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JP7021944B2 - 積層体及びその製造方法 - Google Patents
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JP7021944B2 - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は積層体及びその製造方法に関する。
従来より、化粧料や食品等の包装容器等の分野において、容器やトレイ等に接触し得る物体(例えば化粧料や食品そのものといった、容器内に充填されたり膜で包装されたりする対象の物)や汚れ等の流動物の付着を防止する表面膜が開発されてきた。最近では、繊維状の高分子が三次元方向に相互に絡み合った網目構造の骨格を形成し、その空隙として連続細孔構造を有する多孔質高分子膜と、前記多孔質高分子膜の孔内部に含浸された滑剤液とを有することを特徴とする滑水・滑油性膜が知られており(特許文献1)、特許文献1では、滑剤液としてフッ素系油又はシリコーン油が例示されている(請求項7)。
特開2016-011375号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、表面膜と包装容器等の基材との接着性が十分ではなく、表面膜の耐久性にも課題があった。
従って本発明は、積層体を構成する上層体と下層体との接着性に優れ、上層体が有する性能を維持できる性能(上層体の耐久性)にも優れた構造を有する積層体に関する。更に本発明はかかる積層体の製造方法に関する。
本発明は、下記〔1〕~〔2〕に関する。
〔1〕 上層体と下層体とが積層されている積層体であって、該上層体が、カルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と、SP値が10以下の有機媒体とを有する膜であり、該下層体が、水素結合基を有する樹脂を含む下層体である、積層体。
〔2〕 カルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と、SP値が10以下の有機媒体とを含む塗工液を、水素結合基を有する樹脂を含む下層体に塗工する工程を含む、積層体の製造方法。
本発明によれば、上層体と下層体との接着性に優れ、かつ上層体が有する性能を維持できる性能(上層体の耐久性)にも優れた構造を有する積層体、及び該積層体の製造方法が提供される。
図1は、本発明の積層体の一態様の断面構造を示す模式図である。 図2は、本発明の積層体の別の一態様、即ち、下層体の下面に更に基材が積層された積層体の断面構造を示す模式図である。
〔積層体〕
本発明の積層体は、上層体と下層体とが積層されている積層体である。
本発明の積層体の好ましい一態様は、下層体の上面に上層体が積層されている積層体であり、その断面図は図1で模式的に示される。図1で示されるように、本態様の構造は、下層体2の一方の表面である上面に上層体1が積層した構造である。
本発明の積層体の好ましい別の態様は、前記態様の積層体にさらに基材が積層されてなる積層体、例えば下層体の上面に上層体が積層され、該下層体の下面に、基材が更に積層されている積層体であり、その断面図は図2で模式的に示される。図2で示されるように、本態様の構造は、下層体2の上面に上層体1が積層し、下層体2の他方の表面である下面に基材3が積層した構造である。上層体は基材とは直接接触しない位置にあり、上層体と基材との間に下層体が位置し、下層体が基材と接触する。本態様では、下層体2は上層体1と基材3との接着剤としての役割を果たす。
本発明の積層体には、上層体、下層体及び基材以外の層又は膜、例えば、印刷層、ガスバリア層、接着層、シーラント層等が含まれていてもよい。このような層又は膜は、通常、基材の下層体に接していない側に積層される。
本発明の積層体の厚さとしては、積層体としての機械的強度を確保する観点から、好ましくは0.6μm以上であり、より好ましくは2μm以上であり、更に好ましくは13μm以上である。一方、積層体としての柔軟性を確保する観点から、好ましくは240μm以下であり、より好ましくは170μm以下であり、更に好ましくは125μm以下である。
積層体における上層体の厚さとしては、滑液表面性を確保する観点から、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。一方、経済性の観点から、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは80μm以下であり、更に好ましくは60μm以下である。
積層体における下層体の厚さとしては、接着性及び耐久性を確保する観点から、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは1μm以上であり、更に好ましくは3μm以上である。一方、経済性の観点から、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは10μm以下であり、更に好ましくは5μm以下である。
積層体における基材の厚さとしては、積層体としての機械的強度を確保する観点から、好ましくは8μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、更に好ましくは50μm以上である。一方、積層体としての柔軟性を確保する観点から、好ましくは120μm以下であり、より好ましくは80μm以下であり、更に好ましくは60μm以下である。
本発明の積層体が、接着性及び耐久性に優れることのメカニズムは定かではないが、水素結合基を有する樹脂を下層体に使用することで、上層体と下層体との相互作用により接着性が向上し、また、下層体が上層体の構成成分である有機媒体を吸収し難くする結果、上層体が有する性能を維持できる性能(上層体の耐久性)が向上するものと推定される。
本発明の積層体は、各種用途の素材、例えば、日用品、化粧品、家電製品などの包装材として、ブリスターパックやトレイ、お弁当の蓋等の包装容器、食品容器、工業部品の輸送や保護に用いる工業用トレイ等に好適に用いることができる。
[上層体]
上層体は、疎水変性セルロース繊維及びSP値が10以下の有機媒体を有する膜である。
ここで膜とは、室温で流動せずに形状を保持する膜をいう。
膜の表面硬度としては、例えば、微小硬度計で測定した場合、下記式により算出されるマルテンス硬さ(HM)が0.1(N/mm)以上であることが好ましい。具体的には、後述の実施例に記載の方法により膜のマルテンス硬さが測定される。
HM=F/(26.43×hmax
F:試験力(N)
hmax:押し込み深さの最大値(mm)
本発明の積層体は、文献(超撥水・超撥油・滑液性表面の技術/発行者:元木浩/発行所:サイエンス&テクノロジー株式会社/2016年1月28日発行)に示される滑液表面性を示すことが好ましい。滑液表面性は、積層体の上層表面である上層体によって発現され、後述の実施例に記載の方法により評価することができる。
滑液表面性は、例えば、論文(Nature 2011年、vol477,p443-447)記載の方法により測定することができる。具体的には、滑液表面性は、室温20℃にて、膜表面に対して2μLの液滴(20℃)を滴下し、10秒静置した後に1°/sの速さで表面を傾け、液滴が流れ始める角度(以下、滑落角ともいう。)を測定することにより評価できる(滑落角測定試験)。例えば、前記測定方法で液滴としてドデカンを用いた場合、膜における滑落角は、滑液表面性を発現する観点から、好ましくは80°以下、より好ましくは50°以下、更に好ましくは40°以下である。
本発明の積層体における上層体の算術平均粗さは、積層体が滑液表面性を確保する観点から、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは0.7μm以上であり、更に好ましくは1.0μm以上である。一方、経済性の観点から、好ましくは10.0μm以下であり、より好ましくは5.0μm以下であり、更に好ましくは2.0μm以下である。積層体の上層体面の算術平均粗さは後述の実施例に記載の方法により求める。
本発明における上層体は、例えば、各種の素材の固体表面を滑液表面に改質するための膜である。滑液表面に改質することにより、固体表面に流動物の付着を抑制する効果(付着抑制効果)を付与することができる。
本発明の膜は膜上に接触する流動物の付着抑制効果が高いことが一つの特徴である。具体的には、滑落速度は、好ましくは1.5cm/分以上、より好ましくは2.0cm/分以上、更に好ましくは2.5cm/分以上である。なお、滑落速度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
上層体中の疎水変性セルロース繊維の量としては、特に限定されないが、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは6質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
上層体中のSP値が10以下の有機媒体の含有量としては、特に限定されないが、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。有機媒体が2種以上の場合、有機媒体の量は各有機媒体の合計量である。
上層体においては、前記疎水変性セルロース繊維及びSP値が10以下の有機媒体以外の成分、例えば、ポリマーや低分子活性剤、フィラー、可塑剤等の添加剤を含んでいてもよい。ポリマーの具体例としては、ポリアミド樹脂等が挙げられる。上層体中のこれら添加剤の含有量としては、本発明の効果を発現する観点から、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。
<疎水変性セルロース繊維>
本発明における疎水変性セルロース繊維とは、カルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上の基に修飾基が結合されてなるものである。
(セルロース繊維)
原料のセルロース繊維としては、環境面から好ましくは天然セルロース繊維であり、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(酸化セルロース繊維)
前記原料セルロース繊維を公知の方法により酸化したものが、カルボキシ基含有セルロース繊維(以下、酸化セルロース繊維ともいう。)である。
酸化セルロース繊維は、例えば、触媒として2,2,6,6,-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)を使用し、更に次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、臭化ナトリウム等の臭化物を併用して酸化する方法が適用できる。より詳細には、特開2011-140632号公報に記載の方法を参照することができ、更に、追酸化処理又は還元処理を行うことで、アルデヒドを除去した酸化セルロース繊維として調製することができる。
TEMPOを触媒としてセルロース繊維の酸化を行うことにより、セルロース構成単位のC6位の基(-CHOH)が選択的にカルボキシ基に変換される。従って、本発明における酸化セルロース繊維の好ましい態様として、セルロース構成単位のC6位がカルボキシ基であるセルロース繊維が挙げられる。
(カルボキシ基含有量)
酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量としては、修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.4mmol/g以上、更に好ましくは0.6mmol/g以上、更に好ましくは0.8mmol/g以上である。また、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。なお、「カルボキシ基含有量」とは、疎水変性セルロース繊維又は酸化セルロース繊維を構成するセルロース中のカルボキシ基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
また、酸化セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比の好適な範囲は、後述の疎水変性セルロース繊維と同様であり、また、後述の疎水変性セルロース繊維と同様の測定方法により求めることができる。
(修飾基)
本明細書において、疎水変性セルロース繊維における修飾基の結合とは、酸化セルロース繊維表面のカルボキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる1種以上の基に、好ましくはカルボキシ基に、修飾基がイオン結合及び/又は共有結合を介して結合している状態のことを意味する。カルボキシ基への結合様式としては、イオン結合、共有結合が挙げられる。ここでの共有結合としては、例えば、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合が挙げられ、なかでも、接着性及び耐久性の観点から、好ましくはアミド結合である。また、水酸基への結合様式としては、共有結合が挙げられ、具体的には、エステル結合;カルボキシメチル化、カルボキシエチル化などのエーテル結合;ウレタン結合が挙げられる。接着性及び耐久性の観点から、本発明における疎水変性セルロース繊維としては、酸化セルロース繊維表面に既に存在するカルボキシ基に、修飾基を導入するための化合物をイオン結合及び/又はアミド結合させることにより得られるものが好ましい。
(修飾基を導入するための化合物)
修飾基を導入するための化合物としては、後述の修飾基を導入可能なものであればよく、結合様式によって、例えば、以下のものを用いることができる。イオン結合の場合は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物のいずれでもよい。これらの中では、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物である。また、前記のアンモニウム化合物やホスホニウム化合物の陰イオン成分としては、反応性の観点から、好ましくは、塩素イオンや臭素イオンなどのハロゲンイオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェイトイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヒドロキシイオンが挙げられ、より好ましくは、ヒドロキシイオンが挙げられる。共有結合の場合は置換される官能基によって以下のものを用いることができる。
カルボキシ基への修飾においては、アミド結合の場合は、第1級アミン、第2級アミンのいずれでもよい。エステル結合の場合は、アルコールがよく、例えば、ブタノール、オクタノール、ドデカノールが例示される。ウレタン結合の場合は、イソシアネート化合物がよい。
水酸基への修飾においては、エステル結合の場合は、酸無水物がよく、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸が例示される。エーテル結合の場合は、エポキシ化合物(例えば、酸化アルキレンやアルキルグリシジルエーテル)、アルキルハライド及びその誘導体(例えば、メチルクロライド、エチルクロライドやモノクロロ酢酸)が例示される。
本発明における修飾基としては、炭化水素基等を用いることができる。これらは単独で又は2種以上が組み合わさって、酸化セルロース繊維に結合(導入)されてもよい。
(炭化水素基)
炭化水素基としては、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が挙げられ、副反応を抑制する観点及び安定性の観点から、鎖式飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基であることが好ましい。
鎖式飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。鎖式飽和炭化水素基の炭素数は、接着性及び耐久性の観点から、一つの修飾基における炭素数は好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、更に好ましくは6以上、更に好ましくは8以上である。また、同様の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは24以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。なお、以降において炭化水素基の炭素数とは、一つの修飾基における炭素数のことを意味する。
鎖式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基等が挙げられ、接着性及び耐久性の観点から、好ましくはプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基である。これらは、単独で又は2種以上が任意の割合でそれぞれ導入されていてもよい。
鎖式不飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。鎖式不飽和炭化水素基の炭素数は、取り扱い性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上である。また、入手容易性の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは8以下である。
鎖式不飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブテン基、イソブテン基、イソプレン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ドデセン基、トリデセン基、テトラデセン基、オクタデセン基が挙げられ、接着性及び耐久性の観点から、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブテン基、イソブテン基、イソプレン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ドデセン基である。これらは、単独で又は2種以上が任意の割合でそれぞれ導入されていてもよい。
環式飽和炭化水素基の炭素数は、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上である。また、入手容易性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは8以下である。
芳香族炭化水素基の炭素数は、接着性及び耐久性の観点から、1つの修飾基の炭素数は6以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは18以下であり、更に好ましくは14以下であり、更に好ましくは10以下である。
修飾基が炭化水素基であり、該炭化水素基が置換基を有する場合は、修飾基における炭素数が上述の範囲を満たすことを条件として、置換基として、例えば炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基;アルコキシ基の炭素数が1~6の直鎖又は分岐のアルコキシカルボニル基;臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;炭素数1~6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1~6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1~6のジアルキルアミノ基や、水酸基、エーテル、アミド等を用いてもよい。なお、前述の各種の炭化水素基そのものが別の炭化水素基に置換基として結合していてもよい。
前記炭化水素基を導入するための第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、酸無水物、イソシアネート化合物は、市販品を用いるか、公知の方法に従って調製することができる。
第1~3級アミンとしては、接着性及び耐久性の観点から、炭素数が好ましくは2以上であり、より好ましくは6以上であり、同様の観点から、炭素数が好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは18以下である(ただし、アミノ変性シリコーン化合物を除く)。第1級アミン~第3級アミンの具体例としては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アニリン、及びベンジルアミン、並びにアミノ変性シリコーン化合物等が挙げられる。第4級アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラブチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。これらの中では、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、ジステアリルアミン、アミノ変性シリコーン化合物、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、アニリン、より好ましくはプロピルアミン、ドデシルアミン、アミノ変性シリコーン化合物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、アニリンであり、更に好ましくはアミノ変性シリコーン化合物である。
これらの化合物の中で、とりわけアミノ変性シリコーン化合物を用いて得られた疎水変性セルロース繊維が、上層体の原料として有用である。従って、疎水変性セルロース繊維の一態様として、酸化セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上の基に、アミノ変性シリコーン化合物によって導入される修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維が提供される。かかる疎水変性セルロース繊維を上層体の原料とした場合、優れた滑液表面性及び有機媒体の流動物への移行抑制性という効果を発揮することができる。
(アミノ変性シリコーン化合物)
アミノ変性シリコーン化合物としては、25℃での動粘度が10~20,000mm/s、アミノ当量400~8,000g/molのアミノ変性シリコーン化合物が好ましいものとして挙げられる。
25℃での動粘度はオストワルト型粘度計で求めることができ、接着性及び耐久性の観点から、より好ましくは200~10,000mm/s、更に好ましくは500~5,000mm/sである。
また、アミノ当量は、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは400~8,000g/mol、より好ましくは600~5,000g/mol、更に好ましくは800~3,000g/molである。なお、アミノ当量は、窒素原子1個当りの分子量であり、アミノ当量(g/mol)=質量平均分子量/1分子あたりの窒素原子数で求められる。ここで質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として求めた値であり、窒素原子数は元素分析法により求めることができる。
アミノ変性シリコーン化合物の具体例として、一般式(a1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007021944000001
〔式中、R1aは炭素数1~3のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~3のアルコキシ基又は水素原子から選ばれる基を示し、接着性及び耐久性の観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。R2aは炭素数1~3のアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子から選ばれる基であり、接着性及び耐久性の観点から、好ましくはメチル基又はヒドロキシ基である。Bは少なくとも一つのアミノ基を有する側鎖を示し、R3aは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を示す。x及びyはそれぞれ平均重合度を示し、該化合物の25℃の動粘度及びアミノ当量が前記範囲になるように選ばれる。尚、R1a、R2a、R3aはそれぞれ同一でも異なっていても良く、また複数個のR2aは同一でも異なっていても良い。〕
一般式(a1)の化合物において、接着性及び耐久性の観点から、xは好ましくは10~10,000の数、より好ましくは20~5,000の数、更に好ましくは30~3,000の数である。yは好ましくは1~1,000の数、より好ましくは1~500の数、更に好ましくは1~200の数である。一般式(a1)の化合物の質量平均分子量は、好ましくは2,000~1,000,000、より好ましくは5,000~100,000、更に好ましくは8,000~50,000である。
一般式(a1)において、アミノ基を有する側鎖Bとしては、下記のものを挙げることができる。
-C-NH
-C-NH-C-NH
-C-NH-[C-NH]-C-NH
-C-NH(CH
-C-NH-C-NH(CH
-C-NH-[C-NH]-C-NH(CH
-C-N(CH
-C-N(CH)-C-N(CH
-C-N(CH)-[C-N(CH)]-C-N(CH
-C-NH-cyclo-C11
(ここで、e、f、gは、それぞれ1~30の数である。)
本発明で用いるアミノ変性シリコーン化合物は、例えば、一般式(a2)で表されるオルガノアルコキシシランを過剰の水で加水分解して得られた加水分解物と、ジメチルシクロポリシロキサンとを水酸化ナトリウムのような塩基性触媒を用いて、80~110℃に加熱して平衡反応させ、反応混合物が所望の粘度に達した時点で酸を用いて塩基性触媒を中和することにより製造することができる(特開昭53-98499号参照)。
N(CHNH(CHSi(CH)(OCH (a2)
また、アミノ変性シリコーン化合物としては、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは側鎖Bの1個の中にアミノ基が1個有するモノアミノ変性シリコーン及び側鎖Bの1個の中にアミノ基が2個有するジアミノ変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはアミノ基を有する側鎖Bが-C-NHで表される化合物〔以下、(a1-1)成分という〕及びアミノ基を有する側鎖Bが-C-NH-C-NHで表される化合物〔以下、(a1-2)成分という〕からなる群から選ばれる1種以上である。
本発明におけるアミノ変性シリコーン化合物としては、性能の観点から、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSF4703(動粘度:1000、アミノ当量:1600)、TSF4708(動粘度:1000、アミノ当量:2800)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSS-3551(動粘度:1000、アミノ当量:1600)、SF8457C(動粘度:1200、アミノ当量:1800)、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、BY16-209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、BY16-892(動粘度:1500、アミノ当量:2000)、BY16-898(動粘度:2000、アミノ当量:2900)、FZ-3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、信越化学工業(株)製のKF8002(動粘度:1100、アミノ当量:1700)、KF867(動粘度:1300、アミノ当量:1700)、KF-864(動粘度:1700、アミノ当量:3800)、BY16-213(動粘度:55、アミノ当量:2700)、BY16-853U(動粘度:14、アミノ当量:450)が好ましい。( )内において、動粘度は25℃での測定値(単位:mm/s)を示し、アミノ当量の単位はg/molである。
(a1-1)成分としては、BY16-213及びBY16-853Uがより好ましい。(a1-2)成分としては、SF8417、BY16-209及びFZ-3760がより好ましい。
疎水変性セルロース繊維における修飾基、好ましくは、炭化水素基及びシリコーン基からなる群より選択される1種以上の基の平均結合量は、疎水変性セルロース繊維あたり、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.05mmol/g以上、更に好ましくは0.1mmol/g以上、更に好ましくは0.3mmol/g以上、更に好ましくは0.5mmol/g以上である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、更に好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下、更に好ましくは1.5mmol/g以下である。ここで、修飾基として鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、及び環式飽和炭化水素基から選ばれる炭化水素基と、芳香族炭化水素基とが同時に導入されている場合であっても、個々の平均結合量は前記範囲内であることが好ましい。
また、疎水変性セルロース繊維における修飾基の導入率は、いずれの修飾基についても、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上であり、反応性の観点から、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは50%以下である。
なお、本明細書において、修飾基の平均結合量は、修飾基を導入するための化合物の添加量、修飾基を導入するための化合物の種類、反応温度、反応時間、溶媒などによって調整することができる。また、疎水変性セルロース繊維における修飾基の平均結合量(mmol/g)及び導入率(%)とは、疎水変性セルロース繊維表面のカルボキシ基又は水酸基に修飾基が導入された量及び割合のことであり、疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量は公知の方法(例えば、滴定、IR測定等)に従って、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定することで算出することができ、疎水変性セルロース繊維の水酸基含有量は公知の方法(例えば、滴定、IR測定等)に従って測定することで算出することができる。
<疎水変性セルロース繊維の製造方法>
本発明で用いられる疎水変性セルロースセルロース繊維は、前記した酸化セルロース繊維に修飾基を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。例えば、酸化セルロース繊維に修飾基を導入する工程と、対象のセルロース繊維を微細化する工程を、順序に制限なく実施する方法が挙げられる。なお、ここでいう酸化セルロース繊維は、公知の方法、例えば、特開2011-140632号公報に記載の酸化反応工程の説明を参照して得られた酸化セルロース繊維として、あるいは、更に、追酸化処理又は還元処理を行うことで、アルデヒドを除去した酸化セルロース繊維として調製することができる。
(修飾基を導入する工程)
具体的な工程としては、修飾基をイオン結合によって酸化セルロース繊維に結合させる態様(態様A)、修飾基を共有結合によって酸化セルロース繊維に結合させる態様(態様B)が挙げられる。なお、共有結合として、アミド結合の場合を以下に示す。
(態様A)
酸化セルロース繊維と、修飾基を有する化合物とを混合する工程。
(態様B)
酸化セルロース繊維と、修飾基を有する化合物とをアミド化反応させる工程。
具体的な方法としては、態様Aは特開2015-143336号公報の工程(B)に記載の方法を、態様Bは特開2015-143337号公報の工程(B)に記載の方法を参照して実施することができる。なお、両公報の工程(B)における「EO/PO共重合部を有するアミン」は、本発明における「修飾基を導入するための化合物」に該当する。
(微細化工程)
本工程は、酸化セルロース繊維(又は修飾基が導入された酸化セルロース繊維)を微細化する工程であり、微細な酸化セルロース繊維が得られる。微細化工程では、精製工程を経た酸化セルロース繊維を溶媒中に分散させ、微細化処理を行うことが好ましい。具体的には、特開2013-151661号の微細化工程の説明を参照して実施することができる。
得られた疎水変性セルロース繊維の平均繊維径は、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.5nm以上、更に好ましくは1nm以上、更に好ましくは2nm以上、より更に好ましくは3nm以上である。また、同様の観点から、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下、更に好ましくは6nm以下、より更に好ましくは5nm以下である。
得られた疎水変性セルロース繊維の長さ(平均繊維長)としては、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上である。また、同様の観点から、好ましくは1000nm以下、より好ましくは750nm以下、更に好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下である。
また、得られた疎水変性セルロース繊維の平均アスペクト比(繊維長/繊維径)は、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは40以上、更に好ましくは50以上であり、同様の観点から、好ましくは150以下、より好ましくは140以下、更に好ましくは130以下、更に好ましくは100以下、更に好ましくは95以下、更に好ましくは90以下である。また、平均アスペクト比が前記範囲内にある場合、アスペクト比の標準偏差としては、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは45以下であり、下限は特に設定されないが、経済性の観点から、好ましくは4以上である。前記低アスペクト比の疎水変性セルロース繊維は分散体中での分散性に優れるため、均一性の高い膜を得ることができる。
疎水変性セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比は、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
<SP値が10以下の有機媒体>
本発明においては、前記のようにして定義されるSP値が10以下の有機媒体を、上層体を構成する潤滑油として使用する。
本明細書におけるSP値とは、Fedors法で計算される溶解度パラメーター(単位:(cal/cm1/2)を示し、例えば、参考文献「SP値基礎・応用と計算方法」(情報機構社、2005年)、Polymer handbook Third edition(A Wiley-Interscience publication, 1989)等に記載されている。
SP値が10以下の有機媒体の質量平均分子量には特に制限はないが、好ましくは100以上であり、また、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは20,000以下である。
本発明で使用されるSP値が10以下の有機媒体としては、例えば、オレイン酸(SP値:9.2)、D-リモネン(SP値:9.4)、PEG400(SP値:9.4)、コハク酸ジメチル(SP値:9.9)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(SP値:8.9)、ラウリン酸ヘキシル(SP値:8.6)、ラウリン酸イソプロピル(SP値8.5)、ミリスチン酸イソプロピル(SP値8.5)、パルミチン酸イソプロピル(SP値8.5)、オレイン酸イソプロピル(SP値:8.6)、ヘキサデカン(SP値:8.0)、オリーブ油(SP値:9.3)、ホホバ油(SP値:8.6)、スクアラン(SP値:7.9)、流動パラフィン(SP値:7.9)、フロリナートFC-40(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC-43(3M社製、SP値:6.1)フロリナートFC-72(3M社製、SP値:6.1)、フロリナートFC-770(3M社製、SP値:6.1)、KF96-1cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-10cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-50cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-100cs(信越化学社製、SP値:7.3)、KF-96-1000cs(信越化学社製、SP値:7.3)等が挙げられる。これらの中では、接着性及び耐久性の観点から、有機媒体のSP値は、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下、更に好ましくは8.5以下である。
<上層体の形成方法>
上層体を形成する方法の一例としては、上層体の構成成分である前記疎水変性セルロース繊維と前記有機媒体とを少なくとも含有する塗工液を調製し、次いで、この塗工液を下層体に塗工する方法が挙げられる。
(塗工液の調製)
塗工液は、前記疎水変性セルロース繊維及び前記有機媒体を混合することにより、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは有機溶媒と一緒に混合することにより調製することができる。
塗工液中の疎水変性セルロース繊維の量としては、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、更に好ましくは1.5質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは4.5質量%以下であり、更に好ましくは4.0質量%以下である。
塗工液中のSP値が10以下の有機媒体の量としては、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、更に好ましくは1.5質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは4.5質量%以下であり、更に好ましくは4.0質量%以下である。
有機溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、エタノール、メチルエチルケトン、トルエン等が挙げられる。
塗工液中の有機溶媒の量としては、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98質量%以下であり、更に好ましくは97質量%以下である。
塗工液には、これら以外の成分が含有されていていてもよい。
これらの成分の混合条件としては、例えば、15~35℃が好ましい。更に、混合時間としては、10分間~36時間が好ましい。
(下層体への塗工)
前記塗工液を、下層体に塗工する塗工方法としては、アプリケーター、バーコーター、ロールコーターを使用した方法や、グラビアコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等種々の塗工方法が挙げられる。
前記塗工液を下層体に塗工する際の塗工液の厚みとしては、滑液速度、耐久性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μmであり、塗布性の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下、更に好ましくは1200μm以下である。
次いで、塗布された塗工液を乾燥させる。乾燥条件としては、減圧下でも常圧下でもよく、温度範囲としては15~75℃が好ましい。また、乾燥のための時間としては、1~24時間が好ましい。
このようにして、膜状の上層体が形成される。
[下層体]
本発明における下層体とは、水素結合基を有する樹脂を含む下層体である。下層体は上層体と接触する層である。また、基材が有る場合は、下層体は基材に接触する層となる。
水素結合基を有する樹脂における水素結合基とは、プロトンドナーもしくはアクセプターを有する基をいい、例えば、カルボキシ基、カルボニル基、アミド基、アミノ基、水酸基等が挙げられ、これらの中では、接着性及び耐久性の観点から、好ましくはカルボキシル基、アミド基、アミノ基である。
水素結合基を有する樹脂の質量平均分子量としては、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは1000以上であり、同様の観点から、好ましくは50万以下である。
水素結合基を有する樹脂の好ましい具体例としては、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂が挙げられる。これらの中では、接着性及び耐久性の観点から、好ましくはポリアミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂であり、より好ましくは、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂である。
下層体における水素結合基を有する樹脂の量としては、密着性の観点から多ければ多いほど好ましく、具体的には、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上である。一方、好ましい上限値は100質量%以下である。
下層体には、前記水素結合基を有する樹脂以外の成分、例えば、レベリング剤や強化剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等のポリマーや各種活性剤等の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤が含まれている場合、これらの添加剤の含有量は、下層体中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
<下層体の形成方法>
水素結合基を有する樹脂は、溶液又は分散液として市販されている。このような溶液又は分散液を、例えば基材上に塗工して乾燥させることで、容易に下層体を形成させることができる。あるいは、予め形成しておいた上層体の上に、かかる溶液又は分散液を塗工して乾燥させることによっても、下層体を形成させることができる。この場合の下層体を得るための塗工方法としては、前述の上層体を形成するための塗工方法と同様の方法により行うことができる。
また、水素結合基を有する樹脂は、ペレットとしても市販されている。このような場合は、フィルム成形、射出成形、ブロー成形、圧空成形、押し出し成形等の各種成形方法により、フィルム形状や成形体形状の下層体を形成することができる。
[基材]
基材の素材としては、樹脂、ガラス、金属、セラミックス、紙等が挙げられる。樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE))等のポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中では、汎用性の観点から、好ましくはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂である。
基材の形状としては、フィルム状、所望の容器状、シート状、板状、管状、成形体状等、特に限定されない。
〔積層体の製造方法〕
本発明の積層体の製造方法は、カルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と、SP値が10以下の有機媒体とを含む塗工液を、水素結合基を有する樹脂を含む下層体に塗工する工程を含む。本発明の積層体は、例えば、本発明の積層体の製造方法によって製造することができる。
塗工液の調製方法や、下層体に塗工する方法は、前述に記載の方法と同様に行うことができる。
本発明の製造方法によって膜状の上層体が形成され、上層体と下層体とが積層された積層体が得られる。
さらに基剤が積層された態様では、基材と下層体とを予め作製し、得られる積層構造物に前記上層体を形成させてもよく、あるいは、上層体と下層体とを予め作製し、得られる積層体に基材を積層又は形成させてもよい。具体的には、下層体の上面に前記塗工液が塗工され、下層体の下面に基材がさらに積層される製造方法が例示される。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「室温」とは25℃を示す。
〔酸化セルロース繊維及び疎水変性セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比〕
酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維に水を加えて、その濃度が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中の酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維の繊維高さを測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出し、標準偏差も算出する。
〔酸化セルロース繊維及び疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量〕
乾燥質量0.5gの酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維を100mLビーカーにとり、イオン交換水もしくはメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製し、酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5~3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT-710」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量を算出する。
カルボキシ基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維の質量(0.5g)
〔酸化セルロース繊維及び疎水変性セルロース繊維のアルデヒド基含有量〕
ビーカーに、酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維100.0g(固形分含有量1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)、2-メチル-2-ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え室温で16時間撹拌して、アルデヒド基の酸化処理を行う。反応終了後、イオン交換水にて洗浄を行い、アルデヒドを酸化処理した酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品を酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量を上記に記載の方法で測定し、酸化処理した酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量を算出する。続いて、式1にて酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のアルデヒド基含有量を算出する。
アルデヒド基含有量(mmol/g)=(酸化処理した酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量)-(酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量)・・・式1
〔分散液中の固形分含有量〕
ハロゲン水分計(島津製作所社製;商品名「MOC-120H」)を用いて行う。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少が0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
〔疎水変性セルロース繊維の修飾基の平均結合量及び導入率(イオン結合)〕
修飾基の結合量を次のIR測定方法により求め、下記式によりその平均結合量及び導入率を算出する。IR測定は、具体的には、乾燥させた疎水変性セルロース繊維を赤外吸収分光装置(IR)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製;商品名「Nicolet 6700」)を用いATR法にて測定し、次式により、修飾基の平均結合量及び導入率を算出する。
修飾基の平均結合量(mmol/g)=[酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)]×[(酸化セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度 - 疎水変性セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度)÷酸化セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度]
1720cm-1のピーク強度:カルボン酸のカルボニル基に由来するピーク強度
修飾基の導入率(%)={修飾基の結合量(mmol/g)/導入前の酸化セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
〔疎水変性セルロース繊維の修飾基の平均結合量及び導入率(アミド結合)〕
修飾基の平均結合量を下記式により算出する。
修飾基の平均結合量(mmol/g)=修飾基導入前の酸化セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)-修飾基導入後の疎水変性セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)
修飾基の導入率(%)={修飾基の平均結合量(mmol/g)/導入前の酸化セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
〔積層体の上層体面の算術平均粗さの測定〕
積層体の上層体面の算術平均粗さは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製;商品名「VK-9710」)を用いて以下の測定条件で測定する。測定条件は、対物レンズ:10倍、光量:3%、明るさ:1548、Zピッチ:0.5μmとする。表面算術平均粗さは、内蔵の画像処理ソフトを用いて5点測定し、その平均値を用いる。
〔膜の硬度測定〕
得られた積層体の表面、即ち上層体の膜に対して硬度試験測定器DUH-211(島津サイエンス社製)を用いて下記条件で表面硬度(マルテンス硬度)の測定を行う。
試験力:0.1mN
負荷保持時間:5(s)
除荷保持時間:1(s)
〔滑落角測定試験〕
室温20℃にて、膜に対して2μLのドデカンの液滴(20℃)を滴下し、10秒静置した後に1°/sの速さで膜表面を傾け、液滴が流れ始める角度を測定する。代表例として、実施例1の膜の滑落角は2°であった。
〔酸化セルロース繊維分散液の作製〕
調製例1(天然セルロース繊維にN-オキシル化合物を作用させて得られる酸化セルロース繊維の分散液)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gのイオン交換水で十分に攪拌した後、該パルプ質量100gに対し、TEMPO1.25g、臭化ナトリウム12.5g、次亜塩素酸ナトリウム28.4gをこの順で添加した。pHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持した。反応を120分(20℃)行った後、水酸化ナトリウムの滴下を停止し、酸化パルプを得た。得られた酸化パルプをイオン交換水で十分に洗浄し、次いで脱水処理を行った。その後、酸化パルプ3.9gとイオン交換水296.1gを高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバーストラボ HJP-2 5005)を用いて245MPaで微細化処理を2回行い、酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量1.3質量%)を得た。この酸化セルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.62mmol/g、アルデヒド基量は0.27mmol/gであった。
調製例2(アルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維の分散液)
ビーカーに調製例1で得られた酸化セルロース繊維分散液3846.15g(固形分含有量1.3質量%)を投入し、ここに1M水酸化ナトリウム水溶液を加えpH10程度にした後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製、純度95質量%)を2.63g仕込み、室温下3時間反応させアルデヒド還元処理を行った。反応終了後、1M塩酸水溶液を405g、イオン交換水を4286g加え0.7質量%の水溶液とし、室温下1時間反応させプロトン化を行った。反応終了後ろ過し、得られたケークをイオン交換水にて洗浄し塩酸及び塩を除去した。最後にイソプロパノールで溶媒置換し、アルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維分散液を得た。得られたアルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量2.0質量%)の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.62mmol/g、アルデヒド基量は0.02mmol/gであった。
〔疎水変性セルロース繊維の作製〕
製造例1
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、調製例2で得られた酸化セルロース繊維分散液300g(固形分含有量2.0質量%)を仕込んだ。続いて、アミノ変性シリコーン(BY16-209、東レ・ダウコーニング株式会社製、「シリコーン1」と略記する。)を、酸化セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基0.5molに相当する量を仕込み、イソプロパノール100gを添加し、これらの混合物を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、得られたケークをイソプロパノールにて洗浄後、超音波ホモジナイザー(US-300E、日本精機製作所社製)にて2分間攪拌し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバーストラボ HJP-2 5005)にて100MPaで1パス、150MPaで9パス微細処理させることで、酸化セルロース繊維に、アミノ変性シリコーンがイオン結合を介して連結した疎水変性セルロース繊維を得た。得られた疎水変性セルロース繊維における修飾基の導入率は、酸化セルロース繊維のカルボキシ基の40%であった。
〔下層体の塗工〕
実施例1
まず、コロナ処理装置(カスガ社製)にて、基材としてフィルム厚みが50μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(三井化学東セロ社製、MCS)に、出力6、移動速度30cm/sでコロナ処理を施した。次に、LLDPEフィルムのコロナ処理面上にバーコーター(オーエスジーシステムプロダクツ社製、OSP-13)を用いて、下層体を形成する塗工液として水性ウレタンエマルジョン(DSM社製、NeoRez R-9603、「ウレタン1」と略記する)を塗工した。室温(25℃)下で24時間乾燥し、溶媒を揮発させて、基材(LLDPEフィルム)と下層体との積層構造物を得た。なお、ウレタン1で形成された下層体の厚みは3μmであった。
〔下層体上への上層体の作製〕
製造例1で得られた疎水変性セルロース繊維を用いて、次のようにして前記積層構造物の下層体側の表面上に上層体を作製した。疎水変性セルロース繊維のセルロース繊維:スクアラン(潤滑油):ポリアミド(花王社製、SP-40N)が1:3:1の質量比になるように、また、溶媒が分散液全体の97%になるように、疎水変性セルロース繊維、スクアラン、ポリアミド及び溶媒(イソプロピルアルコール:トルエン=100:5の混合溶媒)を配合し、スクリュー管中、室温で24時間撹拌した。得られた上層体形成用の分散液を塗膜用サンプルとして、前記積層構造物の下層体側にアプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて、塗膜用サンプル液の厚みが1800μmになるように塗工した。室温(25℃)下で12時間乾燥させることにより溶媒を揮発させ、膜厚が約50μmの上層体が作製された、上層体と下層体と基材との積層体を得た。なお、得られた積層体の膜のマルテンス硬さを前記のようにして測定したところ、2.6(N/mm)であった。
実施例2
下層体を形成する塗工液としてアクリルエマルジョン(DSM社製、NeoCryl A-1127)に変更した点以外は実施例1と同様の方法で下層体を形成し、上層体と下層体と基材との積層体を得た。なお、アクリルで形成された下層体の厚みは3μmであった。
実施例3
ポリアミド(花王社製、SP-40N)を溶媒(イソプロピルアルコール:トルエン=1:1の混合溶媒)に10wt%となるようにスクリュー管中、室温で1時間撹拌した。そして、得られた液を下層体を形成する塗工液として変更した点以外は実施例1と同様の方法で下層体を形成し、上層体と下層体と基材との積層体を得た。なお、ポリアミドで形成された下層体の厚みは3μmであった。
〔下層体単体への上層体の作製〕
実施例4
製造例1で得られた疎水変性セルロース繊維を用いて、次のようにして下層体上に上層体を作製した。実施例1で使用した上層体形成用の塗膜用サンプルを、下層体である厚み15μmのナイロンフィルム(興人社製、ボニールRX)上にアプリケーターを用いて、塗膜用サンプルの厚みが1800μmになるように塗工した。室温(25℃)下で12時間乾燥させることにより溶媒を揮発させ、膜厚が約50μmの上層体が作製された、上層体と下層体との積層体を得た。
実施例5~7
下層体を形成する塗工液として水性ウレタンエマルジョンのウレタン2(DSM社製、NeoRez R-9637)、ウレタン3(DSM社製、NeoRez R-966)又はウレタン4(DSM社製、NeoRez R-960)に変更した点以外は実施例1と同様の方法で塗工液を塗工し、上層体と下層体と基材との積層体を得た。
比較例1
下層体として厚み50μmのLLDPEフィルム(三井化学東セロ社製、MCS)に変更した点以外は実施例4と同様の方法で上層体と下層体との積層体を得た。ここで、LLDPEは水素結合基を持たない樹脂である。
〔積層体の性能試験〕
以下の試験は室温下で実施した。試験で使用した流動物Aの詳細は以下の通りである。
コータミンE-80K(花王株式会社製):3質量%
プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製):1質量%
イオン交換水:残部
試験例1(付着抑制効果の評価)
実施例又は比較例で製造された積層体の上層体表面上に、流動物Aを50mg置いて基板を90°傾け、滑落させた。1分間当たりに流動物Aが滑落する距離を測定した。
試験例2(上層体と下層体との間の接着性評価)
上層体と下層体との間の接着性評価は次のようにして行った。実施例又は比較例で製造された積層体の上層体上の潤滑油を紙ワイプでしっかりとふき取り、1マスあたり2mm×2mmで25個のマス目となるようにカッター(オルファ社製、142BY)で膜に切れ込みを入れた。そのマス目上にテープ(リンテック社製、PET50(A)MF 8LK2)を貼り付け、塗膜が透けて見えるようにしっかり指でテープをこすった。付着して5分以内に、60°の角度で1秒以内に引きはがした際の、積層体上に残存した上層体の塗膜片の残数を測定した。塗膜片の残数が多いほど、上層体と下層体との間の接着性が強いと言うことができる。
Figure 0007021944000002
上記の表から以下のことが分かった。
接着性に関しては、実施例に示す、水素結合基を有する樹脂を含む下層体と上層体は、水素結合基を有していない樹脂を含む下層体と上層体と比較して接着性が良いという結果が得られた。
試験例3(耐久性評価)
積層体の耐久性評価を次のようにして行った。実施例又は比較例で製造された積層体の製造直後の付着抑制効果を試験例1のように評価した。さらに、室温(25℃)で2週間保管した後の積層体の付着抑制効果を、同様に再度評価した。
Figure 0007021944000003
上記の表から以下のことが分かった。
全ての実施例と比較例において、積層体の製造直後は付着抑制効果を有する膜が作製できた。一方、2週間保管後では、比較例1は付着抑制効果を喪失したが、実施例1、5~7は付着抑制効果を一定程度以上保持していたことから、実施例のものは、積層体の耐久性が優れることを確認した。
本発明の積層体は、化粧料や食品の包装容器の内装材の分野に利用することができる。
1 上層体
2 下層体
3 基材

Claims (6)

  1. 上層体と下層体とが積層されている積層体であって、該上層体が、カルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と、SP値が10以下の有機媒体とを有する膜であり、該下層体が、水素結合基を有する樹脂を含む下層体である、積層体。
  2. 前記樹脂が、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂を含む、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記有機媒体が、SP値が8.5以下の有機媒体である、請求項1又は2に記載の積層体。
  4. さらに基材が積層されてなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. カルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と、SP値が10以下の有機媒体とを含む塗工液を、水素結合基を有する樹脂を含む下層体に塗工する工程を含む、積層体の製造方法。
  6. 前記塗工液がさらに有機溶媒を含む、請求項5に記載の製造方法。
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