JP7028060B2 - 電池システム - Google Patents
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Description
本開示は、ニッケル水素電池を備える電池システムに関する。
特開2018-14210号公報(特許文献1)には、ニッケル水素電池を備える電池システムが開示されている。この電池システムは、電流センサおよび電圧センサを用いて所定期間における電流変化量および電圧変化量を監視し、ニッケル水素電池が安定した状態であることを判定できる所定の条件を満たしたタイミングにおける電流変化量および電圧変化量を用いてニッケル水素電池の内部抵抗を推定する(特許文献1参照)。
たとえば、特許文献1に開示された電池システムが電動車両に搭載される場合、車両の制御装置は電流センサの検出値および電圧センサの検出値(閉回路電圧(CCV:Closed Circuit Voltage))を取得し、これらの検出値を用いてニッケル水素電池の内部抵抗を推定する。CCVは、開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)から分極電圧および抵抗成分による電圧降下量を減算したものに相当する。
ここで、分極の減少と増加とでは時定数が異なることが知られている。具体的には、ニッケル水素電池の放電が継続されている状態において、放電電流の減少に伴なって生じる分極電圧が、減少後の電流に対応した値になるまでの時間(減少時間)は、放電電流の増加に伴なって生じる分極電圧が、増加後の電流に対応した値になるまでの時間(増加時間)よりも長い。ニッケル水素電池の充電が継続されている状態についても同様である。以下においては、減少後または増加後の電流に対応した値になった分極電圧を「対応分極電圧」ともいう。
上記のため、たとえば、所定期間における電流変化量および電圧変化量からニッケル水素電池の内部抵抗が推定されるような場合、設定される所定期間によっては、所定期間の開始時刻から終了時刻において、(1)電流の大きさが増加する方向に電流が変化したときと、(2)電流の大きさが減少する方向に電流が変化したときとで、同じ電流変化量であったとしても、電圧センサによって検出される電圧変化量が異なり得る。これは、電流の大きさが減少する方向に電流が変化した場合には、分極電圧が対応分極電圧となるまでに時間を要するため、終了時刻において分極電圧が対応分極電圧となっていない可能性があるためである。分極電圧が変動中であるときの検出値がニッケル水素電池の内部抵抗の推定に用いられると、内部抵抗の推定精度が低下してしまう可能性がある。
上記の(1)および(2)の双方の場合に、終了時刻において分極電圧が対応分極電圧とるように所定期間を設定することも考えられるが、所定期間が長くなってしまう。所定期間が長くなると、たとえば、車両の使用中のようなニッケル水素電池に入出力される電流が絶えず変化し得るような環境では、所定の条件を満たす状態が発生しにくくなり、ニッケル水素電池の内部抵抗が推定される機会が減少してしまう可能性がある。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ニッケル水素電池を備える電池システムにおいて、比較的短い所定期間におけるニッケル水素電池の内部抵抗の推定精度を向上させることである。
この開示に係る電池システムは、ニッケル水素電池と、ニッケル水素電池の電流が所定期間の開始時刻に取得した値から第1所定量以上変化した後のニッケル水素電池の電流の変動幅が、第1所定量より小さい第2所定量以下であるときに、所定期間におけるニッケル水素電池の電流変化量および電圧変化量を用いてニッケル水素電池の内部抵抗を推定する制御装置とを備える。制御装置は、ニッケル水素電池の充電または放電が所定期間を通して継続されている場合において、開始時刻から電流の大きさが減少したときには、内部抵抗の推定をしない。
所定期間においてニッケル水素電池の充電または放電が継続されている場合に、開始時刻から電流の大きさから減少したときは、所定期間の間に分極電圧が対応分極電圧に達しない可能性がある。上記構成によれば、所定期間の間に分極電圧が対応分極電圧に達しない可能性がある場合には内部抵抗が推定されない。これによって、分極電圧が対応分極電圧に達した安定した状態の電池情報のみを用いて内部抵抗を推定することができる。ゆえに、ニッケル水素電池の内部抵抗の推定精度を向上させることができる。
本開示によれば、ニッケル水素電池を備える電池システムにおいて、比較的短い所定期間におけるニッケル水素電池の内部抵抗の推定精度を向上させることができる。
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<実施の形態>
図1は、本実施の形態に係る電池システム5が搭載された車両1の全体構成を概略的に示す図である。車両1は、たとえば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車および燃料電池自動車などの電動車両である。本実施の形態においては、車両1は電気自動車である例について説明する。
図1は、本実施の形態に係る電池システム5が搭載された車両1の全体構成を概略的に示す図である。車両1は、たとえば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車および燃料電池自動車などの電動車両である。本実施の形態においては、車両1は電気自動車である例について説明する。
車両1は、組電池10と、システムメインリレー(System Main Relay)20と、パワーコントロールユニット(以下「PCU(Power Control Unit)」ともいう)40と、モータジェネレータ(Motor Generator:MG)50と、駆動輪60と、ECU(Electronic Control Unit)100と、監視ユニット200とを備える。電池システム5は、組電池10、ECU100および監視ユニット200を含んで構成される。
組電池10は、複数の電池が積層された構成を有する。電池は、充放電可能なニッケル水素電池である。監視ユニット200は、たとえば、電圧センサ210、電流センサ220および温度センサ230などを含む。電圧センサ210は、組電池10の電圧を検出し、その検出結果を示す信号VBをECU100に出力する。電流センサ220は、組電池10に入出力される電流を検出し、その検出結果を示す信号IBをECU100に出力する。なお、電池電流IBが正の値である場合は電池の放電を示し、負の値である場合は電池の充電を示す。温度センサ230は、組電池10の温度を検出し、その検出結果を示す信号TBをECU100に出力する。なお、必ずしも組電池単位で電圧および温度が監視される必要はなく、たとえば、電池単位で電圧および温度が監視されてもよい。この場合には、電圧センサ210は、組電池10に含まれる各電池の電圧を検出し、その検出結果を示す信号VBをECU100に出力する。温度センサ230は、組電池10に含まれる各電池の温度を検出し、その検出結果を示す信号TBをECU100に出力する。
システムメインリレー20は、一端が組電池10と電気的に接続され、他端がPCU40と電気的に接続される。システムメインリレー20は、ECU100からの制御信号に従って開閉状態が切り替えられる。システムメインリレー20が開状態であると組電池10からPCU40への電力の供給が遮断される。システムメインリレー20が閉状態であると組電池10からPCU40への電力の供給が可能となる。
PCU40は、組電池10から電力を受けてモータジェネレータ50を駆動するための電力変換装置を総括して示したものである。たとえば、PCU40は、モータジェネレータ50を駆動するためのインバータ、および、組電池10から出力される電力を昇圧してインバータへ供給するコンバータなどを含む。
モータジェネレータ50は、交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。モータジェネレータ50のロータは、動力伝達ギア(図示せず)を介して駆動輪60に機械的に接続される。モータジェネレータ50は、車両1の回生制動動作時には、駆動輪60の回転力によって発電することができ、その発電された電力をPCU40へ出力する。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)100aと、メモリ(より具体的にはROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))100bと、各種信号を入出力するための入出力ポート(図示せず)とを含んで構成される。ECU100は、各センサおよび機器からの信号、並びにメモリ100bに格納されたプログラムなどに基づいて、各機器の制御を行なう。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
ECU100は、さらにタイマ回路100cを含む。タイマ回路100cは、予め設定された所定期間(後述)を計測可能に構成される。
(内部抵抗の推定)
ECU100は、監視ユニット200から取得した電池情報(電池電圧VB,電池電流IB,電池温度TB)を用いて組電池10の内部抵抗を推定する。内部抵抗の推定には、たとえば、いわゆるI-Vプロット法が用いられる。具体的には、ECU100は、ある単位時間毎に電池電流IBと電池電圧VBとの組(IB,VB)を監視ユニット200から取得して、横軸に電流IB、縦軸に電圧VBを取った二次元座標にプロットする。そして、そのようにして得られる複数の点を近似する直線の傾きを算出し、算出された直線の傾きを組電池10の内部抵抗とすることができる。なお、概略的には、本実施の形態においては、2つの時刻における電池電流IBおよび電池電圧VBから求まる直線の傾きから組電池10の内部抵抗を推定する。図2を用いて、本実施の形態における組電池10の内部抵抗の推定について具体的に説明する。
ECU100は、監視ユニット200から取得した電池情報(電池電圧VB,電池電流IB,電池温度TB)を用いて組電池10の内部抵抗を推定する。内部抵抗の推定には、たとえば、いわゆるI-Vプロット法が用いられる。具体的には、ECU100は、ある単位時間毎に電池電流IBと電池電圧VBとの組(IB,VB)を監視ユニット200から取得して、横軸に電流IB、縦軸に電圧VBを取った二次元座標にプロットする。そして、そのようにして得られる複数の点を近似する直線の傾きを算出し、算出された直線の傾きを組電池10の内部抵抗とすることができる。なお、概略的には、本実施の形態においては、2つの時刻における電池電流IBおよび電池電圧VBから求まる直線の傾きから組電池10の内部抵抗を推定する。図2を用いて、本実施の形態における組電池10の内部抵抗の推定について具体的に説明する。
図2は、本実施の形態に係る電池システム5における内部抵抗の推定方法を説明するための図である。図2の横軸には時刻tが示され、縦軸には電池電流IBが示されている。図2には、所定期間において単位時間毎に取得した電池電流IBおよび電池電圧VBのうち、電池電流IBの時間変化が示されている。
所定期間とは、たとえば、数百ミリ秒あるいは数秒などに設定される。所定期間は、たとえば、電池温度TBに応じて設定されてもよい。本実施の形態においては、一例として所定期間が1秒に設定される例について説明する。図2に示される時刻t1から時刻t11までが1秒に相当する。本実施の形態においては、時刻t1に取得された電池電流を第1電流として定義する。そして、時刻t1から単位時間(たとえば、0.1秒)後の時刻t2に取得された電池電流を第2電流i2、時刻t2から単位時間後の時刻t3に取得された電池電流を第3電流i3、同様にして第4電流i4~第11電流i11を定義する。第1電流i1が所定期間の開始時刻(時刻t1)における電池電流であり、第11電流i11が所定期間の終了時刻(時刻t11)における電池電流である。なお、第1電流i1に対応した電圧を「第1電圧v1」、同様に第2電流i2~第11電流i11に対応した電圧をそれぞれ第2電圧v2~第11電圧v11と定義する。
図2に示されるように、所定期間において(第1電流i1,第1電圧v1)~(第11電流i11,第11電圧v11)の11点の電池情報が取得される。ECU100は、内部抵抗の推定精度を向上させるために、上記11点の電池情報が以下に説明する2つの条件(第1条件,第2条件)を満たした場合に、時刻t1に取得された電池電流(i1,v1)と時刻t11に取得された電池電流(i11,v11)とを用いて、時刻t1から時刻t11までの間における電流変化量および電圧変化量から組電池10の内部抵抗を推定する。
第1条件は、I-Vプロット法を用いて、組電池10の内部抵抗を推定するにあたり、ある一定以上の電流変化があったことを保証するために設定される条件である。具体的には、第1条件は、第1電流i1と第2電流i2との電流変化量(以下「第1変化量」ともいう)di1が第1所定量TH1以上であることである。第1所定量TH1は、電池の特性および使用環境などに応じて適切に設定される値であり、たとえば、数十アンペア程度に設定される。なお、本実施の形態における第1条件は、第1電流i1と第2電流i2との電流変化量が第1所定量TH1以上であることとしているが、これに限られるものではなく、所定期間において第1電流i1から第1所定量TH1以上の電流変化があればよい。たとえば、第1電流i1と第3電流i3との電流変化量が第1所定量TH1以上であった場合には、第1条件を満たすとものとしてもよい。
図3は、第1条件を説明するための図である。図3-1は、電流変化量(di)が小さい場合における内部抵抗の推定を概略的に示す図である。たとえば、図3-1の下図に示されるように、電流i1と電流i11との電流変化量diが小さかった場合には、近接した2点で近似直線が引かれることになる。この場合、たとえば、電流センサまたは/および電圧センサの検出精度などに起因した誤差が小さなものであっても、当該誤差が近似直線の傾きに与える影響が大きくなる。そのため、近似直線の傾きから推定される組電池10の内部抵抗の推定精度が低下してしまうことが懸念される。
図3-2は、電流変化量(di)が大きい場合における内部抵抗の推定を概略的に示す図である。たとえば、図3-2の下図に示されるように、電流i1と電流i11との電流変化量diが大きかった場合には、2点間の距離が大きくなるので、上記の誤差が近似直線の傾きに与える影響は、2点間の距離が小さい場合よりも小さくなる。そのため、2点間の距離を一定以上にすることによって、I-Vプロット法による近似直線の傾きから推定される組電池10の内部抵抗の推定精度を確保することができる。
図2に戻り、第2条件は、時刻t11において取得された電池情報が、組電池10に入出力される電流が安定した状態で取得された値であることを保証するために設定される条件である。電池の充放電を行なうと、電池では分極が生じることが知られている。分極により生じる分極電圧は、電池に入出力される電流の大きさに応じて大きくなる。分極電圧とは、電池の活物質内および電解液中における塩濃度の偏りによって発生する電圧である。電池の充放電を停止すると、そのときに発生している分極電圧は、時間の経過とともに徐々に解消する。電池に入出力される電流の大きさが変化すると、そのときに発生している分極電圧は、時間の経過とともに徐々に変動し、変化後の電流に対応した分極電圧(対応分極電圧)に落ち着く。このように、電池は、電池の充放電履歴の影響を受けやすい(ヒステリシス)。そのため、組電池10の内部抵抗を精度よく推定するためには、ヒステリシスの影響が緩和されている状態で取得された電池情報を用いることが望ましい。
そこで、ECU100は、第2条件を満たすか否かを判定することによって、ヒステリシスの影響が緩和されているかを判定する。第2条件は、第1電流i1から第1変化量di1以上の電流変化があった後の電池電流の変動幅di2が第2所定量TH2以下となっていることである。本実施の形態においては、第2電流i2から第11電流i11までの電池電流の変動幅が変動幅di2に相当する。時刻t2から時刻t11における電池電流の変動幅di2が第2所定量TH2以下に収まっていれば、電流の変動幅が小さい状態であるので、ヒステリシスの影響が内部抵抗の推定精度に与える影響は少ない(緩和されている)といえる。つまり、第2条件が満たされることによって、組電池10の内部抵抗の推定に用いられる時刻t11(終了時刻)に取得された電池情報が、組電池10が安定した状態で取得された情報であることが保証される。第2所定量TH2は、第1所定量TH1よりも小さい値に設定される。第2所定量TH2は、たとえば、数アンペア程度に設定される。
しかしながら、分極は、その減少速度と増加速度とが異なることが知られている。具体的には、組電池10の放電が継続されている状態において、放電電流の減少に伴なって生じる分極電圧が、減少後の電流に対応した値(対応分極電圧)になるまでの時間(減少時間)は、放電電流の増加に伴なって生じる分極電圧が、増加後の電流に対応した値(対応分極電圧)になるまでの時間(増加時間)よりも長い。組電池10の充電が継続されている状態についても同様である。そのため、所定期間において開始時刻から電流の大きさが減少する場合(上述した第1電流i1と第2電流i2との間での電流の変化が、電流の大きさが減少する方向の変化である場合)には、設定される所定期間の長さによっては、終了時刻において分極電圧が対応分極電圧に至っていない可能性がある。
そこで、開始時刻から電流の大きさが減少する場合、および、増加する場合の双方において、終了時刻に分極電圧が対応分極電圧に至るように所定期間を設定することが考えられるが、所定期間が長くなってしまう。所定期間が長くなると、たとえば、車両1の使用時などにおいては、組電池10に入出力される電流が絶えず変化し得るため、第1条件および第2条件を満たすような状態が発生しにくくなり、組電池10の内部抵抗が推定される機会が減少してしまう可能性がある。
そこで、本実施の形態に係る電池システム5は、所定期間において充電または放電が継続されている場合には、開始時刻から電流の大きさが増加するときにのみ組電池10の内部抵抗の推定を行なう。換言すると、所定期間において充電または放電が継続されている場合には、開始時刻から電流の大きさが減少するときには組電池10の内部抵抗の推定を行なわない。
図4を用いて分極の減少速度と増加速度とについて説明する。図4は、ある電流で放電が行なわれた場合におけるOCV、CCVおよび分極電圧Vpの関係を模式的に示した図である。図4の横軸には時間tが示され、縦軸には電池電流IBおよび電池電圧VBが示されている。図4に示される破線VRは、CCVの理想曲線を示すものである。
図4におけるCCVは、電圧センサ210の検出値である電池電圧VBを示している。電池電圧VBは、組電池10の起電圧VAと、組電池10の充放電(電池電流IBの入出力)に伴う電圧降下量(Z×IBで示す)との差により表される。さらに、起電圧VAは、組電池10の開回路電圧(OCV)と分極電圧Vpとの差として定義される。つまり、電池電圧VBは、下記の式(1)で表わされる。以下においては、分極電圧Vpおよび抵抗成分による電圧降下量(Z×IB)を総称して「差電圧」ともいう。
VB=VA-(Z×IB)=(OCV-Vp)-(Z×IB)…(1)
なお、OCVとは、組電池10の充放電終了後に時間が経過し、組電池10の分極が解消した後の電圧成分を意味する。
なお、OCVとは、組電池10の充放電終了後に時間が経過し、組電池10の分極が解消した後の電圧成分を意味する。
以上を前提として、図4に(A),(B)で示される2つの所定期間における内部抵抗の推定についてそれぞれ説明する。
(A)のパターンは、放電電流が電流ixから電流iy(ix<iy)に増加した場合を示している。時刻tbから時刻tcが所定期間(tc-tb)である。所定期間において、図2で説明したように、時刻tbの電池情報と時刻tcの電池情報とから、I-Vプロット法により組電池10の内部抵抗が推定される。なお、(A),(B)の双方のパターンにおいて、第1条件および第2条件は満たされていることを前提としている。
時刻tbの直前においては、組電池10が電流ixで放電されていることによって、OCVとCCVには、矢印AR1の長さで示される差分が生じている。矢印AR1の長さは、上述の式(1)における分極電圧Vpと抵抗成分による電圧降下量(Z×IB)との大きさ(差電圧の大きさ)を示している。分極電圧Vpは、上述したように、電流ixに応じた大きさとなる。抵抗成分による電圧降下量が電流ixに応じた大きさとなることは言うまでもない。
時刻tbに電流がixからiyに変化したことによってCCVが降下し、時刻tbから時刻tcまでの時間を要して、時刻tcではCCVは理想曲線VRと略同様となっている。時刻tbから時刻tcにおいて、CCVが理想曲線VRに対して指数関数的に変化しているのは、分極の増加の時定数に起因する。抵抗成分による電圧降下量と異なり、電流がixからiyに変化したことに伴なって、分極電圧が電流ixに応じた分極電圧Vpxから、電流iyに応じた分極電圧Vpy(|Vpx|<|Vpy|)に増大することには一定の時間を要する。
図4に示される矢印AR10の長さは、時刻tcにおける分極電圧Vpyと抵抗成分による電圧降下量(Z×iy)とを示している。分極の増加速度の遅れの影響はあるものの、時刻tcにおいて取得される電池電圧vyは、理想曲線VRにおける時刻tcの電池電圧(真値)と概ね等しい値となっている。ゆえに、時刻tb(開始時刻)の電池情報(ix,vx)と時刻tc(終了時刻)の電池情報(iy,vy)とを用いて組電池10の内部抵抗を精度よく推定することができる。
(B)のパターンは、放電電流が電流iyからixに減少した場合を示している。時刻tdから時刻teが所定期間(te-td)である。
ここで、時刻teにおける電流と時刻tbの直前における電流とは共にixで等しいため、双方の時刻における差電圧の大きさは等しくなると考えられる。つまり、時刻teにおける差電圧の大きさを示す矢印AR20の長さは、時刻tbの直前における差電圧の大きさを示す矢印AR1の長さと等しくなると考えられる。
しかしながら、図4に示されるように、時刻teにおける差電圧の大きさは、時刻tbにおける差電圧の大きさよりも大きくなっている。そして、時刻teよりさらに時間経過した時刻tf(te<tf)において差電圧が時刻tbの直前における差電圧と等しくなっている(矢印AR1の長さ=矢印AR2の長さ)。
これは、分極の増加の時定数と、分極の減少の時定数との違いに起因している。分極の減少の時定数は、分極の増加の時定数よりも大きい。組電池10の放電が継続されている状態において、放電電流が減少すると分極電圧も減少するが、分極の増加の時定数よりも分極の減少の時定数の方が大きいために、所定期間において分極電圧が対応分極電圧への変動が完了していない。そのため、時刻teに取得される電池電圧VBは、変動中の分極電圧の影響を受けて、理想曲線VRが示す値から離れた値となってしまう。この値を用いて内部抵抗の推定が行なわれると、内部抵抗の推定精度が低下してしまう可能性がある。所定期間を長く設定して対策することも考えられるが、上述したとおり、所定期間を長く設定すると、車両1の使用時などにおいて内部抵抗の推定の機会が減少してしまう可能性がある。
そこで、本実施の形態においては、ECU100は、第1条件および第2条件に加えて、さらに第3条件を満たすか否かを判定し、第3条件を満たす場合に内部抵抗を推定する。第3条件は、「所定期間において、充電または放電が継続されていない、または、開始時刻から電流の大きさが減少していないこと」である。つまり、「所定期間において、充電または放電が継続されており、かつ、開始時刻から電流の大きさが減少している」場合には、組電池10の内部抵抗の推定が行なわれない。
第3条件が満たされるパターン(内部抵抗が推定されるパターン)および第3条件が満たされないパターン(内部抵抗が推定されないパターン)を具体的に例示する。図5は、所定期間において観測された電流波形を例示した図である。図5に示される(A)~(D)のパターンのうち、(A)および(D)のパターンの場合には内部抵抗が推定され、(B)および(C)のパターンの場合には内部抵抗が推定されない。
(A)および(B)のパターンについては、図4において説明したとおりであるので繰り返し説明しない。(C)のパターンについては、組電池10の充電が継続されている状態において、所定期間に開始時刻よりも電流の大きさ(絶対値)が減少している。つまり、開始時刻から充電電流が減少している。この場合には、(B)のパターンの場合と同様に、分極が減少する方向への電流変化であり、所定期間内に分極電圧が対応分極電圧まで減少しない可能性がある。そのため、(C)のパターンの場合には、終了時刻に取得された電池電圧が、分極電圧が変動中であるときのものである可能性がある。この値が組電池10の内部抵抗の推定に用いられると、推定精度を低下させてしまう可能性があるので、内部抵抗の推定を行なわない。
(D)のパターンについては、組電池10の充電が継続されている状態において、所定期間に開始時刻よりも電流の大きさが増大している。つまり、開始時刻から電流(充電電流)が増大している。この場合には、(A)の場合と同様に、所定期間内に分極が増加する方向への電流変化であり、所定期間において分極電圧Vpが対応分極電圧まで増加することが見込まれる。(D)のパターンの場合には、終了時刻に取得された電池電圧が、分極電圧が対応分極電圧となっているときのものであるので、所定期間の開始時刻と終了時刻との電池情報を用いて組電池10の内部抵抗を精度よく推定することができる。ゆえに、内部抵抗の推定が行なわれる。
(内部抵抗の推定処理の手順)
図6は、電池システム5における組電池10の内部抵抗の推定処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される各ステップは、車両1が作動中である場合においてECU100により繰り返し実行される。図6に示すフローチャートの各ステップは、ECU100によるソフトウェア処理によって実現される場合について説明するが、その一部あるいは全部がECU100内に作製されたハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
図6は、電池システム5における組電池10の内部抵抗の推定処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される各ステップは、車両1が作動中である場合においてECU100により繰り返し実行される。図6に示すフローチャートの各ステップは、ECU100によるソフトウェア処理によって実現される場合について説明するが、その一部あるいは全部がECU100内に作製されたハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
ECU100は、インデックスである変数nに1を代入して初期化する(ステップ100、以下ステップを「S」と略す)。nは自然数であり、たとえば、所定期間において、時刻t1~t11のそれぞれにおいて電池情報が取得される場合には、1~11の値をとる。ECU100は、変数nに代入されている値を判定する(S110)。
ECU100は、変数nが1である場合(S110においてn=1)、開始時刻(第1時刻)t1における電池電流および電池電圧を監視ユニット200から第1電流i1および第1電圧v1としてそれぞれ取得し、メモリ100bに記憶する(S120)。
ECU100は、変数nがNであるか否かを判定する(S160)。なお、図2で示した本実施の形態の例においては、Nの値は11である。ECU100は、変数nの値が1であるため(n≠N)、S160においてNOを選択し、処理をS165に進める。S165において、ECU100は、変数nを2として、処理をS110に戻す。
ECU100は、nが2である場合(S110においてn=2)、時刻t2における電池電流および電池電圧を監視ユニット200から第2電流i2および第2電圧v2としてそれぞれ取得し、メモリ100bに記憶する(S130)。
ECU100は、S140において第1条件を満たすか否かを判定する。具体的には、ECU100は、第1電流i1と第2電流i2との差分の大きさである第1変化量di1が第1所定量TH1以上となっているか否かを判定する。ECU100は、第1変化量di1が第1所定量TH1より小さい(di1<TH1)場合(S140においてNO)、I-Vプロット法による組電池10の内部抵抗の推定において一定以上の精度を確保できる程度に電流が変化していないと判定し、組電池10の内部抵抗の推定を行なわずに、処理を終了させる。
一方、ECU100は、第1変化量di1が第1所定量TH1以上(di1≧TH1)である場合(S140においてYES)、処理をS160に進める。そして、ECU100は、変数nの値が2であるので(n≠N)、処理をS165に進めて変数nを3として、処理をS110に戻す。
ECU100は、変数nが3以上である場合(S110においてn≧3)、時刻tnにおける電池電流および電池電圧を監視ユニット200から第n電流inおよび第n電圧vnとしてそれぞれ取得し、メモリ100bに記憶する(S150)。ECU100は、この処理を変数nがNとなるまで繰り返し実行する。
ECU100は、S160において変数nがNに達すると(S160においてYES)、第2条件を満たすか否かを判定する(S170)。具体的には、ECU100は、第2電流i2から第11電流i11までの電池電流の変動幅di2が第2所定量TH2以下(di2≦TH2)であるか否かを判定する。
ECU100は、変動幅di2が第2所定量TH2より大きい(di2>TH2)場合(S170においてNO)、時刻t11において取得された電池情報(第11電流i11,第11電圧v11)が、組電池10に入出力される電流が安定した状態で取得されたものではないと判定し、組電池10の内部抵抗の推定を行なわずに、処理を終了させる。
一方、ECU100は、変動幅di2が第2所定量TH2以下(di2≦TH2)である場合(S170においてYES)、第3条件を満たすか否かを判定する(S180)。具体的には、ECU100は、所定期間において、充電または放電が継続されていない、または、第1電流i1の大きさが第11電流i11の大きさ以下であること、という条件を満たすか否かを判定する。
ECU100は、第3条件が満たされてない場合(S180においてNO)、つまり、所定期間において充電または放電が継続されており、かつ、第1電流i1の大きさが第11電流i11の大きさよりも小さい場合、所定期間の開始時刻から終了時刻において電流が減少する方向に変化している。そのため、時刻t11において取得された第11電圧v11が分極電圧が変動中であるときのものである(分極電圧が第11電流i11に対応した対応分極電圧となっていない)可能性があるため、組電池10の内部抵抗の推定を行なわずに、処理を終了させる。
一方、ECU100は、第3条件が満たされている場合(S180においてYES)、時刻t1において取得された電池情報(第1電流i1,第1電圧v1)および時刻t11において取得された電池情報(第11電流i11,第11電圧v11)を用いて、時刻t1から時刻t11までの電流変化量および電圧変化量から組電池10の内部抵抗を推定する(S190)。
以上のように、第1条件から第3条件が満たされる状態で取得された組電池10の電池情報(電池電流,電池電圧)を用いて、時刻t1(開始時刻)から時刻t11(終了時刻)までの組電池10の電流変化量および電圧変化量から内部抵抗が推定される。これによって、組電池10の内部抵抗の推定精度を向上させることができる。
(1)第1条件は、第1電流から第1所定量以上の電流変化があったことである。第1条件が満たされることによって、たとえば、I-Vプロット法を用いて時刻t1から時刻t11までの電流変化量および電圧変化量から組電池10の内部抵抗が推定される場合、各センサの検出精度などによる測定誤差が内部抵抗を推定するための近似直線の傾きに与える影響を小さくすることができる。
(2)第2条件は、第1電流から第1所定量以上の電流変化があった後の組電池10の電流の変動幅が第2所定量以下であることである。第2条件が満たされることによって、組電池10の内部抵抗の推定に用いられる終了時刻(時刻t11)に取得された電池情報が、組電池10に入出力される電流が安定した状態で取得されたものであることを保証することができる。
(3)第3条件は、所定期間において、充電または放電が継続されていない、または、開始時刻から電流の大きさが減少していないことである。第3条件が満たされない場合には、終了時刻に取得された電池電圧が分極電圧が変動中であるときのものである可能性がある。第3条件が満たされる場合に取得された電池情報が内部抵抗の推定に用いられることによって、これらの値が分極電圧が対応分極電圧になった状態で取得されたものであることを保証することができる。
なお、本実施の形態においては、第1条件~第3条件を満たしているか否かの判定は、種々のタイミングで行なわれればよい。たとえば、所定期間において、時刻t1~t11における電池情報をすべて取得してから判定が行なわれてもよいし、各条件が判定可能となった時点で当該条件の判定が行なわれてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 車両、5 電池システム、10 組電池、20 システムメインリレー、50 モータジェネレータ、60 駆動輪、100 ECU、100a CPU、100b メモリ、100c タイマ回路、200 監視ユニット、210 電圧センサ、220 電流センサ、230 温度センサ、di1 第1変化量、di2 変動幅、IB 電池電流、VB 電池電圧、VR 理想曲線、TB 電池温度。
Claims (1)
- ニッケル水素電池と、
前記ニッケル水素電池の電流が所定期間の開始時刻に取得した値から第1所定量以上変化した後の前記ニッケル水素電池の電流の変動幅が、前記第1所定量より小さい第2所定量以下であるときに、前記所定期間における前記ニッケル水素電池の電流変化量および電圧変化量を用いて前記ニッケル水素電池の内部抵抗を推定する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記ニッケル水素電池の充電または放電が前記所定期間を通して継続されている場合において、前記開始時刻から電流の大きさが減少したときには、前記内部抵抗の推定をしない、電池システム。
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