本発明の態様に係るパターン形成装置およびパターン形成方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の基板(被照射体、被露光体)Pに露光処理を施す露光装置EXを含むデバイス製造システム10の概略構成を示す図である。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、図に示す矢印にしたがって、X方向、Y方向、およびZ方向を説明する。
デバイス製造システム10は、例えば、デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイを製造するシステムである。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイ等がある。デバイス製造システム10は、フレキシブルのシート基板(単に、基板と呼ぶ)Pをロール状に巻いた図示しない供給ロールから基板Pが送出され、送出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、各種処理後の基板Pを図示しない回収ロールで巻き取る、いわゆる、ロール・ツー・ロール(Roll To Roll)方式の構造を有する。この基板Pは、基板Pの移動方向(搬送方向)が長手方向(長尺)となり、幅方向が短手方向(短尺)となる帯状の形状を有する。各種処理後の基板Pは、複数のデバイスが連なった状態となっており、多面取り用の基板となっている。前記供給ロールから送られた基板Pは、順次、プロセス装置PR1、露光装置EX、および、プロセス装置PR2等で各種処理が施され、前記回収ロールで巻き取られる。
なお、X方向は、水平面内において、プロセス装置PR1から露光装置EXを経てプロセス装置PR2に向かう方向(搬送方向)である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向である。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(上方向)である。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および、酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、露光装置EXの搬送路を通る際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。基板Pの母材として、厚みが25μm~200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルムは、好適なシート基板の典型である。
基板Pは、プロセス装置PR1、露光装置EX、およびプロセス装置PR2等で施される各処理において熱を受ける場合があるため、熱膨張係数が顕著に大きくない材質の基板Pを選定することが好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって熱膨張係数を抑えることができる。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、または酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
プロセス装置PR1は、露光装置EXで露光処理される基板Pに対して前工程の処理を行う。プロセス装置PR1は、前工程の処理を行った基板Pを露光装置EXへ向けて送る。この前工程の処理により、露光装置EXへ送られる基板Pは、その表面に感光性機能層(感光面)が形成された基板(感光基板)Pとなっている。
この感光性機能層は、溶液として基板P上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジストであるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)や半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、パターン層を形成することができる。
感光性機能層として、感光性還元剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にする場合、露光装置EXへ送られる基板Pは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものであってもよい。
本実施の形態の場合、パターン描画装置としての露光装置EXは、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるラスタースキャン方式の露光装置EXであり、プロセス装置PR1から供給された基板Pに対して、ディスプレイ用の回路または配線等の所定のパターンを露光する。露光装置EXは、基板PをX方向に搬送しながら、露光用のレーザ光LBのスポット光を基板P上で所定の走査方向(Y方向)に走査しつつ、スポット光の強度をパターンデータ(描画データ)に応じて高速に変調(on/off)することによって、基板Pの表面(感光面)にパターンを描画露光している。
プロセス装置PR2は、露光装置EXで露光処理された基板Pに対しての後工程の処理(例えばメッキ処理や現像・エッチング処理等)を行う。この後工程の処理により、基板P上にデバイスのパターン層が形成される。
露光装置EXは、搬送装置12、光源装置14、露光ヘッド(描画ヘッド)16、および、制御部18を備えている。露光装置EXは、温調チャンバーECV内に格納されている。この温調チャンバーECVは、内部を所定の温度に保つことで、内部において搬送される基板Pの温度による形状変化を抑制する。温調チャンバーECVは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1、SU2を介して製造工場の設置面Eaに配置される。防振ユニットSU1、SU2は、設置面Eaからの振動を低減する。この設置面Eaは、設置土台上の面であってもよく、床であってもよい。
搬送装置12は、プロセス装置PR1から搬送される基板Pを、プロセス装置PR2に所定の速度で搬送する。搬送装置12は、基板Pの搬送方向に沿って上流側(-X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC、テンション調整ローラRT1、回転ドラム(円筒ドラム)20、テンション調整ローラRT2、および、駆動ローラR1、R2を有する。
エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置PR1から搬送される基板Pの幅方向(Y方向であって基板Pの短尺方向)における位置を調整しながら、基板Pを回転ドラム20に搬送する。エッジポジションコントローラEPCは、望ましくは、回転ドラム20に搬入される基板Pの長尺方向が、回転ドラム20の回転軸AXの軸方向と直交するように、基板Pの幅方向における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPCについては、後で詳細に説明する。回転ドラム20は、基板P上で所定のパターンが露光される部分をその円周面で支持する。回転ドラム20は、Y方向に延びる回転軸AXを中心に回転することで、基板Pを回転ドラム20の外周面(円周面)に倣って基板PをX方向に搬送する。この回転軸AXには、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられる。この回転駆動源は、制御部18によって制御される。
駆動ローラR1、R2は、基板Pの搬送方向に沿って所定の間隔を空けて配置されており、露光後の基板Pに所定の弛み(あそび)を与えている。駆動ローラR1、R2は、基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pをプロセス装置PR2へ向けて搬送する。駆動ローラR1、R2は、回転ドラム20に対して搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、この駆動ローラR1は、駆動ローラR2に対して、搬送方向の上流側(-X方向側)に設けられている。テンション調整ローラRT1、RT2は、回転ドラム20に巻き付けられて支持されている基板Pに、所定のテンションを与えている。駆動ローラR1、R2には、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられている。この回転駆動源は、制御部18によって制御される。
光源装置14は、レーザ光源を有し、露光に用いられるレーザ光(照射光、露光ビーム)LBを射出するものである。このレーザ光LBは、370mm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光であってもよい。レーザ光LBは、発振周波数Fsで発光したパルス光であってもよい。光源装置14が射出したレーザ光LBは、露光ヘッド16に入射する。
露光ヘッド16は、光源装置14からのレーザ光LBがそれぞれ入射する複数の走査ユニットU(U1~U5)を備えている。露光ヘッド16は、搬送装置12によって搬送され、回転ドラム20の円周面で支持されている基板Pの一部分に、複数の走査ユニット(描画ユニット)Uによって、所定のパターンを露光(描画)する。露光ヘッド16は、構成が同一の走査ユニットUを複数有することで、いわゆるマルチビーム型の露光ヘッド16となっている。走査ユニットU1、U3、U5は、回転ドラム20の回転軸AXに対して基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)に配置され、走査ユニットU2、U4は、回転ドラム20の回転軸AXに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に配置されている。
走査ユニットUは、入射したレーザ光を基板P上で収斂させてスポット光にし、且つ、そのスポット光を、ポリゴンミラー等の光走査部材を用いて走査方向(Y方向)に延びた走査ライン(描画ライン)に沿って走査させる。各走査ユニットUの走査ラインLは、図2に示すように、Y方向(基板Pの幅方向)に関して互いに分離することなく、繋ぎ合わされるように設定されている。図2では、走査ユニットU1の走査ラインLをL1、走査ユニットU2の走査ラインLを走査ラインL2で表している。同様に、走査ユニットU3、U4、U5の走査ラインLを走査ラインL3、L4、L5で表している。このように、走査ユニットU1~U5全部で露光領域Wの幅方向の全てをカバーするように、各走査ユニットUは走査領域を分担している。なお、1つの走査ユニットUによるY方向の描画幅(走査ラインLの長さ)は、一例として20~50mm程度であることから、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の3個と、偶数番の走査ユニットU2、U4の2個との計5個の走査ユニットUをY方向に配置することによって、描画可能なY方向の幅を100~250mm程度に広げている。
また、各走査ユニットUは、基板P上に照射するスポット光の強度を、所定のパターンに応じた描画データに応じて高速に変調(on/off)する。これにより、基板P上の露光領域Wに所定のパターンを露光(描画)することができる。このスポット光の変調は、例えば、超音波(高周波信号)を用いることで入射したレーザ光LBを回折させて、レーザ光LBの光路、つまり、進行方向を変える音響光学素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)を用いることで実現することができる。詳しくは、各走査ユニットUは、前記音響光学素子を有し、前記音響光学素子にonの駆動信号(高周波信号)が制御部18から入力されると入射したレーザ光LBを基板P上に照射する。一方、各走査ユニットUは、前記音響光学素子にoffの駆動信号(高周波信号)が制御部18から入力されると入射したレーザ光LBを基板P上に照射しない。なお、この走査ユニットUは、国際公開第2013/146184号パンフレット(図36参照)に開示されているように公知技術であるが、ここでは図3を用いて走査ユニットUについて簡単に説明する。
図3は、走査ユニットU2の構成を示すものであるが、各走査ユニットU(U1~U5)は、同一の構成を有することから、走査ユニットU2についてのみ説明し、他の走査ユニットUについては説明を省略する。図3に示すように、走査ユニットU2は、例えば、集光レンズ30、描画用光学素子(光変調素子)32、コリメートレンズ34、反射ミラー36、シリンドリカルレンズ38、フォーカスレンズ40、反射ミラー42、ポリゴンミラー(光走査部材)44、反射ミラー46、f-θレンズ48、シリンドリカルレンズ50、および、吸収体52を有する。
走査ユニットU2に入射するレーザ光LBは、鉛直方向の上方から下方(-Z方向)に向けて進み、集光レンズ30を介して描画用光学素子32に入射する。集光レンズ30は、描画用光学素子32に入射するレーザ光LBを描画用光学素子32内でビームウェストとなるように集光(収斂)させる。描画用光学素子32は、レーザ光LBに対して透過性を有するものであり、例えば、音響光学素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)が用いられる。
描画用光学素子32は、制御部18からの駆動信号(高周波信号)がオフの状態のときは、入射したレーザ光LBを吸収体52側に透過し、制御部18からの駆動信号(高周波信号)がオンの状態のときは、入射したレーザ光LBを回折させて反射ミラー36に向かわせる。吸収体52は、レーザ光LBの外部への漏れを抑制するためにレーザ光LBを吸収する光トラップである。
このように、描画用光学素子32に印加すべき描画用の駆動信号(超音波の周波数)をパターンデータ(白黒)に応じて高速にオン/オフすることによって、レーザ光LBが反射ミラー36に向かうか、吸収体52に向かうかがスイッチングされる。このことは、基板P上で見てみると、感光面に達するレーザ光LB(スポット光SP)の強度が、パターンデータに応じて高レベルと低レベル(例えば、ゼロレベル)のいずれかに高速に変調されることを意味する。
コリメートレンズ34は、描画用光学素子32から反射ミラー36に向かうレーザ光LBを平行光にする。反射ミラー36は、入射したレーザ光LBを-X方向に反射させて、シリンドリカルレンズ38、フォーカスレンズ40を介して反射ミラー42に照射する。反射ミラー42は、入射したレーザ光LBをポリゴンミラー44に照射する。ポリゴンミラー(回転多面鏡)44は、回転することでレーザ光LBの反射角を連続的に変化させて、基板P上に照射されるレーザ光LBの位置を走査方向(基板Pの幅方向)に走査する。ポリゴンミラー44は、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)によって一定の速度で回転する。この回転駆動源は、制御部18によって制御される。
反射ミラー36と反射ミラー42との間に設けられたシリンドリカルレンズ38は、フォーカスレンズ40と協働して、前記走査方向と直交する非走査方向(Z方向)に関してレーザ光LBをポリゴンミラー44の反射面上に集光(収斂)する。このシリンドリカルレンズ38によって、前記反射面がZ方向に対して傾いている場合(XY面の法線と前記反射面との平行状態からの傾き)があっても、その影響を抑制することができ、基板P上に照射されるレーザ光LBの照射位置がX方向にずれることを抑制する。
ポリゴンミラー44で反射したレーザ光LBは、反射ミラー46によって-Z方向に反射され、Z軸と平行な光軸AXuを有するf-θレンズ48に入射する。このf-θレンズ48によって、レーザ光LBをY方向に正確に等速度で走査することが可能になる。f-θレンズ48から照射されたレーザ光LBは、母線がY方向と平行となっているシリンドリカルレンズ50を介して、基板P上に直径数μm程度の略円形の微少なスポット光SPとなって照射される。スポット光(スポット、走査スポット、走査スポット光)SPは、ポリゴンミラー44によって、Y方向に延びる走査ラインLに沿って一方向に1次元走査される。
制御部18は、露光装置EXの各部を制御し、各部に処理を実行させる。この制御部18は、コンピュータと、プログラムが記憶された記憶媒体とを含み、該コンピュータが記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することで、本第1の実施の形態の制御部18として機能する。
また、露光装置EXは、図2に示すように基板P上に形成されたアライメントマークKs(Ks1~Ks3)を検出するための3つのアライメント顕微鏡AM(AM1~AM3)が設けられている。このアライメントマークKsは、基板P上に露光領域Wに描画される所定のパターンと基板Pとを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。アライメントマークKsは、基板Pの幅方向の両端側に、基板Pの長手方向(長尺方向)に沿って一定間隔で形成されているとともに、露光領域Wと露光領域Wとの間で、且つ、基板Pの幅方向中央にも形成されている。
アライメント顕微鏡AMは、露光ヘッド16で形成される走査ラインL1~L5よりも基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)に設けられている。アライメント顕微鏡AM1~AM3は、Y方向に沿って設けられており、アライメント顕微鏡AM1は、基板Pの+Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs1を検出し、アライメント顕微鏡AM2は、基板Pの-Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs2を検出し、アライメント顕微鏡AM3は、基板Pの幅方向中央に形成されたアライメントマークKs3を検出する。アライメント顕微鏡AMは、照明光を基板Pに投影して、CCD、CMOS等の撮像素子でその反射光を撮像し、アライメントマークKsを検出する。検出したアライメントマークKsの位置情報は制御部18に送られる。なお、アライメント用の照明光は、基板P上の感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば波長500~800nm程度の光である。
エッジポジションコントローラEPCの構成を、図1および図4を参照して説明する。エッジポジションコントローラEPCは、駆動ローラDR1、DR2、一対の案内部材であるガイドローラGR1、GR2、および、張力分布調整部60を備える。駆動ローラDR1、DR2の回転軸、および、一対のガイドローラGR1、GR2の回転軸は、回転ドラム20の回転軸AXと互いに平行となるように設けられており、ガイドローラGR1とガイドローラGR2との径は互いに同一である。駆動ローラDR1は、駆動ローラDR2に対して基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)に設けられており、駆動ローラDR1、DR2は、エッジポジションコントローラEPCに送られてくる基板Pの表裏両面を保持しながら回転して、基板Pを回転ドラム20に向けて搬送する。
一対のガイドローラGR1、GR2は、駆動ローラDR1と駆動ローラDR2との間で、基板Pに対して基板Pの長尺方向(搬送方向)に所定の張力を付与するために、基板Pの搬送経路を折り曲げるものである。そのため、ガイドローラGR1は、駆動ローラDR1より上方(+Z方向)に設けられ、ガイドローラGR2は、駆動ローラDR2より上方(+Z方向)に設けられている。このガイドローラGR1によって駆動ローラDR1から搬送される基板Pが上方(+Z方向)に折り曲げられてガイドローラGR2に導かれ、ガイドローラGR2によってガイドローラGR1から搬送される基板Pが下方(-Z方向)に折り曲げられて駆動ローラDR2に導かれる。したがって、一対のガイドローラGR1、GR2の間で、所定の張力が付与される。
張力分布調整部60は、基板Pに付与される張力の幅方向(Y方向)の分布を、基板Pと非接触状態または低摩擦状態で調整するものである。張力分布調整部60は、基板Pの幅方向において基板Pの温度を変化させる温度調整部62、64を有する。温度調整部62、64は、基板Pの搬送方向に沿って設けられており、温度調整部62は、温度調整部64に対して基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)に設けられている。温度調整部62、64は、基板Pの幅方向に沿って配置された複数の発熱体66を有し、温度調整部62、64は、各発熱体66の発熱量を制御する。この発熱体66は、熱を発生して基板Pに温度を付与する(基板Pを温める)ものである。温度調整部62、64は、各発熱体66の発熱量を個別に制御することができる。この発熱体66の構成としては、例えば、抵抗を含み、温度調整部62、64がこの抵抗に流す電流量を制御することで、発熱体66の発熱量を制御することができる。温度調整部62、64は、この発熱体66により、発熱体66と対向する領域の基板Pの温度を、基板Pと非接触の状態で調整することができる。この発熱体66は、略板状の形状を有してもよい。
温度調整部62の複数の発熱体66は、基板Pの幅全体をカバーするように所定間隔で配置されており、温度調整部64の複数の発熱体66は、基板Pの幅全体をカバーするように、所定間隔で配置されている。温度調整部62の基板Pの幅方向に沿って配置された発熱体66の数は、温度調整部64の基板Pの幅方向に沿って配置された発熱体66の数より多い。つまり、温度調整部62は、基板Pの幅方向に関して基板Pの温度を温度調整部64より細かく調整することができる。温度調整部62の各発熱体66のY方向の長さは同一であり、温度調整部64の各発熱体66のY方向の長さは同一である。また、温度調整部62の発熱体66のY方向の長さは、温度調整部64の発熱体66のY方向の長さより短く設定されている。なお、温度調整部62の各発熱体66のY方向の長さは同一でなくてもよく、温度調整部64の各発熱体66のY方向の長さも同一でなくてもよい。
本第1の実施の形態においては、温度調整部62は、基板Pの幅方向に沿って7個の発熱体66を有し、温度調整部64は、基板Pの幅方向に沿って2個の発熱体66を有している。したがって、温度調整部62は、基板Pの幅方向に関して基板Pの温度を7つの領域毎にそれぞれ制御することができ、温度調整部64は、基板Pの幅方向に関して基板Pの温度を2つの領域毎にそれぞれ制御することができる。なお、温度調整部62、64は、裏面側から基板Pを温めるように、基板Pの下方(-Z方向側)に配置されているが、基板Pを表面側から温めるように、基板Pの上方(+Z方向側)に配置されてもよい。また、温度調整部62、64のうち一方を基板Pの上方に、他方を下方に配置してもよい。
基板Pは、温度が高くなるにつれて膨張するので、温度の高い領域ほど付与される張力が低下する。したがって、温度調整部62、64によって、基板Pの幅方向の温度分布を変化させるように、基板Pに温度を付与することで、基板Pに付与される張力の幅方向(Y方向)の分布を調整することができる。
なお、温度調整部62、64によって基板Pに付与する温度は、基板Pのガラス転移温度以下が好ましく、基板Pの主体が例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)である場合は、高温側は120℃未満、好ましくは100℃以下がよい。装置が設置される環境温度(基板Pの周囲温度)に対して基板Pに付与する温度を低下させる場合は、極端な低温化を避けるとともに、基板Pの表面に結露が生じないように雰囲気中の湿度を抑える環境制御機器(チャンバー等)を用意するのがよい。
図5は、温度調整部62を用いて、基板Pの幅方向に関して基板Pの温度を変化させたときの、基板Pに付与される張力Tの幅方向の分布の一例を示す図である。図5中の基板Pに付された黒点(ドット)は、基板Pの温度を示すものであり、黒点が多い領域ほど基板Pの温度が高いことを示す。したがって、図5に示す例では、基板Pの+Y方向側ほど基板Pの温度が高くなるように、温度調整部62が複数の発熱体66の発熱量を制御したときの図である。つまり、温度調整部62は、複数の発熱体66のうち、最も-Y方向側に位置する発熱体66の発熱量を最も小さくし(0を含む)、最も+Y方向側に位置する発熱体66の発熱量を最も大きくし、-Y方向側から+Y方向側に向かうにつれ、発熱体66の発熱量を徐々に大きくして、基板Pの幅方向に関して基板Pの温度に傾斜(勾配)を持たせている。
したがって、基板Pは、-Y方向側から+Y方向側に向かうにつれて、付与される張力Tが低下する。この場合、基板Pのうち、最も-方向側に位置する発熱体66に対向する領域の張力T1が最も高くなり、最も+方向側に位置する発熱体66に対向する領域の張力T2が最も低くなる。基板Pの幅方向で(+Y方向側と-Y方向側とで)温度差が生じることで、基板Pに図5に示すような曲げモーメントMが発生し、これにより、基板Pが幅方向に曲がってシフトする。基板Pは、付与されている張力Tが大きい方に曲がるため、搬送方向は張力Tが大きい方向側(図5の例では、-Y方向側)に曲がり、基板Pの幅方向における位置が-Y方向側にシフトする。この温度差が大きいほど、幅方向に関して基板Pに付与される(作用する)張力の変化も大きくなり、曲げモーメントMも大きくなるので、基板Pの幅方向における位置がY方向にシフトする移動量も大きくなる。
ここで、単位幅当たりの温度変化Δtによって、単位幅当りの張力Tの変化(以下、張力変化ΔT)について説明する。基板Pの熱膨張計数をTα、縦弾性係数をEとすると、張力変化ΔTは、数式(1)で近似的に表すことができる。
ΔT≒-E×Tα×L’/L×Δt …(1)
ここで、数式(1)のL’は、基板Pの幅方向に沿って温度変化が生じている長尺方向の長さ(温調長さ)を表し、Lは、張力Tが付与されている基板Pの長尺方向の長さを表している。つまり、Lは、ガイドローラGR1からガイドローラGR2までの基板Pの長さを表している。なお、数式(1)中には、基板Pに作用している元々の張力Tが入っていない。これは、元々作用している張力Tによって基板Pが長さLに渡って一定量(ΔLtoとする)だけ長尺方向に延びているとすると、基板Pの長さLの一部分(長さL’)の温度を変えることによる基板Pの変形(歪)によって、その延び量がΔLtoから変化するためである。例えば、初期張力の下での延び量が一定量ΔLtoの場合に、温度を変えたことによって伸縮する量(温度依存の変形量)をΔLttとすると、全体としての延び量はΔLto+ΔLtt、またはΔLto-ΔLttとなる。このことから、温度変化Δtに依存した基板Pの延び量の変化、すなわち熱膨張計数Tαや縦弾性係数Eで表される形状(歪)の温度依存の変化率が、張力変化ΔTに対応することになる。このことを以下に具体的に説明する。
縦弾性係数Eは、単位面積当たりの応力をσ、歪量(変形量)をεとすると、E=σ/εで表され、単位面積当たり応力σが基板Pに与えられる張力T(σ=T)でもある。そこで、ガイドローラGR1とガイドローラGR2の間で基板Pが無張力状態だった場合の長さをLo、基板Pに作用している長尺方向の初期の張力をTo、その張力Toに応じて基板Pが長尺方向に伸縮する量(変形量)をΔLtoとすると、ガイドローラGR1とガイドローラGR2の間の長さLは、L=Lo+ΔLtoと表される。基板Pの縦弾性係数Eを用いると、変形量ΔLtoはΔLto=Lo・To/Eであり、初期張力Toは、To=ΔLto・E/Loで表される。
一方、温度調整される基板Pの長尺方向の長さL’の範囲では、温度がΔt変化するに伴って長尺方向に膨張(変形)するので、温度変化に伴う基板Pの変形量ΔLttは、ΔLtt=L’・Tα・Δtと表される。この変形量ΔLttによって基板Pに作用する応力、すなわち温度変化Δt後に基板Pに作用する張力をT’とすると、T’=(ΔLto-ΔLtt)・E/Lo、となる。以上のことから、張力変化ΔTは、ΔT=T’-Toで表され、以下の数式(2)のように表される。
ΔT=(ΔLto-ΔLtt)・E/Lo-ΔLto・E/Lo …(2)
この数式(2)を整理して、熱膨張計数Tαや温度変化Δtを含む式に変形すると、張力変化ΔTは以下の数式(3)のように表される。
ΔT=-To・L’・Tα・Δt/ΔLto …(3)
ここで、変形量ΔLto〔ΔLto=Lo・To/E〕は、長さLoに対して十分に小さく、Lo≫ΔLtoの関係とみなせるため、L=Lo+ΔLtoの関係は近似的にL≒Loで扱える。したがって、数式(3)は、近似的に以下の数式(4)で表され、これは先の数式(1)と同じである。
ΔT≒-To・L’・Tα・Δt/(L・To/E)
=-To・L’・Tα・Δt・E/L
=-L’/L・Δt・Tα・E …(4)
以上のように、張力変化ΔTは、基板Pに作用している元々の張力Tの大きさとは無関係に、ガイドローラGR1とガイドローラGR2の間の長さL、温調長さL’、温度変化Δt、および、基板Pの物性値(熱膨張計数Tα、縦弾性係数E)によって決まり、温度変化Δtが大きいほど、張力変化ΔTは大きくなる。また、張力Tが付与されている(作用している)基板Pの長尺方向の長さLに対する、温度変化が生じている長尺方向の長さ(温調長さ)L’の割合が大きいほど、張力変化ΔTが大きくなる。張力変化ΔTが大きい程、基板Pに発生する曲げモーメントMも大きくなる。
なお、温度調整部62を用いて、基板Pを幅方向にシフトする例について説明したが、温度調整部64を用いて、基板Pの幅方向に関して基板Pの温度を変化させて、基板Pに付与される張力Tの幅方向の分布を調整してもよい。例えば、温度調整部64は、-Y方向側に位置する発熱体66の発熱量を小さくし(発熱量が0を含む)、+Y方向側に位置する発熱体66の発熱量を大きくするようにしてもよい。この場合でも、基板Pの-Y方向側と+Y方向側とで温度差が発生するので、曲げモーメントMが発生し、基板Pの幅方向における位置をY方向にシフトさせることができる。また、温度調整部62と温度調整部64との両方を用いて、基板Pの幅方向の温度分布を変化させて、基板Pに付与される張力Tの幅方向の分布を調整してもよい。つまり、温度調整部62、64は、基板Pの位置を幅方向に沿ってシフトさせる側とは反対側の温度を、シフトさせる側の温度より高くすればよい。
図6は、温度調整部62を用いて、基板Pの幅方向に関して基板Pの温度を変化させたときの、基板Pに付与される張力Tの幅方向の分布の他の例を示す図である。図6中の基板Pに付与された黒点(ドット)は、図5と同様に、基板Pの温度を示すものであり、黒点が多い領域ほど基板Pの温度が高いことを示す。したがって、図6に示す例では、基板Pの幅方向中央側の温度が最も高くなり、基板Pの幅方向の両端側の温度が最も低くなるように、温度調整部62が複数の発熱体66の発熱量を制御したときの図である。つまり、温度調整部62は、複数の発熱体66のうち、最も-Y方向側および+Y方向側に位置する発熱体66の発熱量を最も小さくし(発熱量が0を含む)、幅方向中央に位置する発熱体66の発熱量を最も大きくし、基板Pの幅方向の両端側から幅方向中央に向かうにつれて、発熱体66の発熱量を徐々に大きくして、基板Pの幅方向に関して基板Pの温度に傾斜(勾配)を持たせている。
したがって、基板Pは、幅方向の両端側から幅方向中央に向かうにつれて、付与される張力が低下する。この場合、基板Pのうち、最も-Y方向側および+Y方向側に位置する発熱体66に対向する領域の張力T1、T2が最も高く、幅方向中央に位置する発熱体66に対向する領域の張力T3が最も低くなる。これにより、基板Pの幅方向の両端側の張力が幅方向中央側より高くなるので、基板Pの幅方向中央に皺が寄ることを抑制することができる。
張力分布調整部60(温度調整部62、64)は、制御部18の制御にしたがって、基板Pの幅方向に関して、付与する温度を変化させて、基板Pの温度に傾斜を持たせる。制御部18は、アライメント顕微鏡AM(AM1~AM3)が検出したアライメントマークKs(Ks1~Ks3)の位置に応じて、張力分布調整部60(温度調整部62、64)を制御する。例えば、図7に示すように、ガイドローラGR1、GR2間で、基板Pの幅方向における位置が+Y方向側にずれていることで、基板PがガイドローラGR2の回転軸に対して斜めに搬送されている場合は、基板Pは、回転ドラム20の回転軸AXに対して斜めに搬入される。これにより、露光装置EXの露光精度が低下してしまう虞がある。
したがって、制御部18は、検出されたアライメントマークKsの位置に基づいて、基板Pが回転ドラム20の回転軸AXに対して斜めに搬入(傾いて搬入)されていると判断した場合若しくは基板Pの幅方向における位置が所望する位置に対してずれて基板Pが回転ドラム20に搬入されていると判断した場合は、張力分布調整部60(温度調整部62、64)を制御して、基板Pの幅方向(Y方向)における位置をY方向にシフトさせる。図7に示す例では、基板Pの幅方向における位置を-Y方向側にシフトさせる。なお、図7においては、-Y方向側にシフトされた基板Pを基板P´で表すとともに、基板P´を2点鎖線で表している。これにより、回転ドラム20の回転軸AXに軸方向に対して直交するように基板Pを搬送することができる。つまり、回転ドラム20に搬入される基板Pの長尺方向と、回転ドラム20の回転軸AXの軸方向とを直交させることができる。すなわち、基板Pの搬送方向の傾き誤差または基板Pの幅方向の位置誤差を補正することができる。
このように、温度調整部62、64によって、基板Pの幅方向に沿って温度を変化させるので(温度分布を変化させるので)、基板Pと非接触の状態で、基板Pに付与される張力の幅方向の分布を変えることができる。これにより、基板Pの幅方向における位置を精密で滑らかに調整することができる。また、基板Pの幅方向中央に皺が寄ることを抑制することもできる。
なお、上記第1の実施の形態では、エッジポジションコントローラEPCの張力分布調整部60は、温度調整部62と温度調整部64との両方を備えるようにしたが、いずれか一方のみを備えもよい。
[第1の実施の形態の変形例]
上記第1の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
(変形例1)上記第1の実施の形態では、エッジポジションコントローラEPCの温度調整部62、64は、基板Pの幅方向に沿って配置された複数の発熱体66を用いて、基板Pの幅方向の温度分布を調整するようにしたが、温度調整部62、64の少なくとも一方は、基板Pの幅全体をカバーする大きさの発熱体66を1つだけ有するようにしてもよい。本変形例1では、図8に示すように、張力分布調整部60は、温度調整部62、64を移動させる駆動部68をさらに有する。なお、図8では、温度調整部62、64を基板Pの上方(+Z方向側)に設けた例を示している。
この駆動部68は、温度調整部62、64を上下方向(Z方向)に移動させたり、温度調整部62、64が基板Pの幅方向に関して基板Pの面に対して自由に傾斜できるように回転軸Ax1を中心に回転移動させたりするものである。なお、この回転軸Ax1は、温度調整部62、64の幅方向中央に設けられている。このように、温度調整部62、64を上下方向に移動させることで、基板Pに付与する温度を変えることができる。また、温度調整部62、64を回転軸Ax1を中心に回転移動させることで、発熱体66が1つしかない場合であっても、基板Pの幅方向に関して付与する温度に傾斜(勾配)を持たせることが可能である。本変形例1においても、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるとともに、基板Pの温度勾配をより滑らかにすることができる。なお、この駆動部68は、制御部18の制御にしたがって温度調整部62、64を移動させる。
(変形例2)変形例2においては、温度調整部62、64の少なくとも一方は、板状の発熱体66の代わりにローラ型の発熱体66Aを備え、発熱体66Aは、低摩擦状態で基板Pと接触し、基板Pの搬送に伴って回転する。図9は、本変形例2における温度調整部62の側面図であり、図10は、本変形例2における温度調整部62の平面図である。温度調整部62は、複数のローラ型の発熱体66Aを有する温調ローラ70を、基板Pの搬送方向に沿って複数備えている。温調ローラ70は、回転軸がY方向で一致するように配置された複数の発熱体66Aによって構成されている。この温調ローラ70が有するY方向に沿って配置された複数の発熱体66Aは、基板Pの幅全体をカバーするように配置されている。図9に示す例では、各温調ローラ70は、5つの発熱体66Aによって構成されている。この複数の発熱体66Aは、同一の径を有し、Y方向の長さは同一である。なお、温調ローラ70の各発熱体66AのY方向の長さを変えてもよく、温調ローラ70毎に、発熱体66AのY方向の長さを変えてもよい。
この各発熱体66Aは、それぞれ個別に回転可能に設けられている。また、この各発熱体66Aの発熱量は個別に制御可能である。また、温度調整部62は、基板Pの幅方向に関して同じ位置に配置された各温調ローラ70の発熱体66Aが同一の発熱量となるように、各温調ローラ70の発熱体66Aを制御する。つまり、X方向と平行に配置されている各温調ローラ70の発熱体66Aの発熱量が同一となるように制御する。これにより、例えば、最も+Y方向側に配置された各温調ローラ70の発熱体66Aの発熱量は同一となり、幅方向中央に配置された各温調ローラ70の発熱体66Aの発熱量は同一となる。
また、温度調整部64も同様に、板状の発熱体66に代えて、ローラ型の発熱体66を備える温調ローラ70を備えてもよい。温度調整部64の温調ローラ70は、温度調整部62の温調ローラ70を構成する発熱体66Aの数とは異なる数の発熱体66Aを有してもよい(図示略)。例えば、温度調整部64の温調ローラ70は、2つの発熱体66Aから構成されていてもよい。なお、念のために付言しておくが、このローラ型の発熱体66Aは、ガイドローラGR1、GR2とは異なり、基板Pに張力を付与するものではなく、基板Pの搬送経路を折り曲げない。
温度調整部62、64の温調ローラ70の発熱体66Aが基板Pと低摩擦状態で接することから、基板Pが搬送方向に沿って搬送されると、発熱体66Aも回転する。そして、温度調整部62、64が、複数の温調ローラ70の各発熱体66Aの発熱量を制御することで、基板Pの幅方向の温度分布を変化させるように基板Pに温度を付与することができ、基板Pに付与される張力の幅方向(Y方向)の分布を調整することができる。したがって、本変形例2においても、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、本変形例2においては、発熱体66Aは、基板Pと接触することから、発熱体66が基板Pと接触しない場合に比べ、基板Pの幅方向における温度分布を調整しやすくなる。なお、本変形例2の温度調整部62、64も制御部18の制御にしたがって、各発熱体66Aの発熱量を制御する。
(変形例3)上記第1の実施の形態およびその変形例1、2では、温度調整部62、64は、熱を発生して基板Pに温度を付与する発熱体66若しくは発熱体66Aを備えるようにしたが、発熱体66若しくは発熱体66Aに代えて、基板Pに冷やした温度を付与する(基板Pを冷やす)冷却体を備え、各冷却体が基板Pに付与する温度を個別に制御するようにしてもよい。この場合であっても、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、張力分布調整部60は、発熱体66を有する温度調整部と、冷却体を備える温度調整部との両方を備えるようにしてもよい。
(変形例4)上記第1の実施の形態およびその変形例1~3で説明したエッジポジションコントローラEPCは、さらに、図11に示すように、上記特許文献2に記載されているような、基板Pのエッジを検出するエッジ検出部80と、所定のテンションが付与された状態で基板Pが掛け回され、回転軸82aの軸方向(S方向)に移動可能な回転移動ローラ82、および、回転移動ローラ82を軸方向(S方向)に移動させるローラ駆動部84を備えていてもよい。エッジ検出部80および回転移動ローラ82は、ガイドローラGR1(張力分布調整部60)よりも基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)に設けられている。制御部18は、エッジ検出部80が検出した基板Pのエッジが基準位置からずれていた場合には、ローラ駆動部84を制御して回転移動ローラ82を軸方向(S方向)に移動させることで、基板Pの幅方向における位置を調整する。これにより、この回転移動ローラ82によって基板Pの幅方向における位置を大雑把に、粗く調整した後、張力分布調整部60によって、基板Pの幅方向における位置を微細に調整することができる。したがって、基板Pの幅方向における位置調整を迅速、且つ、高精度に行うことができる。
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態およびその各変形例では、張力分布調整部60は、温度調整部62、64を備えるようにしたが、第2の実施の形態では、温度調整部62に代えて、基板Pを撓ませる外力を、幅方向に関して変化させて基板Pに非接触状態で付与する外力付与部90を備える。なお、本第2の実施の形態においては、上記第1の実施の形態と同一の構成について同様の符号を付したり、図示を省略したりして、異なる部分のみ説明する。
図12に示すように、第2の実施の形態の張力分布調整部60は、外力付与部90と、外力付与部90に気体を供給する気体供給部92とを備える。外力付与部90は、基板Pの上方(+Z方向)に配置され、基板Pの幅方向に沿って配置された複数のノズル(噴出部)94を有する。この複数のノズル94は、基板Pの幅全体をカバーするように所定間隔で配置されている。図12に示す例では、ノズル94は、7個設けられている。ノズル94は、基板Pの表面に気体を吹き付ける(噴出する)ことで、基板Pを下方(-Z方向)に撓ませる外力を基板Pに付与する。なお、ノズル94は、基板Pの裏面に気体を吹き付けることで、基板Pを上方(+Z方向)に撓ませる外力を基板Pに付与してもよい。
気体供給部92は、制御部18の制御にしたがって、一定の圧力がかかった気体を外力付与部90に供給する。外力付与部90は、各ノズル94から噴出される気体の圧力を制御する。例えば、外力付与部90は、制御部18の制御にしたがって、各ノズル94の絞りを調整することで、各ノズル94から噴霧される気体の圧力を個別に制御する。これにより、基板Pの幅方向に関して、基板Pに付与する外力を変えることができる。
基板Pを撓ませる外力が付与されると、外力が付与された基板Pの領域の張力Tは増加する。また、付与される外力が大きくなるほど張力Tの増加量は大きくなる。したがって、外力付与部90によって、基板Pの幅方向に関して付与する外力を変化させることで、基板Pに付与される張力Tの幅方向(Y方向)の分布を調整することができる。
図13は、外力付与による張力Tの増加を説明するための図である。外力付与部90のノズル94によって気体が基板Pに吹き付けられると、基板Pは下方に撓む。この撓みによって生じた基板Pの傾斜角度をαとすると、単位幅当りの張力Tの変化(張力変化)ΔTは、基板Pの縦弾性係数をEとして数式(5)で表すことができる。
ΔT≒E・(1/cos(α)-1) …(5)
なお、この数式(5)においても、元々の張力Tとは無関係に、先の数式(2)~(4)で説明したのと同様、基板Pの外力による基板Pの局所的な延び量の変化、すなわち縦弾性係数Eで表される形状(歪)の変化率が、張力変化ΔTに対応することになる。そのことを以下に説明する。
ガイドローラGR1とガイドローラGR2の間(長さL)で基板Pが無張力状態だった場合の長さをLoとし、角度αがゼロの状態において、初期張力Toに応じた基板Pの長尺方向の変形量(ここでは伸び量)ΔLtoは、L=Lo+ΔLtoの関係より、ΔLto=Lo・To/Eとなる。よって、無張力状態での長さLoは、Lo=ΔLto・E/Toで表される。また、初期張力Toの下で角度αによって基板Pが長尺方向に変形する量(伸び量)をΔLαとすると、伸び量ΔLαは、数式(6)のように表される。
ΔLα=L・(1/cos(α)-1) …(6)
張力変化ΔTは、角度αがゼロのときの伸び量ΔLtoとゼロ以外のときの伸び量ΔLαとの比較より、ΔT=To・(ΔLα/ΔLto)で求められる。この関係式を整理してみると、以下の数式(7)のようになる。
ΔT=To・〔L・(1/cos(α)-1)〕/〔Lo・To/E〕
=〔L・(1/cos(α)-1)〕/〔Lo/E〕
=(L/Lo)・E・(1/cos(α)-1) …(7)
先に説明したように、変形量ΔLtoは長さLoに対して十分に小さく、Lo≫ΔLtoの関係とみなせるため、L=Lo+ΔLtoの関係は近似的にL≒Loで扱えることから、L/Lo≒1となり、数式(7)は数式(5)のように近似される。したがって、図13に示すように、基板Pの表面と直交した方向から基板Pの表面に外力(風圧)に加えて、張力変化ΔTを発生させる場合も、元々の張力Tの大きさとは無関係に、ガイドローラGR1とガイドローラGR2の間での基板Pの角度αと基板Pの縦弾性係数Eによって張力変化ΔTを決めることができる。この数式(5)(または数式(7))のように、角度αが大きくなるほど、張力変化ΔTは大きくなる。つまり、基板Pに吹き付ける気体の圧力を高くすると、角度αが大きくなるので、基板Pに吹き付ける圧力が高いほど張力変化ΔTは大きくなり、基板Pに作用する張力Tは増加する。
例えば、基板Pの幅方向に沿って基板Pを-Y方向側にシフトさせる場合は、シフトさせる側(-Y方向側)に付与する外力を最も大きくし、シフトさせる側とは反対側(+Y方向側)に付与する外力を最も小さくして(外力が0を含む)、-Y方向側から+Y方向側に向かうにつれ、基板Pに付与する外力を徐々に小さくする。つまり、最も-Y方向側のノズル94から噴出する気体の圧力を最も高くし、最も+Y方向側のノズル94から噴出する気体の圧力を最も小さくし(圧力が0も含む)、-Y方向側から+Y方向側に向かうにつれノズル94から噴出する気体の圧力を徐々に小さくして、基板Pの幅方向に関して基板Pに付与する外力に傾斜(勾配)を持たせている。
したがって、基板Pは、+Y方向側から-Y方向側に向かうにつれて、付与される張力Tが増加する。これにより、基板Pの幅方向で(-Y方向側と+Y方向側とで)付与される外力に差(外力差)が生じることで、基板Pに曲げモーメントMが発生し、基板Pを-Y方向側にシフトさせることができる。この外力差が大きいほど、幅方向に関して基板Pに付与される張力の変化も大きくなり、曲げモーメントMも大きくなるので、基板Pの幅方向における位置はY方向にシフトする移動量も大きくなる。
また、基板Pの幅方向の両端側に付与する外力を最も大きくし、基板Pの幅方向中央側に付与する外力を最も小さくし、幅方向中央から両端側に向かうにつれ、基板Pに付与する外力を徐々に大きくしてもよい。つまり、最も-Y方向側および+Y方向側のノズル94から噴出する気体の圧力を最も高くし、幅方向中央のノズル94から噴出する気体の圧力を最も小さくし(圧力が0も含む)、幅方向中央から基板Pの両端側に向かうにつれてノズル94から噴出する気体の圧力を徐々に大きくしてもよい。これにより、基板Pの幅方向の両端側の張力が幅方向中央より高くなるので、基板Pの幅方向中央に皺が寄ることを抑制することができる。
このように、外力付与部90によって、基板Pの幅方向に沿って基板Pを撓ませる外力を、幅方向(Y方向)に関して変化させて基板Pに付与するので、基板Pと非接触の状態で、基板Pに付与される張力の幅方向の分布を変えることができる。これにより、基板Pの幅方向における位置を精密で滑らかに調整することができる。また、基板Pの幅方向中央に皺が寄ることを抑制することもできる。
[上記第2の実施の形態の変形例]
上記第2の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
(変形例1)上記第2の実施の形態においては、制御部18は、エッジポジションコントローラEPCの外力付与部90のノズル94の絞りを調整することで、ノズル94から噴出される気体の圧力を調整するようにしたが、複数のノズル94から噴出される気体の圧力は全て一定の圧力であってもよい。本変形例1では、図14に示すように、張力分布調整部60は、外力付与部90を移動させる駆動部96をさらに備える。この駆動部96は、外力付与部90を上下方向(Z方向)に移動させたり、外力付与部90が基板Pの幅方向に関して基板Pの面に対して自由に傾斜できるように回転軸Ax2を中心に回転移動させたりするものである。なお、この回転軸Ax2は、外力付与部90の幅方向中央に設けられている。このように、外力付与部90を上下方向に移動させることで、基板Pに付与する外力を変えることができる。また、外力付与部90を回転軸Ax2を中心に回転移動させることで、複数のノズル94から噴出される気体の圧力が一定であっても、基板Pの幅方向に関して付与する外力に傾斜(勾配)を持たせることが可能である。本変形例1においても、上記第2の実施の形態と同様の効果を得ることができるとともに、基板Pに付与される外力の勾配をより滑らかにすることができる。なお、この駆動部96は、制御部18の制御にしたがって外力付与部90を移動させる。
(変形例2)上記第2の実施の形態およびその変形例1で説明したエッジポジションコントローラEPCは、さらに、上記第1の実施の形態の変形例4と同様に、基板Pのエッジを検出するエッジ検出部80と、所定のテンションが付与された状態で基板Pが掛け回され、回転軸82aの軸方向(S方向)に移動可能な回転移動ローラ82、および、回転移動ローラ82を軸方向(S方向)に移動させるローラ駆動部84を備えていてもよい(図11参照)。エッジ検出部80および回転移動ローラ82は、ガイドローラGR1(張力分布調整部60)よりも基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)に設けられている。制御部18は、エッジ検出部80が検出した基板Pのエッジが基準位置からずれていた場合には、ローラ駆動部84を制御して回転移動ローラ82を軸方向(S方向)に移動させることで、基板Pの幅方向における位置を調整する。これにより、この回転移動ローラ82によって基板Pの幅方向における位置を大雑把に、粗く調整した後、張力分布調整部60によって、基板Pの幅方向における位置を微細に調整することができる。したがって、基板Pの幅方向における位置調整を迅速、且つ、高精度に行うことができる。
(変形例3)上記第2の実施の形態およびその変形例1、2で説明したエッジポジションコントローラEPCの外力付与部90は、基板Pに吹き付ける気体の圧力(基板Pを撓ませる外力)を、基板Pの幅方向に関して変化させて付与するとともに、吹き付ける気体の温度も基板Pの幅方向に関して変化させてもよい。つまり、本変形例3における外力付与部90は、上記第1の実施の形態で説明した温度調整部62、64のように、非接触で基板Pの幅方向における温度を変えることで、基板Pに作用する張力の幅方向の分布を調整する機能を有してもよい。これにより、基板Pを撓ませる外力を幅方向に関して変化させつつ、基板Pの温度を幅方向に関して変化させることができ、より効果的に基板Pに作用する張力の幅方向の分布を変えることができる。
[第3の実施の形態]
上記第1、第2の実施の形態およびその各変形例で説明したエッジポジションコントローラEPCを搭載した露光装置EXを用いることで、フレキシブルな表示パネル(例えば、有機ELディスプレイ)、タッチパネル、カラーフィルタ等の種々の電子デバイスを製造することができる。第3の実施の形態では、図15のフローチャートを用いて、表示パネルに用いられる電子デバイスの一種である薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)を製造する製造工程を説明する。なお、ここでは、ボトムゲート型のTFTを例にとって説明するが、トップゲート型のTFTであっても、工程は概ね同じである。
まず、プロセス装置PR1は、表示パネルのベースとなる基板Pの表面を、紫外線、大気圧プラズマ、電子線、および、X線等のいずれかを照射して活性化処理を行う(ステップS1)。そして、プロセス装置PR1は、基板Pの表面に感光性の機能液を一様に、または、選択的に塗布し、その基板Pをガラス転移温度以下の乾燥炉に通して、感光性機能層を成膜する(ステップS2)。感光性機能層としては、上述したように感光性シランカップリング剤、感光性還元剤等があり、工程によって使い分けられる。
感光性機能層が形成された基板Pは、露光装置EXに送られ、TFTのゲート電極と、それに付随する配線とに対応した形状の第1層用のパターンが感光性機能層に露光(描画)される(ステップS3)。このときに、アライメント顕微鏡AM(AM1~AM3)が、検出したアライメントマークKs(Ks1~Ks3)の位置情報に基づいて、制御部18は、エッジポジションコントローラEPCを制御して、基板Pの幅方向における位置を調整したり、露光ヘッド16による露光位置を補正して、パターンを露光してもよい。なお、露光装置EXは、第1層用のパターンを露光(描画)する際に、アライメントマークKsとなるマークパターンも露光して、アライメントマークKsを基板P上に形成してもよい。この場合は、露光時にアライメントマークKsが形成されるので、アライメント顕微鏡AMによるアライメントマークKsの検出は行われない。
このようにして露光装置EXで露光された基板Pは、プロセス装置PR2に送り出されて次の工程が行われるが、ステップS2で成膜された感光性機能層の種類によって、ステップS4A、S5Aの工程と、ステップS4B、S5Bの工程とのいずれかの工程が行われる。
感光性機能層として親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤が用いられた場合は、基板P上の紫外線で露光されたゲート電極とそれに付随する配線とに対応した部分が撥液性から親液性に改質されるため、ステップS4Aに進む。ステップS4Aで、プロセス装置PR2は、親液性となった部分(露光された部分)の上に導電性インクを選択塗布(パターニング)することで、パターン(ゲート電極とそれに付随する配線)を形成する。この導電性インクの選択塗布は、インクジェット方式、グラビア印刷、オフセット印刷等であってよい。また、導電性インクとしては、例えば、銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインクが用いられている。この導電性インクにより形成されたゲート電極および配線のパターン層を第1層と呼ぶ。
そして、プロセス装置PR2は、基板Pに選択塗布された導電性インクに含有されるナノ粒子同士の電気的な結合を強固にし、導電性インクの溶剤を除去するために、基板Pに対してアニール処理と乾燥処理を行う(ステップS5A)。ナノ粒子同士の電気的な結合を強固にするアニール処理として、ストロボランプからの高輝度なパルス光を基板Pに照射する方式を採用してもよい。
一方で、感光性機能層として、紫外線を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤を用いた場合は、基板P上の紫外線で露光されたゲート電極とそれに付随する配線とに対応した部分にメッキ還元基が露呈するため、ステップS4Bに進む。ステップS4Bで、プロセス装置PR2は、基板Pに対して無電解のメッキ処理を行う。具体的には、プロセス装置PR2は、パラジウムイオン等を含むメッキ液中に基板Pを一定時間浸漬し、ゲート電極や配線となるパラジウムによるパターンを、メッキ還元基が露呈した部分(露光された部分)の上に析出させる。このメッキ処理の工程では、パラジウムによるパターンの層を下地として、その上にさらに他の金属(金、銅等)によるメッキ処理が施される。このパラジウムにより析出されたゲート電極および配線のパターン層を第1層と呼ぶ。この第1層には、パラジウムによるパターン層を下地としてさらにメッキ処理が施された場合は、その層も含まれる。
そして、プロセス装置PR2は、メッキ処理が施された基板Pに対して純水による洗浄を行い、その後ガラス転移温度以下の乾燥炉に送り、基板Pの水分含有率が所定値以下になるまで乾燥させる(ステップS5B)。
ステップS5AまたはステップS5Bの工程を経ると、第2層を形成するか否かを判断する(ステップS6)。第1層であるパターン層(ここでは、ゲート電極とそれに付随する配線)が形成された場合は、ステップS6で第2層を形成すると判断する。なお、実際の工程では、第1層が形成された場合は、第2層の形成工程に送られるため、このステップS6の判断工程はない。
ここで、ステップS5AまたはステップS5Bの工程が終了すると、基板Pを前記回収ロールで巻き取り、巻き取った前記回収ロールを供給ロールとして、別のデバイス製造システムに装着する。この別のデバイス製造システムは、ロール・ツー・ロール方式の構造を有し、絶縁層成膜装置、プロセス装置PR1、露光装置EX、プロセス装置PR2、および、半導体層形成装置を備える(図示略)。別のデバイス製造システムのプロセス装置PR1、露光装置EX、および、プロセス装置PR2は、デバイス製造システム10のプロセス装置PR1、露光装置EX、および、プロセス装置PR2と略同様の構成を有する。別のデバイス製造システムに装着された供給ロールは、前記絶縁層成膜装置に基板Pを供給して、次以降の工程が行われる。なお、ステップS5AまたはステップS5Bの工程を経た基板Pを前記回収ロールで巻き取ることなく、基板Pに対して連続して次以降の工程の処理を施してもよい。
ステップS6で、第2層を形成すると判断すると、前記絶縁層成膜装置は、第1層のパターン(ゲート電極とそれに付随する配線)を基準にして、その上に積層すべきゲート絶縁層の溶液(絶縁性溶液)を選択塗布(パターニング)することで、ゲート絶縁層となるパターンを形成する(ステップS7)。このゲート絶縁層の成膜工程は、版を使用した印刷方式、インクジェット方式等を用いて絶縁性溶液を選択塗布するため、ステップS7では、溶液塗布後に基板Pをガラス転移温度以下の温度で乾燥させて、溶剤成分を蒸発させて硬化させる処理も行う。この形成されたゲート絶縁層を第2層と呼ぶ。
そして、第2層である絶縁層のパターンが形成された基板Pは、ステップS2と同様に、プロセス装置PR1によって第2層の上に感光性機能層が成膜される。そして、ステップS3と同様に、露光装置EXによって、TFTのソース電極およびドレイン電極とそれに付随する配線とに対応した形状の第3層用のパターンが感光性機能層に露光(描画)される。このとき、第3層用のパターンは、第1層のパターン(ゲート電極と配線)に対して精密にアライメントされる必要がある。そのため、アライメント顕微鏡AM(AM1~AM3)が検出したアライメントマークKs(Ks1~Ks3)の位置情報に基づいて、制御部18は、先に説明した温度分布の変化や風圧分布の変化を利用したエッジポジションコントローラEPCを制御して、基板Pの幅方向における位置を精密に調整したり、露光ヘッド16による露光位置を補正して、第3層用のパターンを露光する。これにより、第3層用のパターン(ソース電極およびドレイン電極とそれに付随する配線)と、形成された第1層のパターン(ゲート電極とそれに付随する配線)とを精密にアライメントすることができる。
次いで、感光性機能層として感光性シランカップリング剤が用いられた場合は、ステップS4A、S5Aと同様に、プロセス装置PR2によって、親液性となった部分(露光された部分)の上に導電性インクが選択塗布されて、パターン(ソース電極およびドレイン電極とそれに付随する配線)が形成され、その後、アニール処理と乾燥処理が施される。一方、感光性機能層として感光性還元剤が用いられた場合は、ステップS4B、S5Bと同様に、プロセス装置PR2によって、メッキ還元基が露呈した部分(露光された部分)の上にパラジウムによるパターン(ソース電極およびドレイン電極とそれに付随する配線)が析出され、その後、乾燥処理が施される。このソース電極およびドレイン電極とそれに付随する配線のパターン層を第3層と呼ぶ。
そして、ステップS6により、第2層を形成しないと判断されると、ステップS8に進む。ステップS8に進むと、前記半導体層形成装置は、ソース電極とドレイン電極とのチャネル長の間に、TFTの半導体層となるパターンを形成する。この半導体層の形成は、半導体材料(例えば、有機半導体、酸化物半導体、カーボンナノチューブ等)に適した手法で行われる。この半導体層の形成工程は、版を用いた印刷方式、インクジェット方式等を用いて半導体材料を選択塗布するため、前記半導体層形成装置は、塗布された半導体材料の結晶を配向させるためのアニール処理(例えば、熱アニール、光アニール、電磁波アニール等)も行なう。なお、この形成された半導体層を第4層と呼ぶ。
以上のようにして、第1層~第4層のパターンが基板P上に積層されると、TFTとして機能する素子は完成するが、有機ELディスプレイ等では、第4層の上に有機ELの発光層がさらに積層されるため、次の工程に進み、基板Pの表面全体に一様な厚みで絶縁層が形成された後、発光層が形成される。
なお、上記各実施の形態および各変形例においては、ラスタースキャン方式の露光装置(パターン描画装置)EXを用いて説明したが、上記特許文献1若しくは国際公開第2013/146184号パンフレットに開示されているようなマスクを用いた露光装置であってもよく、或いはデジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micromirror Device)を用いて所定のパターンを露光するマスクレス方式の露光装置であってもよい。
以上のように、フレキシブルな基板P上に電子デバイスを形成するために精密なパターニング装置(露光装置EX、インクジェット印刷装置等)を用いる場合には、パターニング装置に投入される基板Pの幅方向の位置を、パターニング精度(解像度)や重ね合せ精度に見合った精密さで位置決めしておくことが望ましい。上記の各実施の形態によれば、以下のような各工程を実施することにより、基板P上に電子デバイス用の精密なパターンを形成することができる。
長尺のフレキシブルな基板Pを長尺方向に搬送しつつ、基板Pの表面にパターニング装置によって電子デバイス用のパターンを形成する際に、パターニング装置に搬入される基板Pの長尺方向と交差する幅方向の位置誤差や基板Pの搬送方向の傾き誤差を計測する工程と、パターニング装置の上流側で基板Pの搬送経路上の離れた2ヶ所に配置されて、長尺方向に所定の張力を作用させた状態で基板Pの搬送経路を折り曲げる一対の案内部材(ローラ)の間で、基板Pに作用する張力(内部応力)の幅方向に関する分布を、計測された位置誤差や傾き誤差に基づいて、基板Pと非接触状態または低摩擦状態で調整する工程と、が実施される。基板Pの幅方向の位置誤差および基板Pの搬送方向の傾き誤差の計測は、アライメントマークKsを検出することで計測することができる。
なお、上記の各実施の形態では、一対の案内部材(ガイドローラGR1、GR2)の各々がシート基板Pの搬送経路を折り曲げる構成としたが、一対の案内部材のうち、シート基板Pの搬送経路上の上流側に位置する案内部材(GR1)はシート基板Pを挟み込むニップ式ローラとし、下流側に位置する案内部材(GR2)は外周面でシート基板Pと接触して搬送経路を折り曲げる回転ローラとし、ニップ式ローラのところではシート基板Pの搬送経路を折り曲げずにストレートに通過させる構成であってもよい。したがって、一対の案内部材(ガイドローラGR1、GR2)による基板Pの搬送経路の折り曲げは、一対の案内部材(ガイドローラGR1、GR2)の両方によって2回行われる構成と、いずれか一方によって1回だけ行われる構成とを、適宜選択できる。