JP7044320B2 - 疾患特異的な組織因子経路インヒビター2の糖鎖構造の利用 - Google Patents
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Description
(1)明細胞癌を評価及び/又は鑑別するために、生体試料におけるLacdiNAc(N-アセチルガラクトサミン-N-アセチルグルコサミン)を有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を測定する方法。
(2)生体試料が、被験者から得た細胞、組織又は体液である(1)記載の方法。
(3)体液が血液、腹腔液又は腹腔洗浄液である(2)記載の方法。
(4)血液が、全血、血清、血漿又は血漿交換外液である(3)記載の方法。
(5)生体試料における、LacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の存在が確認された場合には、明細胞癌に罹患している、あるいは癌の組織型が明細胞癌であると評価する(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)LacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の存在を質量分析法により確認する(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)組織因子経路インヒビター2又はそのペプチド断片をMS/MS測定する際に観測される糖ペプチドイオンの中に、366.14Daに加えて、407.17Da、553.22 Da および/または698.27 Daのシグナルが含まれていれば、明細胞癌に罹患している、あるいは癌の組織型が明細胞癌であると評価する(6)記載の方法。
(8)明細胞癌の治療効果又は再発の判定検査のために、生体試料におけるLacdiNAc(N-アセチルガラクトサミン-N-アセチルグルコサミン)を有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を測定する方法。
(9)明細胞癌の治療及び/又は予防に効果のある物質を同定する方法であって、以下の工程:
(a)被験物質を明細胞癌細胞に接触させる工程、
(b)工程(a)で被験物質に接触させた明細胞癌細胞を所定時間培養する工程、
(c)工程(b)で培養したv細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を測定する工程、及び
(d)工程(c)で測定した明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を被験物質に接触させなかった対照細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現と比較することにより、明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現に対する被験物質の効果を評価する工程
を含む前記方法。
(10)さらに、明細胞癌細胞増殖に対する被験物質の効果を調べる工程を含む(9)記載の方法。
(11)明細胞癌の抗癌剤耐性を低下させる物質を同定する方法であって、以下の工程:
(a)被験物質を明細胞癌細胞に接触させる工程、
(b)工程(a)で被験物質に接触させた明細胞癌細胞を所定時間培養する工程、
(c) 工程(b)で培養した明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を測定する工程、及び
(d)工程(c)で測定した明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を被験物質に接触させなかった対照細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現と比較することにより、明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現に対する被験物質の効果を評価する工程
を含む前記方法。
(12)さらに、明細胞癌細胞の抗癌剤耐性に対する被験物質の効果を調べる工程を含む(11)記載の方法。
(a)被験物質を明細胞癌細胞に接触させる工程、
(b)工程(a)で被験物質に接触させた明細胞癌細胞を所定時間培養する工程、
(c)工程(b)で培養した明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を測定する工程、及び
(d)工程(c)で測定した明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を被験物質に接触させなかった対照細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現と比較することにより、明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現に対する被験物質の効果を評価する工程
を含む。
(a)被験物質を明細胞癌細胞に接触させる工程、
(b)工程(a)で被験物質に接触させた明細胞癌細胞を所定時間培養する工程、
(c) 工程(b)で培養した明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を測定する工程、及び
(d)工程(c)で測定した明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を被験物質に接触させなかった対照細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現と比較することにより、明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現に対する被験物質の効果を評価する工程
を含む。
〔実施例1〕
1.サンプル調製
明細胞癌および胎盤のTFPI2の糖鎖構造を解析するために、強いTFPI2発現が認められる卵巣明細胞癌細胞株4種(OVISE, OVMANA, OVASAYO, RMG- II)、およびヒト胎盤絨毛栄養膜(Human Villous Trophoblast、HVT)を用いた。これらの細胞の培養は推奨されている方法に従った。各細胞の細胞外マトリクスに結合しているTFPI2を遊離させるために、90%密度に達した各細胞をPBSで3回洗浄し、10%FBS含有培地にヘパリンナトリウム150 μg/mLを添加し、37℃で300分間処理を行った。処理後、培養上清の回収を行った。
得られた培養上清を、抗ヒトTFPI2マウスモノクローナル抗体TS-TF04とダイナビーズM-280活性化トシルビーズ(Life Science社)を結合した抗体ビーズを用いて免疫沈降反応を行った。培養上清と抗体ビーズを1.5 mLのマイクロチューブ内で3時間ボルテックスミキサーにて撹拌しながら反応させた。抗体ビーズを集磁、 0.1%Tweenを含むPBSで3回洗浄後に、0.1 M HCl 30 μLを加え5分間静置させることでTFPI2を溶出した。溶出後、即座に回収し、1 Mトリス塩酸を3 μL添加して中和した。
IP後の溶出サンプルをポリアクリルアミドゲルSuperSepTMAce12.5%, 13wellを使って分離した。SDS-PAGE終了後、常法に従い、PVDF膜へタンパク質の転写を行った。転写後のPVDF膜を脱イオン水とメタノールで洗浄後、Bullet Blocking One for Western Blotting(ナカライテスク社)で10分 25℃で振盪させ、ブロッキング処理を行った。その後、PVDF膜にBlocking One(ナカライテスク)で3000倍希釈した抗TFPI2抗体28Aaを25℃で18時間反応させた。一次抗体反応後、PVDF膜をPBS-T[0.05% Tween]で5回洗浄し、Blocking Oneで10000倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体と1時間反応させた。反応後、PVDF膜をPBS-T[0.05% Tween]で5回洗浄し、ECL Select試薬(GEヘルスケア)を用いて検出した。
図2Aは、HVT細胞、および4種類の卵巣明細胞癌由来細胞株から得られたTFPI2を、IP-ウエスタンブロットにて比較解析した結果である。いずれの細胞においても、TFPI2はサイズの異なるα、β、γのトリプレットバンドとして検出された。
α、β、γバンドの糖鎖構造を調べるために、SDS-PAGE終了後のゲルを脱イオン水で5分間 3回洗浄し、SimplyBlueTM SafeStain染色試薬(Thermo社)を用いて、染色した。検出されたゲル切片(α,β,γ)を抽出し、25 mM 重炭酸アンモニウム緩衝液(ABB)/50% アセトニトリル(ACN)中で15分間振盪後、50 mM ABB 100 μLへバッファー交換し、さらに5分間振盪した。その後、100% ACNを添加し、15分間振盪後、溶液を捨て遠心エバポレーターにて乾燥させた。ゲル乾燥後、10 mM DTT/25 mM ABB/0.2 M グアニジン塩酸にて、56℃で45分間還元反応を行い、96 mM モノヨード酢酸 in 25 mM ABBに交換し、25℃で30分間 暗所に静置させることでアルキル化した。25 mM ABB/50% ACN 200 μLを用いて洗浄後、100% ACN 100 μLにて脱水、遠心エバポレーターにて乾燥させた。トリプシン溶液を添加し、37℃で18時間後、溶液を回収した。回収した溶液は遠心エバポレーターにて乾燥させた後、Solution A (0.1% (v/v) ギ酸/水)で再溶解した。
トリプシン消化ペプチドは、Pierce(登録商標)C18 Spin Columns(Thermo社)を用いて脱塩処理を行い、EASY-nLC 1000ナノLCシステムを連結したQ ExactiveTM質量分析装置(Thermo Scientific社)にて分析した。EASY-nLC 1000による分離条件は以下のように設定した。Solution A (0.1% (v/v) ギ酸/水)、Solution B (0.1% (v/v) ギ酸/ACN)、流速300nL/min、Gradient (solution B,0-40 min:0-35%、40-43min: 35-100%)、Q ExactiveTMの分析条件は、Run time: 50min、positive 2 kV、MS1 Resolution: 70,000、scan charge: 350-2000m/z、MS2 Resolution: 17,500、NCE: 27とした。
ヒトTFPI2にはKD2(Asn116)とKD3(Asn170)にN型糖鎖結合配列(NXS/T)が存在し、げっ歯類を除く哺乳類に共通して保存されている。そこで、当該結合部位を含むトリプシン消化ペプチド、113YFFNLSSMTCEK124(KD2-pep)および163DEGLCSANVTR173(KD3-pep)に着目し、これらのペプチドにGlcNAcが結合したイオンの値を用いて、MSクロマトグラムを抽出することで、糖ペプチドのMS/MSスペクトルを探索した。診断イオンの検出、主要フラグメントイオン同士の間隔が単糖の質量間隔に一致しているかどうかを確認することにより、糖ペプチド由来のMS/MSスペクトルであるかどうかを判断した。
図3は、αバンドから検出されたKD3-pepの代表的なプロダクトイオンスペクトルである。HVT、OVISE、OVMANAからは、m/z 値が1192.13、1219.48、1122.79として観測される特徴的な3価の糖ペプチドが検出された。これらはいずれも、MS/MS上で、 KD3-pep(m/z = 1221.53)にGlcNAcイオンが付加したシグナル(m/z 1425.621-)が、明瞭に検出されること、隣接する主要なフラグメントイオン同士が単糖の質量間隔と一致していること、糖鎖診断イオンであるm/z値 366.141-のシグナル、およびm/z 値528.191-のシグナルが検出されていることから、これらはKD3-pepの糖ペプチドであると判断した。他のバンドについても同様にして解析を行い、各バンドにおけるKD3-pepおよびKD2-pepの糖鎖修飾状態と各糖ペプチドの検出状況を図2BおよびCにまとめた。いずれの細胞においても、αバンドからはKD3-pepおよびKD2-pepの糖鎖修飾体が検出されるが、未修飾体は検出されなかった。一方で、βバンドからは糖鎖修飾体と未修飾体の両方が検出されたが、γバンドから検出されるのが未修飾体のみだった。以上の結果から、αバンドはKD3およびKD2の両方の糖鎖修飾体であり、βバンドにはKD3あるいはKD2のいずれか一方の糖鎖修飾体が混在しており、γバンドは未糖鎖修飾体であることが分かった。
検出された代表的なKD3-pep糖鎖修飾体の質量に基づいて、まずGlycoMod toolとCPGデータベースを用いて糖鎖の組成計算および構造予測を行った。HVTから代表的に検出された糖ペプチド(計算値:3572.346 Da)の結合糖鎖の質量は2350.82 Daと算出され、GlycoMod tool(http://web.expasy.org/glycomod/)にて糖鎖組成を算出した結果、これはHex5 HexNAc4 dHex1 NeuAc2(理論値:2350.83 Da)の質量に一致した。この組成をCPGデータベース(http://www.functionalglycomics.org/glycomics/molecule/jsp/carbohydrate/searchByComposition.jsp)に照合した結果、その構造はNeuAc-Gal-GlcNAc-Man-( NeuAc-Gal-GlcNAc-Man-)-Man-GlcNAc-(Fuc-)GlcNAcと、LacNAc(LN)と呼ばれるGal-GlcNAc構造を有した典型的なバイアンテナ型の複合型糖鎖であると予想された。これに対して、OVISE(計算値:3654.426 Da)、およびOVMANA(計算値:3364.326 Da)の代表的糖ペプチドの結合糖鎖は、2432.90 Daおよび2142.80 Daと算出され、それぞれHex3 HexNAc6 dHex1 NeuAc2(理論値:2432.88 Da)、Hex3 HexNAc6 dHex3(理論値:2142.81 Da)の組成と一致し、予想される糖鎖構造はそれぞれ、NeuAc-GalNAc-GlcNAc-Man-( NeuAc-GalNAc-GlcNAc-Man-)Man-GlcNAc-(Fuc-)GlcNAc、GalNAc-(Fuc-)GlcNAc-Man-( GalNAc-(Fuc-)GlcNAc-Man-)Man-GalNAv-(Fuc-)GalNAcであり、両方ともLacdiNAc(LDN)と呼ばれるGalNAc-GlcNAc配列をアンテナに有する構造が推測された。この推測された構造を支持するかたちで、図3のプロダクトイオンスペクトルには、LDN基(GalNAc-GlcNAc+H+)の質量に一致するm/z 407.171-のシグナルがOVISEとOVMANAに共通して見られることに対し、HVT細胞では見られなかった。したがって、m/z 407.171-のシグナルは、N型糖鎖に共通する最深部のキトビオースコア(GlcNAc-GlcNAc)に由来するシグナルではなく、LDN基に由来するシグナルに帰属できると考えた。さらに、LDNの異型であるシアリル化体やフコシル化体であるシアリルLDN基(LDNS基、NeuAc-Gal-GlcNAc)や、フコシルLDN基(LDNF基、GalNAc-(Fuc-)GlcNAc)に相当するシグナルとして、m/z 値657.231-やm/z 値553.221-のシグナルが、それぞれ対応する糖ペプチドに特徴的に検出されており(図3)、推定された構造がMS/MSパターンにより正しく帰属できることを確認した。
すべての細胞のTFPI2のαバンドおよびβバンドについても、一連の解析を行った結果、卵巣明細胞癌細胞株のTFPI2のαバンド、およびβバンドから優先的に検出されるKD3-pepおよびKD2-pepの糖鎖修飾体のほとんどから、m/z 値407.171-のシグナルが必ず検出され、また、m/z 値657.231-のシグナルや553.221-のシグナルが検出されるものもあり、該当する糖鎖組成から、アンテナの両方もしくは片方のアンテナにLDN配列を有するバイアンテナ型糖鎖に帰属できたことより、明細胞癌由来TFPI2はLDN構造を高い割合で有していることがわかった(表1)。
各細胞のαバンドおよびβバンドから検出されるすべてのTFPI2の結合糖鎖とその分布を明らかにするために、構造決定した糖ペプチドのプリカーサーイオンのm/z 値でクロマトグラムを抽出し、精密質量と質量間隔から糖ペプチドのプリカーサーイオンの価数と同じ価数のグリコフォームを探索した。図4は各細胞の構造決定したKD3-pepの糖鎖修飾体m/z値 1040-1240の範囲で抽出したマスクロマトグラムを示す。各細胞から様々な質量のプレカーサーイオンが検出され、相互の質量間隔からKD3-pepの異なる糖鎖修飾体であることが推測できた。実際、対応するプロダクトイオンスペクトルから推測した構造に帰属できる糖鎖を持つことを確認した。本研究において、検出されたすべての糖鎖修飾体は、HexとHexNAcの組成からTFPI2に結合する主要な糖鎖を以下の4種の構造に分類することができた(図4)。
図6および7は、TFPI2のαおよびβバンドから検出されたKD2-、およびKD3-pepの結合糖鎖の種類とシグナル強度(モノアイソトープイオンのピークエリア値)に基づいて作成した糖鎖プロファイルである。KD3-pep(図6)およびKD2-pep(図7)の結合糖鎖プロファイルは、同一の細胞であれば、αバンドとβバンドで、きわめてよく似たパターンを示した。
培養細胞で検出された組織特異的なTFPI2糖鎖修飾体が、生体内でも発現しているのか検証するために、妊婦血清中のTFPI2の糖鎖構造解析を行った。妊婦血清は、ProMedDx社から購入した8検体を使用した。いずれの検体もインフォームドコンセント承諾済と記載された欧米検体である。表2に示すように、あらかじめTFPI2測定試薬(固相または酵素標識された2種類の抗TFPI2モノクローナル抗体を用いたサンドイッチ法による免疫測定試薬)にて定量したTFPI2濃度に基づいて、最終TFPI2濃度が同程度になるように3群に分け、100 μLずつプール混合したものを糖ペプチドの解析に使用した。また、比較のために、培地交換せずに7日間培養したHVT、OVISE、およびOVMANA細胞の培養上清も解析に使用した。
図8に示すように、HVT、OVISE、OVMANAの培養上清中のTFPI2の結合糖鎖プロファイルは、KD2およびKD3ともに、ヘパリン処理にて得られる結果ときわめて良く似ており、HVTはLN構造を持つバイアンテナやトリアンテナ型である複合型糖鎖、OVISEとOVMANAからはLDN構造を持つバイアンテナ型糖鎖を有するペプチドが優先的に検出された。
妊婦血清中については、KD2の結合糖鎖として強く検出された構造は2種類存在し、2種類ともフルシアル化したLNを有するバイアンテナ型複合型糖鎖とであり、一つは最深部のGlcNAcにコアフコースが結合した糖鎖、もう一つは結コアフコースを持たない糖鎖として帰属された。KD3にも強く検出された構造が2種類存在し、こちらも、フルシアル化したLNを有するバイアンテナ、およびトリアンテナ型の複合型糖鎖として帰属され、これらは2種類ともコアフコースを有する糖鎖であった。この妊婦血清の糖鎖構造分布パターンは、3群のプール検体間では著しく高い相似性を示したが、HVT細胞の培養上清から検出される部分的にシアル化された糖鎖構造は検出されなかった。しかし、LNを骨格に持つバイアンテナあるいはトリアンテナ型の糖鎖が主であるという点で、HVT細胞と一致しており、卵巣明細胞癌細胞に特徴的なLDN構造を有する糖鎖は検出されなかった。
LacdiNAc(LDN)糖鎖合成に関わる糖転移酵素であるβ1,4-N-acetylgalactosaminyltransferase3と4をコードする遺伝子、B4GALNT3とB4GALNT4、およびLacNAc(LN)糖鎖合成に関わる糖転移酵素β-galactoside α-2,6-sialyltransferase 1および2の遺伝子、ST6GAL1およびST6GAL2について、組織並びに各種癌細胞株中の発現量を定量RT-PCR法にて調べた。One Step PrimeScript RT-PCR Kit(タカラバイオ社)を用いて組織並びに各種癌細胞株から全RNAの抽出とcDNAを合成し、表3のPCRプライマーを用いて遺伝子発現量を定量RT-PCRにより比較した。
図9は、ヒト正常胎盤および正常卵巣組織における各種糖転移酵素の遺伝子発現を比較定量した結果である。4種の糖転移酵素の中で、LDN糖鎖合成の責任糖転移酵素遺伝子であるB4GALNT3とB4GALNT4は、胎盤よりも卵巣において発現量が高いが、ST6GAL1とST6GAL2においては、顕著な発現量差は見られなかった。
図10は、胎盤絨毛栄養膜細胞(HVT)、卵巣明細胞癌細胞株(OVISE、OVMANA、OVSAYO、RMG-2、ES-2)、卵巣漿液性癌細胞株(OVSAHO、OVKATE)、卵巣粘液性癌細胞株(RMUG-S、MCAS)、前立腺癌細胞株(LnCap)における各種糖転移酵素の遺伝子発現を比較定量した結果である。4種の糖転移酵素遺伝子の中で、B4GALNT3は、ES-2を除く卵巣明細胞癌細胞株に高い発現特異性が認められた。本結果より、卵巣明細胞癌におけるTFPI2のLDN糖鎖の付加は、B4GALNTの組織型特異的な発現によって生じている可能性が示された。
配列番号1は、組織因子経路インヒビター2の部分ペプチドKD2-glycopeptide(Asn116)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号2>
配列番号2は、組織因子経路インヒビター2の部分ペプチドKD3-glycopeptide(Asn170)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号3~10>
配列番号3~10は、それぞれ、糖転移酵素遺伝子の発現解析に使用したPCRプライマー(B4GALNT3-F、B4GALNT3-R、B4GALNT4-F、B4GALNT4-R、ST6GAL1-F、ST6GAL1-R、ST6GAL2-F及びST6GAL2-R)のヌクレオチド配列を示す。
Claims (10)
- 明細胞癌を評価及び/又は鑑別するために、生体試料におけるLacdiNAc(N-アセチルガラクトサミン-N-アセチルグルコサミン)を有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を測定する方法であって、組織因子経路インヒビター2又はそのペプチド断片をMS/MS測定する際に観測される糖ペプチドイオンの中に、366.14Daに加えて、407.17Daのシグナルが含まれていれば、明細胞癌に罹患している、あるいは癌の組織型が明細胞癌であることが示される前記方法。
- 組織因子経路インヒビター2又はそのペプチド断片をMS/MS測定する際に観測される糖ペプチドイオンの中に、さらに、553.22 Da、698.27 Daおよび495.18Daからなる群より選択される少なくとも1つのシグナルが含まれていれば、明細胞癌に罹患している、あるいは癌の組織型が明細胞癌であることが示される請求項1記載の方法。
- 生体試料が、被験者から得た細胞、組織又は体液である請求項1又は2に記載の方法。
- 体液が血液、腹腔液又は腹腔洗浄液である請求項3記載の方法。
- 血液が、全血、血清、血漿又は血漿交換外液である請求項4記載の方法。
- 明細胞癌の治療効果又は再発の判定検査のために、生体試料におけるLacdiNAc(N-アセチルガラクトサミン-N-アセチルグルコサミン)を有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を測定する方法であって、組織因子経路インヒビター2又はそのペプチド断片をMS/MS測定する際に観測される糖ペプチドイオンの中に、366.14Daに加えて、407.17Daのシグナルが含まれており、それらのシグナル強度が治療前に比べて変化しない、あるいは増加する場合は、明細胞癌の治療効果がなかった、あるいは明細胞癌が再発したことが示される前記方法。
- 明細胞癌の治療及び/又は予防に効果のある物質を同定する方法であって、以下の工程:
(a)被験物質を明細胞癌細胞に接触させる工程、
(b)工程(a)で被験物質に接触させた明細胞癌細胞を所定時間培養する工程、
(c)工程(b)で培養した明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を測定する工程であって、組織因子経路インヒビター2又はそのペプチド断片をMS/MS測定する際に観測される糖ペプチドイオンの中に、366.14Daに加えて、407.17Daのシグナルが含まれていれば、LacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現が示される前記工程、及び
(d)工程(c)で測定した明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を被験物質に接触させなかった対照細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現と比較することにより、明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現に対する被験物質の効果を評価する工程
を含む前記方法。 - さらに、明細胞癌細胞増殖に対する被験物質の効果を調べる工程を含む請求項7記載の方法。
- 明細胞癌の抗癌剤耐性を低下させる物質を同定する方法であって、以下の工程:
(a)被験物質を明細胞癌細胞に接触させる工程、
(b)工程(a)で被験物質に接触させた明細胞癌細胞を所定時間培養する工程、
(c) 工程(b)で培養した明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を測定する工程であって、組織因子経路インヒビター2又はそのペプチド断片をMS/MS測定する際に観測される糖ペプチドイオンの中に、366.14Daに加えて、407.17Daのシグナルが含まれていれば、LacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現が示される前記工程、及び
(d)工程(c)で測定した明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現を被験物質に接触させなかった対照細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現と比較することにより、明細胞癌細胞におけるLacdiNAcを有する糖鎖構造を持つ組織因子経路インヒビター2の発現に対する被験物質の効果を評価する工程
を含む前記方法。 - さらに、明細胞癌細胞の抗癌剤耐性に対する被験物質の効果を調べる工程を含む請求項9記載の方法。
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| SOGABE, Maki et al.,Novel Glycobiomarker for Ovarian Cancer That Detects Clear Cell Carcinoma,Journal of proteome research,2014年,13(3),1624-1635 |
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