以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述する。
(1)第1の実施の形態
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るエレベーター制御システムを含むエレベーター全体の構成図である。
図1に示すように、エレベーター1は、エレベーター制御システム100、乗場呼びボタン120(個別には120A~120N)、ループ制御装置121(個別には121A~121N)、及びかごループ131(個別には131A~131N)を備えて構成される。各かごループ131は2台のかご132から構成される。より具体的には、図1の場合、かごループ131Aはかご132a及びかご132bから構成され、かごループ131Nはかご132c及びかご132dから構成される。なお、本実施の形態の対象とするエレベーター1は、ロープに2台のかごを互いに釣合錘とするように連結したマルチカーエレベーター(対向かご釣合式マルチカーエレベーター)であるが、その概略については、図2を参照しながら後述する。また、エレベーター1の構成は、本発明の第1~4の実施の形態で共通とするため、図1には、第1の実施の形態では必ずしも必要ではない構成(例えば乗客特性情報管理部106)も含まれている。
エレベーター制御システム100は、エレベーター1に取付けられたかご132(個別には132a~132n)の運転モードを制御するシステムであって、例えばコンピュータによって実現される。詳細は後述するが、エレベーター制御システム100は、エレベーター1に関する所定の状況(例えば、輸送状況、交通需要、時間帯、乗客特性等)に基づいて、任意のかごループ131における運転モードを決定し、当該かごループ131の運転を制御するループ制御装置121に対して運転モード切替指令を出力することにより、決定した運転モードへの切替を指示する。
図1に示すように、エレベーター制御システム100は、機能構成として、ループ情報管理部101と、乗場ペア情報管理部102と、かご状態管理部103と、乗場状態管理部104と、記録部105と、乗客特性情報管理部106と、運転モード切替判定部107と、を備える。
ループ情報管理部101は、それぞれのかごループ131を形成するかご132の組合せを示すループ情報111を管理する。乗場ペア情報管理部102は、かごループ131を形成する2台のかご132による停止階(乗場)の組合せを示す乗場ペア情報112を管理する。かご状態管理部103は、各かご132の状態を示すかご状態情報113を管理する。乗場状態管理部104は、各乗場の状態を示す乗場状態情報114を管理する。記録部105は、乗客の乗降実績を記録した移動実績情報115を管理する。乗客特性情報管理部106は、乗客の特性に対応する運転モードを示す乗客特性情報116を管理する。なお、乗客特性情報116は、後述する第4の実施の形態で用いられる情報である。各情報の詳細については、図3等を参照しながら後述する。
運転モード切替判定部107は、エレベーター1に関する所定の状況に基づいて、エレベーター制御システム100の各部が管理する情報を参照しながら、任意のかごループ131における運転モードを決定し、当該かごループ131の運転を制御するループ制御装置121に対して、決定した運転モードへの切替を指示する運転モード切替指令を出力する。
乗場呼びボタン120(120A~120N)は、各かご132の乗場(停止階)に設けられた呼びボタンであって、利用者による押下等の所定の操作が行われた場合に、かご132の当該乗場への呼び(乗場呼び)が行われる。
ループ制御装置121(121A~121N)は、かごループ131(131A~131N)に1対1で対応して設けられて、対応するかごループ131(かご132と読み替えてもよい)の動作を制御する。具体的には、制御対象のかごループ131(またはかご132)について、不図示の駆動装置や戸開閉用モータ等の制御を行う。
また、ループ制御装置121は、運転モード切替部122(個別には122A~122N)を有している。運転モード切替部122は、ループ制御装置121がエレベーター制御システム100からの運転モード切替指令を受信した場合に、なお、本実施の形態において、かごループ131の設置数は、エレベーター1に設置可能な範囲であれば1つでも複数でもよく、また、かごループ131の駆動方式は限定されない。
かご132(132a~132d)は、乗客を輸送する乗りかごであって、それぞれの内部にかご呼びボタン133(133a~133d)が設けられている。かご呼びボタン133は、乗客が行先階を指示するためのボタンであって、押下等の所定の操作が行われた場合に、当該操作に応じて、自かご132による呼び(かご呼び)が行われる。
図2は、対向かご釣合式マルチカーエレベーターの概略図である。図2には、本発明を適用可能な対向かご釣合式マルチカーエレベーターの一形態として、循環型の対向かご釣合い式マルチカーエレベーターの概略構成を、図1に示したエレベーター1に対応する態様で示している。図2(A)にはエレベーター全体の断面図が示され、図2(B)にはそれぞれのかごループ131A,131Bの構造が示されている。なお、図2(A)に示す「1F」~「8F」は、それぞれ1階~8階の乗場(サービス階床)を意味するものであり、この表記方法は、後述する図でも同様である。
図2(A)に示すように、エレベーター1の内部空間は、上昇方向(昇り方向)の走行専用のシャフトである上昇方向シャフト141と、下降方向(降り方向)の走行専用のシャフトである下降方向シャフト142と、かご132の走行方向を転換し、走行シャフトを上昇方向シャフト141から下降方向シャフト142に変更する上方の方向反転スペース143と、かご132の走行方向を転換し、走行シャフトを下降方向シャフト142から上昇方向シャフト141に変更する下方の方向反転スペース144から構成される。
ここで、対向かご釣合式マルチカーエレベーターでは、2台のかご132を互いに釣合錘とするようにロープで連結して形成されたかごループ131が、シャフト内に1以上配置される。図2(A),図2(B)の場合、かご132a,132bが互いに釣合錘となるかごループ131Aと、かご132c,132dが互いに釣合錘となるかごループ131Bとが配置されている。
また、図2に示した対向かご釣合式マルチカーエレベーターは、上昇方向シャフト141や下降方向シャフト142は1台分のかご132が通過できる幅しかないため、任意の位置で同一方向に走行するかご132は1台に限定される。具体的には例えば、図2(A)において、5階の位置で、かご132aが昇り方向に走行しているが、このタイミングで、他のかご132b~132dが5階を昇り方向に走行することはできない。
また、図2に示した対向かご釣合式マルチカーエレベーターは、ロープが既定の進行方向にしか進まない「循環型」であることから、走行方向の反転は、上下の方向反転スペース143,144のみで行われる。具体的には例えば、図2(A)において、各かご132a~132dは、上昇方向シャフト141内を走行する際は昇り方向にしか移動できず、下降方向シャフト142を走行する際は降り方向にしか移動できない。
なお、図2では、循環型の対向かご釣合式マルチカーエレベーターを例示したが、本発明を適用するエレベーターは、これに限らず、循環型ではない(非循環型の)対向かご釣合式マルチカーエレベーターであってもよい。非循環型の対向かご釣合式マルチカーエレベーターの場合、例えば、図2において、上昇方向シャフト141及び下降方向シャフト142における移動方向を限定することなく、ロープの進行方向を変更することによってかご132の昇降を可能とし、上下の方向反転スペース143,144を使用しないようにしてもよい。但し、非循環型の場合はロープの進行方向の制御等のために循環型よりも複雑な制御が必要となるので、以下では、本発明の各実施の形態の説明を簡略にするために、循環型の対向かご釣合式マルチカーエレベーターを用いる。
また、図2には、サービス階床(乗場)が1階~8階までの8階床、かご台数が4台、かごループ数が2で形成された循環型の対向かご釣合い式マルチカーエレベーターを示したが、本発明を適用可能な対向かご釣合い式マルチカーエレベーターは、このようなサービス階床数、かご台数、及びかごループ数に限定されるものではない。これは、次に説明する本実施の形態で利用する情報の具体例を示した図3と図4とを比較することによって確かめられる。
図3は、エレベーター制御システムが保持する情報の具体例を説明するための図(その1)である。図3では、エレベーター1が備えるかごループ131が1つ(かご132a,132bによって形成されるかごループ131Aだけ)である場合について、図3(B)に、エレベーター1におけるかご132の動作状態の一例を示し、図3(A)に、図3(B)に例示した動作状態におけるループ情報111、乗場ペア情報112、かご状態情報113、及び乗場状態情報114の具体例を示している。
ループ情報管理部101は、かごループ131を形成するかご132の組合せが記録されたループ情報111を管理している。図3(A)には、ループ情報111の一例として、かご132aとかご132bとの組合せが示されている。ループ情報111は、かご132a,132bによって形成されるかごループ131Aを特定可能な情報を併せ持つようにしてもよい。図3の場合、かごループは1組だけであるから、ループ情報管理部101が管理するループ情報111のデータ数は1個である。
なお、本明細書では、かごループ131を形成する2台のかご132を区別するために、ループ情報111の同一データに記載された一方のかご132を「第1かご」と称し、他方のかご132を「第2かご」と称する。具体的には例えば、図3(A)のループ情報111の場合、上側に記載されたかご132aをかごループ131Aの「第1かご」と呼び、下側に記載されたかご132bをかごループ131Aの「第2かご」と呼ぶ。
乗場ペア情報管理部102は、かごループ131を形成する2台のかご132による停止階(乗場)の組合せを示す乗場ペア情報112を管理する。ここで、図3(B)には、上昇方向の乗場A1~H1と下降方向の乗場A2~H2とが示されており、対向かご釣合い式マルチカーエレベーターでは、同じアルファベットを付記されている階が、予め定められた乗場のペアとなる。すなわち、A1とA2、B1とB2、C1とC2、D1とD2、E1とE2、F1とF2、G1とG2、H1とH2が、それぞれ乗場ペアとなる。図3(A)には、乗場ペア情報112の一例として、上昇方向シャフト141の1階乗場を示す「1F上昇(乗場H1に相当)」と下降方向シャフト142の8階乗場を示す「8F下降(乗場H2に相当)」との組合せが示されている。図3の場合、サービス階床は8階床であるから、乗場ペア情報管理部102が管理する乗場ペア情報112のデータ数は8個である。
なお、図3(B)は、エレベーター1が設置される建築物において各階の階高(階床ピッチ)が同じ場合を図示しているが、本実施の形態に係るエレベーター1は、階高が異なる建築物に設置することもできる。この場合、同じかごループ131に属する2台のかご132(すなわち、ループ情報111で組合せを管理されるかご132)が同時に乗場に着床できるようにするために、かご132が、床の高さ位置を補正する補正装置を備えるようにしてもよい。当該補正装置については公知技術であるために詳細な説明は省略するが、例えば、かご132を二重構造にして、外側構造の内部でかごの高さ位置を補正する既存のレベリング装置等が挙げられる。
かご状態管理部103は、各かご132の状態を示すかご状態情報113を管理する。かご状態情報113は、かご132の過去または現在の状態を示すものであってもよく、予測によって得られるかご132の未来の状態を示すものであってもよく、あるいは、これらの任意の組合せであってもよい。図3(A)には、かご状態情報113の一例として、かご132aの状態が示されている。詳しくは、かご132aの移動方向、かご132aにおける荷重、かご132aに対する乗場呼びの情報(乗場呼び)、かご132aで行われたかご呼びの情報(かご呼び)、及び、かご132aの位置等が記載されており、各項目の記載内容は、図3(B)に示したかご132aの状態と対応している。図3の場合、かご132は2個であるから、かご状態管理部103が管理するかご状態情報113のデータ数は2個である。なお、かご状態情報113に記載される項目や、各項目の表記方法等は、図3(A)の例に限定されるものではない。例えば、かご132の位置について、シャフト底面(方向反転スペース144の底面)からの高さで表すようにしてもよい。
乗場状態管理部104は、各乗場(停止階)の状態を示す乗場状態情報114を管理する。乗場状態情報114は、乗場の過去または現在の状態を示すものであってもよく、予測によって得られる乗場の未来の状態を示すものであってもよく、あるいは、これらの任意の組合せであってもよい。図3(A)には、乗場状態情報114の一例として、「1F昇り」の乗場H1の状態が示されている。詳しくは、乗場H1について、乗場呼びの有無、乗場呼びが行われてからの経過時間(呼び経過時間)、乗場呼びが解除されてからの経過時間(呼び解除経過時間)、及び、乗場呼びに対してかごが割当済みであるか否かの情報(呼び割当済み)等が記載されている。このうち、図3(A)では、呼び割当済みの項目について、かごが割当済みの場合は「真」、未割当の場合は「偽」と表記するが、他の表記方法の一例として、割当てられたかご132を特定可能な情報(例えば「かご132a」等)を表記するようにしてもよい。このような乗場状態情報114からは、各乗場の詳細な状況を判断することができる。例えば、呼び経過時間が長い場合は、利用者を過剰に待たせていると判断できる。また例えば、呼び解除経過時間が大きい場合には、当該乗場における利用者が少なく、交通需要が比較的低いと判断できる。なお、図3の場合、サービス階床は8階床であり、各階床が上昇方向シャフト141及び下降方向シャフト142に分かれることから、乗場状態管理部104が管理する乗場状態情報114のデータ数は16個である。
図4は、エレベーター制御システムが保持する情報の具体例を説明するための図(その2)である。図4では、エレベーター1が複数のかごループ131を備える場合について、図4(B)に、エレベーター1におけるかご132の動作状態の一例を示し、図4(A)に、図4(B)に例示した動作状態におけるループ情報111、乗場ペア情報112、かご状態情報113、及び乗場状態情報114の具体例を示している。
図4を図3と比較すると、図4(B)に示したように、エレベーター1が備えるかごループ131が3つ(かご132a,132bによって形成されるかごループ131Aと、かご132c,132dによって形成されるかごループ131Bと、かご132e,132fによって形成されるかごループ131C)であるという点で異なっているが、図4(A)に示したように、各情報については、以下の点を除いて図3(A)と変わらないことが分かる。
図4(A)における図3(A)との相違点として、かごループ131の数が1つから3つに増えたことで、ループ情報111のデータ数が1個から3個に増える。また、かご132の台数が2台から6台に増えたことで、かご状態情報113のデータ数も2個から6個に増える。但し、サービス階床(乗場)数は8階床(昇りと降りとで区別すると16個)で変わらないことから、乗場ペア情報112及び乗場状態情報114のデータ数は、それぞれ8個及び16個で変わらない。乗客特性情報116についても、特段の変化はない。
このように、本実施の形態では、対向かご釣合い式マルチカーエレベーターにおいて、図4に例示したようにサービス階床数、かご台数、及びかごループ数が増えたとしても、図3の場合と同様に、各情報を管理することが可能であることが分かる。すなわち、本発明は、サービス階床数、かご台数、及びかごループ数に限定されることなく、対向かご釣合い式マルチカーエレベーターに適用可能である。したがって、以降では、説明を簡略にするために、かごループ数が1個の場合(図3の例示)を用いて説明する。
図5は、移動実績情報の具体例を説明するための図である。前述したように、移動実績情報115は、エレベーター1における乗客の乗降実績を記録した情報であって、記録部105によって管理される。図5に例示した移動実績情報115の場合、かご132の移動方向(かご方向)別に、各乗場における乗客の乗降人数が、時間と紐づけて記録されている。このような移動実績情報115に基づいて所定の集計処理や統計処理を行うことにより、運転モード切替判定部107は、所定の階床範囲におけるかご方向別の乗客数を取得することができ、後述する運転モード切替処理における判定処理(図6のステップS106)に利用することができる。
なお、本実施の形態(後述する第2の実施の形態も同様)で利用可能な移動実績情報115は、乗場別(階床別)及びかご方向別に乗客の移動実績を集計することが可能な情報であればよく、そのデータ形式等は、図5の例に限定されるものではなく、また、乗客数のカウント方法等も特定の方法に限定されるものではない。具体的には例えば、かご132や乗場に人数を計測可能な装置(センサ)が設けられている場合には、当該センサを用いて乗客数をカウントすればよい。また、このようなセンサが設けられていない場合であっても、かご132における荷重の変化から乗客数を推定する等してよい。
次に、第1の実施の形態における運転モード切替処理について詳しく説明する。運転モード切替処理とは、エレベーター1の状況に基づいて、かご132(あるいはかごループ131)の運転モードを適宜切り替えるための処理であって、エレベーター制御システム100またはループ制御装置121によって実行される。
図6は、第1の実施の形態における運転モード切替処理の処理手順例を示すフローチャートである。図6のステップS101~S107,S109,S110,S112の処理は、エレベーター制御システム100の運転モード切替判定部107によって実行され、図6のステップS108,S111,S113の処理は、ループ制御装置121の運転モード切替部122によって実行される。
図6によればまず、ステップS101において、運転モード切替判定部107は、割当済みではない乗場呼びの有無を判定する。具体的には、運転モード切替判定部107は、乗場状態管理部104が管理する乗場状態情報114を参照して、乗場呼びが「有」で、かつ呼び割当済みが「偽」である乗場があった場合には、割当済みではない乗場呼びが有ると判定し、このような乗場がなかった場合には、割当済みではない乗場呼びが無いと判定する。割当済みではない乗場呼びが有ると判定した場合は(ステップS101のYES)、ステップS102に進み、割当済みではない乗場呼びが無いと判定した場合は(ステップS101のNO)、処理を終了する。
ステップS102において、運転モード切替判定部107は、乗場状態情報114において乗場呼びが「有」、かつ呼び割当済みが「偽」となっている乗場のうちから、1つの乗場を乗場呼び階として選択する。
次に、運転モード切替判定部107は、ステップS102で選択した乗場呼び階に停止可能なかご群(1以上のかご132)の有無を判定する(ステップS103)。所定の乗場呼び階に停止可能なかご132の有無は、所定の判定基準に基づいて判定すればよい。具体的には例えば、かご状態管理部103が管理するかご状態情報113を参照し、当該乗場呼び階の近傍に存在するかご132を検索する等の判定方法を採用することができる。なお、ロープの循環方向(かご132の進行方向)が一定である場合には、循環方向を考慮して近傍の判定を行うことが好ましい。また、近傍のかご132を検索する際、荷重が規定上限に近いかご132は除外するといった判定基準を追加してもよい。ステップS103において乗場呼び階に停止可能なかご群が存在した場合には(ステップS103のYES)、ステップS104に進み、乗場呼び階に停止可能なかご132が1つも存在しなかった場合には(ステップS103のNO)、処理を終了する。
ステップS104では、運転モード切替判定部107は、ステップS103で判定したかご群の各かご132について、かごループ131を形成する他方のかご(「ペアかご」と称する)が非サービス中であるかご132が存在するか否かを判定する。ここで、かご132が非サービス中とは、当該かご132が、乗客を乗せておらず、また、呼び応答中でもない状態を意味する。運転モード切替判定部107は、ループ情報111及びかご状態情報113を参照することにより、ステップS104の判定処理を実行することができる。
具体的には例えば、かご132aについてステップS104の処理を行う場合、運転モード切替判定部107はまず、ループ情報111を参照することによって、かご132bが「ペアかご」であると特定できる。次に、運転モード切替判定部107は、「ペアかご(かご132b)」に関するかご状態情報113を参照し、「乗場呼び」及び「かご呼び」がともに記載されていなければ、非サービス中であると判定する。すなわち、かご132bのかご状態情報113において、「乗場呼び」及び「かご呼び」がともに記載されていなければ、かご132aを、ペアかごが非サービス中のかごであると判定する。
上述したようなステップS104の判定処理を行った結果、ペアかごが非サービス中のかご132が有った場合は(ステップS104のYES)、該当するかご132のうちの1つを選択し(ステップS105)、ステップS106に進む。但し、ステップS105では、1つのかご132を選択するだけであって、当該かご132に乗場呼びを登録するものではない。一方、ステップS104の判定処理を行った結果、ペアかごが非サービス中のかご132が存在しなかった場合は(ステップS104のNO)、処理を終了する。
ステップS106では、運転モード切替判定部107は、エレベーター1におけるかご132の移動方向別(すなわち、上昇方向移動/下降方向移動)の乗客総数を比較し、その差が所定の閾値未満であるか判定する。かご方向別の乗客総数の差が閾値未満であった場合は(ステップS106のYES)、ステップS107に進み、閾値以上であった場合は(ステップS106のNO)、ステップS109に進む。かご方向別の乗客総数は、記録部105が管理する移動実績情報115から、あるいは移動実績情報115を集計した不図示の情報から、取得することができる。
なお、本例では、ステップS106の判定内容として、かご方向別の「乗客総数」の比較を行うとしているが、ステップS106の判定を行う目的は、かご方向間の交通需要の格差を判断するためであり、この目的に沿うものであれば、本実施の形態におけるステップS106の判定内容はこれに限定されず、より複雑な判定内容によって、かご方向別の「乗客数」を比較するものであってもよい。具体的には例えば、全階床の乗客数同士を比較するのではなく、1F~4Fの上昇方向乗客数と6F~8Fの下降方向乗客数とを比較するといったように、それぞれ所定の階床間でのかご方向別の乗客数を比較するようにしてもよい。また、比較対象とする乗客数は、現在の乗客数に限定されるものではなく、直近の所定期間の乗客数を比較対象としてもよいし、予測や過去の実績によって推定される未来の乗客数を比較対象としてもよい。そして、ステップS106の判定に用いられるかご方向別の「乗客数」に関する情報は、記録部105が管理する移動実績情報115から、あるいは移動実績情報115に基づいて所定の集計処理等を行って生成された不図示の情報等から、取得することができる。
ステップS107の処理は、かご方向別の乗客総数の差が閾値未満であった場合、換言すれば、かご方向間の交通需要に大きな格差がない場合に行われる。このとき、運転モード切替判定部107は、ステップS105で選択したかご132のかごループ131を制御するループ制御装置121に対して、両かご運転モード切替指令を出力する。具体的には例えば、ステップS105でかご132aが選択されたとした場合、ステップS107において、運転モード切替判定部107は、かごループ131Aを制御するループ制御装置121Aに対して、両かご運転モード切替指令を出力する。
ここで、本実施の形態で用いられる運転モード及び運転モード切替指令について詳しく説明する。本実施の形態では、かごループ131ごとに制御可能な複数種類の運転モードが用意されており、この運転モードには少なくとも、かごループ131を形成する2台のかご132をともに使用可能(サービス可能)にする「両かご運転モード」と、かごループ131を形成する2台のかご132の何れかを使用不可(サービス停止)にする「片かご運転モード」とが含まれる。さらに、「片かご運転モード」については、かごループ131を形成する2台のかご132のどちらを使用可能にするか(どちらを使用不可)にするかを指定できるようになっており、第1かごのみを使用可能にする(第2かごを使用不可にする)「第1片かご運転モード」と、第2かごのみを使用可能にする(第1かごを使用不可にする)「第2片かご運転モード」とに区分される。「第1かご」及び「第2かご」の定義については、ループ情報111の説明で前述した通りである。
そして、上記の各運転モード(両かご運転モード、第1片かご運転モード、第2片かご運転モード)に運転モードを切り替えさせるために、エレベーター制御システム100からループ制御装置121に対して出力される運転モード切替指令が、両かご運転モード切替指令、第1片かご運転モード切替指令、第2片かご運転モード切替指令である。
図6の説明に戻る。ステップS107で両かご運転モード切替指令が出力されると、ループ制御装置121の運転モード切替部122が、制御対象のかごループ131の運転モードを当該指令に従って切り替える(ステップS108)。具体的には例えば、ステップS107においてループ制御装置121Aに対して両かご運転モード切替指令が出力されたとすると、ループ制御装置121Aの運転モード切替部122Aが、制御対象のかごループ131Aの運転モードを「両かご運転モード」に制御する。このとき、かごループ131Aを形成するかご132aまたはかご132bが使用不可に設定されていた場合は、当該使用不可が解除されて、使用可能に設定される。この結果、かごループ131Aを形成する第1かご(かご132a)及び第2かご(かご132b)は、何れも使用可能(サービス可能)となる。そして、ステップS108の処理が完了すると、運転モード切替処理は終了する。
一方、ステップS106の判定においてかご方向別の乗客総数の差が閾値以上であった場合は(ステップS106のNO)、かご方向間の交通需要に大きな格差があることを意味し、このときステップS109の処理が行われる。
ステップS109において、運転モード切替判定部107は、ステップS105で選択したかご132を含むかごループ131について、ループ情報111から第1かごの移動方向(かご方向)を判断し、ステップS106において乗客総数が多かった方のかご方向が、第1かごの移動方向に一致するか否かを判定する。そして、乗客総数が多かったかご方向が第1かごの移動方向である場合は(ステップS109のYES)、第1かごの移動方向における交通需要が第2かごの移動方向における交通需要よりも格段に高いことを意味しており、このときステップS110に進む。一方、乗客総数が多かったかご方向が第1かごの移動方向ではなかった場合は(ステップS109のNO)、第2かごの移動方向における交通需要が第1かごの移動方向における交通需要よりも格段に高いことを意味しており、このときステップS112に進む。
ステップS110の処理は、前述したように、第1かごの移動方向における交通需要が第2かごの移動方向における交通需要よりも格段に高い場合に行われる。このとき、運転モード切替判定部107は、ステップS105で選択したかご132のかごループ131を制御するループ制御装置121に対して、第1かごだけを使用可能にして第2かごを使用不可にする第1片かご運転モード切替指令を出力する。具体的には例えば、ステップS105でかご132aが選択されたとした場合、ステップS110において、運転モード切替判定部107は、かごループ131Aを制御するループ制御装置121Aに対して、第1片かご運転モード切替指令を出力する。
そして、ステップS111では、ステップS110で出力された第1片かご運転モード切替指令に従って、ループ制御装置121の運転モード切替部122が、制御対象のかごループ131の運転モードを切り替える。具体的には例えば、ステップS110においてループ制御装置121Aに対して第1片かご運転モード切替指令が出力されたとすると、ループ制御装置121Aの運転モード切替部122Aが、制御対象のかごループ131Aの運転モードを「第1片かご運転モード」に制御する。このとき、かごループ131Aのかご132aが使用不可に設定されていた場合は、当該使用不可が解除されて、使用可能に設定される。一方、かご132bが使用可能に設定されていた場合は、使用不可に設定される。この結果、かごループ131Aでは、第1かご(かご132a)だけが使用可能(サービス可能)となり、第2かご(かご132b)は使用不可(サービス停止)に設定される。そして、ステップS111の処理後、運転モード切替処理は終了する。
一方、ステップS112の処理は、前述したように、第2かごの移動方向における交通需要が第1かごの移動方向における交通需要よりも格段に高い場合に行われる。このとき、運転モード切替判定部107は、ステップS105で選択したかご132のかごループ131を制御するループ制御装置121に対して、第2かごだけを使用可能にして第1かごを使用不可にする第2片かご運転モード切替指令を出力する。具体的には例えば、ステップS105でかご132aが選択されたとした場合、ステップS112において、運転モード切替判定部107は、かごループ131Aを制御するループ制御装置121Aに対して、第2片かご運転モード切替指令を出力する。
そして、ステップS113では、ステップS112で出力された第2片かご運転モード切替指令に従って、ループ制御装置121の運転モード切替部122が、制御対象のかごループ131の運転モードを切り替える。具体的には例えば、ステップS112においてループ制御装置121Aに対して第2片かご運転モード切替指令が出力されたとすると、ループ制御装置121Aの運転モード切替部122Aが、制御対象のかごループ131Aの運転モードを「第2片かご運転モード」に制御する。このとき、かごループ131Aのかご132aが使用可能に設定されていた場合は、使用不可に設定される。一方、かご132bが使用不可に設定されていた場合は、当該使用不可が解除されて、使用可能に設定される。この結果、かごループ131Aでは、第2かご(かご132b)だけが使用可能(サービス可能)となり、第1かご(かご132a)は使用不可(サービス停止)に設定される。そして、ステップS113の処理後、運転モード切替処理は終了する。
以上に説明したように、本実施の形態に係る運転モード切替処理では、かご方向間の交通需要に大きな格差がない場合には、所定のかごループ131の運転モードを両かご運転モードに制御することにより(ステップS106~S108)、交通需要に応じた態様で当該かごループ131による双方向のサービスを提供できるため、対向かご釣合式マルチカーエレベーターであるエレベーター1において、輸送効率やサービス性の向上に期待することができる。
また、本実施の形態に係る運転モード切替処理では、第1かごの移動方向における交通需要が第2かごの移動方向における交通需要よりも格段に高い場合には、所定のかごループ131の運転モードを第1片かご運転モードに制御することにより(ステップS109~S111)、当該かごループ131の第2かごは、交通需要が低い移動方向におけるサービスの提供を停止して、同移動方向における乗場呼びに対応しなくなるため、交通需要が高い移動方向における第1かごの運行状況に影響を与えないようにすることができる。一方で、当該かごループ131の第1かごは、交通需要が高い移動方向において、ペアかごである第2かごによる影響を受けることなくサービスを提供することができる。かくして、対向かご釣合式マルチカーエレベーターであるエレベーター1において、交通需要の格差に応じて運転モードを適切に切り替え、輸送効率やサービス性の向上に期待することができる。
また、本実施の形態に係る運転モード切替処理では、第2かごの移動方向における交通需要が第1かごの移動方向における交通需要よりも格段に高い場合には、所定のかごループ131の運転モードを第2片かご運転モードに制御することにより(ステップS109,S112,S113)、当該かごループ131の第1かごは、交通需要が低い移動方向におけるサービスの提供を停止して、同移動方向における乗場呼びに対応しなくなるため、交通需要が高い移動方向における第2かごの運行状況に影響を与えないようにすることができる。一方で、当該かごループ131の第2かごは、交通需要が高い移動方向において、ペアかごである第1かごによる影響を受けることなくサービスを提供することができる。かくして、対向かご釣合式マルチカーエレベーターであるエレベーター1において、交通需要の格差に応じて運転モードを適切に切り替え、輸送効率やサービス性の向上に期待することができる。
なお、本実施の形態における運転モード切替処理は、図6に例示した処理手順に限定されるものではなく、比較対象とする情報や判定内容等について、適宜、置き換えることができる。
例えば、図6のステップS109では、乗客総数が多かったかご方向が第1かごの移動方向に一致するかを判定したが、ステップS109における別の処理例として、乗客総数が多かったかご方向がステップS102で選択した乗場呼び階の乗場呼び方向に一致するかを判定するようにしてもよい。
このように判定するとき、乗客総数が多かったかご方向が乗場呼び階の乗場呼び方向に一致した場合は、ステップS110に進み、かごループ131を形成する2台のかご132のうち、移動方向が当該乗り場呼び方向である一方のかごだけを使用可能(サービス可能)にし、他方のかごを使用不可(サービス停止)にする、片かご運転モード切替指令を出力する。その後、ステップS111に進む。一方、乗客総数が多かったかご方向が乗場呼び階の乗場呼び方向に一致しなかった場合は、ステップS112に進み、かごループ131を形成する2台のかご132のうち、移動方向が当該乗り場呼び方向である一方のかごを使用不可(サービス停止)にし、他方のかごだけを使用可能(サービス可能)にする、片かご運転モードの運転モード切替指令を出力する。その後、ステップS112に進む。
以上のように処理することにより、上記別の処理例の場合も、図6のステップS109の処理を行った場合と同様に、交通需要の状況に応じて適切な運転モードの切替制御が実現され、サービス性や輸送性能を向上させることができる。
また例えば、図6のステップS106では、異なる移動方向(上昇/下降)の間で乗客数の差を比較判定したが、変形例として、同じ移動方向の間で区間を分けて乗客数の差を判定するようにしてもよい。また、さらに組合せ可能な変形例として、対象とする乗客数の比較範囲を、全ての乗場同士で比較するだけでなく、全ての乗場と一部の乗場とで比較するようにしてもよい。
また例えば、図6のステップS106における比較判定では、エレベーター1における交通需要を判定するパラメータとして乗客数を比較値に用いたが、本実施の形態では、交通需要を判定可能な別のパラメータを比較値に用いるようにしてもよい。具体的には例えば、待ち時間や乗場呼びの発生時間(これらは、合計値、平均値、中央値等を採用できる)、あるいは、乗場呼びの発生頻度や待ち人数等を比較値に用いることができる。詳細な説明は省略するが、待ち時間が長い場合、乗場呼びの発生時間が長い場合、乗場呼びの発生頻度が高い場合、待ち人数が多い場合は、それぞれ交通需要が高いと判定することができる。
(2)第2の実施の形態
第2の実施の形態では、エレベーター制御システム100は、交通需要の偏りの予測に基づいて、かご132(かごループ131)の運転モードを切り替える。以下、第2の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
第2の実施の形態において、記録部105は、日々の各乗場の状況や、各かご132の状況について、移動実績情報115を記録する。例えば、図5に例示したように、移動実績情報115は、乗場別・かご方向別の乗降人数が時間に紐付けられて記録される。この移動実績情報115に記録された乗場別・かご方向別の乗降人数を所定の時間幅で集計することによって、交通需要が偏る時間帯を推定することができる。
第2の実施の形態では、エレベーター制御システム100における所定の機能部(ここでは「運転切替時間帯判定部」と称するが、運転モード切替判定部107であってもよい)が、移動実績情報115に基づいて集計される過去の移動実績を用いて、かご方向別の乗客総数の差が所定の閾値以上となった回数(あるいは、頻度や継続時間等)が、所定の閾値以上となる時間帯を算出する。このようにして運転切替時間帯判定部によって算出された時間帯は、かご方向間で「交通需要が偏る時間帯」を意味する。なお、時間帯には、任意の時間幅を設定することができる。
そして、運転モード切替判定部107は、運転切替時間帯判定部によって算出された「交通需要が偏る時間帯」が開始するときに、エレベーター1の全てのループ制御装置121に対して片かご運転モード切替指令を出力する。片かご運転モード切替指令は、第1片かご運転モード切替指令または第2片かご運転モード切替指令の何れでもよい。この片かご運転モード切替指令に応じて、各ループ制御装置121の運転モード切替部122が、制御対象のかごループ131の運転モードを片かご運転モードに切り替えることにより、かごループの片方だけがサービス可能(使用可能)とされる。
その後、「交通需要が偏る時間帯」が終了すると、運転モード切替判定部107は、エレベーター1の全てのループ制御装置121に対して両かご運転モード切替指令を出力する。この両かご運転モード切替指令に応じて、各ループ制御装置121の運転モード切替部122が制御対象のかごループ131の運転モードを両かご運転モードに切り替えることにより、上記「交通需要が偏る時間帯」で使用不可にされていた片方のかご132もサービス可能(使用可能)に変更される。
第2の実施の形態では、以上のように、「交通需要が偏る時間帯」において片かご運転モードに切り替える制御を行うことにより、交通需要が格段に低い移動方向の呼び応答による影響を低減させ、交通需要が格段に高い移動方向の呼びに対する応答性を高めて輸送効率やサービス性を向上させることができる。かくして、対向かご釣合式マルチカーエレベーターであるエレベーター1における全体的な輸送効率やサービス性の向上にも期待できる。
なお、第2の実施の形態における変形例として、運転切替時間帯判定部が、移動実績情報115に基づいて集計される過去の移動実績に基づいて、片かご運転モードに切り替えるかごループ131の数を任意に決定するようにしてもよい。その場合、運転モード切替判定部107は、「交通需要が偏る時間帯」の開始時に、全てのループ制御装置121に対して片かご運転モード切替指令を出力するのではなく、運転切替時間帯判定部によって決定された数のループ制御装置121に対して片かご運転モード切替指令を出力する。
このような処理を行う場合、交通需要の偏りの度合に応じて、片かご運転モードに切り替えるかごループ131の数を変更するといった柔軟な制御も可能になる。すなわち、交通需要の偏りの予測に基づいて、より適切に運転モードの切替制御が実現され、サービス性や輸送性能をさらに向上させることに期待できる。
(3)第3の実施の形態
第3の実施の形態では、エレベーター制御システム100は、エレベーター1が、図4(B)に例示したような複数のかごループ131を備えて構成される対向かご釣合式マルチカーエレベーターである場合に、前後のかご132の状態や乗場の状況に基づいて、所定のかご132(かごループ131)の運転モードを切り替える。以下、第3の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
第3の実施の形態では、運転モード切替処理において、乗場ペア情報管理部102が管理する乗場ペア情報112及びかご状態管理部103が管理するかご状態情報113に基づいて前後のかご132の状態や乗場の状況を判断し、その判断結果に基づいて所定のかご132(かごループ131)の運転モードを切り替える制御が行われる。その具体的な処理について以下に説明する。
図7は、第3の実施の形態における運転モード切替処理の処理手順例を示すフローチャートである。なお、図7において、図6に例示した第1の実施の形態における運転モード切替処理と共通する処理には同じステップ番号を付しており、その詳しい説明は省略する。
図7に示したように、第3の実施の形態における運転モード切替処理では、ステップS101~S105までは図6と同様の処理が行われる。そして、ステップS105においてペアかごが非サービス中のかご132の1つを選択した後、ステップS201の処理が行われる。以後、具体例として、図4(B)に示したエレベーター1の構成においてかご132aを選択した場合について説明する。
ステップS201において、運転モード切替判定部107は、ステップS105で選択されたかご132aと、前走するかご132c(図4(B)参照)との距離をそれぞれ確認し、当該距離が所定の閾値未満であるか判定する。当該距離が閾値未満であった場合は(ステップS201のYES)、ステップS107に進み、当該距離が閾値以上であった場合は(ステップS201のNO)、ステップS202に進む。かご132aと前走のかご132cとの距離は、各かごに対応するかご状態情報113に記録された「位置」の情報から取得することができる。
ステップS107の処理は、選択されたかご132aと前走のかご132cとの間が詰まっている場合に行われる。このとき、後走のかご132aのサービス性を高めたとしても、前走のかご132cに追いついてしまう可能性が高い。前走のかご132cに追いついてしまうと、対向かご釣合い式マルチカーエレベーターの仕様上の制約により、強制的に移動待ちが発生するため、結果的に輸送効率やサービス性が低下してしまう。そこで、ステップS107において、運転モード切替判定部107は、ステップS105で選択したかご132aのかごループ131Aを制御するループ制御装置121Aに対して、両かご運転モード切替指令を出力する。そして、次のステップS108では、図6のステップS108と同様に、ループ制御装置121Aが、両かご運転モード切替指令に従って、制御対象のかごループ131Aの運転モードを両かご運転モードに制御する。ステップS108の処理後、運転モード切替処理は終了する。
一方、ステップS202の処理は、選択されたかご132aと前走のかご132cとの間に十分な距離が確保されている場合に行われる。このとき、後走のかご132aのサービス性を高めた場合には、前走のかご132cに追いつく可能性は低く、サービス性の向上及び輸送効率の向上に期待できる。そこで、ステップS202以降では、当該サービス区間で後走するかご132(すなわち、ステップS105で選択されたかご132a)によるサービス性を高めるために、かご132aのペアかごであるかご132bを使用不可にする片かご運転モードに切り替えるための処理を行う。
具体的には、まず、ステップS202において、運転モード切替判定部107は、ループ情報111を参照し、ステップS105で選択したかご132aが第1かごであるか否かを判定することによって、サービス性を向上させる余地があるサービス区間のかご方向を判断する。
ステップS202の判定で肯定結果が得られた場合は(ステップS202のYES)、サービス性を向上させる余地があるサービス区間のかご方向が第1かごの移動方向であることを意味するため、ステップS110に進む。例えばステップS105でかご132aが選択されていた場合は、図4(A)のループ情報111を参照すると、第1かごであるため、ステップS110の処理が行われる。一方、ステップS202の判定で否定結果が得られた場合は(ステップS202のNO)、サービス性を向上させる余地があるサービス区間のかご方向が第2かごの移動方向であることを意味し、このときステップS112に進む。
そして、ステップS202からステップS110に進んだ場合は、図6のステップS110と同様に、運転モード切替判定部107が、ステップS105で選択したかご132のかごループ131を制御するループ制御装置121に対して、第1片かご運転モード切替指令を出力する。そして、次のステップS111では、図6のステップS111と同様に、ステップS110の第1片かご運転モード切替指令を受けたループ制御装置121が、制御対象のかごループ131の運転モードを第1片かご運転モードに制御する。この結果、所定のかごループ131において第1かご(すなわち、ステップS105で選択されたかご132)だけが使用可能(サービス可能)とされ、そのペアかごである第2かごは使用不可(サービス停止)に設定される。そして、ステップS111の処理後、運転モード切替処理は終了する。
ステップS202からステップS112に進んだ場合は、図6のステップS112と同様に、運転モード切替判定部107が、ステップS105で選択したかご132のかごループ131を制御するループ制御装置121に対して、第2片かご運転モード切替指令を出力する。そして、次のステップS113では、図6のステップS113と同様に、ステップS112の第2片かご運転モード切替指令を受けたループ制御装置121が、制御対象のかごループ131の運転モードを第2片かご運転モードに制御する。この結果、所定のかごループ131において第2かご(すなわち、ステップS105で選択されたかご132)だけが使用可能(サービス可能)とされ、そのペアかごである第1かごは使用不可(サービス停止)に設定される。そして、ステップS113の処理後、運転モード切替処理は終了する。
以上に説明したように、第3の実施の形態に係る運転モード切替処理では、複数のかごループ131を備えた対向かご釣合式マルチカーエレベーターにおいて、選択された所定のかご132(後走するかご132)と前走のかご132との間に十分な距離が確保されており、後走するかご132にサービス性を向上させる余地があると推測される場合に、後走するかご132のペアかごを使用不可にする片かご運転モードに切り替える制御を実行する。この結果、後走するかご132のペアかごがサービスの提供を停止して乗場呼びに対応しなくなるため、後走するかご132の運行状況に影響を与えないようにすることができ、後走するかご132によるサービス性を高めることができる。かくして、対向かご釣合式マルチカーエレベーターであるエレベーター1において、所定のかご132の近傍状況(所定のかご132が呼び応答する乗場の近傍状況ともいえる)に応じて運転モードを適切に切り替え、輸送効率やサービス性の向上に期待することができる。
なお、第3の実施の形態における運転モード切替処理は、図7に例示した処理手順に限定されるものではなく、比較対象とする情報や判定内容等について、適宜、変形例に置き換えて実行することができる。
具体的には例えば、図7のステップS201における判定は、ステップS105で選択されたかご132の近傍にサービス性を向上させる余地があるか判断するための判定であって、サービス性を向上させる余地があると推定される状況の場合に(ステップS201のNO)、上記かご132のペアかごを使用不可とする片かご運転モードに切り替える処理(ステップS202以降の処理)が行われるが、ステップS201においてNOと判定される判定基準(すなわち、ペアかごを使用不可とする片かご運転モードに切り替える判定基準)について、以下に列挙する判定基準例等(またはそれらの組合せ)に置き換えることが可能である。そして、第3の実施の形態では、これらの判定基準例に置き換えた場合も、対向かご釣合式マルチカーエレベーターであるエレベーター1において、所定のかご132の近傍状況に応じて運転モードを適切に切り替えることができ、輸送効率やサービス性の向上に期待できる。
図7のステップS201でNOと判定される判定基準例について、図4(B)に例示されたエレベーター1の構成においてステップS105でかご132aが選択された場合を用いて第1~第9の判定基準例を列挙する。
第1の判定基準例として、選択されたかご132aと後走するかご132fとの距離が所定の閾値以下であることが挙げられる。この判定基準を満たす場合、後走するかご132fとの間に十分な距離が確保されていないことを意味し、後走するかご132fがかご132aに追いついてしまう可能性がある。かご132aに追いついてしまうと、かご132fは強制的に移動待ちとなるため、輸送効率やサービス性が低下してしまう。このような事態を回避するためには、前走のかご132aのサービス性を高め、かご132aとかご132fとの距離を開かせることが有効である。すなわち、第1の判定基準例を満たす場合には、ペアかご132bを使用不可にする片かご運転モードに切り替えることによる効果が見込まれる。
第2の判定基準例として、選択されたかご132aのペアかご132bの移動方向における乗場呼び数が所定の閾値以下であることが挙げられる。この判定基準を満たす場合、ペアかご132bの移動方向における交通需要が低い(交通需要に偏りが生じている)と推測されるため、ペアかご132bを使用不可にする片かご運転モードに切り替えることによる効果が見込まれる。
第3の判定基準例として、選択されたかご132aのペアかご132bの乗場呼びについて、乗場呼び発生からの経過時間(呼び経過時間)の合計値、平均値、最大値、最小値等の何れかが所定の閾値以下であることが挙げられる。この判定基準を満たす場合、ペアかご132bの移動方向において、慢性的に長期の待ち時間が発生しておらず、ペアかご132bの移動方向における交通需要が低い(交通需要に偏りが生じている)と推測されるため、ペアかご132bを使用不可にする片かご運転モードに切り替えることによる効果が見込まれる。
第4の判定基準例として、選択されたかご132aのペアかご132bの乗場呼び階の間隔が閾値以上であることが挙げられる。この判定基準を満たす場合、ペアかご132bの移動方向において、乗場呼びの応答のために複数のかご132を提供する必要性が低く、ペアかご132bの移動方向における交通需要が低い(交通需要に偏りが生じている)と推測されるため、ペアかご132bを使用不可にする片かご運転モードに切り替えることによる効果が見込まれる。
第5の判定基準例として、選択されたかご132aのかご呼び数が所定の閾値以上であることが挙げられる。この判定基準を満たす場合、かご132aがそれぞれのかご呼びに応答して乗場に停止することから、後続のかご132に追いつかれてかご間の距離が小さくなる可能性がある。したがってこのような場合は、かご132aのサービス性を向上させることによって、全体の輸送効率やサービス性の向上に期待できるため、ペアかご132bを使用不可にする片かご運転モードに切り替えることが有効である。
第6の判定基準例として、選択されたかご132aの移動方向における乗り場呼び数が所定の閾値以上であることが挙げられる。この判定基準を満たす場合、かご132aの移動方向における交通需要が高い(交通需要に偏りが生じている)と推測されるため、ペアかご132bを使用不可にする片かご運転モードに切り替えることによる効果が見込まれる。
第7の判定基準例として、選択されたかご132aの移動方向における乗場呼び階の間隔が閾値以上であることが挙げられる。この判定基準を満たす場合、かご132aの移動方向において、各乗場呼びに応答する複数のかご132の間隔も大きいことが推測される。したがって、かご132aのサービス性を向上させることによって、全体の輸送効率やサービス性の向上に期待できるため、ペアかご132bを使用不可にする片かご運転モードに切り替えることが有効である。
第8の判定基準例として、選択されたかご132aの乗場呼びについて、乗場呼び発生からの経過時間(呼び経過時間)の合計値、平均値、最大値、最小値等の何れかが所定の閾値以上であることが挙げられる。この判定基準を満たす場合、かご132aの移動方向において、長期の待ち時間が発生しており、かご132aの移動方向における交通需要が高い(交通需要に偏りが生じている)と推測されるため、ペアかご132bを使用不可にする片かご運転モードに切り替えることによる効果が見込まれる。
第9の判定基準例として、選択されたかご132aの乗車率が所定の閾値以上であることが挙げられる。乗車率の算出方法は特に限定されないが、例えば、「荷重/積載量」、「乗客数/定員数」、「乗客体積/かご容積」、または「総乗客面積/かご床面積」等によって算出することができる。この判定基準を満たす場合、かご132aが混雑しており、かご132aによる乗場停止が行われる間に、後続のかご132に追いつかれてかご間の距離が小さくなる可能性がある。したがってこのような場合は、かご132aのサービス性を向上させることによって、全体の輸送効率やサービス性の向上に期待できるため、ペアかご132bを使用不可にする片かご運転モードに切り替えることが有効である。
また、上記の各判定基準例は任意に組み合わせてもよく、さらにこのとき、組み合わせる要素に係数を乗じて重みを付けて算出した結果を判定する等してもよい。
(4)第4の実施の形態
第4の実施の形態では、エレベーター制御システム100は、エレベーター1を利用する乗客の特性(乗客特性)に応じて、かご132(かごループ131)の運転モードを切り替える。以下、第4の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
第4の実施の形態に係るエレベーター制御システム100によれば、カードキーや管理者操作等を契機として、乗客の乗客特性に応じた運転モードへの切替が行われ、特に、特定の乗客特性に該当する場合には、当該乗客を輸送するかご132のペアかごを使用不可にする片かご運転モードに切り替えられる。乗客特性の判断は、運転モード切替判定部107が乗客特性情報管理部106に管理された乗客特性情報116を参照することによって行われる。
図8は、乗客特性情報の具体例を説明するための図である。前述したように、乗客特性情報116は、乗客の特性に対応する運転モードを示す情報であって、乗客特性情報管理部106によって管理される。一例として図8の場合、乗客特性情報116は、乗客特性の一覧がまとめられた乗客特性一覧1161と、運転モードの一覧がまとめられた運転モード一覧1162とを備えて構成され、それぞれの乗客特性と対応する運転モードとが紐付けられている。
図8に示された対応付けのいくつかについて、具体的に説明する。例えば、図8において、「VIP」という乗客特性は、片かご運転モードのうち、ロビー階を出発階として応接階を到着階とする「急行運転1」という運転モードに対応付けられている。なお、急行運転は、乗場(出発階、到着階)が限定されて運行される直通の運転モードを意味する。また、「急病人」という乗客特性は、任意の階を出発階としてロビー階を到着階とする「急行運転2」の片かご運転モードに対応付けられている。全ての対応付けについての説明は省略するが、図8に示した乗客特性情報116によれば、様々な乗客特性に応じて、予め様々な運転モードが用意されていることが分かる。なお、乗客特性情報116において、乗客特性と対応付けされる運転モード(運転モード一覧1162)は、図8の例に限定されるものではないが、第4の実施の形態による格別な効果を得るためには、両かご運転モードと、乗場を限定しない通常の片かご運転モード(例えば、通常運転1)と、乗場が限定された特別な片かご運転モード(例えば、急行運転1~4)とが少なくとも含まれることが好ましい。
以上のように、第4の実施の形態では、特定の乗客特性の利用時には、エレベーター1の運転モードを片かご運転モードに切り替えることができる。片かご運転モードに切り替えられた場合は、特定のかご132においてペアかごの呼び応答による影響をなくすことができるため、対向かご釣合式マルチカーエレベーターにおいて交通状況に基づいて特定のかご132のサービス性を高めることができる。特に、急行運転の片かご運転モードに切り替えられた場合は、特定のかご132によるサービスの提供において途中階への停止がなくなるため、早急に乗客を目的階に輸送したり、他の乗客が乗り込んでくるような状況を回避したりすることができ、輸送効率の向上や、より細かいサービス性の提供を実現することができる。
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施の形態を任意に組み合わせてもよい。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。また、図面に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実施には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。