でミリメートルサイズのグラフェンを作製し(図9(1))、パリレン薄膜上に転写することを試みた。その結果、グラフェン単結晶中のアームチェア方向に屈曲し、ジグザグ方向が筒状の微小電極の長軸方向と一致することが確認された(図9(2))。これはグラフェンの芳香環の向かい合う炭素原子の辺同士が近接するより、向かい合う炭素原子の一点同士が隣接し合う方がより多くを占めていることを示している(図9(3))。これによりグラフェンの結晶方向がマクロな三次元組立という現象の屈曲方向を規定できることが確認された。
Claims (2)
- 三次元湾曲形状を有する微小電極の製造方法であって、
(a)厚みが10~900nmである芳香環を有する高分子化合物を含む層(高分子化合物層)と、厚みが0.3~10nmである導電性材料を含む層(導電層)とを含む、積層体を形成する工程と、
(b)前記積層体の厚み方向の歪みの勾配を駆動力として、前記積層体に、自己組織的に三次元湾曲形状を形成させる工程と、
を有する、三次元湾曲形状を有する微小電極の製造方法。 - 前記工程(a)の後、前記工程(b)の前に、
(c)前記積層体の一部又は全部の層を、任意の形状にパターニングする工程
をさらに有する、請求項1に記載の三次元湾曲形状を有する微小電極の製造方法。
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