以下、図面を参照して本発明を好適に適用可能な各適用例および各実施形態について説明する。インク等の液体を吐出する本発明の液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出装置は、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置に適用可能である。さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に適用可能である。例えば、バイオチップ作製や電子回路印刷や半導体基板作製などの用途としても用いることができる。
また、以下に述べる各適用例および各実施形態は、本発明の適切な具体例であるから、技術的に好ましい様々の限定が付けられている。しかし、本発明の思想に沿うものであれば、本適用例および実施形態は、本明細書の適用例、実施形態、その他の具体的方法に限定されるものではない。
(第1の適用例)
(液体吐出記録装置の説明)
図1は、本発明の液体を吐出する液体吐出装置、特にはインクを吐出して記録を行う液体吐出記録装置(以下、記録装置ともいう)1000の概略構成を示した図である。記録装置1000は、記録媒体2を搬送する搬送部1と、記録媒体2の搬送方向と略直交して配置されるライン型(ページワイド型)の液体吐出ヘッド3とを備え、複数の記録媒体2を連続もしくは間欠に搬送しながら1パスで連続記録を行うライン型記録装置である。液体吐出ヘッド3は循環経路内の圧力(負圧)を制御する負圧制御ユニット230と、負圧制御ユニット230と流体連通した液体供給ユニット220と、液体供給ユニット220へのインクの供給および排出口となる液体接続部111と、筺体80とを備えている。記録媒体2は、カット紙に限らず、連続したロール媒体であってもよい。液体吐出ヘッド3は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKのインクによるフルカラー記録が可能であり、液体を液体吐出ヘッド3へ供給する供給路である液体供給手段、メインタンクおよびバッファタンク(後述する図2参照)が流体的に接続される。また、液体吐出ヘッド3には、液体吐出ヘッド3へ電力および吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続される。液体吐出ヘッド3内における液体経路および電気信号経路については後述する。
記録装置1000は、インク等の液体を後述するタンクと液体吐出ヘッド3との間で循環させる形態の液体吐出記録装置である。その循環の形態は、液体吐出ヘッド3の下流側で2つの循環ポンプ(高圧用、低圧用)を可動することで循環させる第1循環形態と、液体吐出ヘッド3の上流側で2つの循環ポンプ(高圧用、低圧用)を可動することで循環させる第2循環形態とがある。以下、この循環の第1循環形態と第2循環形態とについて説明する。
(第1循環形態の説明)
図2は、本適用例の記録装置1000に適用される循環経路の第1循環形態を示す模式図である。液体吐出ヘッド3は、第1循環ポンプ(高圧側)1001、第1循環ポンプ(低圧側)1002およびバッファタンク1003等に流体的に接続されている。なお図2では、説明を簡略化するため、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKのインクの内の1色のインクが流動する経路のみを示しているが、実際には4色分の循環経路が、液体吐出ヘッド3および記録装置本体に設けられる。
第1循環形態では、メインタンク1006内のインクは、補充ポンプ1005によってバッファタンク1003に供給され、その後、第2循環ポンプ1004によって液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3の液体供給ユニット220に供給される。その後、液体供給ユニット220に接続された負圧制御ユニット230で異なる2つの負圧(高圧、低圧)に調整されたインクは、高圧側と低圧側の2つの流路に分かれて循環する。液体吐出ヘッド3内のインクは液体吐出ヘッド3の下流にある第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002の作用で液体吐出ヘッド内を循環し、液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3から排出されバッファタンク1003に戻る。
サブタンクであるバッファタンク1003は、メインタンク1006と接続され、タンク内部と外部とを連通する不図示の大気連通口を有し、インク中の気泡を外部に排出することが可能である。バッファタンク1003とメインタンク1006との間には、補充ポンプ1005が設けられている。補充ポンプ1005は、インクを吐出しての記録や吸引回復等、液体吐出ヘッド3の吐出口からインクを吐出(排出)することによって消費されたインクをメインタンク1006からバッファタンク1005へ移送する。
2つの第1循環ポンプ1001、1002は、液体吐出ヘッド3の液体接続部111から液体を引き出してバッファタンク1003へ流す。第1循環ポンプとしては、定量的な送液能力を有する容積型ポンプが好ましい。具体的にはチューブポンプ、ギアポンプ、ダイヤフラムポンプ、シリンジポンプ等が挙げられるが、例えば一般的な定流量弁やリリーフ弁をポンプ出口に配して一定流量を確保する形態であってもよい。液体吐出ヘッド3の駆動時には、第1循環ポンプ(高圧側)1001および第1循環ポンプ(低圧側)1002を稼働することによって、それぞれ共通供給流路211、共通回収流路212内を所定流量のインクが流れる。このようにインクを流すことで、記録時の液体吐出ヘッド3の温度を最適の温度に維持している。液体吐出ヘッド3駆動時の所定流量は、液体吐出ヘッド3内の各記録素子基板10間の温度差が記録画質に影響しない程度に維持可能である流量以上に設定することが好ましい。もっとも、あまりに大きな流量に設定すると、液体吐出ユニット300内の流路の圧損の影響により、各記録素子基板10で負圧差が大きくなり画像の濃度ムラが生じてしまう。そのため、各記録素子基板10間の温度差と負圧差を考慮しながら流量を設定することが好ましい。
負圧制御ユニット230は、第2循環ポンプ1004と液体吐出ユニット300との間の経路に設けられている。この負圧制御ユニット230は、単位面積あたりの吐出量の差等によって循環系におけるインクの流量が変動した場合でも、負圧制御ユニット230よりも下流側(即ち液体吐出ユニット300側)の圧力を予め設定した一定圧力に維持するように動作する。負圧制御ユニット230を構成する2つの負圧制御機構としては、負圧制御ユニット230よりも下流の圧力を、所望の設定圧を中心として一定の範囲以下の変動で制御できるものであれば、どのような機構を用いてもよい。一例としては所謂「減圧レギュレータ」と同様の機構を採用することができる。本適用例における循環流路では、第2循環ポンプ1004によって、液体供給ユニット220を介して負圧制御ユニット230の上流側を加圧している。このようにすると、バッファタンク1003の液体吐出ヘッド3に対する水頭圧の影響を抑制できるので、記録装置1000におけるバッファタンク1003のレイアウトの自由度を広げることができる。
第2循環ポンプ1004としては、液体吐出ヘッド3の駆動時に使用するインク循環流量の範囲において、一定圧以上の揚程圧を有するものであればよく、ターボ型ポンプや容積型ポンプなどを使用可能である。具体的には、ダイヤフラムポンプ等が適用可能である。また第2循環ポンプ1004の代わりに、例えば負圧制御ユニット230に対してある一定の水頭差をもって配置された水頭タンクでも適用可能である。図2に示したように負圧制御ユニット230は、それぞれが互いに異なる制御圧が設定された2つの負圧調整機構を備えている。2つの負圧調整機構の内、相対的に高圧設定側(図2でHと記載)、相対的に低圧設定側(図2でLと記載)は、それぞれ、液体供給ユニット220内を経由して、液体吐出ユニット300内の共通供給流路211、共通回収流路212に接続されている。液体吐出ユニット300には、共通供給流路211、共通回収流路212、各記録素子基板と連通する個別流路215(個別供給流路213、個別回収流路214)が設けられている。共通供給流路211には、負圧制御機構Hが、共通回収流路212には負圧制御機構Lが接続されており、2つの共通流路間に差圧が生じている。そして、個別流路215は、共通供給流路211および共通回収流路212と連通しているので、液体の一部が、共通供給流路211から記録素子基板10の内部流路を通過して共通回収流路212へと流れる流れ(図2の矢印)が発生する。
このようにして、液体吐出ユニット300では、共通供給流路211および共通回収流路212内をそれぞれ通過するように液体を流しつつ、一部の液体が各記録素子基板10内を通過するような流れが発生する。このため、各記録素子基板10で発生する熱を共通供給流路211および共通回収流路212を流れるインクによって記録素子基板10の外部へ排出することができる。またこのような構成により、液体吐出ヘッド3による記録を行っている際に、吐出を行っていない吐出口や圧力室においてもインクの流れを生じさせることができる。これによって、吐出口内で増粘したインクの粘度を低下させることで、インクの増粘を抑制することができる。また、増粘したインクやインク中の異物を共通回収流路212へと排出することができる。このため、本適用例の液体吐出ヘッド3は、高速で高画質な記録が可能となる。
(第2循環形態の説明)
図3は、本適用例の記録装置に適用される循環経路のうち、上述した第1循環形態とは異なる循環形態である第2循環形態を示す模式図である。前述の第1循環形態との主な相違点は、負圧制御ユニット230を構成する2つの負圧制御機構が共に、負圧制御ユニット230よりも上流側の圧力を、所望の設定圧を中心として一定範囲内の変動で制御する点である。また、第1循環形態との相違点として、第2循環ポンプ1004が負圧制御ユニット230の下流側を減圧する負圧源として作用する点がある。更に、第1循環ポンプ(高圧側)1001および第1循環ポンプ(低圧側)1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置され、負圧制御ユニット230が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されている点も相違する点である。
第2循環形態では、メインタンク1006内のインクは、補充ポンプ1005によってバッファタンク1003に供給される。その後インクは2つの流路に分けられ、液体吐出ヘッド3に設けられた負圧制御ユニット230の作用で高圧側と低圧側の2つの流路で循環する。高圧側と低圧側の2つの流路に分けられたインクは、第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002の作用で液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3に供給される。その後、第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002の作用で液体吐出ヘッド内を循環したインクは、負圧制御ユニット230を経て、液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3から排出される。排出されたインクは、第2循環ポンプ1004によってバッファタンク1003に戻される。
第2循環形態で負圧制御ユニット230は、単位面積あたりの吐出量の変化等によって生じる流量の変動があっても、負圧制御ユニット230の上流側(即ち液体吐出ユニット300側)の圧力変動を予め設定された圧力を中心として一定範囲内に安定させる。本適用例の循環流路では、第2循環ポンプ1004によって、液体供給ユニット220を介して負圧制御ユニット230の下流側を加圧している。このようにすると液体吐出ヘッド3に対するバッファタンク1003の水頭圧の影響を抑制できるので、記録装置1000におけるバッファタンク1003のレイアウトの選択幅を広げることができる。第2循環ポンプ1004の代わりに、例えば負圧制御ユニット230に対して所定の水頭差をもって配置された水頭タンクであっても適用可能である。第2循環形態は第1循環形態と同様に、負圧制御ユニット230は、それぞれが互いに異なる制御圧が設定された2つの負圧制御機構を備えている。2つの負圧調整機構の内、高圧設定側(図3でHと記載)、低圧設定側(図3でLと記載)はそれぞれ、液体供給ユニット220内を経由して、液体吐出ユニット300内の共通供給流路211または共通回収流路212に接続されている。2つの負圧調整機構により、共通供給流路211の圧力を共通回収流路212の圧力より相対的に高くすることで、共通供給流路211から個別流路215および各記録素子基板10の内部流路を介して共通回収流路212へと流れる液体の流れが発生する。
このような第2循環形態では、液体吐出ユニット300内には第1循環形態と同様の液体の流れ状態が得られるが、第1循環形態の場合とは異なる2つの利点がある。1つ目の利点は、第2循環形態では負圧制御ユニット230が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されているので、負圧制御ユニット230から発生するゴミや異物が液体吐出ヘッド3へ流入する懸念が少ないことである。2つ目の利点は、第2循環形態では、バッファタンク1003から液体吐出ヘッド3へ供給する必要流量の最大値が、第1循環形態の場合よりも少なくて済むことである。その理由は次の通りである。
記録待機時に循環している場合の、共通供給流路211および共通回収流路212内の流量の合計を流量Aとする。流量Aの値は、記録待機中に液体吐出ヘッド3の温度調整にあたり、液体吐出ユニット300内の温度差を所望の範囲内にするために必要な最小限の流量として定義される。また液体吐出ユニット300の全ての吐出口からインクを吐出する場合(全吐出時)の吐出流量を流量F(1吐出口当りの吐出量×単位時間当たりの吐出周波数×吐出口数)と定義する。
図4は、第1循環形態と第2循環形態とにおける、液体吐出ヘッド3へのインクの流入量の違いを示した概略図である。図4(a)は、第1循環形態における待機時を示しており、図4(b)は、第1循環形態における全吐出時を示している。図4(c)から図4(f)は、第2循環流路を示しており、図4(c)、(d)が流量F<流量Aの場合で、図4(e)、(f)が流量F>流量Aの場合であり、それぞれ、待機時と全吐出時の流量を示している。
定量的な送液能力を有する第1循環ポンプ1001及び第1循環ポンプ1002が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されている第1循環形態の場合(図4(a)、(b))、第1循環ポンプ1001及び第1循環ポンプ1002の合計設定流量は流量Aとなる。この流量Aによって、待機時の液体吐出ユニット300内の温度管理が可能となる。そして、液体吐出ヘッド3で全吐出が行われる場合、第1循環ポンプ1001及び第1循環ポンプ1002の合計設定流量は流量Aのままである。しかし、液体吐出ヘッド3へ供給される最大流量は、液体吐出ヘッド3で吐出によって生じる負圧が作用して、合計設定流量の流量Aに全吐出による消費分の流量Fが加算される。よって、液体吐出ヘッド3への供給量の最大値は、流量Fが流量Aに加算されるため流量A+流量Fとなる(図4(b))。
一方で、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置されている第2循環形態の場合(図4(c)から図4(f))は、記録待機時に必要な液体吐出ヘッド3への供給量は、第1循環形態と同様に流量Aである。従って、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置されている第2循環形態では、流量Fよりも流量Aが多い場合(図4(c)、(d))には、全吐出時でも液体吐出ヘッド3への供給量は流量Aで十分である。その際、液体吐出ヘッド3からの排出流量は、流量A-流量Fとなる(図4(d))。しかし、流量Aよりも流量Fが多い場合(図4(e)、(f))には、全吐出時には液体吐出ヘッド3への供給流量を流量Aとすると流量が足りなくなってしまう。そのため、流量Aよりも流量Fが多い場合には、液体吐出ヘッド3への供給量を流量Fとする必要がある。その際、全吐出が行われると、液体吐出ヘッド3では流量Fが消費されるため、液体吐出ヘッド3からの排出流量は、ほとんど排出されない状態となる(図4(f))。なお、流量Aよりも流量Fが多い場合で、吐出は行うが全吐出ではない場合には、流量Fから吐出で消費された分が引かれた量が液体吐出ヘッド3から排出される。また、流量Aと流量Fとが等しい場合には、液体吐出ヘッド3へは流量A(または流量F)が供給されて、液体吐出ヘッド3では流量Fが消費されるため、液体吐出ヘッド3からの排出流量は、ほとんど排出されない状態となる。
このように、第2循環形態の場合、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002の設定流量の合計値、即ち必要供給流量の最大値は、流量Aまたは流量Fの大きい方の値となる。このため、同一構成の液体吐出ユニット300を使用する限り、第2循環形態における必要供給量の最大値(流量Aまたは流量F)は、第1循環形態における必要供給流量の最大値(流量A+流量F)よりも小さくなる。
そのため第2循環形態の場合、適用可能な循環ポンプの自由度が高まり、例えば構成の簡便な低コストの循環ポンプを使用したり、本体側経路に設置される冷却器(不図示)の負荷を低減したりすることができ、記録装置のコストを低減できるという利点がある。この利点は、流量Aまたは流量Fの値が比較的大きくなるラインヘッドであるほど大きくなり、ラインヘッドの中でも長手方向の長さが長いラインヘッドほど有益である。
しかしながら一方で、第1循環形態の方が、第2循環形態に対して有利になる点もある。すなわち第2循環形態では、記録待機時に液体吐出ユニット300内を流れる流量が最大であるため、単位面積当たりの吐出量が少ない画像(以下、低Duty画像ともいう)であるほど、各吐出口に高い負圧が印加された状態となる。このため、流路幅が狭く高い負圧である場合、ムラの見えやすい低Duty画像で吐出口に高い負圧が印加されるため、インクの主滴に伴って吐出される所謂サテライト滴が多く発生して記録品位が低下する虞がある。
一方、第1循環形態の場合、高い負圧が吐出口に印加されるのは単位面積当たりの吐出量が多い画像(以下、高Duty画像ともいう)形成時であるため、仮にサテライト滴が発生しても視認されにくく、画像への影響は小さいという利点がある。これら2つの循環形態の選択は、液体吐出ヘッドおよび記録装置本体の仕様(吐出流量F、最小循環流量A、およびヘッド内流路抵抗)に照らして好ましい選択を採ることができる。
(液体吐出ヘッド構成の説明)
第1の適用例に係る液体吐出ヘッド3の構成について説明する。図5(a)および図5(b)は、本適用例に係る液体吐出ヘッド3を示した斜視図である。液体吐出ヘッド3は、1つの記録素子基板10でシアンC/マゼンタM/イエローY/ブラックKの4色のインクを吐出可能な記録素子基板10を直線状に15個配列(インラインに配置)されるライン型の液体吐出ヘッドである。図5(a)に示すように液体吐出ヘッド3は、各記録素子基板10と、フレキシブル配線基板40および電気配線基板90を介して電気的に接続された信号入力端子91と電力供給端子92を備える。信号入力端子91および電力供給端子92は、記録装置1000の制御部と電気的に接続され、それぞれ吐出駆動信号および吐出に必要な電力を記録素子基板10に供給する。電気配線基板90内の電気回路によって配線を集約することで、信号入力端子91および電力供給端子92の数を記録素子基板10の数に比べて少なくすることができる。これにより、記録装置1000に対して液体吐出ヘッド3を組み付ける時または液体吐出ヘッドの交換時に取り外しが必要な電気接続部数が少なくて済む。図5(b)に示すように、液体吐出ヘッド3の両端部に設けられた液体接続部111は、記録装置1000の液体供給系と接続される。これによりシアンC/マゼンタM/イエロY/ブラックK4色のインクが記録装置1000の供給系から液体吐出ヘッド3に供給され、また液体吐出ヘッド3内を通ったインクが記録装置1000の供給系へ回収されるようになっている。このように各色のインクは、記録装置1000の経路と液体吐出ヘッド3の経路を介して循環可能である。
図6は、液体吐出ヘッド3を構成する各部品またはユニットを示した分解斜視図である。液体吐出ユニット300、液体供給ユニット220および電気配線基板90が筺体80に取り付けられている。液体供給ユニット220には液体接続部111(図3参照)が設けられるとともに、液体供給ユニット220の内部には、供給されるインク中の異物を取り除くため、液体接続部111の各開口と連通する各色別のフィルタ221(図2、図3参照)が設けられている。2つの液体供給ユニット220は、それぞれに2色分ずつのフィルタ221が設けられている。フィルタ221を通過した液体は、それぞれの色に対応して液体供給ユニット220上に配置された負圧制御ユニット230へ供給される。負圧制御ユニット230は、各色別の負圧制御弁からなるユニットであり、それぞれの内部に設けられる弁やバネ部材などの働きで液体の流量の変動に伴って生じる記録装置1000の供給系内(液体吐出ヘッド3の上流側の供給系)の圧損変化を大幅に減衰させる。これによって負圧制御ユニット230は、負圧制御ユニットよりも下流側(液体吐出ユニット300側)の負圧変化をある一定範囲内で安定化させることが可能である。各色の負圧制御ユニット230内には、図2で記述したように各色2つの負圧制御弁が内蔵されている。2つの負圧制御弁は、それぞれ異なる制御圧力に設定され、高圧側が液体吐出ユニット300内の共通供給流路211(図2参照)、低圧側が共通回収流路212(図2参照)と液体供給ユニット220を介して連通している。
筐体80は、液体吐出ユニット支持部81および電気配線基板支持部82とから構成され、液体吐出ユニット300および電気配線基板90を支持するとともに、液体吐出ヘッド3の剛性を確保している。電気配線基板支持部82は、電気配線基板90を支持するためのものであり、液体吐出ユニット支持部81にネジ止めによって固定されている。液体吐出ユニット支持部81は、液体吐出ユニット300の反りや変形を矯正して、複数の記録素子基板10の相対位置精度を確保する役割を有し、それにより記録物におけるスジやムラを抑制する。そのため液体吐出ユニット支持部81は、十分な剛性を有することが好ましく、材質としてはSUSやアルミなどの金属材料、もしくはアルミナなどのセラミックが好適である。液体吐出ユニット支持部81には、ジョイントゴム100が挿入される開口83、84が設けられている。液体供給ユニット220から供給される液体は、ジョイントゴムを介して液体吐出ユニット300を構成する第3流路部材70へと導かれる。
液体吐出ユニット300は、複数の吐出モジュール200、流路部材210からなり、液体吐出ユニット300の記録媒体側の面にはカバー部材130が取り付けられる。ここで、カバー部材130は、図6に示したように長尺の開口131が設けられた額縁状の表面を持つ部材であり、開口131からは吐出モジュール200に含まれる記録素子基板10および封止部材110(後述する図10参照)が露出している。開口131の周囲の枠部は、記録待機時に液体吐出ヘッド3をキャップするキャップ部材の当接面としての機能を有する。このため、開口131の周囲に沿って接着剤、封止材、充填材等を塗布し、液体吐出ユニット300の吐出口面上の凹凸や隙間を埋めることで、キャップ時に閉空間が形成されるようにすることが好ましい。
次に、液体吐出ユニット300に含まれる流路部材210の構成について説明する。図6に示したように流路部材210は、第1流路部材50、第2流路部材60および第3流路部材70を積層したものであり、液体供給ユニット220から供給された液体を各吐出モジュール200へと分配する。また流路部材210は、吐出モジュール200から環流する液体を液体供給ユニット220へと戻すための流路部材である。流路部材210は、液体吐出ユニット支持部81にネジ止めで固定されており、それにより流路部材210の反りや変形が抑制されている。
図7(a)~(f)は、第1~第3流路部材の各流路部材の表面と裏面を示した図である。図7(a)は、第1流路部材50の、吐出モジュール200が搭載される側の面を示し、図7(f)は、第3流路部材70の、液体吐出ユニット支持部81と当接する側の面を示す。第1流路部材50と第2流路部材60とは、夫々の流路部材の当接面である図7(b)と図7(c)が対向するように接合し、第2流路部材と第3流路部材とは、夫々の流路部材の当接面である図7(d)と図7(e)が対向するように接合する。第2流路部材60と第3流路部材70を接合することで、各流路部材に形成される共通流路溝62、71とから、流路部材の長手方向に延在する8本の共通流路(211a、211b、211c、211d、212a、212b、212c、212d)が形成される。これにより色毎に共通供給流路211と共通回収流路212のセットが流路部材210内に形成される。共通供給流路211から液体吐出ヘッド3にインクが供給されて、液体吐出ヘッド3に供給されたインクは共通回収流路212によって回収される。第3流路部材70の連通口72(図7(f)参照)は、ジョイントゴム100の各穴と連通しており、液体供給ユニット220(図6参照)と流体的に流通している。第2流路部材60の共通流路溝62の底面には、連通口61(共通供給流路211と連通する連通口61-1、共通回収流路212と連通する連通口61-2)が複数形成されており、第1流路部材50の個別流路溝52の一端部と連通している。第1流路部材50の個別流路溝52の他端部には連通口51が形成されており、連通口51を介して複数の吐出モジュール200と流体的に連通している。この個別流路溝52により流路部材の中央側へ流路を集約することが可能となる。
第1~第3流路部材は、液体に対して耐腐食性を有するとともに、線膨張率の低い材質からなることが好ましい。材質としては例えば、アルミナや、LCP(液晶ポリマ)、PPS(ポリフェニルサルファイド)やPSF(ポリサルフォン)を母材としてシリカ微粒子やファイバなどの無機フィラーを添加した複合材料(樹脂材料)を好適に用いることができる。流路部材210の形成方法としては、3つの流路部材を積層させて互いに接着してもよいし、材質として樹脂複合樹脂材料を選択した場合には、溶着による接合方法を用いてもよい。
図8は、図7(a)のα部を示しており、第1~第3流路部材を接合して形成される流路部材210内の流路を第1の流路部材50の、吐出モジュール200が搭載される面側から一部を拡大して示した透視図である。共通供給流路211と共通回収流路212とは、両端部の流路からそれぞれ交互に共通供給流路211と共通回収流路212とが配置されている。ここで、流路部材210内の各流路の接続関係について説明する。
流路部材210には、色毎に液体吐出ヘッド3の長手方向に伸びる共通供給流路211(211a、211b、211c、211d)および共通回収流路212(212a、212b、212c、212d)が設けられている。各色の共通供給流路211には、個別流路溝52によって形成される複数の個別供給流路213(213a、213b、213c、213d)が連通口61を介して接続されている。また、各色の共通回収流路212には、個別流路溝52によって形成される複数の個別回収流路214(214a、214b、214c、214d)が、連通口61を介して接続されている。このような流路構成により各共通供給流路211から個別供給流路213を介して、流路部材の中央部に位置する記録素子基板10にインクを集約することができる。また記録素子基板10から個別回収流路214を介して、各共通回収流路212にインクを回収することができる。
図9は、図8のIX-IXにおける断面を示した図である。それぞれの個別回収流路(214a、214c)は連通口51を介して、吐出モジュール200と連通している。図9では個別回収流路(214a、214c)のみ図示しているが、別の断面においては図8に示すように個別供給流路213と吐出モジュール200とが連通している。各吐出モジュール200に含まれる支持部材30および記録素子基板10には、第1流路部材50からのインクを記録素子基板10に設けられる記録素子15に供給するための流路が形成されている。更に、支持部材30および記録素子基板10には、記録素子15に供給した液体の一部または全部を第1流路部材50に回収(環流)するための流路が形成されている。
ここで、各色の共通供給流路211は、対応する色の負圧制御ユニット230(高圧側)と液体供給ユニット220を介して接続されており、また共通回収流路212は負圧制御ユニット230(低圧側)と液体供給ユニット220を介して接続されている。この負圧制御ユニット230により、共通供給流路211と共通回収流路212間に差圧(圧力差)を生じさせるようになっている。このため、図8および図9に示したように、各流路を接続した本適用例の液体吐出ヘッド内では、各色で共通供給流路211~個別供給流路213~記録素子基板10~個別回収流路214~共通回収流路212へと順に流れる流れが発生する。
(吐出モジュールの説明)
図10(a)は、1つの吐出モジュール200を示した斜視図であり、図10(b)は、その分解図である。吐出モジュール200の製造方法としては、まず記録素子基板10およびフレキシブル配線基板40を、予め液体連通口31が設けられた支持部材30上に接着する。その後、記録素子基板10上の端子16と、フレキシブル配線基板40上の端子41とをワイヤーボンディングによって電気接続し、その後にワイヤーボンディング部(電気接続部)を封止部材110で覆って封止する。フレキシブル配線基板40の記録素子基板10と反対側の端子42は、電気配線基板90の接続端子93(図6参照)と電気接続される。支持部材30は、記録素子基板10を支持する支持体であるとともに、記録素子基板10と流路部材210とを流体的に連通させる流路部材であるため、平面度が高く、また十分に高い信頼性をもって記録素子基板と接合できるものが好ましい。材質としては例えばアルミナや樹脂材料が好ましい。
(記録素子基板の構造の説明)
図11(a)は記録素子基板10の吐出口13が形成される側の面の平面図を示し、図11(b)は、図11(a)のAで示した部分の拡大図を示し、図11(c)は、図11(a)の裏面の平面図を示す。ここで、本適用例における記録素子基板10の構成について説明する。図11(a)に示すように、記録素子基板10の吐出口形成部材12に、各インク色に対応する4列の吐出口列が形成されている。なお、以後、複数の吐出口13が配列される吐出口列が延びる方向を「吐出口列方向」と呼称する。図11(b)に示すように、各吐出口13に対応した位置には液体を熱エネルギにより発泡させるための発熱素子である記録素子15が配置されている。隔壁22により、記録素子15を内部に備える圧力室23が区画されている。記録素子15は、記録素子基板10に設けられる電気配線(不図示)によって、端子16と電気的に接続されている。そして記録素子15は、記録装置1000の制御回路から、電気配線基板90(図6参照)およびフレキシブル配線基板40(図10参照)を介して入力されるパルス信号に基づいて発熱して液体を沸騰させる。この沸騰による発泡の力で液体を吐出口13から吐出する。図11(b)に示すように、各吐出口列に沿って、一方の側には液体供給路18が、他方の側には液体回収路19が延在している。液体供給路18および液体回収路19は記録素子基板10に設けられた吐出口列方向に伸びた流路であり、それぞれは液路である供給口17aおよび回収口17bを介して吐出口13と連通している。
図11(c)に示すように、記録素子基板10の、吐出口13が形成される面の裏面には樹脂材のシート状の蓋部材(樹脂フィルム)20が積層されており、蓋部材20には、液体供給路18および液体回収路19に連通する開口21が複数設けられている。本適用例においては、記録素子基板10の長手方向に沿って延在する共通流路である液体供給路18の1本に対して3個、同じく長手方向に沿って延在する供給回収路である液体回収路19の1本に対して2個の開口21が蓋部材20に設けられている。本発明において開口21の数はこれに限られない。例えば、液体供給路18の1本に対して2個の供給側開口21、液体回収路19の1本に対して1個の回収側開口21の構成でもよい。流路部における圧力損失を考慮すると、液体供給路18もしくは液体回収路19にいずれか一方において、少なくとも2個以上の開口を備える構成が好ましい。
図11(b)に示すように蓋部材20の夫々の開口21は、図7(a)に示した複数の連通口51と連通している。蓋部材20は、液体に対して十分な耐食性を有している物が好ましく、また、混色防止の観点から、開口21の開口形状および開口位置には高い精度が求められる。このため蓋部材20の材質として、感光性樹脂材料やシリコン板を用い、フォトリソプロセスによって開口21を設けることが好ましい。このように蓋部材20は、開口21により流路のピッチを変換するものであり、圧力損失を考慮すると厚みは薄いことが望ましく、感光性の樹脂フィルムで構成されることが望ましい。
図12は、図11(a)のXII-XIIにおける記録素子基板10および蓋部材20の断面を示す斜視図である。ここで、記録素子基板10内での液体の流れについて説明する。蓋部材20は、記録素子基板10の基板11に形成される液体供給路18および液体回収路19の壁の一部を形成する蓋としての機能を有する。記録素子基板10は、Siにより形成される基板11と感光性の樹脂により形成される吐出口形成部材12とが積層されており、基板11の裏面には蓋部材20が接合されている。基板11の一方の面側には、記録素子15が形成されており(図11参照)、その裏面側には、吐出口列に沿って延在する液体供給路19および液体回収路18を構成する溝が形成されている。基板11と蓋部材20とによって形成される液体供給路18および液体回収路19は、それぞれ流路部材210内の共通供給流路211と共通回収流路212と接続されており、液体供給路18と液体回収路19との間には差圧が生じている。吐出口13から液体を吐出して記録を行っている際に、吐出を行っていない吐出口では、この差圧によって基板11内に設けられた液体供給路18内の液体が、供給口17a、圧力室23、回収口17bを経由して液体回収路19へ流れる(図12の矢印C)。この流れによって、記録を休止している吐出口13や圧力室23において、吐出口13からの蒸発によって生じる増粘インク、泡および異物などを液体回収路19へ回収することができる。また吐出口13や圧力室23のインクが増粘するのを抑制することができる。液体回収路19へ回収された液体は、蓋部材20の開口21及び支持部材30の液体連通口31(図10b参照)を通じて流路部材210内の連通口51、個別回収流路214、共通回収流路212の順に回収され記録装置1000の回収経路へ回収される。つまり、記録装置本体から液体吐出ヘッド3へ供給される液体は、下記の順に流動し、供給および回収される。
液体は、まず液体供給ユニット220の液体接続部111から液体吐出ヘッド3の内部に流入する。そして液体は、ジョイントゴム100、第3流路部材に設けられた連通口72および共通流路溝71、第2流路部材に設けられた共通流路溝62および連通口61、第1流路部材に設けられた個別流路溝52および連通口51の順に供給される。その後、支持部材30に設けられた液体連通口31、蓋部材20に設けられた開口21、基板11に設けられた液体供給路18および供給口17aを順に介して圧力室23に供給される。圧力室23に供給された液体のうち、吐出口13から吐出されなかった液体は、基板11に設けられた回収口17bおよび液体回収路19、蓋部材20に設けられた開口21、支持部材30に設けられた液体連通口31を順に流れる。その後液体は、第1流路部材に設けられた連通口51および個別流路溝52、第2流路部材に設けられた連通口61および共通流路溝62、第3流路部材70に設けられた共通流路溝71および連通口72、ジョイントゴム100を順に流れる。そして液体は、液体供給ユニット220に設けられた液体接続部111から液体吐出ヘッド3の外部へ流動する。
図2に示す第1循環形態の形態においては、液体接続部111から流入した液体は、負圧制御ユニット230を経由した後にジョイントゴム100に供給される。また図3に示す第2循環形態の形態においては、圧力室23から回収された液体は、ジョイントゴム100を通過した後、負圧制御ユニット230を介して液体接続部111から液体吐出ヘッドの外部へ流動する。また液体吐出ユニット300の共通供給流路211の一端から流入した全ての液体が、個別供給流路213aを経由して圧力室23に供給されるわけではない。つまり、共通供給流路211の一端から流入した液体で、個別供給流路213aに流入することなく、共通供給流路211の他端から液体供給ユニット220に流動する液体もある。このように、記録素子基板10を経由することなく流動する経路を備えることで、本適用例のような微細で流抵抗の大きい流路を備える記録素子基板10を備える場合であっても、液体の循環流の逆流を抑制することができる。このように、本適用例の液体吐出ヘッド3では、圧力室23や吐出口近傍部の液体の増粘を抑制することができるので、吐出のヨレや不吐出を抑制することができ、結果として高画質な記録を行うことができる。
(記録素子基板間の位置関係の説明)
図13は、隣り合う2つの吐出モジュールにおける、記録素子基板の隣接部を部分的に拡大して示した平面図である。本適用例では略平行四辺形の記録素子基板を用いている。平行四辺形のうち、図13に示すような、互いに隣接する辺のなす角が90度ではない平行四辺形において特に好適に適用できる。各記録素子基板10における吐出口13が配列される各吐出口列(14a~14d)は、液体吐出ヘッド3の長手方向に対し一定角度傾くように配置されている。そして、記録素子基板10同士の隣接部における吐出口列は、少なくとも1つの吐出口が記録媒体の搬送方向にオーバーラップするようになっている。図13では、線D上の2つの吐出口が互いにオーバーラップする関係にある。このような配置によって、仮に記録素子基板10の位置が所定位置から多少ずれた場合でも、オーバーラップする吐出口の駆動制御によって、記録画像の黒スジや白抜けを目立たなくすることができる。複数の記録素子基板10を千鳥配置ではなく、直線上(インライン)に配置した場合も、図13のような構成により液体吐出ヘッド10の記録媒体の搬送方向の長さの増大を抑えつつ記録素子基板10同士のつなぎ部における黒スジや白抜け対策を行うことができる。なお、本適用例では記録素子基板の主平面は平行四辺形であるが、これに限るものではなく、例えば長方形、台形、その他形状の記録素子基板を用いた場合でも、本発明の構成を好ましく適用することができる。
(第2の適用例)
以下、図面を参照して本発明の第2の適用例による液体吐出記録装置2000および液体吐出ヘッド2003の構成を説明する。なお以降の説明においては、主として第1の適用例と異なる部分のみを説明し、第1の適用例と同様の部分については説明を省略する。
(液体吐出記録装置の説明)
図21は、本適用例を適用可能な、液体を吐出して記録を行う液体吐出記録装置2000を示した図である。本適用例の記録装置2000は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKの各インクごとに対応した単色用の液体吐出ヘッド2003を4つ並列配置させることで記録媒体へフルカラー記録を行う点が第1の適用例とは異なる。第1の適用例において1色あたりに使用できる吐出口列数が1列だったのに対し、本適用例においては、1色あたりに使用できる吐出口列数は20列となっている。このため、記録データを複数の吐出口列に適宜振り分けて記録を行うことで、非常に高速な記録が可能となる。更に、不吐出になる吐出口があったとしても、その吐出口に対して記録媒体の搬送方向に対応する位置にある、他列の吐出口から補完的に吐出を行うことで信頼性が向上し、商業記録などに好適である。第1の適用例と同様に、各液体吐出ヘッド2003に対して、記録装置2000の供給系、バッファタンク1003(図2、図3参照)およびメインタンク1006(図2、図3参照)が流体的に接続されている。また、それぞれの液体吐出ヘッド2003には、液体吐出ヘッド2003へ電力および吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続されている。
(循環経路の説明)
第1の適用例と同様に、記録装置2000および液体吐出ヘッド2003間の液体の循環形態としては、図2または図3に示した第1および第2循環形態を用いることができる。
(液体吐出ヘッド構造の説明)
図14(a)、(b)は、本適用例に係る液体吐出ヘッド2003を示した斜視図である。ここで、本適用例に係る液体吐出ヘッド2003の構造について説明する。液体吐出ヘッド2003は、液体吐出ヘッド2003の長手方向に直線上に配列される16個の記録素子基板2010を備え、1種類の液体で記録が可能な液体吐出式のライン型液体吐出ヘッドである。液体吐出ヘッド2003は、第1の適用例と同様、液体接続部111、信号入力端子91および電力供給端子92を備える。しかしながら本適用例の液体吐出ヘッド2003は、第1の適用例に比べて吐出口列が多いため、液体吐出ヘッド2003の両側に信号出力端子91および電力供給端子92が配置されている。これは記録素子基板2010に設けられる配線部で生じる電圧低下や信号伝送遅れを低減するためである。
図15は、液体吐出ヘッド2003を示した斜視分解図であり、液体吐出ヘッド2003を構成する各部品またはユニットをその機能毎に分割して示している。各ユニットおよび部材の役割や液体吐出ヘッド内の液体流通の順は、基本的に第1の適用例と同様であるが、液体吐出ヘッドの剛性を担保する機能が異なる。第1の適用例では主として液体吐出ユニット支持部81によって液体吐出ヘッド剛性を担保していたが、第2の適用例の液体吐出ヘッド2003では、液体吐出ユニット2300に含まれる第2流路部材2060によって液体吐出ヘッドの剛性を担保している。本適用例における液体吐出ユニット支持部81は、第2流路部材2060の両端部に接続されており、この液体吐出ユニット2300は記録装置2000のキャリッジと機械的に結合されて、液体吐出ヘッド2003の位置決めを行う。負圧制御ユニット2230を備える液体供給ユニット2220と、電気配線基板90は、液体吐出ユニット支持部81に結合される。2つの液体供給ユニット2220内にはそれぞれフィルタ(不図示)が内蔵されている。
2つの負圧制御ユニット2230は、それぞれ異なる、相対的に高低の負圧で圧力を制御するように設定されている。また、図14および図15のように、液体吐出ヘッド2003の両端部にそれぞれ、高圧側と低圧側の負圧制御ユニット2230を設置した場合、液体吐出ヘッド2003の長手方向に延在する共通供給流路と共通回収流路における液体の流れが互いに対向する。このような構成では、共通供給流路と共通回収流路の間で熱交換が促進されて、2つの共通流路内における温度差が低減される。これによって、共通流路に沿って複数設けられる各記録素子基板2010における温度差が少なくなり、温度差による記録ムラが生じにくくなるという利点がある。
次に、液体吐出ユニット2300の流路部材2210の詳細について説明する。図15に示すように流路部材2210は、第1流路部材2050と第2流路部材2060とを積層したものであり、液体供給ユニット2220から供給された液体を各吐出モジュール2200へと分配する。また流路部材2210は、吐出モジュール2200から環流する液体を液体供給ユニット2220へと戻すための流路部材として機能する。流路部材2210の第2流路部材2060は、内部に共通供給流路および共通回収流路が形成された流路部材であるとともに、液体吐出ヘッド2003の剛性を主に担うという機能を有する。このため、第2流路部材2060の材質としては、液体に対する十分な耐食性と高い機械強度を有するものが好ましい。具体的にはSUSやTi、アルミナなど用いることができる。
図16(a)は、第1流路部材2050の、吐出モジュール2200がマウントされる面を示した図であり、図16(b)は、その裏面を示しており、第2流路部材2060と当接される面を示した図である。第1の適用例とは異なり、本適用例における第1流路部材2050は、各吐出モジュール2200毎に対応した複数の部材を隣接して配列したものである。このように分割した構造を採ることで、複数のモジュールを配列させて、液体吐出ヘッド2003の長さに対応することができるので、例えばB2サイズおよびそれ以上の長さに対応した比較的ロングスケールの液体吐出ヘッドに特に好適に適用することができる。図16(a)に示すように、第1流路部材2050の連通口51は、吐出モジュール2200と流体的に連通し、図16(b)に示すように、第1流路部材2050の個別連通口53は、第2流路部材2060の連通口61と流体的に連通する。図16(c)は、第2流路部材60の、第1流路部材2050と当接される面を示し、図16(d)は、第2流路部材60の厚み方向中央部の断面を示し、図16(e)は、第2流路部材2060の、液体供給ユニット2220と当接する面を示す図である。第2流路部材2060の流路や連通口の機能は、第1の適用例の1色分と同様である。第2流路部材2060の共通流路溝71は、その一方が後述する図17に示す共通供給流路2211であり、他方が共通回収流路2212であり、夫々、液体吐出ヘッド2003の長手方向に沿って設けられており、その一端側から他端側に液体が供給される。本適用例は第1の適用例と異なり、共通供給流路2211と共通回収流路2212の液体の流れは互いに反対方向となっている。
図17は、記録素子基板2010と流路部材2210との液体の接続関係を示した透視図である。流路部材2210内には、液体吐出ヘッド2003の長手方向に延びる一組の共通供給流路2211および共通回収流路2212が設けられている。第2流路部材2060の連通口61は第1流路部材2050の個別連通口53と位置を合わせて接続されており、第2流路部材2060の共通供給流路2211から連通口61を介して第1流路部材2050の連通口51へと連通する液体供給流路が形成されている。同様に、第2流路部材2060の連通口72から共通回収流路2212を介して第1流路部材2050の連通口51へと連通する液体供給経路も形成されている。
図18は、図17のXVIII-XVIIIにおける断面を示した図である。共通供給流路2211は、連通口61、個別連通口53、連通口51を介して、吐出モジュール2200へ接続されている。図18では不図示であるが、別の断面においては、共通回収流路2212が同様の経路で吐出モジュール2200へ接続されていることは、図17を参照すれば明らかである。第1の適用例と同様に、各吐出モジュール2200および記録素子基板2010には、各吐出口に連通する流路が形成されており、供給した液体の一部または全部が、吐出動作を休止している吐出口を通過して、環流できるようになっている。また第1の適用例と同様に、共通供給流路2211は、負圧制御ユニット2230(高圧側)と、共通回収流路2212は負圧制御ユニット2230(低圧側)と液体供給ユニット2220を介して接続されている。従ってその差圧によって、共通供給流路2211から記録素子基板2010の圧力室を通過して共通回収流路2212へと流れる流れが発生する。
(吐出モジュールの説明)
図19(a)は、1つの吐出モジュール2200を示した斜視図であり、図19(b)は、その分解図である。第1の適用例との差異は、記録素子基板2010の複数の吐出口列方向に沿った両辺部(記録素子基板2010の各長辺部)に複数の端子16がそれぞれ配置されている点である。これに伴い記録素子基板2010と電気接続されるフレキシブル配線基板40も、1つの記録素子基板2010に対して2枚配置されている。これは記録素子基板2010に設けられる吐出口列数が20列あり、第1の適用例の8列よりも大幅に増加しているためであり、端子16から記録素子までの最大距離を短くして記録素子基板2010内の配線部で生じる電圧低下や信号遅れを低減するためである。また支持部材2030の液体連通口31は、記録素子基板2010に設けられ全吐出口列を跨るように開口している。その他の点は、第1の適用例と同様である。
(記録素子基板の構造の説明)
図20(a)は、記録素子基板2010の吐出口13が配される面の模式図であり、図20(c)は、図20(a)の面の裏面を示す模式図である。図20(b)は図20(c)において、記録素子基板2010の裏面側に設けられている蓋部材2020を除去した場合の記録素子基板2010の面を示す模式図である。図20(b)に示すように、記録素子基板2010の裏面には吐出口列方向に沿って、液体供給路18と液体回収路19とが交互に設けられている。吐出口列数は、第1の適用例よりも大幅に増加しているものの、第1の適用例との本質的な差異は、前述のように端子16が記録素子基板の吐出口列方向に沿った両辺部に配置されていることである。各吐出口列毎に一組の液体供給路18と液体回収路19が設けられていること、蓋部材2020に、支持部材2030の液体連通口31と連通する開口21が設けられていることなど、基本的な構成は第1の適用例と同様である。
なお、上記適用例の記載は本発明の範囲を限定するものではない。1例として、本適用例では発熱素子により気泡を発生させて液体を吐出するサーマル方式について説明したが、ピエゾ方式およびその他の各種液体吐出方式が採用された液体吐出ヘッドにも本発明を適用することができる。
本適用例は、インク等の液体をタンクと液体吐出ヘッドとの間で循環させる形態の液体吐出記録装置(記録装置)について説明したが、その他の形態であってもよい。その他の形態は、例えばインクを循環せずに、液体吐出ヘッド上流側と下流側に2つのタンクを設け、一方のタンクから他方のタンクへインクを流すことで、圧力室内のインクを流動させる形態であってもよい。
また本適用例は、記録媒体の幅に対応した長さを有する、所謂ライン型ヘッドを用いる例を説明したが、記録媒体に対してスキャンを行いながら記録を行う、所謂シリアル型の液体吐出ヘッドにも本発明を適用することができる。シリアル型の液体吐出ヘッドとしては、例えばブラックインクを吐出する記録素子基板およびカラーインクを吐出する記録素子基板を各1つずつ搭載する構成が挙げられるが、これに限るのもではない。つまり、複数個の記録素子基板を吐出口列方向に吐出口がオーバーラップするよう配置した、記録媒体の幅よりも短い短尺の液体吐出ヘッドを作成し、それを記録媒体に対してスキャンさせる形態であってもよい。
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は前述した適用例と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド及び液体吐出装置について説明する。以下の各実施形態では、液体(以下、インクともいう)を吐出する液体吐出ヘッド、液体吐出装置および製造方法について具体的な構成で説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の液体吐出ヘッド、液体吐出装置および製造方法は、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に適用可能である。例えば、バイオチップ作製や電子回路記録などの用途としても用いることができる。
また、以下に述べる実施形態は、本発明の適切な具体例であるから、技術的に好ましい様々の限定が付けられている。しかし、本発明の思想に沿うものであれば、本実施形態は本明細書の実施形態やその他の具体的方法に限定されるものではない。
(記録素子基板と蓋部材)
図22は、本実施形態における記録素子基板10と蓋部材20とを示した図である。蓋部材20は、記録素子基板10の裏面(吐出口形成部材12を備える面とは反対の面)に形成された流路に蓋をする部材であり、後述する第3流路層が形成されている。本発明では、記録素子基板10と蓋部材20とは、共にウエハ工程にてウエハ形態で加工された後、分割されて形成される。
(液体吐出ヘッドの構成例)
図23(a)から(e)は、液体吐出ヘッドを示した斜視図である。図23(a)の液体吐出ヘッドは、1つの記録素子基板10を備えており、第1流路部材50上に、支持部材30と記録素子基板10と、が配置されている。この液体吐出ヘッドは、いわゆるシリアルスキャン方式の液体吐出記録装置に用いられる。この液体吐出記録装置は、矢印X方向の主走査方向に液体吐出ヘッドを移動させつつ吐出口からインクを吐出する記録走査と、主走査方向と交差する矢印Y方向の副走査方向に記録媒体を搬送する搬送動作とを繰り返すことで記録媒体上に画像を記録する。主走査方向は、吐出口列14が延在する第1の方向と交差(本例の場合は、直交)する方向である。
図23(b)および(c)の液体吐出ヘッドは、それぞれ複数の記録素子基板10を千鳥状に配置した長尺のラインヘッドである。図23(b)の構成においては、第1流路部材50が複数の記録素子基板10に対して共通に配置されており、図23(c)の構成においては、第1流路部材50が記録素子基板10毎に個別に配置されている。このような液体吐出ヘッドは、いわゆるフルライン方式の液体吐出記録装置に用いられる。その液体吐出記録装置は、吐出口列14が延在する第1の方向と交差(本例の場合は、直交)する矢印Y方向に記録媒体を連続的に搬送しつつ、定位置の液体吐出ヘッドからインクを吐出することによって、記録媒体に画像を連続的に記録する。
図23(d)および(e)の液体吐出ヘッドは、記録素子基板10を一列に配置した長尺のラインヘッドであり、いわゆるフルライン方式の液体吐出記録装置に用いられる。図23(d)の構成においては、第1流路部材50が複数の記録素子基板10に対して共通に配置されており、図23(e)の構成においては、第1流路部材50が記録素子基板10毎に個別に配置されている。このような液体吐出ヘッドにおける記録素子基板10は、後述する第4の実施形態のような形状とすることが望ましい。
(記録装置)
図24は、本発明の液体吐出ヘッドを適用可能な液体吐出記録装置(液体吐出装置)の概要と流路構成を示した図である。図24(a)の記録装置は、液体吐出ヘッド3として、前述した図23(a)のような構成の液体吐出ヘッドを用いるシリアルスキャン方式の記録装置である。シャーシ1010は、所定の剛性を有する複数の板状金属部材により構成されていて、この記録装置の骨格を成す。シャーシ1010には、給送部4と、搬送部1と、液体吐出ヘッド3を搭載して矢印Xの主走査方向に往復移動可能なキャリッジ5と、が組み付けられている。主走査方向は、液体吐出ヘッド3における吐出口列の延在方と交差(本例の場合は、直交)する方向である。給送部4は、シート状の不図示の記録媒体を記録装置の内部へ自動的に給送し、搬送部1は、給送部4から1枚ずつ給送される記録媒体を矢印Y方向の副走査方向に搬送する。副走査方向は、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する方向である。このような記録装置は、キャリッジ5と共に液体吐出ヘッド3を主走査方向に移動させつつ液体吐出ヘッド3の吐出口からインクを吐出する記録走査と、記録媒体を副走査方向に搬送する搬送動作、とを繰り返すことによって、記録媒体上に画像を記録する。液体吐出ヘッド3に対しては、不図示のインクタンクからインクが供給される。
図24(b)の記録装置は、前述した図23(b)、(c)、(d)、(e)のような長尺な液体吐出ヘッド3を用いるフルライン方式の液体吐出ヘッドであり、シート(記録媒体)2を矢印Y方向に連続的に搬送する搬送部1を備えている。搬送部1としては、本例のように搬送ベルトを用いる構成の他、搬送ローラなどを用いる構成であってもよい。本例においては、液体吐出ヘッド3として、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(Bk)のインクを吐出するための4つの液体吐出ヘッド3Y、3M、3C、3Bが備えられている。それらの液体吐出ヘッド3(3Y,3M,3C,3B)に対しては、それらに対応するインクが供給される。矢印Y方向にシート2を連続的に搬送しつつ、定位置の液体吐出ヘッド3からインクを吐出することによって、シート2にカラー画像を連続的に記録する。
図24(c)は、液体吐出ヘッド3に対するインクの供給系の説明図である。第1インクタンク1011内のインクは、液体吐出ヘッド3における共通供給流路211(図2、3参照)に供給されてから、圧力室23を通った後、共通回収流路212(図2、3参照)から第2インクタンク1012に回収される。液体吐出ヘッド3内に後述するインク循環流を生じさせる方法としては、例えば、第1インクタンク1011と第2インクタンク1012との間の水頭差を用いる方法がある。あるいは、第1インクタンク1011と第2インクタンク1012の内部の圧力を制御して、第1インクタンク1011と第2インクタンク1012との間に圧力差を生じさせる方法もある。さらに、ポンプ等を用いて、インク循環流を生じさせることもできる。インクの供給系の構成、およびインク循環流を生じさせる方法は、本例のみに限定されず任意である。つまり、圧力室内を通してのインクの循環に必要な圧力差を発生する差圧発生部が構成できればよい。
なお、ここで述べた方法は一例であり、本発明の範囲を限定するものではない。例えば第2液体タンク1012に回収されたインクは再度第1の液体タンク1011を経由して液体吐出ヘッド3に供給される循環経路を形成してもよい。さらには液体タンク1011のみを備える構成で、液体タンク1011から液体吐出ヘッドを経由して再度液体タンク1011にインクが戻り、その後液体吐出ヘッド3に供給される循環経路を備える液体吐出ヘッドでもよい。
(液体吐出ユニット)
図25、図26は、液体吐出ユニット300を示した分解斜視図である。本実施形態の液体吐出ユニット300は、図25および図26のように、吐出口形成部材12、第1流路層221、第2流路層222、第3流路層223、第4流路層224、第5流路層225および第6流路層226からなる6つの積層流路構成となっている。記録素子基板10は、後述する記録素子15と吐出口形成部材12と流路構成(第1流路層221と第2流路層222)とを備える。記録素子基板10は、記録素子15を備える基板と吐出口を備える吐出口形成部材12とを含む。ここで記録素子15を備える基板はSi基板で構成され、記録素子15に供給するための流路が形成される。この流路は、吐出口13の配列方向に沿って延在する液体供給路18および液体回収路19を含む。さらにこの流路は、液体供給路18に連通し、液体供給路18に沿って配列される複数の供給口17aと、液体回収路19に連通し、液体回収路19に沿って配列される複数の回収口17bとを含む。
本発明において記録素子15を備える基板は単層でも多層でも良い。図12に示すような単層の場合は、1枚のSi基板11に液体供給路18、液体回収路19、複数の供給口17aおよび複数の回収口17bを夫々形成する。図28に示すような第1および第2のSi基板が積層された2層の場合は、第1のSi基板11に複数の供給口17aおよび複数の回収口17bを形成し、第2のSi基板115には、液体供給路18および液体回収路19を形成する。Si基板が単層、多層にかかわらずSi基板の裏面側に、複数の開口21を備える蓋部材20が設けられる。この開口20は液体供給路18に液体をするための供給開口20と、液体回収路19から液体を回収するための回収開口20とを含む。夫々の複数の開口20は、液体供給路18および液体回収路19に沿って複数配列される。本発明においては、このような例に限られず、例えば第1流路層221を第1のSi基板で形成し、第2流路層222を第2のSi基板で形成してもよい。また開口20は液体供給路18および液体回収路19に対して少なくとも1つあれば良い。
記録素子15としては、電気熱変換素子(ヒータ)や圧電素子などを用いることができる。ヒータを用いた場合には、その発熱によって圧力室23内のインクを発泡させ、その発泡エネルギを利用して、吐出口13からインクを吐出する。
図27は、第1流路層221の一部を拡大した図に吐出口形成部材12の吐出口13を重ねて示した図である。吐出口13は、図27のように、吐出口列14を形成するように高密度に複数配置されている。本例においては、1つの液体吐出ユニット300に4つの吐出口列14が形成されている。
図28は、第2流路層222の液体供給路18と液体回収路19とを示した断面図であり図29はその斜視図である。第2流路層222の液体供給路18は、図28のように、圧力室23毎に対応する個別の供給口17aを介して、それぞれの圧力室23の一方側(図28中左側)に連通されている。同様に、第2流路層222の液体回収路19は、圧力室23から個別の回収口17bを介して、それぞれの圧力室23の他方側(図28中右側)に連通されている。液体供給路18は、蓋部材である第3流路層223に形成される液体供給開口2133に連通しており、その液体供給開口2133からインクが供給される。同様に、液体回収路19は、第3流路層223に形成される液体回収開口2143と連通している。液体回収口2143は、吐出口列14における吐出口の配列方向(第1の方向)に複数配列され、液体供給開口2133列を形成している。同様に、液体回収開口2143は、液体供給開口2133列と同じ第1の方向に沿って複数配列され、液体回収開口2143列を形成している。第3流路層223には、液体供給開口2133列と液体回収開口2143列とが交互に配置されている。
第4流路層224には、共通供給路2134と共通回収路2144とが形成されており、第5流路層225には、個別供給口2135と個別回収口2145とが形成されている。第6流路層226には、共通供給流路211と共通回収流路212とが形成されている。
液体供給路18は、第2流路層222の厚み方向の一方側(第1流路層221側)が複数の供給口17aと連通し、その他方側(第3流路層223側)が複数の液体供給開口2133と連通している。同様に、液体回収路19は、第2流路層222の厚み方向の一方側が複数の回収口17bと連通し、その他方側が複数の液体回収開口2143と連通している。共通供給路2134は、第4流路層224の厚み方向の一方側が複数の液体供給開口2133と連通し、その他方側が複数の第2供給口2135と連通している。同様に、共通回収路2144は、第4流路層224の厚み方向の一方側が液体回収開口2143と連通し、その他方側が個別回収口2145と連通している。また、第6流路層226の共通供給流路211は、複数の個別供給口2135と連通し、共通回収流路212は複数の個別回収口2145と連通している。
複数の個別供給口2135の配列密度および複数の個別回収口2145の配列密度は、複数の液体供給開口2133の配列密度および複数の液体回収開口2143の配列密度よりも低い。また、複数の液体供給開口2133の配列密度および複数の液体回収開口2143の配列密度は、複数の供給口17aの配列密度および複数の回収口17bの配列密度よりも低い。液体供給路18と液体回収路19とは、それぞれ第1の方向に沿うように並列に形成され、共通供給路2134と共通回収路2144とは、それぞれ第2の方向に沿うように並列に形成されている。共通供給流路211と共通回収流路212は、それぞれ第1の方向に沿うように並列に形成されている。
本例の液体吐出ユニット300は、流路層を複数有しており、複数の流路層を積層して構成される。それらの流路層における流路の形成密度は、第6流路層226、第5流路層225、第5流路層225、第4流路層224、第3流路層223、第2流路層222、第1流路層221の順に高くなる。これにより、記録素子基板10および各流路部材の大型化を抑制しつつ、複数の吐出口列14を高密度に備える液体吐出ユニット300を構成することが可能となる。なお、これら6層の流路層はそれぞれ別の部材に形成されていてもよい。
また、第1流路層221と第2流路層222との双方を基板11に形成して記録素子基板10とし、第3流路層223を蓋部材20に形成し、第4流路層224の一部を支持部材30に形成する。そして、第4流路層224の他の一部を第1流路部材50(図23参照)に形成し、第5流路層225と第6流路層226の一部を第2流路部材60(図23参照)に形成し、第6流路層226の他の一部を第3流路部材に形成する構成も取り得る。
また、第1流路層221と第2流路層222との双方を基板11に形成して記録素子基板10とし、第3流路層223を蓋部材20に形成する。そして、第4流路層224の一部を支持部材30に形成、第4流路層224の他の一部と第5流路層225を第1流路部材50に形成し、第6流路層226を第2流路部材60に形成する構成も取り得る。このように流路層と部材の関係は本発明を制限するものではない。また、個別供給路214a、個別回収路214b、個別供給口215a、個別回収口215bの箇所の構成も本構成を制限するものではない。
外部から供給されるインクは、インクの流入開口に連通する共通供給流路211から、個別供給口2135、共通供給路2134、液体供給開口2133、液体供給路18、および供給口17aを順次経て、圧力室23に導かれる。圧力室23内のインクは、回収口17b、液体回収路19、液体回収開口2143、共通回収路2144、個別回収口2145、共通回収流路212を順次経て、共通回収流路212に連通する流出開口から外部へ流出される。このように圧力室23内のインクをその外部と循環させることにより、圧力室23内に滞留しやすい増粘インクや気泡を流出させて、吐出口13からのインクの吐出速度の低下、およびインク中の色材濃度の変化を抑制することができる。以下、このようなインクの強制的な流れを「インク循環流」という。
本例において、供給口17aと回収口17bとは、図27、図28、図29のように、吐出口13を挟んで対向するように配置されている。このように供給口17aと回収口17bとで圧力室23を挟む構成とすることにより、圧力室23内を通るインク循環流を効率良く生じさせて、インクの吐出速度の低下、およびインクの色材濃度の変化をより効率よく抑制することができる。また、供給口17aと回収口17bとは、複数の圧力室23のそれぞれに対応するように、吐出口列14が延在する第1の方向において複数に分けて形成されている。このように、供給口17aと回収口17bとを複数に分けて形成することにより、隣接する供給口17a同士の間、および隣接する回収口17b同士の間に、記録素子15を駆動するための電気配線を配備することが可能となる。そのため、供給口17aと吐出口13との間、および回収口17bと吐出口13との間に、第1の方向に延在する配線を配備する必要が無く、それらの間をより小さく形成することが可能となる。供給口17aと吐出口13との数の関係は、1対1、1対2、または1対5などとしてもよく、供給口17aが連通する圧力室23の数は、本例のような供給口17aと吐出口13との数と1対1の関係に限定されない。
本例においては、圧力室23内および吐出口13内を経由してインク循環流を生じさせるために、次のように流路が形成されている。液体供給路18は、第1の方向に延在して複数の供給口17aと連通し、さらに、それぞれの供給口17aを介して圧力室23と連通する。同様に、液体回収路19は、第1の方向に延在して複数の回収口17bと連通し、さらに、それぞれの回収口17bを介して圧力室23と連通する。
これらの液体供給路18および液体回収路19が形成される第2流路層222と第1流路層221とは、同一材料からなる部材であることが好ましい。本例においては、シリコン(Si)基板によって作製された基板11に第1流路層221と第2流路層222とが形成されている。またシリコン基板によって作製された第1流路層221が形成された基板11と、同じくシリコン基板からなる第2流路層222が形成された第2基板115と、が積層及び接合され、その第2流路層222に、液体供給路18と液体回収路19とが形成されている。基板11と第2基板115は、接着剤を用いない方法によって結合されることがより望ましく、例えば、表面活性化接合またはフュージョン接合によって接合される。その理由は、高密度に形成された吐出口と、高密度に形成されたインク流路と、を対応させるように基板11と第2基板115を接合する場合、接着剤のはみ出しの影響が軽減されるためである。このような表面活性化接合またはフュージョン接合によって、シリコン製の基板11と第2基板115とが一体化され、その一体物の内部に、供給口17a、回収口17b、液体供給路18、および液体回収路19が形成される。
このように、第1流路層221と第2流路層222には、供給口17a、回収口17b、液体供給路18および液体回収路19からなる一連のインク流路が吐出口列14に対応付けて形成される。このようなインク流路を通して、第1流路層221の圧力室23内および吐出口形成部材12の吐出口13内にインク循環流を生じさせることができる。
また、図28、図29のように、供給口17a、回収口17b、液体供給路18および液体回収路19を形成する側壁は、それぞれ第1流路層221の表裏面(同図中の上下面)に対して実質的に直交している。ここで、実質的に直交とは、第1流路層221と第2流路層222の加工時に生じるテーパ形状等の傾斜を含む。供給口17a、回収口17b、液体供給路18および液体回収路19は、例えば、ドライエッチング加工により形成される。また、それらをレーザ加工によって形成してもよく、あるいはドライエッチング加工とレーザ加工とを組み合わせてもよい。供給口17a、回収口17b、液体供給路18および液体回収路19の深さ方向(図28の上下方向)は、第1流路層221の表面に対して実質的に垂直となる。これにより、これらのインク流路を効率よく高密度に形成して、第1流路層221に高密度に形成された圧力室23および吐出口13内に、より効率よくインク循環流を生じさせることができる。
(蓋部材の製法と形状)
図30は、本実施形態の液体吐出ヘッドの作製工程の一例を示したフローチャートである。吐出口形成工程2000では、記録素子15や必要な回路等が形成された記録素子基板10上に吐出口を形成する。裏面供給路形成工程2001は、記録素子基板10の裏面に液体供給路18と液体回収路19を形成する。また、蓋部材形成工程2002は、記録素子基板10の裏面に、裏面供給路を覆うように蓋部材(第3流路層223)を形成する。本発明においてはウエハ状態におけるSiの基板の裏面側に液体供給路18と液体回収路19を形成した後に、ウエハ状態でSi基板の裏面に蓋部材20(223)を設ける。その状態で液体供給路18および液体回収路19よりも小さい複数の開口21(2133、2143)をパターニングにより形成する。その後に切断工程2003で、記録素子基板10をウエハ状態からチップ形態へと外形の加工をする。さらに接合工程2004は、記録素子基板10を支持部材30や第1流路部材50に接合する。配置工程2005は、接合した部材を所定位置に配置することで液体吐出ヘッドが作製される。尚、上記においては圧力室に液体を供給する供給路を有する液体吐出ヘッドの製造方法について説明したが、図29等の圧力室から液体を回収する液体回収路19を備える液体吐出ヘッドも同様に適用可能である。記録素子基板の裏面に、液体供給路18と液体回収路19とを備える記録素子基板を用意し、記録素子基板の裏面に形成される、液体供給路18と液体回収路19とを覆うように、記録素子基板の裏面にフィルム状の蓋部材を設ける。その後に蓋部材に、液体供給路18と連通し液体供給路よりも小さい複数の液体供給開口2133と、液体回収路19と連通し液体回収路よりも小さい複数の液体回収開口2143を形成する。その後に、蓋部材を備える複数の記録素子基板をウエハから切断し、個々の記録素子基板を支持部材に接合することで複数の記録素子基板が配列された液体吐出ヘッドが作製される。
このように本発明では、ウエハ状態で、まず液体供給路18と液体回収路19を形成し、その液体供給路18と液体回収路19の蓋をするように蓋部材20を設ける。その後に、液体供給路18に連通する液体供給開口2133と、液体回収路19に連通する液体回収開口2143とを形成する。これにより液体供給路18や液体回収路19よりも密度が高く、開口寸法が小さい開口(液体供給開口2133、液体回収開口2143)を精度良く形成することが可能となる。以下、記録素子基板の製造方法を詳細に説明する。
図31は、蓋部材517を設けた状態における記録素子基板を示した図であり、図32、図33は、図31のXXXII-XXXIIにおける断面図である。なお、以下で記録素子基板の製造過程を説明するが、製造過程では完成品の各部材と区別するために、完成品の部材の符号と製造過程における部材の符号とを変えて説明する。図32では部分的な記録素子基板を示しているが、ウエハ上で複数の記録素子基板を一括製造し、それを最後に切断し、小片化することで個々の記録素子基板を製造している。
まず、記録素子や必要な回路等が形成されたシリコンの基板511の表面側にポジ型の感光性樹脂を用いて流路の型となるパターン521を設ける。まず、スピンコート法、スプレーコート法、フィルム化したものをラミネートする方法等により基板511上に感光性樹脂を設け、その後フォトリソグラフィ法等でインク流路の形状にパターン化することで、流路となる部材を形成できる。ポジ型感光性樹脂としては、例えば、ポリメチルイソプロペニルケトンやメタクリル酸エステルを主成分とする高分子の主鎖分解型の感光性樹脂が用いられる。ポジ型感光性樹脂層は、材料に対して最適な露光波長によって露光することで、所望のパターンに形成できる。次いで、ネガ型の感光性樹脂層を用いて吐出口形成部材522を基板511の表面側に形成する(図32(a))。ネガ型の感光性樹脂としては、ラジカル重合反応を利用したネガ型感光性樹脂や、カチオン重合反応を利用したネガ型感光性樹脂が例示される。また、ネガ型感光性樹脂は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。さらに、必要に応じて添加剤等を適宜添加することができる。また、ネガ型感光性樹脂として、市販されている日本化薬社製「SU-8シリーズ」、「KMPR-1000」(商品名)、東京応化工業製「TMMR S2000」、「TMMF S2000」(商品名)等を用いることができる。
また、ネガ型感光性樹脂組成物を流路の型パターンの上に被覆させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スピンコート法、ラミネート法、スプレーコート法等を適宜選択することができ、その後フォトリソグラフィ法等で吐出口を形成する。
なお、ポジ型の感光性樹脂を用いて吐出口形成工程の他にも、複数層のネガ型感光性樹樹脂を積層しフォトリソグラフィ法を用いて吐出口形成部材522を形成してもよい。
次いで、フォトリソ技術、Si深堀エッチング技術を用いて、インク供給するための共通液室513(液体供給路18液体回収路19に対応)、インク供給口516を裏面側より形成する(図32(b))。その後、基板511の共通液室513が形成された側の面上に蓋部材となる樹脂フィルムを設ける。蓋部材517を接着剤で接合した場合、共通液室513に接着剤のはみ出し等が発生し、実質的な流路形状に悪影響を与えるため、接着剤レスで接合することが好ましい。
蓋部材517の形成は、非感光性の熱硬化樹脂を使用する場合には、基材となるベースフィルム518上に塗布された非感光性樹脂をラミネートし(図32(c))、次いでベースフィルム518を剥離する(図32(d))。その後、キュアリングした後、流路の型521を除去後(図32(e))、レーザ加工により開口部(供給開口2133、回収開口2143に対応)を形成する(図32(f))。
次に図33を用いてフォトリソグラフィ法を用いた蓋部材の形成方法について説明する。蓋部材517の形成については、フォトリソグラフィ法等による形成も可能であり、レーザ加工時のアブレーションによる基板側ダメージを回避や、より高い位置精度を達成できる。共通液室513、インク供給口516を裏面側へ形成するまでは図32(b)と同様であり、次いで、ベースフィルム518と感光性樹脂層との積層体を、ラミネータ装置を用いて、共通液室513が形成された基板511の面上に転写(図33(a))する。感光性樹脂層の材料としては、ラジカル重合反応を利用したネガ型感光性樹脂や、カチオン重合反応を利用したネガ型感光性樹脂が例示される。ラジカル重合反応を利用したネガ型感光性樹脂は、その感光性樹脂組成物中に含まれる光重合開始剤から発生するラジカルにより、感光性樹脂組成物中に含まれるラジカル重合可能なモノマやプレポリマの分子間での重合や架橋が進むことで硬化する。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アントラキノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、チタノセン類、アクリジン類等が挙げられる。ラジカル重合可能なモノマとしては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、マレイン酸ジエステル、アリル基を有するモノマやプレポリマ等が適しているが、これらに限定されるものではない。カチオン重合反応を利用したネガ型感光性樹脂は、その感光性樹脂中に含まれる光カチオン開始剤から発生するカチオンにより、感光性樹脂中に含まれるカチオン重合可能なモノマやプレポリマの分子間での重合や架橋が進むことで硬化する。光カチオン開始剤としては、例えば、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。カチオン重合可能なモノマやプレポリマとしては、エポキシ基やビニルエーテル基やオキセタン基を有するモノマやプレポリマ等が適しているが、これに限られるものではない。また、ネガ型感光性樹脂は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。さらに、必要に応じて添加剤等を適宜添加することができる。
また、ネガ型感光性樹脂として、市販されている日本化薬社製「SU-8シリーズ」、「KMPR-1000」(商品名)、東京応化工業製「TMMR S2000」、「TMMF S2000」(商品名)等も用いることができる。また、ネガ型感光性樹脂をベースフィルム518上に形成する方法は、特に限定されるものではなく、スピンコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法等を適宜選択することができる。また、蓋部材517の膜厚としては、開口部の寸法、供給されるインクの流量、粘度にもよるが、2~50μmであることが望ましい。蓋部材517の膜厚が2μmより小さい場合には、共通液室513を充分に被覆できず、インク供給時にインクの漏洩が生じやすい。さらに、インク供給圧力により蓋部材517の破損が生じやすくなる。
ベースフィルム518としては、例えばPET、ポリイミド、フッ素系フィルム、炭化水素系フィルムが使用される。次いで、ベースフィルム518を剥離し(図33(b))、マスク532を介して露光を照射する(図33(c))。次いで、ポストベーク、現像することで蓋部材が形成される(図33(d))。また、蓋部材517の凹凸を維持するために、ベースフィルム518でネガ型感光性樹脂が支持された状態で露光、ポストベークし硬化した後にベースフィルム518を剥離し現像するプロセスでもよい。次いで、流路の型521を除去後、キュアリングする工程が行われる。これにより、ウエハ上に記録素子基板が製造される(図33(e))。また、流路の型521の除去工程が蓋部材517を形成する前に行ってもよい。
また、リソグラフィ加工により蓋部材517に液体供給開口2133および液体回収開口2143を加工することができるため、それぞれの形状精度、および液体供給路18と液体回収路19との配置精度を高めることができる。膜厚50um以下の樹脂フィルムを用いることで、形状精度は±5um以下、配置精度も±5um以下にすることができた。さらには膜厚25um未満の場合はさらに形状精度を良くすることができる。
また図32、図33では明記していないが、蓋部材517に形成する開口は、図11(c)に示すように液体供給路18、液体回収路19に対して夫々複数形成している。
ウエハ工程で蓋部材517を加工することにより、機械加工や成形加工よりも形状精度が良くなるため、より微細な穴をより高密度に形成することが可能とり、更に蓋部材517をより薄くすることが可能となる。また、基板の面に液体供給路18と液体回収路19を形成した後に、それらが形成された基板の面上に蓋部材を設け、その後に蓋部材に複数の開口21(2133、2143)を設ける。これにより微細な開口21(2133、2143)を液体供給路18と液体回収路19とに対して精度良く形成することが可能となる。このような加工をSi基板のウエハ状態で蓋部材である感光性のフィルムを付与し、フォトリソグラフィの技術で蓋部材に開口を形成すると、精度の面でより好ましい。
このように、ウエハ状態の素子基板に蓋部材517を作製して、液体供給開口2133と液体回収開口2143との形状精度を高くすることで、液体供給開口2133と液体回収開口2143とにおける流路抵抗のばらつきを低減することができる。また、形状精度と配置精度を高くすることで、液体供給開口2133と液体回収開口2143をより小さく、より正確に配置することができるため、より高密度に配置された液体供給路18や液体回収路19に対して流路を配置することが可能となる。つまり、より高密度に配置された吐出口列14に対して、流路を形成することが可能となる。特に本実施形態のように、インク循環流を発生させるような液体吐出ヘッド3においては、各吐出口列14に対して、液体供給路18と液体回収路19とを配置する必要があるためより高密度となり本発明を用いる効果が大きい。さらに吐出口列に沿って形成される液体供給路18と液体回収路19に対して、液体供給路18や液体回収路19よりも密度が高く、開口寸法が小さい複数の開口を精度よく形成することが可能となる。
図34は、記録素子基板10に蓋部材20を付与した状態の液体吐出ヘッドを、蓋部材20側から見た模式図であり、蓋部材20に形成された液体供給開口2133と、記録素子基板10に形成された液体供給路18との配置関係を示した図である。図34(a)は、液体供給路18の幅よりも液体供給開口2133の幅の方が大きい例である。形状精度は±5um以下、配置精度も±5um以下の場合、液体供給路18の幅よりも液体供給開口2133の幅を10umずつ両側に大きくすることで、それぞれの精度がばらついたときでも図34(a)に示す位置関係が変わることはない。その他の精度ばらつきの要因も含めて考えると、液体供給路18の幅よりも液体供給開口2133の幅を15umずつ両側に大きくしておくとよい。このように位置関係が変わらないことにより、液体供給開口2133から液体供給路18までの流路抵抗のばらつきを低減することが可能となる。同様に図34(b)に示すように、液体供給路18の幅よりも液体供給開口2133の幅を15umずつ両側で小さくしておいてもよい。また図34(c)に示すように片側では15um大きくし、反対側では15um小さくしておいてもよい。このように、液体供給路18と液体供給開口2133の幅を30um以内の差にしても流路抵抗ばらつきを低減することが可能となる。このような場合例えば図34(a)のような関係の時は、蓋部材20と記録素子基板10との接合面の幅を少なくとも50um確保する必要があっても、液体供給流路18と液体回収流路19との間の梁幅を65umまで小さくしても配置関係は変わらない。また、図34(b)のような関係の時は、液体供給開口の幅を150um確保する必要があっても、液体供給流路18の幅を180umまで小さくしても配置関係が変わらない。
図35(a)は、液体供給開口2133の幅と供給流路18における圧力損失との関係を示したグラフである。以下、本発明の効果について説明する。図35(a)のように、液体供給開口の幅が小さくなると、幅がばらついた際の圧力損失への影響が大きくなる。特に幅が200um以下の際に圧力損失が大きくなる。つまり、吐出口列を高密度化して液体供給開口2133を小さくした際には、流路抵抗ばらつきに対する液体供給開口の形状精度の影響が大きくなる。このように、本発明は吐出口が高密度に配置された液体吐出ヘッドにおいて特に有効であり、流路抵抗ばらつき、つまりは吐出時に供給流路で生じる圧力損失のばらつきを低減することが可能であり、吐出口メニスカス界面の圧力ばらつきを低減することができる。その結果、より均一な大きさの液滴を吐出することができ、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。
また、本実施形態のようなインク循環流を発生させる液体吐出ヘッド3においては、流路抵抗ばらつきを低減することで、さらにインク循環流を発生させる差圧を安定化することが可能となり、インク循環量のばらつきも低減することができる。
図35(b)は、インク循環量のばらつき影響の一例を示すグラフであり、各吐出口の下部(圧力室)を流れるインク循環流量と各インク循環流量での一定時間休止後1発目の液滴の吐出速度の関係の1例を示している。循環流量が7000pl/s程度以上では、定常時の吐出速度の9割以上の吐出速度で1発目から吐出することができるのに対して、それ以下の流量では1発目の吐出速度が9割未満となってしまうことが分かる。このように吐出速度が減少すると着弾時のずれとなり画質の悪化が生じる。また、循環流量を大きくするためには図24(c)における第1液体タンク1011と第2液体タンク1012の圧力差を大きくする、もしくはポンプ等で大きな流量を流す必要があり、大がかりなインク供給系が必要となり、吐出口部の圧力制御が困難になる。よって、循環流量は吐出速度が低下しすぎない程度になるべく小さくするとよく、循環流量のばらつきが小さい液体吐出ヘッド3では吐出速度が低下しない程度に循環流量を小さくし易くなる。
このように、本発明は吐出口が高密度に配置された液体吐出ヘッドにおいても流路抵抗ばらつきを低減できるため、インク循環流を発生させる差圧を安定化することが可能となり、循環流量のばらつきを低減することが可能となる。その結果、各吐出口の休止の有無、長短に関わらず吐出特性を均一にすることができ、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。
(素子基板外形と蓋部材外形の関係)
図36は、素子基板2010と蓋部材517(20)の外形の関係を示した図であり、図36(a)は、ウエハ状態で素子基板2010上に蓋部材517を形成した状態を示す。液体供給開口2133と液体回収開口2143は省略している。最終的に1つの記録素子基板10になる単位で蓋部材517が分割される。図36(b)は、図36(a)の一部を拡大して示した図である。ウエハ状態の素子基板2010を分割する際には、蓋部材517の無い領域で分割するとよい。蓋部材517の無い領域で分割することで、記録素子基板2010を分割する際に蓋部材517の形状悪化、および剥がれを抑制することができる。つまり、切断して分割する記録素子基板の外形サイズよりも蓋部材の外形サイズを小さくすることで、ウエハ状態の素子基板上に蓋部材を作製することを可能にし、切断時の蓋部材517の形状悪化、および剥がれを抑制することができる。
素子基板2010の分割には、例えば各種エッチングやダイシングが用いられる。エッチングで分割する際は蓋部材517の無い領域を分割する必要がある。またブレードダイシングで分割する際に、分割する領域に蓋部材517があると、蓋部材517の形状悪化や剥がれ、およびブレードの劣化を引き起こすことがある。また、レーザダイシングで分割する際は、エッチングの時と同様に蓋部材517の無い領域を分割する必要がある。
図36(c)は、分割後の1つの記録素子基板10と蓋部材20とを示している。図36(a)、(b)のように蓋部材20の無い領域で記録素子基板2010を分割するには図36(c)のように記録素子基板10の外形と蓋部材20の外形の関係は、記録素子基板10の外形の内側に蓋部材20が収まっているとよい。
このように、本実施形態では記録素子基板の外形よりも蓋部材の外形が内側にあることで、ウエハ状の記録素子基板に蓋部材を形成した後の切断を可能にし、蓋部材の形状悪化や剥がれを抑制することができる。つまり、ウエハ状の記録素子基板に蓋部材を形成する場合には、記録素子基板の外形よりも蓋部材の外形を小さく作ることが必須となる。なお、外形からはみ出すことなく、少なくとも部分的に内側にあることでも抑制することができる。
(インク循環流量および圧力のばらつきの抑制構造(1))
さらに本実施形態においては、各圧力室23におけるインク循環流量および圧力のばらつきを抑制するために、以下のような構造を備えている。すなわち、図25および図26のように、1つの液体供給路18に対して複数の液体供給開口2133が連通し、同様に、1つの液体回収路19に対して複数の液体回収開口2143が連通している。これらの液体供給開口2133と液体回収開口2143は、各圧力室23におけるインク循環流量、および圧力のばらつきが、インクの吐出特性に大きな影響を与えない範囲に収まるように、配備されている。具体的には、吐出口列14において吐出口13が配列される第1の方向において、液体供給開口2133と液体回収開口2143とが交互に位置するように配備されている。これにより、第1の方向における液体供給開口2133と液体回収開口2143との間隔をより狭くすることができる。したがって、液体供給路18と液体回収路19の流路幅が比較的狭い場合でも、各圧力室23におけるインク循環流量および圧力のばらつきを抑制することが可能となる。
(インク循環流量および圧力のばらつきの抑制構造(2))
さらに本実施形態においては、各圧力室23におけるインク循環流量、および圧力のばらつきを抑制するために、以下のような構造を備えている。すなわち図25および図26のように、共通供給路2134は、吐出口13の配列方向と交差する第2の方向に延在していて、第2の方向に配列される複数の液体供給開口2133と連通している。同様に、共通回収路2144は、第2の方向に延在していて、第2の方向に配列される複数の液体回収開口2143と連通している。さらに、複数の共通供給路2134は、個別供給口2135を介して、1つの共通供給流路211にまとめて連通されている。同様に、複数の共通回収路2144は、個別回収口2145を介して、1つの共通回収流路212にまとめて連通されている。
このように、6層構造によってインク流路を形成することにより、高密度に配列された複数の吐出口列14に合わせて狭いピッチで形成された複数の液体供給路18は、複数の液体供給開口2133を介して、最終的に1つの共通供給流路211にまとめられる。同様に、高密度に配列された複数の吐出口列14に合わせて狭いピッチで形成された複数の液体回収路19は、複数の液体回収開口2143を介して、最終的に1つの共通回収流路212にまとめられる。したがって、液体供給路18および液体回収路19の流路幅を広げることなく、複数の吐出口列14を高密度に配列することができる。また、このように高密度に配列された複数の吐出口列14の各吐出口13に対応する各圧力室23において、インク循環流量および圧力のばらつきを抑制することができる。また、高密度に配置された吐出口13に対して、圧力室23におけるインク循環流量および圧力のばらつきを抑制しつつ、不図示のインクタンクからのインクの供給、およびインクタンクへのインクの流出を簡便に実現することができる。これにより、液体吐出ヘッド、および、それを備えた記録装置のみにならず、種々の液体吐出ヘッド、および、それを備えた液体吐出装置のシステム全体をコンパクトに構成することができる。
(インク循環流量および圧力のばらつきの抑制構造(3))
また、各圧力室23におけるインク循環流量、および圧力のばらつきを抑制するために、以下のような構造を備えることが望ましい。すなわち、吐出口列14の両端部に位置する液体供給開口2133および/または液体回収開口2143は、その両端部以外に位置する液体供給開口2133および/または液体回収開口2143よりも形状を小さくする。つまり、吐出口列14の両端部に位置する液体供給開口2133および/または液体回収開口2143の開口は、吐出口列14の両端以外の液体供給開口2133/または液体回収開口2143の開口よりも小さく形成する。吐出口列14の両端部に位置する液体供給開口2133に対しては、その片側だけに吐出口列14の吐出口13が位置する。そのため、吐出口列14の両端部に位置する液体供給開口2133におけるインク流量は、その他の液体供給開口2133におけるインク流量よりも少なくなる。同様に、吐出口列14の両端部に位置する液体回収開口2143に対しては、その片側だけに吐出口列14の吐出口13が位置する。そのため、吐出口列14の両端部に位置する液体回収開口2143におけるインク流量は、その他の液体回収開口2143におけるインク流量よりも少なくなる。
このように、吐出口列14の両端部に位置する液体供給開口2133および/または液体回収開口2143に関しては、それらの形状を小さくして、流路抵抗を大きくする。これにより、それらの液体供給開口2133および/または液体回収開口2143において生じる圧力損失を、他の液体供給開口2133および/または液体回収開口2143において生じる圧力損失に近付けることができる。よって、両端部の液体供給開口2133および/または液体回収開口2143を通して圧力室23に流れるインク流量と、他の液体供給開口2133および/または液体回収開口2143を通して圧力室23に流れるインク流量と、の差を小さくすることができる。この結果、各圧力室23内におけるインク循環流量のばらつきをさらに抑制することができる。
(インク循環流量および圧力のばらつきの抑制構造(4))
図37は、記録素子基板10と、記録素子基板10における液体供給開口と液体回収開口との位置を示した図である。記録素子基板10は、各圧力室23におけるインク循環流量および圧力のばらつきを抑制するために、以下のような構造を備えることが望ましい。すなわち図37(a)のように、吐出口列14の端部と、記録素子基板10端部と、の間の領域aを大きく設定する。領域aは、例えば、記録素子基板10に対して電気信号を送受信するためのパット端子16、および記録素子15の駆動回路などの配置スペースとして利用することができる。また、このような領域aを利用して、図37(b)、(c)の透視図のように、液体回収口2133を配備することが望ましい。すなわち、吐出口列14が延在する第1の方向において、吐出口列14の端部に位置する吐出口13と重なるように液体回収口2133を配備する。これらの図37(b)、(c)においては、液体回収路19の左端部と、液体回収開口2143の左端部と、が同じ位置にある。また、図37(c)において、それらの液体回収路19および液体回収開口2143の左端部は、左端に位置する回収口17bよりも左方向に大きく膨出している。
図37(b)、(c)において、吐出口列14の端部に位置する圧力室23を通るインクは、まず矢印A1のように、液体供給開口2133から液体供給路18および供給口17aに入る。その後、矢印A2のように、吐出口列14の端部に位置する圧力室23、回収口17b、および液体回収路19を通った後、液体回収開口2143から流出する。図37(d)は、第1の方向において、吐出口列14の端部に位置する吐出口13と重ならないように、液体回収開口2143を配備した場合の比較例である。図37(d)において、吐出口列14の端部に位置する圧力室23を通るインクは、まず、矢印A1のように、液体供給開口2133から液体供給路18および供給口17aに入る。その後、矢印A2のように、吐出口列14の端部に位置する圧力室23および回収口17bを通ってから、矢印A3のように液体回収路19を通って液体回収開口2143から流出する。
図37(b)、(c)においては、図37(d)の構成と比較して、第1の方向の端部に位置する液体供給開口2133から、圧力室23を通って液体回収開口2143から流出するまでのインク流路の長さを短くすることができる。つまり、吐出口列14の端部近傍の液体供給路18および液体回収路19内において生じる最大圧力損失を小さくして、各圧力室23内におけるインク循環流量のばらつきを抑制することができる。なお、第1の方向の端部に、液体回収開口2143ではなく液体供給開口2133が位置する場合には、同様に、第1の方向において、吐出口列14の端部に位置する吐出口13と重なるように液体供給開口2133を配備すればよい。
(温度分布の抑制構造)
本実施形態においては、液体吐出ヘッド3内の温度分布を抑制するために、以下のような構造を備えている。すなわち、図25および図26のように、吐出口列14の両端部のいずれにも液体回収開口2143が位置している。本例のように、各圧力室23を通してインクを強制的に循環させた場合、通常は、記録素子15等から発せられた熱がインクによって回収されるため、各圧力室23よりもインク流出側の流路内におけるインクの温度が高くなる。また、吐出口13からのインク中の水分の蒸発による影響を抑制するために充分なインク循環流量を確保したとしても、そのインク循環流量よりも、多数の吐出口13からインクを同時に吐出した際の吐出量の方が多くなる場合がある。このような場合には、共通回収流路212からも圧力室23内にインクが供給される。すなわち、共通回収流路212から、個別回収口2145、共通回収路2144、液体回収開口2143、液体回収路19、および回収口17bを通って、圧力室23内にインクが供給される。そのため、多数の吐出口13からインクを同時に吐出する際に、液体回収開口2143内の高温のインクが圧力室23内に供給されることがある。このような場合には、液体供給開口2133近辺よりも液体回収開口2143近辺のインクの温度が高くなり、液体供給開口2133近辺の吐出口13と、液体回収開口2143近辺の吐出口13と、の間において、インクの吐出速度の差が生じるおそれがある。また、吐出口列14の両端部の一端側に液体供給開口2133が位置し、その他端側に液体回収開口2143が位置した場合には、吐出口列14全体では、その配列方向において熱分布の傾きが生じて、液体吐出ヘッド全体としての熱分布幅が大きる。その結果、各吐出口13におけるインクの吐出特性にばらつきが生じるおそれがある。
本実施形態においては、吐出口列14の両端部のそれぞれに液体回収開口2143が配備するため、このような熱分布の傾きを抑制して、インクの吐出特性のばらつきを抑えることができる。なお、吐出口列14の両端部のそれぞれに液体供給開口2133を配備した場合も同様の効果がある。しかし、本実施形態のように、吐出口列14の両端部のそれぞれに液体回収開口2143を配備することが望ましい。
すなわち記録素子基板10においては、前述したように、吐出口列14の両端部と記録素子基板10の端部との間に、吐出口13が配備されない領域aが大きく設定されており、この領域aから、インク吐出時に発生する熱が放熱される。そのため、多数の吐出口13がインクを吐出した場合には、吐出口列14の両端部の温度は、他の部分よりも温度が低くなる傾向となる。吐出口列14の両端部のそれぞれに液体回収開口2143を配備することにより、このような場合において温度の高いインクを吐出口列14の両端部に供給することができる。したがって、吐出口列14の両端部の温度をより高くして、他の部分との温度差を小さくすることができる。この結果、液体吐出ヘッド全体としての熱分布幅を小さくして、インクの吐出特性のばらつきを抑えることができる。
このように、ウエハ状態の素子基板上に蓋部材を作製して、その後、素子基板を切断することでチップ化した記録素子基板を作製する。これによって、圧力室における圧力ばらつきが生じるのを抑制することができる液体吐出ヘッド、液体吐出装置および製造方法を実現することができた。
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
図38および図39は、本実施形態における液体吐出ユニット300を示した図であり、前述した実施形態と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。図38は、液体吐出ユニット300の分解斜視図であり、図39は、液体吐出ユニット300の分解平面図である。本実施形態では、吐出口列14の一端側の位置において、液体供給路18と液体供給開口2133が連通し、かつ液体回収路19と液体回収開口2143とが連通している。同様、吐出口列14の他端側に位置においても、液体供給路18と液体供給開口2133とが連通し、かつ液体回収路19と液体回収開口2143とが連通している。吐出口列14の両端部に液体供給開口2133と液体回収開口2143とを配置することにより、第1の適用例よりも、吐出口列14が延在する第1の方向におけるインク循環流量のばらつき、および各圧力室23内の圧力のばらつきを抑制することができる。さらに、共通供給路2134と共通回収路2144とは、それぞれ2つずつ配備するだけでよい。
このように本実施形態では、液体供給開口と液体回収開口の配備数を低減して、インク流路の構造を簡略化することができる。
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
図40から図42は、本実施形態における液体吐出ユニット600を示した図であり、前述した実施形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。図40は、液体吐出ユニット600の分解斜視図であり、図41は、液体吐出ユニット600の分解平面図である。図42(a)は、本実施形態における記録素子基板610の平面図であり、図42(b)は、吐出口列14の端部の構造を説明するための透視図である。
本実施形態における記録素子基板610は、その外形が平行四辺形となっており、第1の適用例における図37(a)の記録素子基板10と比べて、吐出口列14の端部と素子基板端部との間の領域aが小さい(図42(a)参照)。本実施形態においては、記録素子基板610と外部との間の電気信号の送受信を行うため接続パッド16および記録素子15などの駆動回路は、図42(a)のように記録素子基板610の長辺側に配置される。なお、外形は平行四辺形に限らず長方形であってもよい。このような記録素子基板610を組み合わせて長尺の液体吐出ヘッド(ラインヘッド)を構成する場合には、それらの記録素子基板10を千鳥状ではなく、図23(d)と図23(e)や図42(a)のように実質的に1列状に配置する。つまり、隣接する素子基板同士が液体吐出ヘッドの長尺方向と短手方向のいずれも部分的に重なり合うように配置する。このような配置により、互いに隣接する記録素子基板10における吐出口列14の端部同士を、図42(a)中の上下方向であるの第2の方向において、容易にオーバーラップさせることができる。
ここで、「実質的に1列状に配置」とは、図42(a)のように吐出口列14において吐出口13が延在する第1の方向と、第1の方向と交差する方向の第2の方向との双方で、互いに隣接する記録素子基板610が部分的に重なり合って配置されることである。
このように、本実施形態においては、記録素子基板610の端部近傍にまで吐出口13が配される。このような形態においては、第1の適用例における図37(b)、(c)のように、記録素子基板610の吐出口列14の端部と重なる位置に液体供給開口2133または液体回収開口2143を配置することは困難である。よって、本実施形態においては、図42(b)のように、吐出口列14の端部よりも中央側にずれた位置に液体供給開口2133または液体回収開口2143が配置される。
本実施形態においては、各圧力室23におけるインク循環流量および圧力のばらつきの抑制、さらに記録素子基板610内の温度分布を抑制するために、図40および図41のように、吐出口列14の両端部近傍のそれぞれに液体供給開口2133が配備されている。
本実施形態のように、吐出口列14の端部近傍に液体供給開口2133が配置される場合、吐出口列14の端部に位置する液体供給路18と液体回収路19との間の差圧は、インク吐出時の方が、初期差圧よるインク循環時よりも大きくなる。一方、第1の適用例のように、吐出口列14の端部に液体回収口2133が配置されている場合、吐出口列14の端部における液体供給路18と液体回収路19との間の差圧は、インク吐出時の方が、初期差圧よるインク循環時よりも小さくなる。液体供給路18と液体回収路19との間の差圧が小さくなるとインク循環流量が少なくなり、吐出口13からのインク中の水分蒸発による影響、つまりインクの吐出速度の低下、およびインクの色材濃度の変化を抑制する効果が小さくなる。そのため、その差圧は大きい方がよい。本実施形態のように、吐出口列14の両端部近傍に液体供給開口2133を配備することにより、インク循環流量のばらつきの影響を低減することができる。
液体供給開口2133内の圧力は、インク循環流を生じさせるために液体回収開口2143内の圧力よりも高く設定されており、インクの吐出時には、液体供給開口2133を通して圧力室23内にインクが供給しやすくなる。このようにインクを供給しやすくする液体供給開口2133を吐出口列14の端部近傍に配置することにより、多数の吐出口13からインクを同時に吐出した際に、液体供給路18および液体回収路19において生じる圧力損失を小さくすることができる。
また本実施形態においては、前述したように、吐出口列14の端部と素子基板端部との間の領域aが小さいため、インクの吐出時に発生する熱が領域aから放熱される程度は小さい。領域aが小さいことにより、図42(b)のように、液体供給開口2133から吐出口列14の端部までの間における液体供給路18の部分が長くなり、同様に、液体回収開口2143から吐出口列14の端部までの間における液体回収路19の部分が長くなる。したがって、それらの液体供給路18および液体回収路19の部分を通るインクは、記録素子基板610から熱を受け取りやすくなる。そのため、多数の吐出口13からインクを同時に吐出した際には、吐出口列14の端部の温度は、他の部分よりも高くなる傾向となる。また、インク吐出時に、それぞれのインク流路に生じる圧力損失も大きくなり、吐出口列14の端部では圧力のばらつきが大きくなる。
また、本実施形態においては、前述したように、吐出口列14の両端部のそれぞれに液体供給開口2133を配置している。そのため、吐出口列14の端部近傍の吐出口13に対しては、その近傍に配置されている液体供給開口2133から多くのインクが供給されることとなる。この結果、多数の吐出口13からインクを同時に吐出する際に、液体供給開口2133から供給される高温のインクの量が少なくなり、吐出口列14の端部の昇温を低減することができる。
具体的に、液体供給開口2133から供給されるインクは、まず、図42(b)中の矢印B1のように、液体供給路18から供給口17aに入る。その後、そのインクは、矢印B2のように、吐出口列14の端部に位置する圧力室23および回収口17bを通ってから、矢印A3のように液体回収路19を通って液体回収開口2143から流出する。
このように本実施形態においては、吐出口列14の両端部のそれぞれに液体供給開口2133を配置することにより、インクの循環流量およびの圧力のばらつきを抑制すると共に、液体吐出ヘッド内の温度分布を小さく抑えることができる。よって、吐出口13からのインク中の水分蒸発によるインクの吐出速度低下、およびインクの色材濃度の変化を抑制し、かつインクの吐出特性のばらつきを抑制して、より高精細で高品位な画像を記録することが可能となる。
(液体供給開口と液体回収開口の配置構成)
図43は、全吐出口から吐出した際の記録素子基板610の温度分布を示したグラフである。次に、本実施形態における記録素子基板610全体の温度分布について説明する。記録素子基板610は、50度で温調制御されている状態である。インク循環流の流量よりも吐出による流量の方が大きいため、液体回収開口2143におけるインクの流れの向きは吐出口に向けた流れとなっている。また、液体供給開口2133と液体回収開口2143の流量は液体供給開口2133の方が多い傾向となっている。図43(a)は、比較例として、1つの吐出口列14に対して液体供給開口2133と液体回収開口2143がそれぞれ1つ配置されている場合の温度分布である。液体供給路18や液体回収路19を流れるインクが記録素子基板610から熱を受け取り中央部の温度が高くなっている。また、液体供給開口2133と液体回収開口2143の温度を比較すると、液体供給開口2133の方が流量が大きいため、液体供給開口2133の温度が低くなっている。なお、液体回収開口2143が逆流しない場合においても、一度記録素子基板610を流れて熱を受け取ったインクが液体回収開口2143を流れるため、液体供給開口2133の温度が低くなる傾向である。図43(b)は、本実施形態における1つの吐出口列に対して液体供給開口2133と液体回収開口2143とがそれぞれ複数個交互に配置されている場合の温度分布である。液体供給開口2133と液体回収開口2143との距離が短いため、液体供給路18と液体回収路19を流れる長さが短くなるため、その間での昇温が小さくなり、特に液体回収開口2143と同じような温度となっている。さらに、液体供給開口2133と液体回収開口2143とが交互に並んでいるため、液体供給路18と液体回収路19を流れる最大長さが短くなるため、昇温が小さくなっている。
このように、本実施形態においては、1つの吐出口列に対して液体供給開口2133と液体回収開口2143とがそれぞれ複数個交互に配置されていることにより、比較例である図43(a)と比べて記録素子基板610内での温度差を小さくすることができる。よって、吐出特性のばらつきを抑制することができるため、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。尚、本実施形の効果は、液体供給開口2133と液体回収開口2143のいずれか一方が少なくとも2つ以上あれば効果を得られる。
図44(a)は、記録素子基板610の平行四辺形に合わせて複数の吐出口列14に対する液体供給開口2133と液体回収開口2143とが互いにずれて配置されている場合のそれぞれの吐出口列14での温度分布を示したグラフである。吐出口列の位置による各吐出口列自体の温度絶対値の違いはあるが、液体供給開口2133と液体回収開口2143のずれに合わせて温度が高い位置と低い位置がずれていることが分かる。図44(b)は、図44(a)の温度分布を吐出口列14の列方向に平均したグラフである。各吐出口列における温度が高い位置と低い位置がずれているため、平均化すると記録素子基板610内の温度差は、図44(a)の全ての吐出口列を考えた際の温度差よりも小さくなっている。よって、記録物の走査方向(液体吐出ヘッドと記録物の相対的な走査方向)が吐出口列14の列方向の向きと垂直方向だとすると、記録物に対する温度差による吐出特性のばらつきの影響を平均化することができる。
このように、液体供給開口2133と液体回収開口2143とが互いにずれて配置されていることにより、液体供給開口2133と液体回収開口2143の配置起因の温度差を平均化することができる。よって、吐出特性のばらつきを抑制することができるため、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。
(液体供給開口と液体回収開口の形状の変形例)
図45は、液体供給開口2133または液体供給開口2143の形状に関する変形例を示した図である。図45(a)は蓋部材620および記録素子基板610を吐出口とは反対の面から見た図である。図45(b)は、図45(a)の液体供給開口2133の詳細を示す図であり、記録素子基板10上の液体供給路18も合わせて示している。図45(c)は、蓋部材620に第4流路層224を備える支持部材30または第1流路部材50を接合した様子を示す。図45(b)に示すように、液体供給開口2133は、記録素子基板610の外形に合わせて平行四辺形の形状をしている。このように平行四辺形することで、図45(c)の蓋部材620と第4流路層224との接合面の幅W5や、液体供給開口2133の液体が流れる方向に直行した断面積をより大きくとることができる。つまり、蓋部材620と第4流路層224を接合する際の接着剤等のはみ出しを考慮すると液体供給開口2133と共通供給路2134との外形の最小間隔W6を大きくとることが望ましい。液体供給開口2133を平行四辺形とすることで、液体供給開口2133の断面積および幅W5および間隔W6をより大きくすることができる。リソグラフィ加工をすることで、本形状のような微細かつ複雑な形状も加工可能であり、液体供給開口2133や液体回収開口2143の断面積と、蓋部材620と支持部材30や第1流路部材50との接合面を大きくしやすくなる。
(蓋部材の線膨張係数)
複数の記録素子基板が配列される液体吐出ヘッドでは、記録素子基板毎に蓋部材620が分かれていることにより、素記録子基板配置精度の悪化を抑制することができる。つまり、図23(d)や図24(e)に示すような液体吐出ヘッドにおいて、特許文献1のように、複数の記録素子基板に対して、長尺方向に一体化した蓋部材を用いた場合は、温度変化に対して蓋部材の線膨張係数が影響して記録素子基板の配置精度が悪化することがある。これに対して本実施形態のように記録素子基板毎に蓋部材620が分かれていることで、液体吐出ヘッドの長尺方向の温度変化による記録素子基板の配置精度の悪化は、蓋部材の線膨張係数ではなく、記録素子基板を支持する部材の線膨張係数に依るところが大きい。蓋部材620に樹脂フィルムを用いる際は一般に線膨張係数が30ppm程度である。これに対して、例えば複数の記録素子基板610を支持する部材にアルミナを用いた際は7ppm程度、線膨張係数を低減するフィラーを充填した樹脂材を用いる際は20ppm程度にすることができる。つまり、記録素子基板毎に蓋部材620を分け、複数の記録素子基板610を一体的に支持する部材の線膨張係数を小さくすることで、記録素子基板配置精度を向上させることができる。
(隣接基板の隙間部)
本実施形態では、記録素子基板毎に個別の蓋部材620を設ける構成とすることで、記録素子基板610同士のつなぎ目での吐出口列のずれ幅を低減することができる。つまり、互いに隣接する記録素子基板に跨って蓋部材を形成する場合は、記録素子基板を蓋部材に接合する際に接着剤が必要になる場合があり、その様な場合は、接着剤の拡がりや這い上がりを考慮して隣接する記録素子基板間を広げる必要がある。これに対して、本実施形態では、後述する第4の実施形態における隣接基板の隙間部の構成(1)と(2)をとることで、接着剤の拡がりや這い上がりを考慮せずに隣接する記録素子基板同士を近づけることが可能となる。その結果、記録素子基板のつなぎ目での記録物への走査方向への記録素子基板同士のずれ幅を低減し、吐出口列のずれ幅を低減することができる。よって、つなぎ目の画像におけるムラ等の不具合を低減し、高品位な画像形成が可能となる。
(第4の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第4の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
(隣接基板の隙間部の構成(1))
図46、図47は、本実施形態における隣接する記録素子基板の隙間部の構成の1例を示した図である。図46は、本実施形態の液体吐出ヘッドの概略図であり、図46(a)は、斜視図、図46(b)は、分解した状態の斜視図である。図47は、本実施形態における隣接素子基板間の概略図であり、図47(a)は、上面図であり、図47(b)は、図47(a)のXLVIIb-XLVIIbにおける断面図である。
本実施形態では、記録素子基板10の裏面に蓋部材20が配置されており、吐出口13に液体を供給するための液体供給路18が記録素子基板10の裏面にあり、蓋部材20は液体供給路18の蓋となっている。さらに、液体供給路18に液体を供給するための液体供給開口2133が蓋部材20に設けられており、支持部材50内に設けられた供給路と連通している。
本実施形態では、支持部材である第1流路部材50の溝55の上に突き出した記録素子基板50の領域にも吐出口13を配置することで、記録素子基板のつなぎ目での吐出口列のずれ幅を低減するように構成されている。図47(b)に示すように、記録素子基板10が互いに隣接する隙間部では、第1流路部材50の溝の上に突き出している箇所の記録素子基板10にも液体供給路18が配置されていて、蓋部材20が液体供給路18の蓋となっている。そして、隣接する隙間部では蓋部材20と支持部材50との接合部が、記録素子基板の外縁端部から内側に入り込んでいる。このように、溝55の上に突き出した箇所の液体供給路18を蓋部材20で蓋をすることにより、記録素子基板50の裏面に配置された液体供給路18を介して、第1流路部材50の端部よりも外側に突き出した箇所の吐出口13にも液体を供給することが可能となる。つまり、まずは第1流路部材上に設けられた溝55の幅(第1流路部材50の長手方向の長さ)を記録素子基板同士の隙間の幅よりも大きくすることにより、隣接する記録素子基板同士の間隔を小さくすることができる。さらに、第1流路部材50の溝55の上に突き出した箇所の液体供給路18を蓋部材20で蓋をすることで、記録素子基板10の端部まで吐出口13を配置することができ、記録素子基板のつなぎ目での吐出口列のずれ幅をさらに低減することができる。例えば、本実施形態を用いることで記録素子基板同士の間隔が0.2mmから0.03mmに低減した場合を比較する。記録素子端部から0.05mmの位置に吐出口列端部の吐出口を配置可能でチップの斜辺の角度が45度の場合は、吐出口列のずれ幅が約0.42mmから約0.18mmとなり、本発明により大幅に吐出口列のずれ幅を低減することができた。
このように、記録素子基板10と第1流路部材50の接合に接着剤を用いた場合にも、記録素子基板のつなぎ目での記録物への走査方向への記録素子基板同士のずれ幅を低減し、吐出口列のずれ幅を低減することができる。その結果、つなぎ目の画像におけるムラ等の不具合を低減し、高品位な画像形成が可能となる。
また、本実施形態では、記録素子基板10の外形よりも蓋部材20の外形が小さくなっているとよい。つまり、つなぎ目において蓋部材20の加工精度に依らず、隣接する記録素子基板同士を近づけることが可能となり、記録素子基板のつなぎ目での記録物への走査方向への記録素子基板同士のずれ幅を低減し、吐出口列のずれ幅を低減することができる。その結果、つなぎ目の画像におけるムラ等の不具合を低減し、高品位な画像形成が可能となる。
(隣接基板の隙間部の構成(2))
図48から図49は、本実施形態における隣接基板の隙間部の構成の1例を示した図である。図48は、本構成例の液体吐出ヘッドの概略図であり、図48(a)は斜視図であり、図48(b)は分解した状態の斜視図である。図49は、本実施形態の隣接素子基板間の概略図であり、図49(a)は上面図、図49(b)は、図49(a)のXLIXb-XLIXbにおける断面図である。
ここで、隣接する記録素子基板同士の間隔が0.2mmから0.02mmに低減した場合を比較する。記録素子端部から0.05mmの位置に吐出口列端部の吐出口を配置可能でチップの斜辺の角度が45度の場合は、吐出口列のずれ幅が約0.42mmから約0.17mmとなり、本発明により大幅に吐出口列のずれ幅を低減することができた。
このように、本発明は記録素子基板10のつなぎ目での記録物への走査方向への素子同士のずれ幅を低減し、吐出口列のずれ幅を低減することができる。その結果、つなぎ目の画像におけるムラ等の不具合を低減し、高品位な画像形成が可能となる。
また、前述した構成例と同様に、記録素子基板の隣接部における吐出口面への接着剤の這い上がりを抑制することができる。蓋部材20と第1流路部材50の接合に接着剤を用いた場合、本実施形態のように第1流路部材50の端部より蓋部材20と記録素子基板10の端部が外側に突き出していることで、はみ出た接着剤は突き出した蓋部材20の裏面に溜まる。よって、外側に突き出していない構成と比較して、隣接部における吐出口面への接着剤の這い上がりを抑制することができる。
なお、隣接基板の隙間部の構成について、本実施形態のような平行四辺形の記録素子基板10を用いて説明したが、平行四辺形に限るものではない。例えば長方形の記録素子基板10を複数並べた液体吐出ヘッドにも適用される。
(第5の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第5の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。本実施形態においても上述した各実施形態と同様に、蓋部材として第3流路流路層223を備える。
図50および図51は、本実施形態における液体吐出ユニット700を示した図であり、前述した実施形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。図50は、液体吐出ユニット700の分解斜視図であり、図51は液体吐出ユニット700の分解平面図である。
本実施形態では、図50のように、4つの吐出口列14(14A、14B、14C、14D)に対して、3つの液体供給路18(18A、18B、18C)と2つの液体回収路19(19A、19B)が配置されている。図51のように、吐出口列14A、14Bの間には、それらに共通の回収口17bが配置されており、その回収口17bは液体回収路19Aに連通されている。また、吐出口列14B、14Cの間には、それらに共通の供給口17aが配置されており、その供給口17aは液体供給路18Bに連通されている。また、吐出口列14C、14Dの間には、それらに共通の回収口17bが配置されており、その回収口17bは液体回収路19Bに連通されている。吐出口列14Aの供給口17aは液体供給路18Aに連通され、吐出口列14Dの供給口17aは液体供給路18Cに連通されている。
このように、1つの液体供給路18Bは、2つの吐出口列14B、14Cに対して共通の供給口17aを介して、それらの吐出口列14B、14Cの圧力室23に連通している。また、1つの液体回収路19Aは、2つの吐出口列14A、14Bに対して共通の回収口17bを介して、それらの吐出口列14A、14Bの圧力室23に連通している。同様に、1つの液体回収路19Bは、2つの吐出口列14C、14Dに対して共通の回収口17bを介して、それらの吐出口列14C、14Dの圧力室23に連通している。
本実施形態によれば、上述した実施形態の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。すなわち、互いに隣接する2つの吐出口列が液体供給路18および液体回収路19を共有化することにより、インク流路間の隔壁およびインク流路の数を減らすことができる。よって、吐出口列14同士の間隔を狭めること、およびインク流路の幅を大きくすることが可能となる。この結果、各圧力室23におけるインク循環流量および圧力のばらつきをさらに抑制した上、上述した実施形態に比べて吐出口列14をさらに高密度に配置して、液体吐出ユニット700ひいては液体吐出ヘッドのサイズを小さくすることができる。また、吐出口列14の配置密度が同じ場合には、各圧力室23におけるインク循環流量および圧力のばらつきを更に抑制した上、液体供給開口2133および液体回収開口2143の配備数を低減することができる。このため、液体吐出ユニット700におけるインクの流路構造の簡素化が可能となる。
(第6の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第6の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。本実施形態においても上述した各実施形態と同様に、蓋部材として第3流路流路層223を備える。
図52および図53は、本実施形態における液体吐出ユニット800を示した図であり、前述した実施形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。図52は液体吐出ユニット800の分解斜視図であり、図53は液体吐出ユニット800の分解平面図である。
本実施形態では、1つの液体吐出ユニット800内に、異なる色または異なる種類のインクを吐出するために、第1インク用の吐出口13Mを配列した吐出口列と、第2インク用の吐出口13Yを配列した吐出口列と、が形成されている。第2流路層222には、第1インク用の液体供給路18M、第2インク用の液体供給路18Y、第1インク用の液体回収路19M、および第2インク用の液体回収路19Yが形成されている。第3流路層223には、第1インク用の液体供給開口2133M、第2インク用の液体供給開口2133Y、第1インク用の液体回収開口2143M、および第2インク用の液体回収開口2143Yが形成されている。第4流路層224には、第1インク用の共通供給路2134M、第2インク用の共通供給路2134Y、第1インク用の共通回収路2144M、および第2インク用の共通回収路2144Yが形成されている。第5流路層225には、第1インク用の個別供給口2135M、第2インク用の個別供給口2135Y、第1インク用の個別回収口2145M、および第2インク用の個別回収口2145Yが形成されている。第6流路層226には、第1インク用の共通供給流路211M、第2インク用の共通供給流路211Y、第1インク用の共通回収流路212M、および第2インク用の共通回収流路212Yが形成されている。
第1および第2インクのそれぞれは、第1の適用例と同様に、共通供給流路211Mおよび211Yから供給され、対応する圧力室23を通った後、共通回収流路212Mおよび212Yから流出される。
なお、第5の実施形態と同様に、2つの吐出口列の圧力室に対して、1つの液体供給路を共通に連通させるように構成してもよく、同様に、2つの吐出口列の圧力室に対して、1つの液体回収路を共通に連通させるように構成してもよい。また、第2の方向における第6流路層226の幅は、第2の方向における記録素子基板10の幅よりも大きく設定してもよい。
このように、多色インク用または多種類インク用の液体吐出ヘッドにおいても、液体供給路および液体回収路の幅を広げることなく、各圧力室におけるインク循環量および圧力ばらつきを抑制することができる。よって、吐出口からのインク中の水分蒸発によるインクの吐出速度の低下、およびインクの色材濃度の変化を抑制して、より高精細で高品位な画像を記録することができる。
(流路18M、流路19M、および流路18Y、流路19Yの配置関係)
さらに第1インク用の液体供給路18Mと液体回収路19M、および第2インク用の液体供給路18Yと液体回収路19Yの配置関係は、以下のように設定するとよい。すなわち、図54のように、第1インクの吐出口列と第2インクの吐出口列間の共通流出流路19Mと共通供給流路18Yの梁幅を梁幅W4とし、梁幅W1よりも梁幅W4を大きく設定する。梁幅W4を大きくすることで、共通流出流路19Mと共通供給流路18Yとの間でインクリークによる混色の発生を抑制することができる。ここで、梁幅W3と梁幅W4との関係は、同じ幅でもよいし、異なる幅でもよい。特に梁幅W3の方が大きい場合はインクの流れに対する流路圧力損失を低減可能であり、吐出特性を良くすることに繋がる。このように、インク循環流の逆流を抑制し、液体供給路内の圧力を負圧に保ちながら、インクの混色の発生を抑制することが可能となる。
(第7の実施形態)
以下、本発明の第7の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
本実施形態では、前述した実施形態とは異なり、インク循環流を発生させない液体吐出ヘッドである。各吐出口列に対して、供給口と液体供給路と液体供給開口と個別供給流路と連通口と共通供給口が連通している。
インク循環流を発生させない液体吐出ヘッドでも、液体供給口の形状精度は配置精度を高くすることで、吐出口が高密度に配置された液体吐出ヘッドにおいても流路抵抗ばらつき、つまりは吐出時に供給流路で生じる圧力損失のばらつきを低減可能である。よって、吐出口メニスカス界面の圧力ばらつきを低減でき、均一な大きさの液滴を吐出することができるため、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。