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JP7030895B2 - 水解性シートの製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、水解性シートの製造方法に関する。
一般に、水解性シートであるトイレクリーナーは、便器を擦っても破れない表面強度と、清掃完了後に便器の水溜まりにそのまま廃棄して流すことができる水解性を有している(例えば、特許文献1参照)。
特開2016-084565号公報
しかし、従来のトイレクリーナーは、抄紙工程において抄紙機のワイヤーの上に繊維を敷き詰めて搬送方向に流すため、抄紙機の搬送方向である縦方向に多くの繊維が並ぶこととなり、横方向の繊維密度が薄くなる。そのため、横方向に拭いた際に繊維が断裂しやすく、破れてしまうことがあるという課題を有する。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたことで、縦方向と横方向の強度のバランスに優れた水解性シートの製造方法を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、
解性シートの製造方法であって、
50質量%から70質量%がNBKPからなる繊維集合体から縦横強度比が0.6~0.8の原紙シートを生成する抄紙工程と、
前記原紙シートにセルロースナノファイバーが添加されたカルボキシメチルセルロースを、厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれて徐々に増加した状態となるように付与するバインダー付与工程と、
前記原紙シートを熱乾燥する熱乾燥工程と、
前記原紙シートにエンボスを施すエンボス工程と、
前記原紙シートに薬液を含浸させる薬液含浸工程と、
を備え、
前記エンボス工程及び前記薬液含浸工程終了後の水解性シートの縦横強度比が0.9~1.2であることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の水解性シートの製造方法であって、
前記原紙シートの重量の5%以下のカルボキシメチルセルロースが付与されることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の水解性シートの製造方法であって、
20g/m~60g/mのプロピレングリコールモノメチルエーテルが添加されることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の水解性シートの製造方法であって、
5g/m~30g/mのジエチレングリコールモノブチルエーテルが添加されることを特徴とする。
本発明によれば、縦方向と横方向の強度のバランスに優れた水解性シートの製造方法を提供することができる。
本実施形態に係るトイレクリーナーの一例を示す平面図である。 (a)は、従来の紙の繊維配向を示す図、(b)は、本発明の繊維配向を示す図である。 トイレクリーナーのエンボス部分の拡大図及び断面図である。 エンボスの接触面積の一例を示す説明図である。
以下、図1から図4を参照しつつ、本発明の実施形態である水解性シートとしてのトイレクリーナーを詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
なお、水解性シートは、トイレクリーナーを一例として説明するが、水解性シートには、清拭用途の薬液を含浸させたウェットティシューなども含まれる。
また、便宜的に、図1及び図2に示したように、X方向及びY方向並びに上下方向及び左右方向を定めて説明する。
[全体構成]
本発明に係るトイレクリーナーSは、原紙シートがプライ加工(積層)されたものであって、所定の薬液が含浸されているウェットタイプのトイレ用清掃シートであることが好ましい。
なお、原紙シートは3枚以上の原紙シートをプライ加工されたものであると、後述するCMCの塗布に斑が生じてしまうため、2枚の原紙シートをプライ加工したものが好ましい。
また、原紙シートは、プライ加工されていない、1枚の原紙シートにより構成されていてもよい。
また、トイレクリーナーSの表面は、エンボス加工が施され、例えば、図1に示すように、2種類のエンボスEM11及びEM12が設けられている。
原紙シートの1枚あたりの目付け量は、30g/m~150g/m程度である。なお、目付け量は、JIS P8124に基づくものである。
また、本実施形態のトイレクリーナーSの原紙シートは、便器等を掃除した後そのまま便器の水溜まりに廃棄できるよう、水解性の繊維集合体から構成されている。
[繊維集合体]
繊維集合体としては、水解性を有する繊維集合体であれば特に限定されないが、単層又は複数層の紙又は不織布を好適に用いることができる。原料繊維は、天然繊維でも合成繊維でも良く、これを混合することも可能である。好適な原料繊維としては、木材パルプ、非木材パルプ、レーヨン、コットン等のセルロース系繊維、ポリ乳酸等からなる生分解性繊維等を挙げることができる。また、これらの繊維を主体としてポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリニトリル繊維、合成パルプ、ガラスウール等を併用することができる。
特に、繊維集合体として、少なくともパルプを含むものであることが好ましく、原料となるパルプは、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を適宜の割合で配合したものが適する。
パルプの配合比としては、針葉樹晒クラフトパルプの配合割合が50質量から70質量%であるものが好ましく、65質量%であるものが特に好ましい。広葉樹晒クラフトパルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの配合比を多くすることで、トイレクリーナーSの縦横強度の差を小さくするように調整することができる。また、針葉樹晒クラフトパルプの配合割合を70質量%以下とすることで、繊維間隙間が大きくなりすぎず、トイレクリーナーSとして十分な薬液の乾きにくさを有するようになる。
また、原紙シートは、粉砕されたパルプからなるシート、粉砕パルプを水解紙で覆ったり、挟んだりしたシートにより構成されていてもよい。
[水溶性バインダー]
また、トイレクリーナーSの原紙シートには紙力増強のための水溶性バインダーが付与されている。水溶性バインダーとしては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
特に、水解性が良好となる点や架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。
(多糖誘導体)
多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンプン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)のアルカリ金属塩が好ましい。
(CMC)
CMCについては、そのエーテル化度が0.6~2.0、特に0.9~1.8、更に好ましくは1.0~1.5であるのが望ましい。水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となるためである。
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることが好ましい。これは、薬液中の架橋剤である特定金属イオンとの架橋により、未膨潤化のまま原紙シートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうるトイレ用清掃シートとしての強度を発現することができるからである。
本実施形態のトイレクリーナーSの場合には、水溶性バインダーとして、CMCが付与されている。
CMCは、原紙シートの厚み方向に均一に含浸された状態でも良いが、原紙シートの厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれてCMCの含有量が徐々に増加した状態となっていることが好ましい。これにより、トイレクリーナーSは、同量の水溶性バインダーを均一に含浸させた従来品に比べて便器の縁等を強く擦っても破れにくくなるからである。
なお、水溶性バインダーであるCMCの付与量としては、原紙シートの重量に対して5%以下とするのが好ましい。このようにすることで、トイレクリーナーSの水汚れに対する強度と水解性とを両立させることができる。
(合成高分子)
合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。
天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
(CNF)
また、トイレクリーナーSには、セルロースナノファイバー(CNF)を添加することができる。
即ち、水溶性バインダー(本実施形態の場合には、CMC)には、CNFを添加することができ、原紙シートの比表面積はパルプのみの組成のものより大きくなる。
ここで、CNFとは、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に繊維幅がナノサイズ(1nm以上、1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいうが、平均繊維幅は、100nm以下の繊維が好ましい。平均繊維幅の算出は、例えば、一定数の数平均、メジアン、モード径(最頻値)などを用いる。
CNFは、原紙シートの厚み方向に均一に含浸された状態でも良いが、原紙シートの厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれてCNFの含有量が徐々に増加した状態となっていることが好ましい。これにより、トイレクリーナーSは、同量の水溶性バインダーを均一に含浸させた従来品に比べて便器の縁等を強く擦っても破れにくくなるからである。
(CNFに使用可能なパルプ繊維)
CNFの製造に使用可能なパルプ繊維としては、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
(CNFの解繊方法)
CNFの製造に用いられる解繊方法としては、例えば、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
なお、上記解繊方法などにより機械的処理のみ施した(変性させていない)CNF、即ち、官能基未修飾のCNFは、リン酸基やカルボキシメチル基などの官能基修飾されたものに対し、熱安定性が高いため、より幅広い用途に使用可能であるが、リン酸基やカルボキシメチル基などの官能基修飾されたCNFを本発明に使用することも可能である。
また、例えば、パルプ繊維に対して機械的手法の解繊処理を施したものに、カルボキシメチル化等の化学的処理を施しても良いし、酵素処理を施してもよい。化学的処理を施したCNFとしては、例えば、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、亜リン酸エステル化CNF等の、直径が3nm~4nmとなるiCNF(individualized CNF)(シングルナノセルロース)が挙げられる。
また、化学的処理や酵素処理のみを施したCNFや、化学的処理や酵素処理を施したCNFに、機械的手法の解繊処理を施したCNFでもよい。
[縦横の引張強度の比率]
また、トイレクリーナーSの縦横の引張強度の比率(縦/横)については、0.9~1.2であり、1.0に近いことが好ましい。
紙の製造工程である抄紙工程においては抄紙機のワイヤーの上に繊維を敷き詰めて搬送方向に流すため、一般的には、紙は、抄紙機の搬送方向である縦方向に多くの繊維が並んでいる(例えば、縦:横=2.3:1等。図2(a)参照)という特性がある。そのため、横方向の繊維密度が薄く繊維が断裂しやすい。即ち、拭くときの方向によって破れやすい。そこで、本実施形態においては、図2(b)に示すように、トイレクリーナーSの縦横の引張強度の比率を0.9~1.2となるように調整することで、どの方向から拭いても破れにくいトイレクリーナーSを提供することができる。なお、縦横の引張強度の比率は、MD及びCD方向の湿潤強度の比により求めることができる。
(乾燥引張強度)
また、トイレクリーナーSは、原紙シートのJIS P 8113(2006)に規定される乾燥引張強度の縦横比が0.6~0.8であるのが好ましい。この縦横比は、ワイヤーパートにおけるジェットワイヤー比等、各種抄造条件の変更により調整することができる。乾燥引張強度の縦横比(縦方向/横方向)に差を設けることで、エンボスを設けた際に縦横比の差を小さくすることができる。
[薬液]
本実施形態のトイレクリーナーSには、水溶性バインダー(本実施形態のトイレクリーナーSの場合には、CMC)と架橋する架橋剤を含む所定の薬液が含浸されている。なお、薬液には、この他、グリコールエーテル類、水性洗浄剤、防腐剤、除菌剤、有機溶剤等の補助剤が含まれる。
当該薬液は、水溶性バインダーが含浸された後に、乾燥された原紙シートに対して、含浸される。
また、薬液は、トイレクリーナーSの基材である原紙シートの質量に対して100~500質量%含浸させるが、好ましくは150~300質量%である。
(架橋剤)
架橋剤としては、ホウ酸、種々の金属イオン等を使用することができるが、CMCを水溶性バインダーとして用いた場合、多価金属イオンを用いることが好ましい。特に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る湿潤強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
(グリコールエーテル類)
グリコールエーテル類とは、2価アルコールであるグリコールの片末端、あるいは両末端の水酸基をエーテル化した構造であり、分子内に疎水性のアルキル基並びに親水性のエーテル基及び水酸基を有する化合物であり、界面活性剤に比べ分子量が小さく、従来の界面活性剤のみを含んだ洗剤よりも動的表面張力が低いため、薬液と汚れとの間の界面形成をより速く起こすことができる。また、グリコールエーテル類は、疎水性の油分や汚れと水を相溶化するカップリング剤としても働き、汚れを引き離し、再付着することを防止することができる。そのため、薬液にグリコールエーテル類を添加することで、トイレクリーナーSの拭き取り性能を向上させることができる。
本発明における薬液には、グリコールエーテル類であるプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DGME)、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール モノメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコール モノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が含まれている。
特に、PGMEは、通常、洗浄成分として添加され洗浄力が向上することが知られているが、直接シート強度を向上する効果を示し、CMCと多価金属イオンによるシート強度向上効果を高める効果を持っている。その結果、高い消臭効果を奏するものと考えられる。PGMEの付与量は、20g/m~60g/mであるのが好ましく、より好ましくは26g/m~40g/mである。20g/m未満であると消臭効果が十分得られない。また、60g/mよりも多く付与しても、60g/m付与した場合よりも大きな消臭効果は得られない。
DGMEは、PGMEと同様に、シート強度を向上する効果を有する補助剤である。DGMEの付与量は、5g/m~30g/mであるのが好ましく、より好ましくは10g/m~20g/mである。
ただし、最もシート強度を向上させることができるDGMEのみを添加した場合、使用者の手の脂を拭き取ってしまい、手荒れに繋がる恐れがある。そのため、手荒れを防ぎつつ、シート強度を向上させるために、DGME以外にPGME等のグリコールエーテル類を薬液に適正な配合で調合する必要がある。
(水性洗浄剤)
水性洗浄剤としては、例えば、界面活性剤の他、低級又は高級(脂肪族)アルコールを使用することができる。
(防腐剤)
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等のパラベン類を使用することができる。
(除菌剤)
除菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード、エタノール、セチル酸化ベンザニウム、トリクロサン、クロルキシレノール、イソプロピルメチルフェノール等を使用することができる。有機溶剤としては、グリコール(2価)、グリセリン(3価)、ソルビトール(4価)等の多価アルコールを使用することができる。
また、上述した薬液の成分の補助剤については適宜選択可能であり、必要に応じて他の機能を果たす成分を薬液に含ませてもよい。例えば、防腐剤や除菌剤を可溶化する補助剤としてプロピレングリコール(PG)を使用することができる。
[エンボス]
また、トイレクリーナーSの表面はエンボス加工が施されており、トイレクリーナーSの場合、例えば、図1に示す通り、2種類のエンボスEM11及びEM12がエンボス加工により施されている。
エンボスの形状、数、面積率等は任意であるが、トイレクリーナーSの場合、エンボスEM11は、菱形格子となるように配置されており、これにより、エンボスEM11が正方格子や矩形格子に配置される場合と比較して拭きムラを軽減することができる。また、エンボスEM12は、エンボスEM11の間に配置されている。
エンボスEM11は、図3(a)に示すように、膨出部PR21が曲面の形状を有している。
また、エンボスEM12は、図3(b)に示すように、膨出部PR22が平面の形状を有している。
そして、エンボスEM12は、エンボスEM11の間に配置されているので、エンボスEM11の膨出部PR21及びエンボスEM12の膨出部PR22は近接して密着することにより、図3(c)に示すように連なったエンボスEM21として形成されることになる。
また、エンボスEM11の膨出部PR21とエンボスEM12の膨出部PR22が近接するだけであって、連なっていない場合であってもよい。
このように形成された2種類のエンボスEM11及びEM12により、清掃対象物等との接触面積を増やすことができるので、トイレクリーナーSの硬さが緩和されて、拭き取り性能が高くなる。
すなわち、トイレクリーナーSの全面に、膨出部PR21が曲面であるエンボスEM11と、膨出部PR22が平面であるエンボスEM12を組み合わせて形成することにより、拭き取り作業時にトイレクリーナーSに力が加わった時点で各エンボスが変形して、初めて接触面積が増加することになるので、接触面積を増加させると共に、各エンボスの変形に起因して、しなやかさも向上することになる。
例えば、図4(a)に示すように、単一のエンボスEM11の場合には、拭き取り作業時にトイレクリーナーSに加わる力によりエンボスEM11が変形して生じる接触面積CN31は、エンボスEM11近傍に離散的に生じる。これに対して、2種類のエンボスEM11及びEM12を組み合わせた場合には、図4(b)に示すように、拭き取り作業時にトイレクリーナーSに加わる力によりエンボスEM11及びEM12が変形して生じる接触面積SN32は、図4(a)の接触面積CN31と比較して、増加することが分かる。
また、2種類のエンボスEM11及びEM12は、通常のエンボスの効果を同様に得ることができ、トイレクリーナーSの風合い、吸収性及び嵩高性等を向上させることができる。さらに、連なったエンボスEM21は、通常のエンボスと同様に、エンボスを施すことによる見栄えの良さの効果も得ることができる。
また、トイレクリーナーSは、折り加工されることにより、Y方向の中央部で2つ折りに折り畳まれる。そして、折り畳まれた状態で保管用のプラスチックケースや包装フィルム内等に保管され、使用時には必要に応じて広げて使用される。なお、トイレクリーナーSの折り畳み方は、2つ折りに限ることはなく、例えば、4つ折りにしても良く8つ折りにしても良い。
次に、本発明の実施例及び比較例について、縦横強度比及び表面強度の改善のための好ましい構成を評価した結果を説明する。以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、下記実施例及び比較例に係るバインダー溶液に含まれるCMCは、いずれもCMC1330(ダイセル社)であり、薬液に配合されるDGMEは、直鎖状の化合物である。
[試験1-4に係るサンプル作成]
40質量%のNBKPと60質量%のLBKPの割合で配合した抄紙原料と、65質量%のNBKPと35質量%のLBKPの割合で配合した抄紙原料を用意する。
次に、実施例1、比較例1-3の条件でジェットワイヤー比を調整しながら抄紙を行って目付け86g/mの原紙シートとした後、2プライとなるようにプライ加工を行った。
実施例1及び比較例1-3の条件は以下の通りである。
(実施例1)
65質量%のNBKPと35質量%のLBKPの割合で配合した抄紙原料を、原紙シートの乾燥強度がMD/CD=0.6となるように調整して抄紙した。
(比較例1)
40質量%のNBKPと60質量%のLBKPの割合で配合した抄紙原料を、原紙シートの乾燥強度がMD/CD=1.2となるように調整して抄紙した。
(比較例2)
40質量%のNBKPと60質量%のLBKPの割合で配合した抄紙原料を、原紙シートの乾燥強度がMD/CD=1.0となるように調整して抄紙した。
(比較例3)
65質量%のNBKPと35質量%のLBKPの割合で配合した抄紙原料を、原紙シートの乾燥強度がMD/CD=1.0となるように調整して抄紙した。
上記実施例1及び比較例1-3の原紙シートを用いて、以下の試験1-4を行った。
[試験1.乾燥時引張強度試験]
各原紙シートを25mm幅にカットした試験シートの両端を引張試験機(A&D社製のTENSIRON RTG1210)のチャックで挟み、チャック間距離50mm、速度500mm/minの条件で、各接着箇所の原紙シート同士のプライが剥がれるときの最大荷重点を測定する。このような試験を各試験シートのMD方向及びCD方向につき4回ずつ行い、引張強度の平均値と、縦横強度比の平均値を算出した。
[試験2.湿潤時引張強度試験(エンボス無)]
水溶性バインダー塗布設備にて、各原紙シートの外面に、水96%、CMC4%のバインダー溶液を、乾燥重量に対して1.4質量%スプレー塗布した。
次に、熱風乾燥機(温度180℃)を通過させ、水分率が約8%になるまで乾燥させた。
次いで、架橋剤4.050質量%、水性洗浄剤0.200質量%、防腐剤0.205質量%、除菌剤0.200質量%、PG3.000質量%、PGME16.5質量%、精製水75.845質量%の割合で混合した薬液を、200質量%含浸させ、実施例1、比較例1-3の試験シートを作成した。
次いで、試験1と同じ試験を各試験シートにつき4回ずつ実施し、引張強度の平均値と、縦横強度比の平均値を算出した。
[試験3.湿潤時引張強度試験(エンボス有)]
試験2において、熱乾燥後にエンボス加工設備にて、図1に記載したようなエンボスを施し、薬液を含浸させて実施例1、比較例1-3の試験シートを作成した。
次いで試験1と同じ試験を各試験シートにつき4回ずつ実施し、引張強度の平均値と、縦横強度比を算出した。
試験の結果を表Iに示す。
Figure 0007030895000001
[評価]
試験2と試験3の結果を比較すると、いずれの比較例及び実施例においても、エンボス加工を行うと、縦横強度比が大きく変化することが分かる。
そのため、比較例1―3に示すように、原紙シートがドライ状態である段階で縦横強度比を1.0にせず、実施例1に示すように、0.6~0.8の範囲とすることで、エンボス加工を行うトイレクリーナーSの縦横強度比を0.9~1.2の範囲内とすることができ、縦横強度比のバランスに優れたトイレクリーナーSとすることができる。
また、比較例3と実施例1の比較結果からわかるように、NBKP65質量%、LBKP35質量%の抄紙原料から原紙シートを形成するだけでなく、抄紙工程において乾燥引張強度比を0.6~0.8となるように調整することで、縦横強度比のバランスに優れたトイレクリーナーSを生成することができる。
[試験4に係るサンプル作成]
水溶性バインダー塗布設備にて、実施例1、比較例2の原紙シートの外面に、水96%、CMC4%のバインダー溶液を、乾燥重量に対して1.4質量%スプレー塗布した。
次に、熱風乾燥機(温度180℃)を通過させ、水分率が約8%になるまで乾燥させた。
次に、エンボス加工設備にて、図1に記載したようなエンボスを施し、実施例1、比較例2のエンボスシートを作成した。
次いで、実施例1、比較例2のエンボスシートに、架橋剤4.050質量%、水性洗浄剤0.200質量%、防腐剤0.205質量%、除菌剤0.200質量%、PG3.000質量%、PGME16.5質量%、精製水75.845質量%の割合で混合した薬液を、それぞれ200質量%含浸させ、実施例1、比較例2の試験シートを作成した。
また、実施例1、比較例2のエンボスシートに、架橋剤4.050質量%、水性洗浄剤0.200質量%、防腐剤0.205質量%、除菌剤0.200質量%、PG3.000質量%、PGME13.5質量%、DGME3.000質量%、精製水75.845質量%の割合で混合した薬液を、それぞれ200質量%含浸させ、実施例2、比較例4の試験シートを作成した。
[試験4.マーチンデール試験]
実施例1、2及び比較例2、4の試験シートの耐摩耗性について、便座裏の突起材のように障害物がある清掃面を想定して、JIS L 1096 E法(2010)に規定されるマーチンデール法に準拠した下記(1)―(3)の手順で耐摩耗試験を行った。
(1)38φの大きさにカットした試験シートを、摩擦試験機であるグロッツ・ベッケルト製のマーチンデール試験機にセットする。
(2)摩耗試験機に9kpaの錘を乗せ、摩耗試験機を稼働させ、トイレの段差や縁を想定したアクリル板上に貼り付けたウレタン製クッション(和気産業株式会社製、CN-001)と、試験シートを擦り合わせる。試験機の動きはリサージュとして行う。
(3)試験シートの破損状況を確認し、完全に破れた時の摩擦回数を読み取る。
上記試験4を各試験シートにつきそれぞれ10回ずつ行った結果の平均値を表IIに示す。
Figure 0007030895000002
[評価]
比較例2と4、実施例1と2をそれぞれ比較すると、薬液にDGMEを配合することで、完全に破れるまでに必要な摩擦回数が増加しており、トイレクリーナーSの強度を高められることがわかる。
これは、PGMEは紙全体に浸透しやすいのに対して、DGMEは紙の表面に留まりやすいため、DGMEを配合した方が表面強度は強くなるからであると推測される。
また、比較例2と実施例1、比較例4と実施例2をそれぞれ比較すると、NBKP65質量%、LBKP35質量%である抄紙原料から原紙シートを形成するだけでなく、抄紙工程において乾燥引張強度比を0.6~0.8となるように調整することで、エンボス加工を行った際の縦横強度差が少なくなり、トイレクリーナーSが破れにくくなることが分かる。
S トイレクリーナー(水解性シート)
EM11、12、21 エンボス

Claims (4)

  1. 解性シートの製造方法であって、
    50質量%から70質量%がNBKPからなる繊維集合体から縦横強度比が0.6~0.8の原紙シートを生成する抄紙工程と、
    前記原紙シートにセルロースナノファイバーが添加されたカルボキシメチルセルロースを、厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれて徐々に増加した状態となるように付与するバインダー付与工程と、
    前記原紙シートを熱乾燥する熱乾燥工程と、
    前記原紙シートにエンボスを施すエンボス工程と、
    前記原紙シートに薬液を含浸させる薬液含浸工程と、
    を備え、
    前記エンボス工程及び前記薬液含浸工程終了後の水解性シートの縦横強度比が0.9~1.2であることを特徴とする水解性シートの製造方法
  2. 前記原紙シートの重量の5%以下のカルボキシメチルセルロースが付与されることを特徴とする請求項1に記載の水解性シートの製造方法
  3. 20g/m~60g/mのプロピレングリコールモノメチルエーテルが添加されることを特徴とする請求項1又は2記載の水解性シートの製造方法
  4. 5g/m~30g/mのジエチレングリコールモノブチルエーテルが添加されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水解性シートの製造方法
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