以下、図面を参照しながら、いくつかの実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示し、符号Xは主走査方向Yと直交する副走査方向Xを示している。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の正面図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を順次前方(副走査方向Xの下流X2側、図2参照)に移動させると共に、主走査方向Yに移動するキャリッジ25に搭載されたインクヘッド40、50、60、70(図2参照)からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよいし、金属製やゴム製等のシートであってもよい。
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体10aと、プリンタ本体10aを支持する脚11とを備えている。プリンタ本体10aは、主走査方向Yに延びている。プリンタ本体10aは、ガイドレール21と、ガイドレール21に係合したキャリッジ25とを備えている。ガイドレール21は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール21は、キャリッジ25の主走査方向Yへの移動をガイドする。キャリッジ25には無端状のベルト22が固定されている。ベルト22は、ガイドレール21の右側に設けられたプーリ23aおよび左側に設けられたプーリ23bに巻き掛けられている。右側のプーリ23aにはキャリッジモータ24が取り付けられている。キャリッジモータ24は、制御装置100と電気的に接続されている。キャリッジモータ24は、制御装置100によって制御される。キャリッジモータ24が駆動するとプーリ23aが回転し、ベルト22が走行する。それにより、キャリッジ25がガイドレール21に沿って主走査方向Yに移動する。このように、キャリッジ25が主走査方向Yに移動することによって、インクヘッド40~70も主走査方向Yに移動する。本実施形態では、ベルト22とプーリ23aとプーリ23bとキャリッジモータ24とが、キャリッジ25およびキャリッジ25に搭載されたインクヘッド40~70を主走査方向Yに移動させるキャリッジ移動機構20の一例である。
キャリッジ25の下方には、プラテン12が配置されている。プラテン12は、主走査方向Yに延びている。プラテン12には記録媒体5が載置される。プラテン12の上方には、記録媒体5を上から押下するピンチローラ31が設けられている。ピンチローラ31は、キャリッジ25より後方に配置されている。プラテン12には、グリットローラ32が設けられている。グリットローラ32は、ピンチローラ31の下方に配置されている。グリットローラ32は、ピンチローラ31と対向する位置に設けられている。グリットローラ32は、フィードモータ33(図3参照)に連結されている。グリットローラ32は、フィードモータ33の駆動力を受けて回転可能に形成されている。フィードモータ33は、制御装置100と電気的に接続されている。フィードモータ33は、制御装置100によって制御される。ピンチローラ31とグリットローラ32との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ32が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。本実施形態では、ピンチローラ31とグリットローラ32とフィードモータ33とが、記録媒体5を副走査方向Xに移動させる搬送機構30の一例である。搬送機構30とキャリッジ移動機構20とは、記録媒体5とキャリッジ25とを相対的に移動させる移動機構を構成している。
図2は、キャリッジ25の記録媒体5と対向する側の面(本実施形態では下面)の構成を示す模式図である。図2に示すように、キャリッジ25の下面には、第1インクヘッド40、第2インクヘッド50、第3インクヘッド60、および第4インクヘッド70が保持されている。キャリッジ25において、第1インクヘッド40~第4インクヘッド70は主走査方向Yに並んで配置されている。
第1インクヘッド40~第4インクヘッド70の4つのインクヘッドは、それぞれ、カラー画像を形成するためのプロセスカラーインクを吐出する。本実施形態にあっては、第1インクヘッド40は、シアンインクを吐出する。第2インクヘッド50は、マゼンタインクを吐出する。第3インクヘッド60は、イエローインクを吐出する。第4インクヘッド70は、ブラックインクを吐出する。ただし、インクヘッドの数は4個に限定されず、また、プロセスカラーインクの色調は何ら限定されない。
図2に示すように、複数のインクヘッド40、50、60、70は、それぞれ、副走査方向Xに並んだ複数のノズルを有している。各インクヘッドの複数のノズルは、副走査方向Xに一列に並んでノズル列を構成している。より詳しくは、第1インクヘッド40は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル41を備え、複数のノズル41はノズル列42を構成している。第2インクヘッド50は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル51を備え、複数のノズル51はノズル列52を構成している。第3インクヘッド60は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル61を備え、複数のノズル61はノズル列62を構成している。第4インクヘッド70は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル71を備え、複数のノズル71はノズル列72を構成している。図2において、インクヘッド40~70には、それぞれ15個のノズルが図示されているが、実際にはさらに多数(例えば300個)のノズルが形成されている。ただし、ノズルの個数は何ら限定されるわけではない。
複数のインクヘッド40~70のノズル列42~72は、それぞれ副走査方向Xに並んだ複数の部分ノズル列に分割されている。第1インクヘッド40について見ると、ノズル列42は、3つの部分ノズル列42a、42b、および42cに分割されている。以下、符号42aで示される部分ノズル列を第1ノズル列42a、符号42bで示される部分ノズル列を第2ノズル列42b、符号42cで示される部分ノズル列を第3ノズル列42c、と称することとすると、第1ノズル列42aは、ノズル41のうち最も副走査方向Xの上流X1側に設けられた5個のノズル41で構成されている。第2ノズル列42bは、ノズル41のうち第1ノズル列42aに属するノズル41の次に副走査方向Xの上流X1側に設けられた5個のノズル41で構成されている。第3ノズル列42cは最も副走査方向Xの下流X2側に設けられた5個のノズル41で構成されている。第1ノズル列42a、第2ノズル列42b、および第3ノズル列42cのノズル41の数は同数(ここでは5個)である。そこで、第1ノズル列42a、第2ノズル列42b、および第3ノズル列42cの副走査方向Xについての長さは等しい。他のインクヘッド50~70も、第1インクヘッド40と同様のノズル列構成となっている。具体的には、第2インクヘッド50においては、ノズル列52は、第1ノズル列52a、第2ノズル列52b、および第3ノズル列52cに分割されている。第3インクヘッド60においては、ノズル列62は、第1ノズル列62a、第2ノズル列62b、および第3ノズル列62cに分割されている。第4インクヘッド70においては、ノズル列72は、第1ノズル列72a、第2ノズル列72b、および第3ノズル列72cに分割されている。上記すべてのノズル列において、属するノズルの数は同数(5個)である。従って、その副走査方向Xに関する長さは同じである。また、第1インクヘッドの第1ノズル列42a、第2インクヘッドの第1ノズル列52a、第3インクヘッドの第1ノズル列62a、および第4インクヘッドの第1ノズル列72aは、副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。第2ノズル列および第3ノズル列についても同様である。なお、上記ノズル列の分割は制御上のものであって、機構上の差異があってのものではない。
第1インクヘッド40~第4インクヘッド70の内部には、圧電素子等を備えたアクチュエータ(図示せず)が設けられている。アクチュエータは、制御装置100と電気的に接続されている。アクチュエータは、制御装置100によって制御される。アクチュエータが駆動することによって、第1インクヘッド40の複数のノズル41、第2インクヘッド50の複数のノズル51、第3インクヘッド60の複数のノズル61、第4インクヘッド70の複数のノズル71から記録媒体5に向かってインクが吐出される。
第1インクヘッド40、第2インクヘッド50、第3インクヘッド60、および第4インクヘッド70は、それぞれ、図示しないインク供給路によって、図示しないインクカートリッジと連通されている。インクカートリッジは、例えばプリンタ本体10aの右端部に着脱可能に配置されている。なお、インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよいし、水性染料インク、あるいは、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。
図1に示すように、プリンタ10は、ヒータ35を備えている。ヒータ35は、プラテン12の下方に設けられている。ヒータ35は、グリットローラ32より前方に配置されている。ヒータ35は、プラテン12を加熱する。プラテン12が加熱されることによって、プラテン12上に配置されている記録媒体5および記録媒体5に着弾したインクが加熱され、インクの乾燥が促進される。ヒータ35は、制御装置100に電気的に接続されている。ヒータ35の加熱温度は、制御装置100によって制御される。
図1に示すように、プリンタ本体10aの右端部には、操作パネル150が設けられている。操作パネル150には、機器状態を表示する表示部と、ユーザーによって操作される入力キー等が設けられている。操作パネル150の内側には、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置100が収容されている。図3は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図3に示すように、制御装置100は、フィードモータ33、キャリッジモータ24、ヒータ35、第1インクヘッド40、第2インクヘッド50、第3インクヘッド60、第4インクヘッド70とそれぞれ通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。制御装置100は、変換部101と、モード選択部102と、画質設定部103と、通常印刷制御部104と、高密度印刷制御部110と、抽出部120とを備えている。
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ本体10aの内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ本体10aの外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ本体10aと通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
変換部101は、画像データをインクドットのパターンに変換する、所謂スクリーン処理を行う部位である。インクジェットプリンタによる印刷画像は、各プロセスカラーインクのインクドットの集合体として構成されている。本実施形態に係るプリンタ10においては、画像はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色からなるインクドットのパターンに変換される。変換部101は、プリンタ本体10aに備えられていてもよいし、あるいは外部のコンピュータ等に備えられていてもよい。なお、以下の説明においては、変換部101で生成されるインクドットの集合体を、適宜、「インクドット全体」と称し、そのうち特定の色のインクのインクドットの集合体を、例えば「シアンインクのインクドット全体」等と称する。
モード選択部102は、印刷方法が選択される部位である。本実施形態では、印刷モードは「通常印刷モード」と「高密度印刷モード」とに区別される。通常印刷モードでは、プリンタ10は、変換部101で生成されたインクドットのパターンをそのまま記録媒体5上に形成する。通常印刷モードは、公知のプリンタにおいて通常行われる印刷を実行するモードである。高密度印刷モードでは、プリンタ10は、変換部101で生成されたインクドットを一部重複させたインクドットのパターンを記録媒体5上に形成する。本実施形態では、それぞれインクドット全体の一部または全部からなる3層の印刷層を記録媒体5上に重ねて印刷する。その際、少なくとも一部のインクドットを同じ位置に重ねて形成させることによって、印刷密度を高密度にする。以下では、上記3層の印刷層のそれぞれを、下から第1印刷層、第2印刷層、第3印刷層と称する。高密度印刷モードの詳細については後述する。なお、本実施形態に係るモード選択部102においては、印刷モードの選択は、操作パネル150や外部コンピュータの表示装置などに表示された操作画面を介して作業者が行うが、それに限られない。例えば、印刷モードは印刷データに予め組み込まれ、モード選択部102によって自動的に選択されるようになっていてもよい。
画質設定部103は、高密度印刷モードにおける印刷画質のパラメータが設定される部位である。画質設定部103は、抽出率設定部103aを備えている。抽出率設定部103aでは、変換部101によって生成されたインクドット全体に対する、第1~第3印刷層を形成する各インクドット群の比率が設定される。以下では適宜、第1印刷層を形成するインクドット群を「第1ドット群」、第2印刷層を形成するインクドット群を「第2ドット群」、第3印刷層を形成するインクドット群を「第3ドット群」と呼ぶこととする。本実施形態では、印刷層は第1~第3印刷層の3層であるため、第1抽出率(第1印刷層に対応)、第2抽出率(第2印刷層に対応)、第3抽出率(第3印刷層に対応)の3つの抽出率が設定される。本実施形態における抽出率は、インク全色で共通である。抽出率の設定の詳細については後述する。なお、画質設定部103では、画質に関する他のパラメータも調整されてもよいが、本実施形態の説明においては省略する。
通常印刷制御部104は、通常印刷モードにおける印刷動作を制御する部位である。通常印刷制御部104は、キャリッジモータ24、フィードモータ33、第1インクヘッド40、第2インクヘッド50、第3インクヘッド60、および第4インクヘッド70に接続され、それらを制御することで通常の印刷を行う。また、通常印刷制御部104は、ヒータ35に接続され、ヒータ35の温度を制御することで、印刷後のインクの乾燥を制御する。
高密度印刷制御部110は、高密度印刷モードにおける印刷動作を制御する部位である。高密度印刷制御部110も、キャリッジモータ24、フィードモータ33、第1インクヘッド40、第2インクヘッド50、第3インクヘッド60、第4インクヘッド70、およびヒータ35に接続され、それらを制御することで高密度印刷を行う。高密度印刷制御部110は、第1印刷制御部110aと、第2印刷制御部110bと、第3印刷制御部110cとを備えている。
第1印刷制御部110aは、高密度印刷モードにおいて、第1印刷層の印刷を制御する部位である。第1印刷層は、高密度印刷モードにおいて重ねて形成される印刷層のうち最も下層に形成される印刷層である。第1印刷層を構成する「第1ドット群」は、3つのノズル列のうち最も副走査方向Xの上流X1側に配置されている第1ノズル列のノズルから吐出される各色のインクによって形成される。そこで、第1印刷制御部110aは、第1インクヘッド40の第1ノズル列42aに属するノズル41からのシアンインクの吐出を制御する。また、第1印刷制御部110aは、第2インクヘッド50の第1ノズル列52aに属するノズル51からのマゼンタインクの吐出を制御する。同様に、第1印刷制御部110aは、第3インクヘッド60の第1ノズル列62aに属するノズル61からのイエローインクの吐出を制御する。また、第4インクヘッド70の第1ノズル列72aに属するノズル71からのブラックインクの吐出を制御する。第1印刷制御部110aは、上記インクの吐出制御に加えて、キャリッジモータ24の駆動を制御することによって、キャリッジ25の移動を制御する。上記制御の詳細については後述する。
第2印刷制御部110bは、高密度印刷モードにおいて、第2印刷層の印刷を制御する部位である。第2印刷層は、高密度印刷モードにおいて重ねて形成される印刷層のうち第1印刷層の直上に形成される印刷層である。第2印刷層を構成する「第2ドット群」は、第2ノズル列のノズルから吐出される各色のインクによって形成される。詳しくは、第2印刷制御部110bは、第1インクヘッド40の第2ノズル列42bに属するノズル41からのシアンインクの吐出を制御し、第2インクヘッド50の第2ノズル列52bに属するノズル51からのマゼンタインクの吐出を制御する。また、第3インクヘッド60の第2ノズル列62bに属するノズル61からのイエローインクの吐出を制御し、第4インクヘッド70の第2ノズル列72bに属するノズル71からのブラックインクの吐出を制御する。第2印刷制御部110bは、上記インクの吐出制御に加えて、キャリッジモータ24の駆動を制御することによって、キャリッジ25の移動を制御する。
第3印刷制御部110cは、高密度印刷モードにおいて、第3印刷層の印刷を制御する部位である。第3印刷層は、高密度印刷モードにおいて重ねて形成される印刷層のうち第2印刷層の直上、つまり最も上層に形成される印刷層である。第3印刷層を構成するインクドットは、第3ノズル列のノズルから吐出される各色のインクによって形成される。詳しくは、第3印刷制御部110cは、第1インクヘッド40の第3ノズル列42cに属するノズル41からのシアンインクの吐出を制御し、第2インクヘッド50の第3ノズル列52cに属するノズル51からのマゼンタインクの吐出を制御する。また、第3インクヘッド60の第3ノズル列62cに属するノズル61からのイエローインクの吐出を制御し、第4インクヘッド70の第3ノズル列72cに属するノズル71からのブラックインクの吐出を制御する。第3印刷制御部110cは、上記インクの吐出制御に加えて、キャリッジモータ24の駆動を制御することによって、キャリッジ25の移動を制御する。
抽出部120は、変換部101で生成された各インクのインクドットのデータを受けて、各インクのインクドットから、「第1ドット群」~「第3ドット群」を抽出する部位である。本実施形態に係る抽出部120は、4色のインク×3層の印刷層のそれぞれに対応する12個の抽出部を備えている。第1抽出部121は、シアンインクの「第1ドット群」~「第3ドット群」を抽出する。図3に示されるように、第1抽出部121は、さらに第1-1抽出部121aと、第1-2抽出部121bと、第1-3抽出部121cとを備えている。第1-1抽出部121aは、シアンインクのインクドット全体から、シアンインクの「第1ドット群」を抽出する。第1-2抽出部121bは、シアンインクのインクドット全体から、シアンインクの「第2ドット群」を抽出する。第1-3抽出部121cは、シアンインクのインクドット全体から、シアンインクの「第3ドット群」を抽出する。シアンインク以外の色のインクについても同様である。第2抽出部122は、マゼンタインクの「第1ドット群」~「第3ドット群」を抽出する。第2抽出部122のうち第2-1抽出部122aは、マゼンタインクの「第1ドット群」を抽出する。第2-2抽出部122bは、マゼンタインクの「第2ドット群」を抽出する。第2-3抽出部122cは、マゼンタインクの「第3ドット群」を抽出する。同様に、第3抽出部123は、イエローインクの「第1ドット群」~「第3ドット群」を抽出する。第3抽出部123のうち第3-1抽出部123aは、イエローインクの「第1ドット群」を抽出する。第3-2抽出部123bは、イエローインクの「第2ドット群」を抽出する。第3-3抽出部123cは、イエローインクの「第3ドット群」を抽出する。また、第4抽出部124は、ブラックインクの「第1ドット群」~「第3ドット群」を抽出する。第4抽出部124のうち第4-1抽出部124aは、ブラックインクの「第1ドット群」を抽出する。第4-2抽出部124bは、ブラックインクの「第2ドット群」を抽出する。第4-3抽出部124cは、ブラックインクの「第3ドット群」を抽出する。各色の各ドット群を抽出する方法については後述する。
通常印刷モードによる印刷(通常印刷)は、以下のように実施される。通常印刷において、通常印刷制御部104は、キャリッジモータ24を駆動してキャリッジ25を主走査方向Yに移動させるとともに、アクチュエータを駆動して第1インクヘッド40~第4インクヘッド70からインクを吐出させ、記録媒体5上に各色のインクを着弾させる。また、通常印刷制御部104は、記録媒体5が順次前方F(副走査方向Xの下流X2側)に送り出されるように、フィードモータ33を制御する。フィードモータ33に送り出された記録媒体5上のインクは、順次ヒータ35によって加熱され乾燥される。通常印刷制御部104は、例えば、記録媒体5が1回前方Fに送り出されるまでに、キャリッジ25を主走査方向Yに1回または複数回移動させる。
ところで、上記通常印刷においては、記録媒体5上における各インクドットの形成位置は、それぞれ異なっている。言い換えれば、各インクドットの形成位置には、1つのインクドットだけが形成され、その状態におけるインクドットの密度が通常印刷モードにおけるインクドットの密度である。画像データの解像度を上げる(画素を細かくする)ことによってインクドットの密度を上げることはできるが、その限界はプリンタ10が実現できる解像度の範囲内である。画像データの解像度を高く設定したときには、プリンタ10は、所謂マルチパス印刷などの方法によって、設定された解像度の印刷を実施する。しかしながら、印刷される画像や記録媒体の種類などによっては、プリンタ10の解像度よりも高密度にインクドットが配置された印刷が要望される場合があり得る。
本発明の発明者は、上記のような高密度印刷のニーズに対し、同じ位置に複数のインクドットを重ねて着弾させる方法を考案した。例えば、上記方法は、本実施形態のように、それぞれ所定の抽出率で抽出された3層の印刷層を重ねて形成することで実現される。例えば、第1印刷層、第2印刷層、第3印刷層にそれぞれ50%の抽出率が設定されている場合、インクドット全体の150%に相当するインクドットが記録媒体5上に形成される。そのうち100%を超える分、つまり50%分は、他のインクドットに重複して形成される。第1印刷層を形成する「第1ドット群」、第2印刷層を形成する「第2ドット群」、第3印刷層を形成する「第3ドット群」のそれぞれは、インクドット全体にマスクを掛けることによって抽出された。
上記方法によって印刷される印刷成果物によれば高密度の画像が得られたが、一方で、次のような問題が起こる場合があった。即ち、重複分のインクドットを抽出する際の抽出パターンが印刷成果物上で模様として見えてしまうことがあった。上記の例で言えば、100%に対する超過分50%が、印刷成果物上で模様として見えてしまうことがあった。これは画像を構成するインクドットの一部だけが重複しているためである。あるいは、画像を構成するインクドットの一部において重複の回数が多い(例えば、一部のインクドットは3回重ねられ、他のインクドットは2回重ねられている場合など)ためである。
そこで、本実施形態に係るプリンタ10は、インクの色と印刷層との組み合わせ毎に抽出部を備え、それぞれ独立したマスクで各「ドット群」を抽出できるように構成されている。これまでの方法では、例えば、「第1ドット群」は、インクドット全体から所定のマスクによって抽出されていた。そして、前述のように、その方法では、抽出の際のマスクパターンが模様として見えてしまうことがあった。しかし、本実施形態に係るプリンタ10は、「第1ドット群」の中においても、インクの色ごとに異なるマスクパターンでインクドットを抽出できる。そこで、例えば、1つのインクの「第1ドット群」の抽出においてマスクパターンが模様として見られたとしても、別のインクの「第1ドット群」の抽出において別のマスクパターンのマスクを使用すれば、画像全体としては模様の発生を抑えることができる。
なお、高密度印刷モードにおいては、各インクの「第1ドット群」、「第2ドット群」、および「第3ドット群」の抽出率の合計は100%を超えるように設定される。言い換えれば、各インクの「第1ドット群」、「第2ドット群」、および「第3ドット群」のインクドットは、合わせると各インクのインクドット全体を含み、かつ、少なくとも一部が重複している。
以下に、本実施形態における高密度印刷のプロセスについて説明する。高密度印刷を実施するにあたっては、まず印刷モードと画質の設定が行われる。図4は、本実施形態に係る印刷モードおよび画質の設定画面の一例である。図4の設定画面は、モード選択部102および画質設定部103によって、操作パネル150やコンピュータの表示装置などに表示される。モード選択部102は、図4の設定画面において、第1ラジオボタンRB1を備えている。第1ラジオボタンRB1では、印刷モードの選択が行われる。図4に示されるように、第1ラジオボタンRB1は、「通常印刷」および「高密度印刷」の2種類の印刷モードから1つの印刷モードを択一的に選択可能に構成されている。図4に示す例では、「高密度印刷」が選択されている。
画質設定部103は、図4の設定画面において、第2ラジオボタンRB2を備えている。図4に示されるように、第2ラジオボタンRB2は、A、B、C、D、Eの5種類の画質を択一的に選択可能に構成されている。図4に示す例では、「画質A」が選択されている。本実施形態に係る画質設定部103では、画質A~Eは画質設定部103の内部において予めパラメータ設定されており、ユーザーは所望の画質を選択するようになっている。画質A~Eには、例えば、「鮮明」、「ソフト」などの画質の特徴を表す名称が付されている。
図5は、画質設定部103における内部パラメータの設定画面の一例を示す図である。本実施形態に係る内部パラメータ設定画面は、ユーザーが通常操作できないエリアに作成されている。ただし、これは、内部パラメータをユーザーが操作できる実施形態を排除するものではない。図5に示されるように、内部パラメータ設定画面では、第1抽出率RP1~第3抽出率RP3が設定されている。例えば、画質Aにおいては、第1抽出率30%、第2抽出率50%、第3抽出率50%に設定されている。
画質Aにおける各「ドット群」は、各インクのインクドット全体から抽出される。例えば、シアンインクのインクドットが画像全体で10000個であったとすると、「第1ドット群」に属するシアンインクのインクドットは、その30%に当たる3000個である。同じように、「第2ドット群」のシアンインクは5000個、「第3ドット群」のシアンインクは5000個である。また、例えば、マゼンタインクのインクドットが画像全体で20000個であったとすると、「第1ドット群」に属するマゼンタインクのインクドットは、その30%に当たる6000個である。「第2ドット群」のマゼンタインクは10000個、「第3ドット群」のマゼンタインクは10000個である。イエローインク、ブラックインクについても同様である。これら「ドット群」の抽出は、インク色と「ドット群」の各組み合わせに紐づけられたマスクによって行われる。
上記各マスクは、例えば、ディザマスクである。ディザマスクは、ディザ法によって一部のインクドットを抽出するマスクである。ディザ法は、疑似階調表現アルゴリズムの1つである。ディザ法では、印刷領域内の微小な領域において画像データのインク値が定められた閾値を超えるとき、当該領域におけるインクドットをONにする。逆に、画像データのインク値が定められた閾値を下回るとき、インクドットをOFFにする。例えば、最も単純な2値ディザリングでは、画像データは1つの閾値を境にON領域とOFF領域に分けられる。そこで、2値ディザリングによるディザマスクを掛けた画像は、ある程度元画像の特徴を残しつつ画素数の少ない粗い画像となる。ただし、ディザ法は2値ディザリングには限られない。例えば、ディザ法には、閾値が割り当てられたマトリクスを使う組織的ディザ法や、閾値が一定範囲でランダムに設定されるランダムディザ法などがある。ディザマスクには抽出率が設定されている。本実施形態の12個のマスクは互いに独立しているが、抽出率に関しては、4色のインクの「第1ドット群」の間、4色のインクの「第2ドット群」の間、4色のインクの「第3ドット群」の間で共通である。これは、各印刷層においても元画像の色バランスを変更しないためである。
上記のようなディザマスクによるインクドットの抽出は、抽出に人為的な不自然さが残らないように行われるものである。つまり、ディザマスクによれば、抽出されるインクドットの位置に一定のばらつきが見込まれ、偏った抽出が起こりにくい。しかしながら、上記したように、それでも抽出されたインクドットにパターン性が見えてしまうことがある。本実施形態に係るプリンタ10によれば、インクの色ごとにディザマスクのパターンを変えることによって、インクドットの抽出パターンが視認されるのを抑制することができる。
本実施形態に係るプリンタ10においては、画質設定部103の内部パラメータ設定画面は通常は操作しないため、画像の模様を抑えるように設定された画質が予め用意されている。抽出部120の各抽出部121a~124cは、選択された画質に基づいて、各色インクの各「ドット群」を抽出する。
図6は、図4の第2ラジオボタンRB2において画質Aを選択した場合に抽出される「第1ドット群」を示す図である。図7は、単一のマスクパターンで抽出を行った場合の「第1ドット群」を示す比較用の図である。図6、図7には100個のポイントが図示されている。上記100個のポイントは、元画像においてプロセスカラーインクのインクドットが形成される記録媒体5上の位置を示している。つまり、上記100個のポイントは、インクドット100%分に相当する。また、説明の単純化のため、元画像においては、図6、図7の各ポイントにはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクドットが重ねて形成されるものとする。実際の印刷では、各インクドットは同じ位置ではなく近接した位置に着弾し、また、4色全てがその近傍に着弾するとは限らない。
図7において、第1ドット群D1は、ディザマスクによって抽出された30個のポイントに構成されている。第1ドット群D1は、図7において、黒丸で示されている。図7の第1ドット群D1は、4色のインクのインクドットが重なって形成されている。白丸は、第1ドット群D1として抽出されなかったポイント(=第1印刷層の印刷時にはインクが吐出されないポイント)である。実際の吐出ではこれほど極端ではないが、図7には、第1ドット群D1が図の右上から左下に流れる模様を描いている様子を見ることが可能である。
一方、前述したように、図6は、本実施形態に係るプリンタ10で第1印刷層を印刷する場合の模式図である。図6において、符号Dc1は、「シアンインクの第1ドット群」を表している。シアンインクの第1ドット群Dc1は、ハッチングされた丸で示されている。また、符号Dm1は、「マゼンタインクの第1ドット群」を表している。マゼンタインクの第1ドット群Dm1は、三角で示されている。同様に、イエローインクの第1ドット群Dy1は二重丸で表され、ブラックインクの第1ドット群Dk1は四角で表されている。図6でも、複数の「第1ドット群」が重複するポイントは黒丸で表され、符号Do1で表されている。
本実施形態においては、「第1ドット群」のインクドットを抽出する各マスクパターンは、「第1ドット群」内での重複率が最小になるように設定される。「第1ドット群の重複率」は、「第1ドット群」のインクドット全体のうち形成位置が重なっているインクドットの割合である。最小の重複率は、抽出率に従って算出される。本実施形態では、第1抽出率RP1が設定されると、「第1ドット群」のインクドット間での位置の重複が最も少なくなるように、各色のマスクパターンが自動設定される。「第2ドット群」、「第3ドット群」についても同様である。
図8A、図8B、図8C、図8Dは、図6に示された「第1ドット群」の配置が完成するまでのプロセスを示す図である。そのうち図8Aが最初の時点を表し、図8B、図8C、図8Dと続く。図8Dで示された時点の次の時点が、図6の時点(完成形)である。図8Aでは、シアンインクの第1ドット群Dc1が抽出されている。ただし、これは1つの例であって、他の色の「第1ドット群」から抽出が開始されても構わない。図8Aにおいて、シアンインクの第1ドット群Dc1が抽出されるポイントの数は25ポイントである。これは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色に、まずは重複なく100個のポイントを等分するためである。図8Aに示されるように、シアンインクの第1ドット群Dc1の25個のインクドットは、図7と類似の模様をなしている。
図8Bは、図8Aの次の時点を示す図であって、マゼンタインクの第1ドット群Dm1が抽出されているときの模式図である。マゼンタインクの第1ドット群Dm1は、シアンインクの第1ドット群Dc1が抽出されなかったポイントの中から抽出される。その数は25個である。マゼンタインクの第1ドット群Dm1を抽出するマスクのマスクパターンは、このように、シアンインクの第1ドット群Dc1が抽出されなかったポイントから優先的に抽出を行うマスクパターンである。マゼンタインクの第1ドット群Dm1の抽出の結果、図8Bには、シアンインクの第1ドット群Dc1が25個、マゼンタインクの第1ドット群Dm1が25個、それぞれ図示されている。マゼンタインクの第1ドット群Dm1の25個のインクドットは、図8Bの左上から右下に流れる模様を描いている。
図8C、図8Dにおいても同様の処理が行われる。図8Cでは、イエローインクの第1ドット群Dy1の抽出が行われている。図8Dでは、ブラックインクの第1ドット群Dk1の抽出が行われている。いずれの図においても、各色のインクドット同士が重複しないように、インクドットが抽出される。図8Dの時点で、100個のポイント全てが、いずれかの「第1ドット群」の形成ポイントとして抽出される。
図4に示されたように、画質Aの第1抽出率RP1は30%である。しかし、図8Dに示された時点の各プロセスカラーインクの抽出率は25%である。そこで、各色につき残り5%のインクドットが、さらに抽出される。既に100個のポイント全ては、いずれかの「第1ドット群」に属しているので、残り5%分の抽出は重複抽出である。重複の形態は限定されないが、本実施形態では、上記残り5%は、4色の重複によるものとする。即ち、4色全てが重複するポイントが5個抽出され、上記抽出により残り5%が補充される。上記5個のポイントには、4色のインクドットが重なって形成された第1ドット群Do1が形成される。補充後の状態、つまり「第1ドット群」抽出の完成形を示す図が図6である。
図6に示されるように、本実施形態に係るプリンタ10によって抽出された第1ドット群D1~Dk1は、図7に示されるものに比べて模様を感じさせないものになっている。このように、各インク間でできるだけ「第1ドット群」として抽出されるインクドットの重複を避けることによって、抽出に係るパターン性は目立たなくなり、第1印刷層に印刷される画像の模様も抑えられる。
上記の場合の重複率RO1(第1重複率RO1)は、合計120個(30個×4色)中20個(5個×4色)のインクドットが重複しているので、約17%である(図5参照)。プロセスカラーインクが4色であり、第1抽出率RP1が30%の場合、最小の第1重複率RO1は、上記のように約17%と一律に決定される。なお、図5において画質Bの第1抽出率は20%に設定されているが、プロセスカラーインクが4色の場合、4色の「第1ドット群」の合計は80%にとどまるため、第1重複率RO1は0%である。
「第1ドット群」の抽出に続いては「第2ドット群」の抽出が行われる。「第2ドット群」と「第1ドット群」の重複関係には様々な関係があってよいが、本実施形態では、「第2ドット群」の抽出は、「第1ドット群」の抽出結果を考慮せず、独立に行われる。これは、それぞれの印刷層において「ドット群」の抽出のパターン性を目立たなくすれば、全体としても「ドット群」抽出の際のパターンが目立たないという知見に基づく。「第3ドット群」についても同様であり、「第3ドット群」の抽出は、「第1ドット群」の抽出、「第2ドット群」の抽出のいずれに対しても独立に行われる。上記方法は、模様の抑制効果を有しつつ処理としては単純であり、処理に係る負荷が比較的小さい。
ただし、「第2ドット群」および「第3ドット群」の抽出方法は上記した方法に限られず、例えば下記のような条件が付加されてもよい。即ち、「第1ドット群」の抽出においてインクドットを重複させた5個のポイントDo1については、「第2ドット群」の抽出においてインクドットを重複させないという条件が付加されてもよい。この方法によれば、模様を抑える効果がさらに期待できる。なお、「第3ドット群」についても同様であり、「第3ドット群」の抽出においては、ポイントDo1、「第2ドット群」における重複ポイントの両方を避けながら、重複ポイントが抽出される。
以下では、本実施形態に係るプリンタ10において、「第1ドット群」~「第3ドット群」の形成位置が決定された後の印刷プロセスについて簡単に説明する。各インクの「第1ドット群」に係るインクは、各インクヘッド40、50、60、70の第1ノズル列42a、52a、62a、72aのノズル41、51、61、71から吐出される。図2に示されているように、4つの第1ノズル列42a、52a、62a、72aは、それぞれが属するノズル列42、52、62、72において最も副走査方向Xの上流X1側に設けられている。また、各インクの「第2ドット群」に係るインクは、各インクヘッド40、50、60、70の第2ノズル列42b、52b、62b、72bのノズル41、51、61、71から吐出される。4つの第2ノズル列42b、52b、62b、72bは、それぞれが属するノズル列42、52、62、72において第1ノズル列42a、52a、62a、72aの次に副走査方向Xの上流X1側に設けられている。記録媒体5は、後方Rrから前方Fに向かって(副走査方向Xの上流X1側から下流X2側に向かって)搬送されるので、第1ノズル列42a、52a、62a、72aは、第2ノズル列42b、52b、62b、72bに対して、印刷位置において常に先んじている。そこで、第1ノズル列42a、52a、62a、72aのノズルから吐出されるインクは、それぞれ第2ノズル列42b、52b、62b、72bのノズルから吐出されるインクよりも下に印刷層を形成する。同様にして、第2ノズル列42b、52b、62b、72bのノズルから吐出されるインクは、それぞれ第3ノズル列42c、52c、62c、72cのノズルから吐出されるインクよりも下に印刷層を形成する。本実施形態に係るプリンタ10は、高密度印刷において、上記のような印刷を間欠的に繰り返す。それによって、本実施形態に係るプリンタ10は、記録媒体5を副走査方向Xの上流X1側に戻すことなく高密度印刷を行うことができる。
なお、本実施形態では、高密度印刷における印刷層の数は3層であったが、3層に限定されない。高密度印刷における印刷層の数は2層であってもよく、4層以上であってもよい。従って、ノズル列の分割数も、2個であってもよいし、4個以上であってもよい。
また、各ドット群の中において重複率を最小にするマスクパターンは、上記したマスクパターンに限られない。例えば、4色のインクドットは1ポイントずつ順番に抽出されていってもよい。
(第2実施形態)
第2実施形態は、各「ドット群」の重複率を設定可能に構成された実施形態である。第1実施形態では、各「ドット群」の重複率は、抽出率に基づいて自動的に最小に設定された。しかし、上記のような重複率「最小」が、あらゆる画像において最適条件であるとは限らない。例えば、第1実施形態に係るプリンタ10では、各インクの「ドット群」の位置を最大限分散させるため、部分的に元画像と色バランスが異なる画像が構成される可能性がある。そこで、第2実施形態では、各「ドット群」の重複率を任意に設定可能としたものである。第2実施形態に係るプリンタは、上記を除けば第1実施形態に係るプリンタ10と共通である。そこで、以下の第2実施形態の説明においては、第1実施形態と同じ部材には同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略または簡略化する。
図9は、本実施形態に係る画質の内部パラメータ設定画面を示す図である。本実施形態においても、第1実施形態と同様に、図9の内部パラメータ設定画面は通常ユーザーが操作しないエリアに格納されており、ユーザーは設定済みの画質を選択するようになっている。ただし、これは、ユーザーが設定操作できる他の実施形態を排除するものではない。図9の画質設定画面は、第1抽出率RP1~第3抽出率RP3とともに、第1重複率RO1~第3重複率RO3も設定可能に構成されている。第1重複率RO1~第3重複率RO3の設定は、画質設定部103に備えられた重複率設定部103bにおいて行われる。
例えば、第1抽出率RP1および第1重複率RO1について見ると、図9の内部パラメータ設定画面においては、第1抽出率RP1の設定後、第1重複率の入力ボックスに第1重複率RO1が入力される。このとき入力可能な第1重複率RO1は、第1抽出率RP1から算出される最小の重複率以上である。図9においても、画質Aの第1抽出率RP1は30%であるので、従前の例で示したように、最小の第1重複率は17%である。本実施形態では、第1重複率の入力ボックスの値を変更し、第1重複率RO1を最小の重複率(ここでは17%)以上100%以下の任意の率に設定できる。重複率100%に設定された場合は、図7に示したような単一のマスクでインクドットを抽出する場合である。図9においては、第1重複率RO1=60%に設定されている。
第1実施形態の説明と同様に、プロセスカラーインクの4色全てが打点される100個のポイントを例に上記の場合を説明すれば、まず、各インクにつき、他の色の「第1ドット群」と重複しない40%分の「第1ドット群」が抽出される。これは、各インクにつき12個のインクドットである。そこで、4色合計で48個のポイントが「第1ドット群」の形成ポイントとして抽出される。そして、残り52個のポイントのうち、18個のポイントが、4色の「第1ドット群」が全て重複して形成されるポイントとして抽出される。
上記した「重複するポイント」の抽出方法は最も単純な方法であるが、他の方法によってもよい。例えば、他の3色のインクの「第1ドット群」と重複する18個のインクドットは、6個ずつに3等分され、他の3色のうちの1色のインクドットと重複するように構成されてもよい。4色のうちの2色の組み合わせは6通りなので、6×6=36個のポイントが、これにより抽出されることになる。従って、この場合、合計で84個のポイントが、「第1ドット群」の形成ポイントとして抽出される。図10は、上記プロセスによって最終的に抽出された「第1ドット群」を示した図である。図10においても、図6と同じ符号および記号が使用されている。ただし、第1ドット群Do1は、4色のプロセスカラーインクのうち2色のインクドットが重なって形成されたインクドットである。図10の「第1ドット群」も、図7に示されたものと比較すると、パターン性が感じられないものとなっている。
このように、本実施形態に係るプリンタ10は、各「ドット群」の重複率を調整することによって、好適なマスクパターンを設定することができる。各インクの好適なマスクパターンは画像によって変わり得るため、各「ドット群」の重複率の調整は有効である。本実施形態においては、各「ドット群」の抽出率および重複率が調整された複数の画質が予め制御装置100内に用意されていることが好ましい。なお、当然ながら、本実施形態においても、各「ドット群」の重複率を最小にするような画質が準備されていてもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
例えば、上記した実施形態では、各インク色の「ドット群」の間の重複率を調整することによって模様の発生を抑制していたが、それに限られない。例えば、各マスクには単純に、異なるマスクパターンが設定されてもよい。例えば、あるマスクにはある組織的ディザマスクを設定し、別のマスクパターンには別の組織的ディザマスクを設定する等である。各色のマスクパターンが異なれば、各色に異なる模様が発生すると考えられ、画像全体としては打ち消し合って模様が確認できなくなる。あるいは、マスクは全ての色のインクについて互いに異なっている必要はなく、例えば、第1のインクと第2のインクとに同じマスクが適用されてもよい。さらに、各色のマスクパターンは独立に設定されるようになっていればよく、それが好適な条件であれば、全ての色で同じマスクパターンであってもよい。
また、上記した実施形態では、1つの印刷層に係る各インクの抽出率は共通であった。つまり、印刷層単位でも元画像の色バランスは維持されていた。しかし、1つの印刷層に係る各インクの抽出率は全色で共通でなくともよい。例えば、各インクの抽出率は、全印刷層の合計の抽出率においてのみ共通であってもよい。それは例えば、シアンインクは第1抽出率50%、第2抽出率50%、第3抽出率50%(合計150%)、マゼンタインクは第1抽出率40%、第2抽出率40%、第3抽出率70%(合計150%)などというような設定である。合計の抽出率が各色インクで共通であれば、元画像の色バランスは維持できる。さらには、各色インクにおいて、必ずしも合計の抽出率が共通でなくともよい。本発明は、合計の抽出率を色によって異ならせることによって色味を調整する実施形態を排除するものではない。
上記した実施形態では、複数の印刷層における「ドット群」の抽出はそれぞれ独立したものであった。しかし、複数の「ドット群」同士の重複関係は、上記したものに限られない。例えば、1つの印刷層と別の印刷層との間で、同色のインクドットの重複を避けるように抽出が行われてもよい。このような抽出によれば、印刷画質をさらに向上させることができる。ただし、同じ印刷層の中では異なる色のインクドットを一定以上重複させることは好ましくないため、両者のバランスを取ることが好ましい。そのためには、例えば、別の印刷層の同色のインクドットとの位置の重複と、同じ印刷層での他色のインクドットとの位置の重複とをともに避けながら、1つの色ごとに抽出位置を確定させてゆく方法(第1実施形態の第1印刷層における「第1ドット群」の抽出方法と類似の方法)が採用されてもよい。また、例えば、交互に抽出する色を変えながら1ポイント(または複数ポイント)ずつ抽出位置が確定されてゆく方法が採用されてもよい。後者は、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの順に所定のポイント数ずつ位置を確定してゆき、再度シアンから同様のことを繰り返すような方法である。また、色によりインクドットの総数が異なるため、1回に確定させるポイントの数を、インクドットの総数に比例させてもよい。
上記した実施形態では、印刷はいわゆるシングルパス印刷によって実施されていた。シングルパス印刷は、1回の走査で1つの印刷領域の印刷を完成させる印刷方法である。高密度印刷の場合は、上記印刷領域は、複数の印刷層それぞれについて存在する。しかし、本発明は、いわゆるマルチパス印刷によって実施されてもよい。マルチパス印刷は、複数回の走査で1つの印刷領域の印刷を完成させる印刷方法である。
上記した実施形態では、インクヘッド40~70のノズル列42~72は、それぞれ副走査方向Xに並んだ複数の部分ノズル列に分割されていた。しかし、インクヘッド40~70のノズル列42~72は必ずしも分割されている必要はなく、複数の印刷層の印刷は別工程として分けて行われてもよい。
上記した実施形態では、複数のインクは、それぞれ別のインクヘッドから吐出されていたが、それに限られない。1つのインクヘッドは複数のノズル列を備え、1つのインクヘッドから複数のインクが吐出されてもよい。本発明における「記録ヘッド」は、そのような場合も含むものである。
上記した実施形態では、インクを吐出させる方式は、圧電素子の変位によって圧力室の体積を変化させる方式、いわゆるピエゾ駆動式であった。しかしながら、本発明に係るプリンタのインク吐出方式は、例えば、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式などの各種のオンデマンド方式であってもよい。本発明に係るインク吐出方式は、限定されない。
上記した実施形態では、キャリッジ25が主走査方向Yに移動し、記録媒体5が副走査方向Xに移動するように構成されていたが、これには限定されない。キャリッジ25と記録媒体5との移動は相対的なものであり、そのどちらが主走査方向Yまたは副走査方向Xに移動してもよい。例えば、記録媒体5は移動不能に配置され、キャリッジ25が主走査方向Yおよび副走査方向Xの両方向に移動可能なように構成されていてもよい。また、キャリッジ25および記録媒体5のいずれもが両方向に移動可能なように構成されていてもよい。
さらに、ここに開示される技術は様々なタイプのインクジェットプリンタに適用することができる。上記実施形態で示したロール状の記録媒体5を搬送する、所謂、Roll-to-Rollタイプのプリンタの他、例えばフラットベッドタイプのインクジェットプリンタにも同様に適用することができる。また、プリンタ10は独立したプリンタとして単独で使用されるものに限定されず、他の装置と組み合わせたものであってもよい。例えば、プリンタ10は、他の装置に内蔵されていてもよい。