JP7021944B2 - 積層体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
〔1〕 上層体と下層体とが積層されている積層体であって、該上層体が、カルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と、SP値が10以下の有機媒体とを有する膜であり、該下層体が、水素結合基を有する樹脂を含む下層体である、積層体。
〔2〕 カルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と、SP値が10以下の有機媒体とを含む塗工液を、水素結合基を有する樹脂を含む下層体に塗工する工程を含む、積層体の製造方法。
本発明の積層体は、上層体と下層体とが積層されている積層体である。
本発明の積層体の好ましい一態様は、下層体の上面に上層体が積層されている積層体であり、その断面図は図1で模式的に示される。図1で示されるように、本態様の構造は、下層体2の一方の表面である上面に上層体1が積層した構造である。
本発明の積層体の好ましい別の態様は、前記態様の積層体にさらに基材が積層されてなる積層体、例えば下層体の上面に上層体が積層され、該下層体の下面に、基材が更に積層されている積層体であり、その断面図は図2で模式的に示される。図2で示されるように、本態様の構造は、下層体2の上面に上層体1が積層し、下層体2の他方の表面である下面に基材3が積層した構造である。上層体は基材とは直接接触しない位置にあり、上層体と基材との間に下層体が位置し、下層体が基材と接触する。本態様では、下層体2は上層体1と基材3との接着剤としての役割を果たす。
上層体は、疎水変性セルロース繊維及びSP値が10以下の有機媒体を有する膜である。
HM=F/(26.43×hmax2)
F:試験力(N)
hmax:押し込み深さの最大値(mm)
本発明における疎水変性セルロース繊維とは、カルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上の基に修飾基が結合されてなるものである。
原料のセルロース繊維としては、環境面から好ましくは天然セルロース繊維であり、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記原料セルロース繊維を公知の方法により酸化したものが、カルボキシ基含有セルロース繊維(以下、酸化セルロース繊維ともいう。)である。
酸化セルロース繊維は、例えば、触媒として2,2,6,6,-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)を使用し、更に次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、臭化ナトリウム等の臭化物を併用して酸化する方法が適用できる。より詳細には、特開2011-140632号公報に記載の方法を参照することができ、更に、追酸化処理又は還元処理を行うことで、アルデヒドを除去した酸化セルロース繊維として調製することができる。
酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量としては、修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.4mmol/g以上、更に好ましくは0.6mmol/g以上、更に好ましくは0.8mmol/g以上である。また、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。なお、「カルボキシ基含有量」とは、疎水変性セルロース繊維又は酸化セルロース繊維を構成するセルロース中のカルボキシ基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
本明細書において、疎水変性セルロース繊維における修飾基の結合とは、酸化セルロース繊維表面のカルボキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる1種以上の基に、好ましくはカルボキシ基に、修飾基がイオン結合及び/又は共有結合を介して結合している状態のことを意味する。カルボキシ基への結合様式としては、イオン結合、共有結合が挙げられる。ここでの共有結合としては、例えば、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合が挙げられ、なかでも、接着性及び耐久性の観点から、好ましくはアミド結合である。また、水酸基への結合様式としては、共有結合が挙げられ、具体的には、エステル結合;カルボキシメチル化、カルボキシエチル化などのエーテル結合;ウレタン結合が挙げられる。接着性及び耐久性の観点から、本発明における疎水変性セルロース繊維としては、酸化セルロース繊維表面に既に存在するカルボキシ基に、修飾基を導入するための化合物をイオン結合及び/又はアミド結合させることにより得られるものが好ましい。
修飾基を導入するための化合物としては、後述の修飾基を導入可能なものであればよく、結合様式によって、例えば、以下のものを用いることができる。イオン結合の場合は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物のいずれでもよい。これらの中では、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物である。また、前記のアンモニウム化合物やホスホニウム化合物の陰イオン成分としては、反応性の観点から、好ましくは、塩素イオンや臭素イオンなどのハロゲンイオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェイトイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヒドロキシイオンが挙げられ、より好ましくは、ヒドロキシイオンが挙げられる。共有結合の場合は置換される官能基によって以下のものを用いることができる。
炭化水素基としては、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が挙げられ、副反応を抑制する観点及び安定性の観点から、鎖式飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基であることが好ましい。
アミノ変性シリコーン化合物としては、25℃での動粘度が10~20,000mm2/s、アミノ当量400~8,000g/molのアミノ変性シリコーン化合物が好ましいものとして挙げられる。
-C3H6-NH2
-C3H6-NH-C2H4-NH2
-C3H6-NH-[C2H4-NH]e-C2H4-NH2
-C3H6-NH(CH3)
-C3H6-NH-C2H4-NH(CH3)
-C3H6-NH-[C2H4-NH]f-C2H4-NH(CH3)
-C3H6-N(CH3)2
-C3H6-N(CH3)-C2H4-N(CH3)2
-C3H6-N(CH3)-[C2H4-N(CH3)]g-C2H4-N(CH3)2
-C3H6-NH-cyclo-C5H11
(ここで、e、f、gは、それぞれ1~30の数である。)
H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2 (a2)
本発明で用いられる疎水変性セルロースセルロース繊維は、前記した酸化セルロース繊維に修飾基を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。例えば、酸化セルロース繊維に修飾基を導入する工程と、対象のセルロース繊維を微細化する工程を、順序に制限なく実施する方法が挙げられる。なお、ここでいう酸化セルロース繊維は、公知の方法、例えば、特開2011-140632号公報に記載の酸化反応工程の説明を参照して得られた酸化セルロース繊維として、あるいは、更に、追酸化処理又は還元処理を行うことで、アルデヒドを除去した酸化セルロース繊維として調製することができる。
具体的な工程としては、修飾基をイオン結合によって酸化セルロース繊維に結合させる態様(態様A)、修飾基を共有結合によって酸化セルロース繊維に結合させる態様(態様B)が挙げられる。なお、共有結合として、アミド結合の場合を以下に示す。
(態様A)
酸化セルロース繊維と、修飾基を有する化合物とを混合する工程。
(態様B)
酸化セルロース繊維と、修飾基を有する化合物とをアミド化反応させる工程。
具体的な方法としては、態様Aは特開2015-143336号公報の工程(B)に記載の方法を、態様Bは特開2015-143337号公報の工程(B)に記載の方法を参照して実施することができる。なお、両公報の工程(B)における「EO/PO共重合部を有するアミン」は、本発明における「修飾基を導入するための化合物」に該当する。
本工程は、酸化セルロース繊維(又は修飾基が導入された酸化セルロース繊維)を微細化する工程であり、微細な酸化セルロース繊維が得られる。微細化工程では、精製工程を経た酸化セルロース繊維を溶媒中に分散させ、微細化処理を行うことが好ましい。具体的には、特開2013-151661号の微細化工程の説明を参照して実施することができる。
疎水変性セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比は、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
本発明においては、前記のようにして定義されるSP値が10以下の有機媒体を、上層体を構成する潤滑油として使用する。
上層体を形成する方法の一例としては、上層体の構成成分である前記疎水変性セルロース繊維と前記有機媒体とを少なくとも含有する塗工液を調製し、次いで、この塗工液を下層体に塗工する方法が挙げられる。
塗工液は、前記疎水変性セルロース繊維及び前記有機媒体を混合することにより、接着性及び耐久性の観点から、好ましくは有機溶媒と一緒に混合することにより調製することができる。
前記塗工液を、下層体に塗工する塗工方法としては、アプリケーター、バーコーター、ロールコーターを使用した方法や、グラビアコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等種々の塗工方法が挙げられる。
本発明における下層体とは、水素結合基を有する樹脂を含む下層体である。下層体は上層体と接触する層である。また、基材が有る場合は、下層体は基材に接触する層となる。
水素結合基を有する樹脂は、溶液又は分散液として市販されている。このような溶液又は分散液を、例えば基材上に塗工して乾燥させることで、容易に下層体を形成させることができる。あるいは、予め形成しておいた上層体の上に、かかる溶液又は分散液を塗工して乾燥させることによっても、下層体を形成させることができる。この場合の下層体を得るための塗工方法としては、前述の上層体を形成するための塗工方法と同様の方法により行うことができる。
また、水素結合基を有する樹脂は、ペレットとしても市販されている。このような場合は、フィルム成形、射出成形、ブロー成形、圧空成形、押し出し成形等の各種成形方法により、フィルム形状や成形体形状の下層体を形成することができる。
基材の素材としては、樹脂、ガラス、金属、セラミックス、紙等が挙げられる。樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE))等のポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中では、汎用性の観点から、好ましくはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂である。
本発明の積層体の製造方法は、カルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と、SP値が10以下の有機媒体とを含む塗工液を、水素結合基を有する樹脂を含む下層体に塗工する工程を含む。本発明の積層体は、例えば、本発明の積層体の製造方法によって製造することができる。
酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維に水を加えて、その濃度が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中の酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維の繊維高さを測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出し、標準偏差も算出する。
乾燥質量0.5gの酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維を100mLビーカーにとり、イオン交換水もしくはメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製し、酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5~3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT-710」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量を算出する。
カルボキシ基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維の質量(0.5g)
ビーカーに、酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維100.0g(固形分含有量1.0質量%)、酢酸緩衝液(pH4.8)、2-メチル-2-ブテン0.33g、亜塩素酸ナトリウム0.45gを加え室温で16時間撹拌して、アルデヒド基の酸化処理を行う。反応終了後、イオン交換水にて洗浄を行い、アルデヒドを酸化処理した酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維を得る。反応液を凍結乾燥処理し、得られた乾燥品を酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量を上記に記載の方法で測定し、酸化処理した酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のカルボキシ基含有量を算出する。続いて、式1にて酸化セルロース繊維又は疎水変性セルロース繊維のアルデヒド基含有量を算出する。
ハロゲン水分計(島津製作所社製;商品名「MOC-120H」)を用いて行う。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少が0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
修飾基の結合量を次のIR測定方法により求め、下記式によりその平均結合量及び導入率を算出する。IR測定は、具体的には、乾燥させた疎水変性セルロース繊維を赤外吸収分光装置(IR)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製;商品名「Nicolet 6700」)を用いATR法にて測定し、次式により、修飾基の平均結合量及び導入率を算出する。
修飾基の平均結合量(mmol/g)=[酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)]×[(酸化セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度 - 疎水変性セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度)÷酸化セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度]
1720cm-1のピーク強度:カルボン酸のカルボニル基に由来するピーク強度
修飾基の導入率(%)={修飾基の結合量(mmol/g)/導入前の酸化セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
修飾基の平均結合量を下記式により算出する。
修飾基の平均結合量(mmol/g)=修飾基導入前の酸化セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)-修飾基導入後の疎水変性セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)
修飾基の導入率(%)={修飾基の平均結合量(mmol/g)/導入前の酸化セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
積層体の上層体面の算術平均粗さは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製;商品名「VK-9710」)を用いて以下の測定条件で測定する。測定条件は、対物レンズ:10倍、光量:3%、明るさ:1548、Zピッチ:0.5μmとする。表面算術平均粗さは、内蔵の画像処理ソフトを用いて5点測定し、その平均値を用いる。
得られた積層体の表面、即ち上層体の膜に対して硬度試験測定器DUH-211(島津サイエンス社製)を用いて下記条件で表面硬度(マルテンス硬度)の測定を行う。
試験力:0.1mN
負荷保持時間:5(s)
除荷保持時間:1(s)
室温20℃にて、膜に対して2μLのドデカンの液滴(20℃)を滴下し、10秒静置した後に1°/sの速さで膜表面を傾け、液滴が流れ始める角度を測定する。代表例として、実施例1の膜の滑落角は2°であった。
調製例1(天然セルロース繊維にN-オキシル化合物を作用させて得られる酸化セルロース繊維の分散液)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
ビーカーに調製例1で得られた酸化セルロース繊維分散液3846.15g(固形分含有量1.3質量%)を投入し、ここに1M水酸化ナトリウム水溶液を加えpH10程度にした後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製、純度95質量%)を2.63g仕込み、室温下3時間反応させアルデヒド還元処理を行った。反応終了後、1M塩酸水溶液を405g、イオン交換水を4286g加え0.7質量%の水溶液とし、室温下1時間反応させプロトン化を行った。反応終了後ろ過し、得られたケークをイオン交換水にて洗浄し塩酸及び塩を除去した。最後にイソプロパノールで溶媒置換し、アルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維分散液を得た。得られたアルデヒド基を還元処理した酸化セルロース繊維分散液(固形分含有量2.0質量%)の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.62mmol/g、アルデヒド基量は0.02mmol/gであった。
製造例1
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、調製例2で得られた酸化セルロース繊維分散液300g(固形分含有量2.0質量%)を仕込んだ。続いて、アミノ変性シリコーン(BY16-209、東レ・ダウコーニング株式会社製、「シリコーン1」と略記する。)を、酸化セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基0.5molに相当する量を仕込み、イソプロパノール100gを添加し、これらの混合物を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、得られたケークをイソプロパノールにて洗浄後、超音波ホモジナイザー(US-300E、日本精機製作所社製)にて2分間攪拌し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバーストラボ HJP-2 5005)にて100MPaで1パス、150MPaで9パス微細処理させることで、酸化セルロース繊維に、アミノ変性シリコーンがイオン結合を介して連結した疎水変性セルロース繊維を得た。得られた疎水変性セルロース繊維における修飾基の導入率は、酸化セルロース繊維のカルボキシ基の40%であった。
実施例1
まず、コロナ処理装置(カスガ社製)にて、基材としてフィルム厚みが50μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(三井化学東セロ社製、MCS)に、出力6、移動速度30cm/sでコロナ処理を施した。次に、LLDPEフィルムのコロナ処理面上にバーコーター(オーエスジーシステムプロダクツ社製、OSP-13)を用いて、下層体を形成する塗工液として水性ウレタンエマルジョン(DSM社製、NeoRez R-9603、「ウレタン1」と略記する)を塗工した。室温(25℃)下で24時間乾燥し、溶媒を揮発させて、基材(LLDPEフィルム)と下層体との積層構造物を得た。なお、ウレタン1で形成された下層体の厚みは3μmであった。
製造例1で得られた疎水変性セルロース繊維を用いて、次のようにして前記積層構造物の下層体側の表面上に上層体を作製した。疎水変性セルロース繊維のセルロース繊維:スクアラン(潤滑油):ポリアミド(花王社製、SP-40N)が1:3:1の質量比になるように、また、溶媒が分散液全体の97%になるように、疎水変性セルロース繊維、スクアラン、ポリアミド及び溶媒(イソプロピルアルコール:トルエン=100:5の混合溶媒)を配合し、スクリュー管中、室温で24時間撹拌した。得られた上層体形成用の分散液を塗膜用サンプルとして、前記積層構造物の下層体側にアプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて、塗膜用サンプル液の厚みが1800μmになるように塗工した。室温(25℃)下で12時間乾燥させることにより溶媒を揮発させ、膜厚が約50μmの上層体が作製された、上層体と下層体と基材との積層体を得た。なお、得られた積層体の膜のマルテンス硬さを前記のようにして測定したところ、2.6(N/mm2)であった。
下層体を形成する塗工液としてアクリルエマルジョン(DSM社製、NeoCryl A-1127)に変更した点以外は実施例1と同様の方法で下層体を形成し、上層体と下層体と基材との積層体を得た。なお、アクリルで形成された下層体の厚みは3μmであった。
ポリアミド(花王社製、SP-40N)を溶媒(イソプロピルアルコール:トルエン=1:1の混合溶媒)に10wt%となるようにスクリュー管中、室温で1時間撹拌した。そして、得られた液を下層体を形成する塗工液として変更した点以外は実施例1と同様の方法で下層体を形成し、上層体と下層体と基材との積層体を得た。なお、ポリアミドで形成された下層体の厚みは3μmであった。
実施例4
製造例1で得られた疎水変性セルロース繊維を用いて、次のようにして下層体上に上層体を作製した。実施例1で使用した上層体形成用の塗膜用サンプルを、下層体である厚み15μmのナイロンフィルム(興人社製、ボニールRX)上にアプリケーターを用いて、塗膜用サンプルの厚みが1800μmになるように塗工した。室温(25℃)下で12時間乾燥させることにより溶媒を揮発させ、膜厚が約50μmの上層体が作製された、上層体と下層体との積層体を得た。
下層体を形成する塗工液として水性ウレタンエマルジョンのウレタン2(DSM社製、NeoRez R-9637)、ウレタン3(DSM社製、NeoRez R-966)又はウレタン4(DSM社製、NeoRez R-960)に変更した点以外は実施例1と同様の方法で塗工液を塗工し、上層体と下層体と基材との積層体を得た。
下層体として厚み50μmのLLDPEフィルム(三井化学東セロ社製、MCS)に変更した点以外は実施例4と同様の方法で上層体と下層体との積層体を得た。ここで、LLDPEは水素結合基を持たない樹脂である。
以下の試験は室温下で実施した。試験で使用した流動物Aの詳細は以下の通りである。
コータミンE-80K(花王株式会社製):3質量%
プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製):1質量%
イオン交換水:残部
実施例又は比較例で製造された積層体の上層体表面上に、流動物Aを50mg置いて基板を90°傾け、滑落させた。1分間当たりに流動物Aが滑落する距離を測定した。
上層体と下層体との間の接着性評価は次のようにして行った。実施例又は比較例で製造された積層体の上層体上の潤滑油を紙ワイプでしっかりとふき取り、1マスあたり2mm×2mmで25個のマス目となるようにカッター(オルファ社製、142BY)で膜に切れ込みを入れた。そのマス目上にテープ(リンテック社製、PET50(A)MF 8LK2)を貼り付け、塗膜が透けて見えるようにしっかり指でテープをこすった。付着して5分以内に、60°の角度で1秒以内に引きはがした際の、積層体上に残存した上層体の塗膜片の残数を測定した。塗膜片の残数が多いほど、上層体と下層体との間の接着性が強いと言うことができる。
接着性に関しては、実施例に示す、水素結合基を有する樹脂を含む下層体と上層体は、水素結合基を有していない樹脂を含む下層体と上層体と比較して接着性が良いという結果が得られた。
積層体の耐久性評価を次のようにして行った。実施例又は比較例で製造された積層体の製造直後の付着抑制効果を試験例1のように評価した。さらに、室温(25℃)で2週間保管した後の積層体の付着抑制効果を、同様に再度評価した。
全ての実施例と比較例において、積層体の製造直後は付着抑制効果を有する膜が作製できた。一方、2週間保管後では、比較例1は付着抑制効果を喪失したが、実施例1、5~7は付着抑制効果を一定程度以上保持していたことから、実施例のものは、積層体の耐久性が優れることを確認した。
2 下層体
3 基材
Claims (6)
- 上層体と下層体とが積層されている積層体であって、該上層体が、カルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と、SP値が10以下の有機媒体とを有する膜であり、該下層体が、水素結合基を有する樹脂を含む下層体である、積層体。
- 前記樹脂が、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂を含む、請求項1に記載の積層体。
- 前記有機媒体が、SP値が8.5以下の有機媒体である、請求項1又は2に記載の積層体。
- さらに基材が積層されてなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
- カルボキシ基含有セルロース繊維のカルボキシ基及び水酸基から選ばれる1種以上に修飾基が結合されてなる疎水変性セルロース繊維と、SP値が10以下の有機媒体とを含む塗工液を、水素結合基を有する樹脂を含む下層体に塗工する工程を含む、積層体の製造方法。
- 前記塗工液がさらに有機溶媒を含む、請求項5に記載の製造方法。
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