本実施の形態にかかる音像定位処理の概要について説明する。本実施形態にかかる頭外定位処理は、空間音響伝達特性と外耳道伝達特性を用いて頭外定位処理を行うものである。空間音響伝達特性は、スピーカなどの音源から外耳道までの伝達特性である。外耳道伝達特性は、ヘッドホン又はイヤホンのスピーカユニットから鼓膜までの伝達特性である。本実施形態では、ヘッドホン又はイヤホンを装着していない状態での空間音響伝達特性を測定し、かつ、ヘッドホン又はイヤホンを装着した状態での外耳道伝達特性を測定し、それらの測定データを用いて頭外定位処理を実現している。本実施の形態は、ユーザ(受聴者)自身の空間音響伝達特性、又は外耳道伝達特性(以下、まとめて個人特性とする)を測定するためのマイク、及び収音装置の構造を特徴の一つとしている。
本実施の形態にかかる頭外定位処理は、パーソナルコンピュータ、スマートホン、タブレットPCなどのユーザ端末で実行される。ユーザ端末は、プロセッサ等の処理手段、メモリやハードディスクなどの記憶手段、液晶モニタ等の表示手段、タッチパネル、ボタン、キーボード、マウスなどの入力手段を有する情報処理装置である。ユーザ端末は、データを送受信する通信機能を有していてもよい。さらに、ユーザ端末には、ヘッドホン又はイヤホンを有する出力手段(出力ユニット)が接続される。
(頭外定位処理装置)
本実施の形態にかかる音場再生装置の一例である頭外定位処理装置100を図1に示す。図1は、頭外定位処理装置100のブロック図である。頭外定位処理装置100は、ヘッドホン43を装着するユーザUに対して音場を再生する。そのため、頭外定位処理装置100は、LchとRchのステレオ入力信号XL、XRについて、音像定位処理を行う。LchとRchのステレオ入力信号XL、XRは、CD(Compact Disc)プレイヤーなどから出力されるアナログのオーディオ再生信号、又は、mp3(MPEG Audio Layer-3)等のデジタルオーディオデータである。なお、オーディオ再生信号、又はデジタルオーディオデータをまとめて再生信号と称する。すなわち、LchとRchのステレオ入力信号XL、XRが再生信号となっている。
なお、頭外定位処理装置100は、物理的に単一な装置に限られるものではなく、一部の処理が異なる装置で行われてもよい。例えば、一部の処理がパソコンなどにより行われ、残りの処理がヘッドホン43に内蔵されたDSP(Digital Signal Processor)などにより行われてもよい。
頭外定位処理装置100は、頭外定位処理部10、フィルタ部41、フィルタ部42、及びヘッドホン43を備えている。頭外定位処理部10、フィルタ部41、及びフィルタ部42は、具体的にはプロセッサ等により実現可能である。
頭外定位処理部10は、畳み込み演算部11~12、21~22、及び加算器24、25を備えている。畳み込み演算部11~12、21~22は、空間音響伝達特性を用いた畳み込み処理を行う。頭外定位処理部10には、CDプレイヤーなどからのステレオ入力信号XL、XRが入力される。頭外定位処理部10には、空間音響伝達特性が設定されている。頭外定位処理部10は、各chのステレオ入力信号XL、XRに対し、空間音響伝達特性のフィルタ(以下、空間音響フィルタとも称する)を畳み込む。空間音響伝達特性は被測定者の頭部や耳介で測定した頭部伝達関数HRTFでもよいし、ダミーヘッドまたは第三者の頭部伝達関数であってもよい。
4つの空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを1セットとしたものを空間音響伝達関数とする。畳み込み演算部11、12、21、22で畳み込みに用いられるデータが空間音響フィルタとなる。空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを所定のフィルタ長で切り出すことで、空間音響フィルタが生成される。
空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsのそれぞれは、インパルス応答測定などにより、事前に取得されている。例えば、ユーザUが左右の耳にマイクをそれぞれ装着する。ユーザUの前方に配置された左右のスピーカが、インパルス応答測定を行うための、インパルス音をそれぞれ出力する。そして、スピーカから出力されたインパルス音等の測定信号をマイクで収音する。マイクでの収音信号に基づいて、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsが取得される。左スピーカと左マイクとの間の空間音響伝達特性Hls、左スピーカと右マイクとの間の空間音響伝達特性Hlo、右スピーカと左マイクとの間の空間音響伝達特性Hro、右スピーカと右マイクとの間の空間音響伝達特性Hrsが測定される。
そして、畳み込み演算部11は、Lchのステレオ入力信号XLに対して空間音響伝達特性Hlsに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部11は、畳み込み演算データを加算器24に出力する。畳み込み演算部21は、Rchのステレオ入力信号XRに対して空間音響伝達特性Hroに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部21は、畳み込み演算データを加算器24に出力する。加算器24は2つの畳み込み演算データを加算して、フィルタ部41に出力する。
畳み込み演算部12は、Lchのステレオ入力信号XLに対して空間音響伝達特性Hloに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部12は、畳み込み演算データを、加算器25に出力する。畳み込み演算部22は、Rchのステレオ入力信号XRに対して空間音響伝達特性Hrsに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部22は、畳み込み演算データを、加算器25に出力する。加算器25は2つの畳み込み演算データを加算して、フィルタ部42に出力する。
フィルタ部41、42にはヘッドホン特性(ヘッドホンの再生ユニットとマイク間の特性)をキャンセルする逆フィルタが設定されている。そして、頭外定位処理部10での処理が施された再生信号(畳み込み演算信号)に逆フィルタを畳み込む。フィルタ部41で加算器24からのLch信号に対して、Lch側のヘッドホン特性の逆フィルタを畳み込む。同様に、フィルタ部42は加算器25からのRch信号に対して、Rch側のヘッドホン特性の逆フィルタを畳み込む。逆フィルタは、ヘッドホン43を装着した場合に、ヘッドホンユニットからマイクまでの特性をキャンセルする。マイクは、外耳道入口から鼓膜までの間ならばどこに配置してもよい。逆フィルタは、後述するように、ユーザU本人の特性の測定結果から算出されている。
フィルタ部41は、処理されたLch信号YLをヘッドホン43の左ユニット43Lに出力する。フィルタ部42は、処理されたRch信号YRをヘッドホン43の右ユニット43Rに出力する。ユーザUは、ヘッドホン43を装着している。ヘッドホン43は、Lch信号YLとRch信号YR(以下、Lch信号YLとRch信号をまとめてステレオ信号ともいう)をユーザUに向けて出力する。これにより、ユーザUの頭外に定位された音像を再生することができる。また、後述するようにステレオ信号YL、YRには、DRC処理が施される。
このように、頭外定位処理装置100は、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じた空間音響フィルタと、ヘッドホン特性の逆フィルタを用いて、頭外定位処理を行っている。以下の説明において、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じた空間音響フィルタと、ヘッドホン特性の逆フィルタとをまとめて頭外定位処理フィルタとする。2chのステレオ再生信号の場合、頭外定位フィルタは、4つの空間音響フィルタと、2つの逆フィルタとから構成されている。そして、頭外定位処理装置100は、ステレオ再生信号に対して合計6個の頭外定位フィルタを用いて畳み込み演算処理を行うことで、頭外定位処理を実行する。頭外定位フィルタは、ユーザU個人の測定に基づくものであることが好ましい。例えば,ユーザUの耳に装着されたマイクが収音した収音信号に基づいて、頭外定位フィルタが設定されている。
このように空間音響フィルタと、ヘッドホン特性の逆フィルタはオーディオ信号用のフィルタである。これらのフィルタが再生信号(ステレオ入力信号XL、XR)に畳み込まれることで、頭外定位処理装置100が、頭外定位処理を実行する。
なお、図1では、頭外定位処理装置100が、ヘッドホン43を用いて、頭外定位処理を実施しているが、本実施の形態では、頭外定位処理装置100がイヤホンを用いた頭外定位処理を実施してもよい。
(フィルタ生成装置)
図2を用いて、空間音響伝達特性(以下、伝達特性とする)を測定して、フィルタを生成するフィルタ生成装置について説明する。図2は、フィルタ生成装置200の構成を模式的に示す図である。なお、フィルタ生成装置200は、図1に示す頭外定位処理装置100と共通の装置であってもよい。あるいは、フィルタ生成装置200の一部又は全部が頭外定位処理装置100と異なる装置となっていてもよい。
図2に示すように、フィルタ生成装置200は、ステレオスピーカ5とステレオマイク2と信号処理装置201を有している。ステレオスピーカ5が測定環境に設置されている。
本実施の形態では、フィルタ生成装置200の信号処理装置201が、伝達特性に応じたフィルタを適切に生成するための演算処理を行っている。信号処理装置201は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット端末、スマートホン等であってもよい。
信号処理装置201は、測定信号を生成して、ステレオスピーカ5に出力する。なお、信号処理装置201は、伝達特性を測定するための測定信号として、インパルス信号やTSP(Time Stretched Pulse)信号等を発生する。測定信号はインパルス音等の測定音を含んでいる。また、信号処理装置201は、ステレオマイク2で収音された収音信号を取得する。信号処理装置201は、伝達特性の測定データをそれぞれ記憶するメモリなどを有している。
ステレオスピーカ5は、左スピーカ5Lと右スピーカ5Rを備えている。例えば、被測定者1の前方に左スピーカ5Lと右スピーカ5Rが設置されている。左スピーカ5Lと右スピーカ5Rは、インパルス応答測定を行うためのインパルス音等を出力する。以下、本実施の形態では、音源となるスピーカの数を2(ステレオスピーカ)として説明するが、測定に用いる音源の数は2に限らず、1以上であればよい。すなわち、1chのモノラル、または、5.1ch、7.1ch等の、いわゆるマルチチャンネル環境においても同様に、本実施の形態を適用することができる。
ステレオマイク2は、左のマイク2Lと右のマイク2Rを有している。左のマイク2Lは、被測定者1の左耳9Lに設置され、右のマイク2Rは、被測定者1の右耳9Rに設置されている。具体的には、左耳9L、右耳9Rの外耳道入口から鼓膜までの位置にマイク2L、2Rを設置することが好ましい。マイク2L、2Rは、ステレオスピーカ5から出力された測定信号を収音して、信号処理装置201に収音信号を出力する。被測定者1は、人でもよく、ダミーヘッドでもよい。すなわち、本実施形態において、被測定者1は人だけでなく、ダミーヘッドを含む概念である。ここでは、被測定者1が図1に示す頭外定位処理装置で受聴するユーザUと同一人物であるとする。
上記のように、左右のスピーカ5L、5Rから出力された測定信号をマイク2L、2Rで収音し、収音された収音信号に基づいてインパルス応答が得られる。フィルタ生成装置200は、インパルス応答測定に基づいて取得した収音信号をメモリなどに記憶する。これにより、左スピーカ5Lと左マイク2Lとの間の伝達特性Hls、左スピーカ5Lと右マイク2Rとの間の伝達特性Hlo、右スピーカ5Rと左マイク2Lとの間の伝達特性Hro、右スピーカ5Rと右マイク2Rとの間の伝達特性Hrsが測定される。すなわち、左スピーカ5Lから出力された測定信号を左マイク2Lが収音することで、伝達特性Hlsが取得される。左スピーカ5Lから出力された測定信号を右マイク2Rが収音することで、伝達特性Hloが取得される。右スピーカ5Rから出力された測定信号を左マイク2Lが収音することで、伝達特性Hroが取得される。右スピーカ5Rから出力された測定信号を右マイク2Rが収音することで、伝達特性Hrsが取得される。
そして、フィルタ生成装置200は、収音信号に基づいて、左右のスピーカ5L、5Rから左右のマイク2L、2Rまでの伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じたフィルタを生成する。このようにすることで、フィルタ生成装置200は、頭外定位処理装置100の畳み込み演算に用いられるフィルタを生成する。図1で示したように、頭外定位処理装置100が、左右のスピーカ5L、5Rと左右のマイク2L、2Rとの間の伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じたフィルタを用いて頭外定位処理を行う。すなわち、伝達特性に応じたフィルタをオーディオ再生信号に畳み込むことにより、頭外定位処理を行う。
マイク2L、2Rは耳に装着されるイヤーマイクである。マイク2L、2Rは、空間音響伝達特性の測定だけでなく、外耳道伝達特性の測定を行うこともできる。具体的には、マイク2L、2Rには、イヤホンドライバが脱着可能に取り付けられている。イヤホンドライバを取り付けた状態とすることで、信号処理装置201が外耳道伝達特性を測定することができる。イヤホンドライバを取り外した状態とすることで、信号処理装置201が空間音響伝達特性を測定することができる。
以下、マイク2L、2Rの構造について説明する。なお、マイク2Lとマイク2Rは同様の構造であるため、以下の説明ではマイク2Lについてのみ説明を行い、マイク2Rの説明については省略する。
実施の形態1.
本実施の形態では、被測定者1の外耳道の大きさに応じて、マイク2Lに用いられるイヤーチップ(イヤーパッドともいう)の構造を変更している。すなわち、2種類のイヤーチップを用意して、被測定者1の外耳道の大きさに応じて2種類の大きさのイヤーチップを使い分けている。2つのイヤーチップでマイク素子の配置が異なっている。外耳道が大きい被測定者1に用いられるイヤーチップでのマイク素子の配置を縦配置とし、外耳道が小さい被測定者1に用いられるイヤーチップでのマイク素子の配置を横配置とすることが好ましい。縦配置と横配置では、マイク素子の向きが90°異なっている。
(縦配置の構成)
図3は、縦配置のイヤーチップ50の構成を模式的に示す図である。なお、以下に示す図は、適宜簡略化されおり、実際の形状、及び寸法を反映したものではない。以下の図では、説明の簡略化のため、XYZ3次元直交座標系を示している。外耳道に沿った方向をZ方向とし、軸方向とも称する。XY平面はZ方向と直交する平面である。なお、マイク2Lが装着されていない場合であっても、このXYZ方向を適用する。各図のAは、ZY断面図を示し、Bは、外耳道の鼓膜側から見たXY平面図を示し、Cは、外耳道の外側から見たXY平面図を示す。
図3は、スピーカドライバが装着されていない状態のマイク2Lが示されている。つまり、空間音響伝達特性を測定するために、マイク2Lにイヤーチップ50からスピーカドライバが取り外された状態について、説明する。
XY平面において、外耳道の中心軸を中心軸Z0とし、中心軸Z0を中心とする円を基準として、周方向と径方向を規定する。+Z側が外耳道の奥側(鼓膜側)であり、-Z側が外耳道の外側である。
マイク2Lは、イヤーチップ50と、マイク素子91とを備えている。イヤーチップ50は、弾性材料により形成されており、外耳道に圧入される。例えば、イヤーチップ50は、中空砲弾状に形成されている。
イヤーチップ50は、円筒部51と、当接部52と、凸部53と、連結部58と、支柱部61と、を備えている。イヤーチップ50は、例えば、シリコーン樹脂などの弾性材料により形成される。つまり、イヤーチップ50は、円筒部51と、当接部52と、連結部58と、支柱部61と、が一体に成形された樹脂成形品である。Z方向におけるイヤーチップ50の全長は、約8.5mmとなっている。
円筒部51が外耳道に沿った円筒形状になっており、中空部54を有している。つまり、円筒部51は、シリコーン樹脂製のチューブとなっている。中空部54は、断面円形となっている。ここでは、円筒部51の軸中心が外耳道の中心軸Z0と一致している。円筒部51の内径、つまり中空部54の直径は約5mmとなっている。
当接部52は、円筒部51の外側に配置されており、外耳道の内壁面と当接する。イヤーチップ50は、中空砲弾状に形成されている。したがって、+Z側から-Z側に向かうにつれて、当接部52の外径が徐々に大きくなっていく。あるいは、当接部52は、外径が一定な円筒状に形成されていてもよい。当接部52の最大外径は、約12mmとなっている。
イヤーチップ50が外耳道に嵌め込まれると、当接部52が外耳道の内壁面と当接して、変形する。当接部52が径方向の内側に縮み、径方向外側に弾性力を発生する。当接部52の弾性力によって、イヤーチップ50が外耳道内に固定される。
当接部52の内側(中心軸Z0側)に円筒部51が配置されている。当接部52と円筒部51とは、+Z側(外耳道の鼓膜側)において、連結部58を介して連結されている。連結部58は、イヤーチップ50の+Z側の先端に配置されている。また、連結部58は、周方向全体にわたって、当接部52と円筒部51とを連結している。当接部52と円筒部51との間の空間には間隙57が設けられている。円筒部51は、肉厚が約0.5~2.0mmの内皮となり、当接部52は肉厚が約0.1~1.0mmの外皮となる。
本実施の形態では、当接部52が折り返し可能なフランジ構造となっている。つまり、連結部58を基点として、当接部52を+Z側に裏返すことができる(図4参照)。当接部52を裏返した状態とすることで、マイク素子91の脱着が可能となる。当接部52は、円筒部51の一端から延びるフランジ部となっている。当接部52の+Z側の端部は、連結部58を介して、円筒部51と連結され、当接部52の-Z側の端部は、開放端になっている。
円筒部51の内側には、凸部53が設けられている。凸部53は、後述するようにスピーカドライバを係止するための係止片となっている。つまり、凸部53は、支柱部61よりも-Z側に配置されている。図3では、凸部53は、周方向全体にわたって形成されているが、周方向の一部のみに形成されていてもよい。また、円筒部51内に、スピーカドライバを圧入する場合、凸部53は不要となる。
円筒部51の内側には、支柱部61が設けられている。支柱部61は、円筒部51の+Z側の端部近傍に配置されている。支柱部61は、Y方向に沿って設けられている。具体的には、支柱部61は、中空部54を横切るように配置され、円筒部51の内周面に接続している。すなわち、Y方向における支柱部61の両端が円筒部51の内周面と連結している。中空部54の+Y側の端から-Y側の端に渡って、支柱部61が設けられている。なお、支柱部61はY方向に沿って設けられているが、X方向その他のXY平面に沿った方向に設けてもよい。
マイク素子91は、支柱部61に取り付けられている。マイク素子91は、MEMS(Micro Electrical Mechanical System)マイクである。マイク素子91は、1辺が2~3mm程度で厚さが1mm程度の角形基板を備えている。マイク素子91には、収音部92が設けられている。収音部92は、平面視において、直径0.8mm程度の円形となっている。収音部92は、収音孔、及び振動板(ダイヤフラム)等が設けられている。収音部92は、振動板の振動を電気信号に変換して、ケーブル93を介して出力する。収音部92は中心軸Z0上に配置されている。
支柱部61には、マイク素子91を収容するため収容部62を備えている。具体的には、収容部62は、支柱部61に設けられた内部空間である。収容部62は、後述する開口部55と繋がっている。収容部62内にマイク素子91が嵌め込まれている。さらに、支柱部61の中心軸Z0上にはマイクホール63が形成されている。マイクホール63は、収容部62と連通している。マイク素子91の収音部92は、マイクホール63に配置される。これにより、マイク素子91を適切な位置に固定することができる。収音部92が-Z側に向くように、マイク素子91が支柱部61に固定されている。例えば、マイク素子91の厚さ方向がZ方向と一致している。つまり、マイク素子91の収音方向がZ方向となる。なお、収音方向は、収音部92の振動板と直交する方向となる。
マイク素子91には、ケーブル93が接続されている。ケーブル93は、電源ケーブル、信号ケーブル等を含んでおり、マイク素子91の電源端子、信号端子、グランド端子等と導通している。ケーブル93は、円筒部51の側壁に設けられた開口部55を通って、間隙57に引き出されている。つまり、ケーブル93は-Y側からマイク素子91に接続されている。そして、ケーブル93の一端はマイク素子91に接続され、他端は間隙57から外耳道の外側まで引き出される。開口部55は、円筒部51の-Y側の端部近傍に形成されている。
縦配置でマイク素子91を円筒部51内に配置する様子を図4に示す。上記のように、当接部52は、連結部58を基点として、矢印A1の方向に裏返された状態となっている。これにより、開口部55にマイク素子91を挿入することができる。
具体的には、円筒部51の側壁に形成された開口部55からマイク素子91を+Y方向に挿入することができる。つまり、開口部55から+Y方向にマイク素子91を押し込んでいくと、マイク素子91は開口部55を通過して、支柱部61の収容部62に嵌め込まれる。円筒部51の外側から開口部55を通ったマイク素子91が支柱部61の収容部62に収容される。
マイク素子91の収音部92が、マイクホール63に到達するまで、マイク素子91を+Y方向に挿入している。これにより、マイク素子91を、支柱部61に取り付けることができる。マイク素子91に接続されたケーブル93は、開口部55を通って、中空部54の外側に引き出される。そして、裏返された当接部52を元に戻すことで、図3に示す構成となる。つまり、連結部58を基点として、当接部52を矢印A1の反対方向に折り返すことで、図3の構成に戻る。
折り返した状態では、開口部55が当接部52によって、覆われている。これにより、マイク素子91の位置が固定された状態となる。さらに、当接部52が開口部55を覆っているため、音道の気密性を向上することができる。また、ケーブル93と外耳道の内壁との間には、当接部52が配置される。よって、ケーブル93が外耳道内壁と接触するのを防ぐことができる。これにより、被測定者1の脈音などによるノイズの発生を低減させることができる。
上記のように、外耳道の穴径が大きい被測定者1の場合、円筒部51内には、支柱部61が配置されたイヤーチップ50を用いることが好ましい。イヤーチップ50を外耳道内に強く押し込んだ場合であっても、イヤーチップ50が大きく変形することを防ぐことができる。よって、マイク素子91の向きが大きく傾くことを防ぐことができ、適切に収音することができる。
さらに、マイク素子91の収音部92が外側に向いているため、適切に収音することができる。さらに、支柱部61、及びマイク素子91が中空部54を閉塞しないように配置されている。中空部54は、支柱部61の両側を通って鼓膜まで連通するため、中空部54が外部から鼓膜までの音道となる。音道を塞ぐことなく、適切に収音を行うことができる。
マイク素子91を鼓膜により近い位置に配置することが可能となり、理想的な収音位置での収音が可能となる。さらに,イヤーチップ50には、ケーブル93を通すための開口部55が設けられている。そして、ケーブル93が開口部55を通って間隙57に引き出されている。つまり、ケーブル93の引き回しによる影響を抑制することができ、適切に収音することができる。
このように、本実施の形態によれば、適切な位置に、マイク素子91を配置した状態で、個人特性を測定することができる。また、接着剤を用いずに、マイク素子91を確実に固定することができる。接着剤を用いていないため、当接部52を裏返すことで、マイク素子91を取り外すことができる。
[横配置の構成]
次、図5を用いて、横配置のイヤーチップ50Aの構成について、説明する。図5Aは、YZ断面図を示し、図5Bは、外耳道の鼓膜側から見たXY平面図を示し、図5Cは、外耳道の外側から見たXY平面図を示す。
横配置の構成では、イヤーチップ50Aが支柱部61を備えていない。そして、円筒部51の内周面51aに収容部67が設けられている。つまり、イヤーチップ50Aでは、支柱部61の代わりに保持部66が設けられている。円筒部51、当接部52、凸部53等の基本的な形状、及び大きさ等は、イヤーチップ50と同じとなっている。円筒部51、当接部52、凸部53、及び保持部66は、一体に形成されている。
保持部66は、内周面51aから中心軸Z0側に突出している。保持部66は、中空部54に配置されている。保持部66は、中空のブロックとなっており、+X側Z側の面が開放している。保持部66の内部空間がマイク素子91を配置するための収容部67となっている。また、保持部66の+Y側の面には、マイクホール68が設けられている。
マイク素子91は、中心軸Z0から外れて配置されている。ここでは、マイク素子91は、中心軸Z0よりも-Y側に配置されている。マイク素子91の収音部92は+Y側を向いて配置されている。従って、マイク素子91の収音方向がY方向となる。マイク素子91は、円筒部51の+Z側の端部近傍に配置される。
さらに、縦配置では、保持部66の+Z側の面が開放しており、ケーブル93が+Z側からマイク素子91に接続されている。縦配置の場合と同様に、イヤーチップ50Aには開口部55が形成されている。縦配置のイヤーチップ50Aでは、開口部55が形成される箇所は、円筒部51に限らず、連結部58や当接部52であってもよい。ケーブル93は、開口部55を通って、間隙57に引き出されている。ケーブル93は、間隙57から外耳道の外側まで引き出される。
横配置では、中空部54を横切る支柱部61が設けられていない構造とすることができる。よって、イヤーチップ50Aの弾性変形量を大きくすることができ、より小さい外耳道にイヤーチップ50Aを嵌め込むことが可能となる。マイク素子91が支柱部61ではなく円筒部51の内周面51aに保持されている。このため、イヤーチップ50Aが変形した場合でで、マイク素子91が大きく傾いたりすることがない。
マイク素子91を鼓膜により近い位置に配置することが可能となる。保持部66、及びマイク素子91が中空部54を閉塞しないように配置されている。中空部54が鼓膜まで連通した音道を形成となる。鼓膜までの外耳道(音道)を塞ぐことなく、適切に収音を行うことができる。
次に、マイク素子91を横配置で円筒部51内に配置する様子を図6に示す。当接部52は、連結部58を基点として、矢印A2の方向に裏返された状態となっている。これにより、開口部55にマイク素子91を挿入することができる。
具体的には、連結部58周辺に形成された開口部55からマイク素子91を-Z方向に挿入することができる。マイク素子91は、開口部55を通って、保持部66内に嵌め込まれる。
マイク素子91の収音部92が、マイクホール68に到達するまで、マイク素子91を-Z方向に挿入している。すなわち、マイク素子91を-Z方向に押し込んでいくことで、マイク素子91は、収容部67に収容される。これにより、マイク素子91を、保持部66に取り付けることができる。
そして、裏返された当接部52を元に戻すことで、図5に示す構成となる。つまり、連結部58を基点として、当接部52を矢印A2の反対方向に折り返すことで、図5の構成に戻る。この状態では、開口部55が当接部52によって、覆われているため、外側に露出していない構成となる。マイク素子91に接続されたケーブル93は、開口部55を通って、中空部54の外側に引き出される。つまり、ケーブル93は、円筒部51と当接部52との間隙57を通って、外耳道の外側に引き出される。
上記のように、外耳道の穴径が小さい被測定者1の場合、円筒部51内には、保持部66が配置されたイヤーチップ50Aを用いる。Y方向における保持部66の高さは、マイク素子91の基板厚さ程度でよい。保持部66、及びマイク素子91が中空部54を閉塞しないように配置することが可能となる。これにより、鼓膜までの外耳道を塞ぐことなく、適切に収音を行うことができる。
マイク素子91を鼓膜により近い位置に配置することが可能となり、理想的な収音位置での収音が可能となる。さらに,イヤーチップ50Aには、ケーブル93を通すための開口部55が設けられている。そして、ケーブル93が開口部55を通って間隙57に引き出されている。つまり、ケーブル93の引き回しによる影響を抑制することができ、適切に収音することができる。
マイク素子91を鼓膜により近い位置に配置することが可能となる。さらに、ケーブル93が開口部55を通って間隙57に引き出されている。つまり、ケーブル93の引き回しによる影響を抑制することができ、適切に収音することができる。当接部52を裏返すことで、マイク素子91を取り外すことができる。
縦配置か横配置を採用するかは、被測定者1の外耳道の大きさに応じて決定すればよい。つまり、被測定者1がイヤーチップ50とイヤーチップ50Aを順番に装着して、装着感を比較することで、適切なイヤーチップを選択してもよい。具体的には、縦配置のイヤーチップ50を外耳道の奥まで十分に嵌め込むことができない場合は、横配置のイヤーチップ50Aを用いるようにする。また、イヤーチップ50、50Aをサイズ毎に複数用意してもよい。例えば、大サイズ、中サイズ、小サイズの3サイズのイヤーチップ50、50Aをそれぞれ用意する。そして、外耳道の大きさに応じて、最も適切なサイズのイヤーチップを選択してもよい。
[イヤーチップ50の構成]
次に、縦配置のイヤーチップ50の具体的な構成の一例について説明する。図7は当接部52が折り返された状態(以下、折り返し状態とする)のイヤーチップ50を示す側面図である。図8は、当接部52を裏返した状態(裏返し状態とする)のイヤーチップ50を示す側面図である。図7、図8に示すように、当接部52の外形が円筒状になっている。すなわち、Z位置によらず、当接部52が一定の外径を有している。また、以下の図では、凸部53を省略している。
図7に示すように、折り返し状態では、円筒部51の外周面が当接部52に覆われている。そして、当接部52が外耳道ECの内壁面Sと当接している。図8に示すように、当接部52を裏返すことで、円筒部51の外周面51bが露出する。裏返し状態では、連結部58を基点として、当接部52が+Z側に延在しており、円筒部51が-Z側に延在している。当接部52は、円筒部51の外径よりも大きくなっている。
図9、図10は、折り返し状態のイヤーチップ50を示す斜視図である。図11、図12、及び図13は、裏返し状態のイヤーチップ50を示す斜視図である。図9、図12は鼓膜側から見た図であり、図10、図11は外側から見た図である。図13は、開口部55側から見た図である。
図9、図10に示すように、支柱部61がY方向に沿って設けられている。したがって、X方向における支柱部61の両側が音道となる。よって、鼓膜までの空間を塞ぐことなく、収音することができる。
図10、図11に示すように、支柱部61の中央には、マイク素子91を収容するための収容部62が形成されている。収容部62は、マイク素子91を収容するための空間である。支柱部61には、マイク素子91の収音部92が配置される円形のマイクホール63が形成されている。収容部62とマイクホール63とは連通している。
図11に示すように、当接部52を折り返すことで、円筒部51に設けられた開口部55が露出する。そして、開口部55が形成された箇所には、支柱部61の収容部62が配置されている。図13に示すように、円筒部51には、矩形状の開口部55が設けられている。
当接部52を折り返すことで、開口部55が露出するため、容易にマイク素子91(図3、図4等を参照)を取り付けることができる。被測定者1がマイク2Lを装着している時(以下、マイク装着時)には、当接部52が折り返された構成となっている。したがって、当接部52が開口部55を覆うため、マイク素子91の脱落を防止することができる。さらに、ケーブル93が円筒部51と当接部52との間の間隙57を通っている。よって、ケーブル93が外耳道ECの内壁面Sと接触することを防ぐことができる。マイク装着時にケーブル93が切断された場合でも、マイク素子91が外耳道に入ってしまうことを防ぐことができる。
[イヤホンドライバの装着]
次に、イヤーチップ50にイヤホンドライバが取り付けられた構成について、図14,図15を用いて説明する。図14は、イヤーチップ50にイヤホンドライバ80が取り付けられた状態のマイク2Lの構成を示す側面断面図である。図14は、イヤーチップ50Aにイヤホンドライバ80が取り付けられた状態のマイク2Lの構成を示す側面断面図である。
図14、図15では、イヤホンドライバ80が取り付けられた状態のマイク2Lを収音装置4として図示している。収音装置4は、イヤーチップ50、50Aとマイク素子91とイヤホンドライバ80とを備えたマイク付きイヤホンである。
イヤホンドライバ80は、音筒部82と、ドライバケーブル83と、先端部85と、基部86とを備えている。基部86は、収音装置4を到着した状態において、外耳道の外側に位置する部分である。音筒部82は、基部86から中心軸Z0に沿って鼓膜側に延びる部分であり、円筒状になっている。先端部85は、音筒部82の鼓膜側に配置された部分である。
基部86の内部には、振動板と、駆動部とが収納されている。駆動部は、電気信号に応じて振動板を振動させるアクチュエータを備えている。具体的には、基部86の内部には圧電素子やボイスコイルなどのアクチュエータが配置されている。基部86は、音筒部82,及び先端部85よりも大きい外形を有している。基部86の外径は、円筒部51の内径よりも大きくなっている。基部86は、円筒部51の外側に配置されている。
基部86の+Z側には、音筒部82が延びている。音筒部82は、円筒状になっている。つまり、音筒部82の内部は空洞となっている。先端部85は、最も鼓膜側に配置される部分であり、音筒部82よりも大きい外形を有している。先端部85は、円筒状になっている。なお、先端部85には、ゴミなどが内部に浸入しないようするための不織布などが設けられていてもよい。基部86で発生した音が、音筒部82、及び先端部85を通って出力される。先端部85の+Z側の端面が音の出力面となる。先端部85から出力された音(空気振動)が中空部54を伝搬して、マイク素子91で収音される。
先端部85、及び音筒部82が、円筒部51内に挿入される。つまり、先端部85、及び音筒部82が中空部54に配置される。凸部53によって、イヤーチップ50、50Aにイヤホンドライバ80が係止されている。つまり、先端部85が凸部53を越えるように、円筒部51に音筒部82が挿入される。したがって、凸部53が先端部85を係止することで、イヤホンドライバ80の脱落が防止される。
基部86からは、アクチュエータに接続されるドライバケーブル83が延びている。ドライバケーブル83は、アクチュエータに電源や測定信号を供給するために設けられている。ドライバケーブル83は、ケーブル93と束ねられて、外耳道の外側に引き出される。
縦配置では、音の出力面(先端部85の+Z側の端面)とマイク素子91の収音部92とが向かい合うように配置される。したがって、イヤホンドライバ80からの出力される音をより適切にマイク素子91が収音することができる。なお、横配置と縦配置では、マイク素子91の設置方向が異なっているが、聴感的に大きな差はない。また、縦配置と横配置で測定した外耳道伝達特性についても、大きな差は無く、特に低周波数帯ではほぼ同じ特性を示す。
そして、測定を行わずに、頭外定位受聴を行う場合、マイク素子91を搭載しないイヤーチップにイヤホンドライバ80を装着する。中空砲弾状等の一般的な形状のイヤーチップにイヤホンドライバ80を取り付ける。例えば、保持部66や当接部52を有しておらず、円筒部51及び当接部52を有しているイヤーチップにイヤホンドライバ80を装着する。そして、図1に示した頭外定位処理装置100が頭外定位処理を行うことで、音像を頭外に定位することができる。頭外定位受聴に用いるイヤーチップは、個人特性の測定で用いたイヤーチップ50、50Aと同様の形状の円筒部51、及び当接部52を備えていることが好ましい。
[開口部55の閉塞]
なお、ケーブル93を通すための開口部55により、気密性が弱くなる場合、開口部55を閉塞することが好ましい。この場合、当接部52により開口部55を塞ぐことが好ましい。当接部52を折り返すことで、当接部52が開口部55に押しつけられる構造とすることが好ましい。
さらに、より気密性を高くするために、開口部55の少なくとも一部を塞ぐための閉塞部を設けることが可能である。図16、図17は、縦配置において開口部55を塞ぐ閉塞部の構成を示している。図16は、裏返し状態の側面断面図を示し、図17は、折り返し状態を示している。図17に示すように、当接部52の開口部55に対応する位置には閉塞部59が設けられている。閉塞部59は、開口部55の少なくとも一部を覆う蓋又はカバーとして機能する。
閉塞部59は、イヤーチップ50の一部として、当接部52等と一体に形成されている。閉塞部59はシリコーン樹脂により形成されている。閉塞部59は、当接部52の連結部58の近傍に形成されたブロックである。図4で説明したように、開口部55を介してマイク素子91を、支柱部61に取り付けると、図16に示す構成となる。そして、図16の矢印A3方向に当接部52を折り返すと、図17に示すように、閉塞部59が開口部55に嵌め込まれる。
これにより、開口部55の少なくとも一部を塞ぐことができ、音道となる中空部54の気密性を高くした状態での収音が可能となる。なお、図17Bに示すように、閉塞部59が中空部54まで突出しているが、突出していなくてもよい。
図18、図19は、横配置において、閉塞部59を設けた構成を示す図である。横配置においても、当接部52の開口部55に対応する位置には閉塞部59が設けられている。閉塞部59は、イヤーチップ50Aの一部として、当接部52等と一体に形成されている。よって、閉塞部59は、シリコーン樹脂により形成されている。
図6で説明したように、開口部55を介してマイク素子91を、保持部66に取り付けると、図18の構成となる。マイク素子91を保持部66に取り付ける際、閉塞部59がマイク素子91と干渉しない位置まで、当接部52を裏返しておく。そして、図18の矢印A4方向に当接部52を折り返すと、図19に示すように、閉塞部59が開口部55に嵌め込まれる。これにより、開口部55の一部を塞ぐことができ、音道となる中空部54の気密性を向上することができる。なお、閉塞部59は、開口部55を完全に塞ぐ構成に限らず、開口部55の一部を塞ぐ構成であればよい。
これにより、開口部55が閉塞部59で覆われるため、音道となる中空部54の気密性を高くした状態での収音が可能となる。なお、閉塞部59は、当接部52に形成されていなくてもよい。例えば、円筒部51の外周面や連結部58に形成されていてもよい。
さらに、イヤーチップ50、イヤーチップ50Aと別体の閉塞部を用いることも可能である。以下、図20、図21、図22を用いて、縦配置において、イヤーチップ50と別に形成された閉塞部の構成について説明する。図20、図21、図22に示すように、閉塞部69はケーブル93に取り付けられたブロックとなっている。閉塞部69にケーブル93を通すための貫通穴が形成されており、ケーブル93が閉塞部69を貫通している。閉塞部69は、ケーブル93に沿って摺動する。閉塞部69は、シリコーン樹脂により形成されている。
図4で説明したように、支柱部61にマイク素子91を取り付けると、図20に示すようになる。この状態で、閉塞部69を開口部55の位置まで摺動させると、図21に示すようになる。開口部55に閉塞部69が嵌め込まれるため、開口部55が閉塞部69によって塞がれる。そして、図21の矢印A3の方向に当接部52を裏返すと、図22に示すようになる。これにより、開口部55が覆われるため、音道となる中空部54の気密性を高くした状態での収音が可能となる。
図23、図24、図25を用いて、横配置において、イヤーチップ50Aと別に形成された閉塞部を用いた構成について説明する。図23、図24、図25に示すように、閉塞部69がケーブル93に取り付けられている。すなわち、ケーブル93が閉塞部69を貫通している。閉塞部69は、ケーブル93に対して摺動する。閉塞部69は、シリコーン樹脂により形成されている。
図6で説明したように、保持部66にマイク素子91を取り付けると、図23に示すようになる。この状態で、閉塞部69を開口部55に向けて摺動させる。そして、閉塞部69が、開口部55を閉塞すると、図24に示すようになる。そして、図24の矢印A4の方向に当接部52を裏返すと、図25に示すようになる。
このように、ケーブル93に対して摺動可能に設けられた閉塞部69を用いることで、開口部55を閉塞することができる。これにより、気密性を高くした状態での収音が可能となる。なお、閉塞部69は、開口部55を完全に塞ぐ構成に限らず、開口部55の一部を塞ぐ構成であればよい。また、閉塞部69は、開口部55に嵌め込まれる構成に限らず、円筒部51の外側で開口部55を覆う構成となっていてもよい。
さらに、マイク素子91を装着後に取り外すことがない場合は、接着剤を用いて、気密性を高くすることも可能である。例えば、図26、図27に示されているように、当接部52が裏返されている状態として、開口部55、及び閉塞部69の周辺に接着剤95のペーストを塗布する。そして、接着剤95を乾燥して、開口部55の周辺に固着させる。これにより、開口部55を塞ぐことができ、気密性の高い状態での収音が可能となる。
なお、図26、図27では、閉塞部69を用いた縦配置、及び横配置において、接着剤95を用いているが、閉塞部69を用いずに、接着剤95のみによって、開口部55を閉塞するようにしてもよい。
実施の形態2.
本実施の形態2では、イヤーチップの構成が実施の形態1と異なっている。具体的には実施の形態1では、イヤーチップ50、50Aがシリコーン樹脂などで一体に形成されたのに対して、実施の形態2では、イヤーチップが2つ以上の樹脂成形品を用いて構成されている。実施の形態2では、縦配置のイヤーチップをイヤーチップ50Bとし、横配置のイヤーチップをイヤーチップ50Cとして説明する。なお、実施の形態1と同様の構成については、適宜説明を省略する。
[縦配置の構成]
図28は縦配置でのイヤーチップ50Bを示す図である。イヤーチップ50Bは、当接部71が、実施の形態1で示したイヤーチップ50の当接部52と異なっている。つまり、当接部52の代わりに、当接部71が設けられており、連結部58が省略されている。円筒部51、及び支柱部61は実施の形態1と同様の構成となっている。すなわち、円筒部51、及び支柱部61は、シリコーン樹脂などにより一体的に形成されている。実施の形態1と同様に、円筒部51は、開口部55を有しており、支柱部61は、マイクホール63、及び収容部62を有している。また、マイク素子91の取付についても、実施の形態1と同様の構成となっている。
本実施の形態では、当接部71が弾性を有するウレタン樹脂によって形成されている。そして、当接部71は円筒状に形成されている。つまり、当接部71はウレタンチューブによって形成されている。円筒部51は当接部71とは別体として形成された樹脂成形品である。当接部71の内側に円筒部51が挿入されている。つまり、イヤーチップ50Bは、シリコーン樹脂とウレタン樹脂との2層構造の円筒形状となっている。つまり、シリコーンチューブである円筒部51が、ウレタンチューブである当接部71に挿入されている。Z方向における当接部71と円筒部51との長さは等しくなっている。
イヤーチップ50Bは、外耳道に圧入される。つまり、ウレタン樹脂により形成された当接部71の弾性力によって、外耳道内でイヤーチップ50Bが固定される。ケーブル93は、当接部71と円筒部51との間の層間を通って、外耳道の外側に引き出されている。例えば、当接部71と円筒部51とは、接着剤に接着されていてもよい。
図29に、縦配置でマイク素子91を取り付ける様子を示す。実施の形態1の図4と同様に、開口部55からマイク素子91を挿入して、収容部62にマイク素子91を収容する。このとき、ケーブル93は、開口部55から円筒部51の外側に引き出されている。そして、円筒部51を当接部71内に挿入する(矢印A5)。円筒部51を当接部71に嵌め込むことで、マイク2Lが完成する。なお、円筒部51の外周面、または当接部71の内周面に接着剤を塗布して、円筒部51と当接部71とを固着してもよい。
[横配置の構成]
次に、図30を用いて、横配置でのイヤーチップ50Cを示す図である。イヤーチップ50Aの当接部52の代わりに、当接部71が設けられており、連結部58が省略されている。イヤーチップ50Cでは、当接部71が、縦配置のイヤーチップ50Bと同様に、弾性を有するウレタン樹脂によって形成されている。イヤーチップ50Bの当接部71と同様に、当接部71は、円筒状のウレタンチューブによって形成されている。当接部71の中に、円筒部51が挿入されている。
円筒部51、及び保持部66は実施の形態1と同様の構成となっている。すなわち、円筒部51、及び保持部66は、シリコーン樹脂などにより一体的に形成されている。実施の形態1と同様に、円筒部51は、開口部55を有しており、保持部66は、マイクホール68、及び収容部67を有している。また、マイク素子91の取付についても、実施の形態1と同様の構成となっている。
図31に、横配置で、マイク素子91を取り付ける様子を示す。実施の形態1の図6と同様に、開口部55からマイク素子91を挿入して、収容部62にマイク素子91を収容する。このとき、ケーブル93は、開口部55から円筒部51の外側に引き出されている。そして、円筒部51を当接部71内に挿入する(矢印A6)。円筒部51を当接部71に嵌め込むことで、マイク2Lが完成する。なお、円筒部51の外周面、または当接部71の内周面に接着剤を塗布して、円筒部51と当接部71とを固着してもよい。
実施の形態2で示した縦配置又は横配置の構成によっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。ケーブル93が当接部71と円筒部51との間を通っているため、ケーブル93の引き回しによる影響を抑制することができ、適切に収音することができる。また、被測定者1の外耳道の大きさに応じて、イヤーチップ50B、イヤーチップ50Cを切替えて測定を行うことができる。よって、適切な位置に、マイク素子91を配置した状態で、個人特性を測定することができる。
[変形例1]
変形例1について、図32を用いて説明する。図32は、変形例1にかかるマイク2Lの構成を示す図である。図32は、縦配置におけるイヤーチップ50Bの変形例を示している。円筒部51等の基本的な構造については実施の形態1、2と同様であるため、適宜説明を省略する。
変形例1では、当接部71と、円筒部51とのZ方向における長さが異なっている。具体的には、Z方向において、円筒部51が当接部71よりも短くなっている。+Z側において、円筒部51と当接部71の端面の位置が一致している。また、円筒部51の外周面には突起51cが設けてられている。突起51cは、当接部71の凹部と係合している。これにより、円筒部51と当接部71とが固定されている。
さらに、円筒部51の-Z側には外部側円筒部72が設けられている。外部側円筒部72は、円筒部51と同じ外径を有する円筒状になっている。外部側円筒部72は、シリコーンチューブ又はビニールチューブである。-Z側において、外部側円筒部72と当接部71との端面の位置が一致している。
Z方向において、外部側円筒部72は、円筒部51と離間して設けられている。従って、外部側円筒部72と円筒部51との間には径方向外側に窪んだ凹部74が形成されている。この凹部74に、イヤホンドライバ80の先端部85を配置して、イヤホンドライバ80を係止してもよい。外部側円筒部72には、凸部53が設けられていない。
当接部71と円筒部51との間に中間層75が設けられている。中間層75は、当接部71とは別体として形成されたウレタンチューブである。従って、円筒部51の外側では、ウレタンチューブが2層構造となっている。つまり、中間層75が内層のウレタンチューブとなり、当接部71が外層のウレタンチューブとなっている。中間層75は、Z方向において、当接部71と同じ長さとなっている。よって外部側円筒部72の外側にも中間層75が配置されている。
そして、ケーブル93が当接部71と中間層75との層間を通って、外部に引き出されている。この場合、円筒部51だけでなく、中間層75にも開口部55が形成される。換言すると、円筒部51に中間層75を取り付けた後、当接部71を取り付ける前に、マイク素子91が取り付けられる。つまり、中間層75の外側から開口部55を介して、マイク素子91が収容部62に挿入される。
この構成によっても、上記と同様の効果を得ることができる。なお、図32では、縦配置の構成を示したが、横配置においても同様に変形例1の構成を取ることができる。例えば、横配置においても、円筒部51と当接部71との間に、中間層75を設けてもよい。あるいは、横配置においても、円筒部51の-Z側に外部側円筒部72を配置してもよい。
[変形例2]
変形例2では、ケーブル93の引き出す構成が実施形態、及び変形例1と異なっている。実施の形態2の変形例2にかかるマイク2Lの構成について、図33を用いて説明する。図33では、円筒部51と中間層75とに開口部55が設けられていない。
マイク素子91から引き出されたケーブル93は、円筒部51の+Z側の端面よりも+Z側の空間を通って、円筒部51と当接部71との層間に引き回されている。そして、円筒部51と当接部71と層間を通って、ケーブル93が外部に引き出されている。この構成によっても、上記と同様の効果を得ることができる。図33では、横配置の構成を示したが、縦配置においても同様に変形例2の構成を取ることができる。さらに、変形例2の構成においても、円筒部51と当接部71との間に中間層75を設けて、ケーブル93を中間層75と当接部71との層間を通すようにしてもよい。
[収音方法]
実施の形態1、2で示した構成を有するマイク2L、2Rを用いた収音方法について説明する。外耳道伝達特性を測定するためにマイク2L、2Rにイヤホンドライバ80を取り付けていない状態として、被測定者1がマイク2L、2Rを装着する。そして、図2に示したように、外部音源となるスピーカ5L,5Rから出力された音を、マイク素子91が収音する。これにより、インパルス応答測定が実施され、空間音響伝達特性を取得することができる。
次に、マイク2L、2Rにイヤホンドライバ80を取り付けた状態として、被測定者1が収音装置4を装着する。そして、音源となるイヤホンドライバ80から出力された音を、マイク素子91が収音する。これにより、インパルス応答測定が実施され、外耳道伝達特性を取得することができる。なお、空間音響伝達特性と外耳道伝達特性の測定順番は反対であってもよい。
上記のマイク2L、2Rを用いることで、個人特性を適切に測定することができるため、フィルタ生成装置200が適切なフィルタを生成することができる。そして、イヤホンドライバ80が取り付けられた受聴用のイヤーチップをユーザが装着することで、頭外定位受聴を行うことができる。受聴用のイヤーチップとしては、支柱部61や保持部66が設けられていない一般的な形状のものを用いることができる。個人測定結果に応じたフィルタを用いて頭外定位処理することが可能となる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。